土留部材建込用掘削部材および土留部材建込工法
【課題】この発明は、土留部材をスムーズに建て込むことができ、土留部材の建て込みに起因する地盤沈下を防止することを目的とする。
【解決手段】この発明の土留部材建込用掘削部材は、ロッド21と、らせん状羽根21と、最先端部に設けられた第1吐出口24と、らせん状羽根の外周部に横向きに設けられた複数の第2吐出口26とを有し、ロッド内部には第1吐出口につながる第1流体通路25と第2吐出口につながる第2流体通路27が設けられており、らせん状羽根は、上側より長さ方向に沿って徐々に径が大きくなる第1領域22aと、第1領域に続く径が一定の第2領域22bと、第2領域に続き長さ方向に沿って徐々に径が小さくなる第3領域22cとを有し、第2領域においてループが3周以上形成されていることを特徴とする。
【解決手段】この発明の土留部材建込用掘削部材は、ロッド21と、らせん状羽根21と、最先端部に設けられた第1吐出口24と、らせん状羽根の外周部に横向きに設けられた複数の第2吐出口26とを有し、ロッド内部には第1吐出口につながる第1流体通路25と第2吐出口につながる第2流体通路27が設けられており、らせん状羽根は、上側より長さ方向に沿って徐々に径が大きくなる第1領域22aと、第1領域に続く径が一定の第2領域22bと、第2領域に続き長さ方向に沿って徐々に径が小さくなる第3領域22cとを有し、第2領域においてループが3周以上形成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートパイル(鋼矢板)などで土留めを行いながら地中に水道管、ガス管、側溝、カルバートボックス等を埋設する土留工事の施工に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に水道管、ガス管、カルバートボックス、下水管、側溝等を埋設する工事においては、まず溝の両壁を構成すべき位置に簡易矢板、鉄板、シートパイル等の土留部材を設置して溝壁が崩れるのを防止した上で、地面を掘削して溝を形成し、溝内での水道管等の敷設作業が行われる。敷設作業が終了すると土留部材が引き抜かれる。こうして回収された土留め部材は次の工事で再利用されることになる。しかし、溝内に砂や土を盛った後に土留め部材を引く抜くことにより、地中には土留部材の体積分の空隙が生じることになる。この空隙を埋めるために周囲の土砂が移動し、地盤沈下などさまざまな問題が生じうることを本発明の発明者らは特許文献1および特許文献2にて指摘するとともに、これを防止する土留工法を開示した。この他、特許文献3には、鋼矢板の引抜き時に土砂を落下させて空隙を埋めることが記載されている。特許文献4および特許文献5には「地盤圧密剤」を注して空洞を埋めることが、特許文献6には、「充填材」を注入することが記載されている。さらに、特許文献7には、硬化剤を注入することが記載されている。
【0003】
また、硬い地盤の場所では、オーガーで地中を削孔しながらシートパイル等の土留部材を設置する技術が広く使われている。このオーガーによる土留部材建込方法について図面に基づいて説明する。図11は土留部材建込装置の一例を示す正面図である。土留部材建込装置1は無限軌道3で移動する作業台車2を有する。この作業台車2には長いリーダ4と、リーダ4に沿って上下動するスライド部材5が設けられている。そして、このスライド部材5に油圧ユニット6、旋回装置7、チャック8、押し込み油圧装置9が設けられている。
【0004】
旋回装置7にはオーガースクリュー10が接続される。また、このオーガースクリュー10を囲周するようにケーシング11が設けられる。このケーシング11はスライド部材5の下部に取り付けられるが、回転はしない。
【0005】
図12はケーシング11の先端部を模式的に示す縦断面図、図13は同横断面図である。オーガースクリュー10は、長い軸体12を有し、この軸体12のほぼ全長に渡ってらせん状羽根13が設けられている。ケーシング11は長い筒状の部材であり、オーガースクリュー10を全長に渡って囲周している。ケーシング11にはいくつかの穴14が所定の間隔で設けられている。
【0006】
この作業台車2を土留め部材を建て込むべき位置に移動させる。チャックにシートパイル(鋼矢板)などの土留部材15を取り付け、リーダ4を垂直に立てた状態にする。このとき、スライド部材5はリーダ4の上端部付近にある。シートパイル15は断面が略コの字の形状であるが、この溝の中にケーシング11が入るような位置関係になっている。
【0007】
シートパイル15の下端付近には当たり部17が設けられている。一方、ケーシング11の下端付近には突起部材18が設けられている。当たり部17の上に突起部材18が接している。
【0008】
旋回装置8によりオーガースクリュー10が地中に進入していく方向に回転させる。この回転によりオーガースクリュー10は土砂を切削しながら、下へ進行していく。掘削時には、オーガースクリュー10で土をかきまぜて、ケーシング11内に取り込んでいく。このオーガースクリュー10の進行に合わせてケーシング11も下降する。すると、ケーシング11の下端付近の突起部材18がシートパイル15の当たり部17を下向きに押し、シートパイル15も下へ進行する。
【0009】
こうしてシートパイル15を所望の深さに建て込んだら、旋回装置8を逆方向に回転させる。これによって、オーガースクリュー10は逆回転しながら上昇する。ケーシング11もオーガースクリュー10とともに上昇する。スライド部材がリーダ4の上端部付近に戻ったとき、ケーシング11とオーガースクリュー10は地上に引き抜かれる。一方、シートパイル15は地中に残され、1本のシートパイル15の建て込みが完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3940735号特許公報
【特許文献2】特開2008−101373号
【特許文献3】特開昭64−58713号
【特許文献4】特開昭57−108311号
【特許文献5】特開昭57−108312号
【特許文献6】特開昭49−49404号
【特許文献7】特開2006−291701号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
オーガーによる土留部材の建て込み方法は、固い地盤でも土留部材を短時間で建て込むことができる工法であり、広く実施されつつある。しかし、この従来の工法において、土留め部材の建て込み時に地中に空隙や土圧の弱い箇所が生じ、これにより施工地の周囲において地盤沈下が生じうることが判明した。
【0012】
オーガースクリュー10によって削孔する際に、切削された土砂はケーシング11内部を上昇する。こうして、大量の土砂が地下より持ち上げられる。ケーシング11の上部にはこれらの土砂がたまっていく。その後、オーガースクリュー10とケーシング11の引き抜きにおいてはオーガースクリュー10が逆回転し、ケーシング11内部の土砂は地中に戻される。したがって、空隙が生じるとは考えられてこなかった。
【0013】
しかし、オーガースクリュー10の削孔によって持ち上げられる土砂は大量であり、この土砂をすべてケーシング11の内部に残したままでは、抵抗が大きくなり、オーガースクリュー10の回転を継続できなくなる。そこで、ケーシング11にはその長さ方向に沿って多数の穴14が設けられており、土砂をケーシング11の外に排出できるようになしている。こうして、施工場所の地上においても、この穴14より多くの土砂が排出される。このようにケーシング11の外に排出された土砂はオーガースクリュー10の引き抜き時において、地中に戻ることはない。したがって、ケーシング11の引き抜き跡においてその分だけ土砂が減少することになる。土留め部材15が地中に打ち込まれるので、その体積分だけの土砂が増えたのと同様なことになるが、この増加分によっても失われた土砂量を補うことはできない。したがって、その不足分だけ、地中に空隙が残ることとなる。土留め部材の建て込み作業の終了後に、その空隙を埋めるように周囲の土砂が移動し、地盤沈下が発生する。
【0014】
