説明

土壌改良剤

【課題】樹皮堆肥による土壌改良と同時に、酸性土壌の改良を行い、合わせて、廃棄に困難を伴っていた樹皮、間伐材などからの木炭、竹炭や、海藻類、貝殻などの再利用を図ることのできる、酸性土壌に対しても有効な土壌改良剤を提供する。
【解決手段】樹木の皮から得られた堆肥である樹皮堆肥1に、木炭2、竹炭、貝殻炭化処理物3、海藻類炭化処理物4から選ばれる一種又は二種以上を追加して得られる土壌改良剤、樹皮堆肥1含有量が30〜95重量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌改良剤に関し、さらに詳しくは、酸性土壌に対しても有効な土壌改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土壌改良には藁と牛・豚などの排泄物を腐敗させ製造した堆肥が広く使用されてきた。しかし、農業の機械化に伴い、藁の入手が困難になっている。さらに、都市近郊では、家畜の飼育に伴う悪臭などの原因から家畜の飼育が少なくなってきており、堆肥の入手が困難となっている。一方、都市生活者が、共同住宅のベランダなどや、戸建て住宅の庭において、鉢を利用して、植木を育てる場合も多くなっており、栽培のための堆肥など土壌改良剤の需要は大きい。
【0003】
木材に基づく材料例えば、樹皮、間伐材などは、薪などとして使用されてきたが、近年、石油製品の普及のため、薪が使用されることは少なくなり、廃棄に困難を伴っている。即ち、樹皮、間伐材などは、燃焼の際、煙が発生し、焼却処分が困難である。そこで、樹皮から製造される堆肥が注目される。しかし、樹皮から得られた堆肥では、酸性土壌に対してその効力はなお不満足である。
【0004】
一方、真珠の養殖、海苔の養殖、海藻の採取の際、貝殻、海藻の廃棄物が発生するのであるが、貝殻、海藻の廃棄物の処置に困難を伴っている。
また、杉、檜の生育に対し、間伐は必要な作業であるが、間伐材の処置に困難を伴っている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、樹皮からなる堆肥の性能向上を図ると同時に、間伐材などからの木炭、竹炭や、貝殻、海藻類からの廃棄物などの有効利用を図ることを目的とする。
【0006】
木材などを原料とする堆肥製造法に関して以下の先行技術がある。木材は、リグニン、フェノール、タンニンなどを含むため一般に堆肥とすることが困難とされるが、次のような先行技術が開示されている。即ち、木片と藁から堆肥を製造する方法(特許文献1)、植物性チップの分解装置及び分解方法(特許文献2)、競馬場などから排出される木材チップを主たる原料とし、微生物を利用して発酵させた堆肥の製造方法が開示されている(特許文献3)。
【0007】
【特許文献1】特開平7−10669号公報
【特許文献2】特開平8−132009号公報
【特許文献3】特開2003−12387号公報
【0008】
しかし、樹皮堆肥のみでは、酸性土壌の改良などに対しては効果に不満が残る。また、樹皮堆肥と他の成分との組成物に関しては先行技術が見出し得ない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、樹皮からの堆肥に他の成分を添加して、土壌改良と同時に、酸性土壌の改良を行い、合わせて、廃棄に困難を伴っていた樹皮、間伐材などからの木炭、竹炭や、貝殻や海藻の廃棄物などの再利用を図ることである。
【0010】
即ち、本発明者は、植物栽培用基材について鋭意研究の結果、樹皮堆肥に、木炭、竹炭、貝殻炭化処理物、海藻類炭化処理物から選ばれる一種又は二種以上を追加して得られる組成物が土壌改良剤として有用であることを見出し本発明に到達したのである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の土壌改良剤は以下の特徴がある。
(1) 樹木の皮から得られた堆肥である樹皮堆肥に、
木炭、竹炭、貝殻炭化処理物、海藻類炭化処理物から選ばれる一種又は二種以上を追加して得られたことを特徴とする土壌改良剤。
(2) (1)の土壌改良剤に通常の土が追加されていることを特徴とする。
(3) (1)の土壌改良剤に、油カス、魚粉、灰を追加されていることを特徴とする。
(4) (1)の土壌改良剤作成に際して、通常の藁から製造された堆肥や牛馬の排泄物が追加されていることを特徴とする土壌改良剤の製造方法。
