圧力制御弁
【課題】蓄圧部内の圧力の制御性を向上させることができる圧力制御弁を提供する。
【解決手段】弁座と、弁座に対するリフト位置が調整可能な弁体と、を備え、高圧流体が流入し蓄圧される蓄圧部に接続されるとともに、リフト位置を調節することにより蓄圧部からの高圧流体の排出量を調整して蓄圧室内の圧力を制御する圧力制御弁であって、弁座及び弁体の少なくとも一方には、リフト位置に対応して高圧流体が通過する流路の有効通路面積を変化させる通路面積調整部を備え、通路面積調整部は、蓄圧部に流入する高圧流体の流入量を一定としたときの弁体の移動量に対する蓄圧部の圧力の変化率が、流入量にかかわらず均一となるように有効通路面積を変化させる形状を有する。
【解決手段】弁座と、弁座に対するリフト位置が調整可能な弁体と、を備え、高圧流体が流入し蓄圧される蓄圧部に接続されるとともに、リフト位置を調節することにより蓄圧部からの高圧流体の排出量を調整して蓄圧室内の圧力を制御する圧力制御弁であって、弁座及び弁体の少なくとも一方には、リフト位置に対応して高圧流体が通過する流路の有効通路面積を変化させる通路面積調整部を備え、通路面積調整部は、蓄圧部に流入する高圧流体の流入量を一定としたときの弁体の移動量に対する蓄圧部の圧力の変化率が、流入量にかかわらず均一となるように有効通路面積を変化させる形状を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁座と、弁座に対して着座及びリフト可能な弁体とを備えた圧力制御弁に関する。特に、内燃機関の燃料供給装置に用いられるコモンレールに接続され、コモンレール内の圧力の制御を行う圧力制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンをはじめとする内燃機関では、高圧燃料をコモンレールに蓄えるとともに、コモンレール内の高圧燃料を燃料噴射弁に供給することによって、燃料噴射弁による緻密な燃料噴射制御を可能にした蓄圧式燃料噴射装置が多数使用されている。
このような蓄圧式燃料噴射装置では、例えば図1に示すように、燃料タンク10内の燃料が低圧ポンプ12で高圧ポンプ11に送られ、高圧ポンプ11で昇圧された高圧燃料がコモンレール15に供給される。また、コモンレール15には燃料噴射弁17が接続され、高圧燃料が燃料噴射弁17に供給された状態で燃料噴射弁17を開閉することにより、高圧燃料が図示しない内燃機関の気筒内に噴射される。
【0003】
このような蓄圧式燃料噴射装置では、車両の運転操作等により要求される内燃機関への燃料噴射を実現する制御の一つとして、コモンレール15内の圧力(以下、「レール圧」と称する。)の制御が実施されており、燃料噴射弁17からの燃料噴射量や気筒内における燃料の燃焼特性等の目標値が実現されるようにレール圧が調整されている。
レール圧の制御は、例えば、図示しない制御装置からの信号等に基づいて、コモンレール15に接続された圧力制御弁20を制御してコモンレール15内の高圧燃料を排出したり、高圧ポンプ11の加圧室の上流側に設けられた流量制御弁18を制御して加圧室に送られる燃料流量を調節し、コモンレール15に流入する高圧燃料の圧送量を調整したりすることによって行われる。
【0004】
具体的には、圧力制御弁20によるレール圧制御(以下、「出口側制御」と称する。)では、高圧ポンプ11の回転数に応じた規定量の高圧燃料を高圧ポンプ11からコモンレール15に圧送し、コモンレール15に接続された圧力制御弁20の開閉によって所定量の高圧燃料を排出することでレール圧が直接的に制御される。この出口側制御では、コモンレール15内の圧力が直接的に制御されるため応答性がよく、また、大量の高圧燃料が圧送されるために燃料温度を速やかに上昇させることができるという長所がある。一方、出口側制御では、常に目標とするレール圧(以下、「目標レール圧」と称する。)に必要な流量以上の高圧燃料をコモンレール15に圧送する必要があることから、燃費のロスが大きいという短所がある。
【0005】
また、流量制御弁18によるレール圧制御(以下、「入口側制御」と称する。)では、内燃機関の要求噴射量や、高圧ポンプ11、燃料噴射弁17及びコモンレール15等からの燃料の排出量を考慮して定められる流量の低圧燃料を加圧室に供給することによって、高圧ポンプ11からコモンレール15に送られる高圧燃料の圧送量が調節され、コモンレール15内の圧力が制御される。この入口側制御では、必要な主噴射量に対応させて燃料を加圧室に供給することができるため燃費のロスが少ないという長所がある。一方、入口側制御では、レール圧を急激に低下させにくい等レール圧制御の応答性が十分でなく、また、燃料温度が低温の場合に速やかに温度を上昇させることができないという短所がある。
【0006】
このように、出口側制御及び入口側制御にはそれぞれ長所及び短所があり、内燃機関の運転状態によって好適な制御モードが異なっている。そのため、流量制御弁及び圧力制御弁をともに設けて、内燃機関の運転状態に応じていずれかの制御弁を選択的に開閉制御することによってレール圧の制御が行われるように構成された燃料噴射装置がある(例えば、特許文献1参照)。このような燃料噴射装置では、例えば、内燃機関の始動直後や、アイドリング時、低負荷運転時には圧力制御弁による出口側制御を行い、逆に、内燃機関の回転数が大きい時や高負荷運転時には流量制御弁による入口側制御を行うように設定されている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−41986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、高圧ポンプ11の加圧室の上流側の流量制御弁18とコモンレール15に接続された圧力制御弁20とは、それぞれの作動時のレール圧への作用、例えば、目標レール圧の変化に対する応答性などが全く同じではないため、内燃機関の運転状態に応じていずれかの制御を選択的に実行する場合に、制御方法が切り換わる過渡期にはレール圧が大きく脈動を起こすおそれがある。また、いわゆるオーバーラン時のようにアクセル操作量を一気に小さくするような、内燃機関が高速回転から急速に低速回転に変化する場合等の、レール圧を急激に低下させたい場合において、流量制御弁18による入口側制御を行っている状態からの減圧応答制御性がなお不十分となるおそれがある。
【0009】
このような事態に対処する方法として、上述した流量制御弁18による入口側制御又は圧力制御弁20による出口側制御に併せて、さらに、所定の運転領域に限って流量制御弁18と圧力制御弁20とを両方同時に制御することによってレール圧を制御する入口出口同時制御も考えられる。この入口出口同時制御は、高圧ポンプ11の加圧室への燃料供給量と、コモンレール15からの高圧燃料の排出量とをともに調節することによって、所望のレール圧を実現するものである。
【0010】
