説明

圧力制御装置

【課題】 上流側の圧力とと下流側の圧力との圧力差の、ピストンの変位量に対する変化量を調整することのできる、汎用性の高い圧力制御装置を提供する。
【解決手段】 圧力制御装置10は、ピストン11と、シリンダ12とを含んで構成される。シリンダ12は、流体が流れる管路内に設けられ、ピストン11を内部空間14に収容する。シリンダ12には、複数の連通孔13が形成される。連通孔13は、内部空間14と外部空間16とを連通る。複数の連通孔13のうちの少なくとも一部は、個別に閉塞可能に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が流れる管路内の流体の圧力を制御する圧力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、従来技術に係る圧力制御弁1の断面図である。従来技術に係る圧力制御装置である圧力制御弁1は、弁体2を駆動するピストンと、周面に複数の開口が穿設され、ピストンの下方に一体的に設けられるケージ3と、絞りとして機能するケージガイド4とを有する。圧力制御弁1において開口は、台形状に形成されており、弁体の移動量に応じて開口面積が増加する(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−269836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に係る圧力制御弁では、圧力制御弁の使用状況が異なる場合に、流体の弁体部通過抵抗の、ピストンの変位量に対する変化量を調整できないという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、流体の弁体部通過抵抗のピストンの変位量に対する変化量を調整することのできる、汎用性の高い圧力制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従えば、圧力制御装置は、ピストンと、シリンダとを含んで構成される。シリンダは、流体が流れる管路内に設けられ、ピストンを内部空間に収容する。シリンダには、複数の連通孔が形成される。連通孔は、内部空間と外部空間とを連通する。複数の連通孔のうちの少なくとも一部は、個別に閉塞可能に形成される。
また本発明に従えば、圧力制御装置は、閉塞部材をさらに含む。閉塞部材は、複数の連通孔のうちの少なくとも一部に装着され、装着されたときには装着された連通孔を閉塞する。
また本発明に従えば、連通孔を規定する部分には、雌ねじが形成され、閉塞部材には、前記雌ねじに螺合可能な雄ねじが形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の連通孔のうちの少なくとも一部は、個別に閉塞可能に形成される。これによって、連通孔を通過する流体の流れに対してシリンダが作用する通過抵抗の大きさを変化させることができる。これによって、シリンダよりも上流側における圧力と下流側における圧力との圧力差の、ピストンの変位量に対する依存性を、変化させることができる。したがって、汎用性の高い圧力制御装置を実現することができる。
また本発明によれば、連通孔の少なくとも一部は、閉塞部材が装着されることによって閉塞される。これによって、連通孔を通過する流体の流れに対してシリンダが作用する通過抵抗の大きさを変化させることができる。これによって、シリンダよりも上流側における圧力と下流側における圧力との圧力差の、ピストンの変位量に対する依存性を、変化させることができる。したがって、汎用性の高い圧力制御装置を実現することができる。
また本発明によれば、閉塞部材は、連通孔を規定する部分に螺合させることができる。これによって、閉塞部材は、連通孔を規定する部分に螺合することによって、連通孔を塞ぐことができる。したがって、シリンダの内部空間と外部空間とに圧力差が生じる場合に、連通孔を規定する部分から閉塞部材がひとりでに抜け落ちることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。以下の説明においては、各形態に先行する形態ですでに説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0009】
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧力制御装置10の断面図である。第1実施形態にかかる圧力制御装置10は、流体が流れる管路内の流体の圧力を制御する。第1実施形態に係る圧力制御装置10は、ピストン11と、シリンダ12とを含んで構成される。シリンダ12は、流体が流れる管路内に設けられ、ピストン11を内部空間14に収容する。シリンダ12には、複数の連通孔13が形成される。連通孔13は、内部空間14と外部空間16とを連通し、複数の連通孔13のうちの少なくとも一部は、個別に閉塞可能に形成される。連通孔を通過する流体の通過抵抗は、ピストン11の変位によって調整が可能である。
【0010】
圧力制御装置10は、ピストン棒17と、Oリング18と、管路構成体19と、駆動部22と、制御部24とをさらに含んで構成される。シリンダ12は、シリンダ円板26およびシリンダ円筒部27を含む。シリンダ円板26は、外形が円形に形成される板状部材であり、ピストン棒17が挿入される挿通孔が形成される。挿通孔は、外形の円の中心を通り、前記板状部材の厚み方向に延びる直線を軸線として形成され、シリンダ円板26を貫通する円形の孔である。ピストン棒17は、円柱状に形成され、シリンダ円板26のうちの挿入孔を規定する部分に対して、円滑に摺動可能である。ピストン棒17の円柱の軸線は、挿通孔の軸線に一致する。
【0011】
第1実施形態において、ピストン棒17の円柱の軸線を「摺動軸線」と称し、摺動軸線の方向を「摺動方向」と称する。摺動軸線に垂直に交わる直線のすべての方向を「半径方向」と称し、半径方向のうち摺動軸線から離れる向きを「半径方向外方」と称し、半径方向のうち摺動軸線に近づく向きを「半径方向内方」と称する。
【0012】