さらに、ケーシング11の引き抜き後だけでなく、ケーシング11を地中に挿入していく際においても地盤沈下が発生させるような空隙が形成される場合があることも判明した。オーガースクリュー10で削孔するとき、オーガースクリュー10で土をかきまぜて、周囲の土までもケーシング11内に取り込んでいく。これによって地盤沈下が発生する。オーガースクリュー10の回転によってケーシング11内の土砂は転圧され、地中部分の穴からも土砂がケーシング11の外に押し出される。この土砂は転圧によって圧縮されて硬くなっている。こうして移動した土砂量は土留部材15の打ち込みによる体積増加分によっても補い切れないため、地盤沈下の原因となる空隙が生じることになる。
【0015】
特許文献1〜7には、土留部材の引抜き跡の空隙によって生じる地盤沈下等の悪影響を防止に関連した土留工法が記載されている。しかし、土留部材の建て込みに起因する地盤沈下の防止については言及されていない。
【0016】
この発明は、硬い地盤においても効率的に施工でき、土留部材の建て込みに起因する地盤沈下を防止できる土留工法を提供することを目的とする。さらに、土留部材の建て込み中に土留部材が地中で曲がって進行することを防止し、スムーズに建て込むことができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の課題を解決するため、この発明の土留部材建込用掘削部材は、ロッドと、ロッドの先端部に設けられたらせん状羽根と、最先端部に設けられた第1吐出口と、らせん状羽根の外周部に横向きに設けられた複数の第2吐出口とを有し、ロッド内部には第1吐出口につながる第1流体通路と第2吐出口につながる第2流体通路が設けられており、らせん状羽根は、上側より長さ方向に沿って徐々に径が大きくなる第1領域と、第1領域に続く径が一定の第2領域と、第2領域に続き長さ方向に沿って徐々に径が小さくなる第3領域とを有し、第2領域においてループが3周以上形成されていることを特徴とする。さらに、らせん状羽根の表面で先端部に向いた側には爪が設けられており、その反対方向に面した側には爪が設けられていないことが好ましい。
【0018】
この発明の土留部材建込工法は上述の土留部材建込用掘削部材を使用するであり、土留部材建込用掘削部材の先端部付近に接続部材を設け、この接続部材を土留部材の下端部に接続し、第2吐出口から流体を横方向に吐出させるととも土留部材建込工事用掘削部材を回転させて掘り進める土留部材を土中に建て込み、土留部材建込用掘削部材を逆回転させて土留部材建込用掘削部材および接続部材を地上に引き上げることを特徴とする。第1吐出口から空気を下方向に吐出させながら掘り進めることが好ましい。さらに、土留部材の下端よりも上部において、らせん状羽の径の最大の部分が2周分以上存在するように、土留部材を取り付けることが好ましい。
【0019】
また、土留部材の下端に尖端部を設けることにより、硬い地盤においても、土留部材をスムーズに建て込むことができる。土留部材が略コの字の断面形状を有し、その側端部には土留部材同士の接続のためのセクションが設けられている場合、そのセクションの下に円錐状の尖端を有する尖端部材を取り付けることがきできる。円錐状の尖端を有する尖端部材を片側のセクションのみに取り付け、尖端部材が取り付けられていないセクションを先に建て込んだ土留部材のセクションに接続して建て込んでいくことがきできる。
【発明の効果】
【0020】
この発明は、硬い地盤においての土留部材建て込みを効率的に行えるという効果を有する。オーガーを用いた土留部材建込用掘削部材による削孔に起因する空隙の発生または土留部材建て込み工事後の地盤沈下を防止することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】土留部材建込装置の一例を示す正面図である。
【図2】土留部材建込用掘削部材の先端部を模式的に示す縦断面図である。
【図3】同横断面図である。
【図4】スイベルを示す断面図である。
【図5】ロッドとスイベルの接続部材を示す断面図である。
【図6】爪を示す斜視図である。
【図7】尖端部材の例を示す正面図である。
【図8】同底面図である。
【図9】土留部材の接続を示す概念図である。
【図10】尖端部材の別の例を示す斜視図である。
【図11】従来の土留部材建込装置の一例を示す正面図である。
【図12】従来のケーシングの先端部を模式的に示す縦断面図である。
【図13】同横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。この実施例において使用する土留部材建込装置を図1に示す。土留部材建込用掘削部材としてはオーガースクリューではなく、この土留部材立て込みに最適な、特別な装置を使用している。図2は、この土留部材建込装置(以下、単に「掘削部材」という)を示す一部断面正面図、図3は同横断面図である。
【0023】
土留部材建込装置1は、無限軌道3によって走行する作業台車2を備えている。この作業台車2にはリーダ4と、リーダ4に沿って昇降するスライド部材5が設けられている。これらは、図11に示したオーガースクリューを有する土留部材建込装置と共通する。そして、掘削部材20が、この発明に特有のものである。したがって、従来の土留部材建込装置の資材の大部分を活用することができ、少ない投資でこの発明を導入することができる。
【0024】
掘削部材20は、軸体とらせん羽根を有する構造である点ではオーガースクリューと共通する。しかし、掘削部材20のらせん羽根22はロッド21(軸体)の先端部のみ設けられており、ロッド21(軸体)の上部には設けられていない。
【0025】
最先端部にはビット23と第1吐出口24が設けられている。また、ロッド21の中心部には上端より流体ロッド内部を貫通して第1吐出口24につながる第1流体通路25が形成されている。
【0026】
掘削部材20のらせん状羽根22は、先端部側より長さ方向に沿って徐々に径が大きくなる第1領域22aと、第1領域22aに続く径が一定の第2領域22bと、第2領域22bに続き長さ方向に沿って徐々に径が小さくなる第3領域22cとを有する。すなわち、第2領域22bにおいて羽根の径が最大になる。この第2領域22bにおいてループが3周以上形成されている。したがって、軸に垂直な方向から掘削部材20を見たときに、らせん状羽根22が横方向に最も突き出す部分が4段以上現れる箇所がある。たとえば図2において、4つの点x1、x2,x3、x4がらせん状羽根22が最も突出した場所である。また、第3領域22cにおいて、羽根の先端のある位置P1とそこからループ一周分進んだ位置P1と結ぶ線P1−P2は軸線に対してほぼ45°の角度になっている。
【0027】
らせん状羽根の表面で先端部に向いた側には長方形の板状の爪30が設けられている。図6は爪を示す斜視図である。爪30は、ロッド21(軸体)を中心とする円周に接する方向に、すなわち、爪30の板厚の方向が半径方向になるように設けられている。この方向で取付けることにより、土砂を円滑かつ効果的に切削する。爪30の長方形の形状のうち、一つの角30aが面取りされている。この面取りは、図4に示すように角を直線で切り落とすのでもよいし、また、丸みをつけるのでもよい。この面取りされた角30aは、らせん状羽根22の回転方向にあわせて向けられる。本例では、掘り進む際は正回転方向に回転するが、らせん状羽根22の下面に設けられた爪30はこの回転方向の逆側に面取りされた角30aを向けて取り付けられる。
【0028】
このように向けることにより、掘り進めるときはらせん状羽根22の下面に設けられた爪6が鋭く土壌にくい込みながら土壌を効果的に撹拌する。引き上げるときはらせん状羽根22は逆回転し、土壌を滑らかに後方へ送り、こぶし程度の大きさの石が混ざっていても噛み込みにくくなっている。
【0029】
一方、らせん状羽根22の表面で上側(掘削部材の先端部とは反対方向)に面した側には爪が設けられていない。土留部材を建て込んだ後に掘削部材を引き上げる場合に、積極的に土砂を切削・撹拌する必要は特にない。したがって、らせん状羽根22の上面には爪がないほうが、小石をかみ込むのを防止できて有利である。
【0030】
このらせん状羽根22で径が最大の部分の外周部に横向きには、複数の第2吐出口26が設けられている。ここでは、径が最大の部分のうち、最下段か、あるいは下から2段目の外周部に2基のノズルが第2吐出口として互いに反対方向に設けられている。そして、ロッド21の内部には、この第2吐出口26につながる第2流体通路27も設けられている。
【0031】
