説明

圧力媒体操作式のブレーキシリンダに用いられる、センタリングリングを有するダイヤフラム

本発明は、圧力媒体操作式のブレーキシリンダ(1)に用いられるダイヤフラム(24)に関し、ダイヤフラム(24)は、ダイヤフラム(24)をブレーキシリンダ(1)に位置固定するための半径方向外側の取付け縁部(32)を有している。本発明では、ダイヤフラム(24)に、軸方向に延びかつ取付け縁部(32)に関して半径方向内側にずらされて配置された少なくとも1つのセンタリングリング(40)が形成されている。このセンタリングリング(40)を介して、ダイヤフラム(24)は、ブレーキシリンダ(1)の壁(44)の半径方向内側の周面(42)に対してセンタリング可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の形式の、圧力媒体操作式のブレーキシリンダに用いられるダイヤフラムであって、該ダイヤフラムが、当該ダイヤフラムをブレーキシリンダに位置固定するための半径方向外側の取付け縁部を有している形式のものに関する。さらに本発明は請求項7に記載の圧力媒体操作式のブレーキシリンダに関する。
【0002】
このような形式のダイヤフラムは、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第4011739号明細書から公知である。このダイヤフラムは、常用ブレーキを操作するために、常用ブレーキシリンダの常用ブレーキ室の圧力により負荷可能である。ダイヤフラムは、常用ブレーキシリンダと、組み合わされた常用ブレーキ・ばね蓄力式ブレーキシリンダの常用ブレーキシリンダとばね蓄力式ブレーキシリンダとの間の中間壁との間にクランプされており、この場合、常用ブレーキシリンダの縁部と中間壁の縁部とは外方に向かってフランジ状に屈曲されていて、互いの間にダイヤフラムの半径方向外側の取付け縁部を収容している。常用ブレーキシリンダおよび中間壁の両縁部は、緊締リングによって互いに対して緊締されている。
【0003】
しかし、ダイヤフラムの製造時に、このダイヤフラムが真ん中ではなく、つまり組み合わされた常用ブレーキ・ばね蓄力式ブレーキシリンダの中心軸線に対して同心的ではなく組み込まれ、その結果、緊締リングの緊締後に、機械的な応力がダイヤフラムに不均一に分配されていて、ダイヤフラムが高い永久曲げ負荷に基づいて、時間と共にそのクランプ部分から引き出されるか、もしくは破断し易くなるか、または亀裂が生じて、これにより望ましくない漏れが発生することが起こる恐れがある。
【0004】
これに対して、本発明の根底を成す課題は、冒頭で述べた形式のダイヤフラムを改良して、運転時に、より高い寿命を有するダイヤフラムを提供することである。さらに、このようなダイヤフラムを有する圧力媒体操作式のブレーキシリンダが提供されることが望まれる。
【0005】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の特徴を有するダイヤフラム、すなわちダイヤフラムに、軸方向に延びかつ取付け縁部に関して半径方向内側に向かってずらされて配置された少なくとも1つのセンタリングリングが形成されており、該センタリングリングにより、ダイヤフラムが、ブレーキシリンダの壁の半径方向内側の周面に対してセンタリング可能であることを特徴とするダイヤフラムにより解決される。さらに請求項7記載の特徴を有する圧力媒体操作式のブレーキシリンダにより解決される。
【0006】
発明の利点
ダイヤフラムに、軸方向に延びかつ取付け縁部に関して半径方向内側に向かってずらされて配置された少なくとも1つのセンタリングリングが形成されており、該センタリングリングにより、ダイヤフラムが、ブレーキシリンダの壁の半径方向内側の周面に対してセンタリング可能であることにより、中心の組込み位置から外れた、ブレーキシリンダに関するダイヤフラムの不正確な組込みはもはや可能ではなくなる。このことは、ブレーキシリンダの製造を簡単にしかつ高速化する。さらに、改善されたセンタリングにより、ダイヤフラムの密封性が高められ、ダイヤフラムの寿命が長くなる。
【0007】
請求項2から6および請求項8以下に記載された手段により、請求項1および請求項7に記載された本発明の有利な別の実施形態および改良形が可能である。
【0008】
特にセンタリングリングは、周方向で見て完全に全周にわたって延在して形成されているか、または複数の環区分から成っていて、ダイヤフラムとワンピースに、つまり一体に形成されていてよい。
【0009】
ダイヤフラムの半径方向外側の取付け縁部が、半径方向内側に向かって先細りになった楔形の横断面を有していると特に有利である。ダイヤフラムの、半径方向内側に向かって先細りになった楔形の横断面を有する半径方向外側の取付け縁部が、該取付け縁部に対して相補的に成形された、ブレーキシリンダの一方のシリンダ区分と他方のシリンダ区分との間に形成された半径方向外側に向かって拡張した楔形の横断面を有する収容部内にクランプされていると、互いに対してクランプされた両シリンダ区分の軸方向の成分を有するクランプ力が、ダイヤフラムへの半径方向外側に向けられた力を提供する。これにより、ダイヤフラムのセンタリングリングは、ブレーキシリンダの壁の半径方向内側の周面に押圧される。換言すると、クランプ力の軸方向の成分は、取付け縁部が楔作用に基づいて半径方向外側に引き込まれて、これによりセンタリングリングが、高い半径方向の力でブレーキシリンダの壁の当付け面に、センタリングの自己倍力効果で押圧されるように働く。これによって、ダイヤフラムの半径方向外側の取付け縁部がクランプ部分から引き出されてしまうことに対する安全性が高められる。
【0010】
詳細は以下の実施例の説明から明らかにされる。
【0011】
図面
以下に本発明の実施例を図面に示し、以下の説明において詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の有利な実施形態によるダイヤフラムを有する、組み合わされた常用ブレーキ・ばね蓄力式ブレーキシリンダの断面図である。
【図2】図1に示したダイヤフラムを有する組み合わされた常用ブレーキ・ばね蓄力式ブレーキシリンダの常用ブレーキシリンダを部分的に断面して示した側面図である。
【0013】
実施例の説明
図1には、組み合わされた常用ブレーキ・ばね蓄力式ブレーキシリンダ1(以下「コンビネーションシリンダ」と呼ぶ)が示されている。このコンビネーションシリンダ1は、常用ブレーキシリンダ2と、この常用ブレーキシリンダ2に構造的かつ機能的に結合されたばね蓄力式ブレーキシリンダ4とから成っている。常用ブレーキシリンダ2とばね蓄力式ブレーキシリンダ4とは、中間壁6によって互いに分離されている。ばね蓄力式ブレーキシリンダ4の内部には、ばね蓄力式ブレーキピストン8が摺動可能に配置されており、ばね蓄力式ブレーキシリンダ8の一方の側には、蓄力ばね10が接触している。この蓄力ばね10は、その反対側で、ばね蓄力式ブレーキシリンダ4の底部に支持されている。ばね蓄力式ブレーキピストン8と、中間壁6との間には、ばね蓄力式ブレーキ室12が形成されている。このばね蓄力式ブレーキ室12は圧力調整モジュール(縮尺上の理由から図示せず)に接続されており、これによりばね蓄力式ブレーキ室は、給気または排気することができる。給気時には、ばね蓄力式ブレーキピストン8は、蓄力ばね10の緊縮下に、軸方向にパーキングブレーキの解除位置へ摺動させられる。このばね蓄力式ブレーキピストン8の摺動時に、蓄力ばね10を収容しているばね室14の内部に存在する空気は、排気弁16を介して押し出される。これに対して制動の目的でばね蓄力式ブレーキ室12が排気されると、蓄力ばね10は、ばね蓄力式ブレーキピストン8を緊締作動位置へ摺動させることができる。
【0014】
ばね蓄力式ブレーキピストン8は、中空のピストンロッド18に結合されている。このピストンロッド18は、中間壁6を貫いて、常用ブレーキシリンダ2の常用ブレーキ室20内に延びている。中間壁6にはシール部材22が挿入されており、このシール部材22は、ピストンロッド18の長手方向運動の間、ピストンロッド18の外壁に対するシールを行う。常用ブレーキ室20には、流入部(図示せず)が開口していて、この流入部を介して、常用ブレーキシリンダ2を操作するために圧縮空気が導入され、かつ導出される。圧縮空気は、常用ブレーキシリンダ2の内部に挿入されたダイヤフラム24に作用する。このダイヤフラム24の反対の側には、剛性の皿形のダイヤフラム受け26の形の押圧部材が設けられている。すなわち、ダイヤフラム24は、常用ブレーキシリンダ2の、圧力媒体により負荷可能でかつ負荷低減可能な、つまり圧力媒体供給・排出可能な常用ブレーキ室20を、ダイヤフラム受け26に支持された戻しばね30を収容するばね室31から分離している。
【0015】
ダイヤフラム受け26は、プッシュロッド28に結合されている。このプッシュロッド28は、コンビネーションシリンダ1の外部に設けられたブレーキ操作機構と協働する。このブレーキ操作機構は、たとえば自動車のディスクブレーキの操作エレメントであってよい。常用ブレーキシリンダ2はアクティブなブレーキシリンダであり、つまり常用ブレーキは、常用ブレーキ室20への給気により緊締作動され、そして常用ブレーキ室20からの排気により解除される。一方ではダイヤフラム受け26に、他方では常用ブレーキシリンダ2の底部にそれぞれ支持された戻しばね30は、プッシュロッド28が、常用ブレーキ室20の排気時に解除位置に戻されるようにするために働く。
【0016】
ダイヤフラム24の半径方向外側の取付け縁部32は、半径方向内側に向かって先細りになった楔形の横断面を有している。ダイヤフラム24の、半径方向内側に向かって先細りになった楔形の横断面を有するこの半径方向外側の取付け縁部32は、該取付け縁部32に対して相補的に成形された、中間壁6と常用ブレーキシリンダ2との間に設けられた半径方向外側に向かって拡張した楔形の横断面を有する収容部34内にクランプされている。中間壁6と常用ブレーキシリンダ2とは、半径方向外側に向かって折り曲げられたフランジ36,38として形成された外縁部を形成している。これらのフランジ36,38の互いに向かい合った内面は、互いの間に楔形の横断面を有する収容部34を形成する。
【0017】
さらに、ダイヤフラム24には、軸方向に延びかつ取付け縁部32に関して半径方向内側に向かってずらされて配置された少なくとも1つのセンタリングリング40が形成されている。このセンタリングリング40により、ダイヤフラム24は、常用ブレーキシリンダ2の壁44の半径方向内側の周面42に対してセンタリング可能である。特に有利には、センタリングリング40は取付け縁部32の中心平面に対してほぼ垂直に配置されていて、たとえば片側でダイヤフラム24から離れる方向に突出している。しかし、この1つのセンタリングリング40の代わりに、または付加的に、ばね蓄力式ブレーキシリンダ4の方向に突出しかつこのばね蓄力式ブレーキシリンダ4の壁の半径方向内側の周面に対してセンタリングする別のセンタリングリングが設けられていることも考えられる。
【0018】
特に常用ブレーキシリンダ2の、センタリングリング40がセンタリングされる半径方向内側の周面42は、シリンダ軸線46に対して同軸的な中心軸線を有する1つの仮想シリンダに位置していると有利である。
【0019】
図示したように、センタリングリング40は、周方向で見て完全に全周にわたって延びるように形成されているか、または複数の環区分から成るように形成されていてよい。ダイヤフラム24は、ゴムから製造されていると有利であり、センタリングリング40は、このダイヤフラム24とワンピースに、つまり一体に形成されている。
【0020】
その場合、互いに対してクランプされた中間壁6と常用ブレーキシリンダ2との、軸方向の成分を有するクランプ力により、ダイヤフラム24のセンタリングリング40は、常用ブレーキシリンダ2の壁44の半径方向内側の周面42に押圧される。換言すると、クランプ力の軸方向の成分により、取付け縁部32は、楔作用に基づいて半径方向外側に向かって引っ張られて、それによってセンタリングリング40は高められた半径方向力で常用ブレーキシリンダ2の壁44の半径方向内側の周面42に押圧されて、センタリングの自己倍力効果が得られる。
【0021】
このような軸方向のクランプ力成分は、たとえば、常用ブレーキシリンダ2の、フランジ36を形成する縁部と、中間壁6のフランジ38とが、ばね蓄力式ブレーキシリンダ4の壁の縁部48により縁曲げの形で被せられることにより実現可能である。この縁曲げ部は、たとえば変形加工プロセスにより製作される。その場合、この縁曲げ部は、クランプ力の軸方向の成分を生ぜしめる。
【0022】
センタリングリング40を有する、本発明によるダイヤフラム24の使用は、組み合わされた常用ブレーキ・ばね蓄力式ブレーキシリンダ1に限定されるものではなく、このようなダイヤフラム24は、当然ながら、あらゆる形式の圧力媒体操作式のブレーキシリンダにおいて使用され得る。
【符号の説明】
【0023】
1 常用ブレーキ・ばね蓄力式ブレーキシリンダ
2 常用ブレーキシリンダ
4 ばね蓄力式ブレーキシリンダ
6 中間壁
8 ばね蓄力式ブレーキピストン
10 蓄力ばね
12 ばね蓄力式ブレーキ室
14 ばね室
16 排気弁
18 ピストンロッド
20 常用ブレーキ室
22 シール部材
24 ダイヤフラム
26 ダイヤフラム受け
28 プッシュロッド
30 戻しばね
31 ばね室
32 取付け縁部
34 収容部
36 フランジ
38 フランジ
40 センタリングリング
42 半径方向内側の周面
44 壁
46 シリンダ軸線
48 縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力媒体操作式のブレーキシリンダ(1)に用いられるダイヤフラム(24)であって、該ダイヤフラム(24)が、当該ダイヤフラム(24)をブレーキシリンダ(2)に位置固定するための半径方向外側の取付け縁部(32)を有している形式のものにおいて、当該ダイヤフラム(24)に、軸方向に延びかつ取付け縁部(32)に関して半径方向内側に向かってずらされて配置された少なくとも1つのセンタリングリング(40)が形成されており、該センタリングリング(40)により、当該ダイヤフラム(24)が、ブレーキシリンダ(1)の壁(44)の半径方向内側の周面(42)に対してセンタリング可能であることを特徴とする、圧力媒体操作式のブレーキシリンダに用いられるダイヤフラム。
【請求項2】
センタリングリング(40)が、周方向で見て全周にわたって環状に延在して形成されているか、または複数の環区分から成るように形成されている、請求項1記載のダイヤフラム。
【請求項3】
センタリングリング(40)が、当該ダイヤフラム(24)と一体に形成されている、請求項1または2記載のダイヤフラム。
【請求項4】
当該ダイヤフラム(24)の半径方向外側の取付け縁部(32)が、半径方向内側に向かって先細りになった楔形の横断面を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載のダイヤフラム。
【請求項5】
センタリングリング(40)が、取付け縁部(32)の中心平面に対して、ほぼ垂直に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のダイヤフラム。
【請求項6】
当該ダイヤフラム(24)が、ゴムから製造されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のダイヤフラム。
【請求項7】
圧力媒体操作式のブレーキシリンダ(1)であって、請求項1から6までのいずれか1項記載の少なくとも1つのダイヤフラムを有することを特徴とする、圧力媒体操作式のブレーキシリンダ。
【請求項8】
圧力媒体操作式のブレーキシリンダの壁(44)の半径方向内側の周面(42)が、ダイヤフラム(24)のセンタリングリング(40)のための当付け面を有している、請求項7記載の圧力媒体操作式のブレーキシリンダ。
【請求項9】
前記当付け面(42)が、シリンダ軸線(46)に対して同軸的な中心軸線を有する1つの仮想シリンダに位置している、請求項8記載の圧力媒体操作式のブレーキシリンダ。
【請求項10】
ダイヤフラム(24)の、半径方向内側に向かって先細りになった楔形の横断面を有する半径方向外側の取付け縁部(32)が、該取付け縁部(32)に対して相補的に成形された、ブレーキシリンダ(1)の一方のシリンダ区分(2)と他方のシリンダ区分(6)との間に形成された、半径方向外側に向かって拡張した楔形の横断面を有する収容部(34)内にクランプされている、請求項7から9までのいずれか1項記載の圧力媒体操作式のブレーキシリンダ。
【請求項11】
当該圧力媒体操作式のブレーキシリンダが、常用ブレーキシリンダ(2)と、ばね蓄力式ブレーキシリンダ(4)と、これらのブレーキシリンダの間に配置された中間壁(6)とを備えた、組み合わされた常用ブレーキ・ばね蓄力式ブレーキシリンダ(1)である、請求項7から10までのいずれか1項記載の圧力媒体操作式のブレーキシリンダ。
【請求項12】
ダイヤフラム(24)が、常用ブレーキシリンダ(2)の、圧力媒体で負荷可能でかつ負荷低減可能な常用ブレーキ室(20)を、戻しばね(30)を収容するばね室(31)から分離している、請求項11記載の圧力媒体操作式のブレーキシリンダ。
【請求項13】
ダイヤフラム(24)が、常用ブレーキシリンダ(2)のプッシュロッド(28)に結合された剛性の皿形のダイヤフラム受け(26)と協働する、請求項12記載の圧力媒体操作式のブレーキシリンダ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−519111(P2010−519111A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550245(P2009−550245)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001403
【国際公開番号】WO2008/101710
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(597007363)クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (110)
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D−80809 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】