説明

土留部材撤去方法

【課題】この発明は、施工後にも周囲の地盤や地下水の流れに変動を与えることがなく、しかも注入管の取り付け場所に制約がなく、さまざま装置について広く適用できる土留部材撤去方法を提供することを目的とする。
【解決手段】この発明の土留部材撤去方法は、上端部に吊下げ用穴5を有する土留部材1を撤去する方法であって、土留部材1の上端部付近であって吊下げ用穴5よりも下側にスペーサ23を取り付け、このスペーサ23に注入管10を接続し、注入管10より注入材を注入しながら土留部材1を引き上げて、土留部材1の引抜き跡を注入材で充填していくことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートパイル(鋼矢板)などの土留部材で土留めを行いながら地中に水道管、ガス管、側溝、カルバートボックス等を埋設する土留工事の施工後に、土留部材を撤去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に水道管、ガス管、カルバートボックス、下水管、側溝等を埋設する工事においては、まず溝の両壁を構成すべき位置に簡易矢板、鉄板、シートパイル等の土留部材を設置して溝壁が崩れるのを防止した上で、地面を掘削して溝を形成し、溝内での水道管等の敷設作業が行われる。敷設作業が終了すると土留部材が引き抜かれる。こうして回収された土留部材は次の工事で再利用されることになる。しかし、溝内に砂や土を盛った後に土留部材を引く抜くことにより、地中には土留部材の体積分の空隙が生じることになる。この空隙を埋めるために周囲の土砂が移動し、地盤沈下などさまざまな問題が生じうることを本発明の発明者らは特許文献1および特許文献2にて指摘するとともに、これを防止する土留工法を開示した。この他、特許文献3には、鋼矢板の引抜き時に土砂を落下させて空隙を埋めることが記載されている。特許文献4および特許文献5には「地盤圧密剤」を注して空洞を埋めることが、特許文献6には、「充填材」を注入することが記載されている。さらに、特許文献7には、硬化剤を注入することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3940735号特許公報
【特許文献2】特開2008−101373号
【特許文献3】特開昭64−58713号
【特許文献4】特開昭57−108311号
【特許文献5】特開昭57−108312号
【特許文献6】特開昭49−49404号
【特許文献7】特開2006−291701号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜7には、土留部材の引抜き跡の空隙によって生じる地盤沈下等の悪影響を防止に関連した土留工法が記載されている。しかし、特許文献3〜6においては具体的な説明はされておらず、さらに技術的に矛盾がある記載が含まれているものもあり、これらの文献に基づいてその発明が実施できるものではない。特許文献3〜6に記載の発明は実施されなかったと思われる。
【0005】
土留部材を地中から引き抜いた後、レッカーなどで吊り上げて、土留部材を安全な場所に移動させて、横に倒した状態で置く必要がある。そのため、土留部材の上端部には吊下げ用穴が設けられており、この吊下げ用穴にフックやシャックルを取り付けて吊り上げている。ところが、注入管をこの吊下げ用穴にかかる位置に取り付けると、注入管が干渉して吊下げ用穴にフックやシャックルを取り付けることができないことが判明した。
【0006】
これを避ける方法として、注入管をこの吊下げ用穴にかからない位置に取り付けるようにすることが考えられる。しかし、このような取り付け位置の制限のない自由の高い土留部材撤去方法が望まれる。
【0007】
この発明は、施工後にも周囲の地盤や地下水の流れに変動を与えることがなく、環境問題を生させず、しかも杭圧入引抜機などさまざま装置について広く適用できる土留部材撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、この発明の土留部材撤去方法は、上端部に吊下げ用穴を有する土留部材を撤去する方法であって、土留部材の上端部付近であって吊下げ用穴よりも下側にスペーサを取り付け、このスペーサに注入管を接続し、注入管より注入材を注入しながら土留部材を引き上げて、土留部材の引抜き跡を注入材で充填していくことを特徴とする。特に、長方形板状の中央部と、中央部の両側端部に形成された長方形板状の側部を有し、中央部の上端部に吊下げ用穴を有する土留部材を撤去するのに適している。また、環状部材とワイヤと吊下げワイヤ接続部材を有する落下防止装置を使用し、注入材上端部の蓋を取り外し、その注入材上端部に落下防止装置の環状部材に注入材導入用のスイベルを通して、注入材の注入を開始する前にスイベルを注入材上端部に接続し、吊下げワイヤ接続部材を吊下げワイヤに取り付けることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、スペーサを介して注入管が土留部材の表面から所定の間隔を保った状態で取り付けられることによって、吊下げ用のシャックルやフックなどを注入管と干渉することなく土留部材の吊下げ用穴に取り付けることができる。したがって、圧入引抜機を始めとしてさまざまな種類の機械に対して広く適用することができる。土留部材の引き抜き跡に空隙を残さないので、施行場所の周囲において地盤沈下や地下水の変動など悪影響を発生させるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】土留部材一例を示す斜視図である。
【図2】注入管を示す概念図である。
【図3】注入管取付部材(スペーサ)を示す左側面図である。
【図4】同平面図である。
【図5】落下防止装置を示す斜視図である。
【図6】土留部材圧引抜機を示す正面図である。
【図7】同平面図である。
【図8】注入管の設置状態を示す概念図である。
【図9】土留部材の引上げ開始の状態を示す概念図である。
【図10】土留部材にフックを接続した状態を示す概念図である。
【図11】注入管固定部材を示す斜視図である。
【図12】押さえ部材を示す背面図である。
【図13】注入管の取り付け状態を示す概念図である。
【図14】カップリングを示す断面図である。
【図15】土留部材より注入管10を取り外す状態を示す側面図である。
【図16】同断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。この例において使用する土留部材を図1に示す。土留部材1は、シートパイルと呼ばれており、一般に普及している土留部材である。長方形板状の中央部2と、中央部2の両側端部に形成された長方形板状の側部3を有する。この側部3は中央部2に対して直角よりも若干大きな角度を有している。したがって、土留部材1は、略コの字状の断面を有する。側部3の端部は鉤状のカールが形成されており、セクションと呼ばれる部位が設けられている。このセクション4は隣接する土留部材同士を接続する継ぎ手の役割を果たす。また、土留部材1の上端部には、吊下げ用穴5が設けられている。この吊下げ用穴5は、吊下げ用のフックやシャックルを取り付けることができる適度の大きさを有する。
【0012】
土留部材としては、シートパイル以外にも、H型断面のものや円筒状のものなどが使用できる。これらの場合においても、上端部には吊下げ用のフックやシャックルのための取り付け部が設けられている。
【0013】
図2は、注入管を示す概念図である。注入管10は、複数の部品に分解することができ、上部より、スイベル11、中間ロッド12、吐出部13、先端部14である。
【0014】
スイベル11の上部は回転部15となっており、本体部16に対して回転自在になっている。この回転部15の側面には、第1ホース取付口17と第2ホース取付口18が設けられている。このスイベル11の内部は二重管構造になっており、独立した2本の流体通路が形成されている。そして、第1ホース取付口17と第2ホース取付口18がそれぞれ本体部16の流体通路につながっている。
【0015】
中間ロッド12は複数本設けられている。スイベル15と同様に内部は二重管構造になっており、独立した2本の流体通路が形成されている。
【0016】
吐出部13の側面には、吐出口19が形成されている。そして、吐出口19の近くには栓として作用する玉20がある。さらに、玉20の下にはバネ21が設けられており、玉20を上向きに押す力が加えられている。玉20の上に加重がない場合には、玉20は吐出口19へ続く流路を塞ぐ位置にある。玉20の上から強い押し下げ力が加わったときには、バネ21を押し下げながら玉20は下降し、吐出口19へ続く流路を開く。
【0017】
先端部14の下端には、硬い素材で作られたビット22が取り付けられている。このビット22により固い地盤であっても、土壌を切り裂いて進行することができるとともに、打ち込み時において注入管10全体にかかる負担を軽減する。
【0018】
スイベル11、中間ロッド12、吐出部13、先端部14にはネジ部が形成されており、相互に接続・分離が容易に行われるようになっている。中間ロッド12同士も接続・分離が可能になっている。
【0019】
図3は注入管取付部材を示す左側面図であり、図4は同平面図である。注入管取付部材23は、注入管10を土留部材1の表面から所定の間隔をあけて取り付けるスペーサの役割をするものである。ここでは、2つの板状部が直角に組み合わせれたL字状の部材であり、一つが土留部材1との接続面になっていて、他方がこれに垂直な面となっており、中央部には円弧状の切り込みが形成されている。この切り込みの底は、土留部材1との接続面から20mmだけ離れた位置にある。また、切り込みの円弧の半径は、注入管10あるいは後述するカップリングの外周の半径と同じである。
【0020】
図5は落下防止装置を示す斜視図である。落下防止装置25は、環状部材26とワイヤ27と吊下げワイヤ接続部材28を有する。環状部材26はワイヤ27の一端に取り付けられており、吊下げワイヤ接続部材28は他端側に付けられている。環状部材26の内径は、スイベル10の本体部16の外径よりは大きく、回転部15の外径よりは小さい。吊下げワイヤ接続部材28もワイヤを環状に形成したものである。
【0021】
図6は、土留部材圧引抜機を示す正面図であり、図7は同平面図である。この土留部材圧引抜機30は、無騒音・無振動の杭材圧引抜機として普及している周知の装置であり、油圧によって土留部材の圧引および引き抜きを行う。
【0022】
土留部材圧引抜機30は、圧引または引き抜きの対象である土留部材1を掴むためのチャック31と、このチャック31を上下動させる昇降装置32を有する。チャック31の上部には、土留部材1が通過できる程度の小さな円形の開口部33がある。また、既設の土留部材を掴むための掴み部34を複数備えている。掴み部34によって既設杭を掴むことで、既設の杭から反力をとって、チャック31によって土留部材1を地盤に対して圧入または引抜けるようになっている。また、土留部材圧引抜機30は、既設の土留部材を伝って移動することができる。
【0023】
ついで、これらの装置を使用した土留部材撤去方法について説明する。まず、土留部材の引き抜きに先立って、注入管10を地中に設置する。ボーリングマシン等を用いて掘孔しながら、注入管10を地中へ打ち込んでいく。このとき、先端部19、吐出部13および土留部材1の長さをカバーできる程度の本数の中間ロッド12を接続しておく。最上部の中間ロッド12には、スイベル11の代わりに、上端部を塞ぐ栓を取り付けておき、設置中に注入管10の内部に土砂が入らないようにする。全ての土留部材1に対して注入管10を設置してもよいが、注入材が遠くまで届く場合には2本おき、あるいは3本おきのように設置してもよい。このように飛び飛びに設置する場合でも、最初に引き抜くべき土留部材に対しても注入管10を設置することが好ましい。最初の土留部材において、注入材を注入しながら引き抜くことによって、2本目以降の土留部材の場所まで注入材が浸透する。これによって、2本目あるいは3本目の土留部材を注入なしで引き抜いても、1本目の引き抜き時に注入された注入材が作用して、その次の注入が行われるまでの時間中に土砂の移動が生じることを防止できる。したがって、砂地など土砂の移動が起こりやすい土壌において、有効である。
【0024】
図8は、注入管10の設置状態を示す概念図である。注入管10は、土留部材1の表面から所定の間隔をおいて設置する。この間隔は、注入管取付部材23の切り込みの底の位置にあわせて設定する。この例においては、切り込みの底は土留部材1との接続面から20mmだけ離れた位置にあるので、注入管10も土留部材1の表面から20mmだけ離れた位置に設置する。また、土留部材1の中央線に沿った位置に設置する。これは、土留部材1の吊下げ用穴5のある位置に対応する。
【0025】
注入管10の最上部の中間ロッド12の上端が、土留部材1の上端より60cmほど低い位置になるようにする。土留部材1が地上より50cm程度突き出しているとき、最上部の中間ロッド12の上端は地表より10cm程度下に埋まることになる。
【0026】
その後、注入管10の上端が現れるまで、この土留部材1の近くの地面を掘る。注入管10の上端を掘り当てたら、栓を取り外し、カップリング40を取り付ける。図13は、注入管の取り付け状態を示す概念図、図14はカップリングを示す断面図である。中間ロッド12は炭素鋼S45Cで作られており、溶接が行いにくい素材である。一方、このカップリング40は、通常の鋼材で作られており、溶接するのに適している。また、このカップリング40もスイベル11や中間ロッド12と同様に二重管構造となっている。また、カップリング40の本体部は中間ロッド12と同じ外径を有するが、鍔40bはこの本体部よりも外に突き出している。注入管取付部材23を鍔40bの下面に当たるように合わせ、その円弧状の切り込みにカップリング40を合わせる。この状態で、土留部材1との接続面に溶接を行う。また、注入管取付部材23と鍔40bの接触部にも溶接を行う。これによって、注入管取付部材23を介して注入管10が土留部材1に固定される。カップリング40は、溶接性に優れるので、容易に溶接でき、しかも、施工中に脱落したりしない。カップリング40の上端には栓を取り付けておき、内部に土砂などが入ることを防止する。
【0027】
ついで、土留部材圧引抜機30を既設の土留部材に設置し、最初の引き抜き対象の土留部材1の位置に合わせる。ここでは、この土留部材1に注入管10が取り付けられているとする。カップリング40の上端から栓を外し、スイベル11を接続する。このとき、落下防止装置25の環状部材26にスイベル11を通しておく。これによって、環状部材26はスイベル11から離れなくなる。
【0028】
チャック31で土留部材1を掴む。このチャック31は、2本の細い部材を土留部材1の中央部2の表面の左右の側部に押し当てるようになっており、中央部2の中心付近には接触しない。したがって、中央部2の中心付近に取り付けられている注入管には当たらない。チャック31の上に設けられている開口部33は、土留部材1が通るのに必要な最低限の大きさしかないが、注入管10はこの開口部33の円の範囲内におさまっている。注入材を供給するためのホースをスイベル11の第1ホース取付口17と第2ホース取付口18に取り付ける。ここでは、A液とB液という2種類の液体を混合する2液タイプの硬化剤を使用する。ホースは開口部33を通って、硬化剤の供給源(図示省略)に接続される。図9は、土留部材の引上げ開始の状態を示す概念図である。
【0029】
チャック31で土留部材1を掴んだら、土留部材1の引き上げを開始する。引き上げながら、ホース、スイベル11および注入管10を介して注入材を導入し、地中に吐出する。1ステップで50cmの引き上げになるようにして、土留部材1を引き上げていく。
【0030】
ここで、使用する注入材の例について説明する。土留部材1の引抜き跡を迅速に充填するためには、硬化剤としては2液を混合するゲルタイムの短いものが好ましい。そこで、瞬結性の注入材の例について説明する。ここでは非水ガラス系無機懸濁型の製品名YMS20(三興コロイド化学株式会社)を使用する。これは、硬化剤と促進剤の組み合わせになっていて、硬化剤は炭酸ナトリウムとアルミン酸ナトリウムを主成分とし、促進剤は水酸化カルシウムを主成分とする。
【0031】
水156リットル、高炉セメントB種125Kg、YMS20の促進剤8Kgを混合したものをA液とする。一方、水197リットルと、YMS20の硬化剤20Kgを混合したものをB液とする。このA液とB液を1対1で使用することにより、20℃でのゲルタイムが15〜25秒、4週強度0.7N/mm2の注入材が得られる。これらの硬化剤は、重金属を含まず、毒物や劇物も含まない安全性の高い無公害薬剤である。
【0032】
土留部材1をある程度引き上げて、その上端部が土留部材圧引抜機30の開口部33を通って、土留部材圧引抜機30の上に現れたら、レッカーなどフックを土留部材1に取り付ける。土留部材1の吊下げ用穴5にシャックル41を取り付け、このシャックル41にレッカーなどのフック42を掛ける。図10は、土留部材1にフック42を接続した状態を示す概念図である。シャックル41やフック42はある程度の大きさを有するため、土留部材1の表面から突出した状態になる。しかし、スペーサの役割を有する注入管取付部材23により、土留部材1と注入管10の間には十分な間隔が保たれている。したがって、注入管10が吊下げ用穴5の前を通過していても、シャックル41やフック42に干渉しない。これによって、注入管10を傷つける心配もなく、安全に吊下げを行うことができる。
【0033】
また、落下防止装置25の吊下げワイヤ接続部材28に別のシャックル43を取り付け、さらにこのシャックル43に吊下げ用ワイヤやフックを接続する。こうして、落下防止装置25を介して注入管10と吊下げ用ワイヤが接続される。したがって、万が一、注入管10が土留部材1から外れるような事態が生じても、注入管10が落下することはない。
【0034】
レッカーなどで土留部材10を吊下げた状態で、さらに引き上げを進めていく。所定の高さごとに、注入管10の振れ止めを行うことが好ましい。たとえば、簡便な振れ止め手段として、弾性体で作られた注入管固定部材を使用してもよい。図11は注入管固定部材を示す斜視図、図12は押さえ部材を示す背面図である。
【0035】
注入管固定部材50は円盤状の押さえ部材51とバンド52を有する。押さえ部材51はゴムなどで作られ、注入管54の外形に対応した注入管挿入溝53を有する。この注入管挿入溝53の内部には凹凸が形成されている。バンド52はタイヤチューブなどの弾性部材が使用される。このバンド52と押さえ部材51は接続されており、また、バンド52の端部同士はバックル54によって接続されており、全体として輪の形状になっている。
【0036】
注入管挿入溝53に注入管10を入れ、バンド52を土留部材1の回りに巻く。そして、バンド52をある程度引っ張って伸ばし、その状態でバックル54により締める。こうして、注入管10が土留部材1の表面上に強く固定される。管挿入溝53の内部の凹凸により、注入管34はしっかり固定される。
【0037】
土留部材1が完全に引き抜かれたら、注入材の導入を終了する。レッカーにより土留部材1を吊り上げて、安全な場所に移動させる。そして、注入材を導入したホースを利用して、洗浄用の水をスイベルに供給する。こうして、注入管10の内部を洗浄する。
【0038】
注入管10の洗浄が終了したら、土留部材10を地上に下ろし、横に寝かした状態にして置く。注入管10は土留部材1から取り外して回収する。図15は、土留部材より注入管10を取り外す状態を示す側面図であり、図16は同断面図である。土留部材1と注入管10の間に架台24を差し込み、注入管10が土留部材1より浮いた状態にする。この架台24は2枚の板材がT字状に組み合わされたものであり、垂直な板の中央部には、やはり注入管10の外周の半径と同じ円弧の切り込みが形成されており、この切り込みの底は、土留部材1との接続面から20mmだけ離れた位置にある。スイベル11、中間ロッド12、吐出部13などを分離しながら取り外していく。このとき、注入管10のこれらの要素をパイルレンチなどの工具で回転させて、ネジ部による結合を開放する。注入管取付部材23および架台24により土留部材1と注入管10の間には工具を使用するのに十分な間隔が保たれているので、切り離し作業を容易に行うことができる。
【0039】
さらに、溶接部を削り取って、注入管取付部材23を土留部材1から取り外す。また、注入管取付部材23とカップリング40の溶接部も切り離す。カップリング40は簡単に切り離すことができ、溶接による割れなども生じない。こうして回収された注入管10や注入管取付部材23は再利用することができる。
【0040】
以上の工程を繰り返し、すべて土留部材1を引き抜く。こうして、土留部材の引き抜き作業が完了する。土留部材1が引き抜かれた跡は、注入材によって充填されているので、地中には空隙は残らない。したがって、施工中にも施行後にも、周囲において、地盤沈下や地下水の変動などの悪影響が生じない。
【符号の説明】
【0041】
1.土留部材
2.中央部
3.側部
5.吊下げ用穴
10.注入管
11.スイベル
12.中間ロッド
23.注入管取付部材
25.落下防止装置
26.環状部材
27.ワイヤ
28.ワイヤ接続部材
30.土留部材圧引抜機
31.チャック
33.開口部
41.シャックル
42.フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部に吊下げ用穴を有する土留部材を撤去する方法であって、土留部材の上端部付近であって吊下げ用穴よりも下側にスペーサを取り付け、このスペーサに注入管を接続し、注入管より注入材を注入しながら土留部材を引き上げて、土留部材の引抜き跡を注入材で充填していくことを特徴とする土留部材撤去方法。
【請求項2】
長方形板状の中央部と、中央部の両側端部に形成された長方形板状の側部を有し、中央部の上端部に吊下げ用穴を有する土留部材を撤去する請求項1に記載の土留部材撤去方法。
【請求項3】
環状部材とワイヤと吊下げワイヤ接続部材を有する落下防止装置により注入管の落下を防止しながら土留部材の撤去する方法であり、注入管上端部の栓を取り外し、その注入材上端部に落下防止装置の環状部材に注入材導入用のスイベルを通して、注入材の注入を開始する前にスイベルを注入材上端部に接続し、吊下げワイヤ接続部材を吊下げワイヤに取り付ける特徴とする請求項1または請求項2に記載の土留部材撤去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−248823(P2010−248823A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100673(P2009−100673)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(504091555)
【出願人】(504092552)
【出願人】(504092563)
【Fターム(参考)】