説明

圧力制御弁、圧力制御弁の製造方法、圧力制御弁を搭載した燃料電池システム及びその圧力制御方法

【課題】シール特性、耐久性を有し、また逆止弁としての機能と減圧弁としての機能を併せ有し、小型化を図ることが可能となる圧力制御弁、圧力制御弁の製造方法、圧力制御弁を搭載した燃料電池システム及びその圧力制御方法を提供する。
【解決手段】
圧力制御弁であって、差圧によって動作する可動部1と、1次圧力を2次圧力に減圧する第1の弁3、4、5と、
前記第1の弁が1次圧力を有する流体を導入する導入口12を開く動作を行う際に、該導入口と2次圧力を排出する排出口8との間の流路を閉鎖する動作を行う第2の弁10、11と、
前記可動部と、前記第1及び第2の弁との動作を連動させる伝達機構2と、を有し、前記可動部側または前記第1の弁側のいずれか一方が、前記伝達機構と分離されている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力制御弁、圧力制御弁の製造方法、圧力制御弁を搭載した燃料電池システム及びその圧力制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力容器から流体を供給する際には、圧力を減圧し、一定の圧力の流体を安定して供給するために、減圧弁が設けられてきた。
さらに、圧力容器の圧力が減少した際に、流路から圧力容器への逆流を防止するために、逆止弁を併せて設ける場合も多い。
特に、特許文献1においては、省スペース化のため、減圧弁と逆止弁を1つのユニットの中に収納したものが開示されている。
減圧弁には様々なタイプのものがあるが、アクティブ駆動のもの、パッシブ駆動のものに大きく分類される。
アクティブ駆動の減圧弁は、圧力センサとバルブ駆動手段、制御機構とを備え、2次圧力が設定圧力に減圧されるようにバルブを駆動する。
一方、パッシブ駆動の減圧弁は、設定圧力になると、圧力差を利用して、バルブが自動的に開閉する。さらに、パッシブ型減圧弁は、パイロット型と直動型に大別される。パイロット型はパイロット弁を有し、安定した動作を特徴としている。
また、直動型は、高速応答に対して利点がある。また、気体を作動流体とする場合には、圧縮流体の微小な力でも弁の開閉を確実に行なうため、差圧感知機構として、ダイヤフラムがよく用いられる。
【0003】
通常、直動ダイヤフラム型減圧弁は、ダイヤフラム、ダイヤフラムの動作を弁体に伝えるピストンなどの伝達機構、弁体は、ネジなどにより一体化されている。
しかし、特許文献2に示すようなリリーフ機構を備える弁においては、リリーフ動作実現のためにダイヤフラム(可動部)と伝達機構が分離した構造となっている。
これは、減圧弁の2次圧力が所定の圧力よりも高くなった場合、ダイヤフラム(可動部)が大気側にたわむことで、ピストン(伝達機構)から離れ、該ダイヤフラム(可動部)に設けられたポートから、過剰な圧力を逃がすものである。
リリーフ機構を実現するためには、弁体および伝達機構は、ダイヤフラム(可動部)とは別の部材によって支持されている必要がある。
通常、支持は弁体、あるいは、弁体周囲のガイドと、伝達機構の可動軸上で、弁体に対して伝達機構とは逆側にコイル状のバネを具備することによって実現される。
【0004】
特許文献3においては、ピストンに減圧弁となる1次調整弁と該1次調整弁とは逆の開閉動作により調圧し、該1次調整弁とは1次圧力変化に対する調圧特性が逆特性となる2次調整弁を設けている。
この2次調整弁は、液体燃料を燃料とする燃料電池の燃料供給用として用いた場合に、不使用状態では、閉弁して、逆止弁として機能する。
また、複数の弁体が連結されて、別々の弁座にそれぞれ着座するものに、シャトル弁と呼ばれるものがある。
具体的な構造として、例えば、特許文献4に示されるものがある。
これによると、2つの弁体が連結されているため、一方が着座している時には、もう一方は開いている。
【0005】
また、減圧弁を特に小型化した構成例としては、例えば、特許文献5に示すように、ダ
イヤフラム、弁体、弁体とダイヤフラムを直結するバルブ軸を備えた構造のものが提案されている。
このような構造の減圧弁の製造方法には、非特許文献1に開示されているような製造方法が知られている。この製造方法は、半導体加工技術を用いて、小型の機械要素を作製している点に特徴を有している。
半導体加工技術では、材料には半導体基板が用いられ、成膜、フォトリソグラフィやエッチングといった技術を組み合わせて構造を形成する。
これにより、サブミクロンオーダーの微細加工が可能な上、バッチプロセスにより大量生産化が容易であるという特徴を有する。
特に、減圧弁は、複雑な3次元構造を有するため、半導体基板を垂直にエッチングするためのICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)や、複数の半導体基板を接合するための接合技術などが用いられている。
また、弁体と弁座の間は、シリコン酸化物などの犠牲層を介して接合され、プロセスの後半で、犠牲層をエッチングすることにより、弁座からの弁体のリリースを行なっている。
【0006】
一方、小型の電気機器に搭載するエネルギー源として、小型の燃料電池が注目されている。
燃料電池が小型電気機器の駆動源として有用な理由に体積当たり、重量当たりの供給可能なエネルギー量が従来のリチウムイオン2次電池に比べて、数倍から十倍近くであることが挙げられる。
特に、大きな出力を得るための燃料電池には、水素を燃料に使用するのが最適である。
しかし、水素は常温で気体であり、小型の燃料タンクの中に高密度に水素を貯蔵するための技術が必要である。
【0007】
このような水素を貯蔵するための技術として、つぎのような方法が知られている。
第一の方法は、水素を圧縮して高圧ガスとして保存する方法である。
タンク内のガスの圧力を200気圧にすると体積水素密度は18mg/cm程度となる。
第二の方法は、水素を低温にして、液体として貯蔵する方法である。
水素を液化するためには、大きなエネルギーが必要であること、また、液体水素が自然気化して、漏れだしてしまうことが問題であるが、高密度な保存が可能である。
第三の方法は、水素吸蔵合金を使用して水素を貯蔵する方法である。
この方法では、水素吸蔵合金の比重が大きいため、重量ベースでは、2wt%程度の水素しか吸蔵できず、燃料タンクが重たくなってしまうという問題点があるが、体積ベースでの吸蔵量は大きいので、小型化には有効である。
【0008】
このような固体高分子型燃料電池の発電は、以下の様にして行われる。
高分子電解質膜には、パーフルオロスルホン酸系の陽イオン交換樹脂がよく用いられる。例えば、このような膜としては、デュポン社のナフィオンなどがよく知られている。固体高分子電解質膜を、白金などの触媒を担持した一対の多孔質電極、すなわち、燃料極と酸化剤極とで狭持した膜電極複合体が発電セルとなる。
この発電セルに対して、酸化剤極には酸化剤を、燃料極には燃料極を供給することにより、高分子電解質膜中をプロトンが移動し、発電が行われる。
【0009】
高分子電解質膜は機械的強度を保ち、また、燃料ガスが透過しないようにするために通常50〜200μm程度の厚さのものが使用される。
これらの固体高分子電解質膜の強度は3〜5kg/cm程度である。
従って、差圧による膜の破断を防ぐためには、燃料電池の酸化剤極室と燃料極室との差圧が、平常時には0.5kg/cm、非常時でも1kg/cm以下になるように制御することが好ましい。
燃料タンク圧と酸化剤極室との差圧が上記圧力よりも小さい場合、燃料タンクと燃料極室とを直結し、特に減圧の必要はない。
しかしながら、酸化剤極室が大気に解放されており、また、より高密度に燃料を充填する場合においては、燃料タンクから燃料極室に燃料を供給する過程において、減圧する事が必要となる。
また、発電の起動・停止操作や、発電電力を安定させるためにも、上記機構は必要となる。
特許文献2においては、小型バルブを燃料タンクと燃料電池セルの間に設けることにより、燃料電池セルを大きな圧力差による破断から防ぎ、発電の起動、停止を制御し、発電電力を安定に保っている。特に、燃料供給路と酸化剤供給路との境界にダイヤフラムを使用し、バルブに直結することで、電気を使用しないで、燃料供給路と酸化剤供給路との差圧により駆動し、燃料電池セルに供給する燃料圧を最適に制御する減圧弁を実現している。
【0010】
また、小型の燃料電池は燃料を循環させずに、出口を閉じた状態で消費された燃料分を燃料タンクから供給する方式(デッドエンド方式)がよく用いられる。しかしながら、この方法では、電解質膜を透過して窒素や水蒸気などの不純ガスが燃料流路中に蓄積され、時間とともに発電特性が低下するという課題がある。
そこで、デッドエンド方式の燃料電池では、蓄積した不純ガスを排出するため、掃気(パージ)動作がしばしば行われる。
一方、燃料残量が少なくなっていたり、燃料タンクが冷えていると、燃料タンクの圧力は低下する。この際に、タンクの交換を行ったり、上記のパージ動作を行うと、燃料タンクの圧力が不足しているため、外気が燃料タンク内に逆流してしまう恐れがあった。
燃料タンクに水素吸蔵合金を充填している場合においては、合金表面が酸化や被毒されてしまい、水素の吸蔵量の低下を招く恐れがあった。
そこで、特許文献6においては、燃料電池システム中で、燃料タンクと減圧弁との間、および減圧弁と燃料電池との間に逆止弁を備えるようにした装置が提案されている。
【特許文献1】特開平5−39898号公報
【特許文献2】特開平10−268943号公報
【特許文献3】特開2005−339321号公報
【特許文献4】特開平5−149457号公報
【特許文献5】特開2004−31199号公報
【特許文献6】特開2002−158020号公報
【非特許文献1】A.Debray et al、J. Micromech. Microeng.、15、 S202−S209、2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来例における特許文献1のように、減圧弁と逆止弁を個別に設ける構成では、小型化が困難である上にコスト高となる。
また、上記従来例における特許文献2のように、リリーフ機構を備えた減圧弁では、ダイヤフラム(可動部)とピストン(伝達機構)とを分離した構成を採ることができる。
しかし、弁を閉じるためのバネが、ピストン(伝達機構)軸延長上で、弁体を介して該ピストン(伝達機構)の反対側に位置した構造となっている。
そのため、減圧弁を構成するための部品点数多くなり、構造が複雑となる。
また、このような構成によると、弁体の位置ずれを防ぐため、前記バネとは別に弁体、あるいは、ピストン(伝達機構)などにガイドを設ける必要がある。
しかし、小型の減圧弁においては、小型の軸受けを製作することが非常に困難であり、ガイド部分での摩擦が大きく、また弁を駆動する上で困難が生じる。
また、コイル状のバネや長いピストン軸などは、半導体加工技術やエッチング、プレスといった小型量産技術では作製しにくい形状である。
すなわち、これらは、いずれも燃料電池の小型化を図る上で不向きな構成である。
また、上記従来例における特許文献3のものにおいては、その2次調整弁は、液体燃料を燃料とする燃料電池の燃料供給用として用いた場合に、逆止弁として機能させることができる。