(5) (1)〜(3)における土壌改良剤において、使用される貝殻炭化処理物、海藻類炭化処理物は、実質的に塩分を含まない貝殻炭化処理物、海藻類炭化処理物であることを特徴とする。
(6) (1)〜(3)における土壌改良剤において、樹皮堆肥含有量が、30〜95重量%であることを特徴とする。
【0012】
本発明は、樹木の皮から得られた堆肥である樹皮堆肥に、木炭、竹炭、貝殻炭化処理物、海藻類炭化処理物から選ばれる一種又は二種以上を追加して得られることを特徴とする土壌改良剤である 。
【0013】
本発明で使用される樹皮としては、杉、檜からの樹皮をあげることができる。杉、檜は、住宅用建材として広く使用され、入手が容易であるからである。
樹皮を堆肥とする方法としては、樹皮を2〜3年放置した後、粉砕し、1〜2ヶ月高温放置して一次発酵を行い、さらに数ヶ月放置して二次発酵することにより堆肥とする。発酵に際して、通常の藁から製造された堆肥や、牛馬の排泄物が追加されていることが好ましい。発酵に有効な菌を供給するためである。
【0014】
本発明で使用する樹皮堆肥に対して、間伐材から得られた木炭を追加して使用することができる。木炭は、乾燥した木材を酸素不足の状態で加熱し得られた炭素に富む固形物をいう。近年、間伐材を容易に得ることが可能であり、間伐材から得られる木炭を用いることが可能である。木炭は多孔質であり、親水性、保水性に富むと同時に、酸性基を含むため有害な重金属の除去が期待される。
【0015】
本発明において、樹皮堆肥に対して、竹炭を追加して使用することができる。竹炭は、乾燥した竹を酸素不足の状態で加熱し得られた炭素に富む固形物をいう。竹炭は木炭と同様多孔質であり、親水性、保水性に富むと同時に、有害な重金属の除去が期待される。
【0016】
本発明で使用する樹皮堆肥に対して、貝殻炭化処理物を追加して使用することができる。貝殻炭化処理物は、硫酸イオンなどと反応し、酸性土壌の中和に有効であるからである。炭化処理とは、木や竹が炭化する程度以上の温度に、酸素不足の状態で加熱処理することをいう。
【0017】
貝殻炭化処理物は、消毒・殺菌などの目的のため、加熱処理される。さらに貝殻炭化処理物は、取り扱いを容易にするため、1〜5ミリメートル程度の大きさにして使用することが好ましい。熱処理温度として400〜800℃程度が好ましい。
【0018】
本発明において、樹皮堆肥に対して、海藻類の炭化処理物を追加して使用することができる。各種ミネラル成分の供給が可能となるからである。
【0019】
樹皮堆肥と、木炭、竹炭、貝殻炭化処理物、海藻類の炭化処理物から選ばれた一種又は二種以上を追加して得られた本発明の土壌改良剤に、土を追加することができる。ここに土とは、岩石が風化して生成した粉末のほか、植物の葉などから生成する腐葉土や、堆肥を含む概念とする。ここに土の添加量は5〜95重量%が適当である。
【0020】
本発明で使用する貝殻炭化処理物、海藻類の炭化処理物など、海からの産物では、塩化ナトリウムなど所謂塩分を伴いやすい。このため、海から得られた貝殻や海藻を直ちに熱処理したのでは、塩分を多く含む。このため土壌改良剤として使用すると所謂塩害が発生するおそれがある。このため、これら貝殻や海藻は熱処理前に、1〜2年放置して雨水により塩分を除いた後熱処理する必要がある。
【0021】
また、樹皮堆肥と、木炭、竹炭、貝殻炭化処理物、海藻類の炭化処理物から選ばれた一種又は二種以上を追加して得られた本発明の土壌改良剤に対して、油カス、魚粉、灰等を追加することができる。これら成分の添加割合は、1〜20重量%の範囲が適当である。
【0022】
樹皮堆肥と、木炭、竹炭、貝殻炭化処理物、海藻類の炭化処理物から選ばれた一種又は二種以上を追加して得られた本発明の土壌改良剤は、通常の土や、水こけ、木綿などの天然繊維や、ポリアミド、ポリエステルなどの合成繊維と混合して植物栽培に利用できる。
【0023】
本発明の、樹皮堆肥と、木炭、竹炭、貝殻炭化処理物、海藻類の炭化処理物から選ばれた一種又は二種以上を追加して得られた土壌改良剤は、通常の畑や水田に散布する。このような散布により、畑や水田に対して、保水性向上、排水性向上、有害金属の除去が期待できる。また、本発明の土壌改良材は、鉢などに入れる土と混合して使用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
