説明

土壌活性剤の製造方法

【課題】 処理物処理装置を用いて分解処理後の残渣を土壌活性剤として土壌に戻すことができる土壌活性剤の製造方法を提供すること。
【解決手段】 処理物処理装置を用いて土壌活性剤を製造する土壌活性剤の製造方法。処理物処理装置は、処理室12を規定する処理ハウジング4と、被処理物を攪拌するための攪拌手段16とを備え、好気性微生物は菌床材36とともに処理室12内に収容される。好気性微生物として土壌菌34を用い、菌床材36として籾殻、シュレッダーダスト又は米ぬかを用い、被処理物としての廃棄農産物14を土壌菌34によって分解処理して土壌活性剤を製造する。廃棄農産物を処理するに際し、1g当たり1.0×10 個以上の土壌菌34が着床した菌床材36を廃棄農産物1000kg当たり100g以上投入し、分解処理後の土壌活性剤1g当たり1.0×10個以上の土壌菌が残留する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌を活性化させる土壌活性剤を製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生ゴミなどの廃棄物の排出量は増える一方であり、このような廃棄物を処理するための処理物処理装置として好気性微生物を利用したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この処理物処理装置は、処理室を規定する処理ハウジングと、処理室内の処理物を攪拌するための攪拌手段とを備え、処理室内に処理すべき生ゴミなどが投入される。また、好気性微生物として土壌菌が用いられ、菌床としてセラミック材及び多孔質のケイ藻土が用いられる。この処理物処理装置においては、処理室内に生ゴミなどの処理物を投入すると、この処理物が土壌菌によって分解処理される。
【0003】
【特許文献1】特開2005−185880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この処理物処理装置では、生ゴミなどの処理物を土壌菌により分解処理してその嵩を少なくすることができるが、この分解処理の後に処理室内に残る残渣には、生ゴミに含まれる不純物及び菌床としてのセラミックなどを含んでいるので、廃棄物として処理しなければならず、それ故に、処理するための処理コストがかかるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、上述したような処理物処理装置を用いて分解処理後の残渣を土壌活性剤として土壌に戻すことができる土壌活性剤の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の土壌活性剤の製造方法は、好気性微生物によって被処理物を分解処理する処理物処理装置を用いて土壌活性剤を製造する土壌活性剤の製造方法であって、
前記処理物処理装置は、処理室を規定する処理ハウジングと、前記処理ハウジング内の被処理物を攪拌するための攪拌手段とを備え、前記好気性微生物は菌床材とともに前記処理室内に収容され、前記好気性微生物として土壌菌を用い、前記菌床材として籾殻、シュレッダーダスト又は米ぬかを用い、被処理物としての廃棄農産物を前記処理物処理装置の前記処理室に投入して前記土壌菌によって分解処理して土壌活性剤を製造することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の土壌活性剤の製造方法では、前記廃棄農産物を処理するに際し、1g当たり1.0×10個以上の前記土壌菌が存在する前記菌床材を前記廃棄農産物1000kg当たり100g以上投入して分解処理し、前記土壌菌による分解処理後の土壌活性剤に1g当たり1.0×10個以上の前記土壌菌が残留していることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載の土壌活性剤の製造方法では、前記廃棄農産物を処理するに際し、1g当たり1.0×1010個以上の前記土壌菌が存在する前記菌床材を前記廃棄農産物1000kg当たり100g以上投入して分解処理し、前記土壌菌による分解処理後の土壌活性剤に1g当たり1.0×10個以上の前記土壌菌が残留していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載の土壌活性剤の製造方法では、前記土壌菌はバチルス属菌を含んでおり、前記処理物処理装置の前記処理室に温風を送給して前記処理室内を25〜70℃の温度雰囲気に保って前記廃棄農産物の分解処理を行うことを特徴とする。
