説明

土壌還元消毒方法、土壌還元消毒剤、土壌湿潤化消毒方法、土壌湿潤化消毒剤および土壌消毒剤潅注システム

【課題】土壌中、特には作土中の植物病原菌、センチュウ等の病害虫などを防除することができ、雑草の発芽を抑制できる、土壌消毒剤潅注システムを提供する。
【解決手段】土壌にエタノール希釈水溶液を含有せしめて湛水状態とし、水とエタノールの蒸発を抑制しつつ保持して土壌を消毒する土壌還元消毒方法。エタノール水溶液からなる土壌還元消毒剤。土壌にエタノール希釈水溶液を含有せしめて湿潤状態とし、水とエタノールの蒸発を抑制しつつ保持して土壌を消毒する土壌湿潤化消毒方法。エタノール水溶液からなる土壌湿潤化消毒剤。一端が水供給源に接続され、他端が潅水チューブ7入口に接続された給水配管と、液肥混入器2と、エタノール水溶液貯蔵槽5と、多数枝分かれした潅水チューブ7とを備える土壌消毒剤潅注システム。酢酸を併用する土壌還元消毒方法、土壌還元消毒剤、土壌湿潤化消毒方法、土壌湿潤化消毒剤、土壌消毒剤潅注システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌還元消毒方法、土壌還元消毒剤、土壌湿潤化消毒方法、土壌湿潤化消毒剤および土壌消毒剤潅注システムに関する。詳しくは、土壌中の植物病原菌,センチュウ等の土壌病害虫防除、雑草の発芽抑制などのための、土壌還元消毒方法、土壌還元消毒剤;土壌中の植物病原菌,センチュウ等の土壌病害虫防除、雑草の発芽抑制などのための、土壌湿潤化消毒方法、土壌湿潤化消毒剤;および、作土中の植物病原菌,センチュウ等の土壌病害虫防除、雑草の発芽抑制などのための土壌消毒剤潅注システムに関する。
【背景技術】
【0002】
圃場や園芸施設において単一の作物の栽培を繰り返すと土壌中の植物病原菌やセンチュウが増加し、生育が悪くなって枯れてしまうことが多い。このような連作障害は、土壌中の植物病原菌やセンチュウによる場合が殆どであり、作物の収量及び品質の低下に繋がる。これらの土壌病害を回避し、一定の圃場で連続した栽培を可能とするために、従来から様々な薬剤、方法が用いられている。
【0003】
中でも土壌中あるいは土壌表面に生息する有害生物を防除して作物を健全に生育させるための有効な方法の一つとして土壌くん蒸による土壌殺菌があり、種々の薬剤が用いられているが、いずれも程度の差はあれ問題点を有する。例えば土壌殺菌剤として世界的に最も多量かつ広範囲の農作物で使われてきた臭化メチル剤は、1992年のモントリオール議定書締約国会合においてオゾン層破壊物質に指定され、2005年に全廃することが決定された。そこで、世界各国では臭化メチルに頼らない防除への転換のため、代替技術、代替薬剤の開発を推進している。現在における、臭化メチル代替も含めた植物病原菌防除、センチュウ等の害虫防除、雑草防除用薬剤としては、クロルピクリン、D―D(1,3−ジクロルプロペン)、N―メチルジチオカルバミン酸ナトリウム、メチルイソチオシアネート、ダゾメット等が知られている。
【0004】
しかし、上記の薬剤については、以下のような問題点が有る。
(1)クロルピクリンは、その催涙性、刺激性から使用者にとって取扱い難い薬剤であり、不適切な取扱いによって作業者のみならず近隣に対しても刺激臭等の被害を及ぼすことがある。
(2)D-D 、N-メチルジチオカルバミン酸ナトリウム、メチルイソチオシアネートは、土壌センチュウには効果を示すが、植物病原菌に対する効果は十分とは言えず、雑草防除効果も殆ど期待できない。
(3)ダゾメット剤は、十分な土壌水分の保持と被覆資材の利用が必要であり、土壌水分が少ない状態で処理するとガス化が不十分で土壌中の薬剤残留期間が長くなり、定植後に薬害が生じる。
【0005】
上記諸問題を鑑み、化学的防除に頼ることなく、土壌消毒が可能な手法について、研究開発が進められており、熱水消毒法、スチーム消毒法、および太陽熱消毒法が提案され、一部実施されている。太陽熱消毒法は、太陽熱による高地温と有機物還元による低酸素状態での植物病原菌死滅、センチュウ等の害虫死滅、雑草発芽抑制を狙ったものであるが、気温が高いか、晴天が継続しないと効果的でない。
【0006】
その改良方法として、土壌(作土)に米ぬかまたはフスマを漉き込み、十分に潅水し、透明プラスチックフィルムで土壌全面を被覆し、3日〜4日太陽光に曝すという土壌還元消毒法が提案され(非特許文献1)、実施されている。また、土壌及び微生物による易分解性を有し、前記土壌に対して所定の混合比率で混合された有機物(例、フスマ、米糠、ショ糖及び稲わらなどを含む作物残渣)を含む土壌混合物を、不透水性を有する樹脂製袋(例、ポリエチレン袋)の内部に充填する充填工程と、前記充填工程によって前記樹脂製袋に充填された前記土壌混合物に、圃場容水量を超える水量の水を供給し、前記土壌混合物を浸潤状態とする浸潤化工程と、前記樹脂製袋の袋口を閉塞し、前記土壌混合物と外気との通気を遮断する密閉工程と、前記土壌混合物が内部に充填及び密閉された前記樹脂製袋を、所定の温度条件下で静置する静置工程とを具備することを特徴とする土壌充填による還元消毒法が提案されている(特許文献1)。
【0007】
しかし、非特許文献1の方法は、土壌の表面から20〜30cmの深さまで、すなわち、作土に米ぬか、フスマ等を鋤き込む必要があるが、人力では困難であり、耕運機を必要とするという問題がある。また、米ぬか、フスマ等は嵩高いので農耕地への運搬、貯蔵が容易でないという問題もある。米ぬか、フスマ等を土壌中に鋤き込み還元状態にすると悪臭がひどくて公害になりかねないという問題がある。
【0008】
特許文献1記載の土壌充填による還元消毒法は、小規模の農業或いは家庭菜園などに利用する土壌の消毒、つまり所望の量の土壌のみの土壌還元消毒を狙ったものであり、圃場全体を還元消毒するものでない。その静置工程は、20℃以上で約3週間であり、著しく長い。米ぬか、フスマ等には、窒素分が多く含まれているので、土壌消毒後の土壌は窒素量過多であり、作物によっては生育に支障をきたし、栽培が困難になる。特許文献1記載の土壌充填による還元消毒法における土壌に対する有機物の重量比は、0.5重量%以上、10.0重量%以下の範囲であり、この還元消毒法を1ヘクタールの圃場全体に適用するとすれば、およそ15〜30t/haのフスマ、米糠が必要となる(耕起し作物を栽培する土壌層である「作土」を地表から30cmとし、「作土」の比重を1000kg/mとした場合)。
【0009】
非特許文献1記載の還元消毒法の改良法として、糖蜜水溶液を土壌に潅注し、土壌温度を25〜40℃の範囲に保持し、土壌を還元化させることを特徴とする、下層土まで消毒効果が及び、下層土に存在する土壌病害菌をも有効に防除できる土壌の消毒方法が提案されている(特許文献2)。
【0010】
特許文献2記載の土壌消毒方法における糖蜜水溶液は、0.4%〜0.8%希釈であり、0.4〜1.2t/10a(=4〜12t/ha)の量が必要とされる。したがって、糖蜜は16〜96kg/haの量が必要となる。ところが、糖蜜は粘稠な液状か固形状であり、農耕地で水に溶解して希釈するのが容易でないという問題がある。蟻が大量に発生するという問題もある。さらには、下層土まで25〜40℃になる時期は極めて限られているという問題もある
【0011】
一方、医療施設や一般家庭で消毒剤として周知慣用のエタノール70%水溶液は植物病原菌の殺菌、防除に有効であるが、高濃度のエタノール水溶液を農園芸に使用するには運搬、取扱いなどが不便であり問題があると特許文献3に記載されている。さらには、水、酢酸菌を含む醸造酢、蒸留酒(例、アルコール度42%のビンガ酒、アルコール度40%の焼酎)及びサトウキビ搾汁を混合して静置することにより調製した農園芸用病虫害防除組成物1リットル;水50〜100リットル;蒸留酒1〜2リットル及びサトウキビ搾汁0.5〜1リットルからなる農園芸用散布液が提案され、ぶどう畑や芝に散布したところ害虫や病害が発生しなかったと特許文献4に記載されている。しかし、特許文献4記載の農園芸用散布液を農作物に散布しても、アルコール、すなわち、エタノール及び酢酸は揮発しやすいので、効果の持続性が疑問である。また、沖縄県以外ではサトウキビ搾汁の入手は容易でないという問題がある。さらにはサトウキビ搾汁には、窒素分が含まれているので、土壌消毒後の土壌が窒素過多になるという問題もある。そもそも、この発明は土壌消毒を意図していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−112815号公報
【特許文献2】特開2004−323395号公報
【特許文献3】特開平11−292711号公報
【特許文献4】特開平4−312507号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】「平成14年度日本植物病理学会北海道部会(平成14年10月24日〜25日開催)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者らは、上記問題点のない土壌還元消毒方法、土壌還元消毒剤、土壌湿潤化消毒方法、土壌湿潤化消毒剤、および土壌消毒剤潅注システムを開発すべく鋭意研究した結果、低濃度エタノール水溶液および低濃度のエタノールと酢酸の水溶液でも土壌消毒に有効であり、上記問題点もないことを見出し、本発明を完成するに至った。また、低濃度のエタノールであっても土壌を効果的に消毒する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の目的は、極めて安全性が高く取扱の容易な化合物でありながら、土壌中、特には作土中の植物病原菌、センチュウ等の病害虫などを防除することができ、雑草の発芽を抑制できる土壌還元消毒方法、土壌還元消毒剤;極めて安全性高く簡易に、土壌中、特には作土中の植物病原菌、センチュウ等の病害虫などを防除することができ、雑草の発芽を抑制することができる土壌湿潤化消毒方法、土壌湿潤化消毒剤;作土中の植物病原菌、センチュウ等の病害虫などを防除するための土壌消毒剤、作土中の雑草の発芽を抑制するための土壌消毒剤を簡易に効率よく作土に供給ことができる土壌消毒剤潅注システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、「[1]土壌にエタノール水溶液(ただし、エタノール含有量は0.1容量%以上である)を含有せしめて湛水状態とし、水とエタノールの蒸発を抑制しつつ保持して土壌を還元状態として消毒することを特徴とする土壌還元消毒方法。
[2]エタノール含有量は0.1容量%以上、7.0容量%以下であることを特徴とする[1]記載の土壌還元消毒方法。
[2−1]エタノール含有量は0.3容量%以上、好ましくは0.4容量%以上、さらに好ましくは0.5容量%以上であり、7.0容量%以下であることを特徴とする[2]記載の土壌還元消毒方法。
[3]消毒が土壌病害虫防除または雑草の発芽抑制であることを特徴とする[1]、[2]または[2−1]記載の土壌還元消毒方法。
[4]土壌が播種前または定植前の作土であり、作土の底部から地表まで湛水状態にすることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の土壌還元消毒方法。
[5]液肥混入器を用いて、エタノールを水に混入せしめてエタノール水溶液(ただし、エタノール含有量は0.1〜20容量%である)を調製し、該エタノール水溶液を潅水チューブにより作土に潅液して作土を湛水状態にすることを特徴とする、[4]記載の土壌還元消毒方法。
[6]水とエタノールの蒸発抑制は、エタノール水溶液処理土壌表面をプラスチックフィルムもしくはシートで被覆することによる、[1]〜[5]のいずれかに記載の土壌還元消毒方法。
[7]エタノールの蒸発抑制は、エタノール水溶液処理土壌をプラスチックフィルム製袋に封入することによる、[1]〜[3]のいずれかに記載の土壌還元消毒方法。
[8]エタノールが発酵エタノールの蒸留精製過程で得られる副生エタノールであることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の土壌還元消毒方法。
[9]土壌にエタノールと酢酸の水溶液(ただし、エタノール含有量は0.1容量%以上であり、酢酸はエタノールの0.1〜20容量%である)を含有せしめて湛水状態とし、水とエタノールと酢酸の蒸発を抑制しつつ保持して土壌を還元状態として消毒することを特徴とする土壌還元消毒方法。

[10]エタノール水溶液(ただし、エタノール含有量は0.1容量%以上である)からなることを特徴とする土壌還元消毒剤。
[11]エタノール含有量は0.1容量%以上、7.0容量%以下であることを特徴とする[10]記載の土壌還元消毒剤。
[11−1]エタノール含有量は0.3容量%以上、好ましくは0.4容量%以上、さらに好ましくは0.5容量%以上であり、7.0容量%以下であることを特徴とする[11]記載の土壌還元消毒剤。
[12]土壌還元消毒剤における消毒が土壌病害虫防除または雑草の発芽抑制であることを特徴とする[10]、[11]または[11−1]記載の土壌還元消毒剤。
[13]エタノールが発酵エタノールの蒸留精製過程で得られる副生エタノールであることを特徴とする[10]〜[12]のいずれかに記載の土壌還元消毒剤。
[14]土壌が播種前または定植前の土壌であることを特徴とする[10]〜[13]いずれかに記載の土壌還元消毒剤。
[15]エタノールと酢酸の水溶液(ただし、エタノール含有量は0.1容量%以上であり、酢酸はエタノールの0.1〜20容量%である)からなることを特徴とする土壌還元消毒剤。

[16]土壌にエタノール水溶液(ただし、エタノール含有量は0.3容量%以上である)を含有せしめて湿った状態(湛水状態を含む)とし、水とエタノールの蒸発を抑制しつつ保持して土壌を消毒することを特徴とする土壌湿潤化消毒方法。
[17]エタノール含有量は0.3容量%以上、10容量%以下であることを特徴とする[16]記載の土壌湿潤化消毒方法。
[17−1]エタノール含有量は0.5容量%以上、好ましくは1.5容量%以上、10.0容量%以下であることを特徴とする[17]記載の土壌湿潤化消毒方法。
[18]消毒が土壌病害虫または雑草の発芽抑制であることを特徴とする[16]、[17]または[17−1]記載の土壌湿潤化消毒方法。
[19]土壌が播種前または定植前の作土であり、作土の底部から表面を湿った状態(湛水状態を含む)にすることによる[16]〜[18]のいずれかに記載の土壌湿潤化消毒方法。
[20]液肥混入器を用いて、エタノールを水に混入せしめてエタノール水溶液(ただし、エタノール含有量は0.3〜20容量%である)を調製し、該エタノール水溶液を潅水チューブにより作土に潅液して作土を湿潤状態にすることを特徴とする、[19]記載の土壌湿潤化消毒方法。
[21]水とエタノールの蒸発抑制は、エタノール水溶液処理土壌表面をプラスチックフィルムもしくはシートで被覆することによる、[16]〜[20]のいずれかに記載の土壌湿潤化消毒方法。
[22]エタノールの蒸発抑制は、エタノール水溶液処理土壌をプラスチックフィルム製袋に封入することによる、[16]〜[18]のいずれかに記載の土壌湿潤化消毒方法。
[23]エタノールが発酵エタノールの蒸留精製過程で得られる副生エタノールであることを特徴とする[16]〜[22]のいずれかに記載の土壌湿潤化消毒方法。
[24]土壌にエタノールと酢酸の水溶液(ただし、エタノール含有量は0.3容量%以上であり、酢酸はエタノールの0.1〜20容量%である)を含有せしめて湿った状態(湛水状態を含む)とし、水とエタノールと酢酸の蒸発を抑制しつつ保持して土壌を消毒することを特徴とする土壌湿潤化消毒方法。

[25]エタノール水溶液(ただし、エタノール含有量は0.3容量%以上である)からなることを特徴とする土壌湿潤化消毒剤。
[26]エタノール含有量は0.3容量%以上、10容量%以下であることを特徴とする[25]記載の土壌湿潤化消毒剤。
[26−1]エタノール含有量は0.5容量%以上、好ましくは1.5容量%以上、10.0容量%以下であることを特徴とする[26]記載の土壌湿潤化消毒剤。
[27]土壌湿潤化消毒剤における消毒が土壌病害虫または雑草の発芽抑制であることを特徴とする[25]、[26]または[26−1]記載の土壌湿潤化消毒剤。
[28]エタノールが発酵エタノールの蒸留精製過程で得られる副生エタノールであることを特徴とする[25]〜[27]のいずれかに記載の土壌湿潤化消毒剤。
[29]土壌が播種前または定植前の土壌であることを特徴とする[25]〜[28]のいずれかに記載の土壌湿潤化消毒剤。

[30]一端が水供給源に接続され、他端が潅水チューブ入口に接続された給水配管と、液肥混入器と、エタノール水溶液貯蔵槽、またはエタノール水溶液貯蔵槽および酢酸水溶液貯蔵槽と、多数枝分かれした潅水チューブとを備え、該液肥混入器は水供給源と潅水チューブ入口を連結する給水配管の途中に配設され、エタノール水溶液貯蔵槽内のエタノール水溶液、またはエタノール水溶液貯蔵槽および酢酸水溶液貯蔵槽内のエタノール水溶液と酢酸水溶液を、給水配管内を流れる水に一定比率で混入させるものであることを特徴とする土壌消毒剤潅注システム。
[31]一端が水供給源に接続され、他端が潅水チューブ入口に接続された給水配管と、給水配管の途中に設けられた流量抵抗装置と、流量抵抗装置の上流側と下流側とを連通させるバイパス配管と、該バイパス配管の入口および出口に設けられた閉止弁と、該バイパス配管の途中に設けられた液肥混入器と、エタノール水溶液貯蔵槽、またはエタノール水溶液貯蔵槽および酢酸水溶液貯蔵槽と、多数枝分かれした潅水チューブとを備え、該液肥混入器は水供給源と潅水チューブ入口を連結する給水配管の途中に配設され、エタノール水溶液貯蔵槽内のエタノール水溶液、またはエタノール水溶液貯蔵槽および酢酸水溶液貯蔵槽内のエタノール水溶液と酢酸水溶液を、給水配管内を流れる水に一定比率で混入させるものであることを特徴とする土壌消毒剤潅注システム。」により達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の土壌還元消毒方法は、エタノール水溶液またはエタノールと酢酸の水溶液を使用するので、極めて安全性が高く、消毒された土壌で栽培された作物に有害成分が残留することがなく、低コストであり、糖蜜のように蟻が群がることがない。低濃度でもよいため高濃度エタノールや高濃度酢酸は少量で済むので運搬、貯蔵、取扱が容易である。圃場での水希釈による調製が容易である。水溶液であるので、土壌への浸透、作土下層への浸透が迅速であり容易である。エタノールまたはエタノールと酢酸を主成分とするのでポリエチレンフィルムでも透過しにくく、ポリエチレン等のプラスチックフィルムによる蒸発抑制が容易である。エタノールまたはエタノールと酢酸を主成分とするので、10〜20℃強といった比較的低い地温でも短期間で土壌、特には作土を還元状態にして消毒することができ、土壌中、特には作土中の植物病原菌、センチュウ等の病害虫などを効果的に防除することができ、雑草の発芽を効果的に抑制することができる。
【0017】
本発明の土壌還元消毒剤は、エタノールと水、またはエタノールと酢酸と水を主成分とするので極めて安全性が高く、消毒された土壌で栽培された作物に有害成分が残留することがなく、低コストである。低濃度でもよいため原液である高濃度エタノールや高濃度酢酸は少量で済むので運搬、貯蔵、取扱が容易である。エタノールは水溶性が極めて高いので圃場での水希釈による調製が容易である。水溶液であるので、土壌への浸透、作土下層への浸透が迅速であり容易である。エタノールまたはエタノールと酢酸を主成分とするのでポリエチレンフィルムもしくはシートでも透過しにくく、ポリエチレン等のプラスチックフィルムもしくはシートによる蒸発抑制が容易である。エタノールまたはエタノールと酢酸を主成分とするので、10〜20℃強といった比較的低い地温でも短期間で土壌、特には作土を還元状態にして消毒することができ、土壌中、特には作土中の植物病原菌、センチュウ等の病害虫などを効果的に防除することができ、雑草の発芽を効果的に抑制することができる。
【0018】
本発明の土壌湿潤化消毒方法は、エタノール水溶液またはエタノールと酢酸の水溶液を使用するので、極めて安全性が高く、消毒された土壌で栽培された作物に有害成分が残留することがなく、低コストであり、糖蜜のように蟻が群がることがない。低濃度でもよいため高濃度エタノールや高濃度酢酸は少量で済むので運搬、貯蔵、取扱が容易である。圃場での水希釈による調製が容易である。水溶液であるので、土壌への浸透、作土下層への浸透が迅速であり容易である。エタノールまたはエタノールと酢酸を主成分とするのでポリエチレンフィルムでも透過しにくく、ポリエチレン等のプラスチックフィルムによる蒸発抑制が容易である。エタノールまたはエタノールと酢酸を主成分とするので、10〜20℃強といった比較的低い地温でも短期間で土壌、特には作土を湿潤化して消毒することができ、土壌中、特には作土中の植物病原菌、センチュウ等の病害虫などを効果的に防除することができ、雑草の発芽を効果的に抑制することができる。
【0019】
本発明の土壌湿潤化消毒剤は、エタノールと水、またはエタノールと酢酸と水を主成分とするので極めて安全性が高く、消毒された土壌で栽培された作物に有害成分が残留することがなく、低コストである。低濃度でもよいため高濃度エタノールや高濃度酢酸は少量で済むので運搬、貯蔵、取扱が容易である。エタノールは水溶性が極めて高いので圃場での水希釈による調製が容易である。水溶液であるので、土壌への浸透、作土下層への浸透が迅速であり容易である。エタノールまたはエタノールと酢酸を主成分とするのでポリエチレンフィルムもしくはシートでも透過しにくく、ポリエチレン等のプラスチックフィルムもしくはシートによる蒸発抑制が容易である。エタノールまたはエタノールと酢酸を主成分とするので、10〜20℃強といった比較的低い地温でも短期間で土壌、特には作土を湿潤化して消毒することができ、土壌中、特には作土中の植物病原菌、センチュウ等の病害虫などを効果的に防除することができ、雑草の発芽を効果的に抑制することができる。
【0020】
本発明の土壌消毒剤潅注システムは、高濃度エタノールや高濃度酢酸を簡易、迅速に水で希釈して低濃度水溶液とすることができ、作土の下層まで人手を要することなく迅速に潅注することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、エタノール水溶液を作土に潅注するための土壌消毒剤潅注システムの配管系統図である。
【図2】図2は、エタノールと酢酸の水溶液を作土に潅注するための土壌消毒剤潅注システムの配管系統図である。
【図3】図3は、エタノール水溶液を作土に潅注するための土壌消毒剤潅注システム(バイパス配管あり)の配管系統図である。
【図4】図4は、エタノールと酢酸の水溶液を作土に潅注するための土壌消毒剤潅注システム(バイパス配管あり)の配管系統図である。
【図5】図5は、エタノールと酢酸の水溶液を作土に潅注するための土壌消毒剤潅注システム(自動システム)配管系統図である。
【図6】図6は、潅水チューブ枝部から作土へ潅注している状態の断面図である。
【図7】図7は、土壌の酸化還元電位の変化を示す。
【図8】図8は、土壌の酸化還元電位、酸素濃度を示す。
【図9】図9は、エタノール等の処理量とレタス種子の発芽率の関係を示す。
【図10】図10は、エタノール等の処理量とレタスの本数の関係を示す。
【図11】図11は、エタノール等の処理量とレタスの重量の関係を示す。
【図12】図12は、エタノール等の処理量とレタスの植被率の関係を示す。
【図13】図13は、エタノールのトマト青枯病菌に対する殺菌効果を示す。
【図14】図14は、エタノールのトマト青枯病菌に対する殺菌効果を示す
【図15】図15は、酢酸のトマト青枯病菌に対する殺菌効果を示す。
【図16】図16は、エタノール等のキュウリつる割病菌に対する殺菌効果を示す。
【図17】図17は、エタノール等のトマト青枯病菌に対する殺菌効果を示す。
【図18】図18は、酢酸の土壌水中濃度の変化を示す。
【図19】図19は、酢酸の土壌水中濃度の変化を示す。
【図20】図20は、酢酸の土壌水中濃度の変化を示す。
【図21】図21は、エタノールのフィルム透過速度を示す。
【図22】図22は、クロルピクリンのフィルム透過速度を示す。
【図23】図23は、ジクロルプロペンのフィルム透過速度を示す。
【図24】図24は、メチルイソチオシアネートのフィルム透過速度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の土壌還元消毒方法で使用する土壌還元消毒剤、本発明の土壌還元消毒剤は、エタノール水溶液(ただし、エタノール含有量は0.1容量%以上である)またはエタノールと酢酸の水溶液(ただし、エタノール含有量は0.1容量%以上であり、酢酸はエタノールの0.1〜20容量%である)からなることを特徴にしている。なお、本発明においてエタノール水溶液等の単位である容量%は、雰囲気温度15℃における値である。エタノール水溶液中のエタノール含有量の下限は還元消毒効果の点から好ましくは0.3容量%であり、より好ましくは0.4容量%であり、さらに好ましくは0.5容量%である。エタノール水溶液中またはエタノールと酢酸の水溶液中のエタノール含有量の上限は、特に限定されないが、エタノール含有量が多すぎても無駄となり、また引火性、経済性の点からエタノール水溶液中またはエタノールと酢酸の水溶液中のエタノール含有量は、好ましくは60容量%、より好ましくは20容量%であり、さらに好ましくは7容量%である。
る。
【0023】
ここで、ネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウのような有害センチュウを防除対象とする場合は、防除効果の点でエタノール含有量の下限は好ましくは0.35容量%であり、より好ましくは0.5容量%である。
トマト、キュウリ、ナス、ウリやカボチャのような野菜の青枯病菌、つる割病菌、萎凋病菌のような植物病原菌を防除対象とする場合は、防除効果の点でエタノール含有量の下限は好ましくは0.35容量%であり、より好ましくは0.4容量%であり、さらに好ましくは0.6容量%である。
また、本発明の土壌還元消毒剤は、雑草の発芽抑制剤の意味も有する。雑草の発芽抑制する場合、つまり雑草を防除対象とする場合は、雑草の種類にもよるが、防除効果の点でエタノール含有量の下限は好ましくは0.35容量%であり、より好ましくは0.4容量%であり、さらに好ましくは0.6容量%である。
エタノールと酢酸の水溶液中の好ましいエタノール含有量も上記と同様である。エタノールと酢酸の水溶液からなる土壌還元消毒剤は、酢酸を含有することにより、消毒効果が大きく、土壌中で還元状態になる速度が速い。また、エタノールのみに比べ、より低い地温でも同等の還元状態になる。
【0024】
上記エタノール水溶液中のエタノール含有量は、消毒対象の土壌中のエタノール水溶液中のエタノール含有量を意味している。土壌中に均等にエタノールが拡散できるように、乾燥している土壌にエタノール含有量が小さい(例えば、20容量%未満)エタノール水溶液またはエタノールと酢酸の水溶液を多量に供給することが好ましい。土壌中の水分が多い場合は、土壌に供給するエタノール水溶液またはエタノールと酢酸の水溶液は、土壌中の水分を考慮してエタノール含有量が高い(例えば、極端な場合は60容量%)エタノール水溶液でもよい。しかし、土壌中で均等にエタノールが拡散できるように、エタノール含有量は0.1容量%〜20容量%がより好ましい。
【0025】
エタノール水溶液あるいはエタノールと酢酸の水溶液を作るためのエタノールは、工業的に合成されたエタノール、醸造法によるエタノールのいずれでよい。無水エタノール(別名:無水アルコール、15℃でエタノールを99.5容量%以上含む)、エタノール(別名:アルコール、15℃でエタノールを95.1〜95.6容量%含む)、消毒用エタノール(別名:消毒用アルコール、15℃でエタノールを76.9〜81.4容量%含む)のいずれでもよい。精製エタノール(好適には総量の95〜99.5容量%がエタノールであり、残りが水である)であってもよいが、発酵エタノールの蒸留精製過程で得られる副生エタノールがコスト上好ましい。副生エタノールは、必須成分としてのエタノール(総量の約80〜90容量%である)のほか、水(総量の約10〜5容量%である)、メタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール等の低級アルコール類がいずれかの組合せで含まれ、更に、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセタール等のアルコール発酵由来成分がいずれかの組合せで含まれている。これらエタノール以外の成分(総量の10〜5容量%である)はエタノール発酵の原料、発酵条件等によって異なり、エタノール以外の成分の種類と含有量は様々である。
【0026】
エタノールと酢酸の水溶液を作るための酢酸は、工業的に合成された酢酸、醸造法による酢酸のいずれでよく、酢でもよい。純品の酢酸は氷酢酸と言われ、常温で結晶であるので、酢酸水溶液(酢酸含有量は例えば5〜50容量%)が好ましく、酢酸5%水溶液である酢も好ましい。
【0027】
エタノールと酢酸を希釈するための水は、植物、作物の生育に適した水であれば特に限定されない。農業用水、井戸水、水道水、雨水、河川の水、湖沼の水が例示される。
【0028】
本発明の土壌還元消毒方法で使用する土壌還元消毒剤、本発明の土壌還元消毒剤の対象土壌は、植物、作物(果菜類、葉菜類、根菜類などの野菜、花卉、果樹等)を育てるための土壌であれば特に限定されない。農耕地、田畑、ビニールハウス内の作土;花壇、鉢、プランター、温室内の土壌等で使用する土壌;培養土調製用の土壌が例示される。消毒効果の点で、植物、作物等が生育している土壌、作土よりも、播種前または定植前の土壌、作土であることが好ましい。なお、作土の深さは栽培される作物の種類により異なり、通常20cm〜50cmあり、平均30cmであるが、限定されるものではない。
【0029】
本発明の土壌還元消毒方法、土壌還元消毒剤の消毒対象は、土壌病害虫または雑草の種子であり、すなわち、土壌中のセンチュウ、植物病原菌、昆虫の幼虫、昆虫の成虫、植物ウイルス、雑草の種子等である。本発明における土壌病害虫とは、センチュウ,植物病原菌,昆虫の幼虫,昆虫の成虫,植物ウイルスを意味する。
センチュウとして、ネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウが例示される。植物病原菌として、土壌を媒体として伝染するものであれば、いずれでもよいが、例えば、青枯病菌(Ralstonia solanacearum)、軟腐病菌(Erwinia carotovora)、苗立枯病菌(Pythium spp.)、疫病菌(Phytophthora spp.)、半身萎凋病菌(Verticillium dahliae)、つる割病菌(Fusarium oxysporum)、萎凋病菌(Fusarium oxysporum)、根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)、立枯病菌(Gaeumanomyces gramineum)、白絹病菌(Athelia rolfsii)、紫紋羽病菌(Helicobasidium mompa)、白紋羽病菌(Rosellinia necatrix)、根腐病菌(Aphanomyces euteiches)、根くびれ病菌(Aphanomyces raphani)、黒腐菌核病菌(Sclerotium cepivorum)、粉状そうか病菌(Spongospora subterranea)、そうか病菌(Steptomyces scabies)、根頭がんしゅ病菌(Agrobacterium tumefaciens)、条斑病菌(Cephaosporium gramineum)、落葉病菌(Cephalosporium gregatum)、葉枯病菌(Helminthosporium sativum)、黒根病菌(Thielaviopsis basicola)、苗立枯病菌(Rhizoctonia solani)が例示される。昆虫の幼虫として、ハリガネムシ、ネキリムシ、コガネムシの幼虫、ハムシの幼虫が例示される。植物ウイルスとして、線虫媒介ウィルス、微生物媒介ウィルスが例示される。
雑草の種子における雑草は、日本国内や外国の農耕地や園芸場、家庭菜園等で生育している雑草であればよく、広葉雑草、例えば、イチビ(Abutilon theophrasti)、アオビユ(Amaranthus retroflexus)、センダングサ(Bidens pilosa)、シロザ(Chenoposium album)、ヤエムグラ(Galium aparine)、マルバアサガオ(Ipomoea purpurea)などのヒルガオ属(Ipomoea spp.)、セスバニア(Sesbania exaltata)、Sinapis arvensis、イヌホオヅキ(Solanum nigrum)及びオナモミ (Xanthium strumarium);イネ科雑草、例えば、スズメノテッポウ(Alopecurus mosuroides)、カラスムギ(Avena fatus)、メヒシバ(Digitaria sanguinalls)、イヌビエ(Echinochloa crus−galli)、オヒシバ(Eleusine indica)及びアキノエノコログサ(Setaria faberii)、エノコログサ(Setaria 、viridis)などのエノコログサ属(Setaria spp.);カヤツリグサ科雑草、例えばカヤツリグサ(Cyperus esculentus)が例示される。
【0030】
本発明の土壌還元消毒方法で使用する土壌還元消毒剤、本発明の土壌還元消毒剤は、土壌、特には作土の底部から地表まで湛水状態になる量を含有させる。すなわち、圃場容水量以上含有させる。
【0031】
本発明の土壌還元消毒方法は、土壌にエタノール水溶液(ただし、エタノール含有量は0.1容量%以上である)またはエタノールと酢酸の水溶液(ただし、エタノール含有量は0.1容量%以上であり、酢酸はエタノールの0.1〜20容量%である)を含有せしめて湛水状態とし、水とエタノールまたは水とエタノールと酢酸の蒸発を抑制しつつ保持して土壌を還元状態として消毒することを特徴とする。還元状態にするので、きわめて低濃度のエタノールであっても優れた防除効果を発現する。
上記土壌還元消毒方法におけるエタノール水溶液中またはエタノールと酢酸の水溶液中のエタノール含有量の好ましい下限および上限は、段落[0022]、[0023]に記載したとおりである。
【0032】
土壌、特には作土にエタノール水溶液(ただし、エタノール含有量は0.1容量%以上である)またはエタノールと酢酸の水溶液(ただし、エタノール含有量は0.1容量%以上であり、酢酸はエタノールの0.1〜20容量%である)を多量に含有せしめ、土壌、特には作土を還元状態にしてセンチュウや植物病原菌などを退治する。あるいは雑草の種子が発芽しないようにする。
上記土壌還元消毒方法におけるエタノール水溶液中またはエタノールと酢酸の水溶液中のエタノール含有量の好ましい下限および上限は、段落[0022]、[0023]に記載したとおりである。
【0033】
本発明の土壌還元消毒方法において、土壌10kg当りの好ましいエタノール量は、95容量%エタノール換算で10〜200mlであり、土壌10kg当りの好ましい水量は、2000〜7000mlであり、より好ましくは3000〜5000mlである。もちろん、土壌の種類、含水量、最大吸水量等によって変動するので、あくまで目安である。
【0034】
本発明の土壌還元消毒方法では、土壌が作土であるときは、作土の底部から地表まで湛水状態にして、すなわち、圃場容水量以上を含有するようにして数日間以上保持することにより土壌を還元状態にすることができる。還元状態にするための保持日数は、エタノール濃度や、気温や地温によって変わってくる。気温や地温が高くなるに従って保持日数は短くなる。目安として、保持温度が5〜40℃であると、必要な保持日数は20〜3日である。いずれにしても土壌が還元状態になると、土壌および土壌表面にたまっている水が黒っぽくなり、どぶ臭くなるので、そのようになるまで水とエタノール、または水とエタノールと酢酸の蒸発を抑制しつつ保持する。還元状態になってから、さらに保持するとセンチュウや植物病原菌などの防除、雑草の種子の発芽抑制が効果的になる。なお、本方法で使用するエタノール水溶液およびエタノールと酢酸の水溶液は、上記したとおりである。
【0035】
ここで、圃場容水量は、「多量の降雨若しくは潅水し、重力による水の下降運動が非常に小さくなったときの含水量」、「重力水を除いた、土壌の保持し得る最大の容水量」として定義される。つまり、十分な降雨あるいは灌水後1日以上経過すると排水がほとんど終わり、表面蒸発を抑えておくと土壌水分は一定になる。この一定の水分が圃場容水量である。さらに詳細に説明すると、土壌が水によって完全に飽和した状態(φ=0kPa,pF=0)における水分保持量(最大容水量に相当)から、24時間以内で排出される水を重力水といい、このとき、重力水の排出によってできた空気の孔隙(粗孔隙)がある状態の水分保持量を圃場容水量(φ=−6kPa,pF=1.8)として定義するものである。ここで、φは土壌水における水の表面張力や土粒子の吸着力によるマトリックスポテンシャルに相当し、係るマトリックスポテンシャルφの負の常用対数をとったものをpF(=log(−10.2φ))として表すことが慣習的に行われている。
【0036】
本発明の土壌還元消毒方法においては、土壌にエタノール水溶液又はエタノールと酢酸の水溶液が行渡らない乾燥部分があると、その部分が消毒されないので、エタノール水溶液又はエタノールと酢酸の水溶液により作土の底部から地表まで湛水状態にして、すなわち、土壌中のエタノール水溶液又はエタノールと酢酸の水溶液の量を圃場要水量以上とすることにより速やかに還元状態にすることができる。このように土壌が十分なエタノール水溶液又はエタノールと酢酸の水溶液を含有することにより、土壌が含有するエタノールまたはエタノールと酢酸の微生物による分解反応、土壌の還元化が十分に行われる。
【0037】
本発明の土壌還元消毒方法において、土壌が作土であるときは、そのままではエタノールと水あるいはエタノールと酢酸と水が蒸発するので、該作土表面をプラスチックフィルムもしくはシートで被覆してエタノールと水あるいはエタノールと酢酸と水の蒸発を抑制することが好ましい。土壌が花壇、鉢、プランター等で使用する比較的少量の土壌や、培養土調製用の比較的少量の土壌であるときは、そのままではエタノールと水あるいはエタノールと酢酸と水が蒸発するので、プラスチックフィルム袋に入れて密封し、数日保持することが好ましい。土壌還元消毒方法においては、袋の中の土壌が還元状態になるまで保持することが好ましい。還元状態になったことは、土壌の色が黒くなり、どぶ臭くなることで分かる。また、土壌の酸化還元電位を測定することにより分かる。
【0038】
本発明の土壌還元消毒方法において、エタノールと水あるいはエタノールと酢酸と水の蒸発を抑制するためのプラスチックフィルムもしくはシート、プラスチックフィルム袋は、臭化メチルやクロルピクリン等の土壌くん蒸剤の蒸発を抑制するために使用されているプラスチックフィルムもしくはシート、プラスチックフィルム袋であればよい。好適なプラスチックとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、これら以外のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、これらの積層体が例示されるが、エタノールは、臭化メチルやクロルピクリンよりもプラスチックフィルム透過性が小さいので、安価であり、環境安全性が高いポリエチレンが好適である。もちろん、エタノール、酢酸や水を透過させないその他のシート(ゴム引き布)、袋(ゴム引き袋)や容器(プラスチック容器、金属容器)であってもよい。
【0039】
本発明の土壌還元消毒方法において、土壌にエタノール水溶液(ただし、エタノール含有量は0.1容量%以上である)またはエタノールと酢酸の水溶液を含有せしめても、気温や地温が低すぎると、土壌中の微生物の活動が低下したり、土壌還元消毒方法においては還元状態になる速度が低下したり、著しく日数を要するようになる。したがって、気温や地温が少なくとも5℃であり、10℃以上であることが好ましく、さらには15℃以上であることがより好ましい。もっとも、地温が著しく高温になると高熱のためにセンチュウや植物病原菌が死滅するので、上限温度は50℃位である。
【0040】
上記土壌還元消毒方法では、液肥混入器を用いて、エタノールを水に混入せしめ(ただし、エタノール含有量は0.1容量%〜60容量%、好ましくは0.1容量%〜20容量%である)、またはエタノールと酢酸を水に混入せしめ(ただし、エタノール含有量は0.1容量%〜60容量%であり、好ましくは0.1容量%〜20容量%であり、酢酸含有量はエタノールの0.1〜20%である)、潅水管や潅水チューブにより作土に潅注すると、エタノール水溶液により、またはエタノールと酢酸の水溶液により効率的に作土を水溶液浸し状態にすることができる。
【0041】
次に、本発明の土壌湿潤化消毒方法および土壌湿潤化消毒剤について説明する。
本発明の土壌湿潤化消毒方法で使用する土壌湿潤化消毒剤、本発明の土壌湿潤化消毒剤は、エタノール水溶液(ただし、エタノール含有量は0.3容量%以上である)またはエタノールと酢酸の水溶液(ただし、エタノール含有量は0.3容量%以上であり、酢酸はエタノールの0.1〜20容量%である)からなることを特徴にしている。なお、本発明においてエタノール水溶液等の単位である容量%は、雰囲気温度15℃における値である。エタノール水溶液中のエタノール含有量の下限は消毒効果の点から好ましくは0.5容量%であり、より好ましくは1.5容量%である。エタノール水溶液中またはエタノールと酢酸の水溶液中のエタノール含有量の上限は特に限定されないが、エタノール含有量が多すぎても無駄となり、また引火性、経済性の点からエタノール水溶液中またはエタノールと酢酸の水溶液中のエタノール含有量は、好ましくは60容量%、より好ましくは20容量%であり、さらに好ましくは10容量%である。
【0042】
ここで、ネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウのような有害センチュウを防除対象とする場合は、防除効果の点でエタノール含有量の下限は好ましくは1.5容量%であり、より好ましくは1.6容量%、さらに好ましくは2.0容量%である。
トマト、キュウリ、ナス、ウリやカボチャのような野菜の青枯病菌、つる割病菌、萎凋病菌のような植物病原菌を防除対象とする場合は、植物病原菌の種類にもよるが、防除効果の点でエタノール含有量の下限は好ましくは3.0容量%である。
また、本発明の土壌湿潤化消毒剤は、雑草の発芽抑制剤の意味も有する。雑草の発芽抑制する場合、つまり雑草を防除対象とする場合は、防除効果の点でエタノール含有量の下限は好ましくは0.3容量%であり、より好ましくは0.4容量%であり、さらに好ましくは 0.8容量%である。
エタノールと酢酸の水溶液中の好ましいエタノール含有量も上記と同様である。エタノールと酢酸の水溶液からなる土壌湿潤化消毒剤は、酢酸を含有することにより、消毒効果が大きい。
【0043】
上記エタノール水溶液中のエタノール含有量は、消毒対象の土壌中のエタノール水溶液中のエタノール含有量を意味している。土壌中に均等にエタノールが拡散できるように、乾燥している土壌にエタノール含有量が小さい(例えば、20容量%未満)エタノール水溶液またはエタノールと酢酸の水溶液を多量に供給することが好ましい。土壌中の水分が多い場合は、土壌に供給するエタノール水溶液またはエタノールと酢酸の水溶液は、土壌中の水分を考慮してエタノール含有量が高い(例えば、極端な場合は60容量%)エタノール水溶液でもよい。しかし、土壌中で均等にエタノールが拡散できるように、エタノール含有量は0.5容量%〜20容量%がより好ましい。
【0044】
エタノール水溶液あるいはエタノールと酢酸の水溶液を作るためのエタノールは、土壌還元消毒方法、土壌還元消毒剤の説明において記載したとおりである。
【0045】
エタノールと酢酸の水溶液を作るための酢酸は、土壌還元消毒方法、土壌還元消毒剤の説明において記載したとおりである。
【0046】
エタノールと酢酸を希釈するための水は、土壌還元消毒方法、土壌還元消毒剤の説明において記載したとおりである。
【0047】
本発明の土壌湿潤化消毒方法、本発明の土壌湿潤化消毒剤の対象土壌は、土壌還元消毒方法、土壌還元消毒剤の説明において記載したとおりである。
【0048】
本発明の土壌湿潤化消毒方法、本発明の土壌湿潤化消毒剤の消毒対象は、土壌還元消毒方法、土壌還元消毒剤の説明において記載したとおりである。なお、本発明における土壌病害虫とは、センチュウ,植物病原菌,昆虫の幼虫,昆虫の成虫,植物ウイルスを意味する。
【0049】
本発明の土壌湿潤化消毒剤は、土壌全体を湿らせる程度含有させる、またはそれ以上に湿らせる量を含有させてもよく、湛水状態にしてもよく、すなわち土壌に圃場容水量以上含有させてもよい。
【0050】
本発明の土壌湿潤化消毒方法は、土壌にエタノール水溶液(ただし、エタノール含有量は0.3容量%以上である)またはエタノールと酢酸の水溶液(ただし、エタノール含有量は0.3容量%以上であり、酢酸はエタノールの0.1〜20容量%である)を含有せしめて湿った状態(湛水状態を含む)とし、水とエタノールまたは水とエタノールと酢酸の蒸発を抑制しつつ保持して土壌を消毒することを特徴とする。
上記土壌湿潤化消毒方法におけるエタノール水溶液中またはエタノールと酢酸の水溶液中のエタノール含有量の好ましい下限および上限は段落[0041]、[0042]に記載したとおりである。
【0051】
土壌、特には作土にエタノール水溶液(ただし、エタノール含有量は0.3容量%以上である)またはエタノールと酢酸の水溶液(ただし、エタノール含有量は0.3容量%以上であり、酢酸はエタノールの0.1〜20容量%である)を多量に含有せしめ、土壌、特には作土を湿潤化状態にしてセンチュウや植物病原菌などを退治する。あるいは雑草の種子が発芽しないようにする。
上記土壌湿潤化消毒方法におけるエタノール水溶液中またはエタノールと酢酸の水溶液中のエタノール含有量の好ましい下限および上限は段落[0041]、[0042]に記載したとおりである。
【0052】
本発明の土壌湿潤化消毒方法において、土壌10kg当りの好ましいエタノール量は、95容量%エタノール換算で10〜200mlであり、土壌10kg当りの好ましい水量は、0〜5000mlであり、より好ましくは2500〜4000mlである。もちろん、土壌の種類、含水量、最大吸水量等によって変動するので、あくまで目安である。本発明の土壌還元消毒方法において、土壌10kg当りの好ましいエタノール量は、95容量%エタノール換算で10〜200mlであり、土壌10kg当りの好ましい水量は、2000〜7000mlであり、より好ましくは3000〜5000mlである。もちろん、土壌の種類、含水量、最大吸水量等によって変動するので、あくまで目安である。
【0053】
本発明の土壌湿潤化消毒方法において、土壌が作土であるときは、作土の全体を湿った状態に数日間以上保持することにより、または、作土の底部から地表まで湛水状態にして、すなわち、圃場容水量以上を含有するようにして湿潤化状態で数日間以上保持することで土壌を消毒することができる。消毒するための保持日数は、エタノール濃度や、気温や地温によって変わってくる。気温や地温が高くなるに従って保持日数は短くなる。目安として、保持温度が5〜40℃であると、必要な保持日数は20〜3日である。さらに保持するとセンチュウや植物病原菌の防除、雑草の種子の発芽抑制が効果的になる。なお、本方法で使用するエタノール水溶液およびエタノールと酢酸の水溶液は、上記したとおりである。
【0054】
ここで、圃場要水量は、土壌還元消毒方法の説明において記載したとおりである。
【0055】
本発明の土壌湿潤化消毒方法においては、土壌にエタノール水溶液又はエタノールと酢酸の水溶液が行渡らない乾燥部分があると、その部分が消毒されないので、土壌全体をエタノール水溶液又はエタノールと酢酸の水溶液により湿潤状態とする。土壌が作土であるときは、作土の底部から地表部までを湿潤状態にする。このように土壌が十分なエタノール水溶液又はエタノールと酢酸の水溶液を含有することにより、土壌が含有するエタノールまたはエタノールと酢酸の微生物による分解反応が十分に行われる。
【0056】
本発明の土壌湿潤化消毒方法において、土壌が作土であるときは、そのままではエタノールと水あるいはエタノールと酢酸と水が蒸発するので、該作土表面をプラスチックフィルムもしくはシートで被覆してエタノールと水あるいはエタノールと酢酸と水の蒸発を抑制することが好ましい。土壌が花壇、鉢、プランター等で使用する比較的少量の土壌や、培養土調製用の比較的少量の土壌であるときは、そのままではエタノールと水あるいはエタノールと酢酸と水が蒸発するので、プラスチックフィルム袋に入れて密封し、数日保持することが好ましい。
【0057】
本発明の土壌湿潤化消毒方法において、エタノールと水あるいはエタノールと酢酸と水の蒸発を抑制するためのプラスチックフィルムもしくはシート、プラスチックフィルム袋は、土壌還元消毒方法の説明において記載したとおりである。
【0058】
本発明の土壌湿潤化消毒方法において、土壌にエタノール水溶液(ただし、エタノール含有量は0.3容量%以上である)またはエタノールと酢酸の水溶液を含有せしめても、気温や地温が低すぎると、土壌中の微生物の活動が低下する。したがって、気温や地温が少なくとも5℃であり、10℃以上であることが好ましく、さらには15℃以上であることがより好ましい。もっとも、地温が著しく高温になると高熱のためにセンチュウや植物病原菌が死滅するので、上限温度は50℃位である。
【0059】
上記土壌湿潤消毒方法では、液肥混入器を用いて、エタノールを水に混入せしめ(ただし、エタノール含有量は0.3容量%〜60容量%、好ましくは0.3容量%〜20容量%である)、またはエタノールと酢酸を水に混入せしめ(ただし、エタノール含有量は0.3容量%〜60容量%、好ましくは0.3容量%〜20容量%であり、酢酸含有量はエタノールの0.1〜20%である)、潅水管や潅水チューブにより作土に潅注すると、エタノール水溶液により、またはエタノールと酢酸の水溶液により効率的に作土を湿潤状態にすることができる。
【0060】
次に、本発明の土壌消毒剤潅注システムについて説明する。
本発明の土壌消毒剤潅注システムは、図1、図2に示すタイプ、図3、図4に示すタイプ、図5に示すタイプが例示される。図1、図2の土壌消毒剤潅注システムは、バイパス配管のないタイプの土壌消毒剤潅注システムであって、一端が図示されていない水供給源に接続され、他端が潅水チューブ7の入口に接続された給水配管1と、液肥混入器2と、エタノール水溶液貯蔵槽5またはエタノール水溶液貯蔵槽5および酢酸水溶液貯蔵槽6と、多数枝分かれした潅水チューブ7とを備え、該液肥混入器2は水供給源と潅水チューブ7の入口を連結する給水配管1の途中に配設され、エタノール水溶液貯蔵槽5内のエタノール水溶液またはエタノール水溶液貯蔵槽5および酢酸水溶液貯蔵槽6内のエタノール水溶液と酢酸水溶液を、給水配管1内を流れる水に一定比率で混入させるものであることを特徴とする。なお、3はフィルター、4は流量調整用バルブ、7aは潅水チューブ枝部である。図中実線矢印は給水の流れ方向を示し、波線矢印はエタノール水溶液もしくは酢酸水溶液を流れる方向を示している。もちろん、貯蔵槽内のエタノール水溶液のエタノール含有量は、土壌中のエタノール水溶液の意図するエタノール含有量より大であり、20容量%以上、60容量%以下が好ましい。貯蔵槽内の酢酸についても同様であり、5容量%以上、50容量%以下が好ましい。
【0061】
図1、図2において、図示されていない水供給源から給水配管1内を流れて来た水は、フィルター3で土砂や異物が取り除かれ、液肥混入器2によってエタノール貯蔵槽5またはエタノール水溶液貯蔵槽5と酢酸水溶液貯蔵槽6内のエタノール水溶液5aもしくはエタノール水溶液5aと酢酸水溶液6aがあらかじめ調節して設定された混合比(一定比率)で給水配管1内の水に混入される。混合比(一定比率)は、エタノール水溶液、もしくはエタノールと酢酸の水溶液が段落番号[0022]〜[0024]、段落番号[0041]〜[0043]記載の所定の濃度(希釈率)となるように設定され、段落番号[0022]〜[0024]、段落番号[0041]〜[0043]記載の土壌還元消毒剤、土壌湿潤化消毒剤が調製される。液肥混入器2は、比例式であることが好ましい。また、土壌への流量は流量調節用バルブ4によって調整される。土壌へは、潅水チューブ枝部7aに複数存在する穴から矢印のように吐出される。なお、エタノール水溶液と酢酸水溶液は、予め所定の混合比で混合されており、一の貯蔵槽から給水配管1内の水に混入されてもよい。
【0062】
また、図3、図4の土壌消毒剤潅注システムは、バイパス配管のあるタイプの土壌消毒剤潅注システムであって、図示されていないが一端が水供給源に接続され、他端が潅水チューブ7の入口に接続された給水配管1と、給水配管1の途中に設けられた流量抵抗装置8(ボールバルブ構造もしくはオリフィス構造が例示される)と、該流量抵抗装置8の上流側と下流側とを連通させるバイパス配管9と、該バイパス配管9の入口および出口に設けられた閉止弁10と、該バイパス配管9の途中に設けられた液肥混入器2と、エタノール水溶液貯蔵槽5またはエタノール水溶液貯蔵槽5および酢酸水溶液貯蔵槽6と、多数枝分かれした潅水チューブ7とを備え、該液肥混入器2は水供給源と潅水チューブ7の入口を連結する給水配管1の途中に配設され、エタノール水溶液貯蔵槽6内のエタノール水溶液またはエタノール水溶液貯蔵槽5および酢酸貯蔵槽6内のエタノール水溶液と酢酸水溶液を、給水配管1内を流れる水に一定比率で混入させるものであることを特徴とする。なお、3はフィルター、4は流量調整用バルブ、7aは潅水チューブ枝部であり、図中実線矢印は給水の流れ方向を示し、波線矢印はエタノールまたは酢酸が流れる方向を示している。もちろん、貯蔵槽内のエタノール水溶液のエタノール含有量は、土壌中のエタノール水溶液の意図するエタノール含有量より大であり、20容量%以上、60容量%以下が好ましい。貯蔵槽内の酢酸についても同様であり、5容量%以上、50容量%以下が好ましい。
【0063】
図3、図4に基づいて、その作用を説明する。図示されていない水供給源から給水配管1内を流れて来た水は、フィルター3で土砂や異物が取り除かれる。流量抵抗装置8の作用によってその上流側と下流側との間に差圧を生じ、バイパス配管9を通る水の流れを生ずる。この水の流れによって、液肥混入器においてエタノール水溶液貯蔵槽5またはエタノール水溶液貯蔵槽5と酢酸水溶液貯蔵槽6内のエタノール水溶液5aまたはエタノール水溶液5aと酢酸水溶液6aがあらかじめ調節して設定された混合比(一定比率)でバイパス配管9を通る水に混入される。混合比(一定比率)は、エタノール水溶液、またはエタノールと酢酸の水溶液が段落番号[0022]〜[0024]、段落番号[0041]〜[0043]記載の所定の濃度(希釈率)となるように設定され、段落番号[0022]〜[0024]、段落番号[0041]〜[0043]記載の土壌還元消毒剤、土壌湿潤化消毒剤が調製される。液肥混入器2は、比例式であることが好ましい。この場合、流量抵抗装置8を通って流れる流量とバイパス配管9を通って流れる流量との比はこれらの流路における流量抵抗に応じて一定であるので、バイパス配管9で混入されたエタノール水溶液5aもしくはエタノール水溶液5aと酢酸水溶液6aの配管を流れる全流量に対する混合比も一定である。また、土壌への流量は流量調節用バルブ4によって調整される。土壌へは、潅水チューブ枝部7aに複数存在する穴から矢印のように吐出される。なお、エタノール水溶液と酢酸水溶液は、予め所定の混合比で混合されてあり、一の貯蔵槽から配管中の水に混入されてもよい。また閉止弁10を閉めることによって、水のみの潅水が可能となる。
【0064】
また、自動システムも考えられ、例えば図5の土壌消毒剤潅注システムは、制御盤12にある制御用マイコン12aが、給水配管1に連結している流量計11により得られる流量値と、予め設定されたエタノール水溶液、またはエタノールと酢酸の水溶液の所定の濃度(希釈率)とからエタノール水溶液5aの注入量を演算し、エタノール水溶液貯蔵槽5と酢酸水溶液貯蔵槽6内からエタノール水溶液5aと酢酸水溶液6aをそれぞれポンピングする各液肥混入器2′のポンプを各々制御し、エタノール水溶液5aと酢酸水溶液6aの混入量を給水配管1内の水の流量に応じてそれぞれの混合比(一定比率)となるように比例制御するものである。混合比は、エタノール水溶液、またはエタノールと酢酸の水溶液が段落番号[0022]〜[0024]、段落番号[0041]〜[0043]記載の所定の濃度(希釈率)となるように設定されており、段落番号[0022]〜[0024]、段落番号[0041]〜[0043]記載の土壌湿潤化消毒剤、土壌還元消毒剤が調製される。なお図中の点線は、信号を表す。また、土壌への流量は流量調節用バルブ4(電磁弁であってもよい)によって調整される。土壌へは、潅水チューブ枝部7aに複数存在する穴から矢印のように吐出される。なお、エタノールと酢酸を予め段落番号[0022]〜[0024]、段落番号[0041]〜[0043]記載の所定の混合比で混合し、段落番号[0022]〜[0024]、段落番号[0041]〜[0043]記載の土壌湿潤化消毒剤、土壌還元消毒剤を調製し、その一の貯蔵槽から配管中の水に混入してもよいし、エタノール5aだけの混入としてもよい。閉止弁10を閉めることによって、水のみの潅水が可能となる。もちろん、貯蔵槽内のエタノール水溶液のエタノール含有量は、土壌中のエタノール水溶液の意図するエタノール含有量より大であり、20容量%以上、60容量%以下が好ましい。貯蔵槽内の酢酸についても同様であり、5容量%以上、50容量%以下が好ましい。
【0065】
給水配管の水供給源は、水圧があればよく、農業用水道が好ましいが、井戸、貯水槽等からポンプで水を引っ張ってきても良い。給水配管、潅水チューブは、プラスチック製の管、ゴム製の管、ホースが例示される。消毒剤は潅水チューブ枝部7aから矢印のように吐出される。どの土壌消毒剤潅注システムにおいても、土壌消毒剤が潅注される土壌14は、図6のように前記フィルム13で覆うことにより、エタノールと水またはエタノールと酢酸と水の蒸発が抑制できる。消毒剤を潅注する土壌14は、土壌に潅水チューブが常時固定されていてもよいが、常時固定でない場合は、作業効率の点で、はじめに土壌消毒剤潅注システムにより、土壌に消毒剤を潅注して、潅水チューブを土壌表面から取り外してから該土壌をフィルム13で覆うことが好ましい。なお、前記フィルム13の固定方法は、前記フィルム13の端を土壌14で埋めて押さえこむ方法が望ましい。
【0066】
どのシステムにおいても、土壌の水分含有量を予め計測しておき、エタノール水溶液またはエタノールと酢酸の水溶液の潅液後に、土壌中のエタノール水溶液またはエタノールと酢酸の水溶液が所定量のエタノールまたは所定量のエタノールと酢酸を含有するように、エタノールまたはエタノールと酢酸等の濃度を設定することが好ましい。
【実施例】
【0067】
[実施例1−1〜実施例1−7]、[比較例1−1〜比較例1−7]
土壌にエタノール水溶液、水、フスマまたはD−Dを含有させた場合の湿潤状態、還元状態を観察し、さらにはネコブセンチュウの防除効果を調べた。
(1)試験体
ネコブセンチュウ汚染土壌(含水量5重量%)10kgをポリエチレン製の袋(以下、ポリ袋)(日本サニパック株式会社製、45L業務用、製品No:N-43 ヨコ650mm×タテ800mm×厚さ0.030mm、2重にして使用)に詰め、表1に示す薬剤と所定量の水をポリ袋中の該土壌に入れて混合し、ポリ袋を密封した。なお、エタノールは水で希釈してから土壌に入れた。なお、試験区A-2〜A-5は、土壌還元消毒法に相当し、試験区B-1〜B-3は、土壌湿潤化消毒法に相当する。
【表1】




(2)試験条件
(1)の薬剤入り汚染土壌を詰めたポリ袋をプランター(同じ試験区のもの3つ×14試験区=42個)に入れ、32℃の一定環境(恒温室)に1週間(2005年9月27日〜2005年10月4日)置いた。その後、各ポリ袋の土壌を乾燥させ、攪拌後、約2週間後にキュウリ苗(品種:ときわ地這キュウリ)を播種した。

(3)試験結果
a) 湿潤状態、還元状態の観察結果
【表2】



b) センチュウの防除効果
【表3】



根こぶ指数=試験区の根こぶ程度の平均値÷4×100
根こぶ程度
0:根こぶ無し
1:根こぶがわずかに認められるが被害は目立たない
2:一見して根こぶが認められ、大きな根こぶやつながった根こぶは認められない
3:大小の根こぶが多数認められ、根こぶに覆われて太くなった根も認められるが、根域全体の50%以下である
4:多くの根が根こぶだらけで太くなっている
防除価=試験区の根こぶ程度/無処理区の根こぶの程度×100

(4)考察
表3のとおり、試験区A-2〜A-5のエタノール濃度、水量でのネコブセンチュウのセンチュウ密度は0.0/生土20g〜1.7頭/生土20gであり、防除価は82点〜100点であることから、圃場要水量以上の水と一定量のエタノールの土壌注入によりセンチュウ密度を著しく減少させる効果が判明した。また、試験区B-1〜B-3においては、無処理区である試験区Gに比べ、センチュウ密度を抑えることができた。土壌を湿潤化させる程度の水と一定量のエタノールの土壌注入によりセンチュウ密度を著しく減少させる効果が判明した。
【0068】
[実施例1−8〜実施例1−14]、[比較例1−8〜比較例1−13]
土壌にエタノール水溶液、水、フスマ、またはクロルピクリンを含有させた場合の湿潤状態、還元状態、酸化還元電位の変化を観察し、さらには青枯病菌とキュウリつる割病菌に対する防除効果を調べた。

(1)試験体
まず、土壌へ埋め込むための青枯病菌とキュウリつる割病菌の2種類をそれぞれ下記の通り調製した。

青枯病菌:培養菌液約109CFUをパーライトに吸着させ、95mm×70mmの不織布製の袋(お茶パック:ポリプロピレン、ポリエステル、レーヨン製)に小さじ山盛り1杯を詰めた。
キュウリつる割病菌:1〜2cmのワラで2ヶ月間培養し、そのワラ約10本をお茶パック不織布製の袋(お茶パック:ポリプロピレン、ポリエステル、レーヨン製)に詰めた。

土壌は、畑土壌(砂壌土)2kg(含水量15重量%)である。この土壌2kg(含水量15重量%)をポリ袋に詰め、その土壌中に、上記調製した青枯病菌が吸着しているパーライトを詰めた不織布製の袋と、キュウリつる割病菌が吸着しているワラを詰めた不織布製の袋とを埋め込み、青枯病菌及びキュウリつる割病菌に汚染されている土壌を作成した。そして、表4に示す薬剤と所定量の水をポリ袋中の該土壌に入れて混合し、ポリ袋を密封した。なお、エタノールは水で希釈してから土壌に入れた。なお、試験区1〜4は、土壌還元消毒法に相当し、試験区5〜7は、土壌湿潤化消毒法に相当する。
【表4】



(2)試験条件
(1)の薬剤入り汚染土壌を詰めたポリ袋をプランター(同じ試験区のもの3つ×13試験区=39個)に入れ、35℃の恒温室(暗条件)に、2006年10月12日〜2006年11月6日の間、保持した。
また、土壌の酸化還元電位は、試験区1〜4、9の土壌を別途調製してビニール袋に詰め、その各ビニール袋の土壌内に電極を挿して計測した。なお、試験中は電極を挿したままであり、ビニール袋の口は閉じてあった。

(3)試験結果
不織布製の各袋から病原菌を取り出し、青枯病菌は選択培地を用いて、希釈平板法により菌密度を調査した。キュウリつる割病菌は選択培地上にワラを置床し、菌の生育の有無を調査した。また、酸化還元電位については、ビニール袋に電極を挿したまま計測した。

a) 湿潤状態、還元状態、酸化還元電位の変化の観察結果
表5に湿潤状態、還元状態の観察結果を示す。
【表5】



また、図7に、試験区1〜4、9の土壌の酸化還元電位を示す。酸化還元電位は、試験区9の水処理区では徐々に低下したが、試験区1〜4ではいずれの試験区も同様に、急激に低下した。エタノール濃度による差は認められなかった。

b) 青枯病菌の防除効果
表6に青枯病菌密度の調査結果を示す。
【表6】



試験区13の無処理区の青枯病菌の密度が1.77×105 CFU/mlであったのに対し、試験区1では5.00×103 CFU/g、試験区2〜4では0.00〜1.67×102 CFU/gと菌密度が低い。圃場要水量以上の水と一定量のエタノールの土壌注入および土壌還元化により青枯病病原菌密度を著しく減少させる効果が判明した。また、試験区5〜7では、2.96×103〜2.44×104 CFU/ml と、試験区13の無処理区1.77×105 CFU/ml に比べ、菌密度が低い。土壌を湿潤化させる程度の水と一定量のエタノールの土壌注入により青枯病病原菌密度を減少させる効果が判明した。

c) キュウリつる割病菌の防除効果
表7にキュウリつる割病菌の生育の有無の調査結果を示す。
【表7】


キュウリつる割病は、試験区3、試験区4で、菌の生育が認められなく、試験区1、試験区2では、試験区13の無処理区の検出率100%に対して、低い検出率となっている。圃場要水量以上の水と一定量のエタノールの土壌注入および土壌還元化によりキュウリ萎凋病菌検出率を著しく減少させる効果が判明した。また、試験区7では、試験区13の無処理区の検出率100%に対して、低い検出率となっている。土壌を湿潤化させる程度の水と一定量のエタノールの土壌注入によりキュウリ萎凋病菌検出率を減少させる効果が判明した。
【0069】
[実施例1−15〜実施例1−18]、[比較例1−14〜比較例1−17]
ビニールハウス内の作土にエタノール水溶液、水、フスマ、またはソイリーン(D−Dとクロルピクリンの混合剤(クロルピクリン 40.0%、1,3-ジクロロプロペン(D-D) 52.0%))を含有させた場合のサツマイモネコブセンチュウの防除効果を調べた。
(1)試験体
ビニールハウス内の作土(含水量15.2重量%)を一面消毒施し、病菌が無くなったのを確認してから、サツマイモネコブセンチュウを植え付けて汚染させた。そして、ビニールハウス内の作土(含水量15.2重量%)をコンクリート枠で区画した。各区画の面積は、1.6mである。

【表8】



(2)試験条件
2006年9月4日に、表8に示す薬剤を所定量の水で希釈後、各試験区(それぞれ3区画)の土壌に流し込み、土壌と良く撹拌した。プラスチックフィルムで被覆密閉し、さらに、ビニールハウスを閉め切った。3週間後にハウスを開放し、土壌を乾燥させ、耕耘後、2006年10月12日に2週間育苗した苗(品種:新ときわ地這きゅうり))を定植した。なお、試験区1〜4は、土壌還元消毒法に相当する。

(3)試験結果
2006年11月13日に株を掘り取り、根こぶの発生程度を調査した。

センチュウの防除効果
表9に根こぶ着生株数率、根こぶ着生度、防除価を示す。
【表9】



・根こぶ着株率=根こぶ着生程度別株数の総数/調査株数×100
・根こぶ着生度(根こぶ指数)=((根こぶ着生程度(0〜4)×根こぶ着生程度別株数)の合計)/調査株数/4×100
つまり、根こぶ着生度(根こぶ指数)=調査区の根こぶ着生程度で重み付けした平均値÷4×100である。
・防除価=処理区の根こぶ程度/無処理区の根こぶの程度×100

<程度別調査株数における程度>
0:根こぶが無い。
1:根こぶがわずかに認められるが被害は目立たない。
2:一見して根こぶが認められる。大きな根こぶ、つながった根こぶは認められない。
3:大小の根こぶが多数認められる。根こぶに覆われて太くなった根も認められるが、根域全体の50%以下である。
4:多くの根が根こぶだらけで太くなっている。

(4)考察
表9のとおり、根こぶ着生程度からみた防除効果は、試験区1〜4で認められた。特には試験区4では、根こぶが全く着生していなかった。試験区1〜4のサツマイモネコブセンチュウの防除価は76.3点〜100点であることから、圃場要水量以上の水と一定量のエタノールの土壌注入によりサツマイモセンチュウを著しく減少させる効果が判明した。
【0070】
[実施例1−19〜実施例1−22]、[比較例1−18〜比較例1−21]
ビニールハウス内の作土にエタノール水溶液、水、フスマ、またはソイリーン(D-Dとクロルピクリンの混合剤(クロルピクリン 40.0%、1,3-ジクロロプロペン(D-D) 52.0%))を含有させた場合のホウレンソウ萎凋病菌の防除効果を調べた。
(1)試験体
まず、土壌へ埋め込むためのホウレンソウ萎凋病菌を下記の通り調製した。

ホウレンソウ萎凋病菌HI4-32:1〜2cmのワラで2か月培養、約10本を95mm×70mmの不織布製の袋(お茶パック:ポリプロピレン、ポリエステル、レーヨン)に詰めた。

ビニールハウス内の作土(含水量16.4重量%)を一面消毒施し、病菌が無くなったのを確認してから、上記調製したホウレンソウ萎凋病菌が吸着しているワラを詰めた不織布製の袋を作土に埋め込み、作土をホウレンソウ萎凋病菌で汚染させた。
そして、ビニールハウス内の作土(含水量15.2重量%)をコンクリート枠で区画した。各区画の面積は、1.6mである。

【表10】



(2)試験条件
2006年9月7日に、表10に示す薬剤を所定量の水で希釈後、各試験区(それぞれ2区画)の土壌に流し込み、土壌と良く撹拌した。ポリエチレンフィルムで被覆密閉し、さらに、ビニールハウスを閉め切った。3週間後にハウスを開放し、土壌を乾燥させ、耕耘後、2006年10月3日にホンレンソウの種を播種した。各区画に、種を300粒以上播種し、発芽後間引き、100株とした。なお、試験区1〜4は、土壌還元消毒法に相当する。

(3)試験結果
2006年11月10日に発病株を観察した。また、地際直下の直根を横断して導管の褐変を肉眼観察した。さらに、地際直下の直根の横断片を選択培地上に置床し、萎凋病菌の感染の有無を調査した。

<ホウレンソウ萎凋病発病調査結果>
表11に萎凋株率、根部褐変率、検出率、防除価を示す。なお、各数値は、以下の通り算出した。萎凋病発病株とは、生育中、肉眼的に生育が悪く萎凋したり、立ち枯れしたりしたものである。
萎凋株率=萎凋病発病株数/調査株数×100 (調査株数:100×2)
根部褐変率=根部褐変発現株数/調査株数×100 (調査株数:30×2)
検出率=検出株数/調査株数×100 (調査株数:30×2)
防除価=(1−試験区の褐変率/試験区8の褐変率)×100
【表11】



いずれの試験区でも発病株はほとんど認められなかった。地際部直下の根部の褐変の程度は、試験区1〜試験区4(エタノール水溶液処理区)で10〜18.3%、試験区8(無処理区)の69.2%に比べると、防除効果が認められた。圃場要水量以上の水と一定量のエタノールの土壌注入および土壌還元化によりホウレンソウ萎凋病を防除する効果が判明した。
【0071】
[実施例2−1〜実施例2−2、比較例2−1〜比較例2−3]
<発芽抑制試験及び土壌酸化還元状態、酸素濃度の把握試験>
土壌に水、エタノール水溶液、フスマまたは糖蜜を含有させた場合における、コムギ、レタス、イネの種子の発芽抑制効果を評価した。なお、ムギ、レタス、イネは雑草並みの発芽性を有するので、代用した。同時に土壌の酸化還元電位、酸素濃度を観察した。

(1)試験体
まず、20個のプラスチック容器(ポリプロピレン製、内寸法160×160×154 mm、内容積:3.94 L、密閉用上蓋付き)に、農業環境技術研究所内のクロボク土(含水量17.4重量%)3,540gをそれぞれ充填した。表12に示す5つの試験区の薬剤を、それぞれ4つのプラスチック容器の土壌に入れて混合し、容器の上蓋で密封した。薬剤をプラスチック容器一杯となるように入れ、容器内に空気が無い状態とした。なお、薬剤であるエタノール、糖蜜は、表12中に示す濃度となるように所定量の水で希釈されている。また、フスマの場合は、フスマ30gと水を混合攪拌後、プラスチック容器一杯となるように入れた。
各容器には、コムギ(農林61号、100粒)、レタス(グレートレークス366号、200粒)、イネ(コシヒカリ、100粒)を同時に容器内の土壌深さ1cm程度に播種した。なお、試験区2、3は、土壌還元消毒法に相当する。
【表12】



(2)試験条件
(1)の試験体(同じ試験区のもの4つ×5試験区=20個)を25℃の恒温室(暗条件)に、1週間保持し、その後上蓋を開けて恒温室の外(室内)に放置した。
各試験区の土壌の酸化還元電位と酸素濃度を、25℃の恒温室における1週間に30分間隔で測定した。土壌の酸化還元電位は、Orion 617900 pHutureTM QuatrodeTM pH複合電極(pH/ORP/Temp)を用いて測定し、酸素濃度は、酸素濃度計(FOXY Fiber Optic Oxygen Sensors (OptoSerius)、FOXY-T1000-RTD)を用いて測定した。なお、pH/ORP電極の外径が12.9 mm、酸素濃度計の酸素センサーの外径が6.35 mmであるので、プラスチック容器の上蓋にこの大きさより少し大きな穴をあけ、この穴からpH/ORP電極と酸素センサーを土壌中に挿し込み、上蓋の穴にシリコーンゴムシーラントを充填し、気密性を保つようにした。

(4)試験結果
a) 発芽抑制効果
各プラスチック容器のコムギ(農林61号、100粒)、レタス(グレートレークス366号、200粒)、イネ(コシヒカリ、100粒)の発芽している種の数を調査し、発芽率を算出した。表13に、各試験区における発芽率を示す。各試験区は、同じ試験区において、試験体は4つずつであるので、その平均値も記載した。
試験区2、試験区3のエタノール水溶液を充填した土壌における種の発芽率が、薬剤を水、フスマ、糖蜜とした試験区における発芽率より著しく低く、エタノール水溶液による土壌還元消毒の発芽抑制効果を確認できた。

【表13】



b) 土壌酸化還元状態、酸素濃度の把握
各試験区の土壌の酸化還元電位、酸素濃度を図8に示す。試験区1では、還元状態とならず、試験区2、試験区3で試験開始から急激に還元状態に移行している。また、酸素濃度も、試験区1では、ゆっくりと酸素濃度が低下しているが、試験区2、試験区3では、試験開始から急激に酸素濃度が低下した。
【0072】
[実施例3]雑草発芽抑制試験
レタス種子を用いた雑草発芽抑制試験を、以下のとおり行った。
50mlの栓付三角フラスコに風乾土壌(農業環境技術研究所圃場の黒ボク土、水分含有量27.4重量%)25gを入れ、図9に示すエタノール水溶液を添加した後、密栓をして25℃に設定した恒温槽内で保持した。1週間後、土壌の色と臭気を観察し、レタス種子の発芽状態を観察し、発芽率を図9に示した。図9のとおり、希薄なエタノール濃度でレタスの発芽が抑制された。エタノール濃度が高くなるほど、また、添加量が多くなるほどレタスの発芽率は減少した。特にエタノール濃度0.8容量%、1.6容量%および3.2容量%で発芽率は0%と顕著な効果が認められた。レタス種子は雑草並みの発芽性を有することが知られており、これらのことからエタノール希薄水溶液を土壌中に添加し、1週間保持することによって、雑草発芽抑制効果が得られることが判明した。なお、この試験は、土壌湿潤化消毒法に相当する。
【0073】
[実施例4−1〜実施例4−5]、[比較例4−1〜比較例4−2]
エタノール水溶液によるネコブセンチュウの土壌湿潤化消毒を以下のとおり行った。
プランター(60cm×15cm×10cm)に10L(11.7kg)のネコブセンチュウが生育している土壌(土壌水分は11.1重量%)をいれ、エタノール所定量を注入し白色ポリ袋で密閉した。18〜25℃室温中に10日間置きベールマン法によってネコブセンチュウ密度を調査した。表14中のALCはエタノールであり、エタノール処理量を段階的に変えたものを注入しセンチュウ密度を比較した。また、いずれも6個のプランターにより行い、センチュウ密度を求めた。なお、土壌中では、エタノールは土壌含有水により希釈され、表14中の濃度のエタノール水溶液となっている。なお、この試験における実施例は、土壌湿潤化消毒法に相当する。
【表14】



表14のとおり土壌10L当りエタノール100ml(エタノール7.15容量%)以上でネコブセンチュウのセンチュウ密度0頭/生土20gであり、また、エタノール50ml(エタノール3.71容量%)においても平均4頭/生土20gであることから、一定量のエタノール水溶液の土壌注入によりセンチュウ密度を著しく減少させる効果が判明した。
【0074】
[実施例5]雑草発芽抑制試験
雑草発芽抑制試験を、以下のとおり行った。
ポリ袋に土壌(土壌の種類は壌土、含水量は1.8重量%)10kgを入れ、これにエタノール等の薬剤を所定量添加して密閉し、25℃に7日間置いた。処理後、プランターに土壌全量を戻して水を撒いた後放置し、雑草の生育状況を観察した。季節柄外気温が低いため、試験はハウス内で行った(室温は20℃以上である)。なお、試験区は表15のとおりであり、1区3反復で行った。約70日後、生えていた雑草の植被率を測定し、その後各雑草を1本ずつ土壌表面以上で切り取り、その本数、重量を測定した。処理日は平成16年12月20日、試験結果測定日は平成17年3月1日であった。試験結果を図10〜図12に示す。なお、この試験における実施例は、土壌湿潤化消毒法に相当する。
【表15】



図10〜12のとおりエタノール添加量又は副生アルコール添加量が多くなるほど雑草の本数、重量、植被率とも減少した。特に土壌10kg当りエタノール、副生エタノール100mlで顕著な効果が認められた。これらのことからエタノール、副生アルコール、エタノールと酢酸の混合液のいずれも土壌中に注入し、密封下で一定期間保持することによって、雑草発芽抑制効果を得られることが判明した。
【0075】
[参考例1] キュウリつる割病菌に対する殺菌力試験
キュウリつる割病菌に対するエタノールの殺菌力試験を、以下のとおり行った。
エタノール(濃度99.5容量%;和光純薬試薬特級)を滅菌蒸留水で所定濃度(0、5、10、20容量%)になるように滅菌蒸留水によって希釈し、スクリューキャップ付き滅菌試験管に10mLずつとった。これに予め調製されたキュウリつる割病菌株の胞子懸濁液0.1mLを添加し、20℃で静置する。胞子液添加後、一定期間ごとに試験液を採取して適宜希釈し、PDA培地で塗抹平板培養を行った(25℃、3〜5日間)。生成するコロニー数から生残菌数を測定した。その結果を図13に示す。エタノール20容量%に浸漬した場合は、1日後には検出限界以下(<10CFU/mL)となり、くん蒸剤としては非常に高い効果が得られるといえる。また、エタノール10容量%でも浸漬6日後には4.5×10CFU/mL、9日後には検出限界以下となった。よって、エタノール10容量%でも、浸漬7〜9日間で十分殺菌されることが示唆された。なお、エタノール5容量%では2週間浸漬後でも生残胞子数に変化は認められず、常温においてはこの濃度での殺菌効果は期待できない。以上の結果から、常温の土壌中でエタノール10容量%以上の濃度が保持されていれば、1週間程度できゅうりつる割病菌胞子に対して高い殺菌効果が得られることが示唆された。
【0076】
[参考例2] トマト青枯病菌に対する殺菌力試験
トマト青枯病菌に対するエタノール及び酢酸の殺菌力試験を、以下のとおり行った。
試験は、エタノール濃度による殺菌力の変化を観察する試験(試験A)、酢酸濃度による殺菌力の変化を観察する試験(試験B)、エタノールと酢酸を合わせた場合の殺菌効果を観察する試験(試験C)とに大きく分けられる(表16)。試験手順は、まずNutrient broth(Difco)10mLに試験菌株(トマト青枯病菌 Ralstonia solanacearum 高知トマト3-2)を1白金耳植菌し、25℃で振盪培養した。そしてエタノール(99.5容量%;和光純薬試薬特級)もしくは酢酸(99.7容量%;和光純薬試薬特級)を滅菌蒸留水にて所定の濃度(表16)になるように希釈し、滅菌試験管に10mLずつ分注した。これに、初発菌数が約106CFU/mLとなるように、上記の青枯菌培養液を希釈したものを0.1mL添加した。これを20℃で静置し、一定時間ごと(表16)に液を0.1mL採取して適宜希釈し、nutrient agarで塗抹平板培養した。25℃で2〜3日間培養後、生じたコロニー数を計測し、溶液中の生残菌数を測定した。試験結果を図14〜図16に示す。
【表16】



エタノール10容量%単独では4時間経過後でも殺菌効果が認められず(図14)、酢酸0.1容量%単独では検出限界以下まで殺菌されるのに2時間を要したが(図15)、エタノール10容量%及び酢酸0.1容量%を混合すると30分以内で殺菌され、相乗効果が認められた(図16)。なお、エタノール10容量%と酢酸0.2容量%の混合では10分以内に殺菌されたが、これは酢酸濃度が高くなると酢酸単独の殺菌効果が大きくなるためであり、エタノールも同様に濃度が高くなるとその殺菌効果は顕著となることが図14、図15から確認できる。本試験の結果、単独ではそれほど大きくない殺菌効果を示す濃度のエタノール、酢酸を混合して使用すると殺菌効果が大きくなることから、相乗効果を有すことが判明した。
【0077】
[参考例3] キュウリつる割病菌に対する殺菌力試験
キュウリつる割病菌に対するエタノール及び酢酸の殺菌力試験を、以下のとおり行った。
PDA培地において試験菌株(キュウリつる割病菌 Fusarium oxysporum f. sp. cucumerium MAFF 74404)を25℃で2ヶ月培養した。これに直接、界面活性剤入り生理食塩水(SDS 0.01%、NaCl 0.85%)を添加し、培地表面を白金耳で掻き取り、さらにピペッティングしてカビ胞子を懸濁して、これを滅菌容器にとってさらに強く撹拌して胞子を分散させ、滅菌ガーゼでろ過して菌糸等を除いてから、滅菌生理食塩水で洗浄し、胞子濃度が106CFU/mL程度になるように調整した。エタノール(99.5容量%;和光純薬試薬特級)及び酢酸(99.7容量%;和光純薬試薬特級)を滅菌蒸留水にて所定濃度(表17)に希釈し、それぞれ10mLずつ滅菌試験管に分注し、上記胞子懸濁液を0.1mL加え、20℃で静置した(胞子数は約104CFU/mL)。一定時間経過後(表17)に0.1mL採取し、適宜希釈してPDA培地に接種し、25℃で5日間培養した。生じたコロニー数から、溶液中の生残菌数を測定した。結果を図17に示す。

【表17】



エタノール20容量%単独及び酢酸0.1〜0.2容量%単独では4時間経過後も殺菌効果がほとんどないが、エタノール20容量%及び酢酸0.1容量%を混合すると、10分以内で検出限界以下まで殺菌された。また、同じ条件で酢酸濃度を0.2容量%に上げると、さらに殺菌力が向上した。よって、青枯病菌と同様、キュウリつる割病菌に対しても、エタノール及び酢酸の併用により、殺菌力の向上が期待できることが判明した。
【0078】
[参考例4] エタノールの酢酸変換試験
土壌中でエタノールが酢酸に変換することを以下によって確認した。
50mlの栓付三角フラスコに風乾土壌(農業環境技術研究所圃場、黒ボク土、水分含有量27.4重量%)25gを入れ、エタノール水溶液を添加した後、密栓をして25℃に設定した恒温槽内で保持した。経時的に生成した酢酸を分析するために、蒸留水を添加し、5分間超音波抽出の後、Whatman社製Mini-UniPrep Syringeless Filter、Polyvinylydene fluoride(PVDF, Pore size 0.45μm)を用いて濾過後、表18の条件でLC-UV分析した。エタノール水溶液は、エタノール濃度0.2容量%、2.0容量%、20.0容量%の3種を用いた。
【表18】



図18は、エタノール濃度0.2容量%、図19は、エタノール濃度2.0容量%、図20はエタノール濃度20.0容量%のエタノール水溶液を用いた結果である。図18〜図20のとおり土壌中に酢酸が生成することを確認できた。
【0079】
[参考例5]土壌くん蒸剤の被覆資材透過速度試験
一般的に土壌殺菌(土壌燻蒸)を行う場合、被覆資材(プラスチックフィルム)を使用する。エタノールを、加熱部分、ノズル、送風部分、薬液タンク、加圧空気などから構成される蒸散機により、酸素ガス透過度が所定の値以下のガスバリア性の被覆資材(プラスチックフィルム)で被覆された土壌の表面とフイルムの間に拡散させる土壌燻蒸消毒方法がある。ここで、土壌くん蒸剤の被覆資材透過速度試験を行った。
JIS Z 0208透湿度試験を参考にして、耐腐食性ステンレス(SUS316)製のカップ(透過試験面積5cm2、内容積約15ml)を作成し、O-リング類を用いないでフィルムが固定可能となるよう加工した。この容器に土壌くん蒸剤を5−10ml注入し、恒温装置中15、30、45、60℃で23時間保持した。恒温装置内の空気は容器内に比較してくん蒸剤濃度が十分低くなるよう常に換気(約10L/min)を行った。測定は3連で行い、0.05mm厚さのプラスチックフィルムを供し、処理前後に天秤を用いてくん蒸剤の重量損失から透過速度を求めた(図21〜図24)。なお、図中の略号は、以下の被覆資材(プラスチックフィルム)の意味である。
PE: ポリエチレン
PVC: ポリ塩化ビニル
PE+α: ポリエチレン(タルク滑石:含水ケイ酸マグネシウム(3MgO・4SiO2・H2O)にてフィルム表面が処理されている)
東罐バリアー(バリアスター): EVOH・アロイ樹脂
オルガロイ: ポリアミド・アロイ樹脂
EVOH: エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂
PET: ポリエチレンテレフタレート
CTFE: 三フッ化塩化エチレン樹脂
ETFE: 四フッ化エチレン-エチレン共重合体
FEP: 四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体
PFA: 四フッ化エチレン-パーフルオロビニルエーテル共重合体
一般にガス透過速度は、試験フィルムを上下2つの測定セルの中間に固定する構造を持つ透過セルを用いて測定を行うが、測定が煩雑で、測定装置内でくん蒸剤ガスが凝縮する等困難である。今回実施した測定方法は、容器内部には飽和蒸気圧に達したくん蒸剤ガス、上部は開放されているため容器内に比較して十分低いガス濃度が維持され、測定中十分な濃度勾配が維持され、実際の使用場面に近いかたちである。また、O-リングを使用しないことで、バリアー性フィルムの測定の場合に過剰評価の原因となっていた、PTFEやバイトン等によるくん蒸剤ガスの損失が回避できた。
各測定における変動係数は9−15%であり、良好な結果が得られた。測定可能な最小透過速度は用いる天秤の性能にもよるが、0.09g/m2/hrであり、簡易測定法として提案できるものである。本試験の結果、従来のポリエチレンやポリ塩化ビニルフィルムは、くん蒸剤ガスの保持機能が極端に低いため、バリアー性フィルムの導入が必要である。
しかし、エタノールのプラスチックフィルム透過速度は、他のくん蒸剤に比較してポリエチレンフィルムと塩化ビニルフィルムの場合には、それぞれ1.0〜12 g/m2/hr/50μm、4.8〜17 g/m2/hr/50μmであり、これは他のくん蒸剤ガスの70分の1以下である。このことは、バリアー性フィルムを用いることなく、慣用の農業用フィルムで十分なガス保持性を有し、環境中への漏出を防ぐことが可能であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の土壌還元消毒方法及び土壌還元消毒剤は、農作物に被害を及ぼす土壌病害虫防除及び雑草の発芽抑制のための方法及び薬剤として有用である。また、オゾン層破壊をもたらす臭化メチル剤(土壌くん蒸剤)の代替薬剤として環境に配慮した成分で構成されており、取扱上安全であるため作業者、人体、周辺環境への影響がないとともに、消毒された後の土壌で収穫される作物に有害成分を残留させることもなく、土壌消毒効果が非常に高いため土壌消毒方法及び土壌消毒剤として有用である。本発明の土壌湿潤化消毒方法及び土壌湿潤化消毒剤は、農作物に被害を及ぼす土壌病害虫防除及び雑草の発芽抑制のための方法及び薬剤として有用である。また、オゾン層破壊をもたらす臭化メチル剤(土壌くん蒸剤)の代替薬剤として環境に配慮した成分で構成されており、取扱上安全であるため作業者、人体、周辺環境への影響がないとともに、消毒された後の土壌で収穫される作物に有害成分を残留させることもなく、土壌消毒効果が非常に高いため土壌消毒方法及び土壌消毒剤として有用である。本発明の土壌消毒剤潅注システムは、圃場や園芸施設において、前記土壌還元消毒剤、土壌湿潤消毒剤を、人手を要することなく、作土の下層から地表に迅速に潅注するのに有用である。
【符号の説明】
【0081】
1 給水配管
2 液肥混入器
2′ 液肥混入器(ポンプ付き)
3 フィルター
4 流量調整用バルブ
5 エタノール水溶液貯蔵槽
6 酢酸水溶液貯蔵槽
7 潅水チューブ
7a 潅水チューブ枝部
8 流量抵抗装置
9 バイパス配管
10 閉止弁
11 流量計
12 制御盤
12a 制御用マイコン
13 フィルム
14 消毒対象土壌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノール水溶液(ただし、エタノール含有量は0.1容量%以上である)からなることを特徴とする土壌還元消毒剤。
【請求項2】
エタノール含有量は0.1容量%以上、7.0容量%以下であることを特徴とする請求項1記載の土壌還元消毒剤。
【請求項3】
土壌還元消毒剤における消毒が土壌病害虫防除または雑草の発芽抑制であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の土壌還元消毒剤。
【請求項4】
エタノールが発酵エタノールの蒸留精製過程で得られる副生エタノールであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の土壌還元消毒剤。
【請求項5】
土壌が播種前または定植前の土壌であることを特徴とする請求項1〜請求項4いずれか1項記載の土壌還元消毒剤。
【請求項6】
エタノールと酢酸の水溶液(ただし、エタノール含有量は0.1容量%以上であり、酢酸はエタノールの0.1〜20容量%である)からなることを特徴とする土壌還元消毒剤。
【請求項7】
土壌にエタノール水溶液(ただし、エタノール含有量は0.3容量%以上である)を含有せしめて湿った状態(湛水状態を含む)とし、水とエタノールの蒸発を抑制しつつ保持して土壌を消毒することを特徴とする土壌湿潤化消毒方法。
【請求項8】
エタノール含有量は0.3容量%以上、10容量%以下であることを特徴とする請求項7記載の土壌湿潤化消毒方法。
【請求項9】
消毒が土壌病害虫または雑草の発芽抑制であることを特徴とする請求項7または請求項8記載の土壌湿潤化消毒方法。
【請求項10】
土壌が播種前または定植前の作土であり、作土の底部から表面を湿った状態(湛水状態を含む)にすることによる請求項7〜請求項9のいずれか1項記載の土壌湿潤化消毒方法。
【請求項11】
液肥混入器を用いて、エタノールを水に混入せしめてエタノール水溶液(ただし、エタノール含有量は0.3〜20容量%である)を調製し、該エタノール水溶液を潅水チューブにより作土に潅液して作土を湿潤状態にすることを特徴とする、請求項10記載の土壌湿潤化消毒方法。
【請求項12】
水とエタノールの蒸発抑制は、エタノール水溶液処理土壌表面をプラスチックフィルムもしくはシートで被覆することによる、請求項7〜請求項11のいずれか1項記載の土壌湿潤化消毒方法。
【請求項13】
エタノールの蒸発抑制は、エタノール水溶液処理土壌をプラスチックフィルム製袋に封入することによる、請求項7〜請求項9のいずれか1項記載の土壌湿潤化消毒方法。
【請求項14】
エタノールが発酵エタノールの蒸留精製過程で得られる副生エタノールであることを特徴とする請求項7〜請求項13のいずれか1項記載の土壌湿潤化消毒方法。
【請求項15】
土壌にエタノールと酢酸の水溶液(ただし、エタノール含有量は0.3容量%以上であり、酢酸はエタノールの0.1〜20容量%である)を含有せしめて湿った状態(湛水状態を含む)とし、水とエタノールと酢酸の蒸発を抑制しつつ保持して土壌を消毒することを特徴とする土壌湿潤化消毒方法。
【請求項16】
エタノール水溶液(ただし、エタノール含有量は0.3容量%以上である)からなることを特徴とする土壌湿潤化消毒剤。
【請求項17】
エタノール含有量は0.3容量%以上、10容量%以下であることを特徴とする請求項16記載の土壌湿潤化消毒剤。
【請求項18】
土壌湿潤化消毒剤における消毒が土壌病害虫または雑草の発芽抑制であることを特徴とする請求項16または請求項17記載の土壌湿潤化消毒剤。
【請求項19】
エタノールが発酵エタノールの蒸留精製過程で得られる副生エタノールであることを特徴とする請求項16〜請求項18のいずれか1項記載の土壌湿潤化消毒剤。
【請求項20】
土壌が播種前または定植前の土壌であることを特徴とする請求項16〜請求項19のいずれか1項記載の土壌湿潤化消毒剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−106034(P2010−106034A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297759(P2009−297759)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【分割の表示】特願2008−514389(P2008−514389)の分割
【原出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(506148822)日本アルコール産業株式会社 (6)
【出願人】(591014710)千葉県 (49)
【出願人】(501245414)独立行政法人農業環境技術研究所 (60)
【Fターム(参考)】