説明

土壌被覆材及びこれを用いた被覆土壌の製造方法

【課題】自然界に還元が可能であり、かつ除草効果を長期間持続可能な被覆土壌を製造できる土壌被覆材、及び作業性に優れ、均質な被覆土壌を製造できる被覆土壌の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、(A)土砂、砕材及び廃材からなる群より選ばれる少なくとも1つと、(B)無水石膏及び半水石膏からなる群より選ばれる少なくとも1つと、(C)酢酸ビニル系樹脂及びアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つと、を含有する土壌被覆材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は土壌被覆材及びこれを用いた被覆土壌の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート、ガラス、レンガ等の建設資材が用いられる現代の都市空間においては、街路樹や入口庭園等に樹木を配置する等して、自然を取り込んだ設計がなされている。通常、このような街路樹や樹木を維持するために、雑草を除去する作業が行われる。ここで、雑草を除去する方法としては、雑草を刈り取る方法や、除草剤を散布して雑草の生育を防止する方法等が行われている。
【0003】
しかしながら、雑草を刈り取る方法は、経時的に刈り取り作業を行わなければならず、多大な労力を必要とする。また、除草剤を散布する方法は、一般に除草剤が有害であるため、環境汚染に繋がるという問題がある。
【0004】
これに対し、雑草の生育を防止するため、街路樹や樹木の根元をコンクリートで固めたり、プラスチックシートで被覆する等の不溶性建設資材を用いた土壌被覆材が提案されている。
【0005】
ところが、この不溶性建設資材を用いた土壌被覆材は、メンテナンスや使用後の処理、廃棄に多大な労力を要するという問題があり、環境美観を損なうという欠点もある。
【0006】
そこで、近年、上記不溶性建設資材に代えて、水溶性建設資材を用いた土壌被覆材が検討されている。この水溶性建設資材を用いた土壌被覆材は、自然界に還元が可能である材料で構成されるため、メンテナンスや使用後の処理、廃棄が不要であるという利点を有する。
【0007】
このような水溶性建設資材を用いた土壌被覆材としては、例えば、砂れき系材料と、硫酸カルシウム(半水石膏)とを混合し粒状にした石膏系構造材料が提案されている(特許文献1参照)。この石膏系構造材料は、水を付与することにより、半水石膏が水和し、結晶性に優れる二水石膏となることで、硬化される。また、この石膏系構造材料を用いた施工方法として、石膏系構造材料を土壌面上に厚さ2〜10cm程度に敷設し、その上から水を散布して石膏系構造材料を硬化させ、土壌面上を被覆する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2002−220273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1記載の石膏系構造材料を硬化させ、土壌面上を被覆する被覆土壌として用いた場合、この被覆土壌に含まれる二水石膏の水に対する溶解度が0.3%と比較的大きいため、二水石膏が雨水等の水によって徐々に浸食される傾向にある。そうすると、上記被覆土壌は、短期間で機械的強度が低下し、除草効果を長期間持続できなくなる傾向にある。なお、被覆土壌とは土壌被覆材の硬化体を意味する。
【0009】
また、上記特許文献1記載の石膏系構造材料の施工方法は、人力で土壌面上に石膏系構造材料を敷設する必要があるため作業性に劣り、さらには、石膏系構造材料を土壌面上に敷設した後に、石膏系構造材料上に水を散布して石膏系構造材料を硬化させるため、水が石膏系構造材料の内部まで十分に浸透しない虞がある。この場合、得られる被覆土壌は、内部の石膏系構造材料まで十分に硬化されないものとなり、機械的強度が不均一となる傾向にある。さらにまた、この被覆土壌は、被覆土壌の表面が凹凸となる傾向にあるため、雨水等の水が被覆土壌の凹部に溜まりやすくなり、この水によって被覆土壌中の二水石膏が浸食されやすくなる傾向にある。そうすると、この被覆土壌は、局所的に機械的強度が不十分となり、結果として除草効果を長期間持続させることが困難となる傾向にある。
【0010】
一方、土壌被覆材の分野では、上述したように自然界に還元が可能であり、かつ除草効果を長期間持続させることができる土壌被覆材について、多方面から多くの要請があるにもかかわらず現状では十分な特性を有する土壌被覆材が見出されていない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、自然界に還元が可能であり、かつ除草効果を長期間持続可能な被覆土壌を製造できる土壌被覆材、及び作業性に優れ、均質な被覆土壌を製造できる被覆土壌の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の土壌被覆材は、(A)土砂、砕材及び廃材からなる群より選ばれる少なくとも1つと、(B)無水石膏及び半水石膏からなる群より選ばれる少なくとも1つと、(C)酢酸ビニル系樹脂及びアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つと、を含有することを特徴とする。
【0013】
上記土壌被覆材は、(B)成分が水と水和し、結晶性に優れる二水石膏となることにより、土壌被覆材が硬化して、被覆土壌が得られる。このとき、上記土壌被覆材は、(C)成分を含有するため、当該被覆土壌中の二水石膏の水への溶解が抑制される。このため、かかる土壌被覆材を用いた被覆土壌は、除草効果を長期間持続させることが可能となる。
【0014】
また、上記土壌被覆材を用いた被覆土壌は、当該土壌被覆材中の上記(A)〜(C)成分が自然界に還元が可能であるため、例えば、被覆土壌を施工した場合に、特段のメンテナンスや使用後の処理・廃棄が不要である。
【0015】
