説明

土壌表面除染装置

【課題】水及び土壌の再利用もその場で可能とする土壌表面除染装置を提供する。
【解決手段】土壌表面に堆積した汚染物質を取り除いて除染する土壌表面除染装置であって、土壌表面に水を噴射し、土壌と水が混在したスラリー流を生成する水噴射部102と、スラリー流を受け取るスラリー受皿部103と、を有する土壌表面採取部100と、スラリー受皿部103内のスラリーを、水と土壌に分離する分離部204と、分離された水から汚染物質を取り除く除染部209と、を有する土壌除染部200と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染された土壌の表面をウォータージェットにより削り取り、回収された水と土壌の混合物から汚染物質を分離して除染することにより、分離された水及び土壌のその場での再利用を可能とした土壌表面除染装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自然災害などにより特定の施設の内部に存在する汚染物質が大気中に放出された場合には、その汚染物質は施設周囲の一定の範囲内に拡散して土壌表面に堆積する。この場合には、周囲の土壌表面から汚染物質を取り除く作業、いわゆる除染作業が行われる。
【0003】
従来の土壌の除染作業は、例えば、ブルドーザーなどにより土壌表面を削り取る作業が行われる。しかしながら、このような作業では、削り取った土の処分のために、輸送・保管場所の確保が必要となり、現実的には、削り取った土を除染作業を行った場所の片隅に山積みにしてビニールシートを被せて放置されることが多い。また、削り取った土を補う新しい土を別の場所から輸送し、敷き詰める必要もある。
【0004】
また、土壌表面ではないが、道路表面の土砂を回収する装置として、道路表面に水を噴射して土砂を回収する装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-7823
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の装置では水と土砂は分離されるものの、汚染物質は分離されない。このため、土壌表面が汚染物質により汚染されている場合には、回収された土と水を再利用することはできない。したがって、回収された土壌は、グランドの隅にブルーシートをかけて積みかされられるなどして隔離して保管され、水も別途設けたタンクにて隔離して保管する必要がある。
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、土壌を除染しつつ、水及び土壌の再利用もその場で可能とする土壌表面除染装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、土壌表面に堆積した汚染物質を取り除いて除染する土壌表面除染装置であって、土壌表面に水を噴射し、土壌と水が混在したスラリー流を生成する水噴射部と、スラリー流を受け取るスラリー受皿部と、を有する土壌表面採取部と、スラリー受皿部内のスラリーを、水と土壌に分離する分離部と、分離された水から汚染物質を取り除く除染部と、を有する土壌除染部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の土壌表面除染装置によれば、回収された水及び土は除染されるため、水及び土の再利用が可能となる。加えて、汚染物は除染用のフィルターのみとなるため、汚染物の処分が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の土壌表面除染装置を示す図である。
【図2】本発明の実施形態の土壌表面採取部の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態の土壌表面採取部の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態である土壌表面除染装置について、図を参照して詳細に説明をする。なお、以下の説明においては、土壌表面の除染を例にあげて説明をするが、これに限られず、道路、コンクリート、及びアスファルト等の汚染物質が広く堆積した表面に適用することも可能である。
【0012】
図1は、本発明の実施形態の土壌表面除染装置を示す図である。図に示すように、本実施形態の土壌表面除染装置1はトラックに搭載・設置されて構成される。これにより、本実施形態の土壌表面除染装置1は、汚染された土壌表面を任意に移動することが可能となる。
【0013】
また、本実施形態の土壌表面除染装置1は、トラックの運転台2の正面に設けられた土壌(等)表面採取部100とトラックの荷台に設けられた土壌除染部200により構成される。なお、本実施形態では、装置一式をトラックに積んでいるが、例えば、スラリーの回収までをトラックに積み、それ以降のシステムを別のトラックに積む等して、分離することで、回収部の小型化が可能となる。
【0014】
(土壌表面採取部の構成)
本実施形態の土壌表面採取部100は、熊手部101、水噴射管102、及び、スラリー受皿部103を含んで構成される。
【0015】
図2は、本実施形態の土壌表面採取部100の構成を示す斜視図である。熊手部101、水噴射管102、及び、スラリー受皿部103は、それぞれアーム104、105、106により運転台2に取り付けられる。アーム104、105、106が揺動することにより、熊手部101、水噴射管102、及び、スラリー受皿部103の土壌表面に対する高さ調整(クリアランス調整)が可能であるとともに、不使用時には上に退避させることも可能である。
【0016】