【0010】
更に、本発明の請求項5に記載の土壌活性剤の製造方法では、前記廃棄農産物は廃棄野菜及び/又は廃棄果物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載の土壌活性剤の製造方法によれば、処理物処理装置の処理室に収容される好気性微生物として土壌菌を用い、菌床材として籾殻(又はシュレッダーダスト、米ぬか)を用い、被処理物として廃棄農産物を処理室に投入するので、土壌菌による分解処理後には、分解処理された廃棄農産物、籾殻(又はシュレッダーダスト、米ぬか)が残るのみであり、従って、これらを土壌に戻しても何ら問題はなく、土壌活性剤とすることができる。特に、分解処理後の残渣には分解処理に用いた土壌菌が残っているので、土壌活性剤として土壌に戻すと、残渣中の土壌菌が土壌中の病原菌の活動を抑えるとともに、土壌中の有機物を分解処理し、これによって空気中の酸素が土壌中に入って土壌が柔らかくなる。その結果、農産物に適した土壌となり、農産物の生育が促進される。また、残渣中に残る籾殻(又はシュレッダーダスト、米ぬか)については、土壌中に戻した後においても残渣中の土壌菌により分解処理され、そして時間の経過とともに完全に分解処理され、かくして、土壌菌による分解処理後の残渣は有効な土壌活性剤となる。
【0012】
また、本発明の請求項2に記載の土壌活性剤の製造方法によれば、廃棄農産物を処理するに際し、1g当たり1.0×10個以上の土壌菌が存在する菌床材を廃棄農産物1000kg当たり100g以上投入して分解処理するので、処理室に投入した廃棄農産物をこの土壌菌でもって所要の通りに分解処理することができる。また、分解処理後の残渣、即ち土壌活性剤中に1g当たり1.0×10個以上の土壌菌が残留するので、この残渣を土壌活性剤として土壌中に戻すと、土壌中においてこの土壌菌が活性化し、これによって、土壌中の病原菌の活動を抑えることができるとともに、土壌中の有機物を分解処理することができる。
【0013】
また、本発明の請求項3に土壌活性剤の製造方法によれば、1g当たり1.0×1010個以上の土壌菌が存在する菌床材を廃棄農産物1000kg当たり100g以上投入して分解処理するので、処理室に投入した廃棄農産物をこの土壌菌でもって所要の通りに分解処理し、例えば20〜30時間で分解処理することができる。また、分解処理後の残渣、即ち土壌活性剤中に1g当たり1.0×10個以上の土壌菌が残留するので、この残渣を土壌活性剤として土壌中に戻すと、充分な量の土壌菌によって土壌中の病原菌の活動を抑えることができるとともに、土壌中の有機物を分解処理することができる。
【0014】
また、本発明の請求項4に記載の土壌活性剤の製造方法によれば、土壌菌はバチルス属菌を含んでおり、処理室に温風を送給して処理室内を25〜70℃の温度雰囲気に保って廃棄農産物の分解処理を行うので、処理室内においてバチルス属菌が活性化されて廃棄農産物を効率よく分解処理することができるとともに、分解処理後においても充分な量のバチルス属菌が残り、分解処理の残渣が有効な土壌活性剤となる。
【0015】
更に、本発明の請求項5に記載の土壌活性剤の製造方法によれば、廃棄野菜、例えばキャベツ、白菜、ニンジン、タマネギ、トマト、キュウリ、大根、シイタケなど、また廃棄果物、例えばクレープフルーツ、リンゴ、梨などを分解処理して土壌活性剤とし、土壌活性剤として土壌に戻すことによって廃棄野菜をリサイクルすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う土壌活性剤の製造方法の一実施例について説明する。図1は、本発明に従う土壌活性剤の製造方法に用いる処理物処理装置の一形態を簡略的に示す断面図である。図2は、図1の処理物処理装置の制御系を簡略的に示すブロック図である。
【0017】
図1において、土壌活性剤を製造するための処理物処理装置は、装置ハウジング2、この装置ハウジング2内に配設された処理ハウジング4、処理ハウジング4内に空気を供給するための空気供給手段6、処理ハウジング4内に水分を供給するための水分供給手段8及び処理ハウジング4から排出されるガスを清浄化するためのガス清浄手段10と、を備えている。この実施形態では、処理ハウジング4に加えて空気供給手段6、水分供給手段8及びガス清浄手段10も装置ハウジング2内に収容されている。
【0018】
