説明

土木用包装体および水底敷設物

【課題】砂地等の河川や海岸に付設させる堤体などの構造物の下方から砂等が吸い出されて該構造物が崩壊するのを防止する。
【解決手段】本発明の土木用包装体Aは、網材で形成された袋体1内部を横断するように、網材で形成された仕切部材2により複数の小部屋3に区画され、これら区画された小部屋3のそれぞれに割栗石、砂利などの充填材4が充填され、充填材4が充填された袋体1は閉じられているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堤体などの構造物の下に敷設する土木用包装体および水底敷設物に係り、特に、構造物下方の砂等の吸出しを防止し、該構造物の沈下を防ぐものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、護岸の崩壊や砂浜の減少による海岸付近への越波災害が問題となっている。特に、堤体(離岸堤、混成堤、垂直護岸等)などの構造物の崩壊にあっては、水理模型実験の結果、構造物直下の砂等の吸出しが主因であることが判明した。
【0003】
このような砂等の吸出しを抑制するものとして、例えば、袋の口と底部とを結ぶように縫い合わせた部分を複数有し、それを縫合線とした網袋に中詰材を充填し、口を閉じたものを連筒型被覆材とし、この連筒型被覆材を消波ブロック(構造物)の下に敷設して砂の吸出しを防止する方法が提案されている(特許文献1の図1、図2、図7等参照)。
【特許文献1】特開2003−171923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような連筒型被覆材にあっては、袋材に縫合線を設け、線状に縫い合わせて網袋を形成しているため、隣り合う網袋と網袋の間はくびれて厚さが薄くなっているものであり、この薄くなった部位を介して砂等の吸出しが起こったり、連筒型被覆材上に載置される構造物の荷重により網袋の圧縮変形が起こって網目の拡張や破網を生じ、この部位から砂等の吸出しが発生したり、更には、圧縮変形に伴って構造物の沈下も起こるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、砂地等の河川や海岸に付設させる堤体などの構造物の下方に敷設する土木用包装体であって、網材で形成された袋体内部を横断するように、網材で形成された仕切部材により複数の小部屋に区画され、これら区画された小部屋のそれぞれに割栗石、砂利などの充填材が充填され、前記充填材が充填された前記袋体は閉じられている土木用包装体である。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の土木用包装体において、小部屋は略三角柱状または略四角柱状であって軸方向に長手形状であり、前記小部屋どうしは短手方向において隣り合っているものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の土木用包装体を少なくとも2個以上連結して用いることができる土木用包装体であって、袋体の一端部には係止部材が設けられ、前記袋体の前記一端部とは反対側の他端部には他の土木用包装体の係止部材に係止可能な被係止部材が設けられ、隣接する土木用包装体どうしを面接触させて係止できるものである土木用包装体である。
【0009】
請求項4に係る発明は、砂地等の河川や海岸に付設させる堤体などの構造物の下方に敷設する土木用包装体であって、網材で形成された小袋の中に割栗石、砂利などの充填材が充填され、前記充填材が充填された前記小袋が閉じられたものを包装体とし、この包装体を複数個直列に連結して隣り合う前記包装体どうしが面状に接合されている土木用包装体である。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項4記載の土木用包装体において、包装体は略三角柱状または略四角柱状であって軸方向に長手形状であり、前記包装体どうしは短手方向において隣り合っているものである。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項4または5記載の土木用包装体を少なくとも2個以上連結して用いることができる土木用包装体であって、該土木用包装体の一端部には係止部材が設けられ、前記土木用包装体の前記一端部とは反対側の他端部には他の土木用包装体の係止部材に係止可能な被係止部材が設けられ、隣接する土木用包装体どうしを面接触させて係止できるものである土木用包装体である。
