説明

土壌診断方法

【課題】 良質な農作物を生産する上での土壌の良し悪しを客観的に診断することが可能な土壌診断方法を提供すること。
【解決手段】 診断対象となる土壌を採取する採取工程と、採取した前記土壌と水とを、これらが均一に混ざるように混合して混合液を得る混合工程と、前記土壌と前記水とが均一に混ざった状態の前記混合液を観察し、前記混合液中の微生物の多さに従って土壌の良さを判定する判定工程と、を有することを特徴とする土壌診断方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌の良し悪しを診断するための土壌診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌は、太陽エネルギー、水、炭酸ガス等とともに農作物の育成に不可欠な要素となっており、土壌の良し悪しは、そこで生産される農作物の収量及び品質の良し悪しに大きな影響を与える。そのため、農作物の生産を行う場合に、その土壌が農作物の生産に適した良質な土壌であるか否かを診断する方法が検討されている。
【0003】
従来、このような土壌の診断方法としては、例えば、土壌中に含まれる栄養成分(チッソ、リン酸、カリ等)の量を化学的に分析することによって土壌の良し悪しを診断する方法が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。また、良質な農作物を生産するために、化学肥料を用いて土壌に不足している栄養成分を補うことも行われている。
【特許文献1】特開平9−178735号公報
【特許文献2】特開平11−37996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように土壌中の栄養成分の量に基づいて良質な土壌であると診断された場合であっても、良質な農作物を生産する上で必ずしも適していない場合があることを本発明者らは見出した。すなわち、土壌中の栄養成分の量のみでは、良質な農作物を生産する上での土壌の良し悪しを客観的に診断することが困難である。
【0005】
そこで、本発明は、良質な農作物を生産する上での土壌の良し悪しを客観的に診断することが可能な土壌診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の土壌診断方法は、診断対象となる土壌を採取する採取工程と、採取した前記土壌と水とを、これらが均一に混ざるように混合して混合液を得る混合工程と、前記土壌と前記水とが均一に混ざった状態の前記混合液を、例えば顕微鏡により観察し、前記混合液中の微生物の多さに従って土壌の良さを判定する判定工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
従来、土壌消毒という方法があるように、有害な微生物を除去することが実用化されてきている。この方法では、有益な微生物も同時に除去することとなり、結果として土壌中の微生物全体の量が大幅に減少することとなる。しかしながら、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、土壌中に微生物が多く存在しているほど良質な土壌となり、良質な農作物を生産できることを見出した。また、土壌中に微生物が多く存在しているほど、土壌の団粒化が進むことを見出した。土壌の団粒化が進むと、団粒が水を適度に保持するとともに、団粒間の空隙が余分な水を流し空気を通すため、水持ちが良く水はけの良い良質な土壌となる。
【0008】
また、従来、土壌中の微生物の量を客観的に把握する方法が見出されていなかったが、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、土壌をそのままの状態で観察するのではなく、水を均一に混合して混合液を調製し、この混合液を観察することで土壌中の微生物の量を客観的に確認することができることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明の土壌診断方法においては、土壌と水とを均一に混合させた混合液を作製し、この混合液中の微生物の量を顕微鏡等により観察している。このようにすることで、土壌中の微生物の量を簡易に且つ効率的に確認することができ、土壌の良し悪しを客観的に診断することができる。また、微生物の量と姿とを顕微鏡等による画像で観察することで、土壌の良し悪しを視覚的に把握することができる。
【0010】
また、本発明の土壌診断方法において、前記判定工程は、前記土壌と前記水とが均一に混ざった状態の前記混合液を、例えば顕微鏡により観察したときの前記混合液の画像を撮像し、前記画像中の微生物の多さに従って土壌の良さを判定する工程であることが好ましい。
【0011】
このように顕微鏡等で観察された混合液の画像を撮像し、それを用いて微生物の量を確認することにより、混合液中の微生物の量をより効率的に且つより正確に確認することができる。したがって、土壌の良し悪しをより効率的に且つより精度良く診断することができる。
