説明

土質採取装置

【課題】 従来の土質試料用サンプリング装置は、スウェーデン式サウンディング試験機等で明けられた小径の孔で、地下水の多い砂質層を多く含むような場合には、壁面が崩壊し易く、採取が非常に困難という問題があった。
【解決手段】サンプリングユニットが、土質試料を格納するための略パイプ状の格納部と、その手前側に連結ピンで連結された可変箆からなるもので、そのユニットを所定の孔の位置まで送致したり回収するための送り出し用の鋼線が、加工率70%以上で、800N以上のオーステライト系ステンレスの硬引線で、その硬引線に取り付けられたガイドに一体化された操作紐を地上で操作することにより、可変箆が水分を多く含んだ砂質の試料を採取する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、地中に形成された既設の孔の所定の部位の土質資料を採取する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の地質資料の採取技術としては、特許文献1にあるように、地中に形成された小径縦孔の所定の深さの土質資料のサンプリング装置として、上部体と下部体の二つの部位に斜めに分割された円筒体をヒンジで結合し、それらに連結された二つのPC鋼線を地上で操作することにより、下部体の分割面を開閉しつつ、孔壁を形成する土砂を削り取って下部体の採取部に土質資料を採取するようになっている。
【0003】
次に、特許文献2にあるように、スウェーデン式サウンディング試験法において用いられる貫入ロッドの先端部に、筒本体とジョイント部材とによって構成されたアダプタで、ジョイント部材が誘導面として機能することにより土砂のサンプリングを可能とするような構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許公開2006−322175
【0005】
【特許文献2】特許公開2003−27454
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上に述べたような従来技術では、特に採取が困難とされている砂質土壌や多くの水分が含まれた砂質土壌、また、所望の土砂の採取量に問題があったり、採取に時間と手間が掛かったりするのである。
【0007】
例えば、5mくらいの中層部の採取を行う場合、特許文献1の採取方法では、上部体下部の切削歯をPC鋼線で押し下げることにより土砂を切削するようになっているが、水分を多く含んだ砂質土壌の場合、上方から切削を行うと採取口との距離が短くしか保てない為、周辺が流れるように崩れ、外形27mm、口径が21mmで高さ100mm程度の下部の採取部の周りをすり抜けて落下してしまったり、孔を塞いで採取困難に陥る問題が発生する。
【0008】
更に、本技術によれば、φ12.7mmのPC鋼より線に用いられる直径が4.3mmの芯線を用いることが出来るとのことであるが、スウェーデン式サウンディング試験で行われている深さ10m位までの最深部に、特許文献1の方法で、PC鋼線を2本用いて土質資料の採取を行おうとすると、スウェーデン式貫入試験により明けられた孔の場合、完全な垂直の孔で無く、斜めになっていたり、下部が広がっていたりしているため、長い距離を押し下げようとすると途中で孔の中心から外れて、押し下げる時に壁面に刺さるように食い込んだりするために装置の回収が困難になったり、座屈が発生し、塑性脆性が悪いPC鋼線の場合は、錆びやすく、折れ易いため採取自体が困難となる場合が多く発生する。
【0009】
特許文献2においては、夫々の深度を測定する場合、ロッドを継ぎ足しながらの作業となる為、多くの時間と手間を要することになるばかりか、変心したような孔の場合、壁面への追随性が無いため試料採取が困難となる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、地中に形成されたスウェーデン式サウンディング試験による既設の孔や各種ボーリング試験によりあけられた孔において、水没した部分や砂質の部分であっても、所定の位置の試料採取を容易にすることが可能な地質採取装置を提供することを目的とする。
【0011】
本発明は、深さ、もしくは奥行きが10メートル位までの、地中に形成された例えば孔径が25〜100mmまでの孔の任意の部分の壁面の土質資料を採取するための装置であって、先端に土質試料を格納するための略パイプ状で先端部が閉塞された格納部と、その手前側に連結ピンで連結された、壁面部の土砂を採取し、格納部に送致するための可変箆部から構成されたユニットと、その可変篦を地上で操作するための操作部から構成された地質採取装置で、操作部が当該ユニットを所定の位置まで送致したり回収するための送り出し用の鋼線が、加工率70%以上で、800N以上のオーステライト系ステンレスの硬引線で、当該ユニットを所望の位置まで送り込み、鋼線を保持しながら、可変篦を操作するための操作紐を軽く引きながら鋼線も同時に所定の高さまで引き揚げることにより、所望の部分の土質が可変箆によりかぎ取られ、先端の土質試料の格納部へと送り込まれ、更に操作紐を放して鋼線を少し送り込むことで可変箆の角度が元に戻り、鋼線を引き揚げることで当該ユニットが回収できるようになっている。
【0012】
ここで、本発明の土質採取装置によれば、壁面に応力を加えずに当該ユニットを送り込むために必要なのは直進性であり、送り出しや土質試料を孔の壁面からかぎ取るための荷重、つまり押し出すような力が余り必要ではないため、前記硬引線はスプールに巻取りが可能なもので、スウェーデン式サウンディング試験機により明けられた10m位までの距離の小径孔であれば、構成するユニットの径が直径20mm位までに制限されるため、硬引線の直径は1.5mm〜4mm位までのもので良いのであるが、引き上げたり距離の目安ともなるガイドを固定することを考えると、2mm〜3mm位のもので良く、さらに50cmから1mおきに樹脂製もしくは金属製のガイドの基部分を固定し、そのガイドに操作紐を通しておくことで簡単に任意の深さでの土質採取の操作が地上で簡便に出来るのである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、砂のような崩れ易く、水分比が高く、水圧だけでも崩壊し易いような土質の既設孔の場合でも、最深部から上層部の順に採取することで、スムーズに採取を行うことが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る土質採取装置は、図1に示すように、例えばスウェーデン式サウンディング試験機により明けられた孔径が25〜30mm、深さ15m位までの孔1に、先端に土質試料を格納するための略パイプ状で先端部が閉塞された直径20mm〜23mmの格納部3と、その手前側に連結ピン4で連結された、壁面部の土砂を採取し、格納部に送致するための直径20mm〜23mmの可変箆部5から構成されている装置で、当該ユニットを所定の位置まで送致し、その可変箆6の角度を地上で操作するための操作紐8を引きながら、硬引線7ごと引き揚げることにより、所望の部分の土質試料が可変篦6により順次かぎ取られ、先端の土質試料の格納部へと送り込まれ、更に操作紐を放して硬引線7を少し送り込むことで可変箆6の角度が元に戻り、硬引線7を引き揚げることで当該ユニットが回収できるようになっている。
【0015】
この時に使用する鋼線に求められる条件としては、所定の深さまで孔の壁面を壊さずに送致するための直進性と障害物等による挫屈に耐えなければならないのであるが、当該ユニットは軽量であることと、土質を採取する時に大きな挫屈力が掛からないので、使用する鋼線は細い方が軽量で作業性が良いため、図2に示すような架台22に角度調整ローラー15、垂直送りローラー14、巻取りローラー13が取り付けられていて、巻取りローラーのスプールに巻取り可能な、加工率70%以上で、800N以上のオーステライト系ステンレスの直径3mm程度の硬引線が良い。
【0016】
さらに、当該ユニットを所望の位置まで送り込み、鋼線を保持しながら、可変箆6を操作するための操作紐8を軽く引きながら鋼線も同時に所定の高さまで引き揚げることにより、容易に土質試料の採取が可能となり、スプールに巻き取りながら当該ユニットを回収し、土質試料格納部3の下部にある試料取り出し用ネジを開ける事によりスムーズに採取試料の取り出しが可能となる。
【0017】
本実施形態によれば、図1および図2に示すように、スウェーデン式サウンディング試験機により、30mm程の直径の略垂直な開削された孔1に対し、角度調整ローラー15により孔の角度を見極めながら、孔の入口18から硬引線7により直進性を有する本発明の土質採取装置24を所望の深度まで挿入することができるのである。
【0018】
この土質採取装置24は、50cm位の任意のピッチで硬引線7にガイド10が固定されており、操作紐8が当該ガイドに通されているので、その紐を引くことにより可変箆部5の可変篦6が外側に開きながら、硬引線7のガイド10を保持しながら持ち上げることにより壁面の土質を採取することが出来る。
【0019】
そして、十分に採取できたかどうかを確認するには、かぎ取る時の重量と持ち上げる時の距離により容易に判断することが出来、操作紐8を緩め、今度は下方に少し押すようにしてやることで、容易に可変篦部5の角度が直線状に戻り、図2にあるように、その状態のまま地上のスプール13を回転させて上方に引き揚げることにより、装置の回収が可能となる。
【0020】
また、十分に試料採取が出来なかった時に、引き上げの途中の土質の混入を防止する為に、落下土混入防止キャップを取り付けることにより要求する部分以外の土の混入を防止することが可能となる。
【0021】
図3及び図4は、スウェーデン式サウンディング試験機により調査後の孔の断面を示したもので、当該試験機には垂直にビットを送ることができるようになっていないので、図3の孔の入口部孔径Aと底部孔径B、図4に示すように入口部孔径Aと底部孔径Bとでは、試験機のロッドの変心が起こるために孔の入口18から孔底23まで、略同じ径で、且つ、完全な垂直にはなり難く、底部が拡大したり入口部分が膨らんだような孔になることもあるため、地上の角度調整ローラーにより、方向性を持たせて壁面に添うように挿入してやらなければならない。
【0022】
図5は、本発明の土質採取装置24の操作紐8を引き揚げた時に可変箆部の角度が変化することを表した断面図で、硬引線7が可変箆部5の中心を貫き、土質試料格納部3の先端の試料取り出しネジ17を勘合するように貫いていて、これは、送り込みの時に障害物等に土質試料格納部3が折れ曲り、先端が接触し壁面を壊してしまうと、孔が塞がれてしまう場合があり、送り込み時の折れ曲がりを防ぐために先端部まで延びているのである。
【0023】
更に、この硬引線7が先端の試料取り出しネジ17を貫いている理由としては、本土質採取装置24とこの硬引線7は、可変篦部取り付けピン16により固定されているため、操作紐8を操作することにより連結ピン4を介して可変箆部5と土質試料格納部3との角度が変わるため硬引線7が試料取り出しネジ17を貫通しスライドするようになっていないといけない。
【0024】
また、硬引線7が資料取り出しネジを17貫通させておく理由としては、土質試料を採取する時に、水中でそのような作業を行うことが多く、その場合には予め可変箆部5や土質試料格納部3に水や細かい泥が分散したような泥水が存在しているため、水中の流れやすい砂質を採取するためには下部から水を排出しなければならず、直径3mmの硬引線を用いる場合、試料取り出しネジの孔の径を3.5mmから4.5mmにすることで、採取した砂質を排出せずに、効率良く水だけを排出することが可能となる。
【0025】
図6は、本発明の土質採取装置が、既設の孔の壁面の土質試料を採取するメカニズムを表したもので、地下水位19より下の砂質層20のような場合、非常に壁面が崩れ易いので素早く可変箆6を作動させながら上方に引き揚げることにより、壁面の採取土21が可変箆6から下部の土質試料格納部3へ流れ落ちて行き、そこに格納される。
【0026】
図7は、砂質層20の採取土21が採取され、操作紐8を緩め、土質採取装置24を一旦押し下げた状態を示す図で、土質採取装置を下げる事により可変箆部5の角度が硬引線7と垂直になり、この状態から巻取りローラー13のスプールを回転させて巻取り、地上に本土質採取装置24が出たところで試料取り出し用ネジ17を開け、下に受けた容器に流し込むか、上方の可変箆部5側から細いピンのようなもので押し出してやることで容易に採取することが可能となる。
【0027】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)可変箆上部に取り付ける落下土混入防止キャップが、直径23mm以下の球状の発泡材であること。
(2)操作紐が金属性のワイヤーであること。
(3)操作紐の任意の部分に、金属製もしくは樹脂製の滑り止めが取り付けられていること。
(4)硬引線が、長さ1mから4mまでの両端に連結部を有するもので、必要に応じて連結して使用すること。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る土質採取装置を表す斜視図である。
【図2】本発明の土質採取装置の巻取り装置、垂直送り並びに角度調整ローラーを表す斜視図である。
【図3】下部の壁面が拡大した既設の孔を表す断面図である。
【図4】上部の壁面が拡大した既設の孔を表す断面図である。
【図5】本発明の土質採取装置の操作紐を引き揚げた時に可変篦部の角度がかわることを表す断面図である。
【図6】本発明の土質採取装置が、土質を採取するメカニズムを表す断面図である。
【図7】本発明の土質採取装置により土質が採取された状態を表す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 開削された孔
2 孔の壁面
3 土質試料格納部
4 連結ピン
5 可変箆部
6 可変箆
7 硬引線
8 操作紐
9 操作紐取り付けピン
10 ガイド
11 ガイド固定ネジ
12 操作紐用ガイド
13 巻取りローラー
14 垂直送りローラー
15 角度調整用ローラー
16 可変箆部取付けピン
17 試料取り出し用ネジ
18 孔の入口
19 地下水位
20 砂質層
21 採取土
22 架台
23 孔底
24 土質採取装置
25 落下土混入防止用キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に開削された既設の孔に挿入し、任意の部分の壁面部の土質をサンプリングするための装置で、先端に土質試料を格納するための略パイプ状の格納部と、その手前側に連結ピンで連結された、壁面部の土砂を採取し、格納部に送致するための可変箆部から構成されたユニットと、その可変箆を地上で操作するための操作部から構成された地質採取装置で、操作部が当該ユニットを所定の位置まで送致したり回収する為の送り出し用の鋼線が、加工率70%以上で、800N以上のオーステライト系ステンレスの硬引線で、可変箆を操作するための操作紐とで構成されていることを特徴とする地質採取装置。
【請求項2】
前記硬引線の任意の部分に、可変箆を操作するための操作紐を通すためのガイドが固定されていることを特徴とする請求項1及び2記載の地質採取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−17641(P2012−17641A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169771(P2010−169771)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(594052652)株式会社三友土質エンジニアリング (1)
【Fターム(参考)】