説明

土壌用可逆性水分インジケーター

【課題】 使用目的に合わせた吸水力を有する吸水材を選択することで、植物を栽培する土壌や昆虫を飼育する土壌中の水分変化を的確に示すことができると共に、水分検知によって視認される色彩を自由に選択できる土壌用可逆性水分インジケーターを提供する。
【解決手段】 少なくとも一部が土壌中に挿入される吸水材2と、該吸水材2と接触する位置に積層される多孔質層3とからなり、前記多孔質層3が、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする構成である。或いは、少なくとも一部が土壌中に挿入される吸水材2と、該吸水材と接触する位置に積層される透水層5と、該透水層5に積層される多孔質層3とからなり、前記多孔質層が、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は土壌用可逆性水分インジケーターに関する。更に詳細には、乾燥状態と吸液状態とで異なる様相を示す土壌用可逆性水分インジケーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉢植えや苗床の水やり時期を視覚的に表すため、水と接触することで化学的に変色する塩化コバルト等の感水変色材を用いた水分インジケーターが開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平10−267852号公報
【特許文献2】実用新案第3036850号
【0003】
しかしながら、前記感水変色材は水との反応性に優れ、微量の水分を検知すると瞬時に変色するものであって、土壌から蒸発する水蒸気や室内の湿度変化によっても容易に変色してしまうため、植物を栽培する土壌中の水分変化を的確に示すことができず、吸水材の材質や密度によりインジケーターの精度を高めることができなかった。
また、特定の色変化しかできないことから、栽培する植物や花の色によって変色部分の色彩を選択することができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、使用目的に合わせた吸水力を有する吸水材を選択することで、植物を栽培する土壌や昆虫を飼育する土壌中の水分変化を的確に示すことができると共に、水分検知によって視認される色彩を自由に選択できる土壌用可逆性水分インジケーターを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも一部が土壌中に挿入される吸水材と、該吸水材と接触する位置に積層される多孔質層とからなる土壌用可逆性水分インジケーターであって、前記多孔質層が、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする構成であることを要件とする。
更に、少なくとも一部が土壌中に挿入される吸水材と、該吸水材と接触する位置に積層される透水層と、該透水層に積層される多孔質層とからなる土壌用可逆性水分インジケーターであって、前記多孔質層が、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする構成であることを要件とする。更に、前記透水層が、多孔質紙、布帛、多孔性フィルムのいずれかから選ばれることを要件とする。
更には、前記多孔質層の下層に着色層を設けてなること、前記多孔質層が、下方より土壌中に挿入される吸水材の上部又は中部に設けられることを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、植物栽培や昆虫飼育をする土壌中の水分変化を的確に示すことができ、水分を検知した際に視認される色彩や像を限定することなく形成できる、実用性及び装飾性の高い土壌用可逆性水分インジケーターを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の土壌用可逆性水分インジケーターは、少なくとも吸水材と、該吸水材と接触する位置に設けられる多孔質層とから構成され、土壌から蒸発する水蒸気や湿度変化に左右されることがないものであって、下方を土壌中に挿入されてなる吸水材を経由して土壌中の水が上方に引き上げられた際、この水で多孔質層が瞬時に透明化することによって土壌中の水分量を視覚的に確認できるものである。
【0008】
前記吸水材としては、下方から上方へ液体を吸引可能であるもの、具体的に、濾紙や和紙やクッション紙等の多孔性(繊維収束性)紙類、繊維束を樹脂加工又は熱溶着加工した繊維加工体(繊維収束体)、フェルト、布帛、不織布、連続気孔を有するプラスチック多孔体等を挙げることができる。
前記吸水材は、着色されたものを用いることもでき、更に、多孔質層が形成されていない部分(即ち、非吸液状態で視認される部分)に、絵、文字、模様、目盛等の像を形成することもできる。これらは、装飾性に優れたものとなり、興趣に富んだインジケーターとなる。
【0009】
前記吸水材と直接接触する位置、又は、透水層上に積層される多孔質層は、低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた層である。
前記低屈折率顔料としては、珪酸及びその塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4〜1.8の範囲にあり、液状組成物を吸液すると良好な透明性を示すものである。
尚、前記珪酸の塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸カリウム、珪酸マグネシウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
前記低屈折率顔料の粒径は特に限定されるものではないが、0.03〜10.0μmのものが好適に用いられる。
又、前記低屈折率顔料は二種以上を併用することもできる。
尚、好適に用いられる低屈折率顔料としては珪酸が挙げられる。
前記珪酸は、乾式法によるものであってもよいが、湿式法により製造される珪酸(以下、湿式法珪酸と称する)が特に効果的であり、実用性を満たす。
この点を以下に説明する。
珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるもの(以下、乾式法珪酸と称する)と、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるものとに大別されるが、本発明の意図する多孔質層として機能させるためには、湿式法珪酸が最適である。
これは、乾式法珪酸と湿式法珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法珪酸は、珪酸が密に結合した三次元構造を形成するのに対して、湿式法珪酸は、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した、所謂、二次元構造部分を有している。
従って、前記乾式法珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法珪酸を多孔質層に適用した場合、乾式法珪酸を用いる系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、よって、常態での隠蔽性が大きくなるものと推察される。
又、前記本発明の多孔質層においては、水を吸液させるものであるから、湿式法珪酸は乾式法珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く、親水性の度合いが大であり、好適に用いられる。
尚、前記多孔質層の常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を調整するために、湿式法珪酸と共に、他の汎用の低屈折率顔料を併用することもできる。
【0010】
前記多孔質層中の湿式法珪酸は、粒子径、比表面積、吸油量等の性状に左右されるが、常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を共に満足するためには、塗布量が1g/m2 〜30g/m2 であることが好ましく、より好ましくは、5g/m2 〜20g/m2 である。1g/m2 未満では、常態で十分な隠蔽性を得ることが困難であり、又、30g/m2 を越えると吸液時に十分な透明性を得ることが困難である。
前記珪酸の粒径は特に限定されるものではないが、0.03〜10.0μmのものが好適に用いられる。
前記珪酸はバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に分散され、基材に塗布した後、揮発分を乾燥させて多孔質層を形成する。
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
前記珪酸とこれらのバインダー樹脂の混合比率は、珪酸の種類及び性状に左右されるが、好ましくは、珪酸1重量部に対してバインダー樹脂固形分0.5〜2重量部であり、より好ましくは、0.8〜1.5重量部である。珪酸1重量部に対してバインダー樹脂固形分が0.5重量部未満の場合には、前記多孔質層の実用的な皮膜強度を得ることが困難であり、2重量部を越える場合には、前記多孔質層内部への水の浸透性が悪くなる。
前記多孔質層は、従来より公知の一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、耐擦過強度を高めるために、前記のバインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂又はウレタン系樹脂を用いると効果的である。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、2種以上を併用することもできる。又、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解乃至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
尚、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、本発明においては水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、支持体の種類や皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質層のバインダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分重量比率で30%以上含有させることが好ましい。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
【0011】
なお、前記多孔質層中には、従来より公知の二酸化チタン被覆雲母、酸化鉄−二酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、グアニン、絹雲母、塩基性炭酸鉛、酸性砒酸鉛、オキシ塩化ビスマス等の金属光沢顔料を添加したり、一般染料や顔料、蛍光染料や蛍光顔料を混在させて色変化を多様化させることができる。
又、温度変化により可逆的に色変化する、従来より公知の可逆熱変色顔料を混在させて、環境温度や付着させる水温により色変化させることができる。
更には、前記多孔質層の上層及び/又は近傍には非変色層を配設して様相変化を更に多様化させることができる。
【0012】
前記多孔質層は、従来より公知の手段、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により適宜、吸水材や着色層に形成できる。
【0013】
前記多孔質層は、ベタ印刷状のものに限らず、文字、記号、図柄模様等の像であってもよい。特に、図柄模様を密集配置して形成することで、非吸液状態においても多孔質層の非積層箇所の色調が視認でき、デザイン性が向上する。
密集配置される図柄模様としては、円、楕円、多角形、星形、ハート形等の図柄が密集したドット状、市松模様、亀甲模様、鎖模様、幾何学模様、格子模様、網目模様、編み目模様、キャンバス調模様、デニム調模様等又は、他の像や図柄模様を独立した状態で、又は、部分的に接する状態で形成できる。
【0014】
また、液体透過性を有する部材からなる透水層を、接着や圧着等の手段により吸水材に積層させることもできる。前記透水層を用いる場合、透水層上に多孔質層や着色層を形成してなる積層体を製造した後、該積層体を吸水材に積層させることが可能であるので、グラビア印刷やスクリーン印刷等の汎用な手法を用いて明瞭な着色層を容易に形成でき、鮮やかな色変化を視覚できるものとなる。また、着色層として像を形成する場合、微細なデザインであっても印刷により形成することができるので、色彩豊かで繊細な像を現出させることが可能となる。
前記透水層の適用は、特に吸水材が立体であり、且つ、表面が曲面を有する場合に有用である。
前記透水層には、部材を介して液体を通過させることができる液体透過性を有する部材が用いられ、例えば、前記吸水材として例示した多孔質性材料や、樹脂フィルムに複数の微細な貫通孔若しくは連通孔を設けてなる多孔性フィルム等が例示できる。
特に、多孔質紙、布帛、多孔性フィルムは、加工性、印刷性能に優れていることより好適に用いられる。
前記透水層を積層する際に接着剤を用いる場合、透水性を有する接着剤を適用することが好ましいが、透水性の乏しい接着剤を部分的に適用して透水層と吸水材とが直接接触する部分を設けることも可能である。
【0015】
更に、前記吸水材や透水層の上層(多孔質層の下層)には着色層を積層させることもできる。前記着色層は、着色材を塗料等の状態として直接吸水材や透水層上に塗布することや、着色状態の透水層を用いることにより設けられる。
前記着色層としては、ベタ印刷状のものに限らず、文字、記号、図柄模様等の像であってもよい。着色層を設けることで、多孔質層の吸液状態において様々な色調や像が視認でき、装飾効果の高いものとなる。
【0016】
更には、前記吸水材に基材を設けて強度を向上させることも可能である。特に、吸水材として紙類、フェルト、不織布等の軟質なものを用いる場合に有用であり、土壌中に挿入する際に生じ易い折れや、破損を防止できる。
前記基材としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等の樹脂部材や、木材、金属部材等、耐水性を有するものが適用できる。また、前記樹脂部材を用いた場合、少なくとも吸水材の下端部のみを開放した状態で吸水材及び多孔質層の外面を被覆することもできる。
【0017】
前記基材や吸水材には、植木の写真や名称、或いは日付等を記載するラベル部を設けたり、より正確な水量を表示するための目盛を設けることもできる。
【実施例】
【0018】
以下に実施例を示すが、本発明は実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の部は重量部を示す。
【0019】
実施例1(図1参照)
支持体(吸水材2)として、厚さ1mmの赤色クッション紙を用い、該クッション紙の全面に、湿式法微粉末シリカ〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水50部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にてベタ印刷し、70℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層3を形成し、水の吸液により白色から赤色に変化する水変色性積層体を得た。
得られた水変色性積層体を長方形に裁断し、長手方向端部の片側をテーパー状にすることで土壌用可逆性水分インジケーター1を得た。
得られた土壌用可逆性水分インジケーター1を土壌8中に挿入した際、乾燥状態では着色層は隠蔽状態にあり、全面が白色の多孔質層3が視認されるが、吸水材2を経由して土壌中の水が上方へ移動するに従って、多孔質層3が吸液により白色不透明状態から無色透明状態に変化し、下層の着色層4の赤色の色調が視認される。吸液状態(土壌中に水が充分にある状態)では着色層4の色調が視認されたまま維持されるが、水が土壌から蒸発乾燥して吸水材2が乾燥することにより、元の白色状態へと変化する。この可逆的な変化は繰り返し行うことができた。
【0020】
実施例2(図2参照)
支持体(吸水材2)として厚さ1mmの白色クッション紙の全面に、青色顔料5部、アクリル酸エステルエマルジョン50部、水性インキ増粘剤3部、レベリング剤0.5部、エポキシ系架橋剤5部を均一に混合攪拌してなる青色スクリーン印刷用インキを用いてベタ印刷し、70℃で5分間乾燥硬化させて着色層4を設けた。
次いで、前記着色層4上に湿式法微粉末シリカ〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水50部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にてベタ印刷し、70℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層3を形成し、水の吸液により白色から青色に変化する水変色性積層体を得た。
得られた水変色性積層体を長方形に裁断し、長手方向端部の片側をテーパー状にすることで土壌用可逆性水分インジケーター1を得た。
得られた土壌用可逆性水分インジケーター1を土壌8中に挿入した際、乾燥状態では着色層は隠蔽状態にあり、全面が白色の多孔質層3が視認されるが、吸水材2を経由して土壌中の水が上方へ移動するに従って、多孔質層3が吸液により白色不透明状態から無色透明状態に変化し、下層の着色層4の青色の色調が視認される。吸液状態(土壌中に水が充分にある状態)では着色層4の色調が視認されたまま維持されるが、水が土壌から蒸発乾燥して吸水材2が乾燥することにより、元の白色状態へと変化する。この可逆的な変化は繰り返し行うことができた。
【0021】
実施例3(図3参照)
実施例2で得られた土壌用可逆性水分インジケーター1の吸水材2側に、基材6として名称を記載するラベル61を備えた白色ポリエチレンシートを接着剤を介して貼付した。更に、多孔質層3表面の長手方向の片側端部近傍に、非変色層7からなる目盛を等間隔に設けた。
得られたインジケーターは、水分量により実施例2と同様の変化が視覚できると共に、耐久性に優れ、より的確に水分量を確認できることから、より実用性の高いものとなった。
【0022】
実施例4(図4参照)
