説明

土壌浄化装置および土壌浄化方法

【課題】 浄化したい土壌に対して適正、均等に浄化剤を浸透させる。
【解決手段】 管状で、浄化剤Cと圧縮空気Aが流通する流通路を有するインナーロッド2と、インナーロッド2の下流側に設けられ、インナーロッド2から流入した圧縮空気Aによって膨張するエアーパッカ3と、エアーパッカ3の下流側に設けられ、インナーロッド2から流入した浄化剤Cを外部に放出するスクリーン4と、管状で、スクリーン4とエアーパッカ3とインナーロッド2とを管内に収容した状態で土壌Gに打ち込み可能で、かつスクリーン4とエアーパッカ3とインナーロッド2とを土壌G中に残して土壌Gから引き抜き可能なケーシング5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、汚染された土壌に浄化剤を浸透させることで、土壌を浄化するための土壌浄化装置および土壌浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、有機ハロゲン化物や6価クロムなどにより土壌が汚染されている場合、土壌を浄化する必要があり、鉄微粒子スラリーなどを含む浄化剤を土壌に注入することで、土壌を浄化する浄化方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この浄化方法は、汚染された土壌に注入管を打ち込み、この注入管の上端部から浄化剤を供給し、注入管の下端部から浄化剤を排出することで、土壌に浄化剤を注入するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−138107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような浄化方法では、注入管を土壌に打ち込んだ状態で、単に浄化剤を注入するため、浄化剤がどこに浸透するかは、土壌の各部位の状態や性状などによってしまう。例えば、注入管を土壌に打ち込んだ際に、土壌内に亀裂が発生するが、この亀裂の発生状況によって、浄化剤の浸透部位が大きく依存してしまう。このため、一部の部位にのみ偏って浄化剤が浸透したり、まばらに浄化剤が浸透したり、あるいは浄化したい部位に浄化剤が浸透しない場合が生じる。さらに、注入管の上端部から単に浄化剤を供給して、浄化剤を土壌に注入、浸透させるため、例えば粘性が高い土壌では浄化剤が浸透せずに、土壌を浄化できない、あるいは土壌を浄化するには多数の部位に注入管を打ち込む必要がある、といった問題があった。
【0005】
そこでこの発明は、浄化したい土壌に対して適正、均等に浄化剤を浸透させることが可能な土壌浄化装置および土壌浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、汚染された土壌に浄化剤を浸透させるための土壌浄化装置であって、管状で、浄化剤が流通する第1の流通路と膨張用流体が流通する第2の流通路とが、管内に設けられた流通管と、前記流通管の下流側に設けられ、前記流通管の第2の流通路から流入した膨張用流体によって膨張する膨縮管と、前記膨縮管の下流側に設けられ、前記流通管の第1の流通路から流入した浄化剤を外部に放出する放出管と、管状で、前記放出管と膨縮管と流通管とを管内に収容した状態で土壌に打ち込み可能で、かつ前記放出管と膨縮管と流通管とを土壌中に残して土壌から引き抜き可能な収容管と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の土壌浄化装置において、前記放出管の下流側に設けられ、前記流通管の第2の流通路から流入した膨張用流体によって膨張する第2の膨縮管を備える、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の土壌浄化装置を使用した土壌浄化方法であって、前記放出管と膨縮管と流通管とを前記収容管に収容した状態で、前記放出管側を土壌に向けて前記収容管を土壌に打ち込み、前記収容管を土壌から引き抜いて、前記放出管と膨縮管と流通管とを土壌に埋設し、前記流通管の第2の流通路に膨張用流体を供給して前記膨縮管を膨張させた状態で、前記流通管の第1の流通路に浄化剤を供給して、前記放出管から土壌に前記浄化剤を放出させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1および3に記載の発明によれば、放出管と膨縮管と流通管とを土壌に埋設した状態では、放出管が最も深い位置、つまり浄化剤を浸透させたい部位に位置し、その上位に膨縮管が位置する。そして、膨縮管を膨張させることで、周囲の土壌が圧力を受けて密度が高くなり(例えば、打ち込みで形成された亀裂が塞がれ)、この状態で放出管から浄化剤が放出されるため、浄化剤の膨縮管側への浸透が抑制される。このため、放出管の周囲に浄化剤がより浸透し、浄化したい土壌部位に対して適正、均等に浄化剤を浸透させることが可能となる。さらに、放出管よりも上位に浄化剤が浸透しないように抑制された状態で、浄化剤が放出管から放出されるため、つまり、浄化剤の行き場が放出管の周囲に制限されるため、例えば粘性が高い土壌であっても、所望の部位に浄化剤を浸透させることが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、放出管の下流側、つまり放出管の下位側に第2の膨縮管が設けられているため、2つの膨縮管が膨張した状態では、放出管の上位と下位に位置する土壌部位が圧力を受け、この部位への浄化剤の浸透が抑制される。つまり、放出管の上下側への浸透が抑制されるため、放出管の周囲にのみ浄化剤がより浸透し、浄化したい土壌部位に対してより適正、均等に浄化剤を浸透させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係る浄化ユニットを備えた土壌浄化設備を示す概略構成図である。
【図2】図1の浄化ユニットの概略構成図である。
【図3】図2の浄化ユニットのインナーロッドの断面図である。
【図4】図2の浄化ユニットの注入ヘッドを示す断面図である。
【図5】図2の浄化ユニットのエアーパッカの断面図である。
【図6】図2の浄化ユニットのスクリーンの正面図(一部断面図)である。
【図7】図2の浄化ユニットのケーシングの断面図である。
【図8】図2の浄化ユニットのバッファピース周辺を示す断面図である。
【図9】図2の浄化ユニットを使用した土壌浄化方法・手順を示す図である。
【図10】図9の土壌浄化方法におけるステップS3の土壌中の状態を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態2に係る浄化ユニットの概略構成図である。
【図12】図11の浄化ユニットのエアーパッカの断面図である。
【図13】図11の浄化ユニットのスクリーンの断面図である。
【図14】図11の浄化ユニットの先端エアーパッカの断面図である。
【図15】図11の浄化ユニットを使用した土壌浄化方法・手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係る浄化ユニット(土壌浄化装置)1を備えた土壌浄化設備10を示す概略構成図である。この浄化ユニット1は、汚染された土壌Gに浄化剤Cを浸透させるための装置であり、図2に示すように、主として、インナーロッド(流通管)2と、エアーパッカ(膨縮管)3と、スクリーン(放出管)4と、ケーシング(収容管)5とを備えている。ここで、浄化剤Cは、土壌Gの汚染物質や汚染状況などに基づいて選定される。例えば、VOCs(揮発性有機化合物)や油分などで土壌Gが汚染されている場合には、酸化剤(過酸化水素水、過硫酸塩など)や還元剤、微生物活性剤などが、浄化剤Cとして使用される。また、土壌Gの汚染、浄化には、地下水の汚染、浄化も含まれる。
【0014】
インナーロッド2は、図3に示すように管状で、浄化剤Cが流通する第1の流通路2aと圧縮空気(膨張用流体)Aが流通する第2の流通路2bとが、管内に設けられている。具体的には、大径の外管21内に小径の内管22が、ブリッジ23を介して同心に配設された二重管で、外管21と内管22との間の空間が第1の流通路2a、内管22内が第2の流通路2bとなっている。また、外管21の両端部の内面には、接続雌ネジ21aが形成され、一方(下流側)の接続雌ネジ21aには、接続管24が接続されている。