処理ハウジング4は、被処理物14を処理するための処理室12を規定し、処理室12内に被処理物14が投入される。後述した分解処理後の残渣が土壌活性剤となるために、被処理物14は廃棄農産物であることが重要であり、このように廃棄農産物を後述する如く分解処理することによって田畑の土壌に戻すことができるようになる。廃棄農産物としては廃棄野菜、廃棄果物が好ましく、廃棄野菜としては、例えばキャベツ、白菜、ニンジン、タマネギ、トマト、キュウリ、大根、シイタケなど(収穫した不良のもの、傷ついたものなど)であり、また廃棄果物としては、例えばグレープフルーツ、リンゴ、梨など(収穫した不良のもの、傷ついたもの)である。
【0019】
この処理ハウジング4内には、廃棄農産物14を撹拌するための攪拌手段16が設けられており、攪拌手段16は、水平方向に延びる回転軸部18と、この回転軸部18に取り付けられた攪拌部材20とから構成され、回転軸部18の両端部が処理ハウジング4の両側壁に回転自在に支持されている。攪拌部材20は、回転軸部18から径方向外方に直線状に延び、それらの先端部に攪拌羽根22が設けられている。この回転軸部14の一端部は駆動源を構成する電動モータ28に駆動連結されている。従って、電動モータ28が回転駆動されると攪拌手段16の回転軸部18、攪拌部材20及び攪拌羽根22が一体的に回動される。
【0020】
この形態では、処理ハウジング4の下部は略半円筒状に形成され、攪拌羽根22は処理ハウジング4の下部の内面に近接してこれに沿って移動するように構成されており、従って、回転軸部18によって攪拌部材20が回動されると、攪拌羽根22は処理ハウジング4の底部の廃棄農産物14に作用し、処理ハウジング4内に収容された被処理物14及び後述する菌床材36(この菌床材36に好気性微生物34が着床されている)をむらなく均一に攪拌するとともに、この攪拌によって、廃棄農産物14と菌床材36との間に充分な空気が供給されて後述する好気性微生物の発酵作用を促進することができる。
【0021】
廃棄農産物14は、処理ハウジング4の中央上部に設けられた投入ホッパ30から投入される。投入ホッパ30の下部付近には粉砕機32が設けられており、廃棄農産物14は粉砕機32によって細かく粉砕された後に処理室12内に投入される。このように粉砕して投入することによって、好気性微生物34による分解処理を高めることができる。投入ホッパ30の投入開口には開閉蓋31が実線で示す閉位置(投入開口を閉塞する位置)と開位置(投入開口を開放する位置)との間を開閉自在に取り付けられている。
【0022】
廃棄農産物14を分解処理するために好気性微生物が用いられ、この好気性微生物として土壌菌34が用いられ、土壌菌34を用いることによって、その分解処理された残渣を土壌に戻すことができる。この土壌菌34としてはバチルス属菌を含むものを用いるのが好ましい。また、土壌菌34を着床する菌床材36としては、籾殻、シュレッダーダスト(具体的には、白い紙又は白黒コピーの紙を細かく裁断したもの)又は米ぬか(これらの2種又は3種の混合物を含む)を用い、菌床材36としてこのような有機物を用いることによって、土壌菌34の活動を活性化させることができるとともに、分解処理後の残渣を土壌に戻しても問題はない。また、籾殻などの有機物は時間の経過とともに完全に分解されて土壌の一部となり、土壌中に蓄積されることはない。菌床材36への土壌菌34の着床は、例えば菌床材36を土壌菌34が生存している媒体中に数日間浸して行い、土壌菌34が着床した菌床材36が処理室12に収容される。
【0023】
この実施形態では、装置ハウジング2内に熱交換器38が配設され、図示の空気供給手段6は、装置ハウジング2の外部から熱交換器38に延びる空気供給管39と、この熱交換器38から処理ハウジング4に延びる空気送給管40と、空気供給管39に配設された吸入ポンプ41とから構成されている。このように構成されているので、吸入ポンプ41が作動すると、装置ハウジング2の外部からの空気が空気供給管39、熱交換器38及び空気送給管40を通して処理ハウジング4内に供給され、熱交換器38にて後述するように加温された空気は処理室12に送給され、吸入ポンプ41の回転数を制御することによって、処理室12に送給される空気の送給量が調整される。
【0024】
また、水分供給手段8は、水を収容する水タンク42を備え、この実施形態では、水タンク42は装置ハウジング2内の右側上部に配置され、水タンク42から水供給管44が処理室12内に延びている。水供給管44には、軸方向に間隔をおいて複数の水噴射孔46が設けられており、水タンク42から水供給管44を通して供給された水は、これら水噴射孔46から処理室12内に噴射される。
【0025】