実施例1として、樹皮からなる堆肥90重量部(以下「部」と略す)に対して、貝殻炭化処理物10部を混合した。土壌改良剤として有用であった。実施例2〜7として、実施例1と同様に操作して表1の結果を得た。いずれも土壌改良剤として有用であった。
【表1】

【0025】
図1は、実施例8として、コンクリート8の上にある植木鉢6からなる植物栽培用容器に、土7を入れ、間伐材からの木炭2、貝殻炭化処理物3、及び海藻炭化処理物4、樹皮堆肥1からなる土壌改良剤を入れて、植物栽培用具10とし、植物5を栽培している場合の、植物栽培用用具10及び植物5の模式断面図である。
【0026】
図2は、実施例9として、植木鉢6からなる植物栽培用容器に、土7と、間伐材より得られた木炭2、貝殻炭化処理物3、樹皮堆肥1からなる土壌改良剤を充填して植物栽培用具10とし、植物5を栽培している場合の、植物栽培用具10及び植物5の模式断面図である。
【0027】
図3は、実施例10として、大地9の上に、土7と、間伐材より得られた木炭2、貝殻炭化処理物3及び海草炭化処理物4、樹皮堆肥1からなる土壌改良剤を置き、植物5を栽培している場合の、植物5とその近傍の土などの模式断面図である。
【0028】
以上の説明から明らかなように、本発明の土壌改良剤は以下に列記したような実用上優れた効果を有する。
(a)本発明の土壌改良剤は、樹皮から得られた堆肥などを含み、排水、保水性が優れ、メロン、スイカ、トマトなどの果物や、菊、ランなどの草花の栽培に利用可能である。
(b)貝殻炭化処理物に由来するカルシゥム系化合物により、酸性土壌を中和する能力があり、土壌改良に有効である。
(c)竹炭・木炭は、多孔質であるため、保水性に優れ、有害重金属の吸着が期待される。
(d)海藻炭化処理物は、各種ミネラルを含むため、土壌改良に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】コンクリート上にある植木鉢からなる植物栽培用容器に土と、本発明の土壌改良剤を入れて植物栽培用具とし、植物を栽培している場合の、植物栽培用用具と植物の模式断面図である。
【図2】植木鉢からなる植物栽培用容器に、土と、間伐材より得られた木炭、貝殻炭化処理物、樹皮堆肥からなる土壌改良剤を充填して、植物を栽培している場合の、植物栽培用具と植物の模式断面図である。
【図3】大地の上に、土と、間伐材より得られた木炭、貝殻炭化処理物、海草炭化処理物及び樹皮堆肥からなる土壌改良剤を置き、植物を栽培している場合の、植物と土などの模式断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 樹皮堆肥
2 間伐材より得られた木炭
3 貝殻炭化処理物
4 海藻炭化処理物
5 植物
6 植木鉢
7 土
8 コンクリート
9 大地
10 植物栽培用具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木の皮から得られた堆肥である樹皮堆肥に、
木炭、竹炭、貝殻炭化処理物、海藻類炭化処理物から選ばれる一種又は二種以上を追加して得られたことを特徴とする土壌改良剤。
【請求項2】
請求項1の土壌改良剤に通常の土が追加されていることを特徴とする土壌改良剤。
【請求項3】
請求項1の土壌改良剤に、油カス、魚粉、灰を追加してなる土壌改良剤
【請求項4】
請求項1の土壌改良剤作成に際して、通常の藁から製造された堆肥や牛馬の排泄物が追加されていることを特徴とする土壌改良剤の製造方法。
【請求項5】
請求項1、2、3における土壌改良剤において、使用される貝殻炭化処理物、海藻類炭化処理物は、実質的に塩分を含まない貝殻炭化処理物、海藻類炭化処理物であることを特徴とする土壌改良剤。
【請求項6】
請求項1、2、3における土壌改良剤において、樹皮堆肥含有量が、30〜95重量%であることを特徴とする土壌改良剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−302803(P2007−302803A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133571(P2006−133571)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(505176039)高橋土建株式会社 (2)
【Fターム(参考)】