説明

土木構造物及び土木構造物の管理システム

【課題】土木構造物が災害等により破損しても、必要な情報が現場で得られる土木構造物及び土木構造物の管理システムを提供する。
【解決手段】土木構造物10に関する構造物情報を記憶可能なRFタグ12が設けられた土木構造物10であって、前記構造物情報は、当該構造物情報を分割した複数の分割情報それぞれが、複数のRFタグ12に保持されることで、複数のRFタグ12によって分散的に記憶されているとともに、各分割情報は、複数のRFタグによって重複して記憶されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木構造物、及び土木構造物の管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、土木構造物の情報は、土木構造物に設置された銘板によって識別されていた。例えば、擁壁、トンネル、橋梁等の土木構造物には、竣工日、設計基準書、設計条件、施工業者名等が記載された銘板が設置されている。
土木構造物に設置される銘板に記載された情報は、構造物竣工時の情報にすぎず、銘板からは、日々の維持管理に関する情報は得られない。
また、近年、コンクリート製品にRFタグを埋め込んで、当該RFタグに管理情報を記憶させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−224654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、竣工後の日常点検、定期点検、及び異常点検の結果を、土木構造物の管理情報として蓄積しておくと、地震などの災害時において、土木構造物の点検や破損箇所の復旧対策を迅速にとる上で有利である。
つまり、災害前の土木構造物の状況を把握しつつ、災害後の土木構造物の状況をみることで、災害を原因とする破損箇所を把握したり、災害による土木構造物やその周辺環境の状況の変化を把握して的確な復旧対策をとることができる。
【0004】
上記のような管理情報を、管理センターなどに設置されたコンピュータのデータベースに保存しておいて、必要時にその管理情報を活用することも考えられる。
しかし、災害時において、土木構造物が設置されている現場から、前記データベースにアクセスするには、災害時においても現場から管理センターまでの通信回線が利用可能である必要がある。災害時においては、通信回線がとぎれたり、データベースが設置された管理センター自体が被災するおそれがあり、現場から、必要な管理情報が入手できるとは限らず、復旧作業に時間がかかるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明者らは、災害時にも有用な管理情報を、土木構造物に設けたRFタグに記憶させるという着想を得た。
しかし、特許文献1に記載のように、単に、構造物にRFタグ(無線ICタグ)を設けるだけでは、災害時にも対応できるように土木構造物の管理を行うことが困難である。
つまり、災害などによる破損時には、土木構造物におけるRFタグ(RFIDタグ)の埋設部の脱落や破壊により、土木構造物に設けたRFタグが破壊され、管理情報が失われるおそれがあるからである。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、土木構造物が災害等により破損しても、必要な情報が現場で得られる土木構造物及び土木構造物の管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、土木構造物に関する構造物情報を記憶可能なRFタグが設けられた土木構造物であって、前記構造物情報は、当該構造物情報を分割した複数の分割情報それぞれが、複数のRFタグに保持されることで、複数のRFタグによって分散的に記憶されているとともに、各分割情報は、複数のRFタグによって重複して記憶されていることを特徴とする。
本発明によれば、土木構造物の情報が、複数のRFタグによって分散的かつ冗長的に記憶されるため、土木構造物の破損に伴って一部のRFタグが破損したとしても、情報の復元性が高くなる。
【0008】
前記RFタグは、当該RFタグが記憶を担うべき分割情報を記憶する第1記憶領域、及び、他のRFタグが記憶を担うべき分割情報のコピーを記憶する第2記憶領域を含むメモリを備えているのが好ましい。
【0009】
前記土木構造物を構成する複数のブロック毎に、それぞれ、当該ブロックの構造物情報を記憶するための複数のRFタグが設けられているのが好ましい。この場合、土木構造物をブロック毎に管理することができる。
【0010】
管理システムに係る本発明は、土木構造物に関する構造物情報を記憶可能なRFタグが設けられた土木構造物を管理する管理システムであって、前記RFタグに対する情報の送信が可能な情報端末を含み、前記情報端末は、前記土木構造物に関する構造物情報を分割して複数の分割情報を生成する分割手段と、前記土木構造物に設けられた複数のRFタグの数に応じた数の管理情報を生成する管理情報生成手段と、生成された管理情報を、前記RFタグに送信する送信手段と、を備え、前記管理情報生成手段は、複数の分割情報それぞれが複数のRFタグに保持されるとともに、各分割情報が、複数のRFタグによって重複して記憶されるように、複数の分割情報を組み合わせた情報を含む前記管理情報を、前記土木構造物に設けられたRFタグの数に応じた数ほど生成することを特徴とする管理システムである。
【0011】
また、前記土木構造物を管理する管理システムは、前記RFタグからの情報の受信が可能な情報端末を含み、前記情報端末は、土木構造物に設けられたRFタグに記憶されている分割情報を、RFタグから受信する受信手段と、複数のRFタグから受信した複数の分割情報を組み合わせて前記構造物情報を復元する復元手段と、を備え、前記復元手段は、前記構造物情報の分割情報を保持する複数のRFタグの中に、分割情報を受信できない通信不能RFタグがあるときには、当該通信不能RFタグが記憶を担うべき分割情報と同じ分割情報を保持する別のRFタグから当該分割情報を取得して、前記構造物情報を復元することを特徴とする管理システムである。
【0012】
前記RFタグは、当該RFタグが記憶を担うべき分割情報を記憶する第1記憶領域、及び、他のRFタグが記憶を担うべき分割情報のコピーを記憶する第2記憶領域を含むメモリを備え、前記復元手段は、複数のRFタグから受信した第1記憶領域の分割情報を組み合わせて前記構造物情報を復元するよう構成されているとともに、前記構造物構造の分割情報を保持する複数のRFタグの中に、通信不能なRFタグがある場合には、当該通信不能なRFタグの第1記憶領域に記憶されている分割情報のコピーを第2記憶領域に記憶している別のRFタグから、当該分割情報のコピーを取得して、前記構造物情報を復元するのが好ましい。
【0013】
土木構造物に設けられた各RFタグは、第2記憶領域に記憶されている分割情報が、どのRFタグの第1記憶領域の分割情報のコピーであるかを示す情報を記憶しておらず、前記情報端末が、各RFタグの第1記憶領域に記憶されている分割情報のコピーをどのRFタグが記憶しているかの対応関係情報を有しており、
前記復元手段は、通信不能なRFタグがある場合には、前記対応関係情報に基づいて、通信不能なRFタグの第1記憶領域に記憶されている分割情報のコピーを第2記憶領域に記憶している別のRFタグを特定するのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の土木構造物及び土木構造物の情報管理システムによれば、土木構造物が災害等により破損しても、必要な情報を土木構造物から得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の土木構造物及び管理システムの実施の形態を詳細に説明する。
本管理システム1は、土木構造物10を管理するためのものである。なお、図1等では、土木構造物10として、橋梁を一例として説明するが、土木構造物10は、トンネル、擁壁等であってもよい。
土木構造物10には、複数のRFタグ(トランスポンダ)12が設けられている。土木構造物10のRFタグ12には、当該土木構造物10に関する情報が記憶される。
【0016】
図2に示すように、本管理システム1は、土木構造物10に埋設された前記RFタグ12a−1〜12a−8に対する情報の送受信(無線通信)が可能な情報端末20を含んでいる。
情報端末20は、使用者からの入力を受け付けたり、RFタグ12a−1〜12a−8から読み取った情報及びその他の情報を画面に出力したりすることができる。
【0017】
また、本管理システム1は、前記RFタグに蓄積されている情報と同じ情報及び当該土木構造物に関するその他の情報を蓄積するためのデータベースを有するサーバ30を備えている。このサーバ30には、複数の土木構造物10に関する情報を保存することができる。
情報端末20は、サーバ30との間でも、有線又は無線の通信回線によって通信可能であり、サーバ30のデータベースから必要な情報を取得したり、サーバ30のデータベースに蓄積すべき情報を送信したりすることができる。
【0018】
土木構造部10は、複数のブロック(部品;コンクリート製材料部品)11a〜11gを組み合わせて構成されている。本実施形態では、管理システムによる管理の最小単位を土木構造物10のブロック11a〜11gとしている。一つの土木構造物10を複数のブロックにわけて情報を管理することで、ブロック(部品)毎に製造条件が異なる場合や、ブロック(部品)毎に管理すべき情報が異なる場合などに柔軟に対応することができる。
【0019】
なお、各ブロック11a〜11gは、土木構造物10を構成する物理的に区別可能な構成部品であってもよく、土木構造物10を概念的に区画化された領域であってもよい。
また、図2においては、理解の容易のため、図1に示される土木構造物10の各ブロックのうち、一つのブロック11aのみを示している。
【0020】
ここで、土木構造部10に埋設される各RFタグ12a−1〜12a−8の埋設深さは、情報端末20から送信される電波を、RFタグ12a−1〜12a−8が受信することができる程度であればよい。
また、各RFタグ12a−1〜12a−8の間隔は、あるRFタグと情報端末20との通信の際に、他のRFタグとの通信干渉が生じないようにすればよい。
【0021】
前記サーバ30は、情報端末20との間で情報の送受信を行う通信部31と、情報が入力される入力部34と、データベースが構築される記憶部33と、必要な情報処理を行う制御部32とを備えている。また、サーバ30には、表示部40が接続されている。
【0022】
RFタグ12は、図3に示されるように、管理情報等を記憶する記憶部(メモリ)51と、送受信する情報のエンコード・デコード等を行なう制御部52と、情報端末20との間で情報を送受信するためのアンテナ部53とを備えている。
なお、このRFタグ12は、パッシブタグとして構成されているが、アクティブタグであってもよい。また、RFタグ12が無線通信に使用する周波数は、134.2kHzである。この周波数であると、土木構造物の材料として用いられているコンクリート等を透過することができ、好ましい。
【0023】
情報端末20は、図4に示されるように、RFタグ12及びサーバ30と情報の送受信を行う通信部61と、RFタグ12及びサーバ30それぞれから得られた情報を記憶する記憶部62と、管理情報等の情報が入力される入力部63と、情報を画面表示する表示部64と、RFタグ12との情報の授受、サーバ30との情報の授受、入力部63に入力された管理情報等の情報の受付、表示部64への情報の出力等を制御する制御部65とを備えている。
【0024】
図5は、一つの土木構造物10に記憶されるべき全体情報を示している。全体情報は、土木構造物10を構成する複数(7個)のブロック11a〜11gごとの構造物情報から構成されている。なお、全体情報には、ブロック分けに依存しない土木構造物全体に関する情報を含めても良い。土木構造物全体に関する情報としては、構造物の種別、設計基準書、設計者、竣工年月日、最も近い検査日、検査種目、異常点検時に緊急判定を行える情報、等がある。
ブロック分けに依存しない土木構造物全体に関する情報は、いずれかのブロックの構造物情報の一部としてRFタグに記憶させてもよいし、複数のブロックの各RFタグに分散して記憶させてもよい。
【0025】
各ブロック11a〜11gそれぞれの構造物情報は、土木構造物10を構成する各ブロック11a〜11gに対する日常点検、定期点検、及び異常点検の結果等を示す点検管理の情報を含んでいる。一つの土木構造物10を構成するブロックの構造物情報の全てを総合することで、当該土木構造物10の全体情報となる。
【0026】
構造物情報に含まれる点検結果の情報としては、土木構造物の状態、健全度等の情報等が挙げられる。具体的には、土木構造物のブロック毎の損壊の状況、土木構造物のブロック毎のクラックの状況などが挙げられる。
【0027】
一つの構造物情報は、一つのRFタグ12にまとめて記憶されるのではなく、一つの構造物情報が複数のRFタグ12a−1〜12a−8によって分散して記憶される。
つまり、一つのブロックに設けられた複数のRFタグ12a−1〜12a−8それぞれは、当該ブロックの構造物情報を断片的に保持している。ここでは、一つのRFタグが保持する構造物情報の断片を分割情報という。
【0028】
本実施形態では、例えば、一つのブロックに8個のRFタグ12a−1〜12a−8が設けられる。図6に示すように、一つの構造物情報は、RFタグの数(8個)に応じた数(8個)の分割情報に分割される。8個の分割情報は、8個のRFタグにそれぞれ、保持される。
なお、RFタグの数は、8個に限定されるものではない。また、各ブロックに設けられるRFタグの数は、各ブロックにおいて同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0029】
複数のRFタグ12a−1〜12a−8から受信した複数の分割情報は、情報端末20において組み合わせられて、一つの構造物情報が復元される。復元された構造物情報は情報端末20において表示可能となる。
【0030】
図7は、複数(8個)のRFタグ12a−1〜12a−8が記憶する管理情報のフォーマットを示している。管理情報は、前記分割情報及びその他の情報を含んだ情報である。
管理情報は、分割情報以外の情報として、タグID、構造物ID、部品ID(ブロックID)を含んでいる。
タグIDは、個々のRFタグ12a−1〜12a−8を識別するためのものであり、タグ固有のIDと、RFタグが設けられているブロック内での位置を示すID(タグ位置ID)との組み合わせによって構成されている。
構造物IDは、RFタグが設けられている土木構造物10を特定し、部品ID(ブロックID)は、RFタグが設けられているブロック(部品)を特定する。
【0031】
RFタグ12a−1〜12a−8は、上記各情報を記憶するための記憶領域を、その記憶部51に有している。
また、RFタグ12a−1〜12a−8は、管理情報として、第1の分割情報を記憶するための第1記憶領域と、第2の分割情報を記憶する第2記憶領域とを、含んでいる。
第1記憶領域には、そのRFタグが主として記憶を担うべき分割情報が記憶され、第2記憶領域には、他のRFタグが主として記憶を担うべき分割情報のコピーが記憶される。
つまり、各RFタグ12a−1〜12a−8は、それぞれ、構造物情報の一部の情報を記憶するが、2つ(複数)の分割情報を記憶することができる。
これにより、各分割情報は、複数のRFタグによって冗長的に保持される。
【0032】
本実施形態のRFIDの記憶部51の記憶領域は、全体で80メモリビット(10バイト)であり、タグIDに2バイト、構造物IDに1バイト、部品IDに1バイト、第1記憶領域に3バイト、第2記憶領域に3バイトが割り当てられる。
図2に示すように土木構造物10の一つのブロックに、8個のRFタグ12a−1〜12a−8を割り当てた場合、構造物情報の容量としては、一つのブロックあたり、3バイト(第1記憶領域の容量)×8=24バイトが確保される。
このように、構造物情報を複数のRFタグに分散して記憶させることで、一つのRFタグの記憶容量を超えた量の情報を、記憶させることができる。
また、分割情報のコピーを記憶する第2記憶領域の容量も、同様に、一つのブロックあたり、24バイトが確保される。
【0033】
以下、RFタグへの分割情報の記憶のさせ方(冗長化様式)について、説明する。
なお、以下では、1つのブロックに埋設されている8個のRFタグ12a−1〜12a−8のタグID(タグ位置ID)を、ID=0〜ID=7とする。
また、タグIDが隣接するRFタグ同士は、ブロック内において実際に隣接して配置されているものとし、あるタグIDを有する第1のRFタグと、当該第1のタグIDにRFタグの全数(=8)の1/2(=4)を加えたタグIDを有する第2のRFタグとは、ブロック内において互いに最も離れた位置関係にあるものとする。
【0034】
図8は、RFタグ12の記憶部51の第2記憶領域に分割情報を記憶させない場合の例(比較例)を示している。この場合、第1記憶領域にのみ分割情報が記憶される。各分割情報は、それぞれ一つのRFタグにしか記憶されない。
【0035】
具体的には、図8の場合、ID=0のRFタグ12a−1には分割情報(0)Do−0が記憶され、ID=1のRFタグ12a−2には、分割情報(1)Do−1が記憶される。以下、同様に、ID=2〜7のRFタグ12a−3〜12a−8には、分割情報(2)Do−2〜分割情報(7)Do−7が記憶される。
【0036】
情報端末20は、RFタグ12a−1〜12a−7から管理情報を読み取り、読み取った管理情報から第1記憶領域の分割情報を抽出する。そして、タグID順等の所定のルールに従って、8個(複数)の分割情報を組み合わせて、構造物情報を復元する。復元された構造物情報は、情報端末20から表示される。
ただし、図8の比較例では、構造物情報の記憶のさせ方に冗長性がないため、一つのRFタグでも破損すると、構造物情報を完全に復元することはできない。
【0037】
一方、図9は、構造物情報を、冗長性をもたせて記憶させるやり方を示している。図9では、RFタグ12a−1〜12a−7のそれぞれの第1記憶領域には、当該RFタグ12が記憶を主に担うべきオリジナルの分割情報Do−0〜Do−7が記憶される。
また、RFタグ12a−1〜12a−7のそれぞれの第2記憶領域には、別のRタグの第1記憶領域に記憶されている分割情報Do−0〜Do−7のコピーDc−0〜Dc−7が記憶されている。
【0038】
具体的には、例えば、タグID=0であるRFタグ12a−1の第1記憶領域には、オリジナル分割情報として、分割情報(0)Do−0が記憶され、第2記憶領域には、コピー分割情報として、分割情報(4)Dc−4が記憶される。
また、タグID=4であるRFタグ12a−5の第1記憶領域には、オリジナル分割情報として、分割情報(4)Do−4が記憶され、第2記憶領域には、コピー分割情報として、分割情報(0)Dc−0が記憶される。
つまり、ID=0のRFタグ12a−1とID=4のRFタグ12a−5とがペアとなって、互いのオリジナル情報のコピーを保有している。
【0039】
同様に、ID=1のRFタグ12a−2とID=5のRFタグ12a−6とがペアとなり、ID=2のRFタグ12a−3とID=6のRFタグ12a−7とがペアとなり、ID=3のRFタグ12a−4とID=7のRFタグ12a−8とがペアとなって、オリジナル情報のコピーを保有している。
【0040】
上記のように分割情報を記憶させると、一つの分割情報は、2つ(複数)のRFタグによって保持されることになる。よって、ペアを構成するRFタグの一方が損傷して通信不能になっても、情報端末20は、当該ペアを構成する他方のRFタグが有しているコピー分割情報を用いて、構造物情報全体を復元することができる。
【0041】
つまり、情報端末20は、いずれかのRFタグ12a−1〜12a−8の故障のため、8個全ての管理情報が取得できなかった場合、まず、管理情報が取得できなかった通信不能RFタグのIDを特定する。
そして、通信不能RFタグが第1記憶領域に有している分割情報のコピーを有している他のRFタグを特定する。他のRFタグの特定は、情報端末20が有している対応関係情報に基づいて行われる。
そして、コピーを有しているRFタグの第2記憶領域から、通信不能RFタグが第1記憶領域に有している分割情報のコピーを取得する。
情報端末20は、このコピーと、他の取得した分割情報(オリジナル又はコピー)とを組み合わせて、構造物情報を復元する。
【0042】
対応関係情報は、例えば、オリジナル分割情報を持つタグIDと、当該オリジナル分割情報のコピーを持つタグIDと、の対応を示す情報によって構成される。図9の例では、コピー分割情報は、オリジナル分割情報が記憶されているRFタグのタグIDに、RFタグの全数(8個)の1/2の数を加えた数のIDを有するRFタグに記憶されている。この場合、コピー情報を持つRFタグのタグIDは、通信不能RFタグの[タグID+(RFタグの全数/2)]の式によって特定でき、当該式が対応関係情報となる。
【0043】
上記のように、情報端末20が、対応関係情報を有していることで、RFタグ自体は、オリジナルとコピーとの対応関係を示す情報を保有する必要がない。また、コピーを有するRFタグは、オリジナルを有するRFタグに、隣接するのではなく、最も離れた位置に設置されるため、2つのRFタグが、土木構造物10の破損に伴って、共に破壊される可能性が低くなっており、情報の復元性が高まっている。
【0044】
図10は、構造物情報を、冗長性をもたせて記憶させる他の例を示している。なお、図10及び以下の例において、特に説明しない点については、図9の例と同様である。
図10に例においても、RFタグ12a−1〜12a−7のそれぞれの第1記憶領域には、当該RFタグ12が記憶を主に担うべきオリジナルの分割情報Do−0〜Do−7が記憶される。
図10の例では、分割情報のコピーは、二つ(複数)の細分割情報に分けられ、二つ(複数)のRFタグによって記憶される。
また、各RFタグの第2記憶領域も二つに分けられており、二つ(複数)の再分割情報を記憶することができる。
【0045】
具体的には、例えば、タグID=0であるRFタグ12a−1の第1記憶領域には、オリジナル分割情報として、分割情報(0)Do−0が記憶される。この分割情報(0)Do−0のコピーDc−0は、二つの細分割情報Dc−0−1,Dc−0−2に分割され、それぞれ、タグID=4であるRFタグ12a−5及びタグID=5であるRFタグ12a−6にわけて記憶される。
【0046】
ここでは、二つの細分割情報Dc−0−1,Dc−0−2のうち、第1の細分割情報は、オリジナル分割情報が記憶されているRFタグ12a−1のタグID=0に、RFタグの全数(8個)の1/2の数を加えた数のIDを有するRFタグ12a−5に記憶されている。また、第2の細分割情報は、オリジナル分割情報が記憶されているRFタグ12a−1のタグID=0に、RFタグの全数(8個)の1/2の数+1を加えた数のIDを有するRFタグ12a−6に記憶されている。
【0047】
他のRFタグ12a−2〜12a−8に記憶されるオリジナル分割情報についても、コピー情報の細分割情報が、上記ルール(対応関係情報)に従って、各RFタグ12a−1〜12a−8に分配される。
この結果、ID=0のRFタグ12a−1には、分割情報(0)Do−0のほか、コピーとして、細分割情報Dc−4−1と、細分割情報Dc−3−2とが記憶される。他のRFタグ12a−2〜12a−8についても同様である。
【0048】
図10の例の場合、情報端末20は、RFタグ12a−1〜12a−8のうち、通信不能タグあると、通信不能RFタグのIDから、コピーの分割情報を構成する細分割情報を有する二つ(複数)RFタグのIDを、対応関係情報に基づいて特定する。そして、それらのRFタグの第2記憶領域から、それぞれ細分割情報を取得し、細分割情報を組み合わせて、コピーの分割情報を生成する。
情報端末20は、このコピーと、他の取得した分割情報(オリジナル又はコピー)とを組み合わせて、構造物情報を復元する。
【0049】
図10の例の場合、図9の例に比べて、コピーの分割情報の分散性が高く、構造物情報の復元性がより高くなっている。
すなわち、図9の場合、ID=0,4のようにペアを構成するRFタグ12a−1,12a−5がともに破損すると分割情報(0)Do−0全体が復元できなくなる。
一方、図10の例の場合、ID=0のRFタグ12a−1とID=4のRFタグ12a−5の両方が破損しても、分割情報(0)Do−0のコピーの一部(細分割情報Dc−0−2)が、ID=5のRFタグ12a−6に保存されているため、情報端末装置20は、コピーの一部を取得でき、構造物情報の復元性が高くなる。
【0050】
図11は、構造物情報を、冗長性をもたせて記憶させるさらに他の例を示している。図11に例においても、RFタグ12a−1〜12a−8のそれぞれの第1記憶領域には、当該RFタグ12が記憶を主に担うべきオリジナルの分割情報Do−0〜Do−7が記憶される。
図11の例では、図9のように、同じブロックの他のRFタグにコピーの分割情報を記憶させるのではなく、他のブロックのRFタグにコピーに分割を記憶させる。
【0051】
例えば、第1のブロック11a(部品ID=0)のタグID=0のRFタグ12a−1に記憶される分割情報(0)[Do−0,0]のコピーは、第2ブロック11b(部品ID=1)のタグID=4のRFタグ12b−5に記憶される。図11においては、オリジナルが記憶されるRFタグとコピーが記憶されるRFタグとの位置関係は、ブロックが異なる点以外は、図9の例と同様である。
【0052】
このように、あるブロックの分割情報のコピーを別のブロックのRFタグに保持させることで、ブロックの破損に対する情報の復元性が高くなる。
なお、図11では、2つのブロック11a,11b間で、互いにコピーを持ち合う場合を示したが、ブロックの数は、3以上であってもよい。
【0053】
図12は、構造物情報を、冗長性をもたせて記憶させるさらに他の例を示している。図12の例は、図11の例のように、コピーを別のブロックに記憶させる際に、図10の例のように、コピーを二つ(複数)の細分割情報にわけて記憶させたものである。
この場合、図11の例よりも、さらに情報の復元性が高くなる。
【0054】
図12の例では、あるブロックの分割情報のコピーを、他の一つのブロックに含まれるRFタグに記憶させたが、コピーを、他の複数のブロックにまたがって記憶させてもよい。また、コピーの分割数は、2であるものを例示したが、3以上であってもよい。
【0055】
以下、上記のように構成された本管理システムによる情報の読み込み及び書き込みについて説明する。
土木構造物10のRFタグに記憶させている情報を情報端末20によって読み取る際には、図1に示すような土木構造物10のモデル(3次元モデル)が情報端末20の画面に表示される。この3次元モデルは、ブロック11a〜11gに分割されて表示される。
情報端末20では、適宜の入力手段によって、表示されているブロック11a〜11gのいずれかを選択すると、選択されたブロックの構造物情報が表示される。これにより、各ブロックの過去の点検結果などを、土木構造物が設置されている現場で把握することができる。
【0056】
RFタグからの情報の読み込みは、情報端末20に設けられているRFタグのリーダ/ライタ(リーダ/ライタのアンテナ部)を、土木構造物10の各RFタグの埋設位置の表面に近づけることによって行われる。一つのブロックに設けられている全てのRFタグから管理情報を読み取ると、当該ブロックの構造物情報が生成され、当該ブロックについての構造物情報が情報端末20において表示可能となる。
情報端末20では、この情報端末20本体の外部にアンテナ部を有していてもよい。
【0057】
なお、RFタグの埋設位置は、土木構造物10自体に、埋設位置を示す目印を設けるのが好ましい。また、目印に代えて又は加えて、情報端末20において、土木構造物10におけるRFタグの位置を画面表示してもよい。
このようにすることで、多数のRFタグを土木構造物に設けても、確実に、リーダの読み書きを行うことができる。
【0058】
土木構造物10の点検結果などの情報を、土木構造物10のRFタグに記憶させる際には、まず、情報端末20に土木構造物10の点検結果などの情報が入力される。この入力は、情報端末20に表示されている土木構造物10のモデル中のブロックを個々に選択し、ブロック毎に行われるのが好ましい。
【0059】
あるブロックについての点検結果などの情報(入力情報)が入力されると、情報端末20は、その入力情報を、当該ブロックに設けられているRFタグの数に応じた数の分割情報に分割する。
続いて、情報端末20は、RFタグの数に応じた数の管理情報も生成する。各管理情報には、タグID、構造物ID、部品IDが含まれる。また、管理情報を記憶する領域のうち、第1記憶領域には、オリジナルの分割情報が格納される。また、第2記憶領域には、他のRFタグが記憶すべき分割情報のコピーが格納される。
【0060】
必要な数の管理情報が情報端末20によって生成された後、情報端末20の前記リーダ/ライタが、RFタグに近づけられると、そのRFタグに書き込むべき管理情報が、RFタグに書き込まれる。
あるブロック内のすべてのRFタグについて管理情報の書き込み(更新)が行われると、点検結果を土木構造物に記憶させる作業は完了である。
【0061】
以上のように、本実施形態によれば、土木構造物の点検・調査時の状況や、被災時の状況(構造物情報)を土木構造物自身に記憶させることができる。また、土木構造物をブロック単位で管理できるため、ブロック毎の製造条件などの違いに対応することができる。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施の形態に係る土木構造物の概略説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る土木構造物の管理システムの構成を示す概略説明図である。
【図3】RFタグの構成を示す概略説明図である。
【図4】情報端末の構成を示す概略説明図である。
【図5】土木構造物の全体情報を示す図である。
【図6】構造物情報の分割の仕方を示す図である。
【図7】管理情報のデータフォーマットの説明図である。
【図8】RFタグへの分割情報の記憶のさせ方の比較例を示す図である。
【図9】RFタグへの分割情報の記憶のさせ方の一例を示す図である。
【図10】RFタグへの分割情報の記憶のさせ方の一例を示す図である。
【図11】RFタグへの分割情報の記憶のさせ方の一例を示す図である。
【図12】RFタグへの分割情報の記憶のさせ方の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 管理システム
10 土木構造物
11a ブロック
11b ブロック
11c ブロック
11d ブロック
11e ブロック
11f ブロック
11g ブロック
12 RFタグ
12a−1 RFタグ
12a−2 RFタグ
12a−3 RFタグ
12a−4 RFタグ
12a−5 RFタグ
12a−6 RFタグ
12a−7 RFタグ
12a−8 RFタグ
20 情報端末
30 サーバ
31 通信部
32 制御部
33 記憶部
34 入力部
40 表示部
51 記憶部
52 制御部
53 アンテナ部
61 記憶部
63 入力部
64 表示部
65 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土木構造物に関する構造物情報を記憶可能なRFタグが設けられた土木構造物であって、
前記構造物情報は、当該構造物情報を分割した複数の分割情報それぞれが、複数のRFタグに保持されることで、複数のRFタグによって分散的に記憶されているとともに、
各分割情報は、複数のRFタグによって重複して記憶されていることを特徴とする土木構造物。
【請求項2】
前記RFタグは、当該RFタグが記憶を担うべき分割情報を記憶する第1記憶領域、及び、他のRFタグが記憶を担うべき分割情報のコピーを記憶する第2記憶領域を含むメモリを備えている請求項1記載の土木構造物。
【請求項3】
前記土木構造物を構成する複数のブロック毎に、それぞれ、当該ブロックの構造物情報を記憶するための複数のRFタグが設けられている請求項1又は2記載の土木構造物。
【請求項4】
土木構造物に関する構造物情報を記憶可能なRFタグが設けられた土木構造物を管理する管理システムであって、
前記RFタグに対する情報の送信が可能な情報端末を含み、
前記情報端末は、
前記土木構造物に関する構造物情報を分割して複数の分割情報を生成する分割手段と、
前記土木構造物に設けられた複数のRFタグの数に応じた数の管理情報を生成する管理情報生成手段と、
生成された管理情報を、前記RFタグに送信する送信手段と、
を備え、
前記管理情報生成手段は、
複数の分割情報それぞれが複数のRFタグに保持されるとともに、各分割情報が、複数のRFタグによって重複して記憶されるように、複数の分割情報を組み合わせた情報を含む前記管理情報を、前記土木構造物に設けられたRFタグの数に応じた数ほど生成する
ことを特徴とする管理システム。
【請求項5】
請求項1に記載の土木構造物を管理する管理システムであって、
前記RFタグからの情報の受信が可能な情報端末を含み、
前記情報端末は、
土木構造物に設けられたRFタグに記憶されている分割情報を、RFタグから受信する受信手段と、
複数のRFタグから受信した複数の分割情報を組み合わせて前記構造物情報を復元する復元手段と、
を備え、
前記復元手段は、前記構造物情報の分割情報を保持する複数のRFタグの中に、分割情報を受信できない通信不能RFタグがあるときには、当該通信不能RFタグが記憶を担うべき分割情報と同じ分割情報を保持する別のRFタグから当該分割情報を取得して、前記構造物情報を復元する
ことを特徴とする管理システム。
【請求項6】
前記RFタグは、当該RFタグが記憶を担うべき分割情報を記憶する第1記憶領域、及び、他のRFタグが記憶を担うべき分割情報のコピーを記憶する第2記憶領域を含むメモリを備え、
前記復元手段は、
複数のRFタグから受信した第1記憶領域の分割情報を組み合わせて前記構造物情報を復元するよう構成されているとともに、
前記構造物構造の分割情報を保持する複数のRFタグの中に、通信不能なRFタグがある場合には、当該通信不能なRFタグの第1記憶領域に記憶されている分割情報のコピーを第2記憶領域に記憶している別のRFタグから、当該分割情報のコピーを取得して、前記構造物情報を復元する
請求項5記載の管理システム。
【請求項7】
土木構造物に設けられた各RFタグは、第2記憶領域に記憶されている分割情報が、どのRFタグの第1記憶領域の分割情報のコピーであるかを示す情報を記憶しておらず、前記情報端末が、各RFタグの第1記憶領域に記憶されている分割情報のコピーをどのRFタグが記憶しているかの対応関係情報を有しており、
前記復元手段は、通信不能なRFタグがある場合には、前記対応関係情報に基づいて、通信不能なRFタグの第1記憶領域に記憶されている分割情報のコピーを第2記憶領域に記憶している別のRFタグを特定する
請求項6記載の管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−197473(P2009−197473A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39926(P2008−39926)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人 情報処理学会、社団法人 電子情報通信学会「第6回情報科学技術フォーラム 講演論文集」平成19年8月22日発行
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【出願人】(000112093)ヒロセ株式会社 (49)
【Fターム(参考)】