説明

土木用袋体

【課題】筒状織物からなる土木用袋体に関し、袋体の端部を接合する接合部の耐圧力を向上させる。
【解決手段】土木用袋体13の第1接合部43は、筒状織物の端部42において3つ以上の襞を形成するように、当該筒状織物の端部42における複数対の縁部分45、45をそれぞれ閉じ合わせた状態で接合しており、複数対の縁部分45、45は、前記筒状織物の端部42が二重筒の状態となるように前記端部先端側が前記筒状織物の内側に折り返されてなる折り曲げ部分で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木作業において用いられ、継ぎ目の無い筒状織物の端部が縫合により閉じられて内部に注入材が注入される土木用袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プレロードシェル工法などの多くの各種土木作業において、継ぎ目の無い筒状織物の端部を縫合により閉じることで形成した袋体(土木用袋体)がよく用いられる。この土木用袋体は、その内部にコンクリート、モルタル、セメントミルク等の注入材を注入することで、各種土木作業における各種用途に応じて用いられる。このような土木用袋体としては、例えば、特許文献1に記載されたプレロードシェル工法に用いられる土木用袋体が知られている。この土木用袋体は、継ぎ目無しに織成された大径部分とその両端の小径部分とを備えており、この袋体の幅方向に横断する一様な縫い目で縫合されることで、両端部の小径部分が閉じられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−295598号公報(第4頁、第1−2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の土木用袋体では、特許文献1に記載された土木用袋体のように、両端部が、袋体の幅方向に横断する一様な縫い目で縫合されることで閉じられる。このため、土木用袋体に注入材を注入すると、その注入による圧力によって、縫合により閉じられている端部を剥離させる方向、即ち、縫い目を開く方向に力が作用することになる。従って、注入材の注入圧力が作用すると、その圧力が袋体を構成する基布の破断圧力よりもかなり小さい圧力であっても、縫い目を開く方向に作用する力によって、縫製糸が切れたり縫い目がほぐれたりしてしまう虞がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、筒状織物からなる土木用袋体に関し、袋体の端部を接合する接合部の耐圧力を向上させることができる土木用袋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の土木用袋体は、筒状織物からなる袋体に関する。
そして、本発明の土木用袋体は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有しており、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0007】
本発明の土木用袋体における第1の特徴は、前記筒状織物における少なくとも一方の端部において3つ以上の襞を形成するように、当該筒状織物の端部における複数対の縁部分をそれぞれ閉じ合わせた状態で接合している第1接合部を備えていることである。
【0008】
この構成によると、袋体の端部において3つ以上の襞を形成するように複数対の縁部分を閉じ合わせた状態で接合しているため、袋体端部が閉じられることで端部に形成される湾曲形状の部分における平均的な曲率半径を小さくすることができる(平均的な曲率を大きくすることができる)。このため、3つ以上の襞を設けることで端部に形成される各湾曲形状の部分に生じる応力を低減することができる。これにより、例えば注入材を注入した場合にその注入圧力が袋体を構成する基布の破断圧力に達するよりも極端に小さい圧力で接合部が破損してしまうこと(例えば、第1接合部が縫製によるものであれば、縫製糸が切れたり縫い目がほぐれたりしてしまうこと)を抑制することができる。従って、袋体の端部を接合する接合部の耐圧力を向上させることができる。
【0009】
本発明の土木用袋体における第2の特徴は、前記複数対の縁部分は、前記筒状織物の端部が二重筒の状態となるように前記端部先端側が前記筒状織物の内側に折り返されてなる折り曲げ部分で形成されていることである。
【0010】
この構成によると、二重筒の状態になっている複数対の縁部分が第1接合部にて接合されるため、複数対の縁部分をより強固に挟持するよう接合して拘束することができる。
【0011】
本発明の土木用袋体における第3の特徴は、前記筒状織物の端部における先端側の開口端を閉じ合わせた状態で接合している第2接合部を更に備え、前記第1接合部は、前記二重筒の内側に配置された前記第2接合部を覆う状態となるように前記複数対の縁部分をそれぞれ閉じ合わせた状態で接合していることである。
【0012】
この構成によると、第2接合部にて筒状織物の端部の先端側における開口端が閉じ合わされているため、袋体に注入材を注入した場合に、端部からの注入材の漏れをより確実に防止することができる。
【0013】
本発明の土木用袋体における第4の特徴は、前記3つ以上の襞は、放射状に配置されていることである。
【0014】
この構成によると、3つ以上の襞を形成するように複数対の縁部分を閉じ合わせる端部構造を容易に実現することができる。
【0015】
本発明の土木用袋体における第5の特徴は、前記3つ以上の襞は、点対称配置及び線対称位配置のうちの少なくともいずれか一方の配置となるように放射状に配置されていることである。
【0016】
この構成によると、放射状に配置する3つ以上の襞を点対称配置及び線対称配置の少なくともいずれか一方となるように配置するため、端部に形成される湾曲形状の部分における各曲率半径をほぼ均等化するように小さくすることができ、不規則に大きくなってしまう曲率半径が発生することを防止できる。
【0017】
本発明の土木用袋体における第6の特徴は、放射状に配置されている前記3つ以上の襞が集合する集合部の近傍に設けられ、当該襞が開く方向への前記複数対の縁部分の移動を拘束する拘束部材を更に備えていることである。
【0018】
この構成によると、拘束部材によって襞が開く方向の移動が拘束されるため、袋体に注入材を注入した場合にその際の袋体の端部を接合する接合部の耐圧力を更に向上させることができる。
【0019】
本発明の土木用袋体における第7の特徴は、前記拘束部材は、前記複数対の縁部分のそれぞれを閉じるように取り付けられる複数のボルト及びナットであることである。
【0020】
この構成によると、ボルト及びナットを取り付けるだけで複数対の縁部分が開かないように更に強固に拘束することができ、拘束部材を簡易な構成で実現できる。
【0021】
本発明の土木用袋体における第8の特徴は、前記拘束部材は、前記集合部を介して対向する位置にある一対の襞間部分を連結するように設けられる連結ベルトであることである。
【0022】
この構成によると、連結ベルトで襞間部分を連結するだけで襞が開かないように更に強固に拘束することができ、拘束部材を簡易な構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】継ぎ目の無い筒状織物を例示した斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る土木用袋体を説明するための模式図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る土木用袋体を説明するための模式図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る土木用袋体の一部斜視図である。
【図5】図4に示す土木用袋体を一方の端部側から見た図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る土木用袋体を一方の端部側から見た図である。
【図7】図6に示す土木用袋体の製造途中の状態における断面を示した模式図である。
【図8】図6に示す土木用袋体に対して適用される拘束部材を説明する図である。
【図9】図6に示す土木用袋体に対して適用される拘束部材を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。本発明の実施形態に係る袋体は、土木作業において用いられる土木用袋体であり、内部に注入材が注入される袋体を用いる各種の土木作業などにおいて広く適用することができるものである。例えば、プレロードシェル工法などの多くの各種土木作業において用いることができる。なお、本実施形態の土木用袋体の内部に注入される注入材としては、コンクリート、モルタル、セメントミルク等の各種注入材を広く用いることができる。
【0025】
また、本実施形態の土木用袋体は、例えば、継ぎ目の無い筒状織物の端部が縫合により閉じられることで袋体として構成されるものである。図1は、継ぎ目の無い筒状織物1(以下、筒状織物1という)を例示した斜視図である。図1に示す筒状織物1は、胴体部分2が同一径のまま延びるように織成されており、その両端部の各先端側における開口端3が閉じられていない状態のものである。本実施形態の土木用袋体は、この筒状織物1の端部を縫合により閉じることで構成される。なお、本発明は、縫製以外の手段(例えば、接着、溶着等)によって接合される袋体についても適用することができ、継ぎ目のある筒状織物であっても適用することができる。また、本実施形態は、同一径のまま延びるように織成されていない筒状織物に対しても適用することができる。例えば、胴体部分が大径で両端部分が小径となるように織成された異径筒状織物など各種の筒状織物に対して本実施形態を適用することができる。以下、本実施形態の土木用袋体について、第1乃至第4実施形態に分けて説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図2は、本発明の第1実施形態に係る土木用袋体11(以下、袋体11ともいう)を説明するための模式図である。なお、図2(a)は袋体11の製造途中の状態における断面を示しており、図2(b)は完成した状態における袋体11の断面を示している。図2(b)に示すように、袋体11は、筒状の胴体部分21と両端部における各端部22(図2では、一方の端部のみを図示)とを備えている。そして、袋体11の端部22には、第1縫製部23と第2縫製部24とが形成されている。
【0027】
袋体11は、筒状織物1(図1参照)の端部を縫合により閉じることで形成される(なお、縫合以外の手段、例えば接着や溶着などによって接合することも可能である)。この袋体11の製造においては、まず、図2(a)に示すように、第2縫製部24が形成される。そして、図2(b)に示すように、第2縫製部24を筒状織物1の内側に折り返すようにした後、図2(c)に示すように、第1縫製部23が形成される。なお、袋体11内に注入材を注入するための注入口(図示せず)は、例えば、胴体部分21の所定箇所に取り付けられることになる。
【0028】
第2縫製部24は、筒状織物1の端部における先端側の開口端3(図1参照)を閉じ合わせた状態で縫合することで形成される。例えば、図2(a)に示すように、筒状織物1の先端側の開口端3を閉じたまま一旦折り返した状態で、縫合されることになる。
【0029】
また、第1縫製部23は、端部22において対向する位置にある一対の縁部分25・25同士を互いに重ね合わせた状態で縫合することで形成される。この第1縫製部23により、一対の縁部分25・25の互いに離間する方向の移動が縫合により拘束されていることになる。そして、このように第1縫製部23を形成することにより、一対の縁部分25・25に対して互いに離間する方向に力が作用したときに第1縫製部23を形成している糸である縫製糸26に対してせん断方向の力が作用するように、一対の縁部分25・25が縫合により拘束されることになる。なお、一対の縁部分25・25は、図2(b)に示すように、筒状織物1の端部22が二重筒の状態となるように第2縫製部を胴体部分21の内側に折り返して形成されている。そして、その二重筒の内側に配置された第2縫製部24を覆う状態となるように一対の縁部分25・25の先端同士が互いに重ねられた状態で縫合されて、第1縫製部23が形成されている。
【0030】
以上説明した袋体11は、前述したように、各種土木作業において用いられ、例えば、図示しない注入口からセメントミルク、モルタルなどの各種注入材が注入されることで、その各種土木作業の用途に応じて用いられることになる。
【0031】
この土木用袋体11によると、注入材が注入されて一対の縁部分25・25に対して離間する方向の力が作用したときに、第1縫製部23を形成している縫製糸26に対しては、せん断方向の力が作用し、一対の縁部分25・25を剥離させる方向、即ち、縫い目を開く方向に力が作用することを大幅に低減することができる。このため、一対の縁部分25・25を拘束された状態のまま強固に保持することができ、注入材の注入圧力が袋体11を構成する基布の破断圧力に達するよりも小さい圧力で縫製糸26が切れたり縫い目がほぐれたりしてしまうことを抑制することができる。従って、注入材の注入の際における袋体11の端部22を縫合する縫製部の耐圧力を向上させることができる。
【0032】
また、この土木用袋体11によると、第2縫製部24にて筒状織物1の端部22の先端側における開口端3が閉じ合わされているため、端部22からの注入材の漏れをより確実に防止することができる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る土木用袋体12について説明する。図3は、第2実施形態に係る土木用袋体12(以下、袋体12ともいう)を説明するための模式図であって、袋体12の断面を示したものである。図3に示すように、袋体12は、筒状の胴体部分31と両端部における各端部32(図3では、一方の端部のみを図示)とを備えている。そして、袋体12の端部32には、第1縫製部33と第2縫製部34とが形成されている。
【0034】
第2縫製部34は、第1実施形態の袋体11の第2縫製部24と同様に形成される。即ち、筒状織物1の先端側の開口端3を閉じたまま一旦折り返した状態で、縫合することで形成される。また、第1縫製部33は、縫合部37と連結用布帛38とで構成されている。連結用布帛38は、端部32において対向する位置にある一対の縁部分35.35を連結する連結要素を構成している。そして、連結用布帛38の両端部分が、一対の縁部分35・35のそれぞれと重ねられた状態で縫合部37・37にて縫合されるようになっている。このように第1縫製部33を形成することにより、一対の縁部分35・35に対して互いに離間する方向に力が作用したときに第1縫製部33の縫合部37を形成している縫製糸36に対してせん断方向の力が作用するように、一対の縁部分35・35が拘束されることになる。
【0035】
なお、一対の縁部分35・35は、袋体11の場合と同様に、端部32が二重筒の状態となるように先端側が内側に折り曲げられてなる部分で形成されている。そして、その二重筒の内側に配置された第2縫製部34を覆う状態となるように一対の縁部分35・35が連結用布帛38の両端部分と重ねられた状態で縫合されて、第1縫製部33が形成されている。
【0036】
以上説明した袋体12も、袋体11と同様に土木作業において用いられ、例えば、図示しない注入口からセメントミルク、モルタルなどの各種注入材が注入されることで、その各種土木作業の用途に応じて用いられることになる。そして、この袋体12によっても、袋体11と同様の効果を奏することができる。
【0037】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る土木用袋体13について説明する。図4は、第3実施形態に係る土木用袋体13(以下、袋体13ともいう)の一部斜視図であり、図5は、袋体13を一方の端部側から見た図である。図4及び図5に示すように、袋体13は筒状の胴体部分41と両端部における各端部42(図4では一方の端部のみを図示)とを備えており、この袋体13の端部42には本実施形態の第1接合部を構成する縫製部43が形成されている。
【0038】
袋体13は、袋体11及び12と同様に、筒状織物1(図1参照)の端部を縫合により閉じることで形成される。即ち、縫製部43にて端部42が閉じられることで形成される。そして、注入材を注入するための注入口(図示せず)が胴体部分41の所定箇所などに適宜取り付けられる。
【0039】
また、縫製部43は、図4及び図5に示すように、端部42において4つの襞(ギャザー)44を形成するように設けられている。そして、筒状織物1の端部42における複数対(4対)の縁部分45・45同士を縫製糸46によりそれぞれ閉じ合わせた状態で縫合している。また、縫製部43を設けることで形成される4つの襞44は、点対称配置であるとともに線対称配置となるように放射状に配置されている。なお、放射状に配置されている4つの襞44が集合する集合部には、この集合部を十字状に縫い合わせている閉じ合わせ部47を設ける処理が施されている。
【0040】
以上説明した袋体13も、袋体11及び12と同様に土木作業において用いられ、例えば、図示しない注入口からセメントミルク、モルタルなどの各種注入材が注入されることで、その各種土木作業の用途に応じて用いられることになる。
【0041】
この土木用袋体13では、袋体13の端部42において4つの襞44を形成するように複数対の縁部分45・45を閉じ合わせた状態で縫合しているため、袋体13の端部42が閉じられることで端部42に形成される湾曲部48(図5参照)の平均的な曲率半径を小さくすることができる(平均的な曲率を大きくすることができる)。このため、4つの襞44を設けることで端部42に形成される各湾曲部48に生じる応力を低減することができる。これにより、注入材の注入圧力が袋体13を構成する基布の破断圧力に達するよりも小さい圧力で縫製糸46が切れたり縫い目がほぐれたりしてしまうことを抑制することができる。従って、注入材の注入の際における袋体の端部を縫合する縫製部の耐圧力を向上させることができる。
【0042】
3つ以上の襞を袋体の端部に形成しなかった場合、即ち、単純に袋体の開口端を閉じ合わせた場合は、袋体の端部に形成される湾曲部の曲率半径は、袋体の口径に依存した大きな半径となってしまう。しかし、3つ以上の襞を袋体の端部に形成することで、袋体の端部に形成される湾曲部の曲率半径を小さくすることができ、端部に作用する応力を低減することができる。なお、袋体の端部に形成される湾曲部に生じる応力は、薄肉円筒に生じる軸方向及び周方向応力と同様に考えることができる。即ち、湾曲部に生じる応力は、湾曲部の曲率半径と湾曲部に作用する内圧とにそれぞれほぼ比例するものと近似して考えることができる。従って、端部に3つ以上の襞を設けて、各湾曲部の曲率半径を小さくすることで、端部に生じる応力を低減することができる。
【0043】
また、土木用袋体13によると、放射状に配置する4つの襞44を点対称配置及び線対称配置となるように配置するため、端部42に形成される湾曲部48における各曲率半径をほぼ均等となるように小さくすることができ、局部的に曲率半径が大きくなることを防止できる。
【0044】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る土木用袋体14について説明する。図6は、第4実施形態に係る土木用袋体14(以下、袋体14ともいう)について、その一方の端部側から見た図であり、図7は、袋体14の製造途中の状態における断面を示した模式図である。図6及び図7に示すように、袋体14は筒状の胴体部分51と両端部における各端部52(図6及び図7では、一方の端部のみを図示)とを備えている。また、この袋体14の端部52には、本実施形態の第1接合部を構成する縫製部53と本実施形態の第2接合部を構成する縫製部59とが形成されている。
【0045】
袋体14は、筒状織物1(図1参照)の端部を縫合により閉じることで形成される。この袋体14の製造においては、まず、図7(a)に示すように、縫製部59が形成される。そして、図7(b)に示すように縫製部59を筒状織物1の内側に折り返すようにした状態で、図6に示すように縫製部53が形成される。なお、注入材を注入するための注入口(図示せず)が胴体部分41の所定箇所などに適宜取り付けられている。
【0046】
縫製部59は、筒状織物1の端部における先端側の開口端3(図1参照)を閉じ合わせた状態で縫合することで形成され、例えば、図7(a)に示すように、筒状織物1の開口端3を閉じたまま一旦折り返した状態で縫合される。また、縫製部53は、第3実施形態の袋体13の縫製部43と同様に、端部52において4つの襞(ギャザー)54を形成するように設けられる(図6参照)。この縫製部53は、筒状織物1の端部52における複数対(4対)の縁部分55・55同士を縫製糸56によりそれぞれ閉じ合わせた状態で縫合するように設けられている。また、縫製部53を設けることで形成される4つの襞54は、点対称配置であるとともに線対称配置となるように放射状に配置されている。
【0047】
なお、4対の縁部分55・55は、筒状織物1の端部52が二重筒となるように先端側が内側に折り返されて形成された折り曲げ部分からなる(図7(b)参照)。そして、その二重筒の内側に配置された縫製部59を覆う状態となるように複数対の縁部分55・55同士がそれぞれ閉じ合わされた状態で縫合されて、縫製部53が形成されている。
【0048】
以上説明した袋体14は、袋体11乃至13と同様に土木作業において用いられ、図示しない注入口からセメントミルク、モルタルなどの各種注入材が注入されることで、その各種土木作業の用途に応じて用いられることになる。そして、この袋体14は、袋体13と同様に、端部52において4つの(3つ以上の)襞54が形成されているため、湾曲部58(図6参照)における平均的な曲率半径を小さくすることができ、端部52に生じる応力を低減することができる。従って、注入材の注入の際における袋体の端部を縫合する縫製部の耐圧力を向上させることができる。
【0049】
また、この袋体14によると、縫製部59にて筒状織物1の先端側における開口端3が閉じ合わされているため、端部52からの注入材の漏れをより確実に防止することができる。
【0050】
また、袋体14においては、放射状に配置されている4つの襞54が集合する集合部の近傍に、襞54が開く方向における複数対の縁部分55・55の移動を拘束する拘束部材を更に設けることができる。
【0051】
図8は、上述の拘束部材として、複数対の縁部分55・55をそれぞれ閉じるように取り付けられる複数のボルト61及びナット62を設けた場合を例示した図であって、図5に対応する側面図として示したものである。このように、ボルト61及びナット62を取り付けるという簡易な構成だけで複数対の縁部分55・55が開かないように更に強固に拘束することができる。また、図9は、このような拘束部材として、前述の集合部を介して対向する位置にある一対の襞間部分64・64を連結する連結ベルト63を設けた場合を例示したものである。図8と同様に、図5に対応する平面図として示している。なお、図9では、連結ベルト63の両端部分が、襞間部分64と縫合されることで連結されている場合を例示している。このように、連結ベルト63で襞間部分64を連結するという簡易な構成だけで襞54が開かないように更に強固に拘束することができる。従って、図8及び図9に示すように、拘束部材を更に設けることで、襞54が開く方向の移動が拘束されて、注入材の注入の際における袋体14の端部52を縫合する縫製部の耐圧力を更に向上させることができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0053】
(1)第1及び第2実施形態において、先端側の開口端を閉じ合わせた第2縫製部は必ずしも設けられていなくてもよい。例えば、第1縫製部を形成した後に、端部において開口部分が残らないように、適宜閉じ合わせるものであってもよい。また、第1及び第2実施形態において、一対の縁部分は、端部が二重筒の状態となるように先端側が内側に折り返されて形成されているものでなくてもよい。
【0054】
(2)第2実施形態において、連結要素を構成する連結用布帛は、複数箇所でそれぞれ一対の縁部分を連結するように構成されているものであってもよい。また、布帛で形成されるものでなくてもよく、ベルト状の部材など種々の連結要素を用いることができる。
【0055】
(3)第3及び第4実施形態において、端部に形成される襞の数は、3つ以上であれば、いくつであってもよい。また、端部に形成される襞は、必ずしも放射状に配置されているものでなくてもよい。
【0056】
(4)第4実施形態において、拘束部材の例として、ボルト及びナットからなるものと連結ベルトからなるものとを説明したが、これ以外のもので構成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 筒状織物
13 土木用袋体
14 土木用袋体
42 端部
43 縫製部(第1接合部)
45 縁部分
52 端部
53 縫製部(第1接合部)
55 縁部分
59 縫製部(第2接合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状織物からなる土木用袋体であって、
前記筒状織物における少なくとも一方の端部において3つ以上の襞を形成するように、当該筒状織物の端部における複数対の縁部分をそれぞれ閉じ合わせた状態で接合している第1接合部を備えていることを特徴とする土木用袋体。
【請求項2】
前記複数対の縁部分は、前記筒状織物の端部が二重筒の状態となるように前記端部先端側が前記筒状織物の内側に折り返されてなる折り曲げ部分で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の土木用袋体。
【請求項3】
前記筒状織物の端部における先端側の開口端を閉じ合わせた状態で接合している第2接合部を更に備え、
前記第1接合部は、前記二重筒の内側に配置された前記第2接合部を覆う状態となるように前記複数対の縁部分をそれぞれ閉じ合わせた状態で接合していることを特徴とする請求項2に記載の土木用袋体。
【請求項4】
前記3つ以上の襞は、放射状に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の土木用袋体。
【請求項5】
前記3つ以上の襞は、点対称配置及び線対称配置のうちの少なくともいずれか一方の配置となるように放射状に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の土木用袋体。
【請求項6】
放射状に配置されている前記3つ以上の襞が集合する集合部の近傍に設けられ、当該襞が開く方向への前記複数対の縁部分の移動を拘束する拘束部材を更に備えていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の土木用袋体。
【請求項7】
前記拘束部材は、前記複数対の縁部分のそれぞれを閉じるように取り付けられる複数のボルト及びナットであることを特徴とする請求項6に記載の土木用袋体。
【請求項8】
前記拘束部材は、前記集合部を介して対向する位置にある一対の襞間部分を連結するように設けられる連結ベルトであることを特徴とする請求項6に記載の土木用袋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−159623(P2010−159623A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281322(P2009−281322)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【分割の表示】特願2004−289582(P2004−289582)の分割
【原出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】