ガス清浄手段10は、装置ハウジング2内の左側下部に配置された清浄装置48と、この清浄装置48と処理ハウジング4とを接続するガス送給管50と、清浄装置48から装置ハウジング2の外部に延びるガス排出管52とを備え、ガス送給管50に排出ポンプ54及び上記熱交換器38が配設されている。このように構成されているので、排出ポンプ54が作動すると、処理室12内のガスがガス送給管50を通して清浄装置48に送給され、この清浄装置48にて脱臭された後にガス排出管52を通して装置ハウジング2外に排出され、排出ポンプ54の回転数を制御することによって、処理室12から排出されるガスの排出量が調整される。
【0026】
このとき、ガス送給管52を流れるガスと空気供給管39を流れる空気とが熱交換器38にて熱交換が行われ、熱交換により加温された空気が処理室12に送給され、このような温風を供給することによって、処理室12内が急激に冷却されることが防止されるとともに、熱交換により冷却されたガスが清浄装置48に送給され、ガス排出管52から高温状態のガスが外部に排出されるのを防止される。尚、処理室12から排出されるガスの排出流量に対して空気供給管39を通して処理室12に供給される空気の供給量が相対的に多いときには、空気の加温の程度が小さく、加温による温度上昇の少ない空気が処理室12に送給されるが、ガスの排出流量に対して処理室12に供給される空気の供給量が相対的に少ないときには、空気の加温の程度が大きく、加温による温度上昇の大きい空気が処理室12に送給される。
【0027】
処理ハウジング4は、その重量を検出するためのロードセル58を介して支持されている。ロードセル58は、処理ハウジング4の下側に配置され、処理ハウジング4はかかるロードセル58を介して装置ハウジング2に支持されている。この実施形態では、処理ハウジング4の底部が半円筒状に形成され、この底部の両端部にロードセル58a,58bが配置されており、これらのロードセル58a,58bで検出された重量の合計から処理ハウジング4(この内部に収容された廃棄農産物14及び菌床材36などを含む)の重量が検知される。尚、処理ハウジング4の4隅部の各々にロードセルを配設し、これらのロードセルの検出重量から処理ハウジング4の重量を計測するようにしてもよい。
【0028】
主として図2を参照して上述した処理物処理装置の制御系について説明すると、この処理物処理装置は、例えば、装置ハウジング2の上部に設置されるマイクロコンピュータなどから構成されるコントローラ60を備え、かかるコントローラ60によって、水分供給手段8、吸入ポンプ41及び排出ポンプ54などが作動制御される。図示のコントローラ60は、水分供給手段8を作動制御するための湿度制御手段64と、吸入ポンプ41及び排出ポンプ54を作動制御するためのポンプ制御手段66と、処理ハウジング4の重量を検出演算するための重量検出演算手段68と、処理終了信号を生成する処理終了信号生成手段69とを含んでいる。コントローラ60は、更に、計時手段70及びメモリ72を含んでいる。計時手段70は時刻を計時し、メモリ72には、土壌菌34が発酵して廃棄農産物14を分解処理するのに適した温度(処理室12内の設定温度、例えば40℃)、湿度(処理室12内の設定湿度、例えば60%)及び酸素濃度(処理室12内の設定下限酸素濃度、例えば16%)などが記憶され、更に、廃棄農産物14の分解処理開始の時刻及びこのときの処理ハウジング4の重量が記憶される。
【0029】
この実施形態では、処理室12内の温度を検知するための温度検知センサ74、処理室12内の湿度を検知するための湿度検知センサ76及び処理室12内の酸素濃度を検知するための酸素濃度検知センサ78が設けられる。また、コントローラ60に関連して、処理終了表示ランプ80が設けられている。処理終了表示ランプ80は廃棄農産物14の処理が終了したか否かを表示し、廃棄農産物14に対する分解処理が終了したときには点灯してその旨を知らせる。
【0030】
次に、図1及び図2を参照して、上述した処理物処理装置による分解処理、即ち上述した処理物処理装置を用いた土壌活性剤の製造について説明する。廃棄農産物14を分解処理して土壌活性剤を製造する場合、開閉蓋31を開放して分解処理すべき廃棄農産物14が投入ホッパ30から投入され、かく投入された廃棄農産物14は、粉砕機32によって細かく粉砕された後に処理室12内に投入される。この処理室12内は、菌床材36に着床した土壌菌34が予め収容されており、菌床材1g当たり1.0×10個以上の土壌菌34が付着したものが好ましく、この菌床材36を分解処理すべき廃棄農産物1000kg当たり100g以上投入するのが望ましく、このように菌床材36を投入することによって、土壌菌34によって廃棄農産物14を後述するように分解処理させることができる。この菌床材36は、1g当たり1.0×1010個以上の土壌菌を着床させた状態で収容するのが好ましく、このようにすることによって土壌菌34による分解処理がより促進され、20〜30時間、例えば24時間程度で1000kgの廃棄野菜、廃棄果物の分解処理を行うことができる。
