説明

土壌特性測定装置

【解決手段】 畝2を跨って配置される門型の車両フレーム3と、この車両フレームの両脚部にそれぞれ設けられ、上記畝の両側の畝間4を走行する走行手段5と、上記車両フレームに設けられ、上記各畝間をそれぞれ掘削しながら進行する2つの掘削体12とを備えている。そして少なくとも一方の掘削体に土壌を測定する測定手段22を設けてある。
【効果】 畝を跨って配置される門型の車両フレームに、各畝間をそれぞれ掘削しながら進行する2つの掘削体を設けているので、両掘削体から車両フレームに加わる左右の掘削抵抗を可及的に等しくすることができ、それによって車両の運転を容易なものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は土壌特性測定装置に関し、より詳しくは、車両フレームによって土壌を掘削しながら進行する掘削体を備え、この掘削体に土壌を測定する測定手段を設けた土壌特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行手段によって走行される車両フレームと、この車両フレームの進行方向後部に設けられ、車両フレームの前進によって牽引されて、土壌を掘削しながら進行する掘削体とを備え、この掘削体に土壌を測定する測定手段を設けた土壌特性測定装置は公知である(特許文献1)。
上記掘削体は、車両フレームの前進方向前方側に設けられて土壌を切削する切削刃と、この切削刃の後方に設けられた上記測定手段の収納部とを備えている。そして上記切削刃は、平面状で前方側が下方となるように斜めに配置されており、掘削体が前進する際にその掘削刃に土圧を作用させるとともに、その土圧の作用面に上記測定手段の検出部を設けていた。
また従来、茶園を管理する作業車として、畝を跨って配置される門型の車両フレームと、この車両フレームの両脚部にそれぞれ設けられ、上記畝の両側の畝間を走行する走行手段とを備えたものが知られている。
この種の作業車においては、上記車両フレームに設けられた作業ユニットによって摘栽、剪枝などの作業を行ったり(特許文献2)、耕部によって畝を耕したり(特許文献3)、土中吹き込み装置によって畝に液体肥料と空気とを注入すること(特許文献4)が行われている。
【特許文献1】特開2003−139765号公報
【特許文献2】特開2007−330172号公報
【特許文献3】特開2005−110532号公報
【特許文献4】特許第2719595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示された土壌特性測定装置を用いて茶園の畝の土壌を測定するために、車両フレームを畝を跨って配置される門型の車両フレームとするとともに、この車両フレームの両脚部のそれぞれに上記畝の両側の畝間を走行する走行手段を設け、さらにこの車両フレームの一方に土壌を測定する測定手段を備えた掘削体を設けたが、かかる構成では車両フレームの一方のみに掘削抵抗が作用するため、車両の前進力がアンバランスとなり、運転が困難になるという欠点があった。
また、上記特許文献1に開示された土壌特性測定装置においては、上記切削刃は前方側が下方となるように斜めに配置されていたので、土壌が乾燥していたり土塊が多い場合には、掘削体が前進する際に土壌を地表に押し上げるようになり、それによって土圧の作用面に設けていた検出部に充分な土圧が作用せず、測定が不安定になっていた。また水分の多い土壌では、検出部を設けた作用面に土壌が固着して堆積すると、測定不能となっていた。
さらに、掘削体が進行すると畝間が掘り起こされて掘削溝が形成されるようになり、この掘削溝を埋め戻しても掘削体による痕跡を完全に消すことはできない。すると、次回同じ掘削溝を掘削走行して測定すると、土壌の密度状態や含水率、電気伝導度は掘削溝のない周辺とは異なってしまい、適正な測定値を得られないことがある。しかるに、上述した従来の土壌特性測定装置においては、検出部が切削刃の進行方向前面側に配置されていたので、掘削体の横幅を小さくすることができず、その結果、掘削体を畝間の横方向の異なる位置に移動させて測定を行わせることが困難となるので、前回と同じ箇所を測定せざるを得なくなるという欠点がある。