【0015】
この接続管24は二重管で、接続外管241の両端部に、接続雌ネジ21aと螺合する接続雄ネジ241aが形成され、接続内管242内に内管22が挿入された状態で、接続内管242と内管22とが接続されている。そして、接続管24の自由端側の接続雄ネジ241aを、他のインナーロッド2の接続雌ネジ21aに螺合することで、複数のインナーロッド2を接続できるようになっている。
【0016】
このようにして接続された複数のインナーロッド2の最上流側(地上側)の端部には、図4に示すような注入ヘッド6が取り付けられるようになっている。この注入ヘッド6には、インナーロッド2の接続雌ネジ21aに螺合するヘッド雄ネジ6aが形成され、接続雌ネジ21aに螺合した際にインナーロッド2の内管22が挿入されるヘッド挿入穴6bと、第1の流通路2aと流通・連通する断面がリング状のヘッド流通路6cとが、形成されている。また、ヘッド挿入穴6bに流通・連通するエアー管接続部61と、ヘッド流通路6cに流通・連通する浄化剤管接続部62とが設けられている。そして、後述するようにして、エアー管接続部61にエアーホース151を接続し、浄化剤管接続部62に吐出ホース132を接続することで、各インナーロッド2の第2の流通路2bに圧縮空気Aが流れ、第1の流通路2aに浄化剤Cが流れるようになっている。
【0017】
エアーパッカ3は、インナーロッド2の下流側(先端側)に取り付けられ、インナーロッド2の第2の流通路2bから流入した圧縮空気Aによって膨張する管である。具体的には、図5に示すように、伸縮自在なゴム製で管状のラバー管31の両端部に、固定具32、33が取り付けられ、固定具32、33によってパッカ内管34がラバー管31内に同心に配設されている。そして、圧縮空気Aが供給されない状態で、ラバー管31とパッカ内管34との間には、隙間3aが形成されるようになっている。
【0018】
また、第1の固定具32の自由端部側は、略円筒状で、インナーロッド2の接続雄ネジ241aと螺合するパッカ雌ネジ32aが形成され、さらに、スライドピース35が軸方向にスライド自在に配設されている。一方、パッカ内管34の第1の固定具32側の端部の外周には、軸方向に沿って隙間3aまで延びる溝(図示せず)が形成されている。そして、パッカ雌ネジ32aに接続雄ネジ241aを螺合することで、スライドピース35のスライド管351が接続内管242内に挿入される。この状態で、インナーロッド2の第2の流通路2bからの圧縮空気Aが、スライド管351を通ってパッカ内管34の溝に入り、隙間3aに満たされてラバー管31が膨張する。ここで、ラバー管31は、外力が加わらない状態では、収縮した状態の外径に対して、約2倍の外径まで膨張する。
【0019】
続いて、インナーロッド2の第1の流通路2aからの浄化剤Cによって、スライドピース35のスライド板352が押されて、スライドピース35が胴付き面32bに当たり、浄化剤Cが胴付き面32bに形成された孔(図示せず)からパッカ内管34内に流入するようになっている。また、圧縮空気Aの供給が停止されると、ラバー管31が収縮するとともに、スライドピース35が元の位置に戻るものである。さらに、第2の固定具33から突出したパッカ内管34の自由端部には、パッカ雄ネジ34aが形成されている。ここで、このようなエアーパッカ3の構成は、後述する実施の形態2のエアーパッカ3と同じ構成であってもよい。
【0020】
スクリーン4は、エアーパッカ3の下流側に取り付けられ、エアーパッカ3を介してインナーロッド2の第1の流通路2aから流入した浄化剤Cを外部に放出する管である。具体的には、図6に示すように、主管41の両端部に主管雄ネジ411が形成され、上流側の主管雄ネジ411に螺合して、カップリング42が取り付けられている。このカップリング42には、エアーパッカ3のパッカ雄ネジ34aと螺合するカップ雌ネジ42aと、このカップ雌ネジ42aと主管41とを連結・連通する連通孔42bとが、同心上に形成されている。また、主管41の側面には、管内まで貫通する放出孔41aが複数形成され、パッカ雄ネジ34aをカップ雌ネジ42aに螺合した状態で、エアーパッカ3からの浄化剤Cが主管41内に流入し、浄化剤Cが放出孔41aから外部に放出されるようになっている。
【0021】
一方、主管41の下流側の主管雄ネジ411に螺合して、先端コーン43が取り付けられている。この先端コーン43は、先端部が円錐形で、後述するようにして、浄化ユニット1を土壌Gに打ち込めるようになっている。ここで、主管41は、その必要長さや取り扱い性などに応じて、一本で構成してもよいし、複数本を接続して構成してもよい。
【0022】
ケーシング5は、管状で、スクリーン4とエアーパッカ3とインナーロッド2とを管内に収容した状態で土壌Gに打ち込み可能で、かつスクリーン4とエアーパッカ3とインナーロッド2とを土壌G中に残して土壌Gから引き抜き可能な管である。具体的には、図7に示すように、内径がインナーロッド2やエアーパッカ3などの外径よりもやや大きく設定され、外径がスクリーン4の先端コーン43の外径とほぼ同径に設定されている。また、上流側の端部内面には、収容雌ネジ5aが形成され、下流側の端部外面には、収容雄ネジ5bが形成され、収容雌ネジ5aに他のケーシング5の収容雄ネジ5bを螺合することで、複数のケーシング5を接続できるようになっている。
【0023】
このようなケーシング5にスクリーン4やエアーパッカ3などを収容して土壌Gに打ち込む際には、まず、先端(先端コーン43側)のケーシング5の収容雄ネジ5bに、筒状の先端ケーシングシュを取り付ける。そして、この先端ケーシングシュが先端コーン43の肩部43aに当たるように、ケーシング5内にスクリーン4などを収容する。一方、後端(地上側)のケーシング5の収容雌ネジ5aに、図8に示すように、筒状のケーシングヘッド51を取り付ける。そして、インナーロッド2を所望数だけ接続し、その数・長さに合わせてケーシング5を複数接続した状態では、図示のように、後端のインナーロッド2がケーシングヘッド51から突出した状態となり、この状態で、バッファピース52を取り付ける。
【0024】
すなわち、このバッファピース52は管状で、その管内に、ケーシング5が挿入可能な大径部52aと、インナーロッド2のみが挿入可能な小径部52bとが形成され、大径部52aと小径部52bとの境が、段差部52cとなっている。そして、ケーシングヘッド51が段差部52cに当たった状態で、バッファピース52をケーシング5側に押圧することで、ケーシング5とともにスクリーン4とエアーパッカ3とインナーロッド2が、土壌Gに打ち込まれる。すなわち、先端のケーシング5(先端ケーシングシュ)が先端コーン43を押し、これに伴って、スクリーン4とエアーパッカ3とインナーロッド2が、土壌Gに打ち込まれる。また、バッファピース52を外して、ケーシング5を引き抜くことで、先端コーン43とスクリーン4とエアーパッカ3とインナーロッド2が土壌G中に埋設(打ち込まれる)されるものである。
【0025】
このような浄化ユニット1を備えた土壌浄化設備10は、図1に示すように、発電機11、水タンク12、調合装置13を備え、発電機11からの電力が分電盤14を介して、水中ポンプ121、調合装置13および後述する注入ポンプ14などに供給されるようになっている。また、水タンク12内の水が、水中ポンプ121を介して調合装置13に供給されて、所定の浄化剤Cが調合、生成される。一方、浄化ユニット1は、浄化を要する土壌Gの面積や作業環境・条件などに応じて複数用意し、各浄化ユニット1に対してそれぞれ注入ポンプ14とボンベ15を用意する。ここで、各ボンベ15には、コンプレッサ(図示せず)から圧縮空気Aが供給されるようになっている。
【0026】
また、各注入ポンプ14の吸引口側は、吸引ホース131を介して調合装置13に接続され、各注入ポンプ14の吐出口側は、吐出ホース132を介して浄化ユニット1に接続されるようになっている。さらに、各吸引ホース131には流量計161が取り付けられ、各浄化ユニット1に対する浄化剤Cの流量が確認、調整できるようになっている。また、各注入ポンプ14の吐出口側および各浄化ユニット1には、それぞれ圧力計162、163が取り付けられ、注入ポンプ14の吐出口側と浄化ユニット1との圧力差などを知得して、浄化剤Cの注入・浸透状態を推定、確認できるようになっている。
【0027】
次に、このような構成の浄化ユニット1や土壌浄化設備10の作用および土壌浄化方法について説明する。ここで、図1における土壌部位G1〜G2が、汚染された土壌で、この部位G1〜G2に対して浄化剤Cを浸透させるものとする。
【0028】
まず、図9に示すように、スクリーン4とエアーパッカ3とインナーロッド2を収容した状態で、上記のようにしてケーシング5を土壌Gに打ち込む(ステップS1)。このとき、インナーロッド2とケーシング5を順次接続しながら、所望の深さまで、つまりスクリーン4が土壌部位G1に達するまで、打ち込み機17で浄化ユニット1を打ち込む。続いて、上記のようにして、打ち込み機17でケーシング5のみを土壌Gから引き抜いて、スクリーン4とエアーパッカ3とインナーロッド2とを土壌Gに埋設する(ステップS2)。このような打ち込み、引き抜き(ステップS1、S2)を各浄化ユニット1に対して行う。すなわち、浄化を要する土壌Gに対して、同時に複数の個所で浄化剤Cの注入を行えるようにする。この際、浄化ユニット1の打ち込み間隔は、土壌Gの汚染状態・必要浄化度や土壌Gに対する浄化剤Cの浸透性などを考慮して、浄化を要する土壌Gの全面(水平面上の必要浄化面)に対して浄化剤Cが均等かつ確実に浸透するように、設定する。
【0029】
次に、各浄化ユニット1のエアー管接続部61にボンベ15のエアーホース151を接続し、浄化剤管接続部62に吐出ホース132を接続して、ボンベ15から圧縮空気Aを供給した後に、注入ポンプ14を起動して浄化剤Cを供給する(ステップS3)。これにより、上記のようにして、圧縮空気Aがインナーロッド2を介してエアーパッカ3に流入し、ラバー管31が膨張する。この状態で、浄化剤Cがインナーロッド2とエアーパッカ3を介してスクリーン4に流入し、スクリーン4から土壌Gに向けて浄化剤Cが放出・噴出される。
【0030】
ここで、ケーシング5を引き抜いたことで、図10に示すように、ケーシング5による打ち込み孔Gaとスクリーン4との間に隙間が生じるが、スクリーン4よりも上部の土壌G、つまりエアーパッカ3の周囲の土壌Gでは、ラバー管31の膨張によって圧力を受け、密度が高くなる。例えば、打ち込みで形成された亀裂が塞がれたり、小さくなったりする。そして、このような状態でスクリーン4から浄化剤Cが放出されるため、浄化剤Cのエアーパッカ3側への浸透が抑制され、スクリーン4の周囲に浄化剤Cがより浸透していく。ここで、浄化剤Cの注入量は、土壌Cの汚染状態や性状などに応じて設定し、各浄化ユニット1の流量計161や圧力計162、163を確認しながら注入することで、適正量を確実、適正に浸透させることができる。
【0031】
そして、所定量の浄化剤Cを注入した後に、圧縮空気Aおよび浄化剤Cの供給を停止し、エアーパッカ3を収縮させた状態で、スクリーン4とエアーパッカ3とインナーロッド2を所定の高さまで引き上げる(ステップS4)。すなわち、ステップS3でスクリーン4の周囲に浄化剤Cが浸透しているため、スクリーン4の長さ分だけ引き上げる。このとき、油圧ユニット181で駆動される昇降ジャッキ182でインナーロッド2を把持して引き上げ、引き上げたインナーロッド2を取り外す。
【0032】
続いて、ステップS3と同様にして、圧縮空気Aを供給してエアーパッカ3を膨張させた状態で、浄化剤Cをスクリーン4から土壌Gに放出・噴出させる(ステップS5)。このようにしてスクリーン4の位置変更と浄化剤Cの放出(ステップS4、S5)とを繰り返し、土壌部位G1〜G2全域に対する浄化剤Cの注入を行う。さらに、浄化を要する土壌Gの全面に対して注入が完了するまで、上記ステップS1〜S5を繰り返して行うものである。
【0033】
以上のように、この浄化ユニット1、土壌浄化設備10および土壌浄化方法によれば、スクリーン4の周囲に浄化剤Cがより浸透するため、浄化したい土壌Cの部位に対して適正、均等に浄化剤Cを浸透させることが可能となる。すなわち、スクリーン4よりも上位に浄化剤Cが浸透しないように抑制され、浄化剤Cの行き場がスクリーン4の周囲に制限されるため、スクリーン4の周囲の土壌Gに確実に浄化剤Cを浸透させることが可能となる。そして、このような注入を繰り返すことで、所望の土壌部位G1〜G2の全域において、適正かつ均等に浄化剤Cを浸透させることが可能となる。この結果、例えば粘性が高い土壌Gであっても、所望の部位に浄化剤Cを浸透させることが可能となる。
【0034】
(実施の形態2)
図11は、この実施の形態に係る浄化ユニット100を示す概略構成図であり、実施の形態1と同等とみなせる構成については、同一符号を付することで、その説明を省略する。この実施の形態では、主として、スクリーン4の下流側に先端エアーパッカ(第2の膨縮管)7が取り付けられている点で、実施の形態1と構成が異なる。
【0035】
エアーパッカ3は、図12に示すように、固定具32、33の自由端部に、第1の中継管37と第2の中継管38とが接続され、さらに、これらの中継管37、38内に第3の中継管39が装着されている。そして、第2の中継管38と第3の中継管39の隙間38a、第3の中継管39に形成された浄化剤流通孔39aおよび第1の中継管37内と、パッカ内管34内とが連通し、これらを介して浄化剤Cが流通する。また、第3の中継管39に形成されたエアー流通孔39bおよび第1の中継管37に形成されたエアー流通孔37aと、隙間3aとが連通し、これらを介して圧縮空気Aが流通するようになっている。なお、上流側の第2の中継管38には雌ネジ(パッカ雌ネジ32a)が形成され、下流側の第2の中継管38には雄ネジが形成されている。
【0036】
スクリーン4は、実施の形態1のインナーロッド2と同等の構成で、図13に示すように、外管41と内管42との間の空間が、浄化剤Cが流通する第1の流通路4aで、内管42内が、圧縮空気Aが流通する第2の流通路4bとなっている。また、外管41の側面には、浄化剤Cを外部に放出する放出孔41aが複数形成され、さらに、外管41の上流側端部には、エアーパッカ3と接続するための雌ネジが形成され、下流側端部には、先端エアーパッカ7と接続するための雄ネジが形成されている。
【0037】
先端エアーパッカ7は、図14に示すように、エアーパッカ3と同様に、圧縮空気Aを受けて膨張するラバー管71を備え、その両端部に、固定具72、73が取り付けられ、この固定具72、73によってパッカ内管74がラバー管71内に同心に配設されている。そして、圧縮空気Aが供給されない状態で、ラバー管71とパッカ内管74との間には、隙間7aが形成されるようになっている。また、上流側の固定具72の端部には、第1の中継管75と第2の中継管76とが接続され、さらに、これらの中継管75、76内に第3の中継管77が装着されている。
【0038】
そして、スクリーン4からの圧縮空気Aが、第3の中継管77に形成されたエアー流通孔77aおよび第1の中継管75に形成されたエアー流通孔75aを介して、隙間7aに流入してラバー管71が膨張するようになっている。また、スクリーン4からの浄化剤Cは、第3の中継管77の端面に当たって留まるようになっている。一方、下流側の固定具73の端部には、実施の形態1の先端コーン43と同等な先端コーン78が取り付けられている。また、第2の中継管76には、スクリーン4と接続するための雌ネジが形成されている。
【0039】
このような浄化ユニット100を使用して土壌Gに浄化剤Cを浸透させる場合、図15に示すように、実施の形態1と同様にして、浄化ユニット100の打ち込み(ステップS1)、ケーシング5の引き抜き(ステップS2)、浄化剤Cの注入(ステップS3)、スクリーン4などの引き上げ(ステップS4)、浄化剤Cの注入(ステップS5)を行う。
【0040】
そして、ステップS3、S5で浄化剤Cを注入する際には、圧縮空気Aによってエアーパッカ3と先端エアーパッカ7とが膨張し、スクリーン4の上下に位置する土壌Gに圧力が加えられた状態で、スクリーン4から浄化剤Cが放出される。このため、浄化剤Cがスクリーン4の上下方向に浸透することが抑制され、スクリーン4の周囲に浄化剤Cがより浸透していく。
【0041】
このように、この実施の形態によれば、スクリーン4の上下側への浄化剤Cの浸透・拡散が抑制され、スクリーン4の周囲にのみ浄化剤Cがより浸透する。この結果、浄化したい土壌Gの部位のみに対して、ピンポイントで浄化剤Cをより適正、均等に浸透させることが可能となる。このため、例えば、粘性が高く透水性が低い土壌Gでは、浄化ユニット100の打ち込みによって亀裂が発生しやすいが、このような土壌Gであっても、スクリーン4の上下側の亀裂への浄化剤Cの侵入が抑制され、所望の部位のみに浄化剤Cを浸透させることが可能となる。このように、この実施の形態の方が、実施の形態1に比べて、粘性が高い土壌Gなどにより適している、と言える。さらに、ピンポイントで浄化剤Cを浸透させることが可能なため、浄化剤Cの注入量を適正化(削減)し、また、浄化を要しない土壌Gへの浄化剤Cの拡散を防止することができる。
【0042】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、実施の形態1では、エアーパッカ3のスライドピース35がスライドすることで、圧縮空気Aが隙間3aに流入し、浄化剤Cがパッカ内管34に流入するようになっているが、第1の固定具32内に、圧縮空気Aを隙間3aに導く流路と、浄化剤Cをパッカ内管34に導く流路とを設けるようにしてもよい。また、実施の形態2において、エアーパッカ3とスクリーン4を介してインナーロッド2から先端エアーパッカ7に圧縮空気Aを送っているが、インナーロッド2と先端エアーパッカ7とを直接接続して、圧縮空気Aを送ってもよい。さらに、インナーロッド2内を軸方向に沿って仕切り、第1の流通路と第2の流通路とを形成してもよいし、膨張用流体として、圧縮空気A以外の窒素や水などを使用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1、100 浄化ユニット(土壌浄化装置)
2 インナーロッド(流通管)
2a 第1の流通路
2b 第2の流通路
3 エアーパッカ(膨縮管)
4 スクリーン(放出管)
5 ケーシング(収容管)
7 先端エアーパッカ(第2の膨縮管)
10 土壌浄化設備
G 土壌
C 浄化剤
A 圧縮空気(膨張用流体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染された土壌に浄化剤を浸透させるための土壌浄化装置であって、
管状で、浄化剤が流通する第1の流通路と膨張用流体が流通する第2の流通路とが、管内に設けられた流通管と、
前記流通管の下流側に設けられ、前記流通管の第2の流通路から流入した膨張用流体によって膨張する膨縮管と、
前記膨縮管の下流側に設けられ、前記流通管の第1の流通路から流入した浄化剤を外部に放出する放出管と、
管状で、前記放出管と膨縮管と流通管とを管内に収容した状態で土壌に打ち込み可能で、かつ前記放出管と膨縮管と流通管とを土壌中に残して土壌から引き抜き可能な収容管と、
を備えることを特徴とする土壌浄化装置。
【請求項2】
前記放出管の下流側に設けられ、前記流通管の第2の流通路から流入した膨張用流体によって膨張する第2の膨縮管を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の土壌浄化装置。
【請求項3】
請求項1に記載の土壌浄化装置を使用した土壌浄化方法であって、
前記放出管と膨縮管と流通管とを前記収容管に収容した状態で、前記放出管側を土壌に向けて前記収容管を土壌に打ち込み、前記収容管を土壌から引き抜いて、前記放出管と膨縮管と流通管とを土壌に埋設し、
前記流通管の第2の流通路に膨張用流体を供給して前記膨縮管を膨張させた状態で、前記流通管の第1の流通路に浄化剤を供給して、前記放出管から土壌に前記浄化剤を放出させる、
ことを特徴とする土壌浄化方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−125729(P2012−125729A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281499(P2010−281499)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(591066524)日本建設機械商事株式会社 (3)
【出願人】(507291992)YAMAテック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】