【0031】
土壌菌34による分解処理中は、処理室12内は分解処理するのに適した状態に、例えば処理室12の温度については25〜70℃の適宜の温度(例えば、40℃)に、例えば処理室12の湿度については50〜80%の適宜の湿度(例えば、60%)に、また処理室12の酸素濃度については例えば16%以上に維持されるように水分供給手段8、吸入ポンプ54及び排出ポンプ54が作動制御される。また、この分解処理中は電動モータ28が作動され、攪拌部材20及び攪拌羽根22が所定方向に回動され、土壌菌34が着床した菌床材36及び廃棄農産物14が混合され、この混合の際に土壌菌34は処理室12内の空気と接触し、菌床材36の均一化と着床した土壌菌34の活性化が図られる。尚、攪拌手段16は1分間に5回程度の回転速度で回転され、この攪拌によって菌床材36に着床した土壌菌34が廃棄農産物14と混合され、このようにして廃棄農産物14に対する分解処理が行われる。
【0032】
この適正条件での分解処理が所定時間、例えば24時間行われる(計時手段70がこの時間を計時する)と、投入した廃棄農産物14に対する分解処理が終了し、処理終了信号生成手段69は処理終了信号を生成する。かくすると、この処理終了信号に基づいて処理終了表示ランプ82が点灯し、分解処理が終了した旨を表示し、この点灯表示によって容易に認識することができる。また、この処理終了信号に基づいて電動モータ28の回転が停止するとともに、水供給手段8、吸入ポンプ41及び排出ポンプ54も作動停止し、このようにして投入した廃棄農産物14に対するバッチ分解処理が終了する。
【0033】
廃棄農産物14の分解処理の終了は、上述した処理時間に加えて(又は処理時間に代えて)、投入した廃棄農産物14の減量割合でもって設定するようにしてもよく、この場合、ロードセル58により重量の減量を計測し、投入した廃棄物農産物14の重量が10〜20%程度(例えば、10%)までに減量した時点でもって分解処理終了と設定することができ、例えば10%まで減量した時点で処理終了信号生成手段69は処理終了信号を生成する。
【0034】
このように廃棄農産物14に対する分解処理が終了すると、この終了時においても菌床材36中に土壌菌34が生きており、この残渣中の土壌菌34に着目してかかる処理残渣を土壌活性剤として用いるものである。即ち、この処理残渣を田畑などの土壌に戻すと、残渣中の土壌菌が土壌中の病原菌の活動を抑えるとともに、土壌中の有機物を分解処理し、これによって空気中の酸素が土壌中に入って土壌が柔らかくなり、農産物に適した土壌の改良が行われる。この処理残渣は土壌に戻すことによって上述した働きがあり、それ故に、土壌活性剤として有効に使用することができ、廃棄農産物を分解処理することによって土壌活性剤をつくることができる。
【0035】
この処理残渣を土壌活性剤として用いるには、処理残渣中に廃棄農産物14の分解処理に用いた土壌菌34が残っていることが重要であり、菌床材1g当たり1.0×10個以上の土壌菌34を着床させて収容した場合、その分解処理後の残渣1g当たりに1.0×10個以上の土壌菌34が残留するように分解処理するのが好ましく、残渣1g当たりの土壌菌の数が1.0×10個より少ないと、土壌活性剤としての働きが弱くなる。この残渣中の土壌菌34は、菌床材1g当たり1.0×1010個以上着床させて収容した場合、その分解処理後の残渣に1.0×10個以上の土壌菌が残留するようにするのがより好ましく、このように1.0×10個以上の土壌菌が残留するようにすると、残渣中に土壌を活性化するための土壌菌34が充分に含まれ、土壌活性剤として充分な働きを有するものとなる。尚、この分解処理後の残渣は、10a当たり300〜500kg程度の割合で土壌活性剤として使用される。
【0036】
以上、本発明に従う土壌活性剤の製造方法の一実施例について説明したが、本発明はかかる実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0037】
〔実施例〕