このように、本発明の土壌被覆材を用いた被覆土壌が、雨水等の水による浸食を抑制できる理由については、定かではないが、本発明の土壌被覆材が(C)成分を含有することにより、二水石膏の表面が(C)成分によって被膜化され、二水石膏の水への溶解が抑制されるためではないかと考えられる。ただし、要因はこれに限定されない。
【0016】
上記土壌被覆材中の(A)成分の含有率が50〜80質量%であり、(B)成分の含有率が10〜50質量%であり、(C)成分の含有率が1〜30質量%であることが好ましい。
【0017】
この場合の土壌被覆材を用いて得られる被覆土壌は、被覆土壌中の二水石膏の水に対する溶解がより抑制され、除草効果をより長期間持続させることが可能となる。
【0018】
上記土壌被覆材は(D)凝結遅延剤を更に含有することが好ましい。この土壌被覆材は、(D)成分を更に含有するため、土壌被覆材と、水とを混合した場合、土壌被覆材に含まれる(B)成分が硬化して二水石膏となる速度が遅延される。すなわち、土壌被覆材が硬化して、被覆土壌となる速度が遅延される。このことにより、水を含まない土壌被覆材を所定位置に敷設する際に、土壌被覆材が空気中の水蒸気等の水分と水和して塊が生じ、敷設が不均一となることが抑制される。
【0019】
また、上記土壌被覆材によれば、土壌被覆材と、水とを容易に混練させることができる。すなわち、土壌被覆材と水とを予め混練させた状態で、土壌面上に敷設できる。このことにより、土壌被覆材を敷設し、その上から水を散布して被覆土壌とする方法(散水凝固法)だけでなく、予め土壌被覆材と水とを混合し、土壌面上に流し込み、硬化させることにより被覆土壌とする方法も容易に行うことができる。
【0020】
このように、上記土壌被覆材と、水とを混合した場合、土壌被覆材に含まれる(B)成分が水和して二水石膏となる速度が遅延される理由については、定かではないが、本発明の土壌被覆材が(D)成分を含有することにより、(D)成分が(B)成分の表面に付着し、これが(B)成分の水和を阻害し、二水石膏の形成と二水石膏の結晶成長とを抑制するためではないかと考えられる。ただし、要因はこれに限定されない。
【0021】
なお、上記凝結遅延剤は、クエン酸ナトリウム、クエン酸、酢酸カルシウム、蓚酸カルシウム及びこれらの水和物からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0022】
本発明の被覆土壌の製造方法は、上述した土壌被覆材と、水とを混練し、混練物を得る混練工程と、混練物を土壌面上の所定位置に敷設する敷設工程と、混練物を硬化させる硬化工程と、を備えることを特徴とする。
【0023】
上記被覆土壌の製造方法によれば、上述した土壌被覆材を用いるため、自然界に還元が可能であり、かつ長期間除草効果を持続可能な被覆土壌を製造することができる。また、上記被覆土壌の製造方法によれば、土壌被覆材と、水とを混練させるため、混練物は流動性を有するようになり、土壌面上にこの混練物を容易に流し込むことができるようになる。そうすると、土壌面上に混練物を均一に敷設できるため、得られる被覆土壌は、均質で表面が平坦な構造となる。また、上記被覆土壌の製造方法によれば、容易かつ迅速に被覆土壌を製造することができるため作業性に優れる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、自然界に還元が可能であり、かつ長期間除草効果を持続可能な被覆土壌を製造できる土壌被覆材、及び作業性に優れ、均質な被覆土壌を製造できる被覆土壌の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0026】
本発明の土壌被覆材は、(A)土砂、砕材及び廃材からなる群より選ばれる少なくとも1つと、(B)無水石膏及び半水石膏からなる群より選ばれる少なくとも1つと、(C)酢酸ビニル系樹脂及びアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つと、を含有する。
【0027】
(A)〜(C)成分を含有する本発明の土壌被覆材は、(B)成分を硬化させることにより、被覆土壌とすることができ、さらに上記土壌被覆材は、(C)成分を含有するため、得られる被覆土壌は、除草効果を長期間持続させることが可能となる。
【0028】
また、上記被覆土壌は、当該土壌被覆材中の(A)〜(C)成分が自然界に還元が可能であるため、例えば、被覆土壌を施工した場合に、特段のメンテナンスや使用後の処理・廃棄が不要である。
【0029】
次に各成分について更に詳細に説明する。
【0030】
(A成分)
本発明に係る土壌被覆材に含まれる(A)成分は、土壌被覆材の主要成分であり、耐久性を向上させるための骨材としての機能を発揮する。
【0031】
本発明において、上記(A)成分(以下「骨材」ともいう。)は、土砂、砕材及び廃材からなる群より選ばれる少なくとも1つである。ここで、上記土砂とは、粘土、シルト、砂、砂利、泥、礫又はそれらを任意に混合したものを意味する。また、砕材とは、コンクリート、アスファルト、れんが、石等を人工的に砕いてなるものを意味し、コンクリートがら、アスファルトがら等が該当する。更に、廃材とは、産業廃棄物を意味し、建築廃材、鉱滓、瓦礫、木質廃材、プラスチックチップなどが該当する。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0032】
これらの中でも、骨材として砂を用いることが好ましい。砂を用いると、砂は(B)成分や(C)成分と混合しやすいため、取扱性に優れる。また、砂は、上述したその他の骨材よりも土壌との相性に優れるため、自然界に還元するという観点からも、より適したものである。
【0033】
本発明で用いられる骨材の大きさは、用いる骨材に応じて定めることができるが、例えば1〜50mmであることが好ましい。骨材の大きさが1mm未満であると、大きさが上記範囲にある場合と比較して、被覆土壌の機械的強度が十分に得られない傾向にあり、骨材の大きさが50mmを超えると、大きさが上記範囲にある場合と比較して、土壌被覆材を硬化させた場合に生じる二水石膏の結晶間の空隙に、骨材が十分に補充されなくなる傾向にある。また、骨材が砂である場合、当該砂の大きさは1〜5mmであることが好ましい。なお、骨材の形状は特に限定されない。
【0034】
上記土壌被覆材中の(A)成分の含有率は、50〜80質量%であることが好ましい。(A)成分の含有率が50質量%未満であると、含有率が上記範囲にある場合と比較して、被覆土壌の機械的強度が十分に得られない傾向にあり、(A)成分の含有率が80質量%を超えると、配合割合が上記範囲にある場合と比較して、土壌被覆材を十分に硬化できない傾向にある。
【0035】
(B成分)
上記土壌被覆材に含まれる(B)成分(以下「石膏等」ともいう。)は、無水石膏及び半水石膏からなる群より選ばれる少なくとも1つである。かかる石膏等は、水を付与することにより、下記化学反応式に示すように、水和して二水石膏となる。
CaSO・1/2HO(半水石膏)+3/2HO→CaSO・2HO(二水石膏)
CaSO(無水石膏)+2HO→CaSO・2HO(二水石膏)
【0036】
このように、石膏等が水和して得られる二水石膏は結晶性に優れるため、石膏等を含む土壌被覆材に水が付与されると、上記土壌被覆材が硬化される。
【0037】
上記無水石膏としては、高温型無水石膏、不溶性無水石膏、硬石膏、可溶性無水石膏、γ石膏、又は乾燥用石膏等が挙げられる。これらの中でも、可溶性無水石膏、γ石膏、又は乾燥用石膏であることが好ましい。この場合、無水石膏をより確実に水和させ、二水石膏とすることができる。また、上記無水石膏の結晶系は、I型結晶系、II型斜方晶、又はIII型六方晶のいずれであってもよい。
【0038】
上記半水石膏としては、α石膏、硬質石膏、硬質半水石膏、高強度焼石膏、又は硬石膏等と呼ばれるα型半水石膏や、β石膏、焼石膏、普通石膏、又は鋳込用石膏等と呼ばれるβ型半水石膏等が挙げられる。上記半水石膏の結晶系としては、例えば、三方晶のものが挙げられる。
【0039】
本発明の土壌被覆材は、上記無水石膏及び半水石膏の少なくともいずれか一方を含んでいればよい。これらの中でも半水石膏を単独で用いることが好ましい。半水石膏は、無水石膏と比較して、水和しやすく、確実に二水石膏となるため、土壌被覆材を確実に硬化させることが可能となる。
【0040】
上記土壌被覆材中の(B)成分の含有率は、10〜50質量%であることが好ましい。(B)成分の含有率が10質量%未満であると、含有率が上記範囲にある場合と比較して、土壌被覆材を十分に硬化できない傾向にあり、(B)成分の含有率が50質量%を超えると、含有率が上記範囲にある場合と比較して、被覆土壌の機械的強度が十分に得られない傾向にある。
【0041】
(C成分)
上記土壌被覆材に含まれる(C)成分(以下「樹脂等」ともいう。)は、酢酸ビニル系樹脂及びアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つである。これらの化合物を土壌被覆材に含有させることにより、形成された被覆土壌中の二水石膏の雨水等の水への溶解が抑制される。このことから、上記(C)成分を含有する本発明の土壌被覆材は、例えば、従来1〜2年であった除草効果を持続できる期間を2〜4年に延長することができる。
【0042】
上記酢酸ビニル系樹脂としては、ポリビニルアセテート、酢酸ビニル−エチレン系共重合体等が挙げられ、上記アクリル系樹脂としては、アクリル酸エステル共重合体、スチレンアクリル共重合体等が挙げられる。
【0043】
これらの中でも、アクリル系樹脂を用いることが好ましい。この場合、被覆土壌の除草効果をより長期間持続できる。
【0044】
上記樹脂等は、親水性であっても、疎水性であってもよい。ただし、二水石膏の表面を疎水性とすると、二水石膏の表面が親水性である場合と比較して、二水石膏の水に対する溶解速度を遅延できるため、上記二水石膏の表面を被覆する上記樹脂等は疎水性であることが好ましい。ここで、本発明において、親水性とは、完全に水に溶解するものをいい、疎水性とは、完全に水に溶解しないものをいう。
【0045】
上記樹脂等は均一に混合させることができるという観点から、常温で固体であることが好ましい。また、この場合の樹脂等の形状としては特に限定されないが、粉状、粒状、顆粒状、塊状、繊維状、コロイド状等が挙げられる。これらの中でも、粉状、粒状、コロイド状であることが好ましい。
【0046】
上記樹脂等の重量平均分子量は、10万〜100万であることが好ましい。樹脂等の重量平均分子量が上記範囲内であると、二水石膏の被覆効果をより向上させることができる。
【0047】
上記土壌被覆材中の(C)成分の含有率は、10〜30質量%であることが好ましい。(C)成分の含有率が10質量%未満であると、含有率が上記範囲にある場合と比較して、二水石膏の水に対する溶解速度を十分に遅延させることが困難となる傾向にあり、(C)成分の含有率が30質量%を超えると、含有率が上記範囲にある場合と比較して、土壌被覆材を自然界に還元させた場合、(C)成分が残留する傾向にある。
【0048】
また、上記(A)成分100質量部に対する(C)成分の配合割合は、1〜5質量部であることが好ましい。この場合、石膏等に対し樹脂等を十分均一に混合させることができる。
【0049】
(その他の成分)
本発明の土壌被覆材は、以下の成分を含有していてもよい。
【0050】
(D成分)
(D)成分は凝結遅延剤である。この凝結遅延剤を含有させることにより、たとえ土壌被覆材に水を含有させた場合であっても、石膏等が水和し、二水石膏となる速度が遅延される。例えば、従来、半水石膏と水とを混練した場合、2〜3分後に半水石膏が水和し硬化するのに対し、本発明の土壌被覆材では、30〜90分後に石膏等が水和し硬化する。
【0051】
したがって、この場合、予め土壌被覆材と水とを混合することが可能であるため、土壌被覆材を敷設し、その上から水を散布する方法(散水凝固法)だけでなく、予め土壌被覆材と水とを混合し、土壌面に流し込む方法で土壌面に被覆土壌を施工することも可能となる。
【0052】
