説明

土木構築物及び土木構築物の施工方法

【課題】 縦断勾配がある場合であっても、施工負担を極力低減できる土木構築物を提供する。
【解決手段】 縦断勾配がある場合において、基礎7の段差面10aを、勾配が維持された連続面とする。これにより、縦断勾配がない場合と略同様に施工可能とし、基礎7として、段基礎を形成する場合の特有の作業を不要にする。その一方、一段目擬石列12A−1を、その各擬石12を基礎7に固定した状態をもって該基礎7の段差面10a上に配置し、二段目以降の擬石列12Aを、その各擬石12が、該各段の下側段における隣り合う擬石12間の凹所5内に入り込むようにした状態をもって配置する。これにより、二段目以降の擬石列12Aの作用力(移動しようとする力)が、基礎7の延び方向一端側の側壁8aに向けて作用しようとしても、その作用力の多くを、一段目擬石列12A−1を介して基礎7に伝達し、側壁8aに作用する力を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木構築物及び土木構築物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
護岸、擁壁等の土木構築物には、特許文献1に示すように、下部に基礎を設置し、その基礎(基礎コンクリート)から順次、塊状部材を積み上げて壁面を形成するものがある。このような土木構築物においては、一般に、基礎の延び方向両端側に側壁が設けられており、その両側壁が、塊状部材が基礎の延び方向両側に移動することを規制している。
【0003】
ところで、このような土木構築物において、河川、路面等に縦断勾配(進行方向に対する高さの変化)がある場合(特に縦断勾配が大きい場合)には、その縦断勾配に対応すべく、基礎を階段状の段基礎とし、その段基礎の各段部上に塊状部材を、隣り合う段部上に積み上げられる塊状部材との調整を図りつつ、積み上げることとされている。これにより、縦断勾配がある場合であっても、各段部上に塊状部材を転がらせることなく積み上げることができると共に、その積み上げられた塊状部材が一方の側壁(高さの低い側の側壁)に集中的に作用することを防止できる。
【特許文献1】特開2003−206519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記土木構築物においては、基礎を階段状の段基礎として形成しなければならず、その施工においては、段基礎の各段部を個々に形成しなければならないばかりか、それに伴い、各段部の高さや、各段部の上面の水平度等をそれぞれ調整しなければならない。このため、縦断勾配がある場合には、土木構築物の施工負担が増加することになっている。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その第1の技術的課題は、縦断勾配がある場合であっても、施工負担を極力低減できる土木構築物を提供することにある。
第2の技術的課題は、上記土木構築物を施工するための土木構築物の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記第1の技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)にあっては、
基礎の上面高さがその延び方向一端側から他端側に向うに従って高くなるように形成され、該基礎の延び方向の少なくとも一端側に側壁が設けられ、前記基礎の上面上に塊状部材が、該基礎の延び方向全体に亘って隣接した状態で順次、積み上げられて、複数段の塊状部材列が形成されている土木構築物において、
前記基礎の上面が、勾配が維持された連続面とされ、
前記複数段の塊状部材列のうち、最下段の塊状部材列が、その各塊状部材を前記基礎に固定した状態をもって該基礎の上面上に配置され、
前記複数段の塊状部材列のうち、前記最下段の塊状部材列よりも上方側の各段の塊状部材列が、その各塊状部材を、該各段の下側段における隣り合う塊状部材間に入り込むようにした状態をもって配置されている構成としてある。この構成により、縦断勾配がある場合であっても、基礎の上面が、勾配が維持された連続面とされることから、縦断勾配がない場合と略同様に施工できることになり、基礎として、段基礎を形成する場合の特有の作業を不要にできる。その一方、最下段の塊状部材列が、その各塊状部材を基礎に固定した状態をもって該基礎の上面上に配置され、最下段の塊状部材列よりも上方側の各段の塊状部材列が、その各塊状部材を、該各段の下側段における隣り合う塊状部材間に入り込むようにした状態をもって配置されていることから、基礎の上面が、上述のように勾配が維持された連続面とされて、その連続面の勾配に基づき、最下段の塊状部材列よりも上側の段の塊状部材列の作用力(移動しようとする力)が、基礎の延び方向一端側の側壁に向けて作用しようとするけれども、その作用力の多くは、最下段の塊状部材列を介して基礎に伝達され、側壁に作用する力は、大幅に低減される。しかもこの場合、最下段の塊状部材列よりも上側の段の各塊状部材の積み上げを転がらせることなく行うことができる。
【0007】
本発明(請求項1に係る発明)の好ましい態様としては、前記最下段の塊状部材列の各塊状部材が、該各塊状部材の下部を前記基礎内に埋め込むことにより該基礎に固定されている構成としてある(請求項2)。この構成により、最下段の塊状部材列の各塊状部材を基礎に強固に固定でき、これにより、最下段の塊状部材列よりも上方側の段の塊状部列の作用力が、基礎の延び方向一端側の側壁に向けて作用しようとするけれども、それを確実に基礎に伝達できる。
【0008】
本発明(請求項1に係る発明)の好ましい態様としては、前記基礎に、上方に開口するようにして凹所が形成され、前記基礎の凹所内に、前記最下段の塊状部材列の各塊状部材が収納されていると共にコンクリートが充填されている構成としてある(請求項3)。この構成により、基礎に対する最下段の塊状部材列の各塊状部材の固定を、基礎の凹所とコンクリートとを利用して簡単に行うことができる。
【0009】
本発明(請求項1に係る発明)の好ましい態様としては、前記各塊状部材が、長細形状とされ、前記各段の塊状部材列の各塊状部材が、その長く延びる部分を起立させるようにしつつ並べられている構成としてある(請求項4)。この構成により、隣り合う塊状部材間に深い凹所が形成され、その深い凹所に上段側の塊状部材の下部が入り込んで係合することになり、最下段の塊状部材列よりも上側の段の塊状部材列の作用力(移動しようとする力)を、さらに確実に基礎に伝達でき、側壁に作用する力を、一層低減できる。勿論、二段目以降の塊状部材列の積み上げについても、各塊状部材を転がらせることなく確実に行うことができる。
【0010】
前記第2の技術的課題を達成するために本発明(請求項5に係る発明)にあっては、
基礎の上面高さを、その延び方向一端側から他端側に向うに従って高くなるように形成し、該基礎の延び方向の少なくとも一端側に側壁を設け、前記基礎の上面上に塊状部材を、該基礎の延び方向全体に亘って隣接した状態で順次、積み上げて、複数段の塊状部材列を形成する土木構築物の施工方法において、
前記基礎の上面を、所定勾配を維持しつつ延びる連続面として形成し、
前記複数段の塊状部材列のうち、最下段の塊状部材列を、その各塊状部材が前記基礎に固定された状態をもって該基礎の上面上に配置し、
前記複数段の塊状部材列のうち、前記最下段の塊状部材列よりも上方側の各段の塊状部材列を、その各塊状部材が該各段の下側段における隣り合う塊状部材間に入り込むようにした状態をもって配置する構成としてある。この構成により、前記請求項1と同様の作用を生じ、請求項1に係る土木構築物を得ることができる。
【0011】
本発明(請求項1に係る発明)の好ましい態様としては、前記基礎として、上方に開口する凹所を有するものを形成し、前記基礎の凹所内に、前記最下段の塊状部材列の各塊状部材を収納すると共にコンクリートを充填する構成としてある(請求項6)。この構成により、コンクリートの硬化によって各塊状部材が基礎に固定され、各塊状部材の荷重(転動)が基礎の延び方向一端側に作用することが規制される。このため、基礎に対する最下段の塊状部材列の各塊状部材の固定を、基礎の凹所とコンクリート(未硬化)とを利用して簡単に行うことができる。
【0012】
本発明(請求項1に係る発明)の好ましい態様としては、前記基礎を支持壁の前方側に形成すると共に、該基礎の凹所を該支持壁に向けて開放したものとし、前記複数段の塊状部材列のうち、少なくとも最下段の塊状部材列に関し、その各塊状部材として、アンカーを備えたものを用意し、前記基礎の凹所内に前記最下段の塊状部材列の各塊状部材を収納するに伴って、該各塊状部材のアンカーの先端部を前記支持壁に取付け、この後、コンクリートを、前記凹所を含む前記支持壁と前記基礎との間に充填する構成としてある(請求項7)。この構成により、コンクリートによって最下段の塊状部材列の各塊状部材が基礎に固定されることになるが、それに先立ち、アンカーの先端部が支持壁に取付けられることから、塊状部材の積み上げに際して、塊状部材が、基礎の前方側に脱落したり、基礎の上面を転動したりすることを規制して、積み上げ作業の安全性を確保できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明(請求項1に係る発明)によれば、縦断勾配がある場合であっても、基礎の延び方向一端側の側壁に、積み上げられた塊状部材の作用力が集中的に作用することを防ぎつつ、施工負担を極力低減できる土木構築物を提供できる。
また、本発明(請求項6に係る発明)によれば、上記土木構築物(請求項1に係る土木構築物)を施工できる土木構築物の施工方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1において、符号1は、実施形態に係る護岸(土木構築物)を示す。この護岸1には、その下部において設置面2が設けられている。設置面2は、陸地内方側(図1中、右側)に向けて一定距離だけ水平に延ばされていると共に、その一定距離を維持しつつ、河川3の比較的大きな縦断勾配(例えば5%)に対応した勾配をもって河川3の流れ方向(護岸1の延設方向:図1中、紙面直角方向、図2中、左右方向)に延びている。この設置面2の陸地内方側の端部には傾斜基盤(土砂等)4が配置されており、その傾斜基盤4は、その表面が、設置面2から上方に向うに従って陸地内方側に向うように傾斜(例えば勾配1:0.5)されている。この設置面2及び傾斜基盤4の表面には、その全体に亘って、吸出し防止材5が敷設され、その吸出し防止材5上全体に網状体としての金網又はメッシュ(以下、金網と称する)6が敷設されており、これら吸出し防止材5及び金網6は、設置面2及び傾斜基盤4に留め具(図示略)を用いて固定されている。本実施形態においては、傾斜基盤4、吸出し防止材5及び金網6が支持壁を構成することになる。
【0015】
前記設置面2上には、図1,図2に示すように、コンクリート製基礎7が前記傾斜基盤4から離間した状態で設置されている。この基礎7は、河川3の流れに沿う方向における施工区間全体に亘って延ばされており、その基礎7の延び方向両端部には、設置面2上において、その基礎7を横切るようにして側壁8a,8bが配置されている。この基礎7には、その上部において、規制部9と、凹部としての段差部10が形成されている。規制部9は、基礎7の前側上部を他の部分に比して高く突出することにより形成されており、この規制部9は、後述の擬石12の前側への移動を規制する機能を発揮することになっている。段差部10は、規制部9の形成に伴って該規制部9の後側に段差状に形成されて、その段差部10内は、金網6(傾斜基盤4)に向けて開放されている。この基礎7における規制部9及び段差部10の上下厚みは、それぞれ一定とされており、基礎7の上面をなす規制部9の上面9a及び段差部10の段差面10aは、設置面2の勾配に応じた勾配に維持されて、基礎7の延び方向一端側(図2中、左側)から他端側(図2中、右側)に向けて高くなるように設定されている。
【0016】
前記基礎7上には、図1に示すように、護岸1を形成すべく、土木構築物用構築材(以下、構築材と称す)11が、順次、積み上げられている。各構築材11としては、表面材をなす塊状部材としての擬石12と、その擬石12に取付けられるアンカー13とから構成されたものが用いられている。このうち、構築材11の擬石12は、図3〜図5に示すように、普通ポルトランドセメント、高炉セメントコンクリート等を用いて全体としてやや長細形状の玉石に似せられた所定の形状に形成されている。具体的には、その形状は、擬石12の背面14が平坦面に形成され、その前面15側が長細形状を維持しつつ略球形状に形成され、その両者14,15間には、前面15側から背面14側に向うに従って擬石12の外径が若干、縮径される面取り面16が帯状に形成されている。この擬石12の背面14には、孔17が形成されており、その孔内にはインサートナット18が保持されている。
【0017】
前記アンカー13は、図1,図3〜図5に示すように、一定の伸び長さ(例えば500mm前後)とされた線材により形成されている。このアンカー13の一端部には雄ねじ部19が形成され、その他端部には、カール状に巻かれたカール部(連結部)20が形成されている。このアンカー13の一端部における雄ねじ部19が前記擬石12におけるインサートナット18に螺合され(取付けられ)、その他端側は、擬石12の背面14から遠のくように延びている。
【0018】
前記構築材11の擬石12は、図1に示すように、護岸1の積み上げ壁21を形成すべく、一定の勾配(傾斜基盤4面の勾配に対応)をもって前記基礎7の段差面10aに順次、積み上げられている。積み上げられた各擬石12(積み上げ壁21)は、その平坦面をなす背面14が連なって平坦な連続面22を形成しており、その連続面22は、金網6(傾斜基盤4の表面)から一定間隔(例えば540mm前後)だけ前方に離間した位置において該金網6に沿って平行に延びている。このため、擬石12の積み上げ状態の概念図を示す図6からも明らかなように、積み上げ壁21の各擬石12においては、その背面14側に突出する略球面形状の突出部分(図6中、仮想線の円弧部分)23がなくなり、その上下に隣り合う擬石12の突出部分23間に形成される種々の隙間空間24は減少される。また、本実施形態においては、積み上げられた各擬石12の前面15と金網6との間の間隔が所定距離にされており、積み上げ壁21の前面15は、玉石風の略面一の壁面を形成している。
【0019】
また、構築材11の擬石12は、図2に示すように、上記積み上げ壁21の形成に伴い、上下に積まれた複数段の擬石列12A(複数段の塊状部材列)を形成している。各段の擬石列12Aは、基礎7の延び方向全体(両側壁8a,8b間)に亘って隣接しつつ並べられており、各段の擬石列12Aにおいては、隣り合う擬石12間に、その両擬石12形状に基づき凹所25が形成されている。この複数段の擬石列12Aのうち、最下段である一段目の擬石列12A−1は、その各擬石12の下部が、基礎7における段差面10aに載置されており、その各擬石12の上部は、規制部9よりも上方に突出されている。この一段目の擬石列12A−1の各擬石12の下部は、基礎7を取り込んで一体化されたベース体26に固定されている(図1参照)。ベース体26は、コンクリート27を、基礎7と傾斜基盤4との間において、基礎7における段差部10内を含む規制部9上面まで充填してそれを硬化させることにより形成されており、これにより、一段目の擬石列12A−1の各擬石12の下部がベース体26に強固に固定されている。
【0020】
複数段の擬石列12Aのうち、二段目の擬石列12A−2は、図2に示すように、その各擬石12が、一段目の擬石列12A−1の隣り合う擬石12間に位置するよう配置されている。二段目の各擬石12の下部は、ベース体6に固定されている一段目の隣り合う各擬石12間の凹所25に入り込んで、それら擬石12と係合しており、二段目の各擬石12は、その擬石12の配列方向、特に基礎7の延び方向一端側に移動することが規制されている。このため、その基礎7の延び方向一端側に配置される側壁8aに対する二段目の擬石列12A−2の作用力は、大幅に軽減されることになっている。三段目以降の擬石列12Aについても、同様な積み方がなされ、その各段の擬石12も、その下側の段の隣り合う擬石12間の凹所5に入り込んで移動が規制されることになっており、側壁8aに対するそれらの擬石列による作用力も軽減されることになっている。本実施形態においては、図2に示すように、長細形状の擬石12が、その長手方向を基礎7の延び方向に向くように配置されているが、図7に示すように、その長く延びる部分が起立するように並べてもよい。これにより、各段の隣り合う擬石12間に深い凹所25を形成して、その深い凹所25内に上側の段の擬石12を入り込ませることができることになり、各段の擬石列12Aにおいて、その各擬石12の側壁8a側への移動規制を高めることができる。このため、側壁8aに対する各段の擬石列12Aの作用力を一層、軽減できることになる。
【0021】
一方、前記各構築材11のアンカー13は、図1に示すように、上記擬石12の積み上げ状態において、擬石12よりも金網6(傾斜基盤4)側に位置されている。アンカー13は、擬石12の積み上げ勾配にかかわらず略水平に延ばすべく、擬石12の平坦な背面14の近傍において折曲されており、そのアンカー13の他端部のカール部20は、金網6にシャックル28を介して連結されている。これにより、アンカー13は、擬石12の前側への脱落を防止すると共に、金網6から擬石12の平坦な背面14及び前面15までの距離をそれぞれ一定に保つことになる。
【0022】
前記積み上げ壁21と前記傾斜基盤4(吸出し防止材5、金網6)との間には、図1に示すように、裏込め材料充填空間29が形成されている。この裏込め材料充填空間29には、裏込め材料(例えば砕石、割栗石、ブロック等)30が充填されて裏込め材料層31が形成されており、その裏込め材料(砕石等)30は、互いに噛み合っている。このため、裏込め材料層31は、一体化した重量物として傾斜基盤4(金網6、吸出し防止材5)に寄り掛かかり、その作用により金網6及び吸出し防止材5は傾斜基盤4に強固に押圧されている。
【0023】
護岸1の天端部分には、図1,図2に示すように、天端コンクリート層32が設けられている。天端コンクリート層32は、最上段の擬石12列の背面14側及びその各アンカー13を埋め込んで、それらを保持していると共に、天端面(上面)33を確保している。この天端面33に関しては、各段の擬石列12Aの傾斜勾配にかかわらず、天端コンクリート層32の厚み調整を行うことにより、水平面に対して所望の角度θとなるように調整されている。
【0024】
このような護岸1は、次のようにして構築(施工)される。
先ず、図8に示すように、設置面2及び傾斜基盤4を形成し、その後、設置面2上に基礎7及び側壁8a,8bを形成すると共に、設置面2及び傾斜基盤4には吸出し防止材5、金網6を順次、敷設する。この場合、設置面2の形成に関しては、傾斜基盤4からの張り出し長さを一定距離に維持しつつ、河川3の縦断勾配に応じて、その面2が、施工すべき護岸1の延設方向の一方側(図2中、左側)から他方側(図2中、右側)に向けて連続的に高くなるように傾斜される。基礎7の形成に関しては、その上面9a,10aが設置面2の傾斜に対応して連続的に傾斜され、その勾配は、略一定に維持される。側壁8a,8bの形成に関しては、基礎7の延び方向一端側及び他端側に接続された状態で形成されるが、その両側壁8a,8b間の間隔(基礎7の延び方向長さ)は、本実施形態においては、20m前後とされる。吸出し防止材5及び金網6の敷設に関しては、設置面2及び傾斜基盤4の表面全体に敷設されるが、これらは、設置面2、傾斜基盤4に留め具(図示略)により固定される。
【0025】
次に、前記構築材11を複数用意し、一段目となる構築材列11A−1を、図9に示すように、配置する。その一段目の構築材列11A−1の配置に際しては、擬石12の移動を下側側壁8a(基礎7の延び方向一端側の側壁)により規制しつつ、擬石12を基礎7の延び方向一端側から他端側に向けて順次、隣接させた状態で基礎7の段差面に配置し(図2参照)、その各構築材11の擬石12の配置の度にその擬石12に取付けられたアンカー13他端部のカール部20をシャックル28を介して金網6に連結する。
【0026】
一段目の構築材列11A−1の擬石12が上側側壁8b(基礎7の延び方向他方側の側壁)まで配置されると、図10に示すように、基礎7と傾斜基盤4との間にコンクリート27を注入して、一段目の構築材列11A−1の擬石12を基礎7に固定する。二段目(以降)の構築材11の擬石12の移動力(転動力、滑り力)を、側壁8aではなく、できるだけ、一段目の構築材列11A−1の擬石12を介して基礎7に伝達するためである。この場合、コンクリート27の注入は、そのコンクリート27面が基礎7の規制部9の上面9a高さになるまで行われて、段差部10内にもコンクリート27が充填され、これにより、基礎7を取り込んで一体化されたベース体26が、一段目の各擬石12の下部をその内部に埋め込んだ状態で形成され、一段目の各擬石12は、ベース体26(基礎7)に固定されることになる。
【0027】
一段目の構築材列11A−1の擬石12がベース体26に固定されると、図11に示すように、二段目の構築材11A−2を一段目の構築材列11A−1上に配置する。このとき、二段目の構築材列11A−2の各擬石12は、一段目の隣り合う擬石12間の凹所25内に入り込むように配置され、その二段目の構築材列11A−2の擬石12は、一段目の構築材列11A−1の擬石12に係合して、基礎7の延び方向一端側に転動或いは滑り移動することが規制される。二段目の構築材列11A−2の擬石12の作用力を側壁8aにできるだけ作用させないためである。この二段目の構築材列11A−2の配置に際しては、基本的には、一段目の構築材11A−2の配置の場合同様、基礎7の延び方向一端側から順次、配置して下側側壁8aに擬石12の移動荷重を受け止めさせることが好ましいが、二段目の構築材11の配設においては、一段目の隣り合う擬石12間の凹所25を利用できることから、上記基本的配設順序に限らず、適宜の位置から、或いは適宜の位置に擬石12を配置することもできる。
【0028】
またこの二段目の構築材列11A−2の配設においても、各擬石12の配置の度に、図11に示すように、その擬石12に取付けられたアンカー13を金網6に連結する。擬石12が前側に脱落することを防止するためである。また、このアンカー13は、その伸び方向長さが一段目の構築材列11A−1のアンカー13の伸び方向長さと同じとされており、これに基づき、二段目の各構築材11A−2の擬石12を一段目の隣り合う擬石12間に配置すると、一段目及び二段目の各擬石12の平坦な背面14が平坦な連続面22を形成することになる。このとき、一段目の擬石12の面取り面16が支持面としての役割を果たし、二段目の擬石12の面取り面16が被支持面としての役割を果たすことになり、擬石12の積み上げが容易になる。
【0029】
二段目の構築材列11A−2の配設を終えると、図12に示すように、一段目と二段目の擬石12が形成する積み上げ壁21と金網6(傾斜基盤4)との間に裏込め材料(砕石、割栗石等)30を投入する。裏込め材料層31を順次、拡張形成して、それにより、アンカー13が連結される金網6等を傾斜基盤4に強固に押圧するためである。このとき、裏込め材料30は、二段目の擬石12の上部の高さになるまで充填され、一段目及び二段目の構築材11A−1,11A−2のアンカー13は、裏込め材料層31内に埋め込まれる。アンカー13と裏込め材料30とを係合させて、各段の擬石12がその並設方向に移動することをより確実に防止するためである。
【0030】
二段目の構築材列11A−2の配設を終えると、以下同様に、三段目以降の構築材列11Aの配設を行う。そして、最上段の構築材列11Aに対して、積み上げ壁21と金網6との間にコンクリートを注入し、そのコンクリートにより天端コンクリート層32を、図1,図2に示すように形成する。天端面33を形成すると共に、その天端面33の角度θ調整を天端コンクリート層32の厚み調整により行うためである。これにより、当該護岸1が構築されたことになり、施工が終了する。尚、図1に示すように、護岸1の前側下部は、埋め戻される。
【0031】
したがって、このような護岸1においては、積み上げ壁21の背面側に、各擬石12の背面14を平坦面にして平坦な連続面22を形成することから、上下に隣り合う各擬石12間において、隙間空間24(図6参照)が形成されることが減少することになり、その各隙間空間24への裏込め材料30の進入の有無により裏込め材料30の充填量が変動することを抑制できることになる。このため、裏込め材料30の充填量を極力予定通りにできる。
【0032】
また、この護岸1においては、各構築材11のアンカー13として、伸び長さの等しいものを用いて、連続面22と金網6との間を一定間隔にしており、その両者22,6の平行な関係に基づき、裏込め材料30を裏込め材料充填空間29に順次、的確に充填(投入)できることになる。勿論このとき、各構築材11のアンカー13として、伸び長さの等しいものを用いていることから、アンカー13の伸び長さ調整が不要となり、施工性が大幅に改善される。
【0033】
さらに、この護岸1においては、縦断勾配がある場合であっても、基礎7の段差面10aが、勾配が維持された連続面とされることから、縦断勾配がない場合(段基礎を形成しなくてもよい場合)と略同様に施工できることになり、基礎7として、段基礎を形成する場合の特有の作業を不要にできる。その一方、一段目の擬石列12A−1が、その各擬石12を基礎7に固定した状態をもってその基礎7の段差面10a上に配置され、二段目以降の擬石列12Aが、その各擬石12を、その下側段における隣り合う擬石12間の凹所25に入り込むようにした状態をもって配置されていることから、基礎7の段差面10aが、上述のように勾配が維持された連続面とされて、その連続面の勾配に基づき、二段目以降の擬石列12Aの作用力(移動しようとする力)が、基礎の延び方向一端側の側壁8aに向けて作用しようとするけれども、その作用力の多くは、一段目の擬石列12A−1を介して基礎7に伝達され、側壁8aに作用する力は、大幅に低減される。しかもこの場合、二段目以降の擬石列12Aの各擬石12の積み上げを転がらせることなく行うことができる。
【0034】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次のような態様を包含する。
(1)アンカー13の他端部を金網6に連結せず、アンカー13の他端部にストッパパネル等の抵抗部材を設け、その抵抗部材と裏込め材料30とを係合させること。
(2)構築材11として、アンカー13を有しない擬石だけからなるものを用い、裏込めコンクリート、胴込めコンクリート利用して積み上げること。
(3)基礎7として、一段目擬石列の各擬石12の下部を埋め込んだものを用いること。
(4)基礎7の凹所として、背面側が開放されたもの(段差面10a)に限らず、基礎7の上面に、背面側が開放されないものを用いること。この場合、基礎7の延び方向において、連続的に溝状に形成してもよいし、一段目擬石列の各擬石12の下部を個々に受け入れるように形成してもよい。特に後者に関しては、基礎7の上面が、勾配が維持された連続面とされていても、擬石12を転がらせることなく基礎7の上面に載置でき、作業性を向上させることができる。勿論、一段目擬石列の各擬石12の下部を受け入れる凹所を、凹所としての段差部10の段差面10aにさらに形成してもよい。
(5)一段目の各擬石12を基礎7に固定する方法として、その各擬石12に穴を予め形成しておく一方、基礎7上面から、各擬石に対応させて鉄筋等をそれぞれ突出させ、その各鉄筋等と各擬石12の穴と嵌合状態とすること。勿論この場合、逆に、各鉄筋等を各擬石12に植設し、各穴を基礎7上面に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態に係る護岸を説明する縦断面図。
【図2】実施形態に係る護岸の正面状態を説明する説明図。
【図3】実施形態に係る構築材を示す平面図。
【図4】図3の正面図。
【図5】図3の左側面図。
【図6】擬石の積み上げ状態を概念的に説明する説明図。
【図7】変形例に係る護岸の正面状態を説明する説明図。
【図8】実施形態に係る護岸の施工方法を説明する説明図。
【図9】図8に続く工程を説明する説明図。
【図10】図9に続く工程を説明する説明図。
【図11】図10に続く工程を説明する説明図。
【図12】図11に続く工程を説明する説明図。
【符号の説明】
【0036】
1 護岸(土木構築物)
7 基礎
8a 側壁
10a 段差面(基礎の上面)
11 構築材
12 擬石(塊状部材)
12A 擬石列(塊状部材列)
12A−1 一段目の擬石列(最下段の塊状部材列)
12A−2 二段目の擬石列(二段目の塊状部材列)
13 アンカー
21 積み上げ壁
25 凹所
27 コンクリート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎の上面高さがその延び方向一端側から他端側に向うに従って高くなるように形成され、該基礎の延び方向の少なくとも一端側に側壁が設けられ、前記基礎の上面上に塊状部材が、該基礎の延び方向全体に亘って隣接した状態で順次、積み上げられて、複数段の塊状部材列が形成されている土木構築物において、
前記基礎の上面が、勾配が維持された連続面とされ、
前記複数段の塊状部材列のうち、最下段の塊状部材列が、その各塊状部材を前記基礎に固定した状態をもって該基礎の上面上に配置され、
前記複数段の塊状部材列のうち、前記最下段の塊状部材列よりも上方側の各段の塊状部材列が、その各塊状部材を、該各段の下側段における隣り合う塊状部材間に入り込むようにした状態をもって配置されている、
ことを特徴とする土木構築物。
【請求項2】
請求項1において、
前記最下段の塊状部材列の各塊状部材が、該各塊状部材の下部を前記基礎内に埋め込むことにより該基礎に固定されている、
ことを特徴とする土木構築物。
【請求項3】
請求項1において、
前記基礎に、上方に開口するようにして凹所が形成され、
前記基礎の凹所内に、前記最下段の塊状部材列の各塊状部材が収納されていると共にコンクリートが充填されている、
ことを特徴とする土木構築物。
【請求項4】
請求項1において、
前記各塊状部材が、長細形状とされ、
前記各段の塊状部材列の各塊状部材が、その長く延びる部分を起立させるようにしつつ並べられている、
ことを特徴とする土木構築物。
【請求項5】
基礎の上面高さを、その延び方向一端側から他端側に向うに従って高くなるように形成し、該基礎の延び方向の少なくとも一端側に側壁を設け、前記基礎の上面上に塊状部材を、該基礎の延び方向全体に亘って隣接した状態で順次、積み上げて、複数段の塊状部材列を形成する土木構築物の施工方法において、
前記基礎の上面を、所定勾配を維持しつつ延びる連続面として形成し、
前記複数段の塊状部材列のうち、最下段の塊状部材列を、その各塊状部材が前記基礎に固定された状態をもって該基礎の上面上に配置し、
前記複数段の塊状部材列のうち、前記最下段の塊状部材列よりも上方側の各段の塊状部材列を、その各塊状部材が該各段の下側段における隣り合う塊状部材間に入り込むようにした状態をもって配置する、
ことを特徴とする土木構築物の施工方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記基礎として、上方に開口する凹所を有するものを形成し、
前記基礎の凹所内に、前記最下段の塊状部材列の各塊状部材を収納すると共にコンクリートを充填する、
ことを特徴とする土木構築物の施工方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記基礎を支持壁の前方側に形成すると共に、該基礎の凹所を該支持壁に向けて開放したものとし、
前記複数段の塊状部材列のうち、少なくとも最下段の塊状部材列に関し、その各塊状部材として、アンカーを備えたものを用意し、
前記基礎の凹所内に前記最下段の塊状部材列の各塊状部材を収納するに伴って、該各塊状部材のアンカーの先端部を前記支持壁に取付け、
この後、コンクリートを、前記凹所を含む前記支持壁と前記基礎との間に充填する、
ことを特徴とする土木構築物の施工方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−297804(P2007−297804A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125219(P2006−125219)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(397045769)環境工学株式会社 (35)
【出願人】(301015864)株式会社環境工学研究所 (18)
【Fターム(参考)】