【0012】
ここで、前記判定工程においては、前記画像中の微生物の数をカウントし、その数に従って土壌の良さを判定することが好ましい。
【0013】
微生物の数をカウントし、その数に従って土壌の良さを判定することにより、土壌の良し悪しをより客観的に且つより精度良く診断することができる。このとき、例えば所定の面積当たりの微生物の数と土壌の良し悪しとの相関関係を予め把握して判定基準を設定しておき、その判定基準とカウントした微生物の数とから土壌の良し悪しを診断することにより、より客観的な診断が可能となる。また、上記判定基準において、微生物の数に応じて土壌の良し悪しのランクを設定しておくこともできる。
【0014】
また、前記判定工程においては、前記画像の面積に占める微生物の面積の割合を求め、その割合に従って土壌の良さを判定することも好ましい。
【0015】
このように画像の面積に占める微生物の面積の割合を求め、その割合に従って土壌の良さを判定することによっても、土壌の良し悪しをより客観的に且つより精度良く診断することができる。この場合でも、例えば画像の面積に占める微生物の面積の割合と土壌の良し悪しとの相関関係を予め把握して判定基準を設定しておき、その判定基準と測定した上記面積の割合とから土壌の良し悪しを診断することにより、より客観的な診断が可能となる。また、上記判定基準において、画像の面積に占める微生物の面積の割合に応じて土壌の良し悪しのランクを設定しておくこともできる。更に、上述した微生物の数をカウントし、その数に従って土壌の良さを判定する方法と、画像の面積に占める微生物の面積の割合を求め、その割合に従って土壌の良さを判定する方法とは、組み合わせて行ってもよい。
【0016】
また、本発明の第2の土壌診断方法は、診断対象となる土壌を採取する採取工程と、採取した前記土壌と水とを、これらが均一に混ざるように混合して混合液を得る混合工程と、前記混合液を静置し、土壌が沈降する時間の長さに従って土壌の良さを判定する判定工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明者らは、上記混合液を静置した場合の土壌の沈降時間の長さが、土壌中の微生物の数と相関関係を有していることを見出した。すなわち、混合液において土壌が沈降するまでの時間が長く、長時間懸濁した状態を維持する場合ほど、土壌中の微生物の数が多いことを見出した。土壌の沈降時間と土壌中の微生物の数とが相関関係を有している理由は必ずしも明らかではないが、微生物が多いと上述したように土壌の団粒化が進むとともに、団粒化した土壌粒子は多孔質化が進み、土壌粒子が水中で分散状態を維持しやすい形状となって沈降時間が長くなるものと本発明者らは推察する。
【0018】
そして、このように混合液における土壌の沈降時間の長さを測定することにより、土壌中の微生物の数を簡易に且つ効率的に測定することができ、土壌の良し悪しを客観的に診断することができる。なお、本発明の第1及び第2の土壌診断方法は組み合わせて行ってもよい。両方の診断方法を行うことで、より精度の良い土壌診断が可能となる。
【0019】
また、本発明の第1及び第2の土壌診断方法における前記混合工程において、前記土壌と前記水との混合割合は、重量比で1:1〜1:10000であることが好ましい。
【0020】
土壌と水との混合割合が上記範囲内であることにより、土壌中の微生物の多さを観察する上で、また、土壌の沈降時間を測定する上で、より適切な混合液を得ることができる。そして、かかる混合液を用いることで、土壌の良し悪しをより客観的に且つより精度良く診断することができる。
【0021】
更に、本発明の第1及び第2の土壌診断方法における前記混合工程において、前記土壌と前記水との混合は、振とう機により振とう速度50〜300rpmで振とうすることにより行うことが好ましい。
【0022】
かかる条件で土壌と水との混合を行うことにより、土壌中の微生物の多さを観察する上で、また、土壌の沈降時間を測定する上で、より適切な混合液を得ることができる。そして、かかる混合液を用いることで、土壌の良し悪しをより客観的に且つより精度良く診断することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、良質な農作物を生産する上での土壌の良し悪しを客観的に診断することが可能な土壌診断方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0025】
(第1実施形態)
本発明の第1の土壌診断方法は、診断対象となる土壌を採取する採取工程と、採取した前記土壌と水とを、これらが均一に混ざるように混合して混合液を得る混合工程と、前記土壌と前記水とが均一に混ざった状態の前記混合液を、例えば顕微鏡により観察し、前記混合液中の微生物の多さに従って土壌の良さを判定する判定工程と、を有することを特徴とする方法である。
【0026】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0027】
採取工程は、農産物を生産する上での良し悪しを診断するべき対象となる土壌を採取する工程である。
【0028】
ここで、土壌は、診断対象となる土壌領域内の一箇所から採取してもよいが、その領域内の土壌の良し悪しをより客観的に且つ精度良く診断するために、領域内の複数箇所から土壌を採取することが好ましく、3箇所以上から採取することがより好ましく、5箇所以上から採取することが更に好ましい。
【0029】
例えば、診断対象となる土壌領域の形状が略四角形である場合、図1に示すように、土壌領域1における2つの対角線の交点付近を採取位置a、上記の交点から土壌領域1の各頂点までの線分の中点付近をそれぞれ採取位置b〜eとし、少なくともこの5箇所の採取位置a〜eから土壌を採取することが好ましい。このように少なくとも採取位置a〜eから土壌を採取することにより、土壌領域1における土壌の良し悪しをより客観的に且つより精度良く診断することができる。
【0030】
また、土壌は、表土から深さ20〜30cmまでの部分から採取することが好ましい。
【0031】
複数箇所から土壌を採取した場合、これらの土壌を均一に混合し、得られた混合土壌をその後の工程で用いるようにする。なお、それぞれの箇所から採取する土壌の量はほぼ等しくすることが好ましい。
【0032】
また、採取した土壌(混合土壌)は、その後の工程で使用するまでに土壌中の微生物の量が変化しないようにすることが好ましい。土壌中の微生物の量を変化させないためには、土壌を採取して直ぐに次の工程を行うことが好ましいが、直ぐに次の工程を行うことが困難な場合には、採取した土壌を未乾燥状態でビニール袋等に入れ、密閉して冷暗所で保存することが好ましい。
【0033】
混合工程は、上記採取工程で用意した土壌と水とを、これらが均一に混ざるように混合して混合液を得る工程である。
【0034】
ここで、上記水としては、例えば、純水、蒸留水、イオン交換水、逆浸透膜水、雨水、自然水、河川水、及び水道水等を用いることができる。これらの中でも、不純物の影響がなく、土壌の良し悪しをより精度良く診断することができることから、純水、蒸留水、イオン交換水、及び逆浸透膜水を用いることが好ましい。
【0035】
また、土壌と水との混合割合は、重量比で1:1〜1:10000とすることが好ましく、1:1〜1:100とすることがより好ましく、1:1〜1:10とすることが更に好ましく、1:4〜1:6とすることが特に好ましく、約1:5とすることが最も好ましい。土壌と水との混合割合が上記範囲内であることにより、土壌と水とが均一に混合した混合液を得ることができる。そして、かかる混合液を用いることで、土壌の良し悪しをより客観的に且つより精度良く診断することができる。
【0036】
また、土壌と水との混合は、土壌及び水を振とう瓶に入れ、振とう機を用いて振とうすることにより行うことができる。ここで、振とう機としては、回転式、ロール式、縦型振とう式等のいずれの振とう機を用いてもよい。また、このときの振とう時間は、1〜10分間とすることが好ましく、4〜6分間とすることがより好ましい。また、振とう速度は、50〜300rpmとすることが好ましく、100〜150rpmとすることがより好ましく、約120rpmとすることが特に好ましい。振とう速度を上記範囲内とすることにより、土壌と水とが均一に混合された混合液をより短時間で効率的に且つ確実に調製することができるとともに、かかる混合液を用いることで、土壌の良し悪しの診断をより客観的に且つより精度良く行うことができる。なお、より均一な混合液を得る観点から、土壌と水との混合は、振とう速度を一定として行うことが好ましい。また、振とうは室温で行うことができる。
【0037】
以上のように混合工程を行うことにより、土壌と水とが均一に混合された混合液を得ることができる。
【0038】
判定工程は、上記混合工程で得られた、土壌と水とが均一に混ざった状態の上記混合液を顕微鏡等により観察し、混合液中の微生物の多さに従って土壌の良さを判定する工程である。ここで、上記混合液は、混合工程を行った後に1分程度静置し、土壌と水との今後状態を安定させてから判定工程で用いることが好ましい。
【0039】
顕微鏡による混合液の観察は、例えば以下の手順で行うことができる。まず、土壌と水とが均一に混ざった状態の上記混合液を、観察に必要な量だけスポイト又はガラス棒等を用いてスライドガラス上に取り、カバーガラスで覆って顕微鏡観察用のプレパラートを用意する。そして、このプレパラートを光学顕微鏡で観察する。このとき、顕微鏡の倍率は、微生物を観察しやすいことから、500〜2000倍とすることが好ましく、750〜1500倍とすることがより好ましく、約1000倍とすることが特に好ましい。
【0040】
判定工程においては、上記のようにして混合液中の微生物の量を観察し、その量に従って土壌の良し悪しを判定する。混合液中の微生物の量が多いほど、良質な土壌であると判定することができる。
【0041】
ここで、微生物の量の観察より効率的に行う観点から、撮像機能を有する光学顕微鏡を用いて混合液の画像(動画及び/又は静止画像)を撮像し、その画像から微生物の量を観察することが好ましい。
【0042】
このとき、土壌の良し悪しは、撮像した画像中の微生物の数を目視にてカウントし、その数に従って判定してもよく、撮像した画像の面積に占める微生物の面積の割合を画像解析により求め、その割合に従って判定してもよい。
【0043】
ここで、具体的な微生物の量に基づく土壌の良し悪しの判定基準は、上記混合工程における土壌と水との混合割合や、顕微鏡による観察面積等によって変わるため、一概には言えないが、その一例として特定の条件で微生物の数を測定する場合の判定基準を以下に示す。
【0044】
まず、土壌と純水との混合割合を重量比で1:5とし、これを振とう機にて振とう速度120rpmで5分間振とうして混合液を調製する。この混合液をガラス棒にて一滴抽出してプレパラートをつくり、撮像機能を有する光学顕微鏡にて1000倍で観察して、100μm×80μmの領域の画像を撮像する。そして、得られた画像中の微生物の数を目視にてカウントする。
【0045】
この場合、微生物の数が500以上であれば、農作物を生産するのに適した良質な土壌であると判定することができ、微生物の数が1000以上であれば、団粒化が進んだより良質な土壌であると判定することができ、微生物の数が3000以上であれば、団粒化が特に進んでおり極めて良質な土壌であると判定することができる。一方、微生物の数が500未満であると、農作物を生産する上で不十分な土壌であると判定することができ、微生物の数が100未満であると、農作物の生産に不適切な土壌であると判定することができる。なお、微生物の数が100未満である土壌は、直前に土壌消毒を行ったか、直前に殺菌剤や除草剤等を使用した可能性があると考えられる。
【0046】
以上説明した採取工程、混合工程及び判定工程を含む本発明の第1の土壌診断方法によれば、良質な農作物を生産する上での土壌の良し悪しを客観的に且つ精度良く診断することができる。
【0047】
なお、本発明の第1の土壌診断方法においては、微生物の数に加え、微生物の動きをも考慮して土壌の良し悪しを診断してもよい。微生物の動きが早く、活発であるほど、団粒化が進んだ、より良質な土壌であると診断することができる。
【0048】
(第2実施形態)
本発明の第2の土壌診断方法は、診断対象となる土壌を採取する採取工程と、採取した前記土壌と水とを、これらが均一に混ざるように混合して混合液を得る混合工程と、前記混合液を静置し、土壌が沈降する時間の長さに従って土壌の良さを判定する判定工程と、を有することを特徴とする方法である。
【0049】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0050】
採取工程及び混合工程は、上記第1実施形態において説明した手順と同様の手順で行うことができる。
【0051】
判定工程は、上記混合工程で得られた混合液を静置し、土壌が沈降する時間の長さに従って土壌の良さを判定する工程である。
【0052】
ここで、上記混合液を静置した場合の土壌の沈降時間が長いほど、土壌中の微生物の数が多く、良質な土壌であると判定することができる。なお、具体的な沈降時間に基づく土壌の良し悪しの判定基準は、上記混合工程における土壌と水との混合割合等によって変わるため、一概には言えないが、その一例として特定の条件で観察する場合の判定基準を以下に示す。
【0053】
まず、土壌5g及び純水25gを振とう機にて振とう速度120rpmで5分間振とうして混合液を調製する。この混合液を40mlの試験管に入れて室温で静置する。
【0054】
この場合、試験管を静置してから、土壌が沈降して試験管内の混合液の濁度が明らかに不均一となるまでの時間を土壌の沈降時間として測定し、この沈降時間が1時間以上であれば、土壌中に十分な数の微生物が存在しており、農作物を生産するのに適した良質な土壌であると判定することができ、沈降時間が24時間以上であれば、土壌中に極めて多くの微生物が存在しており、団粒化が進んだ極めて良質な土壌であると判定することができる。一方、沈降時間が1時間未満であると、土壌中の微生物の数が不十分であり、農作物を生産する上で不十分な土壌であると判定することができる。
【0055】
以上説明した採取工程、混合工程及び判定工程を含む本発明の第2の土壌診断方法によれば、土壌の良し悪しを客観的に診断することができる。なお、本発明の第1及び第2の土壌診断方法は組み合わせて行ってもよい。両方の診断方法を行うことで、より精度の良い土壌診断が可能となる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