しかし、これは複弁式の圧力調整器であり、一次調整弁が、二次調整弁と連動させるためのシャフトに一体的に設けられていることから、リークなどにより2次圧力が上昇した際に、シャフトに応力がかかり、破損する恐れが生じる。
このような構成では構造が複雑となるだけでなく、昨今におけるより一層の小型化が求められている小型燃料電池システムでの要請に応えることは困難である。また、上記従来例における特許文献4のシャトル弁のように、複数の弁体が連結された構造のものは、小型化を図ることが困難である。
【0012】
また、上記従来例における特許文献5の減圧弁、あるいはこれを従来の半導体加工技術を用いて作製するものにおいては、弁構造として、接合により、ダイヤフラム(可動部)、ピストン(伝達機構)、弁体が一体化されていた。
そのため、減圧弁の2次圧力が過剰に上昇すると、ピストン(伝達機構)や弁体に大きな応力がかかり、破損してしまう恐れがある。
特に、強力な接合強度が要求されるため、接合が不十分なことによる不良品が多くなる恐れがある。
また、複数の半導体基板を接合し、犠牲層をリリースする工程を有する場合には、弁体、あるいは、弁座表面のシール性を高めるために、弾性材料などをコーティングすることは可能である。
しかしながら、作製プロセスが複雑な上、十分な厚さのシール層を設けることが、困難である。
また、このような半導体加工を利用して減圧弁を作製した場合においては、弁部分のシールが十分でなく、リークにより、燃料電池を破損する恐れがある。
また、特許文献6には、燃料タンクと減圧弁との間、および減圧弁と燃料電池との間に逆止弁を備えるようにした装置が開示されている。
しかし、そこには具体的な構造については何も開示しておらず、また従来の小型減圧弁を備えた小型燃料電池においては、逆止弁の機能と減圧弁の機能を併せ有するものはなかった。
また、小型減圧弁が高価であるため、燃料電池のコストが高くなってしまう恐れがあった。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑み、シール特性、耐久性を有し、また逆止弁としての機能と減圧弁としての機能を併せ有し、
小型化を図ることが可能となる圧力制御弁、圧力制御弁の製造方法、圧力制御弁を搭載した燃料電池システム及びその圧力制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下のように構成した圧力制御弁、圧力制御弁の製造方法、圧力制御弁を搭載した燃料電池システム及びその圧力制御方法を提供するものである。
本発明の圧力制御弁は、
差圧によって動作する可動部と、
1次圧力を2次圧力に減圧する第1の弁と、
前記第1の弁が1次圧力を有する流体を導入する導入口を開く動作を行う際に、該導入口と2次圧力を排出する排出口との間の流路を閉鎖する動作を行う第2の弁と、
前記可動部と、前記第1及び第2の弁との動作を連動させる伝達機構と、
を有し、前記可動部側または前記第1の弁側のいずれか一方が、前記伝達機構と分離されていることを特徴とする。
また、本発明の圧力制御弁は、前記第1の弁が、第1の弁座と、第1の弁体と、前記第1の弁体を支持する支持部を備え、
前記支持部が、前記伝達機構によって伝達される前記可動部の動作に応じて、前記第1の弁体と前記第1の弁座部間を開閉可能に、前記第1の弁体を支持していることを特徴とする。
また、本発明の圧力制御弁は、前記第1の弁体を支持する支持部が、前記伝達機構の動作方向に垂直で、かつ前記第1の弁体を含む平面上に設けられている、前記第1の弁体を支持する弾性体によって構成されていることを特徴とする。
また、本発明の圧力制御弁は、前記第2の弁が、前記第1の弁よりも前記流路の上流側に位置していることを特徴とする。
また、本発明の圧力制御弁は、前記第2の弁が、前記第1の弁よりも前記流路の上流側から第2の弁座部を付設することによって構成されていることを特徴とする。
また、本発明の圧力制御弁は、前記可動部が、ダイヤフラムであることを特徴とする。
また、本発明の圧力制御弁は、前記第1及び第2の弁、可動部及び伝達機構のそれぞれが、シート状部材または板状部材で形成され、それらを積層して構成されていることを特徴とする。
また、本発明の圧力制御弁の製造方法は、
差圧によって動作する可動部と、
1次圧力を2次圧力に減圧する第1の弁と、
前記第1の弁が1次圧力を有する流体を導入する導入口を開く動作を行う際に、該導入口と2次圧力を排出する排出口との間の流路を閉鎖する動作を行う第2の弁と、
前記可動部の動作を前記第1及び第2の弁に伝える伝達機構と、
を有し、前記可動部側または前記第1の弁側のいずれか一方が、前記伝達機構と分離されていることを特徴とする圧力制御弁の製造方法であって、
前記可動部を、シート状部材または板状部材で形成する工程と、
前記伝達機構を、シート状部材または板状部材で形成する工程と、
前記第1及び第2の弁を、シート状部材または板状部材で形成する工程と、
上記各工程で形成された各部を積層して圧力制御弁を組み立てる工程と、
を有することを特徴とする。
また、本発明の圧力制御弁の製造方法は、前記シート状部材または板状部材の少なくとも一部に、半導体基板を用いることを特徴とする。
また、本発明の圧力制御弁の製造方法は、前記各工程において、エッチング加工あるいはプレス加工の少なくともいずれかによる構造形成方法と、または、接合あるいは接着加工の少なくともいずれかによる組み立て方法を用いることを特徴とする。
また、本発明の燃料電池システムは、燃料容器と、燃料電池発電部と、これらの間に前記燃料容器からの燃料を前記燃料電池発電部に供給する燃料流路を有し、該燃料流路に圧力制御機構を備えた燃料電池システムにおいて、
前記圧力制御機構として、上記したいずれかに記載の圧力制御弁、または上記したいずれかに記載の圧力制御弁の製造方法によって製造された圧力制御弁が搭載されていることを特徴とする。
また、本発明は、上記した燃料電池システムにおける圧力制御弁の圧力制御方法であって、
前記燃料容器の設定圧力に合わせて、前記第2の弁の動作圧力を調整することを特徴とする。
また、本発明の上記圧力制御方法は、1次圧力が前記燃料容器の通常運転状態における圧力の場合に、2次圧力が外気の圧力よりも大きくなるように制御することを特徴とする。また、本発明の上記圧力制御方法は、1次圧力が予め定められた圧力よりも高い場合に、2次圧力を外気の圧力と等しくした際、前記第2の弁は開状態であり、
前記1次圧力が予め定められた圧力よりも低い場合に、前記2次圧力を外気の圧力と等しくした際、前記第2の弁は閉状態となるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シール特性、耐久性を有し、また逆止弁としての機能と減圧弁としての機能を併せ有し、
小型化を図ることが可能となる圧力制御弁、圧力制御弁の製造方法、圧力制御弁を搭載した燃料電池システム及びその圧力制御方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態を、以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0017】
以下に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1においては、本発明を適用した小型減圧弁における第1の構成例について説明する。
図1に、本実施例の小型減圧弁の構成例を説明するための断面図を示す。
図1において、1はダイヤフラム、2はピストン、3は第1の弁座、4は第1の弁体、5は支持部、8は出口流路、10は第2の弁座、11は第2の弁体、12は入口流路である。
【0018】
本実施例における減圧弁は、可動部となるダイヤフラム1、伝達機構であるピストン2、および、第1の弁を形成する第1の弁座3、第1の弁体4、および、支持部5、第2の弁を形成する第2の弁座10、第2の弁体11、入口流路12、出口流路8からなる。
特に、第1の弁体4は、支持部5によって周囲に支持されている。
支持部5は、弾性を有する梁によって形成されており、例えば、図2(a)や図2(b)に示すような構成を採ることができる。
第1の弁座3が周囲よりも隆起した構造とすると、弁開閉部にかかる圧力が大きくなり、バルブが閉じた状態で支持部のバネがたわんだ状態となり、シール性が向上する。
また、弁体、あるいは、弁座の少なくとも一方の表面に、弁のシール材をコーティングすることにより、シール製を向上することができる。
【0019】
ここで、図1、図3に基づいて、本減圧弁の動作を説明する。
ダイヤフラム(可動部)1上部の圧力をP、バルブ上流の1次圧力をP、バルブ下流の圧力をPとし、第1の弁体4の開口面積をS、第2の弁座10の開口面積をS、ダイヤフラム(可動部)1の面積をS、バネ定数をk、変位量をxとする。このとき、圧力の釣り合いから、
第1の弁体4が開く条件は、次式のとおりである。

【0020】
一方、第2の弁体11が開く条件は、次式のとおりである。

【0021】
それぞれの圧力をP21、P22とすると、次式のとおりとなる。

【0022】
但し、ここで、x、xは、各弁が閉じた時のダイヤフラム1の変位である。
したがって、Pの変化によるバルブの動作は、図3に示すようになる。
すなわち、P>P21では、第1の弁が閉じ(a)、P22<P<P21では弁が開き(b)、P<P22では第2の弁が閉じる(c)。また、P21、P22はPが変化すると変化する。
が変化した際の、P21、P22の変化の様子を表すと、図4に示すグラフのようになる。
21、P22、いずれも、Pが増加するにしたがって、減少することがわかる。
が十分に高いと、制御された2次圧力Pは、P21の線上になるが、Pが低下すると、PとPは等しくなり、さらに低下してとP21交わると、第2の弁が閉じる。したがって、Pの変化は、グラフの実線で表されるように変化する。
【0023】
第1の弁体4の面積やダイヤフラム(可動部)1の面積、ピストン(伝達機構)2の長さ、ダイヤフラム(可動部)1の厚さ、支持部5の梁の形状を調整することで、バルブが開閉する圧力や流量を最適に設計することができる。
特に、ダイヤフラム(可動部)1のバネ定数が支持部5のバネ定数よりも大きい場合には、弁が開く際の圧力は、ダイヤフラム(可動部)1に依存する。
逆に、支持部5のバネ定数が、ダイヤフラム(可動部)1のバネ定数よりも大きい場合には、弁の挙動は、支持部5に依存する。
また、第1の弁体4の突起の高さにより、弁のシール性や弁が動作する圧力が変化する。また、P22は第2の弁体11からの第1の弁体4へ向かうピストン(伝達機構)2の長さを最適に設計することにより、調節することができる。
一方、バルブ下流の圧力Pが設定圧力より高くなった場合には、ダイヤフラム(可動部)1は、上方にたわみ、バルブが閉じる。
この際、第1の弁体4とピストン(伝達機構)2が接合されていないため、第1の弁体4は第1の弁座3と接したところで停止し、ピストン(伝達機構)2のみがダイヤフラム(可動部)1とともに動く。
これにより、圧力上昇で弁が破損するのを防ぐことができる。
【0024】