この土壌活性剤の効果を確認するために、次の通りして土壌活性剤を製造してレタス、白菜を栽培する畑に播いてその効果を確認した。土壌活性剤を製造するために、図1に示す形態の処理物処理装置(処理能力1000kg)を用い、廃棄農産物としてシイタケ、グレープフルーツ、大根、ニンジン、タマネギ、白菜を粉砕して処理室に1000kg投入した。処理室には、1g当たり1.0×1010個以上の土壌菌(バチルス属菌を用いた)が着床した菌床材を予め100g収容していた。尚、菌床材として籾殻を用いた。
【0038】
土壌菌による分解処理中は、処理室12の温度を約40℃に、その湿度を約60%に、また酸素濃度を約16%以上の状態に維持し、また攪拌部材及び攪拌羽根を5回/1分間の割合で所定方向に回動して行った。そして、このような処理条件で24時間にわたって分解処理し、この分解処理後の残渣を土壌活性剤として用いた。24時間分解処理した時点で、投入した廃棄農産物(1000kg)は約100kgに減少し、この残渣1g当たり1.0×10個以上の土壌菌が残っていた。
【0039】
この残渣を土壌活性剤として用い、10a当たり400kgの割合で畑の土壌に入れてキャベツを栽培した。化学肥料を用いなかったが、キャベツは大きく育った。また、キャベツの収穫時に畑の土壌を見ると、土壌中の有機物が分解されているようで柔らかくなっていた。このことから、土壌菌で分解処理した残渣は、土壌活性剤として非常に有効に用いることができることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に従う土壌活性剤の製造方法に用いる処理物処理装置の一形態を簡略的に示す断面図。
【図2】図1の処理物処理装置の制御系を簡略的に示すブロック図。
【符号の説明】
【0041】
2 装置ハウジング
4 処理ハウジング
6 空気供給手段
8 水分供給手段
10 ガス清浄手段
12 処理室
14 廃棄農産物
34 土壌菌
36 菌床材
58,58a,58b ロードセル
60 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
好気性微生物によって被処理物を分解処理する処理物処理装置を用いて土壌活性剤を製造する土壌活性剤の製造方法であって、
前記処理物処理装置は、処理室を規定する処理ハウジングと、前記処理ハウジング内の被処理物を攪拌するための攪拌手段とを備え、前記好気性微生物は菌床材とともに前記処理室内に収容され、前記好気性微生物として土壌菌を用い、前記菌床材として籾殻、シュレッダーダスト又は米ぬかを用い、被処理物としての廃棄農産物を前記処理物処理装置の前記処理室に投入して前記土壌菌によって分解処理して土壌活性剤を製造することを特徴とする土壌活性剤の製造方法。
【請求項2】
前記廃棄農産物を処理するに際し、1g当たり1.0×10個以上の前記土壌菌が存在する前記菌床材を前記廃棄農産物1000kg当たり100g以上投入して分解処理し、前記土壌菌による分解処理後の土壌活性剤に1g当たり1.0×10個以上の前記土壌菌が残留していることを特徴とする請求項1に記載の土壌活性剤の製造方法。
【請求項3】
前記廃棄農産物を処理するに際し、1g当たり1.0×1010個以上の前記土壌菌が存在する前記菌床材を前記廃棄農産物1000kg当たり100g以上投入して分解処理し、前記土壌菌による分解処理後の土壌活性剤に1g当たり1.0×10個以上の前記土壌菌が残留していることを特徴とする請求項2に記載の土壌活性剤の製造方法。
【請求項4】
前記土壌菌はバチルス属菌を含んでおり、前記処理物処理装置の前記処理室に温風を送給して前記処理室内を25〜70℃の温度雰囲気に保って前記廃棄農産物の分解処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の土壌活性剤の製造方法。
【請求項5】
前記廃棄農産物は廃棄野菜及び/又は廃棄果物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の土壌活性剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−91523(P2009−91523A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266074(P2007−266074)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(392021632)スリーエス株式会社 (2)
【Fターム(参考)】