上述した事情に鑑み、本発明は、茶園などの畝の土壌を測定する際に、車両の前進力がアンバランスとなることを可及的に防止することができる土壌測定装置を提供するものであり、さらに、掘削体の横幅を狭くすることが可能で、かつ安定した測定が可能な土壌測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち請求項1の発明は、畝を跨って配置される門型の車両フレームと、この車両フレームの両脚部にそれぞれ設けられ、上記畝の両側の畝間を走行する走行手段と、上記車両フレームに設けられ、上記各畝間をそれぞれ掘削しながら進行する2つの掘削体とを備え、少なくとも一方の掘削体に土壌を測定する測定手段を設けたことを特徴とする土壌特性測定装置を提供するものである。
また請求項4の発明は、畝を跨って配置される門型の車両フレームと、この車両フレームの両脚部にそれぞれ設けられ、上記畝の両側の畝間を走行する走行手段と、この走行手段の進行方向前方に配置され上記車両フレームに設けられて、少なくともいずれか一方の畝間を掘削しながらその土壌を測定する測定手段とを備えたことを特徴とする土壌特性測定装置を提供するものである。
また請求項5の発明は、畝を跨って配置される門型の車両フレームと、この車両フレームの両脚部にそれぞれ設けられ、上記畝の両側の畝間を走行する走行手段と、上記車両フレームに設けられ、上記畝間を回転しながら進行する2枚の電極輪とを備え、2枚の電極輸により土壌の電気伝導度を測定することを特徴とする土壌特性測定装置を提供するものである。
また請求項6の発明は、畝を跨って配置される門型の車両フレームと、この車両フレームの両脚部にそれぞれ設けられ、上記畝の両側の畝間を走行する走行手段と、上記車両フレームに設けられ、上記各畝間を回転しながら進行する2枚の電極輪とを備え、4枚の電極輪により土壌の電気伝導度を測定することを特徴とする土壌特性測定装置を提供するものである。
さらに請求項7の発明は、走行手段によって走行される車両フレームと、この車両フレームに設けられ土壌を掘削しながら進行する掘削体とを備え、この掘削体に土壌を測定する測定手段を設けた土壌特性測定装置において、
上記掘削体は、車両フレームの前進方向前方側に設けられ上下方向に伸びて土壌を切削する切削刃と、この切削刃の後方に設けられた上記測定手段の収納部とを備え、上記収納部の前進方向両側の側壁は、前方側が狭く後方側が広くなっていて、掘削体が前進することにより各側壁に土圧が作用するようになっており、その側壁に上記測定手段の検出部を設けたことを特徴とする土壌特性測定装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明によれば、畝を跨って配置される門型の車両フレームに、各畝間をそれぞれ掘削しながら進行する2つの掘削体を設け、かつ少なくとも一方の掘削体に土壌を測定する測定手段を設けたものであるから、両掘削体から車両フレームに加わる左右の掘削抵抗を可及的に等しくすることができ、それによって車両の運転を容易なものとすることができる。
また請求項4の発明は、畝を跨って配置される門型の車両フレームに、走行手段の進行方向前方に配置した測定手段を設けたものであるから、走行手段の進行方向後方に測定手段を配置した場合に比較して、車両の運転を容易なものとすることができる。そして、測定手段の掘削走行に続いて走行手段が走行するので、測定手段が掘削した掘削溝を走行手段によって埋め戻すことが可能となり、したがって掘削溝の埋め戻し手段を省略することが可能となる。
また請求項5の発明は、畝を跨って配置される門型の車両フレームに、上記畝間を回転しながら進行する2枚の電極輪を設け、この2枚の電極輸により土壌の電気伝導度を測定するようにしたものであるから、掘削体に比較して車両フレームに加わる抵抗を低減することができ、それによって車両の運転を容易なものとすることができる。そして上記電極輪は畝間を掘削するものではないので、掘削することによる土壌状態の変化を生じさせることがない。
