説明

土留め用コンクリートブロック型枠

【課題】生産効率と品質の均一性の改善された土留め用コンクリートブロックの型枠の提供。
【解決手段】土留め用コンクリートのブロックの型枠において、成型品の前壁板の前面側に相当する上面側型枠1と、下面側型枠2と側面側型枠3とで構成し、全型枠を180度以上の角度位置に回動し、かつ任意角度位置に固定できるように支軸5により支持する。当初は上面側を開放し水平状態に保持してコンクリートを注入し、硬化前の状態において型枠全体を回転させて、自重により空隙を解消して脱泡させた後、上部に発生した空間に補充注入を行う。この後上面型枠1を取り付け、当初より180度変角して硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宅地造成の境界壁工事等の擁壁構築工事の際に使用する土留め用コンクリートブロックを、角度位置を変えながら効率よく成形する型枠に関する。
[背景技術]
【0002】
宅地造成、道路建設等の擁壁構築工事に、前壁板の背後に傾斜底板を略L状に連結し、三角状の補強リブで支持した形状の土留め用コンクリートブロックが使用されているが、このコンクリートブロックの製造に一般的に広く使用されている型枠は、図9およぴ図10に例示する通り、成形品の前壁板10の前面を成形する上面側型枠1を水平状に設置し、上面側型枠1の下面側には成形品の補強リブ12を含む、前壁板10の背面側及び傾斜底板11の上面側を成形する下面側型枠2を設け、その一端側に、成形品の傾斜底板11の底面側を成形する側面側型枠3を連設し、下面側型枠2の一鉢側は側面側型枠3の下端に連結し、他端側は上面側型枠1の一端側に連結された構造であり、上側型枠1を上げて開放すると、全面がコンクリート注入口4となる。
【0003】
又、前記同様の注入口を構成し、型枠を、ある小角度範囲で傾けたり、小角度範囲で回動させながらコンクリートを打ち込むものもある。
[発明の開示]
[発明が解決しようとする課題]
【0004】
従来の型枠は、コンクリートの注入はすべて上面側のコンクリート注入口4から行っているが、この面は成形品の前壁板10の前面側となり、擁壁等の施工後においては、最大の露出面となるので、作業工数が多くかかる表面仕上げ加工が必要であり、生産能率を著しく低下させ、又、品質の均一性にも問題があった。
【0005】
本発明と同様な土留め用コンクリートブロックを成形し製造する型枠は、成形品の前壁板の前面側に相当する上面側型枠1の部分が、最終注入まで唯一のコンクリート注入口となるので、最も重要な前壁板の前面側の品質の不均一化を無くする為に作業能率が低下し、又、型枠には、コンクリート打ち込みの際の空隙の除去や脱泡手段も無く、成形品の品質向上の点でも問題があった。
【0006】
本発明は、コンクリートの当初の注入は従来と同様に、前壁板10を成形する上面側型枠1を水平状態に保持し、この状態で上面側型枠1を開放して従来と同様にコンクリートを注入し、次に、硬化前の状態の時、型枠全体を回転させて上面側型枠1内に注入したコンクリートを移動させ、その自重により空隙を解消して脱泡させた後、上部に発生した空間にコンクリートの補充注入を行う。この後、上面側型枠1を取り付け、更に回転して、当初の水平状態から180度変角させ、上下逆の水平状態位置に固定してコンクリートを硬化させる型枠である。
[課題を解決するための手段]
【0007】
本発明は、添付図面に示す通り、成形品の前壁板10の前面側等に相当する上面側型枠1と、中央部に補強リブ12を設けた前壁板10の背面側及び傾斜底板11の上面側を包含し成形品の背面側に相当する下面側型枠2と、成形品の傾斜底板11の底面側等に相当する側面側型枠3により構成し、重ね合わせた上面側型枠1と下面側型枠2の一端側に、側面側型枠3を嵌着して三型枠を連結する。側面側型枠3は、成形品の傾斜底板11の底面側に相当する底板底面用型枠3Aと、成形品の前壁板10の底面側に相当し、かつ、脱去する事により補充注入口6を構成する補充打込用型枠3Bに分割する。本発明に係る型枠は、この連結し組立た状態で、全型枠を180度以上回動可能にして支軸5により支持する。
【0008】
本発明は、上面側型枠1を水平状態に固定し、この状態でコンクリートを注入するために上面側型枠1を開放して、下面側型枠2の上側全面をコンクリート注入口4に形成し、又、回転した時、上部位置となる側面側型枠3の上面側型枠1側の一部を脱去してコククリートの補充注入口6に構成する。更に、当初の水平状態から180度変角した上下逆の水平状態で固定し、この状態でコンクリートを硬化するように構成した土留め用コンクリートブロック型枠である。
【0009】
又、施工時において、傾斜底板11の底面側にコンクリートを注入しやすくする為、成形品の傾斜底板11に複数の注入穴13を同時成形する場合は、図3及び図4に例示する通り、側面側型枠3の底板底面用型枠3Aに複数の注入穴用突起9を突設して置く。
[発明の効果]
【0010】