シリンダ円筒部27は、大略的に円筒状に形成され、シリンダ円筒部27の円筒の軸線は、摺動軸線に一致する。シリンダ円筒部27の摺動方向一方Z1の端部は、シリンダ円板26と接続される。シリンダ円筒部27は、シリンダ円板26と一体に形成される。シリンダ円筒部27の側面には、半径方向に貫通する複数の連通孔13が形成される。複数の連通孔13は、シリンダ円筒部27の摺動軸線まわりの周方向にも複数形成され、シリンダ円筒部27の摺動方向Zにも複数形成される。連通孔13を規定する部分を「連通孔規定部」と称する。
【0013】
ピストン11は、シリンダ円筒部27に対して嵌合し、シリンダ円筒部27の半径方向内方に設置される。ピストン11は、大略的に円柱状に形成され、ピストン11の円柱の軸線は、摺動軸線に一致する。ピストン11の円柱の外径は、ピストン棒17の円柱の外径よりも大きい。ピストン11の摺動方向他方Z2の端部のうち半径方向外方の周縁部には、摺動方向他方Z2に全周にわたって突出する突出部11bが形成される。ピストン11は、ピストン棒17よりも摺動方向他方Z2に位置し、ピストン棒17の摺動方向他方Z2の端部は、ピストン11の摺動方向一方Z1の端部と接続される。ピストン11は、ピストン棒17とともに、シリンダ12に対して摺動方向Zに変位する。
【0014】
摺動軸線から半径方向外方のピストン11の外周面には、矩形溝11aが形成される。矩形溝11aは、摺動軸線まわりの周方向に一周して形成される。ピストン11に対する矩形溝11aの摺動方向Zの位置は、周方向に関わらず一定である。矩形溝11aは、摺動軸線に関して半径方向外方からピストン11の一部を切り欠いて形成され、摺動軸線を含む平面でピストン11を切断したときの矩形溝11aの断面形状は、長方形である。
【0015】
矩形溝11aには、Oリング18が嵌合する。Oリング18は、たとえば樹脂を材料として形成され、シリンダ円筒部27の半径方向内方から、シリンダ円筒部27に対してしまりばめされる。Oリング18の半径方向の寸法は、摺動軸線まわりの周方向に一様であり、矩形溝11aの半径方向の深さよりも大きく設定される。矩形溝11aに嵌合した状態で、Oリング18は、ピストン11の外周面から摺動軸線に関して半径方向外方にわずかに突出する。ピストン11は、シリンダ円筒部27の内方から、シリンダ円筒部27に対してすきまばめされる。Oリング18とシリンダ円筒部27の内周面との隙間には、Oリング18とシリンダ円筒部27との摩擦を軽減するために、潤滑剤が塗布される。
【0016】
管路構成体19は、上流側フランジ32、下流側フランジ33および隔壁34を含んで構成され、一体に形成される。管路構成体19は、流体が流れる領域を構成する部材であり、内部空間14を流れる流体を外囲する。流体は、例えば都市ガスであり、第1実施態において流体が流れる向きは、予め定められる。管路構成体19の上流側端部は、管路構成体19の上流側に隣接して管路構成体19と接続される上流側配管38と接続される。管路構成体19の下流側端部は、管路構成体19の下流側に隣接して管路構成体19と接続される下流側配管39と接続される。上流側フランジ32は、上流側配管38に対する固定および密閉を可能にするために、管路構成体19の上流側に設けられる管継手である。下流側フランジ33は、下流側配管39に対する固定および密閉を可能にするために、管路構成体19の下流側に設けられる管継手である。
【0017】
管路構成体19の上流側端部に規定される管路を流れる流体の流れ方向と、下流側端部に規定される管路を流れる流体の流れ方向とは、一致する。上流側端部および下流側端部に規定される管路内を流れる流体の流れ方向を「流路方向」と称する。流路方向Xのうち、上流側に向かう向きを「流路方向一方」と称する。流路方向Xに見て管路構成体19の上流側端部および下流側端部は、円形に形成される。上流側配管38および下流側配管39も、上流側端部および下流側端部に対応して円形に形成され、上流側配管38、下流側配管39、管路構成体19の上流側端部および下流側端部の内径は、それぞれ互いに同じ寸法に設定される。本実施形態において流路方向Xは、摺動方向Zに直交するものとする。
【0018】
隔壁34は、管路構成体19の内部空間を流れる流体の流れ方向に関して、上流側と下流側との途中位置に設置され、上流側と下流側とを仕切って設けられる管路構成体19の一部である。隔壁34によって仕切られた内部空間のうち、上流側に位置する流体を「1次流体」と称し、下流側に位置する流体を「2次流体」と称する。第1実施形態において、上流側配管38内の流体の圧力を「1次圧力」、下流側配管39内の流体の圧力を「2次圧力」と称する。1次圧力は予め定められ、一定に保たれる。2次圧力には、目標となる圧力の大きさが予め定められ、本実施形態に係る圧力制御装置10は、2次圧力を目標となる圧力に保つために圧力制御を行う。2次圧力として目標として定められる圧力を「目標2次圧力」と称する。
【0019】
隔壁34の一部には、開口42が形成される。開口42は、隔壁34を摺動方向Zに貫通する孔であり、1次流体が位置する上流側空間と、2次流体が位置する、隔壁34よりも下流側の空間とを連通する。管路構成体19によって規定される空間のうち、1次流体が位置する、隔壁34よりも上流側の空間を「上流側空間」と称する。隔壁34のうち、開口42を規定する部分を「開口部」と称する。開口部46は、摺動方向Zに見て大略的に円形の板状部分であり、開口部46の厚み方向は、摺動方向Zに一致する。開口42を摺動方向Zに見ると、円形であり、摺動方向Zに見た開口42の中心は、摺動軸線に一致する。管路構成体19を流れる流体の流量が、予定される範囲内で最大であるときにも、開口部46が流体の流れに対して有意な抵抗となることを防止するために、開口42の内径は、充分に大きく設定される。
【0020】
シリンダ円筒部27の摺動方向他方Z2の端部は、摺動軸線まわりの全周にわたって隔壁に接触して配置される。隔壁34の摺動方向一方Z1の表面部のうち、ピストン11の突出部11bに対応する部分には、合成ゴムまたは合成樹脂からなる密閉部34aが全周にわたって形成される。ピストン11が最も摺動方向他方Z2に変位したときに、ピストン11の突出部11bは、密閉部34aに当接する。これによって、開口42は閉鎖され、流体の移動は阻止される。
【0021】
ピストン11よりも摺動方向他方Z2、シリンダ円筒部27よりも摺動軸線に関して半径方向内方に位置する空間を「ピストン空間」と称する。ピストン空間51内において、流体は、ピストン11の摺動方向他方Z2の端面によって、摺動方向一方Z1に移動することは阻止される。隔壁34の開口42は、充分に大きく形成され、開口部46が流体の流れに対して抵抗となることは防止されるので、ピストン空間51内の流体の圧力は、1次圧力である。ピストン11が隔壁34に接する状態から、摺動方向一方Z1に変位し、シリンダ円筒部27に形成される連通孔13に規定される空間がピストン空間51に連なると、ピストン空間51内の流体は、連通孔13を摺動軸線に関して半径方向外方に通過する。
【0022】
ピストン空間51に露出した連通孔規定部28と、ピストン11のうち連通孔規定部28に接する部分とは、流体の流れに対して抵抗として作用するので、ピストン空間51から摺動軸線に関してシリンダ円筒部27よりも半径方向外方に移動した流体の圧力は、1次圧力よりも低い。
【0023】
図2は、本発明の第1実施形態におけるシリンダ円筒部27の斜視図である。図2において、シリンダ円板26は、除いて図示している。図3は、本発明の第1実施形態におけるシリンダ円筒部27を、摺動軸線を含む平面で切断して見た断面図である。図4は、本発明の第1実施形態における連通孔規定部28と閉塞部材52とを表す図である。図4(a)は、連通孔規定部28を、摺動軸線を含む平面で切断して見た断面図であり、図4(b)は、閉塞部材52の側面図である。
【0024】
圧力制御装置10は、閉塞部材52をさらに含んで構成される。閉塞部材52は、複数の連通孔13のうちの少なくとも一部に装着され、閉塞部材52が装着されたときには、装着された連通孔13を閉塞する。全ての連通孔13は、個別に、閉塞部材52を装着可能に形成される。したがって、複数の連通孔13のうち、閉塞部材52によって塞がれる連通孔13は、任意に選択できる。連通孔13を規定する部分には、雌ねじが形成され、閉塞部材52には、前記雌ねじに螺合可能な雄ねじが形成される。
【0025】
本実施形態において連通孔13は、シリンダ円筒部27の周方向および摺動方向Zの全範囲に、たとえば、均等に広がって形成される。シリンダ円筒部27に形成される複数の連通孔13は、螺旋状の線に沿って形成される。螺旋状の線は、摺動方向一方Z1に向かうにつれて、シリンダ円筒部27の周方向に、摺動軸線を中心に螺旋状に回転する線である。螺旋状の線上に隣合う連通孔13の摺動方向Zの位置は、少なくとも一部が摺動方向Zに重なる。複数の連通孔13がこのように形成されることによって、ピストン11が摺動方向Zに変位したときに、ピストン11の変位に伴って、流体がシリンダ円筒部27を通過する量を連続的に変化させることができる。
【0026】
連通孔13は、シリンダ円筒部27に対して数個〜数千個、たとえば10個以上1000個以下の範囲で形成される。連通孔13の個数は、この範囲内において、数が多ければ多いほど、連通孔13を通る流体に対する通過抵抗は、細かく設定できる。各連通孔13の内径は、流体の粘性に応じて設定され、粘度が高ければ高いほど内径は大きく、粘度が低ければ低いほど内径は小さく設定されることが好ましい。各連通孔13の内径は、たとえば1ミリメートル(millimeters, 略号「mm」)以上10mm以下の範囲で設定される。連通孔13の内径は、小さければ小さいほど、粘性を有する流体に対して通過抵抗が大きくなる。本実施形態において各連通孔13の内径は互いに等しく設定され、3mmに設定される。
【0027】
形成されるすべての連通孔13の連通孔規定部28には、雌ねじが形成され、閉塞部材52が螺合可能である。閉塞部材52は、ビスまたは木ねじなどのねじ部品によって実現され、ねじ部品の頭部54を摺動軸線に関して半径方向外方に、軸部56を半径方向内方に向けて、シリンダ円筒部27よりも半径方向外方から、連通孔13に挿入され螺合する。閉塞部材52が連通孔規定部28に螺合すると、連通孔13は閉塞され、シリンダ円筒部27の半径方向内方の空間と半径方向外方の空間との連通は、遮断される。閉塞部材52による連通孔13の閉塞は、必ずしも完全な密閉が要求される訳ではなく、使用される圧力に関する条件下で、開放される連通孔13の流量に対して閉塞される連通孔13の流量が無視できる程度に流量を減少させることができればよい。
【0028】
閉塞部材52を連通孔13内に配置した状態において、閉塞部材52の半径方向内方の端部は、シリンダ円筒部27よりも半径方向内方に突出することはなく、閉塞部材52の半径方向内方の端部は、シリンダ円筒部27の円筒の内周面よりも半径方向外方に位置する。したがって、シリンダ円筒部27の内周面にピストン11の外周面に設けられたOリング18が摺動するときに、Oリング18と閉塞部材52とが接触することを防止することができる。したがって、Oリング18はシリンダ円筒部27に対して滑らかに摺動することができる。
【0029】
閉塞部材52は、シリンダ円筒部27の摺動方向他方Z2の位置に応じて、その配置の疎密を調整することが可能である。たとえば端部近傍において閉塞部材52を密に配置し、摺動方向一方Z1に向かうにつれて疎に配置することができる。しかし閉塞部材52が密に配置される領域においても、シリンダ円筒部27の周方向に並ぶ複数の連通孔13が、周方向全てにおいて閉塞されることは避けることが好ましい。本実施形態では、摺動方向Zのいずれの位置においても、周方向に並ぶ複数の連通孔13のうちの少なくとも一つは、閉塞部によって閉塞されることなく、シリンダ12の内部空間14と外部空間16とを連通する状態である。これによって、ピストン11およびシリンダ12の上流側の流体の圧力と下流側の流体の圧力との圧力差と、ピストン11の摺動方向Zの変位とを関連させることができる。
【0030】
ピストン11およびシリンダ12よりも上流側の圧力と下流側の圧力との圧力差は、シリンダ12に対するピストン11の位置に関わらず、1次圧力と2次圧力との圧力差である。2次圧力が目標2次圧力に保たれるときには、1次圧力は一定であるのでピストン11およびシリンダ12よりも上流側の圧力と下流側の圧力との圧力差は、一定に保たれる。したがって、閉塞部材52が複数の連通孔13に対して、摺動方向に均等に分布して配置される場合には、ピストン11の変位量に対する単位時間当たりの流量は、ピストン11の変位量に対して比例関係となる。
【0031】
シリンダ円筒部27の連通孔13に対する閉塞部材52の分布を、摺動方向他方Z2の端部近傍では密に、摺動方向一方Z1に向かうにつれて疎となる分布とすれば、ピストン11がシリンダ12の摺動方向他方Z2の端部近傍において変位するときには、ピストン11の変位量に対してピストン空間51に露出する連通孔13の量が少なく、流体の流量の増加量が少ない設定とすることができる。これによって、ピストン11がシリンダ12の摺動方向一方Z1に変位するにしたがって、ピストン11の変位量に対してピストン空間51に露出する連通孔13の量が次第に多くなり、流体の流量の増加量が次第に多くなる設定とすることができる。
【0032】
シリンダ円筒部27の連通孔13に対する閉塞部材52の分布を、摺動方向他方Z2の端部近傍では疎に、摺動方向一方Z1に向かうにつれて密となる分布とすれば、ピストン11がシリンダ12の摺動方向他方Z2の端部近傍において変位するときには、ピストン11の変位量に対してピストン空間51に露出する連通孔13の量が多く、流体の流量の増加量が多い設定とすることができる。これによって、ピストン11がシリンダ12の摺動方向一方Z1に変位するにしたがって、ピストン11の変位量に対してピストン空間51に露出する連通孔13の量が次第に少なくなり、流体の流量の増加量が次第に少なくなる設定とすることができる。
【0033】
流体を輸送する主管を含む配管全体の中で、圧力制御装置10の配置される位置が異なれば、同じ種類の圧力制御装置10であっても、使用状況が異なる場合がある。使用状況とは、たとえば1次圧力、予め定める目標2次圧力、これらの圧力の変動幅、必要となる流量などである。使用状況が異なれば、ピストン11の変位量に対する流量の変化量を調整する必要がある。連通孔13を閉塞部材52によって閉塞可能とし、シリンダ円筒部27において閉塞部材52によって塞がれる連通孔13の分布を変更可能とすることによって、ピストン11の変位量に対する流量の変化量を、変更することができる。したがって、異なる複数の使用状況に応じて、圧力制御装置10を対応可能な状態とすることができる。
【0034】
図5は、第1実施形態における駆動部22および制御部24の管路による接続関係を表す図である。駆動部22は、ピストン11をシリンダ12に対して摺動方向Zに変位させる部分である。駆動部22は、駆動部筐体57と、主ダイヤフラム58と、駆動ばね62とを含んで構成される。主ダイヤフラム58は、駆動部筐体57内に設けられ、駆動部筐体57の内部空間を駆動室63と駆動部背後室64とに仕切る。駆動室63は、駆動部背後室64よりも摺動方向他方Z2に位置し、駆動部背後室64は、駆動室63よりも摺動方向一方Z1に位置し、大気に開放されている。
【0035】
主ダイヤフラム58は、摺動方向Zを厚み方向として配置され、主ダイヤフラム58を摺動方向Zに見たときの中央部は、摺動方向Zに変位可能である。主ダイヤフラム58の中央部の摺動方向他方Z2は、ピストン棒17の摺動方向一方Z1の端部に接続され、主ダイヤフラム58の中央部の摺動方向一方Z1には、駆動ばね62が配置される。駆動ばね62は、圧縮コイルばねによって実現され、駆動ばね62の摺動方向一方Z1の端部は、駆動部筐体57に対して固定される。駆動ばね62の摺動方向他方Z2の端部は、主ダイヤフラム58に固定され、主ダイヤフラム58に対して、摺動方向他方Z2に押圧する力を付与する。
【0036】
制御部24は、パイロット弁66とパイロット駆動部68とを含み、パイロット弁66はパイロット管路69、パイロットピストン72およびパイロット弁座74とを含んで構成される。パイロットピストン72はパイロット弁座74に対して、基準方向に変位可能であり、パイロットピストン72が基準方向一方に変位することにより、パイロット弁座74に形成される開口42の開度は、減少する。これによってパイロット管路69の流体の流量は、減少し、パイロット管路69の一方、すなわちパイロット管路69の下流側での流体の圧力は、低下する。駆動部22の駆動室63は、第1管路76によってパイロット管路69の一方に接続される。
【0037】
パイロット駆動部68は、パイロットピストン72を基準方向に駆動する部分である。パイロット駆動部68は、パイロット筐体77、パイロットダイヤフラム78および圧力設定ばね81とを含んで構成される。パイロット筐体77の内部空間は、パイロットダイヤフラム78によってパイロットダイヤフラム室82とパイロット背後室84とに仕切られる。パイロット背後室84は、パイロットダイヤフラム室82よりも基準方向他方に位置し、大気に開放されている。パイロットダイヤフラム78は、基準方向を厚み方向として配置され、パイロットダイヤフラム78を基準方向に見たときの中央部は、基準方向に変位可能である。パイロットダイヤフラム78の中央部の基準方向他方は、パイロットピストン棒85の基準方向一方の端部に接続され、パイロットピストン棒85の基準方向他方の端部は、パイロットピストン72に接続される。
【0038】
パイロットダイヤフラム78は、パイロットピストン棒85を基準方向に変位させることによって、パイロットピストン72を変位させることができる。パイロットダイヤフラム78よりも基準方向一方には、圧力設定ばね81が配置される。圧力設定ばね81は、圧縮コイルばねによって実現され、その基準方向一方の端部は、パイロット筐体77に対して固定される。圧力設定ばね81の基準方向他方の端部は、パイロットダイヤフラム78の中央部に接続されている。パイロット駆動部68のパイロットダイヤフラム室82は、第2管路86によって下流側配管39に接続される。第2管路86は下流側配管39の2次圧力を、パイロットダイヤフラム室82に伝える信号配管である。
【0039】
第1管路76の途中位置と第2管路86の途中位置とは、第3管路87によって接続される。第3管路87の途中位置には、絞り88が配置される。パイロット弁66のパイロット管路69の他方は、第4管路92によって上流側配管38に接続されている。第4管路92は、上流側配管38の1次圧力をパイロット弁66に伝える信号配管である。下流側配管39の2次圧力が、2次圧力の目標値として予め定められる目標2次圧力に一致し、上流側配管38の1次圧力が一定であるとき、圧力制御装置10のピストン11、駆動部22の主ダイヤフラム58、パイロット弁66のパイロットピストン72およびパイロット駆動部68のパイロットダイヤフラム78は、変位することなく停止している。この状態を「目標状態」と称する。
【0040】
目標状態から、2次圧力が上昇すると、2次圧力は、第2管路86を介してパイロットダイヤフラム室82に伝えられる。下流側配管39の2次圧力が上昇することによって、パイロットダイヤフラム室82内の圧力が上昇し、パイロットダイヤフラム78の中央部は圧力設定ばね81に抗して、基準方向一方に変位する。これによって、パイロットピストン72は基準方向一方に変位し、パイロット弁座74の開口42の開度が減少する。これによってパイロット管路69の一方の圧力が低下する。
【0041】
パイロット管路69の一方の圧力は、第1管路76を介して駆動室63の流体が第3管路87より二次側へ流出するが、これを補う流体がパイロットより供給されないのでパイロット管路69の一方の圧力が低下することによって、駆動室63内の圧力が低下する。これによって主ダイヤフラム58を摺動方向一方Z1に押圧する力は減少するので、主ダイヤフラム58の中央部は、駆動部背後室64の大気圧と駆動ばね62との押圧力によって、摺動方向他方Z2に押圧されて変位する。これによって、圧力制御装置10のピストン11は、摺動方向他方Z2に変位し、ピストン11およびシリンダ12よりも下流側の圧力は低下する。これによって上昇した2次圧力を低下させることができる。
【0042】
下流側配管39内の2次圧力が目標2次圧力よりも低下した場合には、低下した2次圧力が第2管路86を介して、パイロット駆動部68のパイロットダイヤフラム室82に伝えられる。パイロットダイヤフラム室82の圧力が低下すると、パイロットダイヤフラム78を基準方向一方に押圧する力は小さくなり、パイロットダイヤフラム78の中央部は、パイロット背後室84内の大気圧および圧力設定ばね81の押圧力によって、基準方向他方に押圧され、変位する。これによってパイロットピストン棒85およびパイロットピストン72は、基準方向他方に変位し、パイロット弁座74の開口42の開度が増大する。これによって、パイロット管路69の一方の圧力は上昇し、第1管路76を介して、駆動部22の駆動室63に伝えられる。
【0043】
駆動室63の圧力が上昇すると、主ダイヤフラム58は摺動方向一方Z1に押圧される。これによって、主ダイヤフラム58の中央部は、駆動部背後室64内の大気圧および駆動ばね62の押圧力に抗して摺動方向一方Z1に変位する。これによってピストン棒17およびピストン11は、摺動方向一方Z1に変位され、ピストン11およびシリンダ12よりも下流側の流体の圧力は上昇する。これによって目標2次圧力よりも低下した2次圧力を上昇させることができる。目標2次圧力は、パイロット駆動部68の圧力設定ばね81のパイロットダイヤフラム78に対する押圧力によって設定される。第3管路87の途中位置に配置される絞り88は、上流側配管38からパイロット弁66および第1管路76を介して、駆動室63に流入した流体をゆるやかに第2管路86および下流側配管39に流す。本実施形態において基準方向は、摺動方向Zに一致し、基準方向一方は、摺動方向一方Z1に一致するものとする。
【0044】
他の実施形態において駆動部を、たとえば電気モータを含んで構成し、制御部を、2次圧力を検出し、2次圧力を表す検出信号を出力する2次圧センサと、2次圧センサから出力される検出信号が入力され、入力される検出信号に基づいて、駆動部22を制御するための制御信号を出力する制御回路と、制御回路から出力される制御信号に基づいて、駆動部22を駆動させる電力を供給するモータ駆動回路とを含む構成とすることも可能である。
【0045】
第1実施形態によれば、圧力制御装置10は、ピストン11と、シリンダ12とを含んで構成される。シリンダ12は、流体が流れる管路内に設けられ、ピストン11を内部空間14に収容する。シリンダ12には、複数の連通孔13が形成される。連通孔13は、内部空間14と外部空間16とを連通し、ピストン11の変位によって閉塞可能である。圧力制御装置10は、閉塞部材52をさらに含んで構成され、閉塞部材52は、複数の連通孔13のうちの少なくとも一部に装着される。閉塞部材52が装着された連通孔13は、閉塞される。
【0046】
したがって、閉塞部材52で連通孔13の一部を塞ぐことによって、連通孔13を通過する流体の流れに対して、シリンダ12と閉塞部材52とが作用する通過抵抗の大きさを変化させることができる。これによって、シリンダ12よりも上流側における圧力と下流側における圧力との圧力差の、ピストン11の変位量に対する依存性を、変化させることができる。したがって、汎用性の高い圧力制御装置10を実現することができる。
【0047】
また第1実施形態によれば、圧力制御装置は、閉塞部材52をさらに含む。閉塞部材52は、複数の連通孔13のうちの少なくとも一部に装着され、装着されたときには装着された連通孔を閉塞する。本実施形態において、全ての連通孔13は、閉塞部材52を装着可能に形成される。したがって、複数の連通孔13のうち、閉塞部材52によって塞がれる連通孔13は、任意に選択できる。閉塞部材52によって塞がれる連通孔13において、シリンダ12の内部空間14と外部空間16との連通は、ピストン11の変位に関わらず遮断される。したがって、ピストン11の変位によって開閉される連通孔13の位置を選択することができる。これによって、シリンダ12よりも上流側における圧力と下流側における圧力との圧力差の、ピストン11の変位量に対する依存性を、任意に決定することができる。したがって、圧力制御装置10の使用状況が異なる場合に、圧力制御装置10による圧力制御の程度を変化させることができる。したがって、汎用性の高い圧力制御装置10を実現することができる。
【0048】
また第1実施形態によれば、連通孔13を規定する部分には、雌ねじが形成され、閉塞部材52には、前記雌ねじに螺合可能な雄ねじが形成される。これによって、閉塞部材52は、連通孔13を規定する部分に螺合することによって、連通孔13を塞ぐことができる。したがって、シリンダ12の内部空間14と外部空間16とに圧力差が生じる場合に、連通孔13を規定する部分から閉塞部材52がひとりでに抜け落ちることを防止することができる。
【0049】
シリンダ円筒部27には、摺動方向Zの全範囲にわたって複数の連通孔13が形成される。またピストン11が摺動方向Zのいずれの位置にあっても、シリンダ12の内部空間14のうち、ピストン11よりも摺動方向一方Z1および摺動方向他方Z2の空間の両方が、連通孔13によって外部空間16に連通される。
【0050】
したがって、ピストン11の摺動方向Zの変位によって、ピストン11よりも摺動方向一方Z1の、シリンダ12の内部空間14およびピストン11よりも摺動方向他方Z2の、シリンダ12の内部空間14のいずれかの体積が減少するときに、体積が減少した内部空間14の中に位置していた流体が、連通孔13を通過して外部空間16に移動することができる。これによって、ピストン11よりも摺動方向一方Z1および摺動方向他方Z2のいずれかの向きに位置する流体によって、ピストン11の摺動方向Zの変位が阻止されることを防止することができる。
【0051】
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態に係る圧力制御装置10の断面図である。第2実施形態に係る圧力制御装置10は、第1実施形態に係る圧力制御装置10に類似しており、以下、第1実施形態に対する第2実施形態の相違点を中心に説明する。第2実施形態においてピストン11には、Oリング18が設けられる。Oリング18は、ピストン11の摺動方向一方Z1の端部近傍に配置される。
【0052】
ピストン11の摺動方向Zの長さは、シリンダ円筒部27の内周面の摺動方向Zの長さの半分以下である。シリンダ円筒部27に複数の連通孔13が形成される領域の摺動方向Zの長さは、Oリング18よりも摺動方向他方Z2のピストン11の長さよりも短い。複数の連通孔13は、ピストン11が最も摺動方向他方Z2に位置するときの、Oリング18よりも摺動方向他方Z2のピストン11の位置に対応する領域に形成される。ピストン11には、ピストン11の摺動方向他方Z2の端面から摺動方向一方Z1の端面まで貫通する貫通孔93が形成される。貫通孔93は、ピストン11よりも摺動方向他方Z2の空間と摺動方向一方Z1の空間とを連通する。貫通孔93は1つ形成される。
【0053】
ピストン11に形成される貫通孔93は、ピストン11よりも摺動方向他方Z2の流体の圧力と摺動方向一方Z1の流体の圧力とを同一にする。これによって、ピストン11よりも摺動方向一方Z1の流体が圧縮または膨張したときに、ピストン11よりも摺動方向一方Z1の流体と摺動方向他方Z2の流体との圧力差が高くなることを防止することができる。したがって、流体からピストン11に対して摺動方向Zの押圧力が付与されることを防止することができる。
【0054】
シリンダ円筒部27に形成される複数の連通孔13は、ピストン11が最も摺動方向他方Z2に位置するときの、Oリング18よりも摺動方向他方Z2のピストン11の位置に対応する領域に形成されるので、ピストン11が最も摺動方向他方Z2に位置するとき、全ての連通孔13をピストン11によって閉塞することができる。したがって、ピストン11に形成される貫通孔93によってピストン11よりも摺動方向一方Z1の空間と摺動方向他方Z2の空間とが連通していても、貫通孔93を通過する流体が連通孔13を通過して、シリンダ12よりも下流側に移動することを防止することができる。
【0055】
ピストン11の摺動方向Zの長さは、シリンダ円筒部27の内周面の摺動方向Zの長さの半分以下であるので、ピストン11が最も摺動方向一方Z1に位置するときには、ピストン11が最も摺動方向他方Z2に位置する状態においてピストン11によって塞がれていた連通孔13は、全て開放可能となる。したがって、ピストン11の摺動方向Zの位置によって全て閉塞させることのできる複数の連通孔13を、全て開放することが可能となる。これによって、形成された全ての連通孔13は、シリンダ12よりも上流側と下流側との圧力差の調整に用いることが可能となる。シリンダ12によって開閉されることのない連通孔13を形成しないので、形成する連通孔13の数が余剰となることを防止することができる。
【0056】
ピストン11の外周にはOリング18が、設けられるので、ピストン11がシリンダ12に対してすきま嵌めに配置され、ピストン11とシリンダ12との間に流体が流通可能な間隙が形成されるときにも、ピストン11の貫通孔93を摺動方向Zに通過した流体が、連通孔13を通過してシリンダ12よりも下流側に移動することを防止することができる。またOリング18は、ピストン11の摺動方向一方Z1の端部近傍に配置される。これによって、ピストン11の変位によって塞ぐことのできる連通孔13の摺動方向Zの範囲を、ピストン11の摺動方向Zの長さのうち最大にすることができる。
【0057】
すべての連通孔13の連通孔規定部28に雌ねじが形成され、閉塞部材52を装着可能とすることは、第1実施形態と同様である。これによって、いずれの連通孔13に対して閉塞部材52を装着するかを選択することが可能となり、ピストン11の変位量に対する上流側と下流側との圧力差の依存性を変更可能とすることができることについても、第1実施形態と同様である。