ここで、出口側制御に用いられる、コモンレール15に接続された圧力制御弁20としては、例えば、図2に示すような電磁制御式のものが知られている。この圧力制御弁20は、ケーシング22内に、コモンレール15から連通する流路23が設けられ、流路23に、弁座25と弁座25に対して着座及びリフト可能な弁体27とが配設されるとともに、弁体27が先端に設けられてケーシング22内のガイド孔29に進退自在に配置されたニードル31と、ニードル31の後端に設けられたベースプレート33と、ベースプレート33を付勢する圧縮スプリング35と、ベースプレート33を駆動可能なソレノイド37とを備えている。
【0011】
この圧力制御弁20では、ソレノイド37への供給電流を調整することで、ベースプレート33が所定量移動し、これに従動してニードル31が進退して弁座25に対する弁体27の位置(以下、「リフト位置」と称する。)を調整することが可能となっている。
この圧力制御弁20に用いられている弁体27としては、球状のボール弁や、先端が円錐形状の弁体が用いられている。また、弁体27が着座する弁座25は、円錐面形状に構成されている。
【0012】
しかしながら、このような従来の圧力制御弁20では、コモンレール15のレール圧を所定量変化させる制御を行う際に、その時点の弁体27のリフト位置やレール圧、コモンレール15への高圧燃料の流入量等の条件により弁体27を移動させる移動量が異なるという特性を持っている。換言すれば、弁体27を所定のストローク分移動させた場合に変化するレール圧の差分が、その時点の弁体27のリフト位置やレール圧、コモンレール15への高圧燃料の流入量によって異なるという特性を持っている。
【0013】
より具体的には、弁体を所定位置にリフトして、流量係数を考慮した有効通路面積(S)を一定にした状態で、レール圧(P)に対するコモンレールへの高圧燃料の流入量(Q)の変化を測定すると、図3のグラフのようになる。この図3では、燃料噴射弁からの噴射量が一定となっている場合を想定しており、コモンレールへの高圧燃料の流入量(Q)は、圧力制御弁からの排出量に一致する。各曲線は各有効通路面積(S)を異ならせた場合であり、有効通路面積(S)はS1<S2<S3となっている。このグラフをもとにして、コモンレールへの高圧燃料の流入量(Q)を一定とした場合のレール圧(P)と有効通路面積(S)との関係を求めると、図4のグラフのようになる。流入量(Q)はQ1<Q2<Q3となっている。
【0014】
この関係を有効通路面積(S)に対するレール圧(P)の変化として示せば、図5のグラフのようになる。そして、図5の有効通路面積(S)に対するレール圧(P)の変化を、従来の球状あるいは一定勾配の円錐形状の弁体と一定勾配の円錐面形状の弁座とを用いた場合の、弁体のリフト位置(L)に対するレール圧(P)の変化に変換して示すと、図6のようになる。
【0015】
この図6から明らかなように、何れの流入量(Q)においても、リフト位置(L)に対するレール圧(P)の変化は曲線的であるとともに、流入量(Q)によってその変化曲線の変化率が異なっている。そのため、例えば、流入量がQ1でレール圧がP1のときにレール圧をΔP分大きくしようとした場合、本来であれば弁体のリフト位置(L)をΔL分小さくすればよいにもかかわらず、弁体の移動時に流入量がQ3に変化していたとすると、弁体のリフト位置(L)をΔL分小さくしたことによってレール圧がΔP´分も大きくなってしまうことになる。すなわち、弁体の移動量ΔLの算出をPID(Pulse Intermittent Drive)制御などのフィードバック制御で実施した場合、流入量(Q)の変化によって、同一の制御ゲインにおいて異なる応答となる。そのため、流入量(Q)やレール圧(P)の条件によって応答速度等が異なり、オーバーシュート等が発生しやすくなる。
【0016】
特に、弁体のリフト位置(L)が小さい領域では、リフト位置(L)が大きい領域に比べて、レール圧(P)の変化が急峻な勾配となるため、弁体のリフト位置(L)が小さい領域で弁体を移動させる際にコモンレールへの流入量(Q)が変化していた場合には、目標レール圧と実際のレール圧(以下「実レール圧」と称する。)との差が著しく大きくなってしまうおそれがある。
【0017】
このように、従来の圧力制御弁では、コモンレールへの高圧燃料の流入量が変化することを前提とすると、レール圧をΔP分変化させる際には、レール圧(P)、コモンレールへの高圧燃料の流入量(Q)及び弁体の移動量(ΔL)を変化要因としてフィードバックゲインを適合することが必要になる。したがって、レール圧の制御ロジック及び適合パターンが極めて膨大になり、レール圧制御性が低下するおそれがあった。
【0018】
そこで、本発明の発明者は鋭意努力し、高圧流体の蓄圧部に接続された圧力制御弁の弁座及び弁体の少なくとも一方の通路面積調整部の形状を、蓄圧部に流入する高圧流体の流入量にかかわらず、弁体の移動量に対する蓄圧部の圧力の変化率が均一となるように開口の有効通路面積を変化させる形状とすることによってこのような問題を解決することを見出し、本発明を完成させたものである。すなわち、本発明の目的は、蓄圧部内の圧力を変化させる際の弁体の移動量の変化要因を蓄圧部に流入する高圧流体の流入量のみとして、蓄圧部内の圧力の制御性を向上させることができる圧力制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の圧力制御弁によれば、弁座と、弁座に対するリフト位置が調整可能な弁体と、を備え、高圧流体が流入し蓄圧される蓄圧部に接続されるとともに、リフト位置を調節することにより蓄圧部からの高圧流体の排出量を調整して蓄圧室内の圧力を制御する圧力制御弁であって、弁座及び弁体の少なくとも一方には、リフト位置に対応して高圧流体が通過する流路の有効通路面積を変化させる通路面積調整部を備え、通路面積調整部は、蓄圧部に流入する高圧流体の流入量を一定としたときの弁体の移動量に対する蓄圧部の圧力の変化率が、流入量にかかわらず均一となるように有効通路面積を変化させる形状を有することを特徴とする圧力制御弁が提供され、上述した問題を解決することができる。
【0020】
また、本発明の圧力制御弁を構成するにあたり、弁座及び弁体の少なくとも一方には、流路を閉塞する閉塞部と通路面積調整部との間に、移動量に対する有効通路面積の変化率が通路面積調整部における有効通路面積より大きい強制開放部を備えることが好ましい。
【0021】
また、本発明の圧力制御弁を構成するにあたり、蓄圧部は、内燃機関の燃料供給装置に用いられるコモンレールであることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の圧力制御弁によれば、弁座及び弁体の少なくとも一方の通路面積調整部が、蓄圧部に流入する高圧流体の流入量を一定としたときの弁体の移動量に対する蓄圧部の圧力の変化率が、流入量にかかわらず均一となるように有効通路面積を変化させる形状を有している。そのため、蓄圧部への高圧流体の流入量が変化する状態で、蓄圧部内の圧力が目標値となるように調節されるために、弁体のリフト位置及びコモンレールへの流入量にかかわらず弁体の移動量に対する圧力の変化率が均一になる。したがって、蓄圧部への流入量の変化のみを変化要因として弁体の移動量を調節することで足りることになり、蓄圧部内の圧力の制御性が著しく向上される。