本発明に係る型枠は、型枠全体が回転及び固定可能に支持され、当初は、従来の型枠と同様に、成形品の前壁板の前面側に相当する上面側型枠を、開放して構成した開口上面をコンクリート注入口として、この広い面からコンクリートを注入するが、コンクリートの硬化前に回動して、側面側型枠が略水平状態で上部となる角度位置で、側面側型枠の一部を脱去して補充注入口とするので、既成の空間、、空隙や気泡を消滅、解消すると同時に、コンクリートの移動により発生する上部の空間を埋める事ができる。
【0011】
回動したこの補充注入口の角度位置は、面積が狭く、かつ、施工後に露出しないので表面仕上げ作業が簡略される。その後、硬化する前に更に回転させて、当初の水平状態から180度変角させ、上下逆になった水平状態の角度位置で固定する事により、内部のコンクリートを自重により上面側型枠に圧着させた状態で硬化させる。従って、最も重要な前壁板前面の表面仕上げ作業が省力化でき、空隙や気泡の無い高い品質の成形品を生産する事ができる。
【0012】
又、上面側型枠のコンクリート当接面に図柄等を彫刻した場合は、施工後において、最も面積が広く、かつ、露出表面となる前壁板の前面に、その彫刻を成形する事ができ、、品質を更に向上する事ができる。
[発明の実施するための最良の形態]
【0013】
本発明に係る型枠は、当初においては、従来の型枠と設置角度位置が同様であり、コンクリート注入口4は、施工後に最大の露出面となり、面積が最も広い前壁板10の前面側であるが、従来の型枠との相違点は、本発明の型枠が、回転可能に支軸5に支持され、型枠全体が回動するので、当初にコンクリートをコンクリート注入口4から注入した後、回動して側面側型枠3が上部となった角度位置を保持する。この状態で側面側型枠3の一部を脱去して、コンクリートを補充注入する為の補充注入口6に構成する。この補充注入口6からコンクリートを補充注入して、回動により発生した空間、空隙を埋める。その後、更に回動させて、当初の水平状態より180度変角した上下逆の水平状態に固定して、注入したコンクリートを自重により上面側型枠1に圧接させた状態て硬化させる。
【0014】
従って、当初の水平状態での注入の時に、表面に凹凸がある不均一の状態であっても、硬化前に、上面側型枠1を嵌着し固定して回動し、更に回動により発生した空間、空隙を補充注入により埋め、最終的に、当初より180度回転させて、最も表面仕上がりが大切である成形品の前壁板10の前面を成形する上面側型枠1の、内部に注入したコンクリートが未硬化状態の時、自重により圧接し、空間、空隙、気泡等を消滅させて硬化する。
[実施例]
【0015】
本発明を図1乃至図4に示す実施例について説明する。本発明は、図5に例示する通り、前壁板10の背後下部に傾斜底板11の端部を略L状に連結し、三角状の一辺を前壁板10の背面側に、他の一辺を傾斜底板11の上面側に連結した三角状の補強リブ12で支持した土留め用コンクリートブロックを成形する型枠である。成形品の前壁板10の前面側に相当する上面側型枠1と、成形品の補強リブ12を含む前壁板の背面側、及び傾斜底板11の上面側に相当する下面側型枠2と、成形品の傾斜底板11の底面側、及び前壁板10の底面側に相当する側面側型枠3により構成し、上面側型枠1と側面側型枠3は、着脱可能に組立てて一体化し、全型枠は、180度以上の角度位置に回動し、かつ、任意角度位置で固定できるように支軸5により支持する。支軸5は架台8に設けた軸受7により支持する。上面側型枠1は開放すると図2に示す通り、下面側型枠2の面が露出し、この開放部分全面をコンクリート注入口4とし、側面側型枠3の上面側型枠1側の脱去部分を補充注入口6に構成する。
【0016】
本発明に係る型枠を使用して所定のコンクリートブロックを成形するには、最終的には型枠全体を180度以上回転する事が必要であるが、図2に示す通り、水平状態の上面側型枠1を上げると、開放すると全面が開放され、その下が下面側型枠2であるから、先ずは、図6に点線図示する通り、上面側型枠1を開放した状態で、上面側より矢符Aの通りコンクリートを注入する。
【0017】
次に、支軸5に回転可能に支持されている型枠全体を、当初の水平状態から図7に例示する通り、側面側型枠3が上部になる角度位置に回転させ、一旦固定とた後、図7に点線図示した通り、この状態で、側面側型枠3の補充打込み用型枠3Bを脱去し、この除去部を補充注入口6としてコンクリートを注入し、空間、空隙を埋める。この角度位置は側面側型枠3が略水平状態であるから、側面側型枠3内のコンクリートの移動が無いだけでなく、下面側型枠1と上面側型枠2内に注入したコンクリートが、自重により下方へ移動して、空間、気泡を無くする効果がある。この後、補充打込み用型枠3Bを復元する。
【0018】
