説明

圧力容器内の流体に作動圧力を付与する圧力容器システム

圧力容器内の流体に作動圧力を付与する圧力容器システムであって、流体を貯蔵する製品室(4)と推進物質を作動圧力に保つ作動圧力室とを有する圧力容器(2)と、圧力コントローラ(5)と、圧力コントローラと接続され、供給中に推進物質を比較的高圧に維持する高圧圧力室(6)とを備え、圧力容器システムは、圧力コントローラに対して相対的に移動可能な壁面(7)をさらに備え、壁面の第1の面(8)は作動圧力室の少なくとも一部の境界を形成し、壁面の第2の面(9)は作動圧力室とは反対方向に面して製品室の少なくとも一部の境界を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力容器内の流体に作動圧力を付与する圧力容器システムに関し、圧力容器システムは、流体を貯蔵する製品室と推進物質を作動圧力に保つ作動圧力室とを有する圧力容器と、圧力コントローラと、圧力コントローラと接続され、供給中に推進物質を比較的高圧に維持する高圧圧力室とを備え、作動圧力室における作動圧力を維持するために、圧力コントローラにより基準圧力に基づいて推進物質を高圧圧力室から作動圧力室へ供給するよう構成されている。
【背景技術】
【0002】
このような圧力容器システムはWO99/62791に開示されている。この周知のシステムにおいては、高圧圧力室が接続された圧力コントローラが圧力制御装置として圧力容器内に設けられている。圧力容器は細長く、実質的に円筒形状をなしている。圧力制御装置は、シリンダジャケットの内壁と並ぶように設計される。圧力制御装置は圧力容器における圧力差の影響を受けて圧力容器の軸方向に移動可能である。この周知のシステムにおいて、圧力制御装置は製品室と作動圧力室とを分離する役割を果たしている。「圧力コントローラに接続された高圧圧力室」とは、高圧圧力室からの推進物質により作動圧力を制御する目的で、高圧圧力室と圧力コントローラとの間で流体の連通が可能であると理解されるべきであることは明らかである。
【0003】
基準圧力は、製品室に作動用に含まれる流体に付与するのに適した所定の作動圧力よりもわずかに低圧に設定されている。作動圧力は実質的に一定に維持される圧力である。このシステムは以下の如く作動する。例えばユーザが圧力容器から流体を流出させたことにより、製品室内の圧力が新たな圧力まで減少し始めると、作動圧力室と製品室との間の圧力差に起因して圧力制御装置が製品室の方向へ移動する。これにより作動圧力室の容積が増加し、作動圧力室内の圧力が低下する。この場合、基準圧力は作動圧力室内の新たな圧力より高くなる。このとき、圧力制御装置は推進物質が高圧圧力室から作動圧力室へ流れるように配置される。その結果、作動圧力室内の圧力は、基準圧力よりもわずかに高くなるまで増加する。これにより、作動圧力は製品室内の圧力よりも再び高くなり、製品室と作動圧力室との間の圧力差の影響により圧力制御装置が製品室の方向へさらに少しだけ移動する。その結果、製品室の容積がわずかに減少し、製品室内の圧力がわずかに増加する。製品室の容積の減少により、作動圧力室の容積は再び増加する。作動圧力室内の圧力は再び基準圧力より少し低くなるため、圧力制御装置は再び作動圧力室に少しの推進物質を流入させる。
【0004】
作動圧力室内の圧力が基準圧力よりもわずかに高い場合、高圧圧力室から作動圧力室への推進物質の供給が遮断される。圧力制御装置は、その後、作動圧力室内の圧力と製品室内の圧力とが等しくなるように位置決めされる。この場合、作動圧力室内と製品室内の圧力は、基準圧力よりわずかに高く設定された所望の作動圧力となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
周知のシステムにおいては、作動圧力室と製品室とを分離するためにシール材とともに圧力制御装置が設けられている。シール材は、円筒状の圧力容器の内壁に当接し、作動圧力室と製品室との間を気密に閉鎖するように設けられている。さらに、シール材は、作動圧力室と製品室との間の圧力差の影響によって圧力制御装置が圧力容器の軸方向に移動可能であるように、内壁に当接している。従来の圧力制御装置は比較的重く、慣性のために始動がゆっくりであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記システムの難点を克服したシステムを提供することを目的とする。この目的は、以下の特徴を有する本発明によって達成される。すなわち、圧力容器システムは圧力コントローラに対して相対的に移動可能に設計された壁面をさらに備え、壁面の第1の面は作動圧力室の少なくとも一部の境界を形成し、壁面の第2の面は作動圧力室とは反対方向に面して製品室の少なくとも一部の境界を形成する。多くの場合、これは壁面が圧力容器に対しても相対的に移動可能であることを意味する。ユーザにより圧力容器から流体が排出され、製品室内の圧力が低下すると壁面が製品室の方向へ移動する。壁面が圧力コントローラに対して移動可能に構成されているので、圧力コントローラが移動することなく壁面が移動することができる。圧力差に起因して移動する部分は、非常に軽量に構成することができる。移動部分の全体、すなわち壁面は、移動に際して付加的な圧力を受ける必要がほとんどない。圧力差に対する壁面の反応度合は、移動のためにうちかつ必要のある摩擦によって主に決定される。なお、製品室と作動圧力室との間の圧力差に起因して、製品室の容積を減少するように壁面を拡張する、あるいは反対に折りたたむことも可能である。本発明による圧力容器システムの利点は、壁面を比較的軽量に設計することができ、製品室と作動圧力室との圧力差に反応して素早い作動を実現することができる点である。
【0007】
ある好ましい実施の形態において、壁面は作動圧力室と製品室とを互いに分離するプランジャを備える。これにより圧力容器を非常に小型にすることができる。
【0008】
圧力容器は、製品室に貯蔵された作動用の流体を外部に流出させるように圧力容器を開放する供給口を備えることが好ましい。これにより、ユーザは容器から流体を容易に流出させることができる。
【0009】
ある実施の形態において、壁面の第1の面は、作動圧力室の少なくともほぼ全体の境界を形成する。この場合、さらに、製品室が少なくとも部分的に圧力容器によって境界を形成されることが好ましい。これにより、圧力容器を非常に小型に形成することが可能となる。
【0010】
したがって、作動圧力室は、使用時に推進物質が封入されるバルーンからなる内部空間を備えることができる。バルーン内により多くの推進物質が流入すると、バルーンの容積は増加する。この場合、第1の面が作動圧力室の境界を形成する壁面は、弾性素材により製造される。
【0011】
ただし、作動圧力室が使用時に推進物質が封入される蛇腹部材からなる内部空間を備えることも可能である。蛇腹部材の少なくとも一部は柔軟性を有する素材から製造される。すなわち、この場合、作動圧力室は少なくとも部分的に柔軟性のある移動可能な壁面により境界が形成される。
【0012】
他の実施の形態では、壁面の第2の面は、製品室の少なくともほぼ全体の境界を形成する。この場合、作動圧力室は、さらに少なくとも部分的に圧力容器の内壁によって境界が形成されることが好ましい。これによっても圧力容器を非常に小型とすることができる。
【0013】
製品室は開口を有する袋体を備えることができ、開口は圧力容器開放用に圧力容器に設置された供給口と連結する。この場合、第2の面が製品室の境界を形成する壁面は柔軟性を有する素材から製造される。袋体は、低摩擦係数を有する素材から製造されることが好ましい。
【0014】
他の実施の形態において、製品室は開口を有する蛇腹部材を備えることも可能であり、開口は圧力容器開放用に圧力容器に設置された供給口と連結する。使用時に、流体が蛇腹部材内に収容される。この場合も、蛇腹部材の少なくとも一部は柔軟性を有する素材から製造される。すなわち、この場合、製品室は少なくとも部分的に柔軟性を有する移動可能な壁面によって境界が形成される。
【0015】
本発明による圧力容器システムは、使用準備された状態において推進物質が高圧圧力室に貯蔵される。推進物質は比較的不活性なガスであることが好ましい。これにより安全性が向上する。比較的不活性なガスは環境に優しくもある。結果として、安全性が低かったり有害な推進物質を使用する種々の圧力容器システムに比べて、本圧力容器システムに対してはそれほど厳重な要求が課せられることはない。製品室内に含まれる流体とガスが接することはないが、多くのユーザにとって、特に流体が食品加工の分野に使用される場合、推進物質と流体とが接しても何等悪影響がないことは重要である。ある実施の形態の利点は、比較的不活性なガスは、窒素と二酸化炭素を含む群中のガスである点である。すなわち、これらのガスは豊富にあるとともに安価である。
【0016】
さらに、ある実施の形態において、圧力容器システムは2つの部分から構成され、第1の部分は圧力容器であり、第2の部分は圧力コントローラと高圧圧力室とを備える。これにより、良い構成のシステムとすることができる。圧力容器をこのように2つの部分から構成することにより、圧力容器システムの製造が簡素化される。なお、2つの部分を互いに接続して一体化することも可能である。これにより、ばらばらな部材のないシステムを提供することが出来るという利点が得られる。