この掘削部材20はスイベル31およびレデューサ32を介して旋回装置8に接続される。図4はスイベルを示す断面図、図5はレデューサを示す断面図である。すなわち、レデューサ32はロッド21とスイベル31をつなぐ接続部材である。このレデューサ32も円柱状の部材であるが、二重管構造になっており、内部に第1流体通路32aと第2流体通路32bが設けられており、上部のスイベルよりこの第1流体通路32aと第2流体通路32bを介して、ロッド21の第1流体通路25と第2流体通路27に流体を送り込むようになっている。また、外周にはOリング等のパッキン部材29が設けられている。
【0032】
ケーシング33は中空の円筒状であり、その内周はロッド21の外周より若干大きい。したがって、ロッド21をケーシング33の中に挿入した状態では、ロッド21の外周面とケーシング33の内周面の間には流体通路となる隙間が形成される。
【0033】
スイベル31は三重管構造になっていて、3つの流体通路を有する。そのうちの2つは、それぞれレデューサ32の第1流体通路32aと第2流体通路32bに連絡している。さらに、もう一つの流体通路は、ロッド21の外周面とケーシング33の内周面の間に形成される流体通路に流体を供給するようになっている。
【0034】
ケーシング33の先端付近には2本のアーム34が外向きに取り付けられており、このアームの先端には棒状部材35が下向きに設けられている。
【0035】
ついで、この掘削部材20を使用した土留工法について説明する。土留部材としてはH型鋼なども使用できるが、ここでは略コの字の形状の断面を有するシートパイル15の例について説明する。このシートパイル15の側端部には土留部材同士の接続のためのセクションが設けられている。この例のシートパイル15の幅Wは500mm、高さHは200mmである。
【0036】
シートパイル15の先端付近には、折り曲がり部の内側に梁36が溶接によって取り付けられている。この梁36とシートパイルの折り曲がり部によって三角形状の空間が形成される。
【0037】
シートパイル15の先端に、尖端部材40を設けることが好ましい。図7は尖端部材の例を示す正面図で、図8はその底面図である。尖端部材40は基部40aが円柱状であり、尖端部40bは円錐状になっている。基部40aの直径はシートパイル15のセクションの大きさに合わせて選択すればよく、ここでは40mmである。また、基部の高さは15mmである。尖端部40aの直径は40mm、高さは25mm以上40以下の範囲であることが好ましく、ここでは40mmである。
【0038】
この尖端部材40は、シートパイル15の先端でセクションの下の位置に、溶接で取り付けられる。基部40aが溶接箇所となり、シートパイル15の下端と接する部分において、2箇所を溶接する。最初に建て込むシートパイルにおいては、両方のセクションに尖端部材40を取り付けてもよいが、2本目以降のシートパイルにおいては、片側のセクションにのみ尖端部材40を取り付ける。図9は土留部材の接続を示す概念図である。2本目であるシートパイル15bにおいては、符号15b1で示す側のセクションには尖端部材40を取り付けず、符号15b2で示す側のセクションのみに尖端部材40を取り付ける。そして、この尖端部材40が取り付けられていない側15b1のセクションを先に建て込んだシートパイル15aのセクションに接続し、その状態で建て込んでいく。もし、符号15b1で示す側に尖端部材を取り付けてしまえば、セクションを先に建て込んだシートパイル15aのセクションに接続できなくなるからである。
【0039】
シートパールを地中に打ち込んでいくとき、先に建て込んだシートパイル15aに接続された側は、そのシートパイル15aのセクションがガイドの役割を果たし、これに導かれて真直ぐに進行する。しかし、反対側においては、従来の工法ではセクション(符号15b2)の部分に土砂の抵抗が大きく加わり、それによってセクションを変形させるような力がかかっていた。しかし、この例の工法においては、反対側のセクションに設けられた尖端部材40が土砂にくい込み、シートパイルの下降をスムーズに導く。したがって、小さな押し込み力でも迅速かつスムーズにシートパイルを挿入することができる。シートパイルはこねられたりすることなく、真直ぐに進行し、セクション部にかかる荷重も小さい。したがって、シートパイルの寿命を延ばすことができ、再使用できる回数も向上し、コストを下げるとともに、資源の有効活用や環境への負担減少に資するものである。
【0040】
図10は尖端部材の別の例を示す斜視図である。直方体状の基部と、くさび状の尖端部を有する。この尖端部材を、シートパイルのコの字状の三辺のいくつかに、あるいは全てに溶接で取り付ける。図8の例の尖端部材と同様に、尖端部が土砂に食い込んで、シートパイルがスムーズに真直ぐ進行するのを助ける。また、溶接ではなく、尖端部がこのようにくさび状に形成されたシートパイルを使用することも可能である。
【0041】
この例においては、ケーシング33の外周の直径は216mm、内周の直径は200mmである。また、掘削部材20のロッド21の直径は190mm、らせん状羽根22の最大径は440mmである。したがって、ケーシング11の内周面とロッド21の外周面の間には5mm程度の隙間が形成される。
【0042】
ケーシング33と掘削部材20は一部がシートパイル15のコの字状の断面の溝の中に入るように配置される。そして、らせん状羽根22の最大径の部分において、らせん状羽根22の先端部はシートパイル15にほとんど接するほどに近接している。ケーシング33の先端の棒状部材35(接続部材)を、梁36とシートパイルの折り曲がり部によって形成される三角形の中に挿入する。
【0043】
土留部材15の下端よりも上部において、らせん状羽22の径の最大の部分が2周分以上存在するように、土留部材15を取り付けることが好ましい。ここでは、2周分としている。したがって、土留部材の下端よりさらに下に、らせん状羽の径の最大の部分が1周分以上の長さで突き出す。このとき、第2吐出口26は、シートパイルの下端よりも下に位置する。
【0044】
旋回装置を作動させ、らせん状羽根22が地中を掘り進む方向に回転させる。スライド部材5を下降させて、掘削部材20、ケーシング33、シートパイル15を地中に送り込む。また、レデューサ32を介して、空気または水、あるいはその両方をロッド21の第1流体通路25に送り込む。水を使用する場合、水圧力を3kg/cm2〜140kg/cm2かける。空気の場合は7kg/cm2の圧力をかける。また、ケーシング33の上部より空気または水を供給し、内周面とロッド21の外周面の間に形成された流体通路にも送り込む。さらに、第2流体通路27にも流体を送り込む。水を使用する場合、水圧力を180kg/cm2〜400kg/cm2かけて、60?〜120?/分の水量で高圧水として送り込む。
【0045】
掘削部材20の先端の第1吐出口24より空気または水を吐出するとともに、らせん状羽根22を回転させることによって、土砂を効果的に切削しながら掘り進める。ここで、らせん状羽根22の第3領域22cの部分はシートパイル15の先端よりも下に出ており、シートパイル15の先にある土砂を切削し、シートパイル15の進行を容易にしている。
【0046】
さらに、らせん状羽根22の外縁部に設けられた第2吐出口26より、高圧水を横方向に噴出することで、シートパイルの進行方向にある土砂を強力に切削する。この例では第2吐出口として2基のノズルが設けられているので、ロッドが1回転する間に、2回の高圧水が土砂を切り開く。水を横方向に飛ばすことによって、らせん状羽根22が直接届かないところの土砂まで切削するので、シートパイル15の進行がきわめてスムーズになる。
【0047】
また、ケーシング33の内周面とロッド21の外周面の間に空気または水を流しているので、土がこの間に入り込むことはなく、ジャミングは発生しない。こうして、掘削部材20とケーシング33は下降していく。ケーシング33の先端の棒状部材35は、梁36とシートパイルの折り曲がり部によって形成される三角形の中に挿入されているので、シートパイル15はふれることなく真直ぐに地中に建て込まれていく。このケーシング11の先端の棒状部材35によって、打ち込み中にケーシング33とシートパイル15は強固に接続されている。この掘削部材20は、らせん状羽根22の最大径部分のループが3周以上形成されていることにより、土砂を効果的に取り込みながら地中を進んでいくので、地中に空隙を作らず、地盤沈下の原因を発生させない。
【0048】
シートパイル15を必要な深さまで建て込んだら、旋回装置8を逆転させ、らせん状羽根22を逆方向に回転する。すると、掘削部材20は上昇を始める。この例では、たとえば22〜25rpmの回転数でらせん状羽根22を回転させ、2分間で1m上昇する速度で引き上げている。この掘削部材20とともにケーシング33も上昇する。ケーシング33の先端の棒状部材35は、梁36とシートパイルの折り曲がり部によって形成される三角形から引抜かれ、シートパイル15とケーシング33は分離する。シートパイル15は建て込まれた深さで取り残され、掘削部材20とケーシング33のみが上昇する。
【0049】
この掘削部材20は、地中を進行するときに、その体積分の土だけを後方に送る。掘り進むときは、上方の土砂を下方に強く取り込みながら進行するので、施工前の土砂はほぼ元の状態に戻る。そのため、地盤沈下の原因となる地中の空隙はほとんど発生しない。
【0050】
掘削部材20とケーシング33の引き上げ時においても、ケーシング33の内周面とロッド21の外周面の間に空気または水を供給し続ける。このように引き上げ完了まで空気または水を供給し続けることによっても、ジャミングが防止される。
【0051】
掘削部材20とケーシング33を地上まで引き上げたら、そのシートパイルの建て込みは完了する。作業台車2を次のシートパイルの建て込み場所に移動させ、同様の作業を繰り返す。先のシートパイルに接続させる側とは反対のセクションにのみ尖端部材40を取り付けて、建て込みを行う。順次、この作業を繰り返し、必要なシートパイルを建て込んでいく。
【0052】
この掘削部材20を用いると、引き上げ時において、20トンもの重量がある作業台車を持ち上げることもできるほど土砂の取り込み力が強い。地中に空隙を作らない土留工法の実施に最良のものである。
【0053】
この発明の土留部材建込用掘削部材および土留部材建込工は、地中に水道管やガス管等を埋設する工事の施工などシートパイル等の土留部材により土留めを行いながら行う工事について広く利用できるものである。土留部材の建込作業においても、地中に空隙を残さないので、空隙に起因する地中の土壌の移動や地下水の水路の変化に伴う地盤状態の変動を発生させなることがなく、安全で環境への影響が少ない土留工事が実現できる。らせん状羽根と横方向のノズルを有する掘削部材によって削孔しながら土留部材を建て込むので、地盤の硬いところでも迅速に施工できる。既に普及している設備のほとんどを活用するので、新たな設備投資が少なく、導入しやすい工法である。
【0054】
なお、建て込むシートパイルとして、注入材を導入するための注入管がシートパイルの長さ方向に沿って設けられたものを使用することが好ましい。建て込んだシートパイルは、いずれ撤去されるが、その撤去の際に、この注入管を通して注入材を地中へ注入することができる。この注入管をすべての土留部材(シートパイル)に取り付けることは、必ずしも必要ではない。注入管付きのシートパイル同士の間に注入管なしのシートパイルのシートパイルを複数本入れて建て込んでもよい。この場合、注入管付きのシートパイルの割合は、その土壌や注入材の種類などの条件に合わせて、その注入材が到達する距離によって適宜設定できる。例えば、注入管付きのシートパイル同士の間に注入管なしのシートパイルを2本建て込むことができる。撤去時において最後に引抜くシートパイルには注入管付きのものを使用する。
【0055】
シートパイルの撤去について説明する。水道管やガス管等を埋設する工事が終了すれば、シートパイルを撤去することになる。しかし、従来の工法のように、単にシートパイルを引き上げるだけでは、引き抜いた跡に、空隙が発生する。これを放置すると、周囲の土砂が移動し、地盤沈下や地下水の流れの変動の原因となる。そこで、シートパイルを引き上げながら地中に注入材を注入することによって、地中の空隙を防止する。注入管のない通常のシートパイルが建て込まれている場合には、引き抜きに先立って注入管をシートパイルに沿って打ち込み、この注入管より注入材を注入しながら、シートパイルを引き抜く。上述のように注入管付きのシートパイルが建て込まれている場合は、その注入管より注入材を注入しながら、引き抜く。このような土留工法ついては、すでに特許文献1,2,7で詳細に説明されている。
【0056】
ここで、使用する注入材の例について説明する。シートパイルの引抜き跡を迅速に充填するためには、硬化剤としては2液を混合するゲルタイムの短いものが好ましい。したがって、注入管は独立した2系統の流体通路を有するものを使用する。瞬結性の注入材の例について説明する。非水ガラス系無機懸濁型の製品名YMS20三興コロイド化学株式会社)を使用する。これは、硬化剤と促進剤の組み合わせになっていて、硬化剤は炭酸ナトリウムとアルミン酸ナトリウムを主成分とし、促進剤は水酸化カルシウムを主成分とする。
【0057】
水156リットル、高炉セメントB種125Kg、YMS20の促進剤8Kgを混合したものをA液とする。一方、水197リットルと、YMS20の硬化剤20Kgを混合したものをB液とする。このA液とB液を1対1で使用することにより、20℃でのゲルタイムが15〜25秒、4週強度0.7N/mm2の注入材が得られる。これらの硬化剤は、重金属を含まず、毒物や劇物も含まない安全性の高い無公害薬剤である。
【0058】
シートパイルの引き抜きは、建て込みの逆の順序で行う。すなわち、最後に建て込んだシートパイルから引き抜いていき、最初に建て込んだシートパイルが最後に引き抜かれる。
【0059】
引き抜かれたシートパイルより、注入管や尖端部材を取り外して回収する。これらは、再利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1.土留め部材建て込み装置
2.作業台車
4.リーダ
5.スライド部材
8.旋回装置
9.チャック
10.オーガースクリュー
11.ケーシング
12.軸体
13.らせん状羽根
15.土留め部材(シートパイル)
20.土留め部材立て込み工事用掘削部材(掘削部材)
21.ロッド(軸体)
22.らせん状羽根
24.第1吐出口
25.第1流体通路
26.第2吐出口
27.第2流体通路
30.爪
31.スイベル
32.レデューサ(接続部材)
33.ケーシング
40.尖端部材
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートパイル(鋼矢板)などで土留めを行いながら地中に水道管、ガス管、側溝、カルバートボックス等を埋設する土留工事の施工に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に水道管、ガス管、カルバートボックス、下水管、側溝等を埋設する工事においては、まず溝の両壁を構成すべき位置に簡易矢板、鉄板、シートパイル等の土留部材を設置して溝壁が崩れるのを防止した上で、地面を掘削して溝を形成し、溝内での水道管等の敷設作業が行われる。敷設作業が終了すると土留部材が引き抜かれる。こうして回収された土留め部材は次の工事で再利用されることになる。しかし、溝内に砂や土を盛った後に土留め部材を引く抜くことにより、地中には土留部材の体積分の空隙が生じることになる。この空隙を埋めるために周囲の土砂が移動し、地盤沈下などさまざまな問題が生じうることを本発明の発明者らは特許文献1および特許文献2にて指摘するとともに、これを防止する土留工法を開示した。この他、特許文献3には、鋼矢板の引抜き時に土砂を落下させて空隙を埋めることが記載されている。特許文献4および特許文献5には「地盤圧密剤」を注して空洞を埋めることが、特許文献6には、「充填材」を注入することが記載されている。さらに、特許文献7には、硬化剤を注入することが記載されている。
【0003】
また、硬い地盤の場所では、オーガーで地中を削孔しながらシートパイル等の土留部材を設置する技術が広く使われている。このオーガーによる土留部材建込方法について図面に基づいて説明する。図11は土留部材建込装置の一例を示す正面図である。土留部材建込装置1は無限軌道3で移動する作業台車2を有する。この作業台車2には長いリーダ4と、リーダ4に沿って上下動するスライド部材5が設けられている。そして、このスライド部材5に油圧ユニット6、旋回装置7、チャック8、押し込み油圧装置9が設けられている。
【0004】
旋回装置7にはオーガースクリュー10が接続される。また、このオーガースクリュー10を囲周するようにケーシング11が設けられる。このケーシング11はスライド部材5の下部に取り付けられるが、回転はしない。
【0005】
図12はケーシング11の先端部を模式的に示す縦断面図、図13は同横断面図である。オーガースクリュー10は、長い軸体12を有し、この軸体12のほぼ全長に渡ってらせん状羽根13が設けられている。ケーシング11は長い筒状の部材であり、オーガースクリュー10を全長に渡って囲周している。ケーシング11にはいくつかの穴14が所定の間隔で設けられている。
【0006】
この作業台車2を土留め部材を建て込むべき位置に移動させる。チャックにシートパイル(鋼矢板)などの土留部材15を取り付け、リーダ4を垂直に立てた状態にする。このとき、スライド部材5はリーダ4の上端部付近にある。シートパイル15は断面が略コの字の形状であるが、この溝の中にケーシング11が入るような位置関係になっている。
【0007】
シートパイル15の下端付近には当たり部17が設けられている。一方、ケーシング11の下端付近には突起部材18が設けられている。当たり部17の上に突起部材18が接している。
【0008】
旋回装置8によりオーガースクリュー10が地中に進入していく方向に回転させる。この回転によりオーガースクリュー10は土砂を切削しながら、下へ進行していく。掘削時には、オーガースクリュー10で土をかきまぜて、ケーシング11内に取り込んでいく。このオーガースクリュー10の進行に合わせてケーシング11も下降する。すると、ケーシング11の下端付近の突起部材18がシートパイル15の当たり部17を下向きに押し、シートパイル15も下へ進行する。
【0009】
こうしてシートパイル15を所望の深さに建て込んだら、旋回装置8を逆方向に回転させる。これによって、オーガースクリュー10は逆回転しながら上昇する。ケーシング11もオーガースクリュー10とともに上昇する。スライド部材がリーダ4の上端部付近に戻ったとき、ケーシング11とオーガースクリュー10は地上に引き抜かれる。一方、シートパイル15は地中に残され、1本のシートパイル15の建て込みが完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3940735号特許公報
【特許文献2】特開2008−101373号
【特許文献3】特開昭64−58713号
【特許文献4】特開昭57−108311号
【特許文献5】特開昭57−108312号
【特許文献6】特開昭49−49404号
【特許文献7】特開2006−291701号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
オーガーによる土留部材の建て込み方法は、固い地盤でも土留部材を短時間で建て込むことができる工法であり、広く実施されつつある。しかし、この従来の工法において、土留め部材の建て込み時に地中に空隙や土圧の弱い箇所が生じ、これにより施工地の周囲において地盤沈下が生じうることが判明した。
【0012】
オーガースクリュー10によって削孔する際に、切削された土砂はケーシング11内部を上昇する。こうして、大量の土砂が地下より持ち上げられる。ケーシング11の上部にはこれらの土砂がたまっていく。その後、オーガースクリュー10とケーシング11の引き抜きにおいてはオーガースクリュー10が逆回転し、ケーシング11内部の土砂は地中に戻される。したがって、空隙が生じるとは考えられてこなかった。
【0013】
しかし、オーガースクリュー10の削孔によって持ち上げられる土砂は大量であり、この土砂をすべてケーシング11の内部に残したままでは、抵抗が大きくなり、オーガースクリュー10の回転を継続できなくなる。そこで、ケーシング11にはその長さ方向に沿って多数の穴14が設けられており、土砂をケーシング11の外に排出できるようになしている。こうして、施工場所の地上においても、この穴14より多くの土砂が排出される。このようにケーシング11の外に排出された土砂はオーガースクリュー10の引き抜き時において、地中に戻ることはない。したがって、ケーシング11の引き抜き跡においてその分だけ土砂が減少することになる。土留め部材15が地中に打ち込まれるので、その体積分だけの土砂が増えたのと同様なことになるが、この増加分によっても失われた土砂量を補うことはできない。したがって、その不足分だけ、地中に空隙が残ることとなる。土留め部材の建て込み作業の終了後に、その空隙を埋めるように周囲の土砂が移動し、地盤沈下が発生する。
【0014】
さらに、ケーシング11の引き抜き後だけでなく、ケーシング11を地中に挿入していく際においても地盤沈下が発生させるような空隙が形成される場合があることも判明した。オーガースクリュー10で削孔するとき、オーガースクリュー10で土をかきまぜて、周囲の土までもケーシング11内に取り込んでいく。これによって地盤沈下が発生する。オーガースクリュー10の回転によってケーシング11内の土砂は転圧され、地中部分の穴からも土砂がケーシング11の外に押し出される。この土砂は転圧によって圧縮されて硬くなっている。こうして移動した土砂量は土留部材15の打ち込みによる体積増加分によっても補い切れないため、地盤沈下の原因となる空隙が生じることになる。
【0015】
特許文献1〜7には、土留部材の引抜き跡の空隙によって生じる地盤沈下等の悪影響を防止に関連した土留工法が記載されている。しかし、土留部材の建て込みに起因する地盤沈下の防止については言及されていない。
【0016】
この発明は、硬い地盤においても効率的に施工でき、土留部材の建て込みに起因する地盤沈下を防止できる土留工法を提供することを目的とする。さらに、土留部材の建て込み中に土留部材が地中で曲がって進行することを防止し、スムーズに建て込むことができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の課題を解決するため、この発明の土留部材建込用掘削部材は、ロッドと、ロッドの先端部に設けられたらせん状羽根と、最先端部に設けられた第1吐出口と、らせん状羽根の外周部に横向きに設けられた複数の第2吐出口とを有し、ロッド内部には第1吐出口につながる第1流体通路と第2吐出口につながる第2流体通路が設けられており、らせん状羽根は、上側より長さ方向に沿って徐々に径が大きくなる第1領域と、第1領域に続く径が一定の第2領域と、第2領域に続き長さ方向に沿って徐々に径が小さくなる第3領域とを有し、第2領域においてループが3周以上形成されていることを特徴とする。さらに、らせん状羽根の表面で先端部に向いた側には爪が設けられており、その反対方向に面した側には爪が設けられていないことが好ましい。
【0018】
この発明の土留部材建込工法は上述の土留部材建込用掘削部材を使用するであり、土留部材建込用掘削部材の先端部付近に接続部材を設け、この接続部材を土留部材の下端部に接続し、第2吐出口から流体を横方向に吐出させるととも土留部材建込工事用掘削部材を回転させて掘り進める土留部材を土中に建て込み、土留部材建込用掘削部材を逆回転させて土留部材建込用掘削部材および接続部材を地上に引き上げることを特徴とする。第1吐出口から空気を下方向に吐出させながら掘り進めることが好ましい。さらに、土留部材の下端よりも上部において、らせん状羽の径の最大の部分が2周分以上存在するように、土留部材を取り付けることが好ましい。
【0019】
また、土留部材の下端に尖端部を設けることにより、硬い地盤においても、土留部材をスムーズに建て込むことができる。土留部材が略コの字の断面形状を有し、その側端部には土留部材同士の接続のためのセクションが設けられている場合、そのセクションの下に円錐状の尖端を有する尖端部材を取り付けることがきできる。円錐状の尖端を有する尖端部材を片側のセクションのみに取り付け、尖端部材が取り付けられていないセクションを先に建て込んだ土留部材のセクションに接続して建て込んでいくことがきできる。
【発明の効果】
【0020】
この発明は、硬い地盤においての土留部材建て込みを効率的に行えるという効果を有する。オーガーを用いた土留部材建込用掘削部材による削孔に起因する空隙の発生または土留部材建て込み工事後の地盤沈下を防止することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】土留部材建込装置の一例を示す正面図である。
【図2】土留部材建込用掘削部材の先端部を模式的に示す縦断面図である。
【図3】同横断面図である。
【図4】スイベルを示す断面図である。
【図5】ロッドとスイベルの接続部材を示す断面図である。
【図6】爪を示す斜視図である。
【図7】尖端部材の例を示す正面図である。
【図8】同底面図である。
【図9】土留部材の接続を示す概念図である。
【図10】尖端部材の別の例を示す斜視図である。
【図11】従来の土留部材建込装置の一例を示す正面図である。
【図12】従来のケーシングの先端部を模式的に示す縦断面図である。
【図13】同横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。この実施例において使用する土留部材建込装置を図1に示す。土留部材建込用掘削部材としてはオーガースクリューではなく、この土留部材立て込みに最適な、特別な装置を使用している。図2は、この土留部材建込装置(以下、単に「掘削部材」という)を示す一部断面正面図、図3は同横断面図である。
【0023】
土留部材建込装置1は、無限軌道3によって走行する作業台車2を備えている。この作業台車2にはリーダ4と、リーダ4に沿って昇降するスライド部材5が設けられている。これらは、図11に示したオーガースクリューを有する土留部材建込装置と共通する。そして、掘削部材20が、この発明に特有のものである。したがって、従来の土留部材建込装置の資材の大部分を活用することができ、少ない投資でこの発明を導入することができる。
【0024】
掘削部材20は、軸体とらせん羽根を有する構造である点ではオーガースクリューと共通する。しかし、掘削部材20のらせん羽根22はロッド21(軸体)の先端部のみ設けられており、ロッド21(軸体)の上部には設けられていない。
【0025】
最先端部にはビット23と第1吐出口24が設けられている。また、ロッド21の中心部には上端より流体ロッド内部を貫通して第1吐出口24につながる第1流体通路25が形成されている。
【0026】
掘削部材20のらせん状羽根22は、先端部側より長さ方向に沿って徐々に径が大きくなる第1領域22aと、第1領域22aに続く径が一定の第2領域22bと、第2領域22bに続き長さ方向に沿って徐々に径が小さくなる第3領域22cとを有する。すなわち、第2領域22bにおいて羽根の径が最大になる。この第2領域22bにおいてループが3周以上形成されている。したがって、軸に垂直な方向から掘削部材20を見たときに、らせん状羽根22が横方向に最も突き出す部分が4段以上現れる箇所がある。たとえば図2において、4つの点x1、x2,x3、x4がらせん状羽根22が最も突出した場所である。また、第3領域22cにおいて、羽根の先端のある位置P1とそこからループ一周分進んだ位置P1と結ぶ線P1−P2は軸線に対してほぼ45°の角度になっている。
【0027】
らせん状羽根の表面で先端部に向いた側には長方形の板状の爪30が設けられている。図6は爪を示す斜視図である。爪30は、ロッド21(軸体)を中心とする円周に接する方向に、すなわち、爪30の板厚の方向が半径方向になるように設けられている。この方向で取付けることにより、土砂を円滑かつ効果的に切削する。爪30の長方形の形状のうち、一つの角30aが面取りされている。この面取りは、図4に示すように角を直線で切り落とすのでもよいし、また、丸みをつけるのでもよい。この面取りされた角30aは、らせん状羽根22の回転方向にあわせて向けられる。本例では、掘り進む際は正回転方向に回転するが、らせん状羽根22の下面に設けられた爪30はこの回転方向の逆側に面取りされた角30aを向けて取り付けられる。
【0028】
このように向けることにより、掘り進めるときはらせん状羽根22の下面に設けられた爪6が鋭く土壌にくい込みながら土壌を効果的に撹拌する。引き上げるときはらせん状羽根22は逆回転し、土壌を滑らかに後方へ送り、こぶし程度の大きさの石が混ざっていても噛み込みにくくなっている。
【0029】
一方、らせん状羽根22の表面で上側(掘削部材の先端部とは反対方向)に面した側には爪が設けられていない。土留部材を建て込んだ後に掘削部材を引き上げる場合に、積極的に土砂を切削・撹拌する必要は特にない。したがって、らせん状羽根22の上面には爪がないほうが、小石をかみ込むのを防止できて有利である。
【0030】
このらせん状羽根22で径が最大の部分の外周部に横向きには、複数の第2吐出口26が設けられている。ここでは、径が最大の部分のうち、最下段か、あるいは下から2段目の外周部に2基のノズルが第2吐出口として互いに反対方向に設けられている。そして、ロッド21の内部には、この第2吐出口26につながる第2流体通路27も設けられている。
【0031】
この掘削部材20はスイベル31およびレデューサ32を介して旋回装置8に接続される。図4はスイベルを示す断面図、図5はレデューサを示す断面図である。すなわち、レデューサ32はロッド21とスイベル31をつなぐ接続部材である。このレデューサ32も円柱状の部材であるが、二重管構造になっており、内部に第1流体通路32aと第2流体通路32bが設けられており、上部のスイベルよりこの第1流体通路32aと第2流体通路32bを介して、ロッド21の第1流体通路25と第2流体通路27に流体を送り込むようになっている。また、外周にはOリング等のパッキン部材29が設けられている。
【0032】
ケーシング33は中空の円筒状であり、その内周はロッド21の外周より若干大きい。したがって、ロッド21をケーシング33の中に挿入した状態では、ロッド21の外周面とケーシング33の内周面の間には流体通路となる隙間が形成される。
【0033】
スイベル31は三重管構造になっていて、3つの流体通路を有する。そのうちの2つは、それぞれレデューサ32の第1流体通路32aと第2流体通路32bに連絡している。さらに、もう一つの流体通路は、ロッド21の外周面とケーシング33の内周面の間に形成される流体通路に流体を供給するようになっている。
【0034】
ケーシング33の先端付近には2本のアーム34が外向きに取り付けられており、このアームの先端には棒状部材35が下向きに設けられている。
【0035】
ついで、この掘削部材20を使用した土留工法について説明する。土留部材としてはH型鋼なども使用できるが、ここでは略コの字の形状の断面を有するシートパイル15の例について説明する。このシートパイル15の側端部には土留部材同士の接続のためのセクションが設けられている。この例のシートパイル15の幅Wは500mm、高さHは200mmである。
【0036】
シートパイル15の先端付近には、折り曲がり部の内側に梁36が溶接によって取り付けられている。この梁36とシートパイルの折り曲がり部によって三角形状の空間が形成される。
【0037】
シートパイル15の先端に、尖端部材40を設けることが好ましい。図7は尖端部材の例を示す正面図で、図8はその底面図である。尖端部材40は基部40aが円柱状であり、尖端部40bは円錐状になっている。基部40aの直径はシートパイル15のセクションの大きさに合わせて選択すればよく、ここでは40mmである。また、基部の高さは15mmである。尖端部40aの直径は40mm、高さは25mm以上40以下の範囲であることが好ましく、ここでは40mmである。
【0038】
この尖端部材40は、シートパイル15の先端でセクションの下の位置に、溶接で取り付けられる。基部40aが溶接箇所となり、シートパイル15の下端と接する部分において、2箇所を溶接する。最初に建て込むシートパイルにおいては、両方のセクションに尖端部材40を取り付けてもよいが、2本目以降のシートパイルにおいては、片側のセクションにのみ尖端部材40を取り付ける。図9は土留部材の接続を示す概念図である。2本目であるシートパイル15bにおいては、符号15b1で示す側のセクションには尖端部材40を取り付けず、符号15b2で示す側のセクションのみに尖端部材40を取り付ける。そして、この尖端部材40が取り付けられていない側15b1のセクションを先に建て込んだシートパイル15aのセクションに接続し、その状態で建て込んでいく。もし、符号15b1で示す側に尖端部材を取り付けてしまえば、セクションを先に建て込んだシートパイル15aのセクションに接続できなくなるからである。
【0039】
シートパールを地中に打ち込んでいくとき、先に建て込んだシートパイル15aに接続された側は、そのシートパイル15aのセクションがガイドの役割を果たし、これに導かれて真直ぐに進行する。しかし、反対側においては、従来の工法ではセクション(符号15b2)の部分に土砂の抵抗が大きく加わり、それによってセクションを変形させるような力がかかっていた。しかし、この例の工法においては、反対側のセクションに設けられた尖端部材40が土砂にくい込み、シートパイルの下降をスムーズに導く。したがって、小さな押し込み力でも迅速かつスムーズにシートパイルを挿入することができる。シートパイルはこねられたりすることなく、真直ぐに進行し、セクション部にかかる荷重も小さい。したがって、シートパイルの寿命を延ばすことができ、再使用できる回数も向上し、コストを下げるとともに、資源の有効活用や環境への負担減少に資するものである。
【0040】
図10は尖端部材の別の例を示す斜視図である。直方体状の基部と、くさび状の尖端部を有する。この尖端部材を、シートパイルのコの字状の三辺のいくつかに、あるいは全てに溶接で取り付ける。図8の例の尖端部材と同様に、尖端部が土砂に食い込んで、シートパイルがスムーズに真直ぐ進行するのを助ける。また、溶接ではなく、尖端部がこのようにくさび状に形成されたシートパイルを使用することも可能である。
【0041】
この例においては、ケーシング33の外周の直径は216mm、内周の直径は200mmである。また、掘削部材20のロッド21の直径は190mm、らせん状羽根22の最大径は440mmである。したがって、ケーシング11の内周面とロッド21の外周面の間には5mm程度の隙間が形成される。
【0042】
ケーシング33と掘削部材20は一部がシートパイル15のコの字状の断面の溝の中に入るように配置される。そして、らせん状羽根22の最大径の部分において、らせん状羽根22の先端部はシートパイル15にほとんど接するほどに近接している。ケーシング33の先端の棒状部材35(接続部材)を、梁36とシートパイルの折り曲がり部によって形成される三角形の中に挿入する。
【0043】
土留部材15の下端よりも上部において、らせん状羽22の径の最大の部分が2周分以上存在するように、土留部材15を取り付けることが好ましい。ここでは、2周分としている。したがって、土留部材の下端よりさらに下に、らせん状羽の径の最大の部分が1周分以上の長さで突き出す。このとき、第2吐出口26は、シートパイルの下端よりも下に位置する。
【0044】
旋回装置を作動させ、らせん状羽根22が地中を掘り進む方向に回転させる。スライド部材5を下降させて、掘削部材20、ケーシング33、シートパイル15を地中に送り込む。また、レデューサ32を介して、空気または水、あるいはその両方をロッド21の第1流体通路25に送り込む。水を使用する場合、水圧力を3kg/cm2〜140kg/cm2かける。空気の場合は7kg/cm2の圧力をかける。また、ケーシング33の上部より空気または水を供給し、内周面とロッド21の外周面の間に形成された流体通路にも送り込む。さらに、第2流体通路27にも流体を送り込む。水を使用する場合、水圧力を180kg/cm2〜400kg/cm2かけて、60?〜120?/分の水量で高圧水として送り込む。
【0045】
掘削部材20の先端の第1吐出口24より空気または水を吐出するとともに、らせん状羽根22を回転させることによって、土砂を効果的に切削しながら掘り進める。ここで、らせん状羽根22の第3領域22cの部分はシートパイル15の先端よりも下に出ており、シートパイル15の先にある土砂を切削し、シートパイル15の進行を容易にしている。
【0046】
さらに、らせん状羽根22の外縁部に設けられた第2吐出口26より、高圧水を横方向に噴出することで、シートパイルの進行方向にある土砂を強力に切削する。この例では第2吐出口として2基のノズルが設けられているので、ロッドが1回転する間に、2回の高圧水が土砂を切り開く。水を横方向に飛ばすことによって、らせん状羽根22が直接届かないところの土砂まで切削するので、シートパイル15の進行がきわめてスムーズになる。
【0047】
また、ケーシング33の内周面とロッド21の外周面の間に空気または水を流しているので、土がこの間に入り込むことはなく、ジャミングは発生しない。こうして、掘削部材20とケーシング33は下降していく。ケーシング33の先端の棒状部材35は、梁36とシートパイルの折り曲がり部によって形成される三角形の中に挿入されているので、シートパイル15はふれることなく真直ぐに地中に建て込まれていく。このケーシング11の先端の棒状部材35によって、打ち込み中にケーシング33とシートパイル15は強固に接続されている。この掘削部材20は、らせん状羽根22の最大径部分のループが3周以上形成されていることにより、土砂を効果的に取り込みながら地中を進んでいくので、地中に空隙を作らず、地盤沈下の原因を発生させない。
【0048】
シートパイル15を必要な深さまで建て込んだら、旋回装置8を逆転させ、らせん状羽根22を逆方向に回転する。すると、掘削部材20は上昇を始める。この例では、たとえば22〜25rpmの回転数でらせん状羽根22を回転させ、2分間で1m上昇する速度で引き上げている。この掘削部材20とともにケーシング33も上昇する。ケーシング33の先端の棒状部材35は、梁36とシートパイルの折り曲がり部によって形成される三角形から引抜かれ、シートパイル15とケーシング33は分離する。シートパイル15は建て込まれた深さで取り残され、掘削部材20とケーシング33のみが上昇する。
【0049】
この掘削部材20は、地中を進行するときに、その体積分の土だけを後方に送る。掘り進むときは、上方の土砂を下方に強く取り込みながら進行するので、施工前の土砂はほぼ元の状態に戻る。そのため、地盤沈下の原因となる地中の空隙はほとんど発生しない。
【0050】
掘削部材20とケーシング33の引き上げ時においても、ケーシング33の内周面とロッド21の外周面の間に空気または水を供給し続ける。このように引き上げ完了まで空気または水を供給し続けることによっても、ジャミングが防止される。
【0051】
掘削部材20とケーシング33を地上まで引き上げたら、そのシートパイルの建て込みは完了する。作業台車2を次のシートパイルの建て込み場所に移動させ、同様の作業を繰り返す。先のシートパイルに接続させる側とは反対のセクションにのみ尖端部材40を取り付けて、建て込みを行う。順次、この作業を繰り返し、必要なシートパイルを建て込んでいく。
【0052】
この掘削部材20を用いると、引き上げ時において、20トンもの重量がある作業台車を持ち上げることもできるほど土砂の取り込み力が強い。地中に空隙を作らない土留工法の実施に最良のものである。
【0053】
この発明の土留部材建込用掘削部材および土留部材建込工は、地中に水道管やガス管等を埋設する工事の施工などシートパイル等の土留部材により土留めを行いながら行う工事について広く利用できるものである。土留部材の建込作業においても、地中に空隙を残さないので、空隙に起因する地中の土壌の移動や地下水の水路の変化に伴う地盤状態の変動を発生させなることがなく、安全で環境への影響が少ない土留工事が実現できる。らせん状羽根と横方向のノズルを有する掘削部材によって削孔しながら土留部材を建て込むので、地盤の硬いところでも迅速に施工できる。既に普及している設備のほとんどを活用するので、新たな設備投資が少なく、導入しやすい工法である。
【0054】
なお、建て込むシートパイルとして、注入材を導入するための注入管がシートパイルの長さ方向に沿って設けられたものを使用することが好ましい。建て込んだシートパイルは、いずれ撤去されるが、その撤去の際に、この注入管を通して注入材を地中へ注入することができる。この注入管をすべての土留部材(シートパイル)に取り付けることは、必ずしも必要ではない。注入管付きのシートパイル同士の間に注入管なしのシートパイルのシートパイルを複数本入れて建て込んでもよい。この場合、注入管付きのシートパイルの割合は、その土壌や注入材の種類などの条件に合わせて、その注入材が到達する距離によって適宜設定できる。例えば、注入管付きのシートパイル同士の間に注入管なしのシートパイルを2本建て込むことができる。撤去時において最後に引抜くシートパイルには注入管付きのものを使用する。
【0055】
シートパイルの撤去について説明する。水道管やガス管等を埋設する工事が終了すれば、シートパイルを撤去することになる。しかし、従来の工法のように、単にシートパイルを引き上げるだけでは、引き抜いた跡に、空隙が発生する。これを放置すると、周囲の土砂が移動し、地盤沈下や地下水の流れの変動の原因となる。そこで、シートパイルを引き上げながら地中に注入材を注入することによって、地中の空隙を防止する。注入管のない通常のシートパイルが建て込まれている場合には、引き抜きに先立って注入管をシートパイルに沿って打ち込み、この注入管より注入材を注入しながら、シートパイルを引き抜く。上述のように注入管付きのシートパイルが建て込まれている場合は、その注入管より注入材を注入しながら、引き抜く。このような土留工法ついては、すでに特許文献1,2,7で詳細に説明されている。
【0056】
ここで、使用する注入材の例について説明する。シートパイルの引抜き跡を迅速に充填するためには、硬化剤としては2液を混合するゲルタイムの短いものが好ましい。したがって、注入管は独立した2系統の流体通路を有するものを使用する。瞬結性の注入材の例について説明する。非水ガラス系無機懸濁型の製品名YMS20三興コロイド化学株式会社)を使用する。これは、硬化剤と促進剤の組み合わせになっていて、硬化剤は炭酸ナトリウムとアルミン酸ナトリウムを主成分とし、促進剤は水酸化カルシウムを主成分とする。
【0057】
水156リットル、高炉セメントB種125Kg、YMS20の促進剤8Kgを混合したものをA液とする。一方、水197リットルと、YMS20の硬化剤20Kgを混合したものをB液とする。このA液とB液を1対1で使用することにより、20℃でのゲルタイムが15〜25秒、4週強度0.7N/mm2の注入材が得られる。これらの硬化剤は、重金属を含まず、毒物や劇物も含まない安全性の高い無公害薬剤である。
【0058】
シートパイルの引き抜きは、建て込みの逆の順序で行う。すなわち、最後に建て込んだシートパイルから引き抜いていき、最初に建て込んだシートパイルが最後に引き抜かれる。
【0059】
引き抜かれたシートパイルより、注入管や尖端部材を取り外して回収する。これらは、再利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1.土留め部材建て込み装置
2.作業台車
4.リーダ
5.スライド部材
8.旋回装置
9.チャック
10.オーガースクリュー
11.ケーシング
12.軸体
13.らせん状羽根
15.土留め部材(シートパイル)
20.土留め部材立て込み工事用掘削部材(掘削部材)
21.ロッド(軸体)
22.らせん状羽根
24.第1吐出口
25.第1流体通路
26.第2吐出口
27.第2流体通路
30.爪
31.スイベル
32.レデューサ(接続部材)
33.ケーシング
40.尖端部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドと、ロッドの先端部に設けられたらせん状羽根と、最先端部に設けられた第1吐出口と、らせん状羽根の外周部に横向きに設けられた複数の第2吐出口とを有し、ロッド内部には第1吐出口につながる第1流体通路と第2吐出口につながる第2流体通路が設けられており、らせん状羽根は、上側より長さ方向に沿って徐々に径が大きくなる第1領域と、第1領域に続く径が一定の第2領域と、第2領域に続き長さ方向に沿って徐々に径が小さくなる第3領域とを有し、第2領域においてループが3周以上形成されていることを特徴とする土留部材建込用掘削部材。
【請求項2】
らせん状羽根の表面で先端部に向いた側には爪が設けられており、その反対方向に面した側には爪が設けられていなくことを特徴とする請求項1に記載の土留部材建込用掘削部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の土留部材建込用掘削部材を使用する土留部材建込工法であり、
土留部材建込用掘削部材の先端部付近に接続部材を設け、この接続部材を土留部材の下端部に接続し、第2吐出口から流体を横方向に吐出させるととも土留部材建込工事用掘削部材を回転させて掘り進める土留部材を土中に建て込み、土留部材建込用掘削部材を逆回転させて土留部材建込用掘削部材および接続部材を地上に引き上げることを特徴とする土留部材建込工法。
【請求項4】
第1吐出口から空気を下方向に吐出させながら掘り進める請求項3に記載の土留部材建込工法。
【請求項5】
土留部材の下端よりも上部において、らせん状羽の径の最大の部分が2周分以上存在するように、土留部材を取り付けることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の土留部材建込工法。
【請求項6】
土留部材の下端に尖端部を設けることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載の土留部材建込工法。
【請求項7】
土留部材が略コの字の断面形状を有し、その側端部には土留部材同士の接続のためのセクションが設けられており、そのセクションの下に円錐状の尖端を有する尖端部材を取り付けることを特徴とする請求項6に記載の土留部材建込工法。
【請求項8】
円錐状の尖端を有する尖端部材を片側のセクションのみに取り付け、尖端部材が取り付けられていないセクションを先に建て込んだ土留部材のセクションに接続して建て込んでいくことを特徴とする請求項7に記載の土留部材建込工法。
【請求項1】
ロッドと、ロッドの先端部に設けられたらせん状羽根と、最先端部に設けられた第1吐出口と、らせん状羽根の外周部に横向きに設けられた複数の第2吐出口とを有し、ロッド内部には第1吐出口につながる第1流体通路と第2吐出口につながる第2流体通路が設けられており、らせん状羽根は、上側より長さ方向に沿って徐々に径が大きくなる第1領域と、第1領域に続く径が一定の第2領域と、第2領域に続き長さ方向に沿って徐々に径が小さくなる第3領域とを有し、第2領域においてループが3周以上形成されていることを特徴とする土留部材建込用掘削部材。
【請求項2】
らせん状羽根の表面で先端部に向いた側には爪が設けられており、その反対方向に面した側には爪が設けられていなくことを特徴とする請求項1に記載の土留部材建込用掘削部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の土留部材建込用掘削部材を使用する土留部材建込工法であり、
土留部材建込用掘削部材の先端部付近に接続部材を設け、この接続部材を土留部材の下端部に接続し、第2吐出口から流体を横方向に吐出させるととも土留部材建込工事用掘削部材を回転させて掘り進める土留部材を土中に建て込み、土留部材建込用掘削部材を逆回転させて土留部材建込用掘削部材および接続部材を地上に引き上げることを特徴とする土留部材建込工法。
【請求項4】
第1吐出口から空気を下方向に吐出させながら掘り進める請求項3に記載の土留部材建込工法。
【請求項5】
土留部材の下端よりも上部において、らせん状羽の径の最大の部分が2周分以上存在するように、土留部材を取り付けることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の土留部材建込工法。
【請求項6】
土留部材の下端に尖端部を設けることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載の土留部材建込工法。
【請求項7】
土留部材が略コの字の断面形状を有し、その側端部には土留部材同士の接続のためのセクションが設けられており、そのセクションの下に円錐状の尖端を有する尖端部材を取り付けることを特徴とする請求項6に記載の土留部材建込工法。
【請求項8】
円錐状の尖端を有する尖端部材を片側のセクションのみに取り付け、尖端部材が取り付けられていないセクションを先に建て込んだ土留部材のセクションに接続して建て込んでいくことを特徴とする請求項7に記載の土留部材建込工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−242342(P2010−242342A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90847(P2009−90847)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(504091555)
【出願人】(504092552)
【出願人】(504092563)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(504091555)
【出願人】(504092552)
【出願人】(504092563)
【Fターム(参考)】
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