支持体(透水層5)として目付け量180g/m2 の白色レーヨンツイル生地を選定し、該生地の全面に、実施例2で使用した青色スクリーン印刷用インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にてベタ印刷し、100℃で3分間乾燥硬化させて青色着色層4を設けた。
次いで、前記着色層上の全面に、湿式法微粉末シリカ〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、蛍光ピンク着色顔料0.5部、水50部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にてベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層3を形成して透水性水変色性積層体を得た。
得られた透水性水変色性積層体を、繊維収束加工体からなる円柱状の吸水材2の上部外周面全体を被覆するように接着剤を介して貼付することで、土壌用可逆性水分インジケーター1を得た。
得られた土壌用可逆性水分インジケーター1を土壌8中に挿入した際、乾燥状態では着色層4は隠蔽状態にあり、全面が淡ピンク色の多孔質層3が視認されるが、吸水材2を経由して土壌中の水が上方へ移動するに従って、多孔質層3が吸液により淡ピンク色不透明状態から淡ピンク色透明状態に変化し、下層の青色着色層4が現出することにより紫色の色調が視認される。吸液状態(鉢植えに水が充分にある状態)では紫色の色調が視認されたまま維持されるが、水が土壌から蒸発乾燥して吸水材2が乾燥することにより、元の淡ピンク色状態へと変化する。この可逆的な変化は繰り返し行うことができた。
【0023】
実施例5(図5参照)
支持体(吸水材2)として、長方形に裁断された白色クッション紙(厚さ1mm)の長手方向の2分の1の部分に、青色顔料5部、アクリル酸エステルエマルジョン50部、水性インキ増粘剤3部、レベリング剤0.5部、エポキシ系架橋剤5部を均一に混合攪拌してなる青色スクリーン印刷用インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にてベタ印刷し、100℃で3分間乾燥硬化させて着色層3を設けた。
次いで、前記着色層3上に湿式法微粉末シリカ〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水50部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にてキャンバス調の幾何学模様を印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層2を形成した後、吸水材2の裏面に基材部5としてポリプロピレン板を接着剤を介して貼付することで土壌用可逆性水分インジケーター1を得た。
得られた土壌用可逆性水分インジケーター1を土壌8中に挿入した際、乾燥状態では着色層4の一部が隠蔽された白色多孔質層3からなるキャンバス調の幾何学模様が視認されるが、吸水材2を経由して土壌中の水が上方へ移動するに従って、多孔質層3が吸液により白色不透明状態から無色透明状態に変化し、下層の青色着色層4全面が現出することにより青色の色調が視認される。吸液状態(鉢植えに水が充分にある状態)では青色の色調が視認されたまま維持されるが、水が土壌から蒸発乾燥して吸水材2が乾燥することにより、元のキャンバス調模様へと変化する。この可逆的な変化は繰り返し行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の土壌用可逆性水分インジケーターの一実施例の縦断面図である。
【図2】本発明の土壌用可逆性水分インジケーターの一実施例の縦断面図である。
【図3】本発明の土壌用可逆性水分インジケーターの一実施例の表面図である。
【図4】本発明の土壌用可逆性水分インジケーターの一実施例の縦断面図である。
【図5】本発明の土壌用可逆性水分インジケーターの一実施例の縦断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 鉢植用水分インジケーター
2 吸水材
3 多孔質層
4 着色層
5 透水層
6 基材
61 ラベル(表示部)
7 目盛(非変色層)
8 土壌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が土壌中に挿入される吸水材と、該吸水材と接触する位置に積層される多孔質層とからなる土壌用可逆性水分インジケーターであって、前記多孔質層が、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする構成であることを特徴とする土壌用可逆性水分インジケーター。
【請求項2】
少なくとも一部が土壌中に挿入される吸水材と、該吸水材と接触する位置に積層される透水層と、該透水層に積層される多孔質層とからなる土壌用可逆性水分インジケーターであって、前記多孔質層が、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする構成であることを特徴とする土壌用可逆性水分インジケーター。
【請求項3】
前記透水層が、多孔質紙、布帛、多孔性フィルムのいずれかから選ばれることを特徴とする請求項2記載の土壌用可逆性水分インジケーター。
【請求項4】
前記多孔質層の下層に着色層を設けてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の土壌用可逆性水分インジケーター。
【請求項5】
前記多孔質層が、下方より土壌中に挿入される吸水材の上部又は中部に設けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の土壌用可逆性水分インジケーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−98285(P2006−98285A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286335(P2004−286335)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】