【0023】
本発明の圧力制御弁において、弁体又は弁座に対して当接する閉塞部と通路面積調整部との間に、弁体の移動量に対する有効通路面積の変化率が通路面積調整部より大きい強制開放部を備えることにより、弁体の移動量に対するレール圧の変化率が急峻となりやすい閉塞部近傍のリフト範囲をより短くすることができ、弁体の移動量に対する蓄圧部の圧力の変化率が均一となる通路面積調整部の調整範囲を広く確保しやすくできる。そのため、弁体の移動量に対する圧力の変化率が均一となるような条件範囲(流入量(Q)、レール圧(P)、リフト位置(L))が広く提供されることになり、圧力の制御性がより向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の圧力制御弁に関する実施の形態について具体的に説明する。ただし、この発明の実施の形態は本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。
なお、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものについては同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
【0025】
本実施形態の圧力制御弁は、図1に示すような蓄圧式燃料噴射装置に使用されるものである。この蓄圧式燃料噴射装置は、従来と同様に、高圧流体としての高圧燃料が流入し蓄えられる蓄圧部としてのコモンレール15に、高圧燃料が導入される燃料導入経路13が接続されるとともに、燃料噴射弁17に通じる燃料噴射経路19が接続されている。また、レール圧の入口側制御を行う流量制御弁が燃料導入経路13の高圧ポンプ11の加圧部の上流側に設けられ、レール圧の出口側制御を行う圧力制御弁20が、燃料噴射経路19とは別に接続された還流経路21に設けられている。
【0026】
この蓄圧式燃料噴射装置では、ある運転状態においては、高圧ポンプ11の加圧室に供給する燃料を流量制御弁18によって調節することによってコモンレール15に流入する高圧燃料の導入量が調節されるとともに、コモンレール15に接続された圧力制御弁20によってコモンレール15からの高圧燃料の排出量を調整することによりレール圧を調整する入口出口同時制御が行われる。
【0027】
圧力制御弁20は、図2に示すように、ケーシング22内にコモンレール15から連通する流路23が設けられ、この流路23に、開口25aを有する弁座25が設けられるとともに、弁座25に対して着座及びリフト可能な弁体27が配置されている。そして、弁体27の周囲を囲むように配置されたソレノイド37に対して供給する電流を調整することで、圧縮スプリング35により付勢されているベースプレート33が所定量移動し、これに従動してニードル31が進退することで弁座25に対する弁体27のリフト位置が調整可能となっている。
【0028】
そして、この圧力制御弁20では、図7(a)〜(c)に示すように、弁座25及び弁体27には互いに当接する閉塞部41a、41bが設けられている。また、図7(a)〜(c)及び図8に示すように、弁体27の表面の閉塞部41bに隣接する位置に、弁体27の僅かなリフト位置で開口25aを所望の有効通路面積で開放するための強制開放部45が設けられるとともに、強制開放部45に隣接する位置に、弁体27のリフト位置に対応して変化する有効通路面積で開口25aを開放可能な通路面積調整部43が設けられている。ここでは、強制開放部45が通路面積調整部43と閉塞部41bとの間に配設されている。
【0029】
閉塞部41a、41bは、図7(a)に示すように、弁座25に対して弁体27が着座した状態で、互いに当接して弁座25の開口25aを完全に閉塞することが可能となっている。この閉塞部41a、41bは確実に開口25aを閉塞可能な形状であれば特に限定されず、図示のように、ニードルの進退方向に対して略直交する平面により構成されていてもよく、例えば、テーパ面、球面等の曲面により構成されていてもよく、さらに、環状に設けられたリブ等から構成されていてもよい。
【0030】
強制開放部45は、図7(b)及び図8に示すように、閉塞部41a、41b間が当接する位置から、弁座25に対して弁体27の出来るだけ少ないリフト位置で、通路面積調整部43によって有効通路面積が調整される位置まで弁体27を移動させることが可能となっている。
【0031】
強制開放部45の形状は任意であるが、少なくとも弁体27のリフト位置の変化(弁体27の移動量)に対する有効通路面積の変化率が、通路面積調整部43より大きく設定されていることが必要である。本実施形態では、強制開放部45は弁座25の開口25a内に挿入可能な柱状部からなり、径方向に凹んでニードルの進退方向に延びる凹部45aが周囲に複数設けられている。
【0032】
このような強制開放部45が設けられている部位は、閉塞部41a、41b近傍の位置であるため、弁体の移動量に対するレール圧の変化が大きくなりやすい。そのため、強制開放部45を、出来るだけ少ないリフト位置の範囲にして強制的に開口25aを所定面積まで開口させることができる構成とすることで、後述する通路面積調整部43による制御性を向上させている。
【0033】
一方、通路面積調整部43は、図7(c)及び図8に示すように、高圧燃料の有効通路面積が弁体27のリフト位置に対応して所望の値となるように所定の形状に設定されており、弁体27のリフト位置の調整により、その形状に基づいて有効通路面積が調整可能となっている。ここでは、通路面積調整部43の形状は、コモンレールに流入する高圧燃料の流入量にかかわらず、弁体27の移動量に対するコモンレールのレール圧の変化率が均一となるように、弁座25を通過する高圧燃料の有効通路面積を変化させることが可能な形状に形成されている。本実施形態では、通路面積調整部43の最大外形が弁座25の開口25aより小さく、開口25aの内壁面と全周において離間し、突出方向先端側ほど細くなり、さらに、強制開放部45側ほどニードルの進退方向に対して大きな傾斜となるように湾曲した曲面形状に形成されている。
【0034】
このような弁座25及び弁体27では、コモンレールへの高圧燃料の流入量がある一定量である場合の弁座25に対する弁体27のリフト位置(L)と有効通路面積(S)との関係が、例えば図9に示すグラフ中、実線Aに示すようになる。また、図中、比較のために、従来用いられているような円錐形状の弁体27を用いた場合の関係を線Bで示している。
【0035】
ここでは、リフト位置(L)が0の状態では有効通路面積(S)は0であり、リフト位置(L)が強制開放部45に対応する微小な領域の範囲では、リフト位置(L)の増加量に対して有効通路面積(S)が急峻に増加する。そして、リフト位置(L)が強制開放部45の領域を超えて通路面積調整部43に対応する領域に達する時点で所定の有効通路面積(S)で開放され、その後、リフト位置(L)の変化(移動量(ΔL))に対して有効通路面積(S)の変化が穏やかになる。
