Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
土木・建築用シート
説明

土木・建築用シート

【課題】 引抜き性が著しく改善され、効率的かつ簡便に現場作業を行うことができる土木・建築用シートを提供する。
【解決手段】 潤滑剤層を2つ以上の基材で挟む構成を有する土木・建築用シートであって、該基材の少なくとも1つは、動表面摩擦係数(μ)が0.45以下である土木・建築用シート、及び、潤滑剤層を2つ以上の基材で挟む構成を有する土木・建築用シートであって、該基材の少なくとも1つは、格子状基材である土木・建築用シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木・建築用シートに関する。より詳しくは、建築分野や土木分野等において、地盤や水硬性組成物中から鋼材を引き抜く作業等に用いられる土木・建築用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
建築分野や土木分野の基礎工事等において、地盤中に土留め擁壁等の構造物を埋設する場合には、鋼矢板等の鋼材(支持体)を直接地盤に埋設する方法が一般に利用されている。そして、鋼材を地盤に埋設した後には、必要に応じ、セメントミルクや生コンクリート等の水硬性組成物を地盤中に圧入したり、掘削孔を形成し水硬性組成物を注入後にH型鋼を鋼材(芯材)として埋め込んだりすることが行われている。なお、水硬性組成物を使用するか否かは、基礎工事を行う周囲の地下水の状況に応じて決定されることになる。
このような基礎工事等に用いられる鋼材は、借地のためや後年に地下を再び工事(開発)する際の障害とならないようにしたり、また、鋼材を再度使用したりするために、地盤等から引き抜かれることが望まれるが、地盤や水硬性組成物中から鋼材を引き抜く作業には相当の労力(引張力)が必要となる。
【0003】
そこで、従来、鋼材表面にワックスやグリース等の潤滑油を予め塗布したり、吸水性樹脂を含む処理剤等を鋼材表面に塗布したりすることによって、鋼材の引抜き作業を容易に行う技術が種々提案されている。例えば、裏面に貼着面を有し、表裏間に吸水ポリマーと再湿性バインダーとを混練して乾燥固化させた再湿性潤滑層を有する吸水潤滑テープが開示されており(例えば、特許文献1参照。)、実施例において、不織布/再湿性潤滑層/クラフト紙/粘着剤層/剥離紙の構成を採る吸水潤滑テープが記載されている。しかしながら、この吸水潤滑テープにおいては、鋼材との接触面での滑り性をより充分に向上させることにより、鋼材の引抜き作業等の土木・建築分野において効率よく作業できるようにするための工夫の余地があった。
【0004】
またシート状基材に特定のアルカリ水可溶性樹脂を含む樹脂層が形成された被覆材が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この被覆材を水硬性組成物の硬化物から鋼材等の仮埋設物の引抜き作業に用いることにより、水硬性組成物に含まれる水に溶解したアルカリ水可溶性樹脂によってシート状基材と水硬性組成物の硬化物との間に易剥離層が形成されるため、引抜き作業における労力(引張力)を低減することができ、該作業の作業性を向上させることができることとなる。しかしながら、この被覆材においては、水硬性組成物の硬化物からの鋼材の引抜き性を更に向上させ、現場作業を更に簡便かつ効率的に行うことができるようにするための工夫の余地があった。
【特許文献1】特開昭62−174418号公報(第1、2頁、図1)
【特許文献2】特許第3274421号公報(第1、3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、引抜き性が著しく改善され、効率的かつ簡便に現場作業を行うことができる土木・建築用シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、引抜き作業を改善するための技術について種々検討したところ、塗布剤に代えてシートを用いることにより、鋼材等への塗布(貼付)作業を簡略化できるとともに、塗りムラや液ダレ等の発生を抑制して作業全体としての効率化を図ることができることにまず着目し、フリクションカッターシート(登録商標、FRCシート)等の潤滑効果を発揮し得る層を有するシートが、その潤滑効果により鋼材等と地盤や水硬性組成物の硬化物との摩擦力を低減し、引抜き作業の作業性向上に非常に有用であることに着目した。そして、このようなシートを、潤滑効果を発揮させる潤滑剤層を2つ以上の基材で挟む構成とすると、潤滑剤の脱落が防止されることに起因して、その潤滑効果を充分に発揮させることができることを見いだし、更に該基材のうち少なくとも1つを特定の動表面摩擦係数を有するものとすると、表面摩擦抵抗が低減されるため、滑り性が大幅に向上することを見いだし、これらの相乗効果により、引抜き性が格段に改善されることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。また、上記基材のうち少なくとも1つを格子状基材とすることによっても、引抜き性が格段に改善され、作業性向上に非常に有用であることを見いだした。すなわち格子状基材を用いることにより、潤滑剤と鋼材等との接触面積が適切なものとなること、また、孔がいわゆるアンカー効果を発揮すること等に起因して、鋼材等に貼付時には充分な密着力を発揮する一方で、引抜き時には優れた滑り性を発揮できることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、潤滑剤層を2つ以上の基材で挟む構成を有する土木・建築用シートであって、上記基材の少なくとも1つは、動表面摩擦係数(μ)が0.45以下である土木・建築用シートである。
本発明はまた、潤滑剤層を2つ以上の基材で挟む構成を有する土木・建築用シートであって、上記基材の少なくとも1つは、格子状基材である土木・建築用シートでもある。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の土木・建築用シートは、鋼材等の土木・建築構造物に貼り付けて用いられるものであり、潤滑剤層を2つ以上の基材で挟む構成を有するものであるが、このような構成にすることによって、シートからの潤滑剤の脱落を充分に防ぐことができるため、潤滑剤の性能を充分に維持・発揮でき、引抜き時の滑り性を向上することができる。
上記土木・建築用シートとしては、(1)基材の少なくとも1つが、動表面摩擦係数(μ)が0.45以下のものである形態(以下、「形態(1)」ともいう。)、又は、(2)基材の少なくとも1つが格子状基材である形態(以下、「形態(2)」ともいう。)のものである。なお、これらを組み合わせた形態、すなわち、基材の少なくとも1つが、動表面摩擦係数(μ)が0.45以下の格子状基材である形態であってもよい。
上記形態(1)及び/又は(2)を満たす少なくとも1つの基材としては、鋼材等の土木・建築構造物と接触する側の基材、すなわち該構造物表面に貼り付けられる基材であることが好適である。
【0009】
上記形態(1)において、少なくとも1つの基材が有する動表面摩擦係数(μ)は0.45以下であることが適当であるが、このような範囲に設定することにより、土木・建築用シートの滑り性がより向上され、引抜き時の作業が格段に改善されることとなる。好ましくは、0.3以下であり、より好ましくは、0.2以下であり、更に好ましくは、0.15以下である。
上記動表面摩擦係数(M)とは、M=F/W(F:平均抵抗力(g)、Wは:垂直荷重(g))で表される値であり、下記測定条件により求めることができる。
(動表面摩擦係数の測定条件)
測定機:表面性測定機(HEIDON−14、新東科学社製)
平面圧子の仕様:ASTM規格
垂直荷重:100g
移動速度:75mm/分
移動台に取り付けた鉄板の仕様:JIS G3141−1996、冷間圧延鋼板、厚0.6×70×150mm、日本テストパネル大阪社製
平面圧子に試験片をたるみのないように巻き付け固定し、移動台に鉄板を取り付ける。
【0010】
上記形態(1)の基材としては、動表面摩擦係数が上記範囲を満たすものである限り特に限定されないが、その材質としては、例えば、合成樹脂フィルム、紙、木材、割繊維不織布、ニードルパンチ不織布、フラットヤーンの繊維織物、綿織物、麻織物、帯状織物、合成樹脂織物、湿紡織物等が挙げられる。中でも、合成樹脂フィルムが好適である。
【0011】
上記形態(2)において、少なくとも1つの基材は格子状であることが適当であるが、このような形態とすることにより、潤滑剤層と鋼材等との接触面積が適切なものとなり、また、孔がいわゆるアンカー効果を発揮するため、鋼材等との密着性や滑り性を充分なものとすることができる。その結果、鋼材等への貼付時には鋼材等へ充分に密着できるとともに、引抜き作業時には滑り性を発揮して作業効率の著しい改善を図ることが可能となる。
【0012】
本発明において、「格子状基材」とは、繊維(好ましくは細長の繊維)を縦横に連続的に積層することによって格子状に孔が形成された基材であり、具体的には、平均の繊維幅(h:mm)を平均の繊維厚み(t:mm)で除した値である格子繊維係数(k;k=h/t)が2〜10000であるものを意味する。kが2未満であると、格子状基材の摩擦低減効果が低下し、杭の引抜き性等が低下するおそれがあり、10000を超えると、潤滑剤層との接着力が低下し、潤滑剤層の脱落による引抜き性等の低下が起こったり、本発明の土木建築シートの製造・加工が困難となるおそれがある。好ましい下限は3であり、上限は5000であり、より好ましい下限は4であり、上限は500であり、特に好ましい下限は5であり、上限は50である。
上記格子状基材の製造方法としては特に限定されず、例えば、厚み1mm以下の繊維(フィルム)を0.1〜10mm幅の範囲で割った細長フィルムを縦・横に連続的に積層接着することによって得ることができる。具体的には、ポリエチレンフィルムを数mm単位に割って細長フィルムにしたものを、縦・横に連続的に積層熱融着することによって得ることができる(日石プラスト社製、LX14、坪量39g/m、厚み0.11mm)。また、平滑なフィルムから多数の孔を連続的又は逐次的に打ち抜くことによっても作製することができる。
【0013】
上記格子状基材において、格子孔(孔)の形状としては、四角形が基本であるが、その他の多角形や星型、丸型(円型)、楕円形であってもよく、四角形としては、菱形や平行四辺形も含む。
また格子孔サイズ(格子幅)としては、孔の辺の幅が、下限が0.1mm、上限が10mmであることが好ましい。0.1mm未満であると、引抜き性が充分とはならないおそれがあり、10mmを超えると、剥がれ易くなるおそれがある。より好ましい下限は0.5mm、上限は5mmであり、更に好ましい下限は1mm、上限は3mmである。
上記格子状基材を得るために好適に用いられる細長の繊維の幅としては、格子孔サイズが上記範囲になるように適宜設定すればよいが、例えば、下限は0.1mm、上限は10mmであることが好適である。より好ましい下限は0.5mm、上限は5mmであり、更に好ましい下限は1mm、上限は3mmである。
【0014】
上記格子状基材において、その材質としては特に限定されず、例えば、ナイロン(ポリアミド)、ポリアセタール、テフロン(登録商標)(ポリフッ化エチレン)、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。中でも、ポリエチレンを用いることが好適である。
上記格子状基材としてはまた、動表面摩擦係数(μ)が0.45以下であることが好適である。より好ましくは、0.3以下であり、更に好ましくは、0.2以下であり、特に好ましくは、0.15以下である。なお、このような低摩擦係数基材と潤滑剤層との複合化は通常困難であると考えられるが、格子状基材とすることで複合化を実現することができ、土木・建築分野における作業性をより充分に向上することが可能となる。
【0015】
本発明の土木・建築用シートにおいては、少なくとも1つの基材が、上記形態(1)及び/又は(2)を満たすものであればよく、その他の基材は特に限定されるものではないが、土木・建築分野での基礎工事等における施工時にかかる種々の外力、例えば、鋼材や水硬性組成物の重量がかかることによって生じる引張力や剪断力;鋼材を埋設するときに生じる衝撃力や引張力、水硬性組成物との間の摩擦力等に対して耐え得る強度を有するもの、すなわち、このような外力がかかっても破損しない強度を備える材質からなるものであることが好ましい。このようなその他の基材としては、例えば、上述した動表面摩擦係数を満たす基材や格子状基材を使用してもよいし、また、合成樹脂フィルム、紙、木材、割繊維不織布、ニードルパンチ不織布、フラットヤーンの繊維織物、綿織物、麻織物、帯状織物、合成樹脂織物、湿紡織物等を用いることもできる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用(複合)してもよい。中でも、後述する製法の効率性の観点からは、繊維織物や綿織物を用いることが好適である。上記材料においては、必要に応じて、切り目や孔等を形成してもよく、切り目や孔等の形状、大きさ、個数、形成位置としては、上述した外力がかかっても基材が破損しない強度を維持することができる範囲内で設定すればよい。
なお、上記その他の基材としては、鋼材等の土木・建築構造物と接触する側と潤滑剤層を介して反対側の基材であることが好適である。
【0016】
上記その他の基材としてはまた、透水性が高いものであることが好適である。これにより、例えば、潤滑剤層として吸水性樹脂を用いる場合には、吸水性樹脂がより膨潤し易くなるため、鋼材等と地盤や水硬性組成物の硬化物等との接着がより防止されるとともに、引抜き作業時には潤滑効果をより充分に発揮できることとなる。透水性が高い基材としては、その基材を構成する材料自体が透水性の高いものであってもよいし、上述したように切り目や孔等を形成することにより透水性を向上させたものであってもよい。
【0017】
本発明の土木・建築用シートに使用される基材(上記形態(1)又は(2)を満たす基材並びにその他の基材)において、その厚さとしては、材質(材料)等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、その下限は0.01mm、上限は10mmであることが好ましい。0.01mm未満であると、外力に耐え得る強度を充分に維持することができないおそれがあり、10mmを超えると、シートに充分な柔軟性を付与できないおそれがあり、また、シートが嵩高くなるため、取り扱い性や保管性に優れたものとはならないおそれがある。より好ましい下限は0.05mm、上限は8mmであり、更に好ましい下限は0.2mm、上限は5mmである。
なお、これらの基材の坪量は、材質や厚さ等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、その下限は1g/m2 、上限は10000g/m2 であることが好ましい。より好ましい下限は10g/m2 、上限は1000g/m2 である。
【0018】
上記基材において、引張強度としては特に限定されず、例えば、1kgf/2.5cm以上であることが好ましい。1kgf/2.5cm未満であると、外力に耐え得る強度を充分に維持することができないおそれがある。より好ましくは、10kgf/2.5cm以上であり、更に好ましくは、30kgf/2.5cm以上である。
なお、上記引張強度としては、例えば、基材を幅2.5cm、長さ20cmの大きさに裁断し、イオン交換水に30分間浸漬して充分に濡らしたものを試験片とし、JIS L 1096−1999(一般織物試験方法)の引張試験方法(引張強さ)に基づく低速伸長引張試験機を使用して、引張速度20mm/min、つかみ間隔10cmの条件下で測定することができる。なお、試験機によって得た測定値(単位:kgf/2.5cm)が大きいほど、基材の引張強度が大きいと判断できる。
【0019】
次に、本発明の土木・建築用シートにおける潤滑剤層について以下に説明する。
上記潤滑剤層とは、潤滑剤(潤滑剤組成物)を含有する層であり、地盤や水硬性組成物と鋼材等との接着や摩擦を抑制する作用効果を有するものである。潤滑剤としては、潤滑性を発揮できるものであれば特に限定されないが、例えば、吸水性樹脂や、ワックス、グリース、タール、アスファルト等の油類や、ベントナイト等の鉱物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。中でも、吸水性樹脂が好適であり、吸水性樹脂と水とを含む樹脂組成物や、吸水性樹脂と、これを鋼材等に密着させるためのバインダー樹脂とを含む樹脂組成物もまた好適である。バインダー樹脂としては、アルカリ水可溶性樹脂であることが特に好ましく、上記潤滑剤層が、吸水性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂とを含む樹脂組成物を含有するものである形態は、本発明の好適な形態の1つである。なお、必要に応じて溶剤を含んでもよい。
【0020】
上記吸水性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂とを含む樹脂組成物を用いることにより、本発明の土木・建築用シートがアルカリ性を示す水硬性組成物と鋼材等との間に介在した場合には、吸水性樹脂が水を吸収して膨潤する際の体積膨張を阻害するおそれが低減され、吸水性樹脂の吸水性能を充分に発揮させることが可能となり、吸水性樹脂が水で充分に膨潤することとなる。その結果、鋼材等と水硬性組成物の硬化物との接着がより充分に抑制される。その一方で、アルカリ水可溶性樹脂が水硬性組成物との接触面でセメントの硬化遅延をおこすことに起因して、樹脂組成物と地盤や水硬性組成物の硬化物との間に易剥離層を形成することができるため、鋼材等を地盤や水硬性組成物の硬化物中から引き抜く作業における労力(引張力)を更に充分に低減することができ、該作業の作業性をより一層向上させることが可能となる。
【0021】
上記吸水性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂とを含む樹脂組成物において、吸水性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂との質量比(吸水性樹脂/アルカリ水可溶性樹脂)としては、これらの組成や組み合わせ、作業環境等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1/99〜99/1であることが好ましい。より好ましくは、10/90〜90/10であり、更に好ましくは、25/75〜75/25である。
【0022】
上記吸水性樹脂としては、水を吸水することによって膨潤し、かつ、自重に対するイオン交換水の吸水倍率が3倍以上(25゜C、1時間)の樹脂であることが好適である。より好ましくは、吸収倍率が10倍以上のものである。このような吸水性樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸架橋体、ポリ(メタ)アクリル酸塩架橋体、スルホン酸基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリオキシアルキレン基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリ(メタ)アクリルアミド架橋体、(メタ)アクリル酸塩と(メタ)アクリルアミドとの共重合架橋体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架橋体、ポリジオキソラン架橋体、架橋ポリエチレンオキシド、架橋ポリビニルピロリドン、スルホン化ポリスチレン架橋体、架橋ポリビニルピリジン、デンプン−ポリ(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合体のケン化物、デンプン−ポリ(メタ)アクリル酸(塩)グラフト架橋共重合体、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸(塩)との反応生成物、架橋ポリビニルアルコールスルホン酸塩、ポリビニルアルコール−アクリル酸グラフト共重合体、ポリイソブチレンマレイン酸(塩)架橋重合体等の水溶性又は親水性化合物(単量体及び/又は重合体)を架橋剤で架橋させた合成吸水性樹脂;ゼラチン、寒天等の天然水膨潤性物等の1種又は2種以上が好適である。中でも、水溶性又は親水性化合物を架橋剤で架橋させた合成吸水性樹脂を用いることが好ましく、これにより、膨潤倍率、水可溶分、吸水速度、強度等のバランスが良好となり、更にそのバランスの調整も容易に行うことが可能となる。
【0023】
上記吸水性樹脂の好ましい形態としては、ノニオン性基及び/又はスルホン酸(塩)基を有する吸水性樹脂である。より好ましくは、アミド基又はヒドロキシアルキル基を有する吸水性樹脂であり、例えば、(メタ)アクリル酸塩と(メタ)アクリルアミドとの共重合架橋体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架橋体等が挙げられる。これらの形態では、アルカリ水や海水等の金属イオンを含む水に対する吸水性が向上することになり、引抜き作業を極めて容易に行ったり、地盤との摩擦を低減したりすることが可能となるためより好適である。
【0024】
上記吸水性樹脂としてはまた、水溶性を有するエチレン性不飽和単量体と、必要に応じて架橋剤とを含む単量体成分を重合することにより得られる樹脂を用いることができる。エチレン性不飽和単量体を(共)重合してなる吸水性樹脂は、水に対する膨潤性により優れ、かつ一般的に安価であるため、このような吸水性樹脂を用いることにより、鋼材等を引き抜く作業を極めて容易かつ経済的に行うことができる。なお、上記架橋剤は、特に限定されるものではない。また、直鎖状の高分子に架橋剤を添加して架橋することにより、又は、電子線を照射して架橋することにより、吸水性樹脂を形成することもできる。
【0025】
上記エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、並びに、これら単量体のアルカリ金属塩やアンモニウム塩;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、並びに、その四級化物;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド類、並びに、これら単量体の誘導体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルスクシンイミド等のN−ビニル単量体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド等のN−ビニルアミド単量体;ビニルメチルエーテル;等の1種又は2種以上を使用することができる。
【0026】
上記エチレン性不飽和単量体の中でも、ノニオン性基及び/又はスルホン酸(塩)基を有するエチレン性不飽和単量体が好ましく、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の1種又は2種以上を使用することができる。これらを含む単量体成分を重合して得られる吸水性樹脂は、アルカリ水や海水等の金属イオンを含む水に対する膨潤性に特に優れているため好ましく、該吸水性樹脂を用いることにより、引抜き作業を更に容易に行ったり、地盤との摩擦を低減したりすることが可能となる。
【0027】
上記吸水性樹脂において、単量体成分としてエチレン性不飽和単量体を2種類以上併用する場合においては、全単量体成分に占める、ノニオン性基及び/又はスルホン酸(塩)基を有するエチレン性不飽和単量体の割合を1質量%以上にすることが好適である。1質量%未満であると、鋼材等の引抜き作業の作業性を更に向上することができないおそれがある。より好ましくは、10質量%以上である。
なお、単量体成分としてエチレン性不飽和単量体を2種類以上併用する場合における好適な組み合わせとしては、例えば、アクリル酸ナトリウム等の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩とアクリルアミドとの組み合わせ、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩とメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの組み合わせ等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0028】
上記吸水性樹脂としては、上述した単量体成分を(共)重合することにより得ることができるが、その(共)重合方法は特に限定されず、通常用いられている方法により行うことができる。また、吸水性樹脂の平均分子量や形状、平均粒子径、更に、このような吸水性樹脂等を有する潤滑層の厚みや塗布量は、本発明の土木・建築用シートの使用用途や作業環境、基材との組み合わせ等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。例えば、平均粒子径としては、上限が1000μmであることが好ましい。1000μmを超えると、潤滑層を形成させるための塗布性(コーティング性)が充分とはならず、また、潤滑層における吸水性樹脂の分布が均一とはならず、潤滑性能に優れたものとすることができないおそれがある。より好ましい上限は500μmであり、更に好ましい上限は200μmである。また、下限は1μmであることが好ましい。より好ましい下限は5μmであり、更に好ましい下限は10μmである。
【0029】
上記潤滑剤層の好適な形態の樹脂組成物において、アルカリ水可溶性樹脂としては、酸性又は中性を呈する水には溶解せず、アルカリ性を呈する水には溶解する樹脂を意味する。ここで、「中性を呈する水」とは、pH値が6〜8の範囲内の水であり、「酸性を呈する水」とは、pH値が該中性の範囲未満の水であり、「アルカリ性を呈する水」とは、pH値が該中性の範囲よりも大きい水である。
なお、上記アルカリ水可溶性樹脂としては、アルカリ水への溶解性の程度として、下記評価試験によって求められる減少率が50〜100%のものが好ましい。より好ましくは、60〜100%であり、更に好ましくは、70〜100%である。
【0030】
(アルカリ水への溶解性の評価試験)
二軸押出機を用いて得ることができるバインダー樹脂を、直径5mm、長さ5mmの円筒状のペレット形状に成形したものを用いて測定する。この成形体10gを、1Lのビーカーに入れた0.4質量%濃度のNaOHの水溶液500gに投入し、25℃にて、直径が40mm、4枚はねを用い、300rpmで24時間攪拌を行う。その後のバインダー樹脂の成形体におけるアルカリ水へ溶解した質量の、元の成形体からの減少率で評価する。すなわち、24時間攪拌後に溶解せずに残った樹脂分について、ろ別等を行い、水で洗浄し、乾燥後の質量を求め、溶解性試験にかける前における元のバインダー樹脂の質量からの減少率(%);(元の質量−溶解性試験後の質量)/(元の質量)で評価する。
また、ペレット化されていなくても、5mm角以下の任意の形状の成形品であっても、アルカリ水への溶解性を示す場合には、上記アルカリ水可溶性樹脂の範囲である。
【0031】
上記アルカリ水可溶性樹脂としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の置換基を有する樹脂;フェノール性ヒドロキシル基を含むノボラック樹脂;ポリビニルフェノール樹脂等の1種又は2種以上を用いることができる。中でも、アルカリ水に対する溶解性や経済性、樹脂組成物の各種物性等に優れる点で、α,β−不飽和カルボン酸系単量体と、α,β−不飽和カルボン酸系単量体以外のビニル系単量体とを共重合して得られる樹脂が好適である。
なお、カルボン酸基を有する樹脂であるヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートヘキサヒドロフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタレート等のセルロース誘導体を用いることもできる。
【0032】
上記α,β−不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸無水物;マレイン酸モノエステル、フマル酸モノエステル、イタコン酸モノエステル等のα,β−不飽和ジカルボン酸モノエステル等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。中でも、柔軟性や靭性に優れることから、アクリル酸及び/又はメタクリル酸が好適である。
【0033】
上記ビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ステアリル等の炭素数1〜18の一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系単量体;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等の水酸基含有ビニル系単量体;メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有ビニル系単量体;アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛等のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニル等の脂肪族ビニル系単量体;塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン基含有ビニル系単量体;アリルエーテル類;無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等のマレイン酸誘導体;フマル酸モノアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル等のフマル酸誘導体;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体;イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、イタコンアミド類、イタコンイミド類、イタコンアミドエステル類等のイタコン酸誘導体;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
これらのビニル系単量体の中でも、柔軟性、耐候性及び靭性に優れる点で、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルが好適である。より好ましくは、これら炭素数1〜18の一価アルコールと(メタ)アクリル酸とをエステル化して得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量を、用いられるビニル系単量体全量100質量%に対して、30〜100質量%とすることが好ましく、これにより、樹脂組成物の柔軟性や耐候性、靭性を更に向上できることとなる。より好ましくは、50〜100質量%である。
【0035】
上記α,β−不飽和カルボン酸系単量体とビニル系単量体との質量比としては、これらの合計量100質量%に対して、α,β−不飽和カルボン酸系単量体が9質量%以上であることが好ましく、これにより、アルカリ水に対する溶解性をより向上することが可能となる。また、α,β−不飽和カルボン酸系単量体の範囲としては、9〜40質量%であることが好適であり、この場合には、アルカリ水に対する溶解性のみならず、柔軟性や耐候性、靭性に特に優れたアルカリ水可溶性樹脂を得ることができる。
上記アルカリ水可溶性樹脂としては、上述したα,β−不飽和カルボン酸系単量体及びビニル系単量体等の単量体成分を(共)重合することにより得ることができるが、(共)重合方法は、通常用いられている方法により行うことができる。
【0036】
上記アルカリ水可溶性樹脂等のバインダー樹脂において、重量平均分子量(Mw)としては、地盤を構成する土壌や水硬性組成物の組成、アルカリ水のpH、作業環境等に応じて適宜設定すればよいが、下限が1万、上限が200万であることが好ましい。この範囲においては、鋼材への密着性及び作業性がより充分に発揮されることとなる。より好ましい下限は3万であり、更に好ましい下限は5万であり、特に好ましい下限は10万である。また、より好ましい上限は150万であり、更に好ましい上限は100万であり、特に好ましい上限は90万である。
なお、上記重量平均分子量(Mw)は、分子量校正用標準物質としてTSK標準ポリスチレンPS−オリゴマーキット(東ソー社製)を使用し、溶媒としてテトラヒドロフラン(安定剤含有(和光純薬工業社製、試薬特級)を使用して、高速GPC装置・HLC−8120GPC(東ソー社製)にて測定した値である。
【0037】
上記バインダー樹脂の酸価(mgKOH/g)としては、15以上であることが好ましい。15未満であると、アルカリ水に対する溶解性が低下するので、杭の引抜き性や摩擦低減効果が低下するおそれがあり、また、引抜き作業をより容易化することができないおそれがある。より好ましくは、30以上であり、更に好ましくは、50以上であり、特に好ましくは、70以上である。また、500以下であることが好ましい。500を超えると、バインダー樹脂の耐水性が充分とはならず、雨等の中性域又は酸性域のpHを示す水と接触すると溶解して損傷するおそれがあり、鋼材埋設作業や引抜き作業等をより効率的に行うことができないおそれがある。
【0038】
上記バインダー樹脂のガラス転移温度としては、鋼材表面への密着性及び鋼材を土中へ埋設する際における樹脂組成物の強靭性の両立という点から、−80〜120℃にガラス転移温度(Tg)を少なくとも1つ有することが好ましく、より好ましくは、2つ以上有することである。ガラス転移温度を上記範囲内に設定することにより、潤滑剤層の強度や柔軟性を充分なものとすることが可能となり、作業効率をより高めることができる。上記バインダー樹脂の特に好ましい形態としては、−30〜20℃の範囲内に低温側のTgを有し、併せて40〜100℃の範囲内に高温側のガラス転移温度の2つ以上のTgを有することが好適であり、これにより、柔軟化成分と形状保持成分とのバランスをより向上することができる。
なお、ガラス転移温度とは、示差走査熱量測定(DSC;differential scanning calorimetry)によって得られるDSC微分曲線のピークトップ(DSC曲線の変曲点)である。
【0039】
上記潤滑剤層の好適な形態の樹脂組成物において、含有してもよい溶剤としては特に限定されず、例えば、通常の塗料等に用いられる溶剤を使用すればよい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール誘導体、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール誘導体等の1種又は2種以上を用いることができる。なお、溶剤として、バインダー樹脂中に含まれる溶媒を使用することもできる。
【0040】
上記溶剤(溶媒)としてはまた、バインダー樹脂を溶解する性質を有することが好ましく、溶剤がバインダー樹脂を溶解することにより、バインダー樹脂が樹脂組成物中により均一に分散することができ、バインダー樹脂としての性能を好ましく発現することができることとなる。バインダー樹脂を溶解する溶媒としては、極性溶媒を使用することが好ましい。より好ましくは、バインダー溶解性の点から、アルコール、ケトン、脂肪族エステル、アルキレングリコールから選択される少なくとも1種である。
上記樹脂組成物としてはまた、その作用効果を阻害しない範囲内で、他の樹脂や、顔料、界面活性剤、各種安定剤、各種充填材等の添加剤を含んでもよい。
【0041】
本発明の土木・建築用シートの構成としては、潤滑剤層が2つ以上の基材で挟まれた形態であればその他の形態は特に限定されるものではない。また、製造方法としても特に限定されないが、連続的に製造することが好適であり、例えば、基材を2つ用いる場合において、一方の基材(基材a)に潤滑剤組成物を付着させると同時に又は該組成物が乾燥する前に、もう一方の基材(基材b)を潤滑剤組成物上に連続的に合わせて潤滑剤層が基材aと基材bとの間に挟まれた土木・建築用シートを製造することが好ましい。なお、格子状基材を用いる場合には、基材bを格子状基材とすることが好適である。この方法によると、潤滑剤層形成工程と基材貼り合わせ工程とを同時に行うことができるため、連続的に製造することが可能となり、生産性を向上することができる。また、格子状基材を用いる場合には、孔のアンカー効果により、バインダー無しで格子状基材貼り合わせ工程を行うことが可能である。このように、上記土木・建築用シートの製造方法であって、該製造方法は、一方の基材に潤滑剤組成物を付着させると同時に又は該組成物が乾燥する前に、もう一方の基材を潤滑剤組成物上に連続的に合わせる工程を含む土木・建築用シートの製造方法は、本発明の好適な形態の1つである。
【0042】
上記土木・建築用シートにおいて、基材表面に潤滑剤層を形成する方法としては、潤滑剤層や基材の材質等に応じて適宜選択すればよく特に限定されないが、例えば、塗布機による塗布、噴霧(スプレー)塗り、刷毛塗り、ローラー塗りの他、基材に潤滑剤を含む溶液を含浸させる方法等が挙げられる。具体的には、例えば、アルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂とを含む樹脂組成物を用いる場合においては、両者を有機溶剤や水等の分散媒に分散(又は溶解)してなる分散液(樹脂溶液)を基材表面に、噴霧(スプレー)する方法;樹脂溶液を刷毛塗り又はローラーを用いて塗布する方法;基材に樹脂溶液を含浸させる方法等;アルカリ水可溶性樹脂を含む溶液又は分散液を基材表面に噴霧又は塗布した後、該表面に吸水性樹脂を均一に撒布し、更にこの上に該溶液又は分散液を噴霧又は塗布する方法等が挙げられる。
【0043】
上記潤滑剤層の膜厚としては、その成分等に応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、例えば、下限が0.01mm、上限が5mmであることが好ましい。0.01mm未満であると、それぞれの層の作用効果を充分に発揮できないおそれがあり、5mmを超えると、シートの取り扱い性や保存性が充分とはならないおそれがある。より好ましい下限は0.02mm、上限は1mmであり、更に好ましい下限は0.05mm、上限は0.5mmである。
また基材に対する潤滑剤層の割合、すなわち基材の単位面積当たりに対する潤滑剤の付着量は、両者の組成や組み合わせ、作業環境等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、1〜10000g/mの範囲内であることが好ましい。より好ましくは、10〜5000g/mであり、更に好ましくは、20〜1000g/mである。なお、基材100重量部に対する潤滑剤の割合としては、1〜10000重量部であることが好ましい。より好ましくは、10〜1000重量部であり、更に好ましくは、20〜500重量部である。
【0044】
本発明の土木・建築用シートとしては、例えば、基礎工事等に用いられる鋼材に使用されることが好適である。ここで、「鋼材」とは、土木・建築分野の基礎工事において、土留め擁壁や土台等の地盤基礎構造体を施工する際に用いられ、使用後に地盤や水硬性組成物中から分離することが好ましい埋設物(地盤に埋設される基材)であればよく、例えば、鋼管、ヒューム管、H型鋼、I型鋼、鋼管杭、鉄柱、コンクリート杭、ポール、筒状のパイル(中空パイル)、長尺板状の杭である鋼矢板(シートパイル)、波板等が挙げられる。中でも、H型鋼や鋼矢板に用いることが好適である。なお、鋼材の形状、長さ、材質、表面の粗度等は特に限定されず、表面に錆びや汚れが付着したものであっても、汚れ等のない平滑な表面を有するものであってもよい。また、コンクリート二次製品の生産工程等に使用される型枠等にも好適に用いられる。型枠に使用した場合には、硬化物等を型枠から容易かつ効率的に脱型することができるため、型枠のリサイクル性が向上され、生産効率をより高めることが可能となる。また、ボックスカルバートや水門等を水平移動させる際に使用される滑り材や、地盤に埋設されるH型鋼、鋼矢板、鋼管、コンクリートパイル等の各種杭等の表面に貼り付けて用いられるネガティブフリクションカット用のシート材料等としても好適に用いられる。更に、潜函工法(タンク類、貯水槽、橋脚、立て坑等)や推進工法等において地盤との摩擦を低減する材料としても好適に用いられる。中でも、杭に対する引抜き性(摩擦低減性)に優れることから、杭の引抜き撤去又はネガティブフリクション対策用途のシート材料として特に好適に用いられる。
【0045】
上記土木・建築用シートは、このような種々の構造物に貼付することによって、土やセメント(水硬性組成物の硬化体)等に対する、摩擦低減材又は付着防止材として好適に用いられることとなるが、本発明の土木・建築用シートが摩擦低減材及び/又は付着防止材として用いられる形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記土木・建築用シートを使用する場合においては、シートの貼付前に鋼材や型枠等の対象物に接着剤や粘着剤を塗布してもよいし、予め貼付側の基材表面に接着剤層や粘着剤層を形成しておくこととしてもよい。接着剤や粘着剤としては特に限定されず、通常使用されるものを使用すればよいが、塗布作業の効率化の観点から、合成ゴム系の溶剤型接着剤を用いることが好適である。また、作業環境の観点から、無臭タイプ(無溶剤タイプ、水系タイプ)の接着剤を用いてもよい。なお、本発明は、シート形状のものであるため、塗布剤よりも溶剤型接着剤から発生し得る溶剤臭を低減することができ、しかも接着剤の塗布作業に比べてより簡便に行うことが可能である。
【発明の効果】
【0046】
本発明の土木・建築用シートは、上述のような構成であるので、引抜き性(摩擦低減性)が著しく改善され、すなわち従来品の2〜3倍以上もの引抜き性(摩擦低減性)を発揮できることから、土木・建築分野の基礎工事等に用いられる各種の杭や、各種生産工程で使用される型枠等に貼付することにより、これらにおける作業効率を格段に向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
以下の製造例等において、重量平均分子量(Mw)は、分子量校正用標準物質としてTSK標準ポリスチレンPS−オリゴマーキット(東ソー社製)を使用し、溶媒としてテトラヒドロフラン(安定剤含有(和光純薬工業社製、試薬特級)を使用して、高速GPC装置・HLC−8120GPC(東ソー社製)で測定した。また、ガラス転移温度(Tg)の測定は、JIS K7121−1987のプラスチックの転移温度測定方法に準じ、示差走査熱量計・DSC6200(セイコー電子工業社製)で測定(加熱速度:10℃/min)した。更に、動表面摩擦係数は、上述したようにして求めた。
【0048】
調整例1
〔バインダー樹脂(アルカリ水可溶性樹脂)〕
アルカリ水可溶性樹脂を以下の方法で以て調製した。すなわち、温度計、攪拌翼、還流冷却器及び滴下装置を備えた容量100Lの槽型反応器に、アクリル酸1.8kg、アクリル酸エチル10.2kg、重合開始剤である2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)24g、および、溶媒であるメチルアルコール28kgを仕込んだ。また、滴下装置に、アクリル酸2.7kg、アクリル酸メチル5.4kg、メタクリル酸メチル9.9kg、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)66g、および、メチルアルコール2kgからなる混合溶液を仕込んだ。
上記のメチルアルコール溶液を窒素ガス雰囲気下、攪拌しながら65℃に加熱し、20分間反応させた。これにより、内容物の重合率を72%に調節した。続いて、内温を65℃に保ちながら、滴下装置から上記の混合溶液を2時間かけて均等に滴下した。滴下終了後、内容物を65℃でさらに3時間熟成させた。反応終了後、内容物にメチルエチルケトン60kgを混合することにより、アルカリ水可溶性樹脂の25質量%溶液を得た。以下、このアルカリ水可溶性樹脂を「ASP」ともいう。
得られたアルカリ可溶性樹脂の酸価は117mgKOH/gであった。また、該アルカリ水可溶性樹脂の重量平均分子量Mwは15.6万、数平均分子量Mnは6.9万であった。さらに、示差走査熱量機で測定したところ、ガラス転移温度(Tg)が10℃と67℃とに観測された。また、上記バインダー樹脂の、25℃のイオン交換水への溶解性は、0.5%未満であり、また、アルカリ水可溶性は100%であった。
【0049】
調整例2
〔吸水性樹脂〕
吸水性樹脂としては、市販のポリアクリル酸ナトリウム塩架橋体(商品名:アクアリックCA ML−70、平均粒径50μm、日本触媒社製)を使用した。以下、このポリアクリル酸ナトリウム塩架橋体を「SAP」ともいう。
【0050】
実施例1
ASP(アルカリ水可溶性樹脂)固形分と、SAP(吸水性樹脂)とが重量比1:1となるようにASP溶液とSAPとを混合することにより、潤滑剤層となるべき潤滑剤組成物(樹脂溶液)を得た。そして、75×40mmの大きさに裁断した織布(90g/m、厚み0.23mm、ポリエステル/綿=60/40、混紡織布)に潤滑剤組成物を樹脂固形分塗布量が120g/mとなるように塗布し、乾燥前に格子状基材(秤量41g/m、厚み0.08mm、細長フィルム(繊維)幅0.5〜2mm、格子孔幅2mm)を潤滑剤組成物層(潤滑剤層)の上から合わせ、乾燥して試料シートを作製した。なお、格子状基材の格子繊維係数(平均繊維幅/厚み)は、15.6であった (平均繊維幅:1.25mm、厚み:0.08mm) 。この格子状基材の動表面摩擦係数を表1に示す。
得られた試料シートを、格子状基材が鉄板と接触するようにして鉄板に、合成ゴム系接着剤を用いて貼付け、その鉄板を500ml容器内の深さ35mmのソイルセメントミルク層に垂直に立て込んだ。2日間放置後に硬化したソイルセメント層から引抜荷重を測定しながらその鉄板を引き抜いた。試験条件は以下のとおりである。結果を表1に示す。
(試験条件)
鉄板:JIS G3101−2004(SS−400)標準試験板、厚4.5×70×70mm、日本テストパネル社製
ソイルセメントミルク組成:セメント/水/笠岡粘土/ベントナイト=100/300/270/10(重量比)
引抜荷重の測定機:デジタルプッシュプルゲージRX−20、アイコーエンジニアリング社製
【0051】
実施例2
格子状基材に代えて織布(90g/m、厚み0.23mm、ポリエステル/綿=60/40、混紡織布)を用いた他は実施例1と同様に引抜荷重を測定した。織布の動表面摩擦係数及び測定結果を表1に示す。
【0052】
実施例3
ASP溶液とSAPとを混合して得られる組成物の代わりに水溶性樹脂(フエキ糊(でんぷんのり)、不易糊工業社製)を潤滑剤として用いた他は実施例1と同様に引抜荷重を測定した。測定結果を表1に示す。
【0053】
実施例4
実施例1で用いた試料シートを二枚重ねて用いた他は実施例1と同様に引抜荷重を測定した。測定結果を表1に示す。
【0054】
実施例5
実施例1において、試料シートを鉄板に貼付する前に、ASP固形分とSAPとが重量比1:1となるように混合した樹脂溶液を880g/m塗布し、その上に試料シートを貼付した他は実施例1と同様に引抜荷重を測定した。測定結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1において、「基材の動表面摩擦係数」とは、鉄板に貼付する側の基材の動表面摩擦係数を意味する。
【0057】
実施例6
長さ1200mmのH−300×300×10×15のH形鋼(フランジ面幅300mm、ウエッブ面幅300mm、ウエッブ厚10mm、フランジ厚15mm)に、実施例1で得られた幅1m×長さ1mの試料シート2枚を用いて貼り付け、直径650mm、高さ1200mmの円筒状容器(有底)内の深さ1000mmのソイルセメントミルク層にそのH形鋼を建て込み、1ヶ月間放置した後に硬化したソイルセメントミルク層からバネ計りを使って引抜荷重を測定しながらそのH形鋼を引抜いた。試験条件は以下のとおりである。結果を表2に示す。
(試験条件)
ソイルセメントミルク組成:セメント/水/笠岡粘土/ベントナイト=600/2500/1600/60(重量比)(圧縮強度:20kg/cm
引抜荷重の測定機:フォークリフト機
【0058】
実施例7
実施例1で得られた試料シートに代えて実施例2で得られた試料シートを用いた他は実施例6と同様に引抜荷重を測定した。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
比較例1
75×40mmの大きさに裁断した織布(90g/m、厚み0.23mm、ポリエステル/綿=60/40、混紡織布)に実施例1で得た潤滑剤組成物を樹脂固形分塗布量が120g/mとなるように塗布し、乾燥して試料シートを作製した。なお、織布の動表面摩擦係数を表3に示す。
得られた試料シートを、織布が鉄板と接触するようにして鉄板に貼付け、その鉄板を500ml容器内の深さ35mmのソイルセメントミルク層に垂直に立て込んだ。2日間放置後に硬化したソイルセメント層から引抜荷重を測定しながらその鉄板を引き抜いた。試験条件は実施例1と同様である。結果を表3に示す。
【0061】
比較例2
織布の代わりにポリエチレン(PE)フィルムを用いた他は比較例1と同様にして引抜荷重の測定試験を試みたが、潤滑剤組成物がポリエチレンフィルムから脱落し、試料シートの作製ができなかった。なお、ポリエチレンフィルムの動表面摩擦係数を表3に示す。
【0062】
比較例3
織布の代わりに実施例1で使用した格子状基材を用いた他は比較例1と同様にして引抜荷重の測定試験を試みたが、潤滑剤組成物が格子状基材から脱落し、試料シートの作製ができなかった。
【0063】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤層を2つ以上の基材で挟む構成を有する土木・建築用シートであって、
該基材の少なくとも1つは、動表面摩擦係数(μ)が0.45以下であることを特徴とする土木・建築用シート。
【請求項2】
潤滑剤層を2つ以上の基材で挟む構成を有する土木・建築用シートであって、
該基材の少なくとも1つは、格子状基材であることを特徴とする土木・建築用シート。

【公開番号】特開2006−144253(P2006−144253A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331974(P2004−331974)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】