上記(D)成分としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸、酢酸カルシウム、蓚酸カルシウム又はこれらの水和物が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。なお、これらの化合物は、上述した二水石膏の水に対する溶解度に影響を与えない。
【0053】
これらの中でも、クエン酸ナトリウム、クエン酸、又はこれらの水和物を用いることがより好ましい。この場合、石膏等が水和して二水石膏となる速度をより遅延させることができる。
【0054】
また、これらの他に、凝結遅延剤として、フッ素系化合物等や、カルシウムイオンと不溶性化合物とを生成する添加物等を用いてもよい。上記フッ素系化合物としては、ケイフッ酸塩、フッ化ナトリウム等が挙げられる。
【0055】
本発明の土壌被覆材が凝結遅延剤を含有する場合において、当該土壌被覆材中における上記凝結遅延剤の含有率は、0.1〜0.5質量%であることが好ましく、0.1〜0.3質量%であることがより好ましい。凝結遅延剤の含有率が0.1質量%未満であると、含有率が上記範囲にある場合と比較して、石膏等が水和して二水石膏となる速度を十分に遅延させることが困難となる傾向にあり、凝結遅延剤の含有率が0.5質量%を超えると、含有率が上記範囲にある場合と比較して、凝結を完結させる時間が長くなり、作業性に劣る傾向にある。
【0056】
(界面活性剤)
本発明の土壌被覆材は、界面活性剤を含んでいてもよい。この場合、上述した二水石膏の結晶の成長をより促進させることができる。そうすると、被覆土壌は、二水石膏の結晶構造がより大きくなり、二水石膏の雨水等の水に対する溶解速度を遅延できる。また、界面活性剤を土壌被覆材に含有させると、二水石膏の表面が平滑化され、二水石膏表面での雨水等の水の滞留時間を短くすることができる。そうすると、二水石膏の雨水等の水への溶解速度を遅延させることができる。さらに、二水石膏が親水性であるため、界面活性剤を土壌被覆材に含有させると、界面活性剤の親水基が二水石膏に吸着し、疎水基が二水石膏と反対側に向くため、界面活性剤が吸着した二水石膏の表面を疎水性にすることができる。
【0057】
上記界面活性剤としては、リン酸二アンモニウム、硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0058】
これらの中でも、硫酸アンモニウム、リン酸二アンモニウムを用いることが好ましい。この場合、溶解度の小さいリン酸カルシウムが生成されるため、生成する二水石膏の粒子径が増大することになる。このことにより、二水石膏の溶解度を低減させることができる。
【0059】
また、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、n−ドデシル硫酸ナトリウムを用いることが好ましい。この場合、二水石膏の結晶粒子が大きくなり個々の結晶の表面積は小さくなるため、二水石膏の水に対する溶解度を低減させることができる。
【0060】
本発明の土壌被覆材が界面活性剤を含有する場合において、当該土壌被覆材中における界面活性剤の含有率は、0.01〜0.3質量%であることが好ましい。界面活性剤の含有率が0.01質量%未満であると、含有率が上記範囲にある場合と比較して、上記効果を十分に奏することが困難となる傾向にある。また、界面活性剤の含有率が0.3質量%を超えても、含有率が上記範囲にある場合と比較して、得られる効果の向上は認められない。
【0061】
(充填剤)
本発明の土壌被覆材は、充填剤を含んでいてもよい。この場合、土壌被覆材の二水石膏及び充填材により、固形分の充填密度が向上するため、雨水等の水の浸入を抑制することができる。
【0062】
上記充填剤としては、コロイダルシリカ、酸化ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、土壌被覆材に浸入してきた微量の水を吸着できるという観点から、コロイダルシリカを用いることが好ましい。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0063】
本発明の土壌被覆材が充填剤を含有する場合において、当該土壌被覆材中における充填剤の含有率は、5〜30質量%であることが好ましい。充填剤の含有率が5質量%未満であると、含有率が上記範囲にある場合と比較して、被覆土壌への水の浸入を十分に抑制することが困難となる傾向にある。また、充填剤の含有率が30質量%を超えても、含有率が上記範囲にある場合と比較して、得られる効果の向上は認められない。
【0064】
(その他の樹脂)
本発明の土壌被覆材は、その他の樹脂を更に含んでいてもよい。この場合、二水石膏がその他の樹脂により更に被膜化されるため、雨水等の水による二水石膏の溶解をより抑制することができる。
【0065】
上記その他の樹脂としては、ポリ乳酸樹脂等の生分解性プラスチック、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、環境にやさしいという観点から、ポリ乳酸樹脂等の生分解性プラスチックを用いることが好ましい。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0066】
本発明の土壌被覆材がその他の樹脂を含有する場合において、当該土壌被覆材中におけるその他の樹脂の含有率は、1〜30質量%であることが好ましい。その他の樹脂の含有率が1質量%未満であると、含有率が上記範囲にある場合と比較して、二水石膏の水への溶解をより十分に抑制することが困難となる傾向にある。また、その他の樹脂の含有率が30質量%を超えても、含有率が上記範囲にある場合と比較して、得られる効果の向上が認められない。
【0067】
本発明の土壌被覆材を硬化して得られる被覆土壌は、長期間持続して除草効果を奏するものであるため、特に屋外において、街路樹や入口庭園の樹木が植えられた土壌を被覆するのに好適に用いられる。
【0068】
次に、本発明の土壌被覆材を用いた被覆土壌の製造方法について説明する。本発明の被覆土壌の製造方法は、上述した(A)〜(D)成分を含有する土壌被覆材と、水とを混練し、混練物を得る混練工程と、当該混練物を土壌面の所定位置に敷設する敷設工程と、混練物を硬化させる硬化工程と、を備える。
【0069】
以下、各工程について更に詳細に説明する。
【0070】
(混練工程)
まず、本発明の土壌被覆材の製造方法は、上述した(A)〜(D)成分を含有する土壌被覆材と、水とを混練させ、混練物とする。なお、この混練物には、必要に応じて界面活性剤、充填剤等を含有させてもよい。また、この混練物を混練させるときは、例えば、土木建設用ミキサーであるバンバリーミキサー、ニーダー等の混練機が用いられる。
【0071】
このとき半水石膏100質量部に対して、水を60〜170質量部含ませることが好ましく、60〜100質量部含ませることがより好ましい。水の含有量が60質量部未満であると、含有量が上記範囲にある場合と比較して、混練物の流動性が不十分となる傾向にあり、含有量が170質量部を超えると、含有量が上記範囲にある場合と比較して、被覆土壌の機械的強度が不十分となる傾向にある。
【0072】
上記混練物の粘度は、100〜1000cpsであることが好ましい。粘度が100cps未満であると、粘度が上記範囲にある場合と比較して、被覆土壌の機械的強度が不十分となる傾向にあり、混練物の粘度が1000cpsを超えると、粘度が上記範囲にある場合と比較して、混練物を土壌面に流し込むことが困難となるため、被覆土壌が不均一となる傾向にある。なお、上記混練物の粘度は1〜2時間維持できることが好ましい。
【0073】
(敷設工程)
そして、上記混練物を土壌面上の所定位置に敷設する。本発明においては、均一な被覆土壌を土壌面上の所定位置に形成するため、予め土壌被覆材と水とを混合して混練物とし、この混練物を土壌面上に流し込む方法を用いる。ここで、上記所定位置とは、除草効果を発揮したい箇所であれば特に限定されない。なお、混練物を流し込む際には、混練物が所定位置からはみ出さないように、所定位置の外縁に一定の高さを有する枠を設けてもよい。また、このときの枠は木枠であっても、コンクリート枠であってもよい。
【0074】
(硬化工程)
そして、上記混練物を敷設した後は、そのまま放置することにより、石膏等が徐々に水和して二水石膏となり、これにより土壌被覆材が硬化した被覆土壌が製造される。
【0075】
このように本発明の被覆土壌の製造方法によれば、上述した土壌被覆材を用いるため、自然界に還元が可能であり、かつ長期間除草効果を持続可能な被覆土壌を製造することができる。また、上記被覆土壌の製造方法によれば、土壌被覆材と、水とを混練させるため、混練物は流動性を有するようになり、土壌面上にこの混練物を容易に流し込むことができるようになる。そうすると、土壌面上に混練物を均一に敷設できるため、得られる被覆土壌は、均質で表面が平坦な構造となる。また、上記被覆土壌の製造方法によれば、容易かつ迅速に被覆土壌を製造することができるため作業性に優れる。
【0076】
次に、本発明の被覆土壌の施工方法について説明する。
【0077】
図1は、本発明の被覆土壌を施工した街路樹の一実施形態を示す断面図である。図1に示すように、本発明の被覆土壌を施工した街路樹は、所定形状の穴8と、この穴8内に充填された土壌3と、この土壌3に植えられた樹木1と、土壌3の表面3a上に敷設された被覆土壌2と、被覆土壌2の周縁部に設けられたコンクリート枠5とを備える。樹木1が植えられている土壌3は穴8の内部に収容されており、土壌3の表面3a上には被覆土壌2が土壌3の表面3aをすべて覆うように敷設されている。このとき穴8の形状は特に限定されない。また、穴8は、樹木1を植えられるように十分な大きさを有することが好ましい。上記被覆土壌2の周縁部に設けられたコンクリート枠5は、コンクリート枠5の下方の一部が地表面より下方に埋設されており、これにより確実に固定されている。さらに、コンクリート枠5は、被覆土壌2がコンクリート枠5内からはみ出さないように、コンクリート枠5の上方の一端5aが被覆土壌2の表面2aよりも上方に突出している。ここで、上記コンクリート枠の形状は特に限定されないが、環状であることが好ましい。
【0078】
このような構造を有する上記街路樹は、以下のようにして施工される。
【0079】
まず、街路樹を設置する予定箇所に、穴8を設ける。そして、穴8の内側に、土壌3及び樹木1を設置する。このとき樹木1は、根の部分の成長を考慮して、穴8の略中央に設置することが好ましい。また、穴8の内側に樹木1及び土壌3を設置する際、樹木1を固定させるため、穴8の内側に土壌3を更に追加し、穴8の内側を土壌3で充填させる。なお、穴8の内側を土壌3で充填させた後は、樹木1を確実に固定させるため、土壌の表面3aをプレートコンパクター等で押圧してもよい。また、このとき土壌の表面3aは平坦とすることが好ましい。そうすると、混練物を土壌面に流し込む際、混練物を均一に敷設することができる。なお、土壌面上に石等の障害物があった場合、除去することが好ましいが、小さい石であれば、そのまま施工してもよい。
【0080】
次に、コンクリート枠5を設ける。コンクリート枠5は、被覆土壌2を設けたい位置の周囲を取り囲むように設ける。また、上記コンクリート枠5は確実に固定するため、コンクリート枠5の下方の一部を地表面より下方に埋設させる。
【0081】
そして、コンクリート枠5で囲まれた土壌3の表面3aに上述した混練物を流し込む。なお、混練物を流し込んだ後は、金ゴテ等にて均等な厚み及び滑らか表面となるように整えることが好ましい。そして、この混練物を放置することにより、混練物が硬化し、被覆土壌2が形成される。なお、樹木1が設置されている場合は、その樹木1と被覆土壌2との間には一定の隙間を設けることが好ましい。混練物を硬化され、被覆土壌2とした後は、雨水等の浸透が少なくなるため、上記のように隙間を設けることにより、この隙間から水が土壌3に浸透し、樹木1の根に十分に水が付与されることとなる。さらに、上記被覆土壌2と接する樹木1の幹の部分が、大きく成長する可能性がある場合は、上記のように隙間を設けることにより、被覆土壌2が成長の妨げとなることが抑制される。
【0082】
なお、上記隙間を設ける方法としては、例えば、樹木1と被覆土壌2との間に、予めスペーサーを設置し、その後、混練物を流し込み、被覆土壌2とした後、上記スペーサーを取り外すことにより、設けることが可能である。
【0083】
上記被覆土壌2の厚みは、1〜5cmであることが好ましい。この場合、除草効果を十分に発揮し、かつ長期間使用後は、確実に自然界に還元が可能である。
【0084】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0085】
例えば、上記実施形態において、コンクリート枠5を地表面よりも下方に埋設させているが、コンクリート枠5を埋設させずに、地表面上に設置するだけであってもよい。また、コンクリート枠を箱状のものとし、上記穴8内に埋設させ、その中に樹木1が植えられた土壌3を収容させてもよい。なお、この場合、樹木1の根の部分の成長を妨げないようにするため、コンクリート枠は十分な大きさを有するように設計することが好ましい。
さらに、混練物を所定位置に敷設可能であれば、上記コンクリート枠は必ずしも設ける必要がない。また、枠が美観を損ねる場合は、混練物を敷設し、被覆土壌2とした後に、コンクリート枠を除去してもよい。また、樹木は必ずしも必要ではなく、樹木がない土壌面上に本発明の被覆土壌を施工してもよい。
【実施例】
【0086】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、混水率とは、下記式により求められる値を意味する。
混水率=水の量×100/半水石膏の量
また、本実施例における半水石膏は、火力発電所のSOx回収プロセスからの副産物である脱硫石膏を焼成したものである。
【0087】
(実施例1)
混練凝結法を用いて、被覆土壌を作製した。すなわち、4.7×14.8×2.0cmの木枠中に、半水石膏100gと、砂150gと、クリアコート剤(アクリル酸エステル共重合体(水溶性乳白色エマルジョン)、インターセプト株式会社製、商品名)を6gと、クエン酸ナトリウム2水和物を0.18gと、からなる土壌被覆材を入れ、混水率が60%となるように、さらに水を加え、得られる混合物を混練して混練物とした。
【0088】
そして、この混練物を放置することにより、半水石膏を水和させ、土壌被覆材を硬化させた。その後40℃の乾燥器中で脱水乾燥させ木枠を取り外すことにより被覆土壌のテストピースを得た。得られた被覆土壌は、密度が1.6g/cmであった。
【0089】
(実施例2)
実施例1で使用したクリアコート剤を12gとしたこと以外は実施例1と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.3g/cmであった。
【0090】
(実施例3)
実施例1で使用したクリアコート剤を10gとし、クエン酸ナトリウム2水和物を0.08gとし、さらに、マイティ150(ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物(密度1.190〜1.210g/cm)、花王株式会社製、商品名)2.5gを土壌被覆材に追加し、水の混水率が50%となるように、水を加えたこと以外は実施例1と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.8g/cmであった。
【0091】
(実施例4)
実施例1で使用したクリアコート剤の代わりに木工用ボンド(ビニルアセテート(49%)(エマルジョン)、密度1.06g/cm、コニシ株式会社製、商品名)6gを用いたこと以外は実施例1と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.55g/cmであった。
【0092】
(実施例5)
実施例1で使用したクリアコート剤の代わりに木工用ボンド12gを用いたこと以外は実施例1と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.61g/cmであった。
【0093】
(実施例6)
実施例1で使用したクエン酸ナトリウム2水和物を0.06gとし、クリアコート剤の代わりに木工用ボンド10gと、マイティ150を2.1gと、を用いたこと以外は実施例1と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.67g/cmであった。
【0094】
(実施例7)
散水凝結法を用いて、被覆土壌を作製した。すなわち、半水石膏100gと、砂150gと、クリアコート剤6gと、からなる土壌被覆材を、4.7×14.8×2.0cmの木枠中に敷設し、その上から水を混水率が60%となるように散水して、半水石膏を水和させ、土壌被覆材を硬化させた。その後40℃の乾燥器中で脱水乾燥させ木枠を取り外すことにより被覆土壌のテストピースを得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.62g/cmであった。
【0095】
(実施例8)
実施例7で使用したクリアコート剤を12gとしたこと以外は実施例7と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.66g/cmであった。
【0096】
(実施例9)
実施例1で使用したクリアコート剤を3gとしたこと以外は実施例1と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.41g/cmであった。
【0097】
(実施例10)
実施例1で使用したクリアコート剤の代わりにCZ−126(スチレンアクリル共重合樹脂(47〜49%)(水溶性乳白色エマルジョン)、コニシ株式会社製、商品名)を3g用いたこと以外は実施例1と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.47g/cmであった。
【0098】
(実施例11)
実施例1で使用したクリアコート剤の代わりにCZ−126を6g用いたこと以外は実施例1と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.34g/cmであった。
【0099】
(実施例12)
実施例1で使用したクリアコート剤の代わりにCZ−250(酢酸ビニル−エチレン系共重合体(水溶性乳白色エマルジョン)、密度1.06、コニシ株式会社製、商品名)3gを用いたこと以外は実施例1と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.68g/cmであった。
【0100】
(実施例13)
実施例1で使用したクリアコート剤の代わりにCZ−250を6g用いたこと以外は実施例1と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.70g/cmであった。
【0101】
(実施例14)
実施例1で使用した砂を196gとし、クエン酸ナトリウム2水和物を0.15gとし、クリアコート剤の代わりにCZ−126を5g用いたこと以外は実施例1と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.77g/cmであった。
【0102】
(実施例15)
実施例14で使用したCZ−126を10g用いたこと以外は実施例14と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.42g/cmであった。
【0103】
(実施例16)
実施例14で使用したクエン酸ナトリウム2水和物を0.2gとし、CZ−126を6.7g用い、水の混水率が80%となるように、水を加えたこと以外は実施例14と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.52g/cmであった。
【0104】
(実施例17)
実施例16で使用したCZ−126の代わりにCZ−250を6.7g用いたこと以外は実施例16と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.73g/cmであった。
【0105】
(実施例18)
実施例1で使用した半水石膏を50gとし、砂を200gとし、クエン酸ナトリウム2水和物を0.12gとし、クリアコート剤の代わりにCZ−126を4g用い、水の混水率が80%となるように、水を加えたこと以外は実施例1と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.54g/cmであった。
【0106】
(実施例19)
実施例18で使用したクエン酸ナトリウム2水和物を0.18gとし、CZ−126を6g用い、水の混水率が120%となるように、水を加えたこと以外は実施例18と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.86g/cmであった。
【0107】
(比較例1)
実施例1で使用したクリアコート剤を用いないこと以外は実施例1と同様にして被覆土壌を得た。得られた被覆土壌は、密度が1.69g/cmであった。
【0108】
(比較例2)
実施例1で使用したクエン酸ナトリウム2水和物を0.15gとし、クリアコート剤は用いず、マイティ150を2.5g用い、水の混水率が50%となるように、水を加えたこと以外は実施例1と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.70g/cmであった。
【0109】
(比較例3)
実施例1で使用したクエン酸ナトリウム2水和物を0.15gとし、クリアコート剤の代わりに市販の洗濯用のり(ポリビニルアルコール(ゲル)、永久糊株式会社製、商品名)を3gと、マイティ150を3gと、を用いたこと以外は実施例1と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.25g/cmであった。
【0110】
(比較例4)
実施例1で使用したクエン酸ナトリウム2水和物の代わりにクエン酸1水和物を0.15g用い、クリアコート剤は用いず、スノーテックス30(コロイダルシリカ(30%)と酸化ナトリウム(0.6%)とを含む透明ゾル(密度1.200〜1.220g/cm)、日産化学株式会社製、商品名)を12g用いたこと以外は実施例1と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.83g/cmであった。
【0111】
(比較例5)
実施例7で使用したクリアコート剤を用いない以外は実施例7と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、質量が251.1g、密度が1.55g/cmであった。
【0112】
(比較例6)
実施例7で使用したクリアコート剤は用いず、マイティ150を3g用いたこと以外は実施例7と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.67g/cmであった。
【0113】
(比較例7)
実施例7で使用したクリアコート剤は用いず、マイティ150を12g用いたこと以外は実施例7と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.60g/cmであった。
【0114】
(比較例8)
実施例7で使用したクリアコート剤は用いず、洗濯用のり12gを用いたこと以外は実施例7と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.67g/cmであった。
【0115】
(比較例9)
実施例1で使用したクリアコート剤の代わりにPLASEMA L110(ポリ乳酸樹脂(水溶性乳白色エマルジョン)、第一工業製薬株式会社製、商品名)を3g用いたこと以外は実施例1と同様にして被覆土壌を得た。なお、得られた被覆土壌は、密度が1.63g/cmであった。
【0116】
[評価方法]
(耐候性試験1)
上記実施例1〜8及び比較例1〜8で得られた被覆土壌のテストピースを用いて耐候性試験1を行った。まず、これらのテストピースの4.7×14.8cm面(木枠上部)に光照射及び散水できるように、アトラスCi35A Xenon−ometer耐候性試験機(株式会社東洋精機製作所製)にテストピースを取り付けた。
【0117】
第1段階として、2時間のうち18分間散水する条件で、200時間光照射を行い、引き続き第2段階として、2時間のうち30分間散水する条件で、200時間光照射を行った。
【0118】
そして、第1段階及び第2段階終了時のそれぞれのテストピースの質量を測定し、質量の減少量を算出した。得られた結果を図2に示す。
【0119】
図2に示すように、混練凝結法において、アクリル系樹脂であるクリアコート剤(実施例1〜3)、又は酢酸ビニル系樹脂である木工用ボンド(実施例4〜6)を含む本発明の被覆土壌は、質量の減少量を極めて低減できることがわかった。特に、クリアコート剤を含む被覆土壌は、クリアコート剤を含まない被覆土壌(比較例1)と比較して、第1段階では被覆土壌の質量の減少量が45〜50%低減され、第2段階では被覆土壌の質量の減少量がさらに低減されることがわかった。
【0120】
一方、減水剤であるマイティ150(比較例2)、洗濯用のり(比較例3)、接着剤であるスノーテックス30(比較例4)を含む本発明によらない被覆土壌では、耐候性試験における被覆土壌の質量の減少量は十分に低減できなかった。
【0121】
また、散水凝結法で行った場合においても、上記混練凝結法と同様に、アクリル系樹脂であるクリアコート剤(実施例7,8)を被覆土壌に含ませると、被覆土壌の重量減少を極めて低減できることがわかった。
【0122】
(耐候性試験2)
上記実施例9〜19及び比較例9で得られた被覆土壌のテストピースを用いて耐候性試験2を行った。まず、これらのテストピースの4.7×14.8cm面(木枠上部)に光照射及び散水できるように、アトラスCi35A Xenon−ometer耐候性試験機にテストピースを取り付け、2時間のうち30分間散水する条件で、200時間光照射を行った。
【0123】
そして、試験終了後のそれぞれのテストピースの質量を測定し、質量の減少量を算出した。得られた結果を図3に示す。
【0124】
図3に示すように、本発明の被覆土壌中の樹脂等の含有率や混水率を増大させると、被覆土壌の質量の減少量をより低減できることがわかった。
【0125】
一方、生分解性プラスチックであるPLASEMA L110(比較例9)を含む本発明によらない被覆土壌では、耐候性試験における被覆土壌の質量の減少量は十分に低減できなかった。
【0126】
(経時変化)
60Lのバケツに、水12kg(混水率60%)と、クリアコート剤2.4kgと、クエン酸ナトリウム2水和物36kgとを入れ、ハンドミキサーで攪拌しながら、半水石膏20kgと、砂30kgとを固まりにならないように少しずつ投入した。半水石膏と砂とが十分に分散されたのち、得られた混練物を土壌表面上に流し込み、金ゴテにて均等な厚み及び滑らか表面となるように調整した。
【0127】
そして、50分間放置することにより、混練物が硬化し、厚みが30mmの被覆土壌を得た。
【0128】
得られた被覆土壌に対し、定期的に表面劣化の進行状況および雑草抑制効果の維持状況について追跡調査を行った。その結果、1年経過した時点でのデータは上記で述べた耐候性試験の結果と一致するものであった。
【0129】
以上より、本発明の土壌被覆材によれば、二水石膏の水に対する溶解速度を遅延できることが確認されたため、上記土壌被覆材からなる被覆土壌は、除草効果を長期間持続できるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】図1は、本発明による被覆土壌を施工した街路樹の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図2は、本実施例における耐候性試験1の結果を示す図である。
【図3】図3は、本実施例における耐候性試験2の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0131】
1…樹木、2…被覆土壌、2a…表面、3…土壌、3a…表面、5…コンクリート枠、8…穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)土砂、砕材及び廃材からなる群より選ばれる少なくとも1つと、(B)無水石膏及び半水石膏からなる群より選ばれる少なくとも1つと、(C)酢酸ビニル系樹脂及びアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つと、を含有する土壌被覆材。
【請求項2】
前記土壌被覆材中の前記(A)成分の含有率が50〜80質量%であり、前記(B)成分の含有率が10〜50質量%であり、前記(C)成分の含有率が1〜30質量%である、請求項1記載の土壌被覆材。
【請求項3】
前記土壌被覆材が(D)凝結遅延剤を更に含有する、請求項1又は2に記載の土壌被覆材。
【請求項4】
前記凝結遅延剤が、クエン酸ナトリウム、クエン酸、酢酸カルシウム、蓚酸カルシウム及びこれらの水和物からなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の土壌被覆材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の土壌被覆材と、水とを混練し、混練物を得る混練工程と、
前記混練物を土壌面上の所定位置に敷設する敷設工程と、
前記混練物を硬化させる硬化工程と、
を備えることを特徴とする被覆土壌の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−166923(P2007−166923A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365313(P2005−365313)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(305060567)国立大学法人富山大学 (194)
【出願人】(501028415)梅本建設工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】