また請求項6の発明は、畝を跨って配置される門型の車両フレームに、それぞれの畝間を回転しながら進行する2枚の電極輪を備え、4枚の電極輪により土壌の電気伝導度を測定するようにしたものであるから、掘削体に比較して車両フレームに加わる抵抗を低減することができるとともに、車両フレームに加わる左右の抵抗を可及的に等しくすることができ、それによって車両の運転を容易なものとすることができる。そして上記電極輪は畝間を掘削するものではないので、掘削することによる土壌状態の変化を生じさせることがない。
さらに請求項7の発明においては、走行手段によって走行される車両フレームに設けた掘削体は、車両フレームの前進方向前方側に設けられ上下方向に伸びて土壌を切削する切削刃と、この切削刃の後方に設けられた上記測定手段の収納部とを備え、上記収納部の前進方向両側の側壁は、前方側が狭く後方側が広くなっているため、該掘削体は土壌を横方向に掻き分けながら進行するようになる。
このため、土壌が地表に押し上げられることがなく、土壌が乾燥していたり土塊が多くても側壁がこれを砕きながら前進するので、その側壁に設けた検出部に充分な土圧を作用させることができ、安定した測定を行わせることができる。さらに水分の多い土壌でも、検出部を設けた側壁は常に土壌を横方向に掻き分けながら進行するようになるので、その側壁に土壌が固着して堆積することを防止することができ、やはり安定した測定を行わせることができる。
さらに、検出部を側壁に設けているので、従来に比較して掘削体の横幅を狭くすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下本発明を図示実施例に基づいて説明すると、図1、図2において、土壌特性測定装置は、茶樹1が植えられた畝2を跨って配置される門型の車両フレーム3と、この車両フレーム3の両脚部3aにそれぞれ設けられ、上記畝2の両側の畝間4を走行する走行手段5とを備えている。本実施例では、図2に示すように上記走行手段5はキャタピラを用いたものとなっているが、これに限定されるものではなく、タイヤを備えた走行手段であってもよい。
上記車両フレーム3にはGPS手段6を設けてあり、このGPS手段6によって車両フレーム3の位置を計測することができるようにしてある。
【0007】
上記車両フレーム3には、その前進方向に対する後部の両側位置に昇降機構11を設けてあり、各昇降機構11の下端部に、各畝間4をそれぞれ掘削しながら進行する掘削体12を設けてある。上記各昇降機構11は、それぞれ平行クランク機構11a(図2)を備えており、各平行クランク機構11aの下端部11bに上記掘削体12をそれぞれ取り付けてある。
また図示しないが、各昇降機構11は、平行クランク機構11aを介して掘削体12を上下動させるための駆動手段を備えており、各掘削体12はそれぞれ平行クランク機構11aにより鉛直状態を保って昇降されるようになっている。したがって本実施例では、各掘削体12を鉛直状態を保って昇降させることによってその深さを調整できるので、従来のように揺動によって掘削体の深さを調整する場合に比較して、車両フレーム3に加わる掘削抵抗の変動を小さくすることができる。
さらに上記各昇降機構11は、2つの掘削体12を車両フレーム3の進行方向に対して横方向に位置調整する位置調整手段13を介して車両フレーム3に取り付けてあり、それによって各掘削体12を各畝間4に対してそれぞれ最適な横方向位置となるように調整することができる。
【0008】
上記車両フレーム3の各脚部3aには、それぞれ走行手段5と掘削体12との間に円盤状のコールタ14(図2)を設けてあり、各コールタ14によって土壌表面を切削することにより、各掘削体12の土中における前進が容易となるようにしてある。
また、各昇降機構11には、掘削体12の後方位置に埋め戻し手段15を設けてあり、各埋め戻し手段15によって、上記掘削体12によって掘削された掘削溝やトンネルを埋め戻すことができるようにしてある。
上記埋め戻し手段15としては、例えば図3に示すように円筒状のローラを用いることができ、この場合にはローラの自重により、又は自重と図示しないばね機構とでローラを地面に押し付けることにより、掘削溝やトンネルを埋め戻すことができる。或いは他の埋め戻し手段15として、図4に示すように進行方向前方側を広げた2枚の円盤プラウであってもよい。
【0009】