また、本減圧弁は、図5に示すように、ピストン2が第1の弁体4と一体になり、ダイヤフラム1とは、分離した形とすることもできる。
この場合も動作原理は、図1に示す構造と同様である。
さらに図6(a)に示すように、弁座部および弁体部に電極を設け、両電極の間の接触状態を検知する検出回路を設けることで、弁の開閉状態を知ることができる。
さらに、図6(b)のように、電極表面に絶縁層を設け、両電極間に蓄えられる電気量を検出する検出回路を設けることで、弁の開度を知ることもできる。
【0025】
本実施例の減圧弁は、機械加工技術を用いて、例えば、以下のように作製することがで
きる。
図7は、本減圧弁を第1の弁体4側から見た場合の分解斜視図である。
斜視図から分かるように、シート状部材を重ねあわせることで、減圧弁を作製する。
各部材のサイズは8mm×8mmである。
まず、ダイヤフラム(可動部)1には、バイトンゴムやシリコーンゴムなどの弾性材料、ステンレスやアルミニウムなどの金属材料やプラスチックなどを使用することができる。例えば、ステンレスを材料に用いた場合には、エッチングや切削加工などによりピストンを一体型で作製することができる。
本実施例では、ダイヤフラムには、厚さ50μmのPET基材に厚さ25μmのガスシール性のある接着層を有するホットメルトシート(日東シンコー社)を使用した。
また、ピストン部には、図8(a)の平面図に示すようなダイヤフラム支持部14、第2の弁体11、ピストン2を一体加工したものをステンレスのエッチング加工により作製した。
ダイヤフラム支持部14の厚さは50μm、ピストン2の高さは250μmである。これらのホットメルトシートとSUS部材は、両部材を重ね合わせた状態で、140℃程度に加熱し、数秒間保持することで接着した。
また、ダイヤフラム(可動部)1の下部空間やピストン(伝達機構)2が通過する流路は、ステンレスの機械加工やエッチング加工で作製できる。
加工には切削のような機械加工やエッチングなどを用いることができる。
【0026】
本実施例では、ダイヤフラム(可動部)1の下部空間には、厚さ50μmのPET基材の両面に厚さ25μmのガスシール性のある接着層を有するホットメルトシート(日東シンコー社)を使用した。図8(b)にその平面図を示す。
ピストン(伝達機構)2が通過する流路は、ステンレスの機械加工やエッチング加工で作製できる。平面図を図8(c)に示す。
厚さ250μmのステンレス板をエッチングし、第1の弁座3の突起高さは100μmとした。第2の弁座10の突起は必ずしも必要ではないが、背面からのエッチングにより高さ10μmとした。
弁座部、あるいは、弁体部へのシール材料のコーティングは、パリレンやテフロン(登録商標)などを蒸着してもよいし、シリコーンゴムやポリイミド、テフロン(登録商標)材料などをスピンコーティングやスプレーによって塗布することもできる。
【0027】
本実施例では、弁座を有する部材(図8(c))の両面にシリコーンゴムをスピンコート(3000RPM×30秒)により塗布することで、厚さ40μm程度の均一なシール層を得ることができた。
可動部1の下部空間となるホットメルトシート部材とピストン(伝達機構)2が通過する流路を有するSUS部材とは、両部材を重ね合わせた状態で、140℃程度に加熱し、数秒間保持することで接着した。
支持部5および第1の弁体を有する部材は、ステンレスの機械加工やエッチング加工で作製できる。図8(d)は、本部材の平面図である。
厚さ200μmのSUS部材をエッチングすることにより、本部材を作製した。支持部5の厚さは50μmとした。
本減圧弁の作製工程では、ステンスの2段階エッチングを多用しているが、表面と裏面で、異なるマスクを作製し、両面からエッチングを行なうことで、精度よく簡便に2段階エッチングを行なうことができる。
【0028】
以上のようにして、作製された減圧弁は、大気圧が1気圧程度の時、1次圧力が1気圧以上であれば、2次圧力は0.8気圧(絶対圧)程度になる。
さらに、リーク特性は0.1sccm以下、2次圧力が2.5気圧(絶対圧)でも破損しないものが得られる。さらに、1次圧力が低下した場合には、第2の弁が閉じる。
本実施例では、接着にホットメルトシートを使用している。
この方法は、厚さや位置決めの制御に優れているが、その他の接着剤を塗布したり、金属同士の拡散接合を用いる方法も有効である。
また、各部材はシート状なので、金属部材の加工は、エッチングやプレスが適しており、樹脂部材の加工は、プレス加工や射出成形が適している。
また、本実施例で述べた各部材のうち、一部、あるいは、全部に以下の実施例で述べる半導体加工技術を利用して作製された部材を用いることも可能である。
【0029】
次に、本実施例の小型減圧弁を半導体加工技術を用いた場合の作製方法を説明する。
本実施例によって作製される小型減圧弁は図1に示すような伝達機構(ピストン)2がダイヤフラム(可動部)1と一体となっており、第1の弁体4とは分離しているタイプのものである。
本実施例で作製される小型減圧弁の各部の寸法は、例えば、以下のようにすることができるが、これらは設計に応じて変更可能である。
ダイヤフラム(可動部)は、直径3.6mm、厚さ40μmとすることができる。
ピストン(伝達機構)は、直径260μm、長さ200〜400μmとすることができる。
ピストン通過部流路は、直径400μmとすることができる。
突起部は、幅20μm、高さ10μm、シーリング層厚さ5μm、弁体部は、直径1000μm厚さ200μmとすることができる。
支持部は、長さ1000μm、幅200μm、厚さ10μmとすることができる。
【0030】
次に、本実施例における小型減圧弁の具体的な作製方法について説明する。
図9から図11に、本実施例における小型減圧弁の作製手順を説明するための各工程図を示す。
図9(a)に示す第1のステップは、エッチングのためのマスクパターニング工程である。
第1のシリコンウェハ101には、片面研磨のシリコンウェハも使用可能であるが、両面研磨されたものを用いるのが好ましい。
また、後のエッチング工程において、エッチングの深さを制御するため、SOI(シリコン オン インシュレータ)ウェハを使用するのが好ましい。
さらに、第2の弁体119の弁座との接触部の平面性を向上させるには、2つの酸化物層を有するダブルSOIウェハを用いると良い。
シリコンウェハには例えば、ハンドル層厚さ500μm、酸化物層(BOX層)厚さ1μm、デバイス層厚さ40μmのものを使用することができる。
エッチングのマスクに使用するため、第1のウェハ101の表面の熱酸化を行なう。
1000℃程度に熱した炉の中に、所定量の水素および酸素を流すことによってウェハ表面に酸化物層を形成する。
次に、本工程および次工程で2段階のエッチングを行うため、シリコン酸化物層、およびフォトレジストによる2層構造を有するマスクを作製する。
まず、フォトレジストによりウェハ表面を保護する。
次に、ウェハ裏面にフォトレジストをスピンコートし、プリベイク後、露光を行い、ダイヤフラム(可動部)下面流路作製のためのパターニングを行う。
さらに、現像、ポストベイクを行う。フォトレジストをマスクとして、フッ酸により、酸化物層をエッチングする。さらに、第2の弁体119形成のためのマスクをパターニングする。
すなわち、フォトレジストをスピンコートし、プリベイク後、露光を行い、現像、ポストベイクを行う。
本実施例では、2段階のマスクとして、フォトレジストとシリコン酸化物層を使用したが、その他にも、厚さの異なるシリコン酸化物層を用いたり、アルミニウム層を用いたりす
ることによっても実現可能である。
【0031】
図9(b)に示す第2のステップは、ICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)によって伝達機構の支持部を形成する工程である。
エッチングの深さは、エッチング時間によって制御するが、190μm程度のエッチングを行なう。
最後にフォトレジストマスクをアセトンによって取り除く。
この際ダブルSOIウェハを用いていれば、酸化物層をエッチストップ層として使用することができる。
図9(c)に示す第3のステップは、ダイヤフラム(可動部)111、および、伝達機構115を作製する工程である。
CP−RIE(リアクティブイオンエッチング)により、ウェハをエッチングする。
エッチングの深さは時間によって制御しても良いし、図のようにSOIウェハの酸化物層(BOX層)をエッチストップ層として使用してもよい。
さらに、マスクとして使用したシリコン酸化物層をフッ酸によって取り除く。
以上のように、本実施例では伝達機構とダイヤフラム(可動部)の間に支持部を形成するために、2段マスクを使用した2段階エッチングを行なった。しかしながら、必要なバネ定数によっては、上記支持部は必要なく、その場合、マスクは1枚マスクで十分であり、第2の工程も不要となる。
図9(d)に示す第4のステップは、シール面のコーティングを行なう工程である。
コーティングは図のように弁体側に行なっても良いし、弁座側に行なっても良い。コーティング材料としては、パリレン、サイトップ、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミドなどがある。
パリレン、PTFEは、蒸着によって、サイトップ、ポリイミドはスピンコーティングによってコーティング可能である。その他、スプレーによるコーティングも可能である。
【0032】
図10(e)に示す第5のステップは、エッチングのためのマスクパターニング工程である。
第2のシリコンウェハ102には、両面研磨されたものを用いるのが好ましい。さらに、後のエッチング工程において、エッチングの深さを制御するため、SOI(シリコン オン インシュレータ)ウェハを使用するのが好ましい。
さらに、第2の弁座の弁体との接触部の平面性を向上させるには、2つの酸化物層を有するダブルSOIウェハを用いると良い。
シリコンウェハには例えば、ハンドル層厚さ500μm、酸化物層(BOX層)厚さ1μm、のデバイス層厚さ5μmのものを裏返して、図では、ハンドル層が上になるようにして使用する。
エッチングのマスクに使用するため、第2のウェハ102の表面の熱酸化を行なう。
1000℃程度に熱した炉の中に、所定量の水素および酸素を流すことによってウェハ表面に酸化物層を形成する。
次に、本工程および次工程で2段階のエッチングを行うため、シリコン酸化物層、およびフォトレジストによる2層構造を有するマスクを作製する。
まず、フォトレジストによって、ウェハ裏面を保護する。
次に、フォトレジストをスピンコートし、プリベイク後、露光を行い、ダイヤフラム(可動部)下面流路作製のためのパターニングを行う。
さらに、現像、ポストベイクを行う。フォトレジストをマスクとして、フッ酸により、酸化物層をエッチングする。さらに、伝達機構115周囲の流路のためのマスクをパターニングする。
すなわち、フォトレジストをスピンコートし、プリベイク後、露光を行い、現像、ポストベイクを行う。
本実施例では、2段階のマスクとして、フォトレジストとシリコン酸化物層を使用したが
、その他にも、厚さの異なるシリコン酸化物層を用いたり、アルミニウム層を用いたりすることによっても実現可能である。
【0033】
図10(f)に示す第6のステップは、ICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)によってピストン(伝達機構)を形成する。エッチングの深さは、エッチング時間によって制御するが、200μm程度のエッチングを行なう。最後にフォトレジストマスクをアセトンによって取り除く。この際、ダブルSOIウェハを用いていれば、酸化物層をエッチストップ層として使用することができる。
この第6のステップでのエッチング深さと、第2のステップでのエッチング深さの関係で、第2の弁体119が閉じる際の2次圧力が決定される。
図10(g)に示す第7のステップでは、ダイヤフラム(可動部)下部の流路を作製する工程である。
CP−RIE(リアクティブイオンエッチング)により、ウェハをエッチングする。エッチングの深さは時間によって制御しても良いし、図のようにSOIウェハの酸化物層(BOX層)をエッチストップ層として使用してもよい。
図10(g)に示す第7のステップは、弁座部112を形成する工程である。
ウェハ裏面に、フォトレジストをスピンコートし、プリベイク後、露光を行う。フッ酸により、シリコン酸化物層をエッチングしパターニングする。
ICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)によってエッチングして弁座部112を形成する。第1のウェハ101にSOIウェハを使用した場合には、中間の酸化物層をエッチストップレイヤーとして使用することができ、弁座部の突起高さを精度よく制御できるとともに、エッチング後の表面を平坦に保つことができる。エッチング後、フッ酸により、マスクを取り除く。
【0034】
図10(h)に示す第8のステップは、第3のシリコンウェハ103を用いたエッチングのためのマスクパターニング工程である。
第3のシリコンウェハ103には、片面研磨のシリコンウェハも使用可能であるが、両面研磨されたものを用いるのが好ましい。
さらに、後のエッチング工程において、エッチングの深さを制御するため、SOI(シリコン オン インシュレータ)ウェハを使用するのが好ましい。
シリコンウェハには例えば、ハンドル層厚さ200μm、酸化物層(BOX層)厚さ1μm、デバイス層厚さ10μmのものを使用することができる。
エッチングのマスクに使用するため、第3のウェハ103の表面の熱酸化を行なう。1000℃程度に熱した炉の中に、所定量の水素および酸素を流すことによってウェハ表面に酸化物層を形成する。
次に、ウェハ表面をフォトレジストによって保護し、裏面に弁体形成のためのパターニングを行なう。フォトレジストをスピンコートし、プリベイク後、露光を行う。
さらに、現像、ポストベイクを行う。フォトレジストをマスクとして、フッ酸により、酸化物層をエッチングする。
表面、および、裏面のフォトレジストをアセトンにより除去する。本工程において、マスクにはシリコン酸化物の他に、フォトレジストやアルミニウムを使用することが可能である。
【0035】
図11(i)に示す第9のステップは、支持部114を形成するためのマスクをパターニングする工程である。
ウェハ裏面をフォトレジストによって保護し、表面に支持部形成のためのパターニングを行なう。フォトレジストをスピンコートし、プリベイク後、露光を行う。
さらに、現像、ポストベイクを行う。フォトレジストをマスクとして、フッ酸により、酸化物層をエッチングする。表面、および、裏面のフォトレジストをアセトンにより除去する。
図11(j)に示す第10のステップは、第1の弁体113を形成する工程である。
ICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)によって、ウェハ背面のエッチングを行なう。エッチングの深さは時間によって制御しても良いし、SOIウェハの酸化物層(BOX層)をエッチストップ層として使用してもよい。
図11(k)に示す第11のステップは、支持部を形成する工程である。
ICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)によって、ウェハ表面のエッチングを行なう。
SOIウェハを使用している場合には、この際に支持部の厚さを精度よく制御できるため、バネ定数の誤差が少ない支持部が得られる。エッチング後、マスクに使用した酸化物層はフッ酸によって取り除く。
図11(l)に示す第12のステップは、シール面のコーティングを行なう工程である。コーティングは図のように弁体側に行なっても良いし、弁座側に行なっても良い。コーティング材料としては、パリレン、サイトップ、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミドなどがある。
パリレン、PTFEは、蒸着によって、サイトップ、ポリイミドはスピンコーティングによってコーティング可能である。その他、スプレーによるコーティングも可能である。
図11(m)に示す第13のステップは、組み立て工程である。
第6のステップまでで作製したダイヤフラム(可動部)111および弁座部112を有する部材と、第11の工程までで作製した第1の弁体113を有する部材を重ね合わせることにより、小型減圧弁が完成する(図11(n))。
【0036】
[実施例2]
実施例2においては、本発明を適用した小型減圧弁における第2の構成例について説明する。
図12に、本実施例の小型減圧弁の構成例を説明するための断面図を示す。
図12において、201はダイヤフラム、202はピストン、203は第1の弁座、204は弁体、205は支持部、208は出口流路、210は第2の弁座、212は入口流路、213はスペーサである。
【0037】
本実施例における減圧弁は、可動部となるダイヤフラム201、伝達機構であるピストン202、第1の弁座203、弁体204、支持部205、第2の弁座210、入口流路212、出口流路208、スペーサ213からなる。
特に、弁体204は、支持部205によって周囲に支持されており、上下両面がそれぞれ、第1の弁座203、第2の弁座210に着座可能になっている。
支持部205は、弾性を有する梁によって形成されており、例えば、図2(a)や図2(b)に示すような構成を採ることができる。
第1の弁座203が周囲よりも隆起した構造とすると、弁開閉部にかかる圧力が大きくなり、バルブが閉じた状態で支持部のバネがたわんだ状態となり、シール性が向上する。また、弁体、あるいは、弁座の少なくとも一方の表面に、弁のシール材をコーティングすることにより、シール性を向上することができる。
本実施例の構成が実施例1の構成と異なる主な点は、逆止機能を有する第2の弁が、減圧機能を有する第1の弁よりも上流にある点である。
このような構成とすることで、シート状、あるいは、板状構造の重ねあわせによって、本発明の機能を有する減圧弁を作製する場合に、加工しやすいという利点がある。
また、既存の小型減圧弁に対し、図13に示すように、スペーサ213、第2の弁座210を有する部材を付加するだけで、本発明の機能を達成することができるという利点もある。
【0038】
ここで、図12に基づいて、本減圧弁の動作を説明する。
ダイヤフラム(可動部)201上部の圧力をP、バルブ上流の1次圧力をP、バルブ
下流の圧力をPとする。
また、第1の弁体204の開口面積をS、第2の弁座210の開口面積をS、ダイヤフラム(可動部)201の面積をS、バネ定数をk、変位量をxとする。
このとき、圧力の釣り合いから、第1の弁体204が開く条件は、次式のとおりとなる。

【0039】
一方、第2の弁座210が開く条件は、次式のとおりとなる。

【0040】
それぞれの圧力をP21、P22とすると、次式のとおりとなる。

【0041】
但し、ここで、x、xは、各弁が閉じた時のダイヤフラム201の変位である。
したがって、Pの変化によるバルブの動作は、図14に示すようになる。
すなわち、P>P21では、第1の弁が閉じ(a)、P22<P<P21では弁が開き(b)、P<P22では第2の弁が閉じる(c)。
また、P21、P22はPが変化すると変化する。Pが変化した際の、P21、P22の変化の様子を表すと、図4に示すグラフのようになる。
21、P22、いずれも、Pが増加するにしたがって、減少することがわかる。
が十分に高いと、制御された2次圧力Pは、P21の線上になるが、Pが低下すると、PとPは等しくなり、さらに低下してとP21交わると、第2の弁が閉じる。したがって、Pの変化は、グラフの実線で表されるように変化する。
【0042】
弁体部204の面積やダイヤフラム(可動部)201の面積、ピストン(伝達機構)202の長さ、ダイヤフラム(可動部)201の厚さ、支持部205の梁の形状を調整することで、バルブが開閉する圧力や流量を最適に設計することができる。
特に、ダイヤフラム(可動部)201のバネ定数が支持部205のバネ定数よりも大きい場合には、弁が開く際の圧力は、ダイヤフラム(可動部)201に依存する。
逆に、支持部205のバネ定数が、ダイヤフラム(可動部)201のバネ定数よりも大きい場合には、弁の挙動は、支持部205に依存する。また、第1の弁体204の突起の高さにより、弁のシール性や弁が動作する圧力が変化する。
また、P22はスペーサ213の厚さを最適に設計することにより、調節することができる。
一方、バルブ下流の圧力Pが設定圧力より高くなった場合には、ダイヤフラム(可動部
)201は、上方にたわみ、バルブが閉じる。
この際、弁体204とピストン(伝達機構)202が接合されていないため、弁体204は第1の弁座203と接したところで停止し、ピストン(伝達機構)202のみがダイヤフラム(可動部)201とともに動く。
これにより、圧力上昇で弁が破損するのを防ぐことができる。
【0043】
また、本実施例の減圧弁は、図15に示すように、ピストン202が第1の弁体204と一体になり、ダイヤフラム201とは、分離した形とすることもできる。
この場合も動作原理は、図12に示す構造と同様である。
実施例1と同様に、弁座部および弁体部に電極を設け、両電極の間の接触状態を検知する検出回路を設けることで、弁の開閉状態を知ることができる。
さらに、電極表面に絶縁層を設け、両電極間に蓄えられる電気量を検出する検出回路を設けることで、弁の開度を知ることもできる。
【0044】
本実施例の減圧弁は、機械加工技術を用いて、例えば、以下のように作製することができる。
図16は、本実施例における減圧弁を第2の弁座210側から見た場合の分解斜視図である。
この斜視図から分かるように、シート状部材を重ねあわせることで、減圧弁を作製する。各部材のサイズは8mm×8mmである。
まず、ダイヤフラム(可動部)201には、バイトンゴムやシリコーンゴムなどの弾性材料、ステンレスやアルミニウムなどの金属材料やプラスチックなどを使用することができる。
例えば、ステンレスを材料に用いた場合には、エッチングや切削加工などによりピストンを一体型で作製することができる。
本実施例では、ダイヤフラムには、厚さ50μmのPET基材に厚さ25μmのガスシール性のある接着層を有するホットメルトシート(日東シンコー社)を使用した。
また、ピストン部には、図17(a)の平面図に示すようなダイヤフラム支持部214、ピストン202を一体加工したものをステンレスのエッチング加工により作製した。