【0036】
そして、通路面積調整部43によって、このようなリフト位置(L)の変化(移動量(ΔL))に対する有効通路面積(S)の変化率が実現されると、図10に示すように、コモンレールに対する高圧燃料の流入量(Q)にかかわらず、流入量(Q)を一定としたときの弁体の移動量(ΔL)に対するコモンレールのレール圧(P)の変化率が均一となる。そのため、レール圧(P)を所定量増減させて目標レール圧まで変化させる場合に、弁体の移動量(ΔL)に対するレール圧の変化量(ΔP)(=ΔP/ΔLゲイン)の変化要因として、コモンレールに流入する高圧燃料の流入量(Q)の変化のみを考慮し、弁体の移動量(ΔL)を調節することによって、レール圧(P)を目標レール圧とすることが可能になる。
【0037】
すなわち、圧力制御弁20のΔP/ΔLゲインの変化要因が従来ではレール圧(P)、弁体の移動量(ΔL)、及び流入量(Q)であったのに対して、本実施形態のような構成の圧力制御弁20を用いてコモンレール15のレール圧制御を行うことにより、ΔP/ΔLゲインの変化要因がコモンレールへの流入量(Q)のみとなるため、制御ロジックが簡素化される。
【0038】
以上のような圧力調整弁20によれば、弁体27に、弁座25に対する弁体27のリフト位置(L)に対応して有効通路面積(S)を変化させる通路面積調整部43を備え、この通路面積調整部43が、コモンレール15に流入する高圧燃料の流入量(Q)を一定としたときの弁体の移動量(ΔL)に対するコモンレール15のレール圧(P)の変化率が、流入量(Q)にかかわらず均一となるように開口25aの有効通路面積(S)を変化させる形状を有するので、コモンレールへの流入量(Q)が変化する状態でレール圧(P)を目標レール圧まで変化させる場合に、コモンレールへの流入量(Q)の変化のみを考慮して、弁体27の移動量を調整することで足り、レール圧(P)の制御性が著しく向上される。
【0039】
また、この圧力制御弁20では、開口25aが閉塞される閉塞部41bと通路面積調整部43との間に、リフト位置(L)の変化(移動量(ΔL))に対する有効通路面積(S)の変化率が通路面積調整部43における変化率より大きい強制開放部45を備えているので、閉塞部41b近傍の弁体25の移動量(ΔL)に対するレール圧(P)の変化が増大しやすい範囲をより短くすることができ、弁体25の移動量(ΔL)に対するコモンレール15のレール圧(P)の変化率が均一となる通路面積調整部43の調整範囲を広く確保しやすくできる。そのため、弁体の移動量に対する圧力の変化率が均一となるような条件範囲(流入量(Q)、レール圧(P)、リフト位置(L))が広く提供されることになり、レール圧(P)の制御性がより向上させられる。
【0040】
なお、上記実施の形態は、本発明の範囲内で適宜変更可能である。例えば、上記では弁座25及び弁体27の形状の一例を例示したが、他の形状とすることは可能である。例えば、図11に示すように、テーパ面の弁座に対して弁体27の先端側を円錐形状とし、周面に単数又は複数の溝51を設け、この溝51の形状を調整することで、強制開放部45や通路面積調整部43を設けてもよい。
【0041】
また、図12に示すように、テーパ面の弁座に対して、ニードル31の先端にニードル31とは別体のボールからなる弁体27を配置するとともに、弁体27の表面に溝53を設けて、強制開放部45や通路面積調整部43を設けてもよい。
【0042】
さらに、上記では、何れも弁体27に強制開放部45や通路面積調整部43を設けた例について説明したが、弁座25にこれらを設けることでも、全く同様に本願発明を適用することが可能である。さらに、弁座25及び弁体27の両方にこれらを設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態及び従来の蓄圧式燃料噴射装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態及び従来の圧力制御弁を示す断面図である。
【図3】従来の圧力制御弁における圧力(P)に対する流入量(Q)の変化を示すグラフである。
【図4】従来の圧力制御弁における圧力(P)と有効通路面積(S)との関係を示すグラフである。
【図5】従来の圧力制御弁における有効通路面積(S)に対する圧力(P)の変化を示すグラフである。
【図6】従来の圧力制御弁におけるリフト位置(L)に対する圧力(P)の変化を示すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態の圧力制御弁の弁体と弁座とを示す概略断面図であり、(a)は閉塞状態、(b)は弁座に対して弁体を僅かにリフトさせた状態、(c)は弁座に対して弁体を十分にリフトさせた状態を示す。
【図8】本発明の実施の形態の圧力制御弁の弁体を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態の圧力制御弁におけるリフト位置(L)に対する有効通路面積(S)の変化を示すグラフである。
【図10】本発明の実施の形態の圧力制御弁におけるリフト位置(L)に対する圧力(P)の変化を示すグラフである。
【図11】本発明の実施の形態の圧力制御弁の弁体の変形例を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態の圧力制御弁の弁体の他の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
10:燃料タンク、11:高圧ポンプ、12:低圧ポンプ、13:燃料導入経路、15:コモンレール、17:燃料噴射弁、18:流量制御弁、19:燃料噴射経路、20:圧力制御弁、21:還流経路、23:流路、25:弁座、25a:開口、27:弁体、41a、41b:閉塞部、43:通路面積調整部、45:強制開放部
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁座と、弁座に対して着座及びリフト可能な弁体とを備えた圧力制御弁に関する。特に、内燃機関の燃料供給装置に用いられるコモンレールに接続され、コモンレール内の圧力の制御を行う圧力制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンをはじめとする内燃機関では、高圧燃料をコモンレールに蓄えるとともに、コモンレール内の高圧燃料を燃料噴射弁に供給することによって、燃料噴射弁による緻密な燃料噴射制御を可能にした蓄圧式燃料噴射装置が多数使用されている。
このような蓄圧式燃料噴射装置では、例えば図1に示すように、燃料タンク10内の燃料が低圧ポンプ12で高圧ポンプ11に送られ、高圧ポンプ11で昇圧された高圧燃料がコモンレール15に供給される。また、コモンレール15には燃料噴射弁17が接続され、高圧燃料が燃料噴射弁17に供給された状態で燃料噴射弁17を開閉することにより、高圧燃料が図示しない内燃機関の気筒内に噴射される。
【0003】
このような蓄圧式燃料噴射装置では、車両の運転操作等により要求される内燃機関への燃料噴射を実現する制御の一つとして、コモンレール15内の圧力(以下、「レール圧」と称する。)の制御が実施されており、燃料噴射弁17からの燃料噴射量や気筒内における燃料の燃焼特性等の目標値が実現されるようにレール圧が調整されている。
レール圧の制御は、例えば、図示しない制御装置からの信号等に基づいて、コモンレール15に接続された圧力制御弁20を制御してコモンレール15内の高圧燃料を排出したり、高圧ポンプ11の加圧室の上流側に設けられた流量制御弁18を制御して加圧室に送られる燃料流量を調節し、コモンレール15に流入する高圧燃料の圧送量を調整したりすることによって行われる。
【0004】
具体的には、圧力制御弁20によるレール圧制御(以下、「出口側制御」と称する。)では、高圧ポンプ11の回転数に応じた規定量の高圧燃料を高圧ポンプ11からコモンレール15に圧送し、コモンレール15に接続された圧力制御弁20の開閉によって所定量の高圧燃料を排出することでレール圧が直接的に制御される。この出口側制御では、コモンレール15内の圧力が直接的に制御されるため応答性がよく、また、大量の高圧燃料が圧送されるために燃料温度を速やかに上昇させることができるという長所がある。一方、出口側制御では、常に目標とするレール圧(以下、「目標レール圧」と称する。)に必要な流量以上の高圧燃料をコモンレール15に圧送する必要があることから、燃費のロスが大きいという短所がある。
【0005】
また、流量制御弁18によるレール圧制御(以下、「入口側制御」と称する。)では、内燃機関の要求噴射量や、高圧ポンプ11、燃料噴射弁17及びコモンレール15等からの燃料の排出量を考慮して定められる流量の低圧燃料を加圧室に供給することによって、高圧ポンプ11からコモンレール15に送られる高圧燃料の圧送量が調節され、コモンレール15内の圧力が制御される。この入口側制御では、必要な主噴射量に対応させて燃料を加圧室に供給することができるため燃費のロスが少ないという長所がある。一方、入口側制御では、レール圧を急激に低下させにくい等レール圧制御の応答性が十分でなく、また、燃料温度が低温の場合に速やかに温度を上昇させることができないという短所がある。
【0006】
このように、出口側制御及び入口側制御にはそれぞれ長所及び短所があり、内燃機関の運転状態によって好適な制御モードが異なっている。そのため、流量制御弁及び圧力制御弁をともに設けて、内燃機関の運転状態に応じていずれかの制御弁を選択的に開閉制御することによってレール圧の制御が行われるように構成された燃料噴射装置がある(例えば、特許文献1参照)。このような燃料噴射装置では、例えば、内燃機関の始動直後や、アイドリング時、低負荷運転時には圧力制御弁による出口側制御を行い、逆に、内燃機関の回転数が大きい時や高負荷運転時には流量制御弁による入口側制御を行うように設定されている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−41986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、高圧ポンプ11の加圧室の上流側の流量制御弁18とコモンレール15に接続された圧力制御弁20とは、それぞれの作動時のレール圧への作用、例えば、目標レール圧の変化に対する応答性などが全く同じではないため、内燃機関の運転状態に応じていずれかの制御を選択的に実行する場合に、制御方法が切り換わる過渡期にはレール圧が大きく脈動を起こすおそれがある。また、いわゆるオーバーラン時のようにアクセル操作量を一気に小さくするような、内燃機関が高速回転から急速に低速回転に変化する場合等の、レール圧を急激に低下させたい場合において、流量制御弁18による入口側制御を行っている状態からの減圧応答制御性がなお不十分となるおそれがある。
【0009】
このような事態に対処する方法として、上述した流量制御弁18による入口側制御又は圧力制御弁20による出口側制御に併せて、さらに、所定の運転領域に限って流量制御弁18と圧力制御弁20とを両方同時に制御することによってレール圧を制御する入口出口同時制御も考えられる。この入口出口同時制御は、高圧ポンプ11の加圧室への燃料供給量と、コモンレール15からの高圧燃料の排出量とをともに調節することによって、所望のレール圧を実現するものである。
【0010】
ここで、出口側制御に用いられる、コモンレール15に接続された圧力制御弁20としては、例えば、図2に示すような電磁制御式のものが知られている。この圧力制御弁20は、ケーシング22内に、コモンレール15から連通する流路23が設けられ、流路23に、弁座25と弁座25に対して着座及びリフト可能な弁体27とが配設されるとともに、弁体27が先端に設けられてケーシング22内のガイド孔29に進退自在に配置されたニードル31と、ニードル31の後端に設けられたベースプレート33と、ベースプレート33を付勢する圧縮スプリング35と、ベースプレート33を駆動可能なソレノイド37とを備えている。
【0011】
この圧力制御弁20では、ソレノイド37への供給電流を調整することで、ベースプレート33が所定量移動し、これに従動してニードル31が進退して弁座25に対する弁体27の位置(以下、「リフト位置」と称する。)を調整することが可能となっている。
この圧力制御弁20に用いられている弁体27としては、球状のボール弁や、先端が円錐形状の弁体が用いられている。また、弁体27が着座する弁座25は、円錐面形状に構成されている。
【0012】
しかしながら、このような従来の圧力制御弁20では、コモンレール15のレール圧を所定量変化させる制御を行う際に、その時点の弁体27のリフト位置やレール圧、コモンレール15への高圧燃料の流入量等の条件により弁体27を移動させる移動量が異なるという特性を持っている。換言すれば、弁体27を所定のストローク分移動させた場合に変化するレール圧の差分が、その時点の弁体27のリフト位置やレール圧、コモンレール15への高圧燃料の流入量によって異なるという特性を持っている。
【0013】
より具体的には、弁体を所定位置にリフトして、流量係数を考慮した有効通路面積(S)を一定にした状態で、レール圧(P)に対するコモンレールへの高圧燃料の流入量(Q)の変化を測定すると、図3のグラフのようになる。この図3では、燃料噴射弁からの噴射量が一定となっている場合を想定しており、コモンレールへの高圧燃料の流入量(Q)は、圧力制御弁からの排出量に一致する。各曲線は各有効通路面積(S)を異ならせた場合であり、有効通路面積(S)はS1<S2<S3となっている。このグラフをもとにして、コモンレールへの高圧燃料の流入量(Q)を一定とした場合のレール圧(P)と有効通路面積(S)との関係を求めると、図4のグラフのようになる。流入量(Q)はQ1<Q2<Q3となっている。
【0014】
この関係を有効通路面積(S)に対するレール圧(P)の変化として示せば、図5のグラフのようになる。そして、図5の有効通路面積(S)に対するレール圧(P)の変化を、従来の球状あるいは一定勾配の円錐形状の弁体と一定勾配の円錐面形状の弁座とを用いた場合の、弁体のリフト位置(L)に対するレール圧(P)の変化に変換して示すと、図6のようになる。
【0015】
この図6から明らかなように、何れの流入量(Q)においても、リフト位置(L)に対するレール圧(P)の変化は曲線的であるとともに、流入量(Q)によってその変化曲線の変化率が異なっている。そのため、例えば、流入量がQ1でレール圧がP1のときにレール圧をΔP分大きくしようとした場合、本来であれば弁体のリフト位置(L)をΔL分小さくすればよいにもかかわらず、弁体の移動時に流入量がQ3に変化していたとすると、弁体のリフト位置(L)をΔL分小さくしたことによってレール圧がΔP´分も大きくなってしまうことになる。すなわち、弁体の移動量ΔLの算出をPID(Pulse Intermittent Drive)制御などのフィードバック制御で実施した場合、流入量(Q)の変化によって、同一の制御ゲインにおいて異なる応答となる。そのため、流入量(Q)やレール圧(P)の条件によって応答速度等が異なり、オーバーシュート等が発生しやすくなる。
【0016】
特に、弁体のリフト位置(L)が小さい領域では、リフト位置(L)が大きい領域に比べて、レール圧(P)の変化が急峻な勾配となるため、弁体のリフト位置(L)が小さい領域で弁体を移動させる際にコモンレールへの流入量(Q)が変化していた場合には、目標レール圧と実際のレール圧(以下「実レール圧」と称する。)との差が著しく大きくなってしまうおそれがある。
【0017】
このように、従来の圧力制御弁では、コモンレールへの高圧燃料の流入量が変化することを前提とすると、レール圧をΔP分変化させる際には、レール圧(P)、コモンレールへの高圧燃料の流入量(Q)及び弁体の移動量(ΔL)を変化要因としてフィードバックゲインを適合することが必要になる。したがって、レール圧の制御ロジック及び適合パターンが極めて膨大になり、レール圧制御性が低下するおそれがあった。
【0018】
そこで、本発明の発明者は鋭意努力し、高圧流体の蓄圧部に接続された圧力制御弁の弁座及び弁体の少なくとも一方の通路面積調整部の形状を、蓄圧部に流入する高圧流体の流入量にかかわらず、弁体の移動量に対する蓄圧部の圧力の変化率が均一となるように開口の有効通路面積を変化させる形状とすることによってこのような問題を解決することを見出し、本発明を完成させたものである。すなわち、本発明の目的は、蓄圧部内の圧力を変化させる際の弁体の移動量の変化要因を蓄圧部に流入する高圧流体の流入量のみとして、蓄圧部内の圧力の制御性を向上させることができる圧力制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の圧力制御弁によれば、弁座と、弁座に対するリフト位置が調整可能な弁体と、を備え、高圧流体が流入し蓄圧される蓄圧部に接続されるとともに、リフト位置を調節することにより蓄圧部からの高圧流体の排出量を調整して蓄圧室内の圧力を制御する圧力制御弁であって、弁座及び弁体の少なくとも一方には、リフト位置に対応して高圧流体が通過する流路の有効通路面積を変化させる通路面積調整部を備え、通路面積調整部は、蓄圧部に流入する高圧流体の流入量を一定としたときの弁体の移動量に対する蓄圧部の圧力の変化率が、流入量にかかわらず均一となるように有効通路面積を変化させる形状を有することを特徴とする圧力制御弁が提供され、上述した問題を解決することができる。
【0020】
また、本発明の圧力制御弁を構成するにあたり、弁座及び弁体の少なくとも一方には、流路を閉塞する閉塞部と通路面積調整部との間に、移動量に対する有効通路面積の変化率が通路面積調整部における有効通路面積より大きい強制開放部を備えることが好ましい。
【0021】
また、本発明の圧力制御弁を構成するにあたり、蓄圧部は、内燃機関の燃料供給装置に用いられるコモンレールであることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の圧力制御弁によれば、弁座及び弁体の少なくとも一方の通路面積調整部が、蓄圧部に流入する高圧流体の流入量を一定としたときの弁体の移動量に対する蓄圧部の圧力の変化率が、流入量にかかわらず均一となるように有効通路面積を変化させる形状を有している。そのため、蓄圧部への高圧流体の流入量が変化する状態で、蓄圧部内の圧力が目標値となるように調節されるために、弁体のリフト位置及びコモンレールへの流入量にかかわらず弁体の移動量に対する圧力の変化率が均一になる。したがって、蓄圧部への流入量の変化のみを変化要因として弁体の移動量を調節することで足りることになり、蓄圧部内の圧力の制御性が著しく向上される。
【0023】
本発明の圧力制御弁において、弁体又は弁座に対して当接する閉塞部と通路面積調整部との間に、弁体の移動量に対する有効通路面積の変化率が通路面積調整部より大きい強制開放部を備えることにより、弁体の移動量に対するレール圧の変化率が急峻となりやすい閉塞部近傍のリフト範囲をより短くすることができ、弁体の移動量に対する蓄圧部の圧力の変化率が均一となる通路面積調整部の調整範囲を広く確保しやすくできる。そのため、弁体の移動量に対する圧力の変化率が均一となるような条件範囲(流入量(Q)、レール圧(P)、リフト位置(L))が広く提供されることになり、圧力の制御性がより向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の圧力制御弁に関する実施の形態について具体的に説明する。ただし、この発明の実施の形態は本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。
なお、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものについては同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
【0025】
本実施形態の圧力制御弁は、図1に示すような蓄圧式燃料噴射装置に使用されるものである。この蓄圧式燃料噴射装置は、従来と同様に、高圧流体としての高圧燃料が流入し蓄えられる蓄圧部としてのコモンレール15に、高圧燃料が導入される燃料導入経路13が接続されるとともに、燃料噴射弁17に通じる燃料噴射経路19が接続されている。また、レール圧の入口側制御を行う流量制御弁が燃料導入経路13の高圧ポンプ11の加圧部の上流側に設けられ、レール圧の出口側制御を行う圧力制御弁20が、燃料噴射経路19とは別に接続された還流経路21に設けられている。
【0026】
この蓄圧式燃料噴射装置では、ある運転状態においては、高圧ポンプ11の加圧室に供給する燃料を流量制御弁18によって調節することによってコモンレール15に流入する高圧燃料の導入量が調節されるとともに、コモンレール15に接続された圧力制御弁20によってコモンレール15からの高圧燃料の排出量を調整することによりレール圧を調整する入口出口同時制御が行われる。
【0027】
圧力制御弁20は、図2に示すように、ケーシング22内にコモンレール15から連通する流路23が設けられ、この流路23に、開口25aを有する弁座25が設けられるとともに、弁座25に対して着座及びリフト可能な弁体27が配置されている。そして、弁体27の周囲を囲むように配置されたソレノイド37に対して供給する電流を調整することで、圧縮スプリング35により付勢されているベースプレート33が所定量移動し、これに従動してニードル31が進退することで弁座25に対する弁体27のリフト位置が調整可能となっている。
【0028】
そして、この圧力制御弁20では、図7(a)〜(c)に示すように、弁座25及び弁体27には互いに当接する閉塞部41a、41bが設けられている。また、図7(a)〜(c)及び図8に示すように、弁体27の表面の閉塞部41bに隣接する位置に、弁体27の僅かなリフト位置で開口25aを所望の有効通路面積で開放するための強制開放部45が設けられるとともに、強制開放部45に隣接する位置に、弁体27のリフト位置に対応して変化する有効通路面積で開口25aを開放可能な通路面積調整部43が設けられている。ここでは、強制開放部45が通路面積調整部43と閉塞部41bとの間に配設されている。
【0029】
閉塞部41a、41bは、図7(a)に示すように、弁座25に対して弁体27が着座した状態で、互いに当接して弁座25の開口25aを完全に閉塞することが可能となっている。この閉塞部41a、41bは確実に開口25aを閉塞可能な形状であれば特に限定されず、図示のように、ニードルの進退方向に対して略直交する平面により構成されていてもよく、例えば、テーパ面、球面等の曲面により構成されていてもよく、さらに、環状に設けられたリブ等から構成されていてもよい。
【0030】
強制開放部45は、図7(b)及び図8に示すように、閉塞部41a、41b間が当接する位置から、弁座25に対して弁体27の出来るだけ少ないリフト位置で、通路面積調整部43によって有効通路面積が調整される位置まで弁体27を移動させることが可能となっている。
【0031】
強制開放部45の形状は任意であるが、少なくとも弁体27のリフト位置の変化(弁体27の移動量)に対する有効通路面積の変化率が、通路面積調整部43より大きく設定されていることが必要である。本実施形態では、強制開放部45は弁座25の開口25a内に挿入可能な柱状部からなり、径方向に凹んでニードルの進退方向に延びる凹部45aが周囲に複数設けられている。
【0032】
このような強制開放部45が設けられている部位は、閉塞部41a、41b近傍の位置であるため、弁体の移動量に対するレール圧の変化が大きくなりやすい。そのため、強制開放部45を、出来るだけ少ないリフト位置の範囲にして強制的に開口25aを所定面積まで開口させることができる構成とすることで、後述する通路面積調整部43による制御性を向上させている。
【0033】
一方、通路面積調整部43は、図7(c)及び図8に示すように、高圧燃料の有効通路面積が弁体27のリフト位置に対応して所望の値となるように所定の形状に設定されており、弁体27のリフト位置の調整により、その形状に基づいて有効通路面積が調整可能となっている。ここでは、通路面積調整部43の形状は、コモンレールに流入する高圧燃料の流入量にかかわらず、弁体27の移動量に対するコモンレールのレール圧の変化率が均一となるように、弁座25を通過する高圧燃料の有効通路面積を変化させることが可能な形状に形成されている。本実施形態では、通路面積調整部43の最大外形が弁座25の開口25aより小さく、開口25aの内壁面と全周において離間し、突出方向先端側ほど細くなり、さらに、強制開放部45側ほどニードルの進退方向に対して大きな傾斜となるように湾曲した曲面形状に形成されている。
【0034】
このような弁座25及び弁体27では、コモンレールへの高圧燃料の流入量がある一定量である場合の弁座25に対する弁体27のリフト位置(L)と有効通路面積(S)との関係が、例えば図9に示すグラフ中、実線Aに示すようになる。また、図中、比較のために、従来用いられているような円錐形状の弁体27を用いた場合の関係を線Bで示している。
【0035】
ここでは、リフト位置(L)が0の状態では有効通路面積(S)は0であり、リフト位置(L)が強制開放部45に対応する微小な領域の範囲では、リフト位置(L)の増加量に対して有効通路面積(S)が急峻に増加する。そして、リフト位置(L)が強制開放部45の領域を超えて通路面積調整部43に対応する領域に達する時点で所定の有効通路面積(S)で開放され、その後、リフト位置(L)の変化(移動量(ΔL))に対して有効通路面積(S)の変化が穏やかになる。
【0036】
そして、通路面積調整部43によって、このようなリフト位置(L)の変化(移動量(ΔL))に対する有効通路面積(S)の変化率が実現されると、図10に示すように、コモンレールに対する高圧燃料の流入量(Q)にかかわらず、流入量(Q)を一定としたときの弁体の移動量(ΔL)に対するコモンレールのレール圧(P)の変化率が均一となる。そのため、レール圧(P)を所定量増減させて目標レール圧まで変化させる場合に、弁体の移動量(ΔL)に対するレール圧の変化量(ΔP)(=ΔP/ΔLゲイン)の変化要因として、コモンレールに流入する高圧燃料の流入量(Q)の変化のみを考慮し、弁体の移動量(ΔL)を調節することによって、レール圧(P)を目標レール圧とすることが可能になる。
【0037】
すなわち、圧力制御弁20のΔP/ΔLゲインの変化要因が従来ではレール圧(P)、弁体の移動量(ΔL)、及び流入量(Q)であったのに対して、本実施形態のような構成の圧力制御弁20を用いてコモンレール15のレール圧制御を行うことにより、ΔP/ΔLゲインの変化要因がコモンレールへの流入量(Q)のみとなるため、制御ロジックが簡素化される。
【0038】
以上のような圧力調整弁20によれば、弁体27に、弁座25に対する弁体27のリフト位置(L)に対応して有効通路面積(S)を変化させる通路面積調整部43を備え、この通路面積調整部43が、コモンレール15に流入する高圧燃料の流入量(Q)を一定としたときの弁体の移動量(ΔL)に対するコモンレール15のレール圧(P)の変化率が、流入量(Q)にかかわらず均一となるように開口25aの有効通路面積(S)を変化させる形状を有するので、コモンレールへの流入量(Q)が変化する状態でレール圧(P)を目標レール圧まで変化させる場合に、コモンレールへの流入量(Q)の変化のみを考慮して、弁体27の移動量を調整することで足り、レール圧(P)の制御性が著しく向上される。
【0039】
また、この圧力制御弁20では、開口25aが閉塞される閉塞部41bと通路面積調整部43との間に、リフト位置(L)の変化(移動量(ΔL))に対する有効通路面積(S)の変化率が通路面積調整部43における変化率より大きい強制開放部45を備えているので、閉塞部41b近傍の弁体25の移動量(ΔL)に対するレール圧(P)の変化が増大しやすい範囲をより短くすることができ、弁体25の移動量(ΔL)に対するコモンレール15のレール圧(P)の変化率が均一となる通路面積調整部43の調整範囲を広く確保しやすくできる。そのため、弁体の移動量に対する圧力の変化率が均一となるような条件範囲(流入量(Q)、レール圧(P)、リフト位置(L))が広く提供されることになり、レール圧(P)の制御性がより向上させられる。
【0040】
なお、上記実施の形態は、本発明の範囲内で適宜変更可能である。例えば、上記では弁座25及び弁体27の形状の一例を例示したが、他の形状とすることは可能である。例えば、図11に示すように、テーパ面の弁座に対して弁体27の先端側を円錐形状とし、周面に単数又は複数の溝51を設け、この溝51の形状を調整することで、強制開放部45や通路面積調整部43を設けてもよい。
【0041】
また、図12に示すように、テーパ面の弁座に対して、ニードル31の先端にニードル31とは別体のボールからなる弁体27を配置するとともに、弁体27の表面に溝53を設けて、強制開放部45や通路面積調整部43を設けてもよい。
【0042】
さらに、上記では、何れも弁体27に強制開放部45や通路面積調整部43を設けた例について説明したが、弁座25にこれらを設けることでも、全く同様に本願発明を適用することが可能である。さらに、弁座25及び弁体27の両方にこれらを設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態及び従来の蓄圧式燃料噴射装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態及び従来の圧力制御弁を示す断面図である。
【図3】従来の圧力制御弁における圧力(P)に対する流入量(Q)の変化を示すグラフである。
【図4】従来の圧力制御弁における圧力(P)と有効通路面積(S)との関係を示すグラフである。
【図5】従来の圧力制御弁における有効通路面積(S)に対する圧力(P)の変化を示すグラフである。
【図6】従来の圧力制御弁におけるリフト位置(L)に対する圧力(P)の変化を示すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態の圧力制御弁の弁体と弁座とを示す概略断面図であり、(a)は閉塞状態、(b)は弁座に対して弁体を僅かにリフトさせた状態、(c)は弁座に対して弁体を十分にリフトさせた状態を示す。
【図8】本発明の実施の形態の圧力制御弁の弁体を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態の圧力制御弁におけるリフト位置(L)に対する有効通路面積(S)の変化を示すグラフである。
【図10】本発明の実施の形態の圧力制御弁におけるリフト位置(L)に対する圧力(P)の変化を示すグラフである。
【図11】本発明の実施の形態の圧力制御弁の弁体の変形例を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態の圧力制御弁の弁体の他の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
10:燃料タンク、11:高圧ポンプ、12:低圧ポンプ、13:燃料導入経路、15:コモンレール、17:燃料噴射弁、18:流量制御弁、19:燃料噴射経路、20:圧力制御弁、21:還流経路、23:流路、25:弁座、25a:開口、27:弁体、41a、41b:閉塞部、43:通路面積調整部、45:強制開放部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座と、前記弁座に対するリフト位置が調整可能な弁体と、を備え、高圧流体が流入し蓄圧される蓄圧部に接続されるとともに、前記リフト位置を調節することにより前記蓄圧部からの前記高圧流体の排出量を調整して前記蓄圧室内の圧力を制御する圧力制御弁において、
前記弁座及び前記弁体の少なくとも一方には、前記リフト位置に対応して前記高圧流体が通過する流路の有効通路面積を変化させる通路面積調整部を備え、
前記通路面積調整部は、前記蓄圧部に流入する前記高圧流体の流入量を一定としたときの前記弁体の移動量に対する前記蓄圧部の圧力の変化率が、前記流入量にかかわらず均一となるように前記有効通路面積を変化させる形状を有することを特徴とする圧力制御弁。
【請求項2】
前記弁座及び前記弁体の少なくとも一方には、前記流路を閉塞する閉塞部と前記通路面積調整部との間に、前記移動量に対する前記有効通路面積の変化率が前記通路面積調整部における前記有効通路面積より大きい強制開放部を備えることを特徴とする請求項1に記載の圧力制御弁。
【請求項3】
前記蓄圧部は、内燃機関の燃料供給装置に用いられるコモンレールであることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力制御弁。
【請求項1】
弁座と、前記弁座に対するリフト位置が調整可能な弁体と、を備え、高圧流体が流入し蓄圧される蓄圧部に接続されるとともに、前記リフト位置を調節することにより前記蓄圧部からの前記高圧流体の排出量を調整して前記蓄圧室内の圧力を制御する圧力制御弁において、
前記弁座及び前記弁体の少なくとも一方には、前記リフト位置に対応して前記高圧流体が通過する流路の有効通路面積を変化させる通路面積調整部を備え、
前記通路面積調整部は、前記蓄圧部に流入する前記高圧流体の流入量を一定としたときの前記弁体の移動量に対する前記蓄圧部の圧力の変化率が、前記流入量にかかわらず均一となるように前記有効通路面積を変化させる形状を有することを特徴とする圧力制御弁。
【請求項2】
前記弁座及び前記弁体の少なくとも一方には、前記流路を閉塞する閉塞部と前記通路面積調整部との間に、前記移動量に対する前記有効通路面積の変化率が前記通路面積調整部における前記有効通路面積より大きい強制開放部を備えることを特徴とする請求項1に記載の圧力制御弁。
【請求項3】
前記蓄圧部は、内燃機関の燃料供給装置に用いられるコモンレールであることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力制御弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−53996(P2010−53996A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221126(P2008−221126)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
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