更に、注入したコンクリートが硬化する前に、型枠全体を180度回転させて、図8に示す通り上面側型枠1を上下逆の水平状態に固定して保持する。この状態は、下面側型枠2と上面側型枠1の中に注入したコンクリートが自重により上面側型枠1側に押し付けられて圧着するので成形されたコンクリートブロックの前壁板の前面(表面)は均一、かつ品質よく成形され、従来の如く注型時に表面仕上げする必要が無くなり、作業効率及び品質を著しく向上する事ができる。又、上面側型枠1の、前壁板10前面側が当接する面に、文字、図柄等の彫刻を設けてあれば、その彫刻、図柄が、成形されたコンクリートブロックの施工後に露出する前壁表面の成形され、美観を向上する。
【0019】
従って、本発明に係る型枠を使用するコンクリートブロックの成形は、当初、上面側型枠2を開放してコンクリートを注入し、次に側面側型枠3が略水平状態になる角度位置に回動し、補充打込み用型枠3Bを脱去してコンクリートを補充注入し、更に、上面側型枠2が上下逆になる略180度の角度位置に回転し、この位置で固定し硬化させるものである。 。
【0020】
図5は、本発明に係る型枠により成形される土留め用コンクリートブロックの一例であり、前壁板10と傾斜底板11は角度差を105度に設定し、補強リブ12により強固に連結した構造である。このコンクリートブロックの成形は、前記の通り、当初は前壁板10の前面側の矢符方向Aからコンクリートが注入され、次に回動して前壁板10の底面側の矢符B方向から補充注入されて成形される。施工後に露出するのは前壁板10の前面側であり、成形時において、最終注入の補充注入口となった前壁板10の底面は施工後には露出しない。傾斜底板11には、施工の際に傾斜底板11の下側にコンクリートを注入し易くする為、前壁板10との連結部分に近接する位置に、複数の注入用穴13を設ける。
【0021】
成形品の傾斜底板11に複数の注入用穴13を穿設する場合は、図3及び図4に例示する通り、傾斜底板11の注入用穴13位置に対応する、側面側型枠3の底板底面型枠3Aに、その厚さに見合った複数の注入穴用突起9を突設する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るコンクリートブロック型枠の実施例斜視図である。
【図2】図1の実施例において、上面側型枠を解放した状態の斜視図である。
【図3】架台を省略し、補強リブ部を外した位置の縦断面図である。
【図4】架台を省略し、補強リブ部位置の縦断面図である。
【図5】本発明により成形されるコンクリトブロックの一例を示す斜視図である。
【図6】本発明を使用してコンクリートブロックを成形する工程において、水平状態の上面側型枠を開放してコンクリートを注入する状態を示す概略図である。
【図7】本発明を使用してコンクリートブロックを成形する工程において、側面側型枠が略水平状態になる角度位置で、コンクリートを補充注入する状態を示す概略図である。
【図8】本発明を使用してコンクリートブロックを成形する工程において、上面側型枠を図6に示す当初の水平状態から180度回転し、上面側型枠が上下逆の水平状態に固定された状態の概略図である。
【図9】従来の土留め用コンクリートブロック型枠の一例を示す縦断面図である。
【図10】図9に示す従来の型枠の縦断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1. 上面側型枠
2. 下面側型枠
3. 側面側型枠
3A. 底板底面用型枠
3B. 補充打込み用型枠
4. コンクリート注入口
5. 支軸
6. 補充注入口
7. 軸受
8. 架台
9. 注入穴用突起
10. 前壁板起
11. 傾斜底板
12. 補強リブ
13. 注入用穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前壁板の下部背後に傾斜底板の端部を連結して略L状に構成し、三角状の一辺を前壁板の背面側に、他の一辺を傾斜底板の上面側に連結した三角状の補強リブを設けた土留め用コンクリートブロックの型枠において、成形品の前壁板の前面側に相当する上面側型枠と、成形品の補強リブを含む前壁板の背面側及び傾斜底板の上面側に相当する下面側型枠と、成形品の傾斜底板の底面側及び前壁板の底面側に相当する側面側型枠により構成し、上面側型枠と側面側型枠は、着脱可能に組立てて一体化し、全型枠は、180度以上の角度位置に回動し、かつ任意角度位置で固定できるように支軸により支持し、上面側型枠の開放部分全面をコンクリート注入口とし、側面側型枠の上面側型枠側の脱去部分を補充注入口に構成した事を特徴とする土め用コンクリートブロック型枠。
【請求項2】
側面側型枠は、成形品の傾斜底板の底面側に相当する底板底面用型枠と、成形品の前壁板の底面側に相当し、かつ脱去により、補充打込み口を構成する補充打込み用型枠に分割した事を特徴とする請求項1に記載の土留め用コンクリートブロック型枠。
【請求項3】
側面側型枠の底板底面用型枠に、成形品の傾斜底板に穿設する注入用穴を成形する複数の注入穴用突起9を突設した事を特徴とする請求項2に記載の土留め用コンクリートブロック型枠。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate