説明

土壌診断装置

【課題】ベースラインの安定が速いフロー式のバイオセンサーを土壌診断装置として応用するのに好適な構成を提供する。
【解決手段】ユーザからの洗浄の指示により、制御部12は、ポンプ31,32,51を作動させ、また、バルブ53,54を開状態にすると共にバルブ33を閉状態にする。洗浄液タンク41の高圧の洗浄液は、配管43を通った後に配管21の中間部21aの下流側を経て脱気槽4に送られる。また、容器61の洗浄液は、配管21を通って脱気槽4に送られる。洗浄モードを終えるときには、制御部12は、ポンプ31,32,51の作動を停止させ、また、バルブ53,54を閉状態にすると共にバルブ33を開状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローシステムを採用した土壌診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサーは、生物の持つ優れた分子識別能力を利用して測定対象物質を認識する部位(分子識別素子)と、認識した情報を電子的な信号などに変換する部位(信号変換素子)とを備えているものである。この分子識別素子として、例えば、酵素、抗体、DNA、細胞、微生物などが用いられる。また、信号変換素子としては、電極、サーミスタ、受光デバイス、水晶振動子などの物理的測定装置が使用される。このため、バイオセンサーは、この2種類の素子(コンポーネント)の組み合わせにより様々なものが提案されている。
【0003】
このようなバイオセンサーを用いた土壌診断装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、1回の測定ごとに電極を測定容器から上げて洗浄し、測定容器内のサンプル液を新たなサンプル液に交換するバッチ式を採用した土壌診断装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/049854号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなバッチ式の土壌診断装置では、新たなサンプル液に電極を浸漬するときには、液の乱流が起こってしまう。また、電極に気泡がつきやすく、1度ついた気泡は取れにくい。このため、サンプル液を交換するときには、電極の出力が不安定な状態となり、ベースラインが安定するのに時間がかかっていた。このような不具合は、従来からあるフロー式バイオセンサーを土壌診断装置に応用すれば、電極が固定された状態で、電極の洗浄やサンプル液の置き換えが行われることから、一応の解決を図れる。
【0006】
ところが、土壌診断装置に用いられるサンプル液は、診断対象の土壌試料を採取し、水、溶媒または緩衝液を加えて撹拌、混合するなどして生成されるため、サンプル液中に土壌試料が混入している。このため、サンプル液をサンプル流路を介してフローセル内に導入するときに、土壌試料も流入することとなり、この土壌試料は、フローセル内に沈殿する。この土壌試料は電極に付着するなどして、出力値に影響を及ぼし、正確な診断ができなくなるため、除去する必要がある。特に応答の小さい土壌試料を診断する場合には、高濃度の土壌試料を添加する必要があり、サンプル液中の土壌試料の割合が多くなるため、サンプル流路やフローセル内に多量の土壌試料が流入してしまう。
【0007】
ここで、特開2000−146893号公報には、メッシュの濾網を用いて検水導入用の流路の目詰まり・狭窄を防止し、円滑なBOD計測が可能な計測装置が開示されている。しかしながら、土壌診断装置においては、メッシュの濾網を用いても、土壌試料がサンプル流路やフローセル内に流れ込むことを完全に防止することはできない。また、BOD測定のときに問題となる夾雑物は主に藻類なので、仮にフローセル内に流入しても洗浄液の送液等で取り除くことができるが、土壌試料は重く、通常、下方からサンプルを導入し、上方から排出させる構成をとるフローセルから排出させることは、従来の構造では困難であった。
【0008】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ベースラインの安定が速いフロー式のバイオセンサーを土壌診断装置として応用するのに好適な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的のもと、本発明が適用される土壌診断装置は、バイオセンサーを用いて土壌を診断する土壌診断装置であって、診断対象の土壌により生成された試料液体をバイオセンサーへ送り出す第1の送液部と、第1の送液部により送り出された試料液体がバイオセンサーに触れて流れ出ていくように配設されたフローセルと、第1の送液部により送り出される試料液体の流量よりも多い流量でフローセルに送られるように洗浄液を送液する第2の送液部と、を含むものである。
【0010】
第2の送液部は、洗浄液を収容する収容部と、収容部を加圧する加圧部と、加圧部により加圧された収容部の洗浄液がフローセルに送られる流路の途中に配置され、流路を開閉するための開閉部と、を備えることを特徴とすることができる。また、加圧部による収容部の圧力を検知する検知手段と、検知手段による検知結果に基づいて収容部の圧力を制御する制御部と、を更に含むことを特徴とすることができる。
また、第1の送液部は、試料液体の代わりに洗浄液をフローセルに送り出すことができるように構成され、これにより、第1の送液部からフローセルまでの区間の洗浄を行うことを特徴とすることができる。
【0011】
他の観点から捉えると、本発明が適用される土壌診断装置は、バイオセンサーを用いて土壌を診断する土壌診断装置であって、診断対象の土壌により生成された試料液体をバイオセンサーへ送り出す送液部と、送液部により送り出された試料液体がバイオセンサーに接して流れ出ていくように配設され、かつ、試料液体の流量よりも多い流量で洗浄液が送られるフローセルと、フローセルから流れていく試料液体を装置外に排出する排出部と、試料液体が流れる流路のフローセルより上流側に配置され、送液部により送り出された試料液体から気泡を除去する気泡除去部と、を含み、送液部から送り出す試料液体の量よりも排出部で排出される試料液体の量の方が少なく、その差分の試料液体が気泡除去部において気泡と共に装置外に排出されることを特徴とするものである。
【0012】
フローセルに送られる試料液体を予熱する予熱部を更に含み、予熱部は、気泡除去部に設けられていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ベースラインの安定が速いフロー式のバイオセンサーを土壌診断装置として応用するのに好適な構成を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る土壌診断装置1の構成を示す概略図である。
図1に示す土壌診断装置1は、病原微生物と一般土壌微生物を2本の酸素電極にそれぞれ固定化した微生物センサー(バイオセンサー)を用いて土壌診断を行う装置であり、電極A、電極B、フローセル2、フローセル3及びトランスデューサー部11を備えている。
電極Aは、病原微生物を酸素電極に固定化した微生物センサーであり、電極Bは、一般土壌微生物を酸素電極に固定化した微生物センサーである。フローセル2は、入口2a及び出口2bを有している。そして、フローセル2は、入口2aから流入した診断対象の液体が電極Aに触れて出口2bから流れ出ていくように構成されている。同様に、フローセル3は、入口3aおよび出口3bを有し、入口3aから流入した診断対象の液体が電極Bに接して出口3bから流れて出ていくように構成されている。トランスデューサー部11は、電極Aからの信号及び電極Bからの信号を受信するように構成されている。
【0015】
土壌診断装置1の概要について更に説明すると、この電極A及び電極Bに土壌サンプルを接触させ、土壌環境がどちらの菌の増殖に至適であるかを、2つの菌の呼吸活性の変化を比較することにより土壌を診断する。具体的には、その土壌サンプルが、病原微生物の増殖しやすい発病土壌であるか、または病原微生物の増殖しにくい健全土壌(病害抑制型土壌)であるかについて診断する。なお、この土壌サンプルは、診断対象の土壌試料を採取し、水、溶媒または緩衝液を加えて撹拌、混合するなどして生成される。
【0016】
ここで、土壌診断の原理を説明すると、例えば、発病土壌を土壌サンプルとした場合には、病原微生物が住みやすい土壌環境であるため、電極Aの病原微生物の呼吸活性が電極Bの一般土壌微生物よりも高くなる。その一方で、健全土壌を土壌サンプルとした場合には、一般土壌微生物が住みやすい土壌環境であるため、電極Bの一般土壌微生物の呼吸活性が電極Aの病原微生物よりも高くなる。電極Aからの信号及び電極Bからの信号をトランスデューサー部11が受信することで、2つの菌の呼吸活性についての情報を取得することができる。
【0017】
したがって、土壌診断装置1を利用すれば、複雑で多様なために解析が難しい土の中の状態を簡単かつ迅速に診断できる。このため、植物の病気、特に土の中で起こる病気の早期発見や早期防除が可能になる。
【0018】
次に、土壌診断装置1の構成について更に説明する。
土壌診断装置1は、土壌サンプルのための各種の流路機器を備えている。すなわち、土壌診断装置1は、土壌サンプルをフローセル2,3に送るための流路を形成すると共に、フローセル2,3に送られた土壌サンプルを廃液として装置外に排出するための流路を形成する複数の配管を備えている。具体的には、土壌診断装置1は、フローセル2,3の上流側に配置され、土壌サンプルの容器5とフローセル2,3をつなぐ配管21,22と、フローセル2,3の下流側に配置される配管23と、を備えている。なお、配管22は、途中で二股に分かれて形成されている。また、配管23は、二股から途中で1本に形成されている。
【0019】
そして、土壌診断装置1は、配管21に配設され、容器5の土壌サンプルをフローセル2,3に圧送するように作動するポンプ(第1の送液部、電磁弁)31と、配管23に配設され、フローセル2,3の土壌サンプルを装置外に排出するように作動するポンプ32と、を備えている。また、土壌診断装置1は、ポンプ31,32の作動を制御する制御部12を備えている。
【0020】
土壌診断装置1は、土壌サンプルの気泡抜き機構(気泡除去部)を備えている。すなわち、土壌診断装置1は、配管21と配管22との間に配設され、フローセル2,3に供給される土壌サンプルから気泡を分離除去する脱気槽(気泡抜きブロック)4と、脱気槽4の上部に配置され、脱気槽4内の土壌サンプルの気泡を土壌サンプルの一部と共に脱気槽4の外に出すための配管24と、制御部12により開閉動作が制御されるバルブ33と、を備えている。土壌サンプルがフローセル2,3に送られる前に脱気槽4によって気泡が除去される。言い換えると、脱気槽4によって気泡が除去された土壌サンプルがフローセル2,3に送られる。
脱気槽4は、フローセル2,3に送られる土壌サンプルを予熱するための予熱部4aを有している。すなわち、脱気槽4は、予熱機能を兼用している。なお、予熱部4aは、制御部12により制御されている。
【0021】
また、土壌診断装置1は、洗浄液でフローセル2,3を洗浄するための各種の流路機器を備えている。すなわち、ポンプ(加圧部)51と洗浄液タンク41とをつなぐ配管42と、洗浄液タンク41と配管21の中間部21aとをつなぐ配管43と、配管23の中間部23aから分岐して装置外へ延びる配管44と、配管44に取り付けられ、制御部12により開閉動作が制御されるバルブ54と、を備えている。
【0022】
そして、土壌診断装置1は、高流量洗浄機構(第2の送液部)を備えている。すなわち、土壌診断装置1は、洗浄液タンク(収容部)41と、洗浄液タンク41をエアで加圧するように作動する空気圧送用のポンプ(加圧部)51と、配管43に取り付けられ、制御部12により開閉動作が制御されるバルブ(開閉部)53とを備えている。
【0023】
土壌診断装置1は更に、配管42に取り付けられ、ポンプ51により加圧される洗浄液タンク41内の圧力を測定する圧力センサー(検知手段)52と、を備えている。制御部12は、圧力センサー52から測定情報を取得し、その測定情報に基づいてポンプ51の作動を制御する。このようにして、制御部12は、洗浄液タンク41の内部圧力が一定範囲(例えば、0.05MPa)となるようにしている。
【0024】
ここで、高流量洗浄機構(第2の送液部)が洗浄液を送液するときの流量は、土壌サンプルを送り出すためのポンプ31の流量よりも高流量である。その一例を示すと、ポンプ31の流量は毎分4mlであり、高流量洗浄機構による送液流量は毎分200mlである。
【0025】
更に説明すると、配管21の中間部21aは、配管21におけるポンプ31と脱気槽4との間に位置している。すなわち、洗浄液タンク41の洗浄液は、配管43を通って脱気槽4に送られる。このため、配管21の中間部21aよりも上流側の区間は、洗浄液タンク41の洗浄液によって洗浄することができない。しかし、後述するように、配管21の区間は、洗浄液の容器61(図3参照)により洗浄される。
【0026】
図2は、土壌診断装置1のブロック図である。
図2に示すように、土壌診断装置1は、トランスデューサー部11からの信号が入力されると共に制御部12との間で信号の入出力がなされ、各種のデータ処理を行う処理部(CPU)13を備えている。また、土壌診断装置1は、土壌診断装置1に対する指示をユーザが行うための操作部(操作スイッチ)14と、処理部13によるデータ処理の結果をユーザに知らせるための表示部(表示画面)15と、各種のデータを記憶する記憶部(メモリ)16と、を備えている。
【0027】
次に、土壌診断装置1を用いた土壌診断の手順について洗浄工程を含めて説明する。
図2に示す操作部14をユーザが操作して土壌診断の指示を行うと、操作部14は、その信号を図2に示す処理部13に送信する。処理部13は、所定の処理をした後に、制御部12に伝送する。すると、制御部12は、土壌診断モードとなるように各種の機器を制御する。すなわち、制御部12は、図1に示すポンプ31,32を作動させ、また、図1に示すように、バルブ33を開状態にする。なお、土壌診断モードのときには、制御部12は、ポンプ51が停止状態であり、かつ、図1に示すように、バルブ53,54が閉状態となるように制御する。
【0028】
図1に示す容器5の土壌サンプルは、ポンプ31により吸引され、配管21を通じて脱気槽4に送られる。脱気槽4では、土壌サンプルの水面にある気泡が土壌サンプルの一部と共に配管24を通って排出される。更に説明すると、ポンプ31により脱気槽4に送られた土壌サンプルのうち例えば2割程度が配管24から気泡と共に廃液され、残りの8割程度がポンプ32により廃液される。すなわち、ポンプ31により毎分4mlの土壌サンプルが脱気槽4に送られると、フローセル2,3に供給されるのは、毎分3.2mlであり、残りの毎分0.8mlが配管24から廃液される。
【0029】
このように、ポンプ31とポンプ32との流量に差を設けている。具体的には、脱気槽4の上流側に配置されたポンプ31の流量よりも、脱気槽4の下流側に配置されたポンプ32の流量を小さくしている。すなわち、入口側の流量よりも出口側の流量を少なくしている。このように構成することにより、気泡の除去を確実に行うことができる。
【0030】
土壌サンプルは、ポンプ31,32の作用によって、脱気槽4から配管22を通ってフローセル2,3に供給され、電極A及び電極Bに触れる。電極A及び電極Bからは、土壌サンプルの供給に伴う出力変化がトランスデューサー部11に信号として送られ、その信号は、処理部13にて所定のデータ処理が施される。これにより、土壌サンプルとしての土壌が発病土壌か健全土壌かを診断することができる。土壌診断の結果は、図2に示す表示部15に表示され、また、必要に応じて記憶部16に記憶される。
【0031】
このような土壌診断は、通常複数回行われる。そして、土壌診断を行う度に、土壌診断装置1の全体の洗浄が行われる。すなわち、土壌診断モードと次の土壌診断モードとの間には、洗浄モード(洗浄工程)が行われる。
図3は、洗浄モードを説明するための土壌診断装置1の概略構成図である。
図3に示すように、洗浄モードを行うときには、土壌サンプルの容器5(図1参照)の代わりに、洗浄液の容器61を配管21の上流側の端部に設置する。そして、図2に示す操作部14をユーザが操作して洗浄の指示を行うと、その信号を受けた制御部12は、洗浄モードとなるように各種の機器を制御する。すなわち、制御部12は、ポンプ31、ポンプ32及びポンプ51を作動させ、また、バルブ53及びバルブ54を開状態にすると共に、バルブ33を閉状態にする。なお、ポンプ51は、上述したように、圧力センサー52の測定情報に基づきフィードバック制御される。
【0032】
洗浄液タンク41の洗浄液は、配管43を通った後に配管21の中間部21aの下流側を経て脱気槽4に送られる。また、容器61の洗浄液は、配管21を通って脱気槽4に送られる。このようにして、配管21の全長にわたって洗浄液が通ることで、配管21の洗浄が行われる。また、ポンプ31の洗浄も行われる。また、配管43におけるバルブ53の下流側部分の洗浄も行われる。
【0033】
脱気槽4では、バルブ33が閉状態のため、洗浄液が配管24から外へ排出されることはない。このため、洗浄液タンク41からの高流量の洗浄液は、すべてフローセル2,3に送られる。そして、洗浄液は、配管23から廃液されると共に、配管44からも廃液される。したがって、脱気槽4、配管22,23、フローセル2,3及び電極A,Bの洗浄が行われる。ポンプ32の洗浄及び配管44の洗浄も行われる。
言い換えると、本実施の形態では、洗浄モード時には、高流量の洗浄液がフローセル2,3を流れるように構成されている。更には、洗浄モードの際に、ポンプ31,32も作動させることで、洗浄液タンク41の洗浄液が通らない他のラインも洗浄することが可能になる。
【0034】
ここで、土壌診断モードでは、電極A及び電極Bの各々に、土壌サンプルに含まれている土壌試料の沈殿が生じる。そして、洗浄モードでは、土壌診断モードの場合の流量よりも高い流量で洗浄液を電極A及び電極Bに送り込むので、このような沈殿物は洗浄液と共に装置外へ洗い流される。
【0035】
洗浄モードを終えるときには、制御部12は、ポンプ51の作動を停止させ、また、バルブ53,54を閉状態にすると共にバルブ33を開状態にする。洗浄モードが終了すると、上述した土壌診断モードに移行する。
【0036】
このように、本実施の形態では、測定ごとに容器内の土壌サンプルを交換するバッチシステム(バッチ方式)ではなく、測定に際し土壌サンプルを連続的に流すフローシステム(フロー方式)を採用している。
バッチシステムにおいては、1回の測定ごとに電極を測定容器から上げて洗浄し、測定容器内の液をすべて交換する。そのため、電極に気泡がつきやすく、また、電極を動かすために土壌サンプルの乱流が起こる等の原因でベースラインの安定に時間がかかっていた。その一方で、本実施の形態のようにフローシステムを採用し、電極を固定してポンプで土壌サンプルを流すように構成すれば、ベースラインの安定が速く、出力値が安定するため診断精度が向上し、標準偏差も小さくなることが発明者の実験により確認されている。更に、高濃度の土壌試料の添加が可能になり、応答の小さい黒ぼく土などの土壌試料の診断精度が向上することも確認されている。
【0037】
また、フローシステムを採用する場合には、電極A,Bへの気泡の影響が懸念されるが、本実施の形態では、脱気槽4で土壌サンプルを脱気することにより、フローセル2,3へ気泡が送られることを防止している。このため、フローシステムの採用に伴う気泡の影響を小さく或いは無くすことができる。
【0038】
本実施の形態では、高流量の洗浄液がフローセル2,3を通過するので、フローセル2,3の内部を洗浄することができる。このため、低圧力の洗浄液では除去できないようなフローセル2,3の中の沈殿物を確実に除去することができる。なお、発明者の実験では、すべての配管21,22,23,24,42,43,44の内径が2mm、脱気槽4の内径が6mm、フローセル2,3の内径が28mm、電極A,Bの直径が26mmの場合において、配管44からの廃液量が、毎分100ml以上となるように洗浄液を流せば、沈殿物を除去することを確認している。なお、この場合には、フローセル2,3の内周面と電極A,Bの外周面との距離は、約1mmである。
また、洗浄モードでは、上述したような高流量洗浄機構によって高速洗浄が可能で、土壌診断装置1の全流路を例えば1分程度の短時間で完了させることができる。したがって、洗浄モードの時間を短くすることができる。また、安定した電極A,Bの使用により、診断時間も短縮することが可能である。
【0039】
更に説明すると、本実施の形態におけるポンプ51は、エアにて洗浄液タンク41の内部圧力を0.05MPa程度にできれば十分であることから、高価な高圧圧縮空気ポンプを用いる必要がない。したがって、安価なポンプで足り、コストを削減することが可能になる。
【0040】
また更に説明すると、本実施の形態では、洗浄のための配管42,43、44を、土壌診断に用いられる配管21,22,23に対して並列接続している。このため、土壌診断装置1の配管系統を簡略化することができ、構造の簡素化やコストダウンを実現することが可能になる。
なお、本実施の形態では、配管43が脱気槽4の上流側の位置で配管21と接続しているが、配管43を脱気槽4に接続するように構成することも考えられる。
【0041】
以上、本実施の形態について説明したが、その一変形例について説明する。すなわち、本実施の形態における洗浄液タンク41、配管42、ポンプ51、圧力センサー52及びバルブ53の代わりに、図示しない高流量送液ポンプを用いることも考えられる。この高流量送液ポンプは、図示しない洗浄液供給部から洗浄液の供給を受け、かつ、高流量の洗浄液が配管43に送り出されるように設置される。
【0042】
このように、上述した一変形例では、低流量のポンプ31と高流量送液ポンプとを併設している。ポンプ31の代わりに、高流量から低流量まで対応することが可能な図示しないポンプを用いて、土壌サンプルの供給と洗浄液の供給とを1つの流路で行うことも考えられるが、そのようなポンプは高価であるため、高価なポンプを用いると、装置の製造コストを大きく押し上げる結果になる。これに対し、一変形例のような安価なポンプであれば2つ併設しても、装置の製造コストを削減することが可能になり、コストダウンが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施の形態に係る土壌診断装置の構成を示す概略図である。
【図2】土壌診断装置のブロック図である。
【図3】洗浄モードを説明するための土壌診断装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0044】
1…土壌診断装置、2,3…フローセル、4…脱気槽、4a…予熱部、5,61…容器、11…トランスデューサー部、12…制御部、21,22,23,24,42,43,44…配管、21a,23a…中間部、31,32,51…ポンプ、33,53,54…バルブ、41…洗浄液タンク、52…圧力センサー、A,B…電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオセンサーを用いて土壌を診断する土壌診断装置であって、
診断対象の土壌により生成された試料液体を前記バイオセンサーへ送り出す第1の送液部と、
前記第1の送液部により送り出された試料液体が前記バイオセンサーに触れて流れ出ていくように配設されたフローセルと、
前記第1の送液部により送り出される試料液体の流量よりも多い流量で前記フローセルに送られるように洗浄液を送液する第2の送液部と、
を含む土壌診断装置。
【請求項2】
前記第2の送液部は、
洗浄液を収容する収容部と、
前記収容部を加圧する加圧部と、
前記加圧部により加圧された前記収容部の洗浄液が前記フローセルに送られる流路の途中に配置され、当該流路を開閉するための開閉部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の土壌診断装置。
【請求項3】
前記加圧部による前記収容部の圧力を検知する検知手段と、
前記検知手段による検知結果に基づいて前記収容部の圧力を制御する制御部と、
を更に含むことを特徴とする請求項2に記載の土壌診断装置。
【請求項4】
前記第1の送液部は、試料液体の代わりに洗浄液を前記フローセルに送り出すことができるように構成され、これにより、当該第1の送液部から当該フローセルまでの区間の洗浄を行うことを特徴とする請求項1に記載の土壌診断装置。
【請求項5】
バイオセンサーを用いて土壌を診断する土壌診断装置であって、
診断対象の土壌により生成された試料液体を前記バイオセンサーへ送り出す送液部と、
前記送液部により送り出された試料液体が前記バイオセンサーに接して流れ出ていくように配設され、かつ、当該試料液体の流量よりも多い流量で洗浄液が送られるフローセルと、
前記フローセルから流れていく試料液体を装置外に排出する排出部と、
試料液体が流れる流路の前記フローセルより上流側に配置され、前記送液部により送り出された試料液体から気泡を除去する気泡除去部と、
を含み、
前記送液部から送り出す試料液体の量よりも前記排出部で排出される試料液体の量の方が少なく、その差分の試料液体が前記気泡除去部において気泡と共に装置外に排出されることを特徴とする土壌診断装置。
【請求項6】
前記フローセルに送られる試料液体を予熱する予熱部を更に含み、
前記予熱部は、前記気泡除去部に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の土壌診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−309825(P2007−309825A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140250(P2006−140250)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【出願人】(591042403)株式会社サカタのタネ (10)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】