ダイヤフラム支持部214の厚さは50μm、ピストン202の高さは250μmである。
【0045】
これらのホットメルトシートとSUS部材は、両部材を重ね合わせた状態で、140℃程度に加熱し、数秒間保持することで接着した。
また、ダイヤフラム(可動部)201の下部空間やピストン(伝達機構)202が通過する流路は、ステンレスの機械加工やエッチング加工で作製できる。
本実施例では、ダイヤフラム(可動部)201の下部空間には、厚さ50μmのPET基材の両面に厚さ25μmのガスシール性のある接着層を有するホットメルトシート(日東シンコー社)を使用した。平面図を図17(b)に示す。
ピストン(伝達機構)202が通過する流路は、ステンレスの機械加工やエッチング加工で作製できる。平面図を図17(c)に示す。
厚さ250μmのステンレス板をエッチングし、第1の弁座203の突起高さは100μmとした。
第1の弁座203、あるいは、弁体部へのシール材料のコーティングは、パリレンやテフロン(登録商標)などを蒸着してもよい。
あるいは、シリコーンゴムやポリイミド、テフロン(登録商標)材料などをスピンコーティングやスプレーによって塗布することもできる。
【0046】
本実施例では、図17(c)に示すように、弁座を有する部材にシリコーンゴムをスピンコート(3000RPM×30秒)により塗布することで、厚さ40μm程度の均一な
シール層を得ることができた。
可動部201の下部空間となるホットメルトシート部材とピストン(伝達機構)202が通過する流路を有するSUS部材とは、両部材を重ね合わせた状態で、140℃程度に加熱し、数秒間保持することで接着した。
支持部205および弁体204を有する部材は、ステンレスの機械加工やエッチング加工で作製できる。図17(d)は、本部材の平面図である。
厚さ200μmのSUS部材をエッチングすることにより、本部材を作製した。支持部205の厚さは50μmとした。
スペーサの材料には、ステンレスなどの金属材料や樹脂材料が使用できる。
【0047】
本実施例では厚さ150μmのステンレス板をエッチングにより加工し、両面をシリコーンゴムのスピンコートでコーティングした。
コーティング条件は、第1の弁座203のコーティングと同様である。
また、第2の弁座210を有する部材の形状および加工方法は、第1の弁座203を有する部材と同様である。これらの部材を積層することで、本実施例の減圧弁を機械加工により実現することができる。
本実施例における減圧弁の作製工程では、ステンスの2段階エッチングを多用しているが、表面と裏面で、異なるマスクを作製し、両面からエッチングを行なうことで、精度よく簡便に2段階エッチングを行なうことができる。
本実施例の構成では、実施例1に比べ、ピストンと第1の弁体を作製するためや、第1の弁座と第2の弁座を作製するために、多段のエッチングを行う必要がなく、作製しやすいという利点がある。
【0048】
以上のようにして、作製された減圧弁は、大気圧が1気圧程度の時、1次圧力が1気圧以上であれば、2次圧力は0.8気圧(絶対圧)程度になる。
さらに、リーク特性は0.1sccm以下、2次圧力が2.5気圧(絶対圧)でも破損しないものが得られる。さらに、1次圧力が低下した場合には、第2の弁が閉じる。
本実施例では、接着にホットメルトシートを使用している。
この方法は、厚さや位置決めの制御に優れているが、その他の接着剤を塗布したり、金属同士の拡散接合を用いる方法も有効である。
また、各部材はシート状なので、金属部材の加工は、エッチングやプレスが適しており、樹脂部材の加工は、プレス加工や射出成形が適している。
また、本実施例で述べた各部材のうち、一部、あるいは、全部に以下の実施例で述べる半導体加工技術を利用して作製された部材を用いることも可能である。
【0049】
本実施例の構成を有する小型減圧弁を、半導体加工技術を用いて作製した場合の第1の加工方法について説明する。
本実施例によって作製される小型減圧弁は図15に示すようなピストン(伝達機構)が弁体と一体となっており、可動部(ダイヤフラム)とは、分離しているタイプのものである。
本実施例で作製される小型減圧弁の各部の寸法は、例えば、以下のようにすることができるが、設計に応じて変更可能である。
ダイヤフラム(可動部)は、直径3.6mm、厚さ40μmとすることができる。
ピストン(伝達機構)は、直径260μm、長さ200〜400μmとすることができる。
ピストン通過部流路は、直径400μmとすることができる。
突起部は、幅20μm、高さ10μm、シーリング層厚さ5μm、弁体は、直径1000μm厚さ200μmとすることができる。
支持部は、長さ1000μm、幅200μm、厚さ10μmとすることができる。
【0050】
次に、本実施例の上記第1の加工方法におけるの具体的な作製工程について説明する。図18から図22に、本実施例における小型減圧弁の作製手順を説明するための各工程図を示す。
図18(a)に示す第1のステップは、第1のシリコンウェハ101にダイヤフラム(可動部)を作製する工程である。
ウェハには、片面研磨のシリコンウェハも使用可能であるが、両面研磨されたものを用いるのが好ましい。
さらに、後のエッチング工程において、エッチングの深さを制御するため、SOI(シリコン オン インシュレータ)ウェハを使用するのが好ましい。
シリコンウェハには、例えば、ハンドル層厚さ200μm、酸化物層(BOX層)厚さ1μm、のデバイス層厚さ40μmのものが使用できる。
第1のウェハ101にエッチングのためのマスクを作製する。エッチングは、ICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)を用いて、深さ200μm程度行なう。
その際、マスクには、厚さ1μm以上の厚膜フォトレジスト、あるいは、アルミニウムなどの金属膜、あるいは、ウェハ表面を熱酸化するシリコン酸化物層を使用することができる。
例えば、シリコン酸化物層をマスクに使用する場合には、まず、1000℃程度に熱した炉の中に、所定量の水素および酸素を流すことによって、ウェハ表面に酸化物層を形成する。
次に、ウェハ表面に、フォトレジストをスピンコートし、プリベイク後、露光を行う。
さらに、現像、ポストベイクを行う。フォトレジストをマスクとして、フッ酸により、酸化物層をエッチングする。
このようにして得られたマスクを使用して、ダイヤフラム(可動部)111をICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)によって形成する。
エッチングの深さは時間によって制御しても良いし、SOIウェハの酸化物層(BOX層)をエッチストップ層として使用してもよい。
エッチング後、マスクに使用したシリコン酸化物層をフッ酸により取り除く。
【0051】
図18(b)に示す第2のステップは、ウェハのダイレクトボンディング工程である。新しい第2のシリコンウェハ102の表面を熱酸化する。
第2のシリコンウェハには、両面研磨したものを使用するのが好ましい。
さらに、後のエッチング工程において、第1の弁座112の突起の深さを制御するため、SOI(シリコン オン インシュレータ)ウェハを使用するのが好ましい。
シリコンウェハには、例えば、ハンドル層厚さ200μm、酸化物層(BOX層)厚さ1μm、デバイス層厚さ5μmのものが使用できる。熱酸化工程は、第1の工程と同様である。
次に、第1のウェハ101、および、第2のウェハ102をSPM洗浄(80℃に熱した過酸化水素水と硫酸の混合液中で洗浄)後、薄いフッ酸で洗浄する。
第1のウェハ101と第2のウェハ102を重ね、1500N程度で加圧しながら、試料を3時間で1100℃に加熱し、4時間保持後、自然冷却によりアニールを行う。
【0052】
図18(c)に示す第3のステップでは、ピストン(伝達機構)が通過するための流路を形成する工程である。
本工程および次工程で2段階のエッチングを行うため、シリコン酸化物層、および、フォトレジストによる2層構造を有するマスクを作製する。
まず、背面にフォトレジストをスピンコートし、プリベイク後、露光を行い、第1の弁座112作製のためのパターニングを行う。
さらに、現像、ポストベイクを行う。フォトレジストをマスクとして、フッ酸により、酸化物層をエッチングする。
さらに、流路形成のためのマスクをパターニングする。すなわち、背面にフォトレジスト
をスピンコートし、プリベイク後、露光を行い、現像、ポストベイクを行う。
その後、ICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)によって流路を形成する。SOIウェハを使用した場合には、中間の酸化物層までエッチングを行なった後、フッ酸によって、酸化物層を取り除く。
マスクに用いたフォトレジストは、アセトンによって取り除く。
【0053】
図18(d)に示す第4のステップは、前工程で作製した第1の弁座112形成のためのマスクを使用して、ICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)によって第1の弁座112を形成する工程である。
SOIウェハを使用した場合には、中間の酸化物層をエッチストップレイヤーとして使用することができ、第1の弁座の突起高さを精度よく制御できるとともに、エッチング後の表面を平坦に保つことができる。
エッチング後、マスクに使用したシリコン酸化物層をフッ酸によって取り除く。
本実施例では、2段階のマスクとして、フォトレジストとシリコン酸化物層を使用したが、その他にも、厚さの異なるシリコン酸化物層を用いたり、アルミニウム層を用いたりすることによっても実現可能である。
【0054】
図19(e)に示す第5のステップは、第3のウェハ103を使用して、弁体113を形成するためのマスクを作製する工程である。
ウェハには、片面研磨のシリコンウェハも使用可能であるが、両面研磨されたものを用いるのが好ましい。
さらに、後のエッチング工程において、エッチングの深さを制御するため、SOI(シリコン オン インシュレータ)ウェハを使用するのが好ましい。
シリコンウェハには例えば、ハンドル層厚さ200μm、酸化物層(BOX層)厚さ1μm、デバイス層厚さ10μmのものが使用できる。
まず、第3のシリコンウェハ103の熱酸化を行なう。熱酸化は、1000℃程度に熱した炉の中に、所定量の水素および酸素を流すことによって行われる。
次に、表面の酸化物層をフォトレジストで保護した後、裏面の酸化物層のパターニングを行なう。ウェハ裏面に、フォトレジストをスピンコートし、プリベイク後、露光を行う。さらに、現像、ポストベイクを行う。フォトレジストをマスクとして、フッ酸により、酸化物層をエッチングすることにより弁座形成のためのパターニングを行なう。
パターニング後はアセトンにより、表面および裏面のフォトレジストを除去する。
【0055】
図19(f)に示す第6のステップは、支持部114を形成するためのマスクを作製する工程である。
まず、裏面の酸化物層をフォトレジストで保護した後、表面の酸化物層のパターニングを行なう。
ウェハ表面に、フォトレジストをスピンコートし、プリベイク後、露光を行う。さらに、現像、ポストベイクを行う。フォトレジストをマスクとして、フッ酸により、酸化物層をエッチングすることにより支持部形成のためのパターニングを行なう。
パターニング後はアセトンにより、表面および裏面のフォトレジストを除去する。
図19(g)に示す第7のステップは、弁体を形成する工程である。
ICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)によって、ウェハ背面のエッチングを行なう。
エッチングの深さは時間によって制御しても良いし、SOIウェハの酸化物層(BOX層)をエッチストップ層として使用してもよい。
図19(h)に示す第8のステップは、支持部を形成する工程である。
ICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)によって、ウェハ表面のエッチングを行なう。
SOIウェハを使用している場合には、この際に支持部の厚さを精度よく制御できるため
、バネ定数の誤差が少ない支持部が得られる。
エッチング後、マスクに使用した酸化物層はフッ酸によって取り除く。
【0056】
図20(i)に示す第9のステップは、第3のウェハ103に第4のウェハ104を接合する工程である。
ウェハには、両面研磨のものを使用するのが好ましい。ウェハの厚さはピストン(伝達機構)の高さにあわせて選択するが、例えば、厚さ400μmのものが使用することができる。
第4のウェハ104は、表面を熱酸化によって酸化しておく。
次に、第3のウェハ103、および、第4のウェハ104をSPM洗浄(80℃に熱した過酸化水素水と硫酸の混合液中で洗浄)後、薄いフッ酸で洗浄する。
第3のウェハ103と第4のウェハ104を重ね、1500N程度で加圧しながら、試料を3時間で1100℃に加熱し、4時間保持後、自然冷却によりアニールを行う。
図20(j)に示す第10のステップは、伝達機構115を形成する工程である。
まず、エッチングのためのマスクのパターニングを行なう。マスクには、ウェハ表面のシリコン酸化物層を使用する。
次にICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)によってエッチングを行ない、伝達機構を形成する。エッチングは、ボンディング面のシリコン酸化物層で停止する。
図20(k)に示す第11のステップは、シール面のコーティングを行なう工程である。コーティングは図のように弁体側に行なっても良いし、弁座側に行なっても良い。コーティング材料としては、パリレン、サイトップ、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミドなどがある。
パリレン、PTFEは、蒸着によって、サイトップ、ポリイミドはスピンコーティングによってコーティング可能である。その他、スプレーによるコーティングも可能である。
【0057】
図21(l)に示す第12のステップは、エッチングのためのマスクパターニング工程である。
第5のシリコンウェハ105には、片面研磨のシリコンウェハも使用可能であるが、両面研磨のものを利用するのが好ましい。
さらに、後のエッチング工程において、エッチングの深さを制御するため、SOI(シリコン オン インシュレータ)ウェハを使用するのが好ましい。
特に、2つの酸化物層を有するダブルSOIウェハを用いるのが好ましい。
シリコンウェハの各層の厚さは、例えば、図の下面から順に、シリコン層300μm、酸化物層(BOX層)厚さ1μm、シリコン層5μm、酸化物層(BOX層)厚さ1μm、シリコン層10μmのものを使用する。
エッチングのマスクに使用するため、第5のウェハ105の表面の熱酸化を行なう。
1000℃程度に熱した炉の中に、所定量の水素および酸素を流すことによってウェハ表面に酸化物層を形成する。
次に、表面の酸化物層をフォトレジストで保護した後、裏面の酸化物層のパターニングを行なう。ウェハ裏面に、フォトレジストをスピンコートし、プリベイク後、露光を行う。さらに、現像、ポストベイクを行う。フォトレジストをマスクとして、フッ酸により、酸化物層をエッチングすることにより入口流路117形成のためのパターニングを行なう。パターニング後はアセトンにより、表面および裏面のフォトレジストを除去する。
【0058】
図21(m)に示す第13のステップは、入口流路117を形成する工程である。
ICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)によって、ウェハ背面のエッチングを行なう。
エッチングの深さはSOIウェハの酸化物層(BOX層)をエッチストップ層として使用することで調節する。
図21(n)に示す第14のステップは、パターニング及び第2の弁座120を形成する
工程である。
本工程および次工程で2段階のエッチングを行うため、シリコン酸化物層、およびフォトレジストによる2層構造を有するマスクを作製する。
フォトレジストをスピンコートし、プリベイク後、露光を行い、スペーサ121作製のためのパターニングを行う。
さらに、現像、ポストベイクを行う。フォトレジストをマスクとして、フッ酸により、酸化物層をエッチングする。
さらに、第2の弁座120形成のためのマスクをパターニングする。
すなわち、フォトレジストをスピンコートし、プリベイク後、露光を行い、現像、ポストベイクを行う。
本実施例では、2段階のマスクとして、フォトレジストとシリコン酸化物層を使用したが、その他にも、厚さの異なるシリコン酸化物層を用いたり、アルミニウム層を用いたりすることによっても実現可能である。
さらに、ICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)によって第2の弁座120を形成する。
【0059】
図22(o)に示す第15のステップは、スペーサ121を作製する工程である。
CP−RIE(リアクティブイオンエッチング)により、ウェハをエッチングする。さらにマスクとして使用したシリコン酸化物層をフッ酸によって取り除く。図22(p)に示す第16のステップは、シール面のコーティングを行なう工程である。
コーティング材料としては、パリレン、サイトップ、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミドなどがある。
パリレン、PTFEは、蒸着によって、サイトップ、ポリイミドはスピンコーティングによってコーティング可能である。その他、スプレーによるコーティングも可能である。
図22(q)に示す第17のステップは、組み立て工程である。
ダイヤフラム(可動部)111および第1の弁座112を有する部材と、伝達機構115および弁体113を有する部材と、第2の弁座120を有する部材を重ね合わせることにより、小型減圧弁が完成する。
本実施例において、ボンディングはシリコンの拡散接合技術を用いているが、本実施例で作製される減圧弁ではピストン(伝達機構)での接合に大きな強度を必要としない。
そのため、接合面に金属膜を予め成膜しておき、金属同士で接合を行なう方法や、接着剤などを使用することも可能である。
【0060】
つぎに、本実施例の小型減圧弁を、半導体加工技術を用いて作製した場合の第2の加工方法について説明する。
本実施例によって作製される小型減圧弁は図12に示すような伝達機構(ピストン(伝達機構))がダイヤフラム(可動部)と一体となっており、弁体とは、分離しているタイプのものである。
実施例1に比べ、接合工程が2回から1回になるため、歩留まり、および、スループットを向上できる。
さらに、ウェハを4枚から3枚に減らすことができるので、コストも低減できる。
また、後に述べるように、ダイヤフラム(可動部)部の形状を中央部に支持部を有するドーナツ形状にすることにより、ダイヤフラム(可動部)の剛性を最適化できる点でも有利である。
【0061】
本実施例で作製される小型減圧弁の各部の寸法は、例えば、以下のようにすることができるが、これらは設計に応じて変更可能である。
ダイヤフラム(可動部)は、直径3.6mm、厚さ40μmとすることができる。
ピストン(伝達機構)は、直径260μm、長さ200〜400μmとすることができる。
ピストン通過部流路は、直径400μmとすることができる。
突起部は、幅20μm、高さ10μm、シーリング層厚さ5μm、弁体は、直径1000μm厚さ200μmとすることができる。
支持部は、長さ1000μm、幅200μm、厚さ10μmとすることができる。
【0062】
次に、本実施例の上記第2の加工方法におけるの具体的な作製工程について説明する。図23から図24に、本実施例における小型減圧弁の作製手順を説明するための各工程図を示す。
図23(a)に示す第1のステップは、エッチングのためのマスクパターニング工程である。
第1のシリコンウェハ101には、片面研磨のシリコンウェハも使用可能であるが、両面研磨されたものを用いるのが好ましい。
さらに、後のエッチング工程において、エッチングの深さを制御するため、SOI(シリコン オン インシュレータ)ウェハを使用するのが好ましい。
シリコンウェハには例えば、ハンドル層厚さ300μm、酸化物層(BOX層)厚さ1μm、デバイス層厚さ5μmのものを裏返して、図では、ハンドル層が上になるようにして使用する。
エッチングのマスクに使用するため、第1のウェハ101の表面の熱酸化を行なう。
1000℃程度に熱した炉の中に、所定量の水素および酸素を流すことによってウェハ表面に酸化物層を形成する。
次に、本工程および次工程で2段階のエッチングを行うため、シリコン酸化物層、およびフォトレジストによる2層構造を有するマスクを作製する。
フォトレジストをスピンコートし、プリベイク後、露光を行い、ダイヤフラム(可動部)下面流路作製のためのパターニングを行う。
さらに、現像、ポストベイクを行う。フォトレジストをマスクとして、フッ酸により、酸化物層をエッチングする。さらに、伝達機構115形成のためのマスクをパターニングする。
すなわち、フォトレジストをスピンコートし、プリベイク後、露光を行い、現像、ポストベイクを行う。
本実施例では、2段階のマスクとして、フォトレジストとシリコン酸化物層を使用したが、その他にも、厚さの異なるシリコン酸化物層を用いたり、アルミニウム層を用いたりすることによっても実現可能である。
【0063】
図23(b)に示す第2のステップは、ICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)によってピストン(伝達機構)を形成する工程である。
エッチングの深さは、エッチング時間によって制御するが、150μm程度のエッチングを行なう。最後にフォトレジストマスクをアセトンによって取り除く。図23(c)に示す第3のステップでは、ダイヤフラム(可動部)下部の流路を作製する工程である。
CP−RIE(リアクティブイオンエッチング)により、ウェハをエッチングする。
エッチングの深さは時間によって制御しても良いし、図のようにSOIウェハの酸化物層(BOX層)をエッチストップ層として使用してもよい。
さらにマスクとして使用したシリコン酸化物層をフッ酸によって取り除く。
図23(d)に示す第4のステップは、ウェハのダイレクトボンディング工程である。
第2のシリコンウェハには、両面研磨したものを使用するのが好ましい。さらに、後のエッチング工程において、第1の弁座112の高さを制御するため、SOI(シリコン オン インシュレータ)ウェハを使用するのが好ましい。シリコンウェハには例えば、ハンドル層厚さ200μm、酸化物層(BOX層)厚さ1μm、デバイス層厚さ40μmのものがあり、デバイス層をダイヤフラム(可動部)として使用する。後のエッチングでシリコン酸化物をエッチングの際のマスクとして使用する場合には、第1の工程と同様に熱酸化を行なう。次に、第1のウェハ101、および、第2のウェハ102をSPM洗浄(8
0℃に熱した過酸化水素水と硫酸の混合液中で洗浄)後、薄いフッ酸で洗浄する。第1のウェハ101と第2のウェハ102を重ね、1500N程度で加圧しながら、試料を3時間で1100℃に加熱し、4時間保持後、自然冷却によりアニールを行う。
【0064】
図23(e)に示す第5のステップは、ダイヤフラム(可動部)を作製する工程である。
ICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)により、ウェハをエッチングする。エッチングの深さは時間によって制御しても良いし、図のようにSOIウェハの酸化物層(BOX層)をエッチストップ層として使用してもよい。
ダイヤフラム(可動部)の形状は、円形でも良いし、図のようにドーナツ状のものや、梁を有するものであっても良い。
図23(f)に示す第6のステップは、第1の弁座112を形成する工程である。
マスクには、厚膜フォトレジストの他、シリコン酸化物層、アルミニウムなどが使用できる。
ウェハ表面に、フォトレジストをスピンコートし、プリベイク後、露光を行う。マスクをフォトレジスト以外のものを使用する場合には、エッチャントでマスク層をパターニングする。
ICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)によってエッチングして第1の弁座112を形成する。
第1のウェハ101にSOIウェハを使用した場合には、中間の酸化物層をエッチストップレイヤーとして使用することができ、第1の弁座の突起高さを精度よく制御できるとともに、エッチング後の表面を平坦に保つことができる。
エッチング後、マスクを取り除く。
【0065】
図24(g)に示す第7のステップは、第3のシリコンウェハ103を用いたエッチングのためのマスクパターニング工程である。
第3のシリコンウェハ103には、片面研磨のシリコンウェハも使用可能であるが、両面研磨されたものを用いるのが好ましい。
さらに、後のエッチング工程において、エッチングの深さを制御するため、SOI(シリコン オン インシュレータ)ウェハを使用するのが好ましい。
シリコンウェハには例えば、ハンドル層厚さ200μm、酸化物層(BOX層)厚さ1μm、デバイス層厚さ10μmのものを使用することができる。
エッチングのマスクに使用するため、第3のウェハ103の表面の熱酸化を行なう。
1000℃程度に熱した炉の中に、所定量の水素および酸素を流すことによってウェハ表面に酸化物層を形成する。
次に、ウェハ表面をフォトレジストによって保護し、裏面に弁体形成のためのパターニングを行なう。フォトレジストをスピンコートし、プリベイク後、露光を行う。
さらに、現像、ポストベイクを行う。フォトレジストをマスクとして、フッ酸により、酸化物層をエッチングする。
表面、および、裏面のフォトレジストをアセトンにより除去する。本工程において、マスクにはシリコン酸化物の他に、フォトレジストやアルミニウムを使用することが可能である。
【0066】
図24(h)に示す第8のステップは、支持部114を形成するためのマスクをパターニングする工程である。
ウェハ裏面をフォトレジストによって保護し、表面に支持部形成のためのパターニングを行なう。
フォトレジストをスピンコートし、プリベイク後、露光を行う。
さらに、現像、ポストベイクを行う。フォトレジストをマスクとして、フッ酸により、酸化物層をエッチングする。表面、および、裏面のフォトレジストをアセトンにより除去す
る。
図24(i)に示す第9のステップは、弁体113を形成する工程である。ICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)によって、ウェハ背面のエッチングを行なう工程である。
エッチングの深さは時間によって制御しても良いし、SOIウェハの酸化物層(BOX層)をエッチストップ層として使用してもよい。
図24(j)に示す第10のステップは、支持部を形成する工程である。
ICP−RIE(リアクティブイオンエッチング)によって、ウェハ表面のエッチングを行なう。
SOIウェハを使用している場合には、この際に支持部の厚さを精度よく制御できるため、バネ定数の誤差が少ない支持部が得られる。エッチング後、マスクに使用した酸化物層はフッ酸によって取り除く。
【0067】
図24(k)に示す第11のステップは、シール面のコーティングを行なう工程である。
コーティングは図のように弁体側に行なっても良いし、弁座側に行なっても良い。
コーティング材料としては、パリレン、サイトップ、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミドなどがある。
パリレン、PTFEは、蒸着によって、サイトップ、ポリイミドはスピンコーティングによってコーティング可能である。
その他、スプレーによるコーティングも可能である。
これらのステップ以降は、図21、図22の(l)〜(q)に示すものと同様である。
【0068】
[実施例3]
実施例3においては、本発明の小型減圧弁を搭載した燃料電池について説明する。
図25は本発明の燃料電池の概観を表す斜視図である。
また、図26は本発明の燃料電池のシステムの概要図である。
本実施例の燃料電池の外寸法は50mm×30mm×10mmであり、通常コンパクトデジタルカメラで使用されているリチウムイオン電池の大きさとほぼ同じである。
このように本実施例の燃料電池は小型で一体化されているため、携帯機器に組み込みやすい形状となっている。
本実施例の燃料電池は、酸化剤として反応に用いる酸素を外気から取り入れるため、上下面、及び側面に外気を取り入れるための通気孔133を有する。
また、この孔は生成した水を水蒸気として逃がしたり、反応により発生した熱を外に逃がす働きもしている。また、燃料電池内部は、酸化剤極136、高分子電解質膜137、燃料極138からなる燃料電池セル131と、燃料を貯蔵する燃料タンク134、燃料タンクと各セルの燃料極とをつなぎ、燃料の流量を制御する小型減圧弁135によって構成されている。
【0069】
次に、燃料タンク134について説明する。
タンクの内部には水素を吸蔵することが可能な水素吸蔵合金が充填されている。燃料電池に用いる高分子電解質膜の耐圧が0.3〜0.5MPaであることから、外気との差圧が0.1MPa以内の範囲で用いる必要がある。
水素の解放圧が常温で0.2MPaの特性を持つ水素吸蔵合金として、例えばLaNiなどを用いる。
燃料タンクの容積を燃料電池全体の半分とし、タンク肉厚を1mm、タンク材質をチタンとすると、この時、燃料タンクの重量は50g程度となり、また、燃料タンク体積は5.2cmになる。
本実施例のタンク中に、水素の解放圧が常温で0.2MPaを超えるような水素吸蔵材料を超える場合には、燃料タンク134と燃料極138との間に減圧のための小型減圧弁1
35を設ける必要がある。
例えば、LaNiは、重量当たり1.1wt%の水素を吸脱着可能である。
LaNiの各温度における解離圧は図30に示すようになっている。タンクに蓄えられた水素は小型減圧弁135で減圧され、燃料極138に供給される。
また、酸化剤極136には通気孔133から外気が供給される。燃料電池セルで発電された電気は電極132から小型電気機器に供給される。
【0070】
図27は本発明の実施例2の構成の小型減圧弁を燃料電池に搭載した場合の関係図である。
小型減圧弁の1次側は、燃料タンク134とつながっている。出口流路208は、燃料極138へとつながり、ダイヤフラム(可動部)201の出口流路と反対面は酸化剤極(外気)と接している。
バルブ全体のサイズは10mm×10mm×1mm程度となっている。
このように小さなバルブ機構を実現することにより、小型燃料電池に燃料流量の制御機構を組み込むことが可能になっている。
【0071】
以下に燃料電池の発電に伴うバルブの開閉動作を説明する。
発電停止中は小型減圧弁135は閉じている。
発電が始まると燃料極室の燃料は消費され、燃料極室の燃料の圧力は下がっていく。
ダイヤフラム(可動部)201は、外気圧と燃料極室の圧力との差圧から、燃料極室側にたわみ、ダイヤフラム(可動部)201の動きはピストン(202)を介して弁体204に伝わり、バルブは開く。
これにより、燃料タンク134から、燃料極室138に燃料が供給される。発電を停止すると、燃料が消費されないため、燃料極室の圧力が上昇し、ダイヤフラム(可動部)201は上に押し上げられ、弁体204は閉じる。
【0072】
燃料タンク134内の圧力は、周囲の温度や燃料の残量によって変化する。
燃料タンク134の圧力が変化すると、図4の太線に示すように、減圧後の2次圧力も変化する。
本燃料電池は小型化のため、大型の燃料電池のように燃料を循環させて用いるのではなく、消費された量の燃料のみを燃料タンク134から供給するデッドエンド方式を用いている。
デッドエンド方式の燃料電池では、燃料極室中に窒素や水蒸気などの不純物が蓄積すると、発電特性が低下するため、しばしばパージ動作を行う必要がある。
パージ動作は、パージバルブ139を開閉することによって行われる。
パージ動作時には、燃料極室の圧力Pは、外気圧Pになる。したがって、パージ動作が有効に行われるためには、通常運転時のPは、外気圧Pよりも高い必要がある。
さもなければ、外気が燃料極室に逆流してしまう(図28(a)の状態)。
また、通常運転時に第2の弁の動作圧力P22が外気圧Pよりも高いと、パージ動作を行った際に第2の弁が閉じてしまい、パージに必要な燃料を燃料タンクから供給することができない(図28(b)の状態)。
一方、通常運転時に第2の弁の動作圧力P22が外気圧Pよりも低いと、パージ動作を行った際に、燃料タンクの圧力Pが外気圧Pよりも低かった場合、外気が燃料タンク134に逆流してしまう(図28(c)の状態)。
【0073】
そこで、本発明の減圧弁を燃料電池に搭載する場合には、P21、および、P22を以下のように設定する必要がある。
すなわち、通常運転状態でのタンクの1次圧力Pにおいて、P21>P22>Pとする。また、タンクの残量が少なくなった際の圧力P=P120において、P1>P22=Pとなる。
これらの条件を満たす状態を図29に示す。まず通常運転時では、2次圧力Pは外気圧Pよりも高いP21と等しい。
この際に、パージ動作を行うと、2次圧力PはPにまで低下するが、
22<Pであるため、第2の弁が閉じることなく、パージを行うことができる。
【0074】
一方、燃料を使用するにつれ、燃料タンク134の圧力Pが図の「残量低下時」にまで低下すると、パージを行おうとしても、この圧力領域では、
22>Pであるため、第2の弁が閉じてパージ動作を行わずに、燃料タンク134への外気の混入を防ぐ。
さらに、燃料を消費し、燃料タンクの圧力が図の「残量なし」の状態まで下がると、P=P22となり、第2の弁が閉じて発電を停止する。
この際、実施例1、2で述べたような、検出回路を設けることで、タンク残量の状態をユーザに知らせたり、機器を安全に停止したりすることができる。
【0075】
以上に説明した上記各実施例における構成および製法によれば、非常に小型であり、かつ、シール特性、耐久性に優れた逆止機能を有する減圧弁を実現することができる。
また、これらによる小型減圧弁を小型燃料電池の制御に用いれば、燃料容器の圧力が低くなった際に、容器内への不純ガスの混入を防ぎ、また、燃料電池システムを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例1における小型減圧弁の構成例を説明するための断面図。
【図2】本発明の実施例1における小型減圧弁の構成例の支持部の形態を説明するための図であり、(a)は支持部の第1の形態を説明するための平面図、(b)は第2の形態を説明するための平面図。
【図3】本発明の実施例1の小型減圧弁の動作を説明するための図。(a)は第1の弁が閉じた状態を説明するための断面図、(b)は第1の弁が開いたた状態を説明するための断面図、(c)は第2の弁が閉じた状態を説明するための断面図。
【図4】本発明の実施例1における小型減圧弁の一次圧力と2次圧力の関係を示すグラフ。
【図5】本発明の実施例1における小型減圧弁の構成例の伝達機構の別の形態を説明するための断面図。
【図6】本発明の実施例1における小型減圧弁の構成例の応用例を説明するための断面図。
【図7】本発明の実施例1における小型減圧弁の構成例を説明するための分解斜視図。
【図8】本発明の実施例1における小型減圧弁の構成例の各部材を説明するための図。(a)は実施例1の小型減圧弁の構成例におけるピストンを有する部材の平面図。(b)は実施例1の小型減圧弁の構成例におけるダイヤフラム下面流路を有する部材の平面図。(c)は実施例1の小型減圧弁の構成例における弁座を有する部材の平面図。(d)は実施例1の小型減圧弁の構成例における弁体を有する部材の平面図。
【図9】本発明の実施例1における小型減圧弁の作製手順を説明するための各工程((a)から(d))図。
【図10】本発明の実施例1における小型減圧弁の図9に続く作製手順を説明するための各工程((e)から(h))図。
【図11】本発明の実施例1における小型減圧弁の図10に続く作製手順を説明するための各工程((i)から(n))図。
【図12】本発明の実施例2における小型減圧弁の構成例を説明するための断面図。
【図13】本発明の実施例2における小型減圧弁のスペーサと第2の弁座の構成を示す断面図。
【図14】本発明の実施例2の小型減圧弁の動作を説明するための図。(a)は第1の弁が閉じた状態を説明するための断面図、(b)は第1の弁が開いたた状態を説明するための断面図、(c)は第2の弁が閉じた状態を説明するための断面図。
【図15】本発明の実施例2における小型減圧弁の構成例の伝達機構の別の形態を説明するための断面図。
【図16】本発明の実施例2における小型減圧弁の構成例を説明するための分解斜視図。
【図17】本発明の実施例2における小型減圧弁の構成例の各部材を説明するための図。(a)は実施例2の小型減圧弁の構成例におけるピストンを有する部材の平面図。(b)は実施例2の小型減圧弁の構成例におけるダイヤフラム下面流路を有する部材の平面図。(c)は実施例2の小型減圧弁の構成例における弁座を有する部材の平面図。(d)は実施例2の小型減圧弁の構成例における弁体を有する部材の平面図。
【図18】本発明の実施例2における小型減圧弁の第1の製法の作製手順を説明するための各工程((a)から(d))図。
【図19】本発明の実施例2における小型減圧弁の図18に続く作製手順を説明するための各工程((e)から(h))図。
【図20】本発明の実施例2における小型減圧弁の図19に続く作製手順を説明するための各工程((i)から(k))図。
【図21】本発明の実施例2における小型減圧弁の図20に続く作製手順を説明するための各工程((l)から(n))図。
【図22】本発明の実施例2における小型減圧弁の図21に続く作製手順を説明するための各工程((o)から(q))図。
【図23】本発明の実施例2における小型減圧弁の第2の製法の作製手順を説明するための各工程((a)から(f))図。
【図24】本発明の実施例2における小型減圧弁の図23に続く作製手順を説明するための各工程((g)から(k))図。
【図25】本発明の実施例3における燃料電池を説明するための斜視図。
【図26】本発明の実施例3における燃料電池システムを説明するための概要図。
【図27】本発明の実施例3の燃料電池における小型減圧弁の位置関係を説明するための図。
【図28】本発明の実施例3の燃料電池におけるパージ動作を説明するための図。
【図29】本発明の実施例3の燃料電池における動作圧力の設定について説明するための図。
【図30】本発明の実施例3の燃料電池システムにおける水素吸蔵合金(LaNi)の解離圧力を説明するための図。
【符号の説明】
【0077】
1、201:ダイヤフラム(可動部)
2、202:ピストン(伝達機構)
3、203:第1の弁座
4、204:第1の弁体
5、205:支持部
8、208:出口流路
10、210:第2の弁座
11:第2の弁体
12、212:入口流路
14、214:ダイヤフラム支持部
15:第1の電極
16:第2の電極
17:第1の絶縁層
18:第2の絶縁層
101:第1のウェハ
102:第2のウェハ
103:第3のウェハ
104:第4のウェハ
105:第5のウェハ
111:ダイヤフラム(可動部)
112:第1の弁座
113:第1の弁体
114:支持部
115:ピストン(伝達機構)
116:シール材
117:入口流路
118:出口流路
119:第2の弁体
120:第2の弁座
121スペーサ
131:燃料電池セル
132:電極
133:通気孔
134:燃料タンク
135:小型減圧弁
136:酸化剤極
137:高分子電解質膜
138:燃料極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力制御弁であって、
差圧によって動作する可動部と、
1次圧力を2次圧力に減圧する第1の弁と、
前記第1の弁が1次圧力を有する流体を導入する導入口を開く動作を行う際に、該導入口と2次圧力を排出する排出口との間の流路を閉鎖する動作を行う第2の弁と、
前記可動部と、前記第1及び第2の弁との動作を連動させる伝達機構と、
を有し、前記可動部側または前記第1の弁側のいずれか一方が、前記伝達機構と分離されていることを特徴とする圧力制御弁。
【請求項2】
前記第1の弁が、第1の弁座と、第1の弁体と、前記第1の弁体を支持する支持部を備え、
前記支持部が、前記伝達機構によって伝達される前記可動部の動作に応じて、前記第1の弁体と前記第1の弁座部間を開閉可能に、前記第1の弁体を支持していることを特徴とする請求項1に記載の圧力制御弁。
【請求項3】
前記第1の弁体を支持する支持部が、前記伝達機構の動作方向に垂直で、かつ前記第1の弁体を含む平面上に設けられている、前記第1の弁体を支持する弾性体によって構成されていることを特徴とする請求項2に記載の圧力制御弁。
【請求項4】
前記第2の弁が、前記第1の弁よりも前記流路の上流側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の圧力制御弁。
【請求項5】
前記第2の弁は、前記第1の弁よりも前記流路の上流側から第2の弁座を付設することによって構成されていることを特徴とする請求項4に記載の圧力制御弁。
【請求項6】
前記可動部が、ダイヤフラムであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の圧力制御弁。
【請求項7】
前記第1及び第2の弁、可動部及び伝達機構のそれぞれが、シート状部材または板状部材で形成され、それらを積層して構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の圧力制御弁。
【請求項8】
差圧によって動作する可動部と、
1次圧力を2次圧力に減圧する第1の弁と、
前記第1の弁が1次圧力を有する流体を導入する導入口を開く動作を行う際に、該導入口と2次圧力を排出する排出口との間の流路を閉鎖する動作を行う第2の弁と、
前記可動部の動作を前記第1及び第2の弁に伝える伝達機構と、
を有し、前記可動部側または前記第1の弁側のいずれか一方が、前記伝達機構と分離されていることを特徴とする圧力制御弁の製造方法であって、
前記可動部を、シート状部材または板状部材で形成する工程と、
前記伝達機構を、シート状部材または板状部材で形成する工程と、
前記第1及び第2の弁を、シート状部材または板状部材で形成する工程と、
上記各工程で形成された各部を積層して圧力制御弁を組み立てる工程と、
を有することを特徴とする圧力制御弁の製造方法。
【請求項9】
前記シート状部材または板状部材の少なくとも一部に、半導体基板を用いることを特徴とする請求項8に記載の圧力制御弁の製造方法。
【請求項10】
前記各工程において、エッチング加工あるいはプレス加工の少なくともいずれかによる構造形成方法と、または、接合あるいは接着加工の少なくともいずれかによる組み立て方法を用いることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の圧力制御弁の製造方法。
【請求項11】
燃料容器と、燃料電池発電部と、これらの間に前記燃料容器からの燃料を前記燃料電池発電部に供給する燃料流路を有し、該燃料流路に圧力制御機構を備えた燃料電池システムにおいて、
前記圧力制御機構として、請求項1から7のいずれか1項に記載の圧力制御弁、または請求項8から10のいずれか1項に記載の圧力制御弁の製造方法によって製造された圧力制御弁が搭載されていることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項12】
請求項11に記載の燃料電池システムにおける圧力制御弁の圧力制御方法であって、
前記燃料容器の設定圧力に合わせて、前記第2の弁の動作圧力を調整することを特徴とする圧力制御方法。
【請求項13】
1次圧力が前記燃料容器の通常運転状態における圧力の場合に、2次圧力が外気の圧力よりも大きくなるように制御することを特徴とする請求項12に記載の圧力制御方法。
【請求項14】
1次圧力が予め定められた圧力よりも高い場合に、2次圧力を外気の圧力と等しくした際、前記第2の弁は開状態であり、
前記1次圧力が予め定められた圧力よりも低い場合に、前記2次圧力を外気の圧力と等しくした際、前記第2の弁は閉状態となるように制御することを特徴とする請求項12または請求項13に記載の圧力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2008−59097(P2008−59097A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232851(P2006−232851)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】