上記掘削体12のそれぞれは、図5、図6に示すように、車両フレーム3の前進方向前方側に設けられ、上下方向に伸びて土壌を切削する切削刃21と、この切削刃21の後方に設けられた測定手段22の収納部23とを備えている。
上記収納部23は、進行方向両側となる側壁23aと、両側壁23aの上端部を連結する天面壁23bとを備えており、両側壁23aは前進方向前方側が狭く後方側が広くなっていて、掘削体12が前進することにより各側壁23aに土圧が作用するようになっている。
上記天面壁23bは平行クランク機構11aの下端部11bに連結されており、この下端部11bは進行方向前面が断面三角形状に形成されて、地面を切削する切削刃となっている。
【0010】
上記測定手段22は種々の測定を行う複数の検出部24〜26を備えており、土壌の電気伝導度を測定する土壌電気伝導度検出部24は一方の側壁23aに設けられている。また、側壁23aに作用する土圧を検出する土圧検出部25は、上記土壌電気伝導度検出部24の後方位置で側壁23aに設けてあり、土壌の水分を測定する土壌水分検出部26は、他方の側壁23aに設けてある。
その他、必要に応じて、土壌の光学特性を測定する土壌光学特性測定部を設けたり、特許文献1に開示されている種々の測定を行う測定部を設けてもよいことは勿論である。
【0011】
さらに図2に示すように、上記車両フレーム3の後部には、それぞれの畝間4に肥料を施す可変施肥装置31を設けてある。
各可変施肥手段31は、肥料を貯溜する肥料容器32と、施肥量を調整する施肥量制御手段33と、施肥パイプ34とを備えており、肥料容器32内に貯溜された肥料は、施肥量制御手段33によって施肥量が調整されながら、施肥パイプ34から上記埋め戻し手段15によって埋め戻された畝間4の表面に散布されるようになっている。
上記施肥量制御手段33は、上記掘削体12に設けた測定手段22によって測定された土壌特性の測定結果に応じて、一例としては測定された電気伝導度から求められた土壌中の窒素量に応じて、その測定後直ちに必要な施肥量を調整しながら散布することができるようになっている。
但し、これに限定されるものではなく、測定手段22によって今回の土壌特性を測定しながら、前回の測定結果に基づいて施肥量を調整するようにしてもよい。或いは、上記可変施肥装置31を別の車両に搭載して、測定用の車両に後続させて測定用の車両から無線により施肥量を指示することにより、測定しながらその測定結果に応じた最適な施肥量を散布できるようにしてもよい。
【0012】
以上の構成において、上記畝間4の土壌を測定する際には、先ず位置調整手段13により各掘削体12を各畝間4に対してそれぞれ最適な横方向位置となるように調整する。次に、各昇降機構11により平行クランク機構11aを介して各掘削体12を地表面より5〜20cmの深さとなる高さ位置まで降下させる。
この際、本実施例では各掘削体12を降下させる位置に予め穴を掘ってある。しかしながら、その必要性をなくすために、従来のように揺動によって掘削体12の深さを調整できるようにしてもよい。より具体的には、平行クランク機構11aの下端部11bと掘削体12との間に、平行クランク機構11aの下端部11bに対して掘削体12を鉛直面で回転させる回転駆動手段を設け、車両の前進に伴って掘削体12が徐々に土中となるように揺動させるようにしてもよい。
この場合であっても、掘削体12が土中となったら、平行クランク機構11aによって掘削体12を一定の水平状態に保ったまま昇降させてその深さを調整することができるので、掘削体12を揺動させることによって土中における深さを調整する場合に比較して、車両フレーム3に加わる掘削抵抗の変動を小さくすることができる。また、土壌に対する掘削体12の向きを常に一定に保つことができるので、より安定した土壌計測を行うことができる。
【0013】
掘削体12を土中に位置させたら、作業者は走行手段5により車両フレーム3を前進させ、それにより各畝間4を各掘削体12によってそれぞれ掘削させながら、各掘削体12を前進させる。各掘削体12が前進する際には、各掘削体12の前進方向前方側に設けられた切削刃21が土壌を上下方向に切削するようになる。
このため上記切削刃21は、従来の前方側が下方となるように斜めに配置された切削刃のように土壌を地表に押し上げるのではなく、土壌を横方向に掻き分けながら進行するようになるので、乾燥した土壌や土塊が地表に押し上げられて測定が不安定になることを防止することができる。
また上記各掘削体12は、畝2を跨って配置される門型の車両フレーム3の両側に設けてあるので、一回の走行で2つの畝間4の土壌を同時に測定することができ、したがって効率的に畝間4の土壌を測定することができる。そして、両掘削体12から車両フレーム3に加わる左右の掘削抵抗を可及的に等しくすることができるので、車両の運転を容易なものとすることができる。
【0014】
さらに各掘削体12が前進される際には、切削刃21の後方の収納部23は、前方側が狭く後方側が広くなっている側壁23aを備えているので、掘削体12が前進することにより各側壁23aに土圧が作用するようになる。そしてその側壁23aに上記測定手段22の各検出部24〜26を設けているので、各検出部24〜26に対する必要な土圧を確保しながら、確実な測定を行うことができる。
このとき、土塊が多くても側壁23aがこれを砕きながら前進するので、その側壁23aに設けた検出部24〜26に充分な土圧を作用させることができ、安定した測定を行わせることができる。また水分の多い土壌でも、検出部24〜26を設けた側壁23aは常に土壌を横方向に掻き分けながら進行するようになるので、その側壁23aに土壌が固着して堆積することを防止することができ、この点でも安定した測定を行わせることができる。
さらに、上記車両フレーム3にGPS手段6を設けてあるので、測定位置を記録しながら、各測定位置における上記各検出部24〜26による測定結果を記録することができる。したがってこれにより、土壌溶液電気伝導度ECや、硝酸態窒素、無機態窒素、水分などの土壌特性を算出でき、またGPS手段6による位置情報とから、茶園の土壌特性の分布マップや平均値を求めることができる。
【0015】
上記各掘削体12が前進されると、各掘削体12によって掘削溝やトンネルが掘削されるようになるが、各掘削体12の進行方向後方には埋め戻し手段15を設けているので、それによって掘削溝やトンネルを埋め戻すことができる。
このとき、上述したように各掘削体12の横幅を従来に比較して狭くすることができるので、畝間4に形成される掘削溝やトンネルの幅も狭くすることができる。その結果、狭い畝間4に対して複数本の掘削溝やトンネルを形成することが可能となり、上記位置調整手段13によって各掘削体12の横方向位置を調整することにより、前回形成された掘削溝やトンネルを避けた位置に、各掘削体12を位置させて測定を行うことができる。これにより、前回と同じ掘削溝を掘削走行して測定した場合に、適正な測定値を得られないという問題を改善することができる。
【0016】
さらに、上記測定手段22によって測定された結果は可変施肥装置31の施肥量制御手段33に入力され、この施肥量制御手段33によって最適な量の肥料が上記埋め戻し手段15によって埋め戻された畝間4の表面に散布される。そして畝間4の表面に散布された肥料は、やがて畝2の茶樹1に供給されるようになる。
なお、掘削体12による掘削溝を埋め戻す前にその内部に肥料を施すと、肥料はその掘削溝内に長く留まって茶樹1への供給が不足がちとなるため、肥料を埋め戻し手段15によって埋め戻された畝間4の表面に散布することが望ましい。
【0017】
ところで、上記実施例では左右の掘削体12が備える測定手段22の構成を同一に構成しているが、これに限定されるわけではない。例えば、一方の測定手段22と他方の測定手段22とで検出部の種類を異ならせてもよく、このように検出部を分散して一方の測定手段22と他方の測定手段22とに振り分ければ、それぞれの測定手段22を小型にしてその掘削抵抗をより小さくすることができる。
また、一方の掘削体12及び測定手段22を省略して、そのコストの低減を図ってもよい。但し、一方の掘削体12を省略すると、車両フレーム3に加わる左右の掘削抵抗がアンバランスとなるので、測定手段22を備えないダミーの掘削体12を設けて、車両フレーム3に加わる左右の掘削抵抗が実質的に等しくなるように維持することが好ましい。この場合には、左右の掘削抵抗がアンバランスとなることを防止しながら、測定手段22のコストを半分にすることができる。
さらに、土壌を上下方向に切削する切削刃21を有する掘削体12は、水平の切削刃を前方側が下方となるように斜めに配置した従来装置に比較して、土塊や水分が多くても安定した測定を行わせることができるので、これを上記特許文献1に記載されているような1つの掘削体を有する土壌特性測定装置の掘削体として利用することができる。
【0018】
次に、図7は本発明の第2実施例を示したもので、本実施例は上記掘削体12を車両の前方に設けたものである。
すなわち、畝を跨って配置される門型の車両フレーム3の前進方向前方には、上記実施例と同様に位置調整手段13を介してその左右に昇降機構11を設けてある。そして各昇降機構11の平行クランク機構11aの下端部11bにそれぞれ掘削体12を設けてある。そして本実施例では、コールタ14は平行クランク機構11aに設けてあり、他方、掘削体12による掘削溝やトンネルは走行手段5によって埋め戻すことができるので、上記埋め戻し手段15は省略してある。
また本実施例では、可変施肥装置31を省略してあるが、必要に応じて可変施肥装置31を設けてもよいことは勿論であり、その他の構成は上記第1実施例と同様に構成してある。
本実施例においては、各掘削体12は走行手段5により、牽引ではなく押圧されながら前進されるようになり、それによって上記実施例と同様に土壌の特性を測定することができるので、上記実施例と同等の作用効果を得ることができる。
なお、本実施例においては車両フレーム3の左右両側に掘削体12を設けているが、いずれか一方の掘削体12を省略してもよい。すなわち、上記第1実施例のように掘削体12を牽引する場合には、いずれか一方の掘削体12を省略して掘削抵抗がアンバランスとなると、その影響により車両の運転がしづらくなるが、本実施例のように掘削体12を押圧する場合には掘削抵抗がアンバランスとなっても、その影響が少ないからである。
【0019】
図8、図9は本発明の第3実施例を示したもので、本実施例では上記各掘削体12の代わりに、それぞれ2枚の電極輪41a、41b、42a、42bを設け、各電極輸により土壌の電気伝導度を測定することができるようにしたものである。
すなわち本実施例では、第1組の2枚の電極輪41a、41bは一方の畝間4を回転しながら進行するようになっており、第2組の2枚の電極輪42a、42bは他方の畝間4を回転しながら進行するようになっている。
各組の電極輪41a、41b、42a、42bはそれぞれ車両フレーム3に設けられており、図示しないばね機構などにより下方に付勢されて、各電極輪41a、41b、42a、42bの下端部が所要量だけ土中にもぐった状態で走行されるようになっている。
【0020】
本実施例では、外側となる電極輪41aと42bとで両畝間4の間に電流を流し、また内側となる電極輪41bと42aとで外側の電極輪41aと42bとの間の電圧を測定することにより、茶樹1が植えられた畝2の箇所を対象に土壌の電気伝導度を測定している。
このように、本実施例では電極輪41a、41b、42a、42bによって土壌の電気伝導度を測定しているので、掘削体12を用いる場合に比較して車両フレーム3に加わる電極輪からの抵抗を遥かに低減することができ、したがって各組の電極輪によって生じる抵抗のアンバランスさも小さくすることができる。これにより、車両の運転も容易なものとすることができる。また上記電極輪は畝間を掘削するものではないので、掘削することによる土壌状態の変化を生じさせることがない。
【0021】
なお、上記実施例では4枚の電極輪41a、41b、42a、42bによる4端子法によって土壌の電気伝導度を測定しているが、各2枚の電極輪41a、41bと、電極輪42a、42bとの間にそれぞれ電流を流して、2端子法で土壌の電気伝導度を測定してもよい。或いは、一方の畝間4のみに電極輪41a、41bを設けるようにし、或いは各畝間のそれぞれに1枚の電極輪41aと電極輪42bとを設けて、それらによって2端子法で土壌の電気伝導度を測定してもよい。