【0012】
請求項7に係る発明は、砂地等の河川や海岸に付設させる堤体などの構造物の下方に敷設され、請求項1〜6のいずれかに記載の土木用包装体を一個または複数個連結して用いる水底敷設物であって、端部に位置する前記土木用包装体には端部包装体が接続され、この端部包装体は、網材で形成された外装部材と、この外装部材の内部に充填され、前記土木用包装体に充填されている充填材の粒径よりも大きな粒径の端部充填材とを有する水底敷設物である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の土木用包装体によれば、砂地等の河川や海岸に付設させる堤体などの構造物の下方に敷設する土木用包装体であって、網材で形成された袋体内部を横断するように、網材で形成された仕切部材により複数の小部屋に区画され、これら区画された小部屋のそれぞれに割栗石、砂利などの充填材が充填され、前記充填材が充填された前記袋体は閉じられているため、隣り合う小部屋の間を介して構造体下方の砂等が吸い出されるのを防止することができ、この吸出しにより該土木用包装体の上に載置される構造物が沈下して崩壊するのを防ぐことができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1記載の土木用包装体の効果に加え、小部屋は略三角柱状または略四角柱状であって軸方向に長手形状であり、前記小部屋どうしは短手方向において隣り合っているため、土木用包装体上に構造物を載置したとき、小部屋が圧縮されて変形するのを防止することができ、構造物が沈下するのを抑制することができる。
【0015】
請求項3に記載の土木用包装体によれば、請求項1または2記載の土木用包装体を少なくとも2個以上連結して用いることができる土木用包装体であって、袋体の一端部には係止部材が設けられ、前記袋体の前記一端部とは反対側の他端部には他の土木用包装体の係止部材に係止可能な被係止部材が設けられているため、土木用包装体どうしを連結して上方に載置される構造物の形状に見合った大きさのものにすることができ、しかも、隣接する土木用包装体どうしを面接触させて係止できるものであるため、該隣接する土木用包装体の間を介して構造体下方の砂等が吸い出されるのを防止することができる。
【0016】
請求項4に記載の土木用包装体によれば、砂地等の河川や海岸に付設させる堤体などの構造物の下方に敷設する土木用包装体であって、網材で形成された小袋の中に割栗石、砂利などの充填材が充填され、前記充填材が充填された前記小袋が閉じられたものを包装体とし、この包装体を複数個直列に連結して隣り合う前記包装体どうしが面状に接合されているため、隣り合う包装体の間を介して構造体下方の砂等が吸い出されるのを防止することができ、この吸出しにより該土木用包装体の上に載置される構造物が沈下して崩壊するのを防ぐことができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4記載の土木用包装体の効果に加え、包装体は略三角柱状または略四角柱状であって軸方向に長手形状であり、前記包装体どうしは短手方向において隣り合っているため、土木用包装体上に構造物を載置したとき、包装体が圧縮されて変形するのを防止することができ、構造物が沈下するのを抑制することができる。
【0018】
請求項6に記載の土木用包装体によれば、請求項4または5記載の土木用包装体を少なくとも2個以上連結して用いることができる土木用包装体であって、該土木用包装体の一端部には係止部材が設けられ、前記土木用包装体の前記一端部とは反対側の他端部には他の土木用包装体の係止部材に係止可能な被係止部材が設けられているため、土木用包装体どうしを連結して上方に載置される構造物の形状に見合った大きさのものにすることができ、しかも、隣接する土木用包装体どうしを面接触させて係止できるものであるため、該隣接する土木用包装体の間を介して構造体下方の砂等が吸い出されるのを防止することができる。
【0019】
従来の水底敷設物にあっては、該水底敷設物の端部において洗掘が発生し、この洗掘部において水底敷設物の下側に水流が回り込んで砂等が吸い出され、構造物の沈下を招くこともあった。しかしながら、請求項7記載の水底敷設物によれば、請求項1〜6のいずれかに記載の土木用包装体を一個または複数個連結して用いる水底敷設物であって、端部に位置する前記土木用包装体には端部包装体が接続され、この端部包装体は、網材で形成された外装部材と、この外装部材の内部に充填され、前記土木用包装体に充填されている充填材の粒径よりも大きな粒径の端部充填材とを有するため、請求項1〜6記載の土木用包装体による隣り合う小部屋の間を介した砂等の吸出し防止の効果に加え、洗掘部において端部包装体自身が迅速に沈降して水底へ追従し、土木用包装体を水底に迅速かつ確実に導いて水流の水底敷設物下側への回り込み及びこれに伴う砂等の吸出しを防止することができ、構造物の沈下をより一層防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の第1の実施例を、図1、図2を参照して説明する。図1において、Aは土木用包装体を示しており、土木用包装体Aは、砂地等の河川や海岸に付設させる堤体(離岸堤、混成堤、垂直護岸等)などの構造物の下方に敷設するものであって、概略的に、袋体1と仕切部材2と充填材4とにより構成されている。なお、本発明において、砂等とは、砂もしくは礫またはこれらの混合物をいい、砂地等とは、砂等により形成された地をいうものとする。
【0021】
袋体1は、後記する充填材4を充填するもので、網材で形成されている。この網材の材料は、強さ、伸び、耐剪断性に優れていればよく、例えば、ポリエステル、ナイロン、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアラミド、炭素繊維等により形成される。
【0022】
また、網材の編網は土木用包装体Aの作製時、施工時、施工後において、破網や解れが生じ難いようなものであればよく、蛙又網、ラッセル網、無結節網等により編網することができるが、衝撃吸収性や解れ難さを考慮するとラッセル網とするのが好ましい。
【0023】
また、網目形状は、袋体の形態が維持でき、耐剪断性に優れていればよく、三角形、四角形、六角形、菱形等いかなる形状でも構わないが、形態の安定性や作製のし易さを考慮すると四角形とするのが好ましく、その大きさは、充填材4がこぼれ出ないように保持できる程度に形成される。
【0024】
仕切部材2は、袋体1内部を横断するように設けられ、該袋体1内部を複数の小部屋3、3、・・に区画するもので、網材で形成されている。ここで、仕切部材2により袋体1を区画したのは、袋体1にくびれができないように小部屋3を形成し、くびれの部位を介した砂等の吸出しを生じさせないためである。なお、仕切部材2の網材の材料、構造および網目形状は、前述の袋体1のものと同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0025】
充填材4は、前述の区画された小部屋3、3、・・のそれぞれに充填され、河川や海岸の水底の砂等が袋体1を介して吸い出されるのを防止するもので、例えば、割栗石、砂利、玉石などである。また、この充填材4の大きさは、水流の通過を許容し、土木用包装体にかかる揚圧力の発生を抑制するという点をも加味すると、粒径が20〜200mm程度であることが好ましい。
【0026】
ところで、前述の小部屋3は、図1(a)、(b)に示したように、略三角柱状、または、図3(a)、(b)に示したように、略四角柱状であって軸方向に長手形状であり、小部屋3、3どうしは短手方向において隣り合う構成とするのが好ましい。これは、小部屋3の短手方向の断面形状を三角形状または四角形状にすることにより、他の形状のものに比べ耐剪断性が向上し、土木用包装体A上に構造物を載置したとき、小部屋3が圧縮されて変形するのをより一層防止することができ、構造物が沈下するのを抑制することができるためである。
【0027】
次に、上述した土木用包装体Aの作製方法について、図2を参照して説明する。まず、仕切部材2により袋体1を区画して小部屋3、3、・・を形成するもので、例えば、図2(a)に示したように、内部が直方体形状の空間を有する袋体1の内部に連続した山折り状の仕切部材2を挿入し、仕切部材2の端部、山部および谷部と、袋体1とをそれぞれ接続する。この接続は、例えば縫合用ロープ(不図示)により縫合して行われるが、袋体1および仕切部材2の両者が熱溶着性樹脂で形成されている場合にあっては加熱溶着するなど他の方法で行っても構わない。
【0028】
そして、図2(b)に示したように、例えば、立設した枠体Wの中に上述の袋体1を差し入れて固定し、各小部屋3内に充填材4を投入する。なお、この投入にあっては、図示していないが、袋体1の開口部に充填材4の投入口を挿入し、該充填材4を投入するようにしてもよい。また、袋体1内に投入される充填材4は、最密状態となるようにするのが土木用包装体Aの圧縮変形を防止する点でより好ましい。
【0029】
そして、図2(c)に示したように、袋体1を、該袋体1と同様な網材で形成された蓋体11で閉じるもので、閉じ方は、例えば蓋閉じ用ロープ(不図示)を網目に通して綴じ合わせたり、袋体1、仕切部材2および蓋体11が熱溶着性樹脂で形成されている場合にあっては加熱溶着するなど他の方法で行っても構わない。
【0030】
ところで、袋体1には、図1〜図3に示したように、該袋体1の角部やその他の外周部の適所に吊環5、5、・・を設けてもよい。この吊環5によれば、例えば図6に示したように、ロープRを掛けてクレーンKで吊り上げることができ、特に、充填材4の充填後に土木用包装体Aを枠体Wから取り出したり水底へ敷設したりする際、取り回しが容易になり使い勝手がよい。
【0031】
次に、第2の実施例を、図4を参照して説明する。図4(c)、(d)は本発明の土木用包装体Bの他の形態を示したもので、網材で形成された小袋6の中に充填材4が充填され、この充填材4が充填された小袋6が閉じられたものを包装体bとし、この包装体bを複数個直列に連結して隣り合う包装体b、bどうしが面状に接合されているものである。
【0032】
この土木用包装体Bは、まず、小袋6に充填材4を充填し、この小袋6を、蓋閉じ用ロープ(不図示)を用いて蓋体61により閉じて包装体bを形成し(図4(a)参照)、包装体b、bどうしを面状に当接させ(図4(b)参照)、例えば当接面の周縁部およびその他の当接部を縫合用ロープ62(図4(c)参照)により縫合する。そして、この操作を繰り返して行い、小袋6、6どうしを直列に連結して作製される。なお、包装体bは略三角柱状または略四角柱状であって軸方向に長手形状であり、包装体b、bどうしは短手方向において隣り合っているようにするのが好ましい。小袋6や蓋体61の網材の構成および充填材4の構成、充填方法などについては第1の実施例のものと同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0033】
ところで、上述した第1および第2の実施例の土木用包装体A(B)には、該土木用包装体A(B)を少なくとも2個以上連結して用いることができるように、袋体1の一端部に係止部材71を設け、袋体1の一端部とは反対側の他端部に他の土木用包装体A(B)の係止部材71に係止可能な被係止部材72を設けることができる。
【0034】
図5(a)、(b)、(c)は係止部材71および被係止部材72が設けられた土木用包装体A(B)を図示したもので、図5(a)はファスナー(耐食性や強度を確保できれば鉄メッキ製、ステンレス製、樹脂製など各種部材を使用可能であるが、特にポリエステル樹脂製またはステンレス製のものが好ましい。)を用いたものを、図5(b)は紐体の係止部材と環状体の被係止部材とを用いたものを、図5(c)は係止部材71および被係止部材72を環状体とし、これら環状体の環内に紐体73を挿通したものをそれぞれ示している。これら係止部材71および被係止部材72は、土木用包装体A(B)どうしを面接触させて係止できるように、例えば、当接面の外周部およびその他の当接部に設けることができる。ここで、土木用包装体A(B)どうしを面接触させて係止できるようにするのは、隣接する土木用包装体A(B)の間を介して構造体下方の砂等が吸い出されるのを防止するためである。なお、これら係止部材71および被係止部材72は、例えば図5(d)、(e)に示したように、対向する部位のそれぞれに設けてもよい。
【0035】
次に、第3の実施例を、図7、8を参照して説明する。この実施例は、砂地等の河川や海岸に付設させる堤体などの構造物の下方に敷設され、前述の土木用包装体A(B)を一個または複数個連結して用いる水底敷設物に関するもので、図7において、Cは水底敷設物を示しており、水底敷設物Cは、概略的に、土木用包装体A(B)と、端部包装体8とにより構成されている。
【0036】
土木用包装体A(B)は、一個または複数個連結して用いるもので、連結して用いる場合にあっては、上述したような係止部材71と被係止部材72とにより土木用包装体A(B)どうしが接続される。
【0037】
端部包装体8は、端部に位置する土木用包装体A(B)に接続されるものであり、
図8に示したように、網材で形成された外装部材81と、この外装部材81の内部に充填され、土木用包装体A(B)に充填されている充填材4の粒径よりも大きな粒径の端部充填材82(具体的には、粒径200mm〜500mm程度)とを有する。また、端部包装体8の取り回しを容易にするために、外装部材81の外周部の適所にクレーン吊り上げ用の吊環83、83、・・を設けてもよい。なお、外装部材81の網材の構成および充填材の構成、充填方法は実施例1のものと同じであるため詳細な説明は省略する。なお、端部包装体8と土木用包装体A(B)とは、例えば、両者の網材の網目に接続用ロープ(不図示)を通して接続することができる。
【0038】
ここで、端部包装体8内の端部充填材82の粒径を土木用包装体A(B)内の充填材4の粒径よりも大きなものとしたのは、充填材の大径化により端部包装体8の沈降速度を速めるためであり、その作用効果の説明は後述とする。
【0039】
次に、上述したような土木用包装体A(B)および水底敷設物Cの敷設方法について、図9〜図11を参照して説明する。図9はクレーン船による土木用包装体A(B)および水底敷設物Cの敷設過程を示したものであり、例えば、これらの一端をクレーンのフックに掛け、この一端と反対側の他端を水底Lの所定の場所へ降ろし、敷き馴らすようにして水底Lに敷設する。
【0040】
図10は沈設した土木用包装体A(B)上に構造物Sを構築したものを示しており、構造物Sとして、図10(a)には垂直護岸を、図10(b)には離岸堤を、図10(c)には人工リーフを付設した例を示している。また、図11は沈設した水底敷設物C上に構造物Sを構築したものを示しており、構造物Sとして、図11(a)には垂直護岸を、図11(b)には離岸堤を、図11(c)には人工リーフを付設した例を示している。
【0041】
ここで、土木用包装体A(B)および水底敷設物Cは、図10(a)、(b)、(c)、図11(a)、(b)、(c)に示したように、構造物Sの下側だけに限らず、これら土木用包装体A(B)および水底敷設物Cの直近に発生する洗掘が、構造物Sの沈下変形を引き起こさないと考えられる範囲まで、該構造物S下側から延長して敷設するのが好ましい。
【0042】
また、図10(a)および図11(a)に示したような構造物S(垂直護岸)にあっては、図10(d)および図11(d)に示したように土木用包装体A(B)上の構造物S前端付近にコンクリートブロック9、9、・・等を載置し、該構造物S前端付近で生じる水底の洗掘を防止したり、構造物Sの背面(図10(d)および図11(d)の構造物Sの陸地側)に回り込むように土木用包装体A(B)を延設し、該構造物Sの背面に溜まった雨水等の水を排出するようにしてもよい。
【0043】
ところで、第3の実施例のように端部包装体8を接続した水底敷設物Cにあっては、図12に示したように、水流による洗掘作用により水底敷設物C直近の水底Lが掘り下げられて洗掘部L’を生じたとき、この洗掘部L’において端部包装体8自身が迅速に沈降して水底L(L’)へ即時に追従し、この端部包装体8に接続された土木用包装体A(B)を水底L(L’)に迅速かつ確実に導いて水流の水底敷設物C下側への回り込み及びこれに伴う砂等の吸出しを防止することができ、構造物の沈下をより一層防ぐことができる。
【0044】
本発明に係る実施例を比較例と比較して以下に示す。なお、効果の確認は、構造物を模擬した模型実験により後記する条件下で行い、構造物等の沈下量を比較して行った。また、以下に示した網目、袋体および外装部材の大きさ、粒径、波高、沈下量等の長さは全て1/20の尺度(実物大に換算するには下記の各々の数値を20倍する)で表している。
【0045】
[実施例1]
網目の大きさ1mmの網材で形成された幅100mm×長さ500mm×高さ50mmの直方体形状の袋体内部を横断するように、網目の大きさ1mmの網材で形成された仕切部材により複数の小部屋に区画し、これら区画された小部屋のそれぞれに粒径1.75mm〜2.00mmの割栗石からなる充填材を充填し、袋体を閉じて土木用包装体を作製した。なお、小部屋の形状は軸方向に長手形状の略三角柱状とし、小部屋どうしは短手方向において隣り合うように形成した。
そして、得られた土木用包装体を縦3個×横3個接続して平面視矩形状に連結し、砂地の水底に敷設し、これら土木用包装体上に粒径13〜20mmの捨石、被覆ブロック、構造物の順で施工し、人工リーフを構築した。
【0046】
[実施例2]
実施例1の土木用包装体の小部屋の形状を軸方向に長手形状の略四角柱状とし、他は実施例1と同じ構成として土木用包装体を得た。
なお、人工リーフの構築は、実施例1のものと同様にした。
【0047】
[実施例3]
実施例1の土木用包装体を縦3個×横3個接続して平面視矩形状に連結し、端部に位置する土木用包装体に、網目の大きさ10mmの網材で形成された幅100mm×長さ150mm×高さ50mmの直方体状の外装部材内に粒径13mm〜20mmの割栗石からなる端部充填材を充填して形成された端部包装体を接続して水底敷設物を得た。
なお、人工リーフの構築は、実施例1のものと同様にした。
【0048】
[比較例1]
土木用包装体および水底敷設物のいずれをも敷設せず、砂地の水底に粒径13〜20mmの捨石、被覆ブロック、構造物の順で施工し、人工リーフを構築した。
【0049】
[実験条件]
縮尺:1/20
水底勾配:1/30
波高:0.625m
波周期:2秒
試験時間:6時間
【0050】
実施例1〜3および比較例1の人工リーフに波を当てて行った試験結果を表1に示す。なお、表1において、「法先」とは土木用包装体または水底敷設物の先端の部位をいい、法先の沈下量は、図12で示したように、法先において生じる洗掘部L’の洗掘深さを表している。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施例に係る土木用包装体の概略図であり、図1(a)は斜視図であって便宜上一部を破断し、破断部位の充填材を除去したものを、図1(b)は図1(a)のX−X線で切断した断面図をそれぞれ示している。
【図2】図1の作製過程を説明するための概略的斜視図であり、図2(a)、図2(b)、図2(c)の順で作製するものである。
【図3】図1の変形例を示した概略図であり、図3(a)は斜視図であって便宜上一部を破断し、破断部位の充填材を除去したものを、図3(b)は図3(a)のY−Y線で切断した断面図をそれぞれ示している。
【図4】本発明の第2の実施例に係る土木用包装体の概略図であり、図4(a)、図4(b)は作製過程を示した斜視図を、図4(c)は土木用包装体の概略的斜視図を、図4(d)は図4(c)のZ−Z線で切断した断面図をそれぞれ示している。
【図5】図1、図3もしくは図4の土木用包装体に係止部材および被係止部材を設けたものであり、図5(a)はファスナーとした例を、図5(b)は紐体および環状体とした例を、図5(c)は環状体とした例を、図5(d)および図5(e)は連結部位の変形例をそれぞれ示している。
【図6】図1、図3もしくは図4の土木用包装体をクレーンで吊り上げた状態を示している。
【図7】第3の実施例に係る水底敷設物を示した概略的斜視図である。
【図8】図7の端部包装体を拡大して示した概略的斜視図である。
【図9】図1、図3もしくは図4の土木用包装体または図7の水底敷設物の敷設過程を示した概略図である。
【図10】図1、図3もしくは図4の土木用包装体の敷設状態を示した概略図であり、図10(a)は構造物が垂直護岸であるときの図を、図10(b)は構造物が離岸堤であるときの図を、図10(c)は構造物が人工リーフであるときの図を、図10(d)は図10(a)の他の例をそれぞれ示している。
【図11】図7の水底敷設物の敷設状態を示した概略図であり、図11(a)は構造物が垂直護岸であるときの図を、図11(b)は構造物が離岸堤であるときの図を、図11(c)は構造物が人工リーフであるときの図を、図11(d)は図11(a)の他の例をそれぞれ示している。
【図12】図7の水底敷設物の作用効果を説明するための概略図であり、構造物が垂直護岸であるときの図を示している。
【符号の説明】
【0052】
A、B 土木用包装体
C 水底敷設物
1 袋体
2 仕切部材
3 小部屋
4 充填材
6 小袋
71 係止部材
72 被係止部材
8 端部包装体
81 外装部材
82 端部充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂地等の河川や海岸に付設させる堤体などの構造物の下方に敷設する土木用包装体であって、
網材で形成された袋体内部を横断するように、網材で形成された仕切部材により複数の小部屋に区画され、これら区画された小部屋のそれぞれに割栗石、砂利などの充填材が充填され、前記充填材が充填された前記袋体は閉じられていることを特徴とする土木用包装体。
【請求項2】
小部屋は略三角柱状または略四角柱状であって軸方向に長手形状であり、前記小部屋どうしは短手方向において隣り合っていることを特徴とする請求項1記載の土木用包装体。
【請求項3】
請求項1または2記載の土木用包装体を少なくとも2個以上連結して用いることができる土木用包装体であって、
袋体の一端部には係止部材が設けられ、前記袋体の前記一端部とは反対側の他端部には他の土木用包装体の係止部材に係止可能な被係止部材が設けられ、
隣接する土木用包装体どうしを面接触させて係止できるものであることを特徴とする土木用包装体。
【請求項4】
砂地等の河川や海岸に付設させる堤体などの構造物の下方に敷設する土木用包装体であって、
網材で形成された小袋の中に割栗石、砂利などの充填材が充填され、前記充填材が充填された前記小袋が閉じられたものを包装体とし、この包装体を複数個直列に連結して隣り合う前記包装体どうしが面状に接合されていることを特徴とする土木用包装体。
【請求項5】
包装体は略三角柱状または略四角柱状であって軸方向に長手形状であり、前記包装体どうしは短手方向において隣り合っていることを特徴とする請求項4記載の土木用包装体。
【請求項6】
請求項4または5記載の土木用包装体を少なくとも2個以上連結して用いることができる土木用包装体であって、
該土木用包装体の一端部には係止部材が設けられ、前記土木用包装体の前記一端部とは反対側の他端部には他の土木用包装体の係止部材に係止可能な被係止部材が設けられ、
隣接する土木用包装体どうしを面接触させて係止できるものであることを特徴とする土木用包装体。
【請求項7】
砂地等の河川や海岸に付設させる堤体などの構造物の下方に敷設され、請求項1〜6のいずれかに記載の土木用包装体を一個または複数個連結して用いる水底敷設物であって、
端部に位置する前記土木用包装体には端部包装体が接続され、この端部包装体は、網材で形成された外装部材と、この外装部材の内部に充填され、前記土木用包装体に充填されている充填材の粒径よりも大きな粒径の端部充填材とを有することを特徴とする水底敷設物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−90643(P2010−90643A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263296(P2008−263296)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(508305649)
【出願人】(508305007)
【Fターム(参考)】