【0058】
<第3実施形態>
図7は、本発明の第3実施形態に係る圧力制御装置10の断面図である。第3実施形態に係る圧力制御装置10は、第2実施形態に係る圧力制御装置10に類似しており、以下、第2実施形態に対する第3実施形態の相違点を中心に説明する。第3実施形態に係る圧力制御装置10において、シリンダ円筒部27の少なくとも一部は、隔壁34よりも摺動方向他方Z2に配置される。シリンダ円板26は、摺動方向一方Z1から、隔壁34に対して接触する。シリンダ円筒部27の外径は、隔壁34の開口42の内径にほぼ等しく、かつ隔壁34の開口42の内径よりもわずかに小さく設定され、シリンダ円筒部27は、隔壁34の開口42の内部および隔壁34の開口42よりも摺動方向他方Z2に配置される。
【0059】
シリンダ円板26には、摺動軸線を中心として摺動方向に貫通する孔26aが形成される。この孔26aは、管路構成体19を流れる流体の流量が、予定される範囲内で最大であるときにも、シリンダ円板26の孔26aが流体の流れに対して有意な抵抗となることを防止するために、孔26aの内径は、充分に大きく設定される。
【0060】
シリンダ円筒部27の摺動方向他方Z2の端部は、隔壁34よりも摺動方向他方Z2に位置する管路構成体19に対して接続される。シリンダ円筒部27の摺動方向他方Z2の端部は、周方向全周にわたって管路構成体19に密着して設置される。複数の連通孔13は、ピストン11がシリンダ円筒部27の内部空間14内で最も摺動方向一方Z1に位置した状態における、2つのOリング18間の位置に対応して形成される。ピストン11が最も摺動方向一方Z1に位置した状態から、ピストン棒17がピストン11を摺動方向他方Z2に変位させることによって、複数の連通孔13のうち摺動方向一方Z1の連通孔13から次第に開かれ、ピストン11の摺動方向Zの変位量に応じて連通孔13を通過する流体の単位時間当たりの流量が決定される。これによって、シリンダ12よりも上流側と下流側との圧力差が決定される。
【0061】
ピストン11の摺動方向Zの長さが、シリンダ円筒部27の内周面の摺動方向Zの長さの半分以下に設定されること、複数の連通孔13が形成される領域の摺動方向Zの長さが、摺動方向Zに離れる2つのOリング18間の距離よりも短いこと、ピストン11に、摺動方向Zにピストン11を貫通する貫通孔93が形成されることなどの構成は、第2実施形態の構成と同様である。
【0062】
<第4実施形態>
図8は、本発明の第4実施形態における連通孔規定部28および閉塞部材52を表す図である。図(a)は、シリンダ円筒部27に形成される連通孔規定部28を、摺動軸線を含む切断面で切断して見た断面図であり、図8(b)は、シリンダ円筒部27に形成される連通孔規定部28を、連通孔13の軸線方向に見たときの側面図であり、図8(c)は、閉塞部材52の斜視図である。第4実施形態に係る圧力制御装置10は、第1実施形態に係る圧力制御装置10に類似しており、以下、第1実施形態に対する第4実施形態の相違点を中心に説明する。
【0063】
第4実施形態における閉塞部材52は、連通孔13に摺動軸線に関する半径方向外方から連通孔13に挿入され、連通孔13の軸線まわりに角度90度、角変位させることによって、半径方向の位置が固定される。これによって、閉塞部材52よりも半径方向内方の流体の圧力と半径方向外方の流体の圧力とに圧力差が生じても、閉塞部材52が半径方向に変位することは防止される。
【0064】
閉塞部材52は、図8(c)に示すように、頭部54と軸部56とを含む。軸部56は、円柱状に形成され、円柱の2つの底部のうち一方は、頭部54に接続される。円柱の軸線方向に見て、頭部54の外径は、軸部56の外径および連通孔13の内径よりも大きく形成される。軸部56の側面からは、円柱の軸線に関して半径方向に突出する凸部95が形成される。凸部95は、円柱の軸線に垂直に交わる直線方向の2つの向きに突出して形成される棒状の部分であり、凸部95の棒の直径は、円柱の外径よりも小さく形成される。また凸部95の棒の直径は、シリンダ円筒部27の摺動軸線に関する半径方向の厚みよりも小さく設定される。
【0065】
連通孔13には、閉塞部材52の軸部56に対応して形成される孔に加えて、閉塞部材52が予め定める姿勢で挿入されることを前提として、凸部95が進入可能な溝が形成される。閉塞部材52は、シリンダ円筒部27に対して摺動方向Zに関する半径方向外方から、頭部54を半径方向外方に向け、軸部56を半径方向内方に向けた姿勢で、連通孔13に挿入される。シリンダ円筒部27の厚みのうち、摺動軸線に関する半径方向の中央部にまで凸部95が挿入されると、凸部95は、連通孔規定部28に当接する。この状態から閉塞部材52は、軸部56の軸線まわりに角度90度、角変位される。閉塞部材52が角変位される向きは、軸部56の周方向のうち予め定める向きであり、板状部には、凸部95の進入に対応する内部の溝が形成される。
【0066】
閉塞部材52は、90度角変位させることによって、シリンダ円筒部27に対して装着されるので、閉塞部材52を連通孔規定部28に対して螺合させる場合に比べて、閉塞部材52の装着のための閉塞部材52の角変位量を小さくすることができる。したがって、閉塞部材52をシリンダ円筒部27に取付ける時間を短縮することができる。これによって、閉塞部を連通孔規定部28に対して配置して調整することにかかる時間を短縮することができる。
【0067】
<第5実施形態>
図9は、本発明の第5実施形態における連通孔13と閉塞部材52とを表す図である。図9(a)は、シリンダ円筒部27に形成される連通孔規定部28の斜視図であり、図9(b)は、シリンダ円筒部27に形成される連通孔規定部28を摺動軸線に関する半径方向に見たときの断面図であり、図9(c)は、閉塞部材52の斜視図である。第5実施形態に係る圧力制御装置10は、第1実施形態に係る圧力制御装置10に類似しており、以下、第1実施形態に対する第5実施形態の相違点を中心に説明する。
【0068】
第5実施形態における連通孔13は、シリンダ円筒部27を半径方向に貫通する長方形の孔として形成される。連通孔13内の空間をシリンダ円筒部27の厚み方向に見たときの面積を「開口面積」と称する閉塞部材52は、連通孔13の開口面積よりも大きな面積を有し、連通孔13を塞ぐことのできる長方形の形状に形成される。連通孔規定部28の摺動軸線に関する半径方向外方には、閉塞部材52の半径方向の位置を固定するリブ96が形成される閉塞部材52が連通孔13を半径方向外方から塞いだ状態において、閉塞部材52の外縁部の一部は連通孔規定部28の一部とリブ96の一部とによって、半径方向に挟持される。具体的には、長方形のうちの短辺の一部は、閉塞部材52を挿入可能に開かれており、残り3つの辺において、閉塞部材52は挟持される。
【0069】
流体に粘性があることを前提とすると、開口面積が同じであっても、各連通孔13が小さければ小さいほど、また連通孔13の形状が円の形状から大きく異なり、扁平であれば扁平であるほど、連通孔13を通過する流体に対する連通孔規定部28の抵抗は大きくなる。連通孔13の形状を円形から扁平な長方形とすることによって、円形の連通孔13を多数形成する場合に比べて、広い開口面積を1つの閉塞部でかつ1度の手順で塞ぐことが可能となる。
【0070】
<変形例>
第1〜第5実施形態において駆動部22は、ダイヤフラムとばねとを含む構成によって制御される構造としたけれども、他の実施形態においては、電力、2次圧力を検出する2次圧センサ、電気モータ、電気モータに駆動のための電力を供給する駆動回路、駆動の向きを決定する制御回路などを用いる構成とすることも可能である。
【0071】
第1〜第5実施形態において、隔壁34の開口42内を流れる流体の流れ方向は、摺動方向一方Z1であるものとしたけれども、他の実施形態において隔壁の開口内を流れる流体の流れ方向は、摺動方向他方Z2に一致してもよい。この場合、第1〜第3実施形態における構成に対して、流体の上流側と下流側との向きが反対になるけれども、この場合においても、同様の効果を達成することができる。
【0072】
第1〜第3実施形態において全ての連通孔13の連通孔規定部28には、雌ねじが形成され、いずれの連通孔13にも閉塞部材52を装着可能であるものとしたけれども、他の実施形態において、連通孔規定部に雌ねじが形成される連通孔は、複数の連通孔のうちの一部であってもよい。この場合においても、摺動方向Zの位置が同一であり、周方向に並ぶ複数の連通孔のうち少なくとも一部の連通孔の連通孔規定部には、閉塞部材が装着可能に雌ねじが形成されることが好ましい。これによってピストンの摺動方向の変位によって、連通孔を通過する流体の単位時間当たりの流量を、調整可能とすることができる。
【0073】
第1〜第5実施形態において基準方向は摺動方向Zに一致し、基準方向一方は摺動方向一方Z1に一致するものとしたけれども、基準方向と摺動方向Zとは独立していてよい。たとえば他の実施形態において基準方向は、摺動方向に対して角度を成す構成としてもよく、また基準方向と摺動方向とが一致し、基準方向一方と摺動方向他方とが一致する構成としてもい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態に係る圧力制御装置10の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるシリンダ円筒部27の斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるシリンダ円筒部27を、摺動軸線を含む平面で切断して見た断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態における連通孔規定部28と閉塞部材52とを表す図である。
【図5】第1実施形態における駆動部22および制御部24の管路による接続関係を表す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る圧力制御装置10の断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る圧力制御装置10の断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態における連通孔規定部28および閉塞部材52を表す図である。
【図9】本発明の第5実施形態における連通孔13と閉塞部とを表す図である。
【図10】従来技術に係る圧力制御弁の断面図である。
【符号の説明】
【0075】
10 圧力制御装置
11 ピストン
12 シリンダ
13 連通孔
14 内部空間
16 外部空間
22 駆動部
24 制御部
28 連通孔規定部
42 開口
52 閉塞部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンと、
流体が流れる管路内に設けられ、前記ピストンを内部空間に収容するシリンダであって、
前記内部空間と外部空間とを連通する複数の連通孔が形成されるシリンダとを含み、前記複数の連通孔のうち少なくとも一部は、個別に閉塞可能に形成されることを特徴とする圧力制御装置。
【請求項2】
前記複数の連通孔のうちの少なくとも一部に装着され、装着されたときには装着された連通孔を閉塞する閉塞部材をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の圧力制御装置。
【請求項3】
前記連通孔を規定する部分には、雌ねじが形成され、
閉塞部材には、前記雌ねじに螺合可能な雄ねじが形成されることを特徴とする請求項2記載の圧力制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−209975(P2009−209975A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51390(P2008−51390)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000142078)株式会社協成 (21)
【Fターム(参考)】