主に蔬菜の栽培を行い、蔬菜の収量及び品質が良好である普通畑の関東ローム層の土壌について、図1に示す採取位置a〜eの5箇所から、表土から深さ20〜30cmまでの部分をそれぞれ約500g採取し、これらをよく混合した。次に、混合した土壌を5g秤量して振とう瓶に入れ、次いで純水25gを振とう瓶に入れた。この振とう瓶を、全農型振とう機(富士平工業社製)を用いて振とう速度120rpmで5分間振とうし、土壌と純水とが均一に混合された混合液を得た。
【0058】
次に、ガラス棒を用いて上記混合液1滴をスライドガラス上に取り、カバーガラスで覆って顕微鏡観察用のプレパラートを作製した。このプレパラートを、撮像機能を有する光学顕微鏡(オリンパス社製、商品名:B201)にて1000倍の倍率で観察し、混合液の100μm×80μmの領域の画像を撮像した。この画像(顕微鏡写真)を図2に示す。なお、図中の2は微生物を示し、3は土壌塊を示す。この画像から、土壌塊3の個々が小さく点在し、それらの間を多くの微生物2が埋めていることが観察される。
【0059】
撮像した画像中の微生物2の数を目視にてカウントしたところ、微生物2の数は3000以上であった。また、光学顕微鏡にて混合液を観察した際、微生物の動きは比較的早かった。これらのことから、この土壌は良質な農作物を生産するのに適した良質な土壌であると診断した。
【0060】
(実施例2)
実施例1とは異なる地域で、主に蔬菜の栽培を行い、蔬菜の収量及び品質が不十分な普通畑の関東ローム層の土壌について、図1に示す採取位置a〜eの5箇所から、表土から深さ20〜30cmまでの部分をそれぞれ約500g採取し、これらをよく混合した。この混合土壌を用いた以外は実施例1−1と同様にして混合液を作製した。また、この混合液について、実施例1−1と同様にして、光学顕微鏡により1000倍の倍率で観察し、混合液の100μm×80μmの領域の画像を撮像した。この画像(顕微鏡写真)を図3に示す。なお、図中の2は微生物を示し、3は土壌塊を示す。この画像から、土壌塊3の個々が大きく、微生物2の数も極めて少ないことが観察される。
【0061】
撮像した画像中の微生物2の数を目視にてカウントしたところ、微生物2の数は300以下であった。また、光学顕微鏡にて混合液を観察した際、微生物の動きは比較的遅かった。これらのことから、この土壌は良質な農作物を生産するのに不適切な土壌であると診断した。
【0062】
以上のように、本発明の土壌診断方法によれば、良質な農作物を生産する上での土壌の良し悪しを客観的に診断できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】診断対象となる土壌の採取位置を説明するための平面図である。
【図2】実施例1の混合液の顕微鏡写真(倍率1000倍)である。
【図3】実施例2の混合液の顕微鏡写真(倍率1000倍)である。
【符号の説明】
【0064】
1・・・土壌領域、2・・・微生物、3・・・土壌塊、a,b,c,d,e・・・土壌採取位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象となる土壌を採取する採取工程と、
採取した前記土壌と水とを、これらが均一に混ざるように混合して混合液を得る混合工程と、
前記土壌と前記水とが均一に混ざった状態の前記混合液を観察し、前記混合液中の微生物の多さに従って土壌の良さを判定する判定工程と、
を有することを特徴とする土壌診断方法。
【請求項2】
前記判定工程は、前記土壌と前記水とが均一に混ざった状態の前記混合液を観察したときの前記混合液の画像を撮像し、前記画像中の微生物の多さに従って土壌の良さを判定する工程であることを特徴とする請求項1記載の土壌診断方法。
【請求項3】
前記判定工程において、前記画像中の微生物の数をカウントし、その数に従って土壌の良さを判定することを特徴とする請求項2記載の土壌診断方法。
【請求項4】
前記判定工程において、前記画像の面積に占める微生物の面積の割合を求め、その割合に従って土壌の良さを判定することを特徴とする請求項2記載の土壌診断方法。
【請求項5】
診断対象となる土壌を採取する採取工程と、
採取した前記土壌と水とを、これらが均一に混ざるように混合して混合液を得る混合工程と、
前記混合液を静置し、土壌が沈降する時間の長さに従って土壌の良さを判定する判定工程と、
を有することを特徴とする土壌診断方法。
【請求項6】
前記混合工程において、前記土壌と前記水との混合割合は、重量比で1:1〜1:10000であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の土壌診断方法。
【請求項7】
前記混合工程において、前記土壌と前記水との混合は、振とう機により振とう速度50〜300rpmで振とうすることにより行うことを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の土壌診断方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate