説明

土木補強保水性シート

【課題】補強資材としての引張強度を維持しつつ、保水・排水機能を十分に有し、製造に手間がかからず、また、容易に敷設することができる土木補強保水性シートを提供すること。
【解決手段】第一層が、繊維太さ1,100〜11,120dtexの合成繊維を経緯に格子状に配列構成され、第二層が、短繊維不織布から構成され、第三層が、長繊維不織布から構成され、上記第一層・第二層・第三層が、繊維太さ33〜1,670dtexの合成繊維フィラメントまたは同等番手の合成繊維紡績糸を含む地編糸によって、綴り合わされて一体化された構成よりなる土木補強保水性シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤強化、道路舗装、透水性舗装、盛土の法面補強、軌道の道床などに使用される、補強資材としての土木補強保水性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、地盤強化用の補強資材としては、ネット状の樹脂成形品が多用されている。
しかしながら、この樹脂成形品では、補強機能はあるものの、排水機能がないため、現場において、別途、排水資材と組み合わせて敷設する必要が生じ、作業に手間がかかることとなっていた。
【0003】
そのため、特許文献1(特開平4−119139号公報)に記載されているような、補強資材としてのネットシートと排水資材としての不織布とを予め組み合せた土木用シートが、提案されている。
しかし、上記公報の土木用シートでは、不織布がネットシートに部分的に設けられるものであり、保水・排水機能が十分でない。また、製造時に不織布がずれる恐れがあり、製造に手間がかかってしまう。
【特許文献1】特開平4−119139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、補強資材としての引張強度を維持しつつ、保水機能や排水機能を十分に有し、製造に手間がかからず、また、容易に敷設することができる土木補強保水性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第一層が、繊維太さ1,100〜11,120dtexの合成繊維を経緯に格子状に配列構成され、第二層が、短繊維不織布から構成され、第三層が、長繊維不織布から構成され、上記第一層・第二層・第三層が、繊維太さ33〜1,670dtexの合成繊維フィラメントまたは同等番手の合成繊維紡績糸を含む地編糸によって、綴り合わされて一体化された構成よりなる土木補強保水性シートに関する。
ここで、上記第一層に用いられる合成繊維および地編糸に用いられる合成繊維フィラメントとしては、アラミド繊維が好ましい。
また、本発明の土木補強保水性シートは、第一層の格子間隔が2.8〜100mmで、かつ目付が5〜1,000g/m、第二層の目付が50〜1,000g/m、第三層の目付が30〜400g/mで、さらに第一層、第二層および第三層全体の目付が85〜2,400g/mであることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の土木補強保水性シートでは、第一層が補強資材としての役目を果す。
また、本発明土木補強保水性シートでは、第二層の短繊維不織布がシートの全面に配設されているため、十分な保水機能を有する。そして、第二層の短繊維不織布に保水された雨水は、第二層の不織布より長い繊維から構成されてシートの全面に配設される第三層の長繊維不織布のその長繊維を伝って、円滑に排水されることとなる。
さらに、本発明の土木補強保水性シートでは、第二層と第三層の不織布が、シートの全面に配置されるため、第一層との位置ずれを考慮することなく、地編糸で綴り合わせることができ、容易に製造することができる。
【0007】
さらに、本発明の土木補強保水性シートでは、第一層〜第三層を綴り合わせる地編糸が、繊維太さ33〜1,670dtexの合成繊維フィラメント、好ましくはアラミド繊維フィラメントまたは同等番手の合成繊維紡績糸を含んでいる。そのため、合成繊維フィラメントのうちのモノフィラメントを含む地編糸で綴り合せる場合には、そのモノフィラメントの折り目がつく程度の剛性により、また、合成繊維フィラメントのうちのマルチフィラメントを含む地編糸で綴り合せる場合には、第二層の短繊維不織布のけばがそのマルチフィラメントに食い込むことと両者の摩擦抵抗とにより、さらに、合成繊維紡績糸を含む地編糸で綴り合せる場合には、その合成繊維紡績糸のけばと第二層や第三層の不織布との摩擦抵抗によって、各層が強固に保持されるため、現場などでシートの不要な部分をカットするような場合でも、第一層〜第三層の各層がほずれ難く、品質低下を招く恐れが無い。
【0008】
さらに、本発明の土木補強保水性シートでは、第一層の合成繊維と地編糸との種々の組み合わせにより、シートが最適なドレープ性を有し、敷設面の凹凸に容易に追従することができる。
【0009】
したがって、本発明の土木補強保水性シートは、補強資材としての引張強度を維持しつつ、保水機能と排水機能とを十分に有し、製造に手間がかからず、また、容易に敷設することができる。
【0010】
さらに、本発明の土木補強保水性シートでは、シートの表裏に、繊維太さ1,100〜11,120dtexの太糸が格子状に突設されたり、繊維太さ33〜1,670dtexの地編糸が突設されることから、敷設された土中において、所定の摩擦抵抗を確保することができ、シートの表裏に配設された土とのずれを極力抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の土木補強保水性シート10は、図1に示すように、第一層11、第二層12、および、第三層13の三層構造から構成されている。
【0012】
第一層11は、補強資材としての役目を果すものであり、太さ1,100〜11,120dtex、好ましくは1,670〜5,010dtexのアラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維,ポリブチレンテレフタレート繊維などのポリエステル繊維、ポリエチレン繊維,ポリプロピレン繊維などのポリオレフィン繊維などの合成繊維や、炭素繊維、ガラス繊維などの無機繊維を使用した、経糸11aと緯糸11bとを、格子状に配置させて構成されている。糸と糸との間隔、すなわち、格子の間隔は、好ましくは2.8〜100mm、さらに好ましくは5〜15mmの間隔とする。この間隔は、狭過ぎれば、土との摩擦抵抗が減少し、広過ぎれば、引張強度が不足することとなるからである。
なお、第一層に用いられる繊維(経糸、緯糸)としては、強度、あるいは耐熱性や耐薬品性などの面から、アラミド繊維が好ましい。上記アラミド繊維の中でもパラ型アラミド繊維が好ましく例示される。パラ型アラミド繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタラミドや共重合体であるコポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミド繊維などを挙げることができる。特に、コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミド繊維を基材として用いた場合には、優れた引抜き特性を有するために他の繊維に比べ特に補強効果が優れている上、耐薬品性にも優れているため、長期にわたって高性能を保持することができる。さらに、この繊維は、耐熱性にも優れている。
なお、第一層の目付は、好ましくは5〜1,000g/m、さらに好ましくは100〜500g/mである。
【0013】
第二層12は、短繊維不織布から構成される。この短繊維不織布は、繊維太さが好ましくは0.33〜22dtex、さらに好ましくは0.67〜5.5dtexの、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維などのポリオレフィン繊維や、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維などのポリエステル繊維などの各種合成繊維からなる種々の短繊維を、好ましくは50〜1,000g/m、さらに好ましくは100〜500g/mの範囲で積層して、ニードルパンチを利用して形成したり、もしくは、接着剤や熱可塑性のバインダーなどを混入させて、型成形により形成したものを利用する。この第二層12の厚さは、シート10を敷設する箇所に対応させて、好ましくは1〜7mm、さらに好ましくは2〜5mmの範囲で適宜設定する。
【0014】
第三層13は、長繊維不織布から構成される。この長繊維不織布は、繊維太さが好ましくは0.33〜22dtex、さらに好ましくは0.67〜5.5dtexのポリエチレン繊維,ポリプロピレン繊維などのポリオレフィン繊維や、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維などのポリエステル繊維などの各種合成繊維の長繊維を、好ましくは30〜400g/m、さらに好ましくは50〜250g/mの範囲で積層して、ニードルパンチを利用して形成したり、もしくは、接着剤や熱融着などを利用し、型成形により形成したものを利用する。この第三層13の厚さは、薄いと、排水機能と強度とが低下し、厚いと、第三層13が硬くなって、後述する地編糸14で第一層11や第二層12と綴り合わす際の針が挿入できなくなるため、好ましくは0.5〜10mm、さらに好ましくは2〜7mmの範囲で適宜設定する。
【0015】
そして、これらの第一層11・第二層12・第三層13が、繊維太さ33〜1,670dtex、好ましくは55〜1,110dtexのアラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維,ポリブチレンテレフタレート繊維などのポリエステル繊維、ポリエチレン繊維,ポリプロピレン繊維などのポリオレフィン繊維などのモノフィラメントやマルチフィラメントの合成繊維フィラメント、または、同等番手のポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルなどの合成繊維紡績糸を含む地編糸14によって、綴り合わされて一体化されている。
第三層に用いられる合成繊維としては、上記と同様のアラミド繊維が好ましい。
【0016】
以上の第一層〜第三層全体の目付としては、好ましくは85〜2,400g/m2、さらに好ましくは250〜1250g/m2である。
【0017】
実施例の場合、地編糸14は、モノフィラメント14aとマルチフィラメント14bとから構成されている。そして、モノフィラメント14aは、図2の組織図の右側半分に示すように、ステッチする際、第一層11の緯糸11bと第二層12・第三層13とを綴り合わせるとともに、第二層12と第三層13との地押えように綴り合わせている。また、マルチフィラメント14bは、図2の左側半分に示すように、ステッチする際、第一層11の経糸aと第二層12・第三層13とを綴り合わせている。これらの地編糸14は、ラッセル編み機を利用し、第一層11・第二層12・第三層13を重ねて、ステッチしている。なお、このマルチフィラメント14bも、繊維太さ30〜1,500deのアラミド繊維、ポリエステル繊維などの合成繊維から構成されているが、モノフィラメント14aと同等番手でも、モノフィラメント14aより剛性が低くなっている。

【0018】
この実施例の土木補強保水性シート10では、第二層12の短繊維不織布がシート10の全面に配設されているため、十分な保水機能を有する。そして、第二層12の短繊維不織布に保水された雨水は、第二層12の不織布より長い繊維から構成されてシート10の全面に配設される第三層13の長繊維不織布のその長繊維を伝って、円滑に排水されることとなる。
【0019】
また、この土木補強保水性シート10では、第二層12と第三層13の不織布が、シート10の全面に配置されるため、第一層11との位置ずれを考慮することなく、各層を地編糸14で綴り合わせることができ、容易に製造することができる。
【0020】
さらに、この土木補強保水性シート10では、第一層〜第三層を綴り合わせる地編糸14(モノフィラメント14a)が、繊維太さ30〜1,500deとして折り目がつく程度の剛性を有し、各層が強固に保持されるため、現場などでシート10の不要な部分をカットするような場合でも、第一層〜第三層の各層がほずれ難く、品質低下を招く恐れが無い。
【0021】
さらに、この土木補強保水性シート10では、第一層11の合成繊維11a・11bと地編糸14との種々の組み合わせにより、シート10が最適なドレープ性を有し、敷設面の凹凸に容易に追従することができる。
【0022】
したがって、実施例の土木補強保水性シート10は、補強資材としての引張強度を維持し、保水・排水機能を十分に有し、製造に手間がかからず、また、容易に敷設することができる。ちなみに、実施例では、計算上、1m当り20t程度の引張強度を有することとなる。
【0023】
さらに、この土木補強保水性シート10では、シート10の表裏に、繊維太さ1,000〜10,000deの太糸11a・11bが格子状に突設されたり、繊維太さ30〜1,500deの地編糸14が突設されるため、敷設された土中において、所定の摩擦抵抗を確保することができ、シート10の表裏に配設された土とのずれを極力抑えることができる。
【0024】
なお、この実施例の土木補強保水性シート10では、地編糸14として、モノフィラメント14aと、モノフィラメント14aより剛性の低い通常のマルチフィラメント14bとを併用する場合を示したが、シート10のほずれ防止とドレープ性とを確保できれば、各層11・12・13を綴り合わせる地編糸14として、折り目がつく程度の剛性の高い合成繊維のモノフィラメント14aや合成樹脂を含浸させたマルチフィラメント、あるいは、剛性の低い通常のマルチフィラメント、さらには、合成繊維の紡績糸を、単独使用、もしくは、適宜、組み合せて使用しても良い。
【0025】
例えば、図1に示すように、経糸11aと各層11〜13、および、第二層12と第三層13を押える地押え糸14aを通常のマルチフィラメントとし、緯糸11bと各層11〜13を押える地編糸14bも通常のマルチフィラメントから構成しても良い。
【0026】
そして、地編糸14として、合成繊維フィラメントのうちのモノフィラメントを含む場合には、そのモノフィラメントの折り目がつく程度の剛性により、また、合成繊維フィラメントのうちのマルチフィラメントを含む場合には、第二層12の短繊維不織布のけばがそのマルチフィラメントに食い込むことと両者の摩擦抵抗とにより、さらに、合成繊維紡績糸を含む場合には、その合成繊維紡績糸のけばと第二層12や第三層13の不織布との摩擦抵抗によって、各層11〜13が強固に保持されるため、現場等でシートの不要な部分をカットするような場合でも、第一層〜第三層の各層がほずれ難く、品質低下を招く恐れが無い。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の土木補強保水性シートは、補強資材としての引張強度を維持しつつ、保水機能や排水機能を十分に有し、製造に手間がかからず、また、容易に敷設することができるので、地盤強化、道路舗装、透水性舗装、盛土の法面補強、軌道の道床などの補強資材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例を示す土木補強保水性シートの断面図である。
【図2】同実施例の地編糸の綴り合わせ方を示す組織図である。
【符号の説明】
【0029】
10 土木補強保水性シート
11 第一層
12 第二層
13 第三層
14 地編糸
14a モノフィラメント
14b マルチフィラメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一層が、繊維太さ1,100〜11,120dtexの合成繊維を経緯に格子状に配列構成され、第二層が、短繊維不織布から構成され、第三層が、長繊維不織布から構成され、上記第一層・第二層・第三層が、繊維太さ33〜1,670dtexの合成繊維フィラメントまたは同等番手の合成繊維紡績糸を含む地編糸によって、綴り合わされて一体化された構成よりなる土木補強保水性シート。
【請求項2】
第一層に用いられる合成繊維および地編糸に用いられる合成繊維フィラメントがアラミド繊維である請求項1記載の土木補強保水性シート。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−152634(P2006−152634A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343323(P2004−343323)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】