水噴射管102には、配管P2の一端が接続し、後述する流量調整式加圧ポンプ216が配管P2の他端に接続し互いに連通する。スラリー受皿部103には、配管P1の一端が接続し、後述するスラリー回収エアバキュームポンプ201が配管P1の他端に接続し、互いに連通する。
【0017】
図3は、本実施形態の土壌表面採取部100を示す図である。図3に示すように、熊手部101は、複数の熊手刃101aを備え、熊手部101の下降時に熊手刃101aの先端が土壌表面に突き刺さり土壌を耕す。水噴射管102は、略中空のパイプであり、複数の噴射ノズル102aを備え、流量調整式加圧ポンプ216からの水が噴射ノズル102aから土壌表面に噴射される。スラリー受皿部103は、略皿上の部材であり、スラリー受皿部103の前方に回収したスラリーを堰き止める突起部103aを有し、その後方を回収したスラリーを受ける容器状としている。
【0018】
(土壌除染部の構成)
図1に戻り、本実施形態の土壌除染部200は、スラリー回収エアバキュームポンプ201、スラリー回収タンク202、スラリーポンプ203、デカンター式遠心分離機204、渦巻きポンプ205、回収土保管器206、汚染水タンク207、加圧ポンプ208、除染フィルター209、水一時貯蔵タンク210、抜き取りバルブ211、汚染モニター212、バルブ213、渦巻きポンプ214、水タンク215、及び、流量調整式加圧ポンプ216を含んで構成される。
【0019】
スラリー回収エアバキュームポンプ201は、スラリー受皿部103と配管P1を介して接続しスラリー回収タンク202に備わる。なお、本明細書では、スラリーを、水、汚染物質、土壌が混合した流体と定義する。エアバキュームポンプは、第1の挿入口がコンプレッサ等の圧縮エア発生器に接続し、第2の挿入口がスラリー回収タンク202に接続したエジェクタを備え、圧縮エアをエジェクタの第1の挿入口に挿入して、エジェクタの排出口からエアを排出することにより、スラリー回収タンク202内に負圧を発生させ、スラリーを吸い込む。
【0020】
スラリーポンプ203は、スラリー回収タンク202に接続し、スラリー回収タンク202内のスラリーを、配管を介してデカンター式遠心分離機204へ送り出す。
【0021】
デカンター式遠心分離機204は、スラリーを遠心分離して、水と土壌に分離する。なお、遠心分離法はデカンター式に限られず、ディスク型などを使用しても良い。
【0022】
渦巻きポンプ205は、配管を介してデカンター式遠心分離機204と接続し、デカンター式遠心分離機204で分離された水を、配管を介して汚染水タンク207へ送り出す。
【0023】
回収土保管器206は、配管を介してデカンター式遠心分離機204と接続し、デカンター式遠心分離機204で分離された土壌を一時保管する。
【0024】
汚染水タンク207は、汚染水を一時保管するタンクであり、汚染水タンク207内の汚染水は、加圧ポンプ208により配管を介して、除染フィルター209に送られる。
【0025】
除染フィルター209は、汚染水から汚染物質を取り除き、浄化された水を生成する。除染フィルター209には、例えば、逆浸透膜フィルター式の浄水器を用いることができる。逆浸透膜フィルターを用いることにより、ヨウ素、セシウム、ストロンチューム等の放射性物質を除去することが可能となる。
【0026】
水一時貯蔵タンク210は、配管を介して除染フィルター209と接続し、除染フィルター209で浄化された水を一時的に貯蔵する。
【0027】
抜き取りバルブ211は、水一時貯蔵タンク210と汚染モニター212との間の配管に設けられ、水を外部へ抜き取ることが可能である。後述する汚染モニター212により汚染が残っていることが確認された場合には、再度除染フィルター209を通して除染する。
【0028】
汚染モニター212は、水一時貯蔵タンク210からの水の汚染度合いを測定する装置であり、除染された水が、通常水(汚染されていない水)として扱えるか否かをチェックする。汚染物質が放射性物質の場合には、汚染モニター212には線量計を用いることが可能である。
【0029】
バルブ213は、汚染モニター212と渦巻きポンプ214との間の配管に設けられ、汚染モニター212からの水を遮断し、また、導通させることが可能である。
【0030】
渦巻きポンプ214は、水一時貯蔵タンク210内の水を汚染モニター212、バルブ213、及び配管を介して、水タンク215へ送り込む。
【0031】
水タンク215には浄化された水が貯蔵され、浄化された水は流量調整式加圧ポンプ216により配管P2を介して、水噴射管102へ送られる。
【0032】
(装置の動作)
次に、本実施形態の土壌表面除染装置による除染方法の手順を示す。本実施形態では、平坦な土壌を主体とする土地を対象とする。本実施形態では、汚染物質として特に放射性物質を例として説明するが汚染物質はこれに限られるものではなく、土と化学反応しない汚染物質の除去であれば本装置を使用することが可能である。
【0033】
まず、除染対象とする土地の表面の汚染状態を測定する。放射性物質による汚染の場合には線量計が用いられる。そして、デジタル土壌硬度計を用いて土地の表面硬さを測定する。次に、局部的に土地を掘り汚染深さを測定する。
【0034】
図3は、本実施形態の土壌表面採取部100の動作を示す図である。上記測定した汚染深さに応じて、熊手部101の熊手刃101aの先端による掘る深さをアーム104により調整し、決まった深さに土地を平坦面Dから耕起面Eへ耕す。
【0035】
次に、熊手部101が掘った耕起面Eの深さに応じて、水噴射管102の噴射ノズル102aの角度及び水圧を調整して噴射し(図中のA)、水と土の混ざったスラリーを巻き上げる(図中のB)。その時に出来る跳ね上がりスラリーをスラリー受皿部103に受け採り回収する(図中のC)。例えば、放射性ヨウ素、放射性セシウム等の放射性物質は水溶性であるため、水によりスラリーを巻き上げることにより、水に放射性物質が溶け込むため、効率的に汚染物質を回収することが可能となる。