そして2端子法の場合、元々電極輪からの抵抗が小さいので、仮に一方の畝間側の電極輪を省略しても、車両の運転が困難となるような抵抗のアンバランスさが生じることはなく、また電極輪は畝間を掘削するものではないので、掘削することによる土壌状態の変化を生じさせることがない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施例を示す正面図
【図2】図1の側面図
【図3】埋め戻し手段15の平面図
【図4】他の埋め戻し手段15を示す平面図
【図5】掘削体12を拡大して示す側面図
【図6】図5の平面図
【図7】本発明の第2実施例を示す側面図
【図8】本発明の第3実施例を示す正面図
【図9】図8の要部の側面図
【符号の説明】
【0023】
2 畝 3 車両フレーム
3a 脚部 4 畝間
5 走行手段 11 昇降機構
12 掘削体 13 位置調整手段
15 埋め戻し手段 21 切削刃
22 測定手段 23 収納部
23a 側壁 24〜26 検出部
41a、41b、42a、42b 電極輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畝を跨って配置される門型の車両フレームと、この車両フレームの両脚部にそれぞれ設けられ、上記畝の両側の畝間を走行する走行手段と、上記車両フレームに設けられ、上記各畝間をそれぞれ掘削しながら進行する2つの掘削体とを備え、少なくとも一方の掘削体に土壌を測定する測定手段を設けたことを特徴とする土壌特性測定装置。
【請求項2】
上記2つの掘削体が車両フレームの進行方向に対して横方向に位置調整可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の土壌特性測定装置。
【請求項3】
上記2つの掘削体が走行手段の進行方向後方に配置され、これら2つの掘削体によって掘削された掘削溝を埋め戻す埋め戻し手段を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の土壌特性測定装置。
【請求項4】
畝を跨って配置される門型の車両フレームと、この車両フレームの両脚部にそれぞれ設けられ、上記畝の両側の畝間を走行する走行手段と、この走行手段の進行方向前方に配置され上記車両フレームに設けられて、少なくともいずれか一方の畝間を掘削しながらその土壌を測定する測定手段とを備えたことを特徴とする土壌特性測定装置。
【請求項5】
畝を跨って配置される門型の車両フレームと、この車両フレームの両脚部にそれぞれ設けられ、上記畝の両側の畝間を走行する走行手段と、上記車両フレームに設けられ、上記畝間を回転しながら進行する2枚の電極輪とを備え、2枚の電極輸により土壌の電気伝導度を測定することを特徴とする土壌特性測定装置。
【請求項6】
畝を跨って配置される門型の車両フレームと、この車両フレームの両脚部にそれぞれ設けられ、上記畝の両側の畝間を走行する走行手段と、上記車両フレームに設けられ、上記各畝間を回転しながら進行する2枚の電極輪とを備え、4枚の電極輪により土壌の電気伝導度を測定することを特徴とする土壌特性測定装置。
【請求項7】
走行手段によって走行される車両フレームと、この車両フレームに設けられ土壌を掘削しながら進行する掘削体とを備え、この掘削体に土壌を測定する測定手段を設けた土壌特性測定装置において、
上記掘削体は、車両フレームの前進方向前方側に設けられ上下方向に伸びて土壌を切削する切削刃と、この切削刃の後方に設けられた上記測定手段の収納部とを備え、上記収納部の前進方向両側の側壁は、前方側が狭く後方側が広くなっていて、掘削体が前進することにより各側壁に土圧が作用するようになっており、その側壁に上記測定手段の検出部を設けたことを特徴とする土壌特性測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−270975(P2009−270975A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122596(P2008−122596)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(390008305)エスアイ精工株式会社 (39)
【Fターム(参考)】