【0036】
熊手部101で掘る代わりに、土の硬さに応じて、噴射ノズル102aの水の噴射角度と水圧を調整し、さらに深く掘る場合には、土に対する角度を水平から直角方向へ大きくし、若しくは、水圧を大きくし、ある深さまで一気に除染してもよい。
【0037】
スラリー受皿部103に回収されたスラリーは、スラリー回収エアバキュームポンプ201によりスラリー回収タンク202に蓄積され、さらに、スラリーポンプ203により、デカンター式遠心分離機204へ移動する。
【0038】
デカンター式遠心分離機204では、スラリーは水と土に分離される。放射性ヨウ素、放射性セシウム等の放射性物質は水溶性であるため、汚染物質は水と共に次の工程へ運ばれ、土についてはこの時点で除染がなされる。
【0039】
デカンター式遠心分離機204で分離された水は、渦巻きポンプ205、汚染水タンク207、加圧ポンプ208を介して除染フィルター209へ送られ、水が除染される。汚染モニター212による検査の結果、除染が不十分な場合には再除染を行う。また、除染に使用したフィルターは汚染物として汚染程度に応じて、規定の処理を行う。
【0040】
デカンター式遠心分離機204で分離された土は、回収土保管器206に回収され、除染を行っている土壌の表面上へ返す。また、その場所へ土を返す必要がなければ、そのまま保管するか、または、他の場所に運搬し、通常の土壌として活用できる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の土壌表面除染装置によれば、土壌表面近傍の土の除染が効率的に出来る。また、土は元の場所へ返すので、新たな土の輸送は必要が無い。さらに、水も再利用できるため水タンクを小さくでき、省資源に対応している。
【0042】
また、従来のブルドーザーによる除染方式では、土を削って除去するため汚染物が非常に多くなり、その処理に困ることになるが、本実施形態の土壌表面除染装置では、回収された水、土は除染されてその場で再利用できるため、汚染物はフィルターのみと非常に少なくなり、汚染物の処分が容易である。さらに、従来のブルドーザーによる除染方式により、既に削って集められた土壌についても、水と混ぜ合わせてスラリー状とし、スラリー回収タンク202へ投入し、本実施形態の土壌表面除染装置により処理して除染することで、元あった場所に戻すことができる。この他、下水処理で発生した汚染された汚泥や、側溝等にたまりスコップ等でかき出された汚泥についても、本実施形態の土壌表面除染装置にかけることで、同じように除染することができる。
【0043】
また、本実施形態の土壌表面除染装置は土壌表面のみならず、草地にも同様に適用可能である。すなわち、草を刈り取った後、或いは草を根から抜きとった後、同じような対応をすれば可能である。
【符号の説明】
【0044】
1:本実施形態の土壌表面除染装置
100:土壌表面採取部
101:熊手部
102:水噴射管
103:スラリー受皿部
200:土壌除染部
201:スラリー回収エアバキュームポンプ
202:スラリー回収タンク
203:スラリーポンプ
204:デカンター式遠心分離機
205:渦巻きポンプ
206:回収土保管器
207:汚染水タンク
208:加圧ポンプ
209:除染フィルター
210:水一時貯蔵タンク
211:抜き取りバルブ
212:汚染モニター
213:バルブ
214:渦巻きポンプ
215:水タンク
216:流量調整式加圧ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌表面に堆積した汚染物質を取り除いて除染する土壌表面除染装置であって、
前記土壌表面に水を噴射し、土壌と水が混在したスラリー流を生成する水噴射部と、
前記スラリー流を受け取るスラリー受皿部と、
を有する土壌表面採取部と、
前記スラリー受皿部内のスラリーを、水と土壌に分離する分離部と、
前記分離された水から汚染物質を取り除く除染部と、
を有する土壌除染部と、
を有することを特徴とする土壌表面除染装置。
【請求項2】
前記除染部で除染された水は前記水噴射部へ送られ、噴射用の水として再利用されることを特徴とする請求項1に記載の土壌表面除染装置。
【請求項3】
前記土壌除染部は、前記分離部で分離された土壌を土壌の表面上へ返して再利用する回収土保管部をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の土壌表面除染装置。
【請求項4】
前記土壌表面採取部は、前記水噴射部が水を噴射する前に土壌を耕す熊手部をさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の土壌表面除染装置。
【請求項5】
前記土壌表面採取部は車両の運転台の前面に備わり、前記土壌除染部は前記車両に搭載されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の土壌表面除染装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−57189(P2013−57189A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195650(P2011−195650)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000230940)日本原子力発電株式会社 (130)
【Fターム(参考)】