【0017】
ただし、他の実施の形態として、2つの部分をばらばらな部材として設計し、使用時に結合可能とすることも可能である。これらの部分は任意で取り外し可能で、かつ接続可能である。これにより、例えば圧力コントローラをいくつかの異なる容器に連続して使用することが可能となる。
【0018】
さらに、圧力容器はプラスチック素材から実質的に製造されることが好ましい。これにより、金属製の圧力容器に比べて軽量の圧力容器とすることができる。さらに、プラスチック製の圧力容器は金属製の圧力容器に比べて安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明による圧力容器システムの第1の実施の形態の断面図を模式的に示す。
【図2】図2は、本発明による圧力容器システムの第2の実施の形態の断面図を模式的に示す。
【図3】図3は、本発明による圧力容器システムの第3の実施の形態の断面図を模式的に示す。
【図4】図4は、本発明による圧力容器システムの第4の実施の形態の断面図を模式的に示す。
【図5】図5は、本発明による圧力容器システムの第5の実施の形態の断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
これより図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明による圧力容器システムの第1の実施の形態の断面図を模式的に示す。
図2は、本発明による圧力容器システムの第2の実施の形態の断面図を模式的に示す。
図3は、本発明による圧力容器システムの第3の実施の形態の断面図を模式的に示す。
図4は、本発明による圧力容器システムの第4の実施の形態の断面図を模式的に示す。
図5は、本発明による圧力容器システムの第5の実施の形態の断面図を模式的に示す。
図面において同一の部材には同一の符号を付している。
【0021】
図1は、圧力容器2に充填される流体(不図示)に作動圧力をかける圧力容器システム1を示す。システム1は、流体(不図示)を貯蔵するための製品室3と、不図示の推進物質(propellant、すなわち噴射剤)を作動圧力に保つための作動圧力室4とを含む圧力容器2を備えている。このシステムは、さらに、圧力コントローラ5と、圧力コントローラ5に接続され、供給時に推進物質を比較的高圧に保つための高圧圧力室6とを備えている。すなわち、高圧圧力室と圧力コントローラの間では、高圧圧力室から供給される推進物質により、作動圧力を制御するために流体が連通可能となっている。システム1は基準圧力に基づいて、圧力コントローラ5により高圧圧力室6から作動圧力室4に推進物質(不図示)を流入させ、作動圧力室4内で作動圧力を実質的に一定に維持させる。基準圧力は、例えば、基準圧力室16に封じ込められたガスから得ることができる。上記圧力コントローラ5は、例えばWO99/62791により知られている。図1から図5に示す圧力コントローラ5の動作は、システムの動作を説明するときに、詳細に説明する。
【0022】
本実施の形態において、圧力容器は内部にさらに壁面7を備えている。図1に示す壁面7は弾性を有し、移動可能に設計されている。壁面7の第1の面8は、作動圧力室4のほぼ全体の境界を形成している。壁面7の第2の面9は、作動圧力室4の反対方向に面しており、製品室3の少なくとも部分的な境界を形成する。製品室3は、さらに部分的に圧力容器2で境界が形成されている。図1に示す本実施の形態では、作動圧力室4の内部空間は使用時に推進物質(不図示)を受け入れ可能なバルーン(空気袋)を備えている。圧力容器1は、さらに圧力容器1を開放するための供給口を供えており、これは、製品室3に作動用に貯蔵される流体(不図示)を製品室3の外部に流出させるために設けられている。図1に示す本実施の形態では、圧力容器は実質的に円筒形状をなしている。圧力容器は、第1の端部11と第2の端部12とを備えている。圧力容器の第1の端部の近傍には、推進物質(不図示)用の入口孔13が設けられている。圧力容器開放用の供給口10は、第2の端部12の近傍に配置されている。バルーンBは、バルーンBが推進物質で満たされたときに圧力容器1のほぼ軸方向(矢印A方向)に伸張するように構成されている。図示の実施の形態では、バルーンBは空気拡散器14を覆うように張られた状態となっている。バルーンBに推進物質を充填した後、バルーンは膨らんで図に破線で示すバルーンB’のような形状となる。ここで、バルーンを圧力容器の内壁15に部分的に接触させることができる。なお、バルーンB,空気拡散器14および圧力容器2を互いに関連して次のように設計することも可能である。すなわち、バルーンBが充填されたときに、弾性壁面7の第2の面9が圧力容器2の内壁15に接しないように設計する。後者の場合には、壁面7の第2の面9と圧力容器2の内壁15との間に摩擦が発生しない。
【0023】
図1に示す圧力容器システム1は以下の通り動作する。使用時には、流体は製品室3に収容される。高圧圧力室6は、供給時に推進物質を比較的高い圧力に保つ。図1に示す圧力コントローラ5は、基準圧力に基づいて作動圧力室4内の作動圧力を維持する。圧力コントローラ5は、WO99/62791において詳細に説明されている。従ってこれ以降、圧力コントローラ5を簡単に説明する。圧力コントローラ5は、基準圧力室16を備えている。更に圧力コントローラ5には基準圧力室16に対し相対的に移動可能な封止部材17が設けられており、封止部材17は本実施の形態に於いてはプランジャとして設計されている。プランジャ17には基準圧力室16内に封入されたガス(不図示)を基準圧力に維持するためのシールリング18が設けられている。圧力コントローラ5には更に円筒形のキャップ19が設けられており、キャップ19はプランジャ17と共働して基準圧力室16を画定している。プランジャ17とキャップ19を閉ざす封止部材22との間には空間21が形成されており、キャップ19には作動圧力室の入口孔13と空間21とをガスの流通可能に接続するための貫通孔20が設けられている。貫通孔20と作動圧力室とのガスの流通を可能とするために、圧力コントローラ5の一部はシリンダ42内に収容されており、シリンダ42の一端は作動圧力室4の入口孔13に接続され、他端は圧力コントローラ5によって閉鎖されている。貫通孔20は一方の側に於いてはシリンダ42内まで延在し、他方の側に於いては空間21内まで延在している。更に封止部材22には通路23が設けられており、通路23内にはプランジャ17の軸部24が密に嵌合する状態にて挿通されている。軸部24には高圧圧力室6と空間21とをガスの流通が可能に接続するための環状溝25が設けられている。プランジャ17の軸部24は、空間21と高圧圧力室6とがガスの流通が可能に接続されるよう、通路23内にて矢印Pの方向に移動可能である。図1に示す状態で、ガスの流通が可能となっている。この状態において、通路23内に設けられたシールリング26は環状溝25内に延在してガスの流通を可能とするように通路を開く。軸部24が図1に示す位置から矢印A方向または矢印P方向に移動すると、軸部のシリンダジャケットのうち環状溝のない部分にシールリング26が押し付けられ、通路を閉鎖する。これにより、ガスの流通が遮断される。プランジャ17は、図1に示す状態から、空間21と高圧圧力室6との間のガスの流通を閉鎖する状態となるように、矢印Aの方向へ移動可能である。空間21と高圧圧力室6との間のガスの流通が可能な接続は、封止部材22に対する環状溝25の位置関係および通路23に含まれるシールリング26の位置によって決定される。従って空間21と高圧圧力室3との間の連通接続部の遮断は通路23内に配置されたシールリングにより行われる。上述したような圧力コントローラは特に作動圧力を実質的に一定に保つのに適している。圧力コントローラ5がどのように設計され、どのように動作するかは、WO99/62791の図1および図1に付随した記載により詳細に説明されている。
【0024】
使用時には、基準圧力室16内の基準圧力は作動圧力室4内の作動圧力よりも僅かに低いよう選定される。これは、製品室3が閉鎖されているときに、作動圧力が製品室3内の流体に付与されることを意味する。圧力容器が開放され、製品室3から流体が流出すると、製品室3における圧力は減少する。したがって、作動圧力室4内の作動圧力は依然として製品室の圧力よりも高い。したがってバルーンBは矢印A方向に伸張し、バルーンB’として示される形状をとることになる。これにより、作動圧力室4の容積は拡大し、作動圧力室4内の圧力は減少していく。空間21と作動圧力室4とは、貫通孔20を介してガスの流通が可能となっている。従って、作動圧力室4内の圧力が低下すると、空間21の圧力も低下する。空間21内の圧力が低下することにより、プランジャ17は、少なくとも基準圧力室16内の基準圧力が空間21の圧力よりも高いときには、矢印Pの方向へ移動する。なお、表面27に作用する高圧圧力室6内の圧力は高いが、表面27は非常に狭いので、この圧力はプランジャ17の位置決めに殆ど寄与しない。前述の如く、軸部24を有するプランジャ17が矢印Pの方向へ移動すると、空間21と高圧圧力室6とが通路23内にて環状溝25を通ってガスの流通が可能になるよう接続される。図1に示す状態で、ガスの流通が可能となっている。高圧圧力室内に充填された推進物質はこの連通接続部を経て空間21へ流れる。推進物質はキャップ19に設けられた貫通孔20および入口孔13を経て作動圧力室4へ流れる。その結果、作動圧力室4内の圧力が増加し、作動圧力室4、すなわちバルーンBは円筒形状の圧力容器の軸方向(矢印A方向)にさらに伸張する。作動圧力室内の作動圧力が再び基準圧力室16内の基準圧力よりも僅かに高くなると、プランジャ17は矢印Aの方向へ移動する。従ってシールリング26と軸部24とが当接することにより、空間21と高圧圧力室6との間の連通接続部が遮断される。圧力容器が開放された後、再び閉じられると、作動圧力が製品室3内の流体に付与される。
【0025】
図2は、本発明の第2の実施の形態の概要断面図を示している。本実施の形態では、作動圧力室4が、使用時に推進物質を収容する蛇腹部材Bgによって形成される内部空間を備えている。圧力容器システム1は、圧力容器2内に設けられた壁面7を備えている。この実施の形態において、壁面7は柔軟性すなわち可撓性を有している。圧力容器2内に設置される壁面7は、本実施の形態では柔軟性すなわち可撓性を有するように設計されている。壁面7の第1の面8は、少なくとも部分的に作動圧力室4の境界を形成する。壁面7の第2の面9は、作動圧力室4とは反対方向に面しており、少なくとも部分的に製品室3の境界を形成する。蛇腹部材Bgは、さらにディスクSを備え、作動圧力室4に面する面38は部分的に作動圧力室4の境界を形成し、製品室3に面する面39は、部分的に製品室3の境界を形成する。図2に示す実施の形態では、ディスクSは、圧力容器の第1の端部12付近に位置する内壁40にほぼ合致する形状を有している。ディスクSは、圧力容器の内壁15に接触しない状態で示されているが、ディスクSを内壁15と接触させることも可能である。すなわち、バルーンBの代わりに、蛇腹部材Bgが圧力容器内に設けられている。圧力容器システムのその他の構成および動作は、図1に示した実施の形態で説明した内容に対応している。
【0026】
図3は、本発明による圧力容器の第3の実施の形態の概要断面図を示している。本実施の形態における圧力容器システムも、圧力コントローラ5および高圧圧力室6を備えている。しかし、上述した実施の形態とは異なり、壁面7の第2の面9が製品室3のほぼ全体の境界を形成している。作動圧力室4は圧力容器2の内壁15によって部分的に境界が形成されている。本実施の形態に於いて、壁面7は柔軟性すなわち可撓性を有するとともに、移動可能に設計されている。壁面の第1の面8は少なくとも部分的に作動圧力室4の境界を形成する。本実施の形態では、製品室3は開口28を有する袋体Zを備えている。開口28は、圧力容器2の開放用に圧力容器に設置された供給口10と連結する。
【0027】
図3に示す圧力容器システム1の動作は、図1および図2に示す実施の形態の動作にほぼ対応している。ユーザが製品室3から流体を流出させ、製品室3内の圧力が低下すると、圧力コントローラ5によって、推進物質が高圧圧力室6から作動圧力室4に流れる。これにより作動圧力室4の容積が増加し、柔軟性壁面7、もしくは少なくともその一部が、圧力容器2の開放用の供給口の方向に移動する。作動圧力室4内が作動圧力に制御されると、製品室3内も作動圧力に制御される。このとき、壁面7の少なくとも一部は、破線で示すような新たな位置および形状をとり得る。袋体は、低摩擦係数を有する素材から製造されることが望ましい。この他の動作は、図1及び図2に示した実施の形態の動作にほぼ対応する。
【0028】
図4は、本発明による圧力容器システムの第4の実施の形態における概要断面図を示す。本実施の形態において、製品室3は開口28を有する蛇腹部材Bgを備えている。本実施の形態においても、開口28は、圧力容器2の開放用に圧力容器2に設置された供給口10と結合する。本実施の形態においても、壁面7は柔軟性、すなわち可撓性を有するとともに、移動可能に設計されている。圧力コントローラ5によって作動圧力室4内の推進物質の量が増加すると、柔軟性壁面7は折りたたまれていく。すなわち、壁面7はアコーディオンのように圧縮される。少なくとも部分的に作動圧力室4の境界を形成するとともに、少なくとも部分的に製品室3の境界を形成する壁面29は、本実施の形態では比較的硬い部材として設計可能である。この壁面は図2に示したようなディスクSに対応する。本発明による圧力容器システムにおけるこの変形例の他の構成および動作は、図1から図3に示した実施の形態においてすでに説明した内容にほぼ対応する。
【0029】
図5は、本発明の第5の実施の形態の概要断面図を示している。本実施の形態において、圧力容器2は摺動可能で移動可能なプランジャPを備える壁面7を備えている。壁面7の第1の面8は、少なくとも部分的に作動圧力室4の境界を形成する。壁面7の第2の面9は、作動圧力室4の反対方向に面しており、製品室3の少なくとも部分的な境界を形成する。プランジャPは少なくとも一つのシール部材52を備えることが好ましく、このシール部材は作動圧力室4と製品室3の間の実質的な気密封止を行う。プランジャPは、さらにディスク54を備え、作動圧力室4に面する面56は部分的に作動圧力室4の境界を形成し、製品室3に面する面58は、部分的に製品室3の境界を形成する。図5に示す実施の形態では、ディスク54は、圧力容器の第1の端部12付近に位置する内壁40にほぼ合致する形状を有している。すなわち、図5に示す例においては、図1に示すバルーンBの代わりに、プランジャPが圧力容器内に設けられている。なお、プランジャPを異なる形状として設計することも可能である。シールリングを2つ設ける代わりに、単一のリングを用いることもできる。圧力容器システムのその他の構成および動作は、図1に示した実施の形態で説明した内容に対応している。
【0030】
使用時には推進物質が高圧圧力室3に充填される。この推進物質は比較的不活性なガスであることが望ましい。したがって、比較的不活性なガスは、例えば窒素と二酸化炭素を含む群の中のガスとすることができる。
【0031】
図示の実施の形態では、圧力容器の外壁が高圧圧力室の外壁と継ぎ目なく一体化している。すなわち、連続した1つの外壁が形成されている。
【0032】
本システムは二つの部分よりなっていてよい。第一の部分は圧力容器を含み、第二の部分は圧力コントローラおよび高圧圧力室を含んでいる。上記実施の形態に示したように、第一及び第二の部分は互いに一体的に接続されていてよい。
【0033】
しかし、本発明は図示の実施の形態に限定されるものではない。したがって、第一及び第二の部分をばらばらな部材とし、互いに接続可能に設計することも可能である。
第一及び第二の部分は任意に取り外し可能であり、互いに接続可能である。第一の部分および第二の部分は、圧力コントローラ5が作動圧力室4の入口孔13と並ぶように、例えばスナップ接続またはネジ接続により互いに機械的に接続することが可能である。
【0034】
使用時に、圧力コントローラは圧力容器に対して固定されることが望ましい。上述した全ての例において、圧力コントローラは高圧圧力室の内壁に対して固定されていた。しかしながら、圧力コントローラが圧力容器に組み込まれて移動可能であるという例も除外されるべきではない。図示した実施の形態では圧力容器は実質的に円筒形状に形成されたが、圧力容器を別の形状に設計することももちろん可能である。圧力容器を箱状に形成することも有益である。
【0035】
圧力容器は実質的に金属製とすることができるが、圧力容器を実質的にプラスチック製とすることももちろん可能である。これは、製品室3に含まれる流体に付与される作動圧力が一定に維持され、作動圧力が比較的低圧であるためである。これは、製品室3に貯蔵される流体の使用時に製品室3の容積が変化しない従来のシステムに対して大きな利点である。これらの従来のシステムでは、製品室3から流体がほとんど排出されていない初期の段階において作動圧力を非常に高くする必要がある。これらの従来のシステムでは、流体がほぼ全て排出された後でも、ほぼ空となった製品室3内に残存する流体に充分な作動圧力を確実に付与しなければならないからである。
【0036】
圧力容器開放用の供給口10をさまざまなタイプの開口として形成できることは明らかである。開口の例としてネジ蓋、ストッパ、スライド式のものがある。したがって、ある実施の形態において壁面7を移動可能、可撓性、あるいは弾性を有するように設計したり、これらの組み合わせて設計可能であることは明らかである。
【0037】
なお、圧力コントローラを、図示の圧力コントローラとは異なるように設計してもよい。例えば、ガスの代わりにスプリングによって基準圧力を取得するようにした圧力コントローラも有用である。したがって、プランジャーの代わりに、例えば軸部を備えた膜(membrane)を圧力コントローラ内に使用することができる。以上の全ての変形例は本発明の範囲内に属するものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器内の流体に作動圧力を付与する圧力容器システムであって、
流体を貯蔵する製品室と推進物質を作動圧力に保つ作動圧力室とを有する圧力容器と、
圧力コントローラと、
前記圧力コントローラと接続され、供給中に前記推進物質を比較的高圧に維持する高圧圧力室とを備え、
前記作動圧力室における前記作動圧力を維持するために、前記圧力コントローラにより基準圧力に基づいて前記推進物質を前記高圧圧力室から前記作動圧力室へ供給するよう構成された圧力容器システムにおいて、
前記圧力コントローラに対して相対的に移動可能に設計された壁面をさらに備え、前記壁面の第1の面は前記作動圧力室の少なくとも一部の境界を形成し、前記壁面の第2の面は前記作動圧力室とは反対方向に面して前記製品室の少なくとも一部の境界を形成することを特徴とする圧力容器システム。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力容器において、
前記圧力容器は、前記製品室に貯蔵された作動用の流体を前記製品室の外部に流出させるように前記圧力容器を開放する供給口を備えることを特徴とする圧力容器システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の圧力容器において、
前記壁面は、前記圧力容器に対して相対的に移動可能に設計されることを特徴とする圧力容器システム。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の圧力容器において、
前記壁面はプランジャを備えることを特徴とする圧力容器システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の圧力容器システムにおいて、
前記壁面の前記第1の面は、前記作動圧力室の少なくともほぼ全体の境界を形成することを特徴とする圧力容器システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の圧力容器において、
前記製品室は、さらに、部分的に前記圧力容器によって境界を形成されることを特徴とする圧力容器システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の圧力容器システムにおいて、
前記作動圧力室は、使用時に前記推進物質が封入されるバルーンからなる内部空間を備えることを特徴とする圧力容器システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の圧力容器システムにおいて、
前記作動圧力室は、使用時に前記推進物質が封入される蛇腹部材からなる内部空間を供えることを特徴とする圧力容器システム。
【請求項9】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の圧力容器システムにおいて、
前記壁面の前記第2の面は、前記製品室の少なくともほぼ全体の境界を形成することを特徴とする圧力容器システム。
【請求項10】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4および請求項9のいずれか1項に記載の圧力容器システムにおいて、
前記作動圧力室は、さらに少なくとも部分的に前記圧力容器の内壁によって境界が形成されることを特徴とする圧力容器システム。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の圧力容器システムにおいて、
前記製品室は開口を有する袋体を備え、前記開口は前記圧力容器開放用に前記圧力容器に設置された前記供給口と連結することを特徴とする圧力容器システム。
【請求項12】
請求項11に記載の圧力容器システムにおいて、
前記袋体は、低摩擦係数を有する素材から製造されることを特徴とする圧力容器システム。
【請求項13】
請求項9または請求項10に記載の圧力容器システムにおいて、
前記製品室は開口を有する蛇腹部材を備え、前記開口は前記圧力容器開放用に前記圧力容器に設置された前記供給口と連結することを特徴とする圧力容器システム。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の圧力容器システムにおいて、
推進物質は前記高圧圧力室内に含まれていることを特徴とする圧力容器システム。
【請求項15】
請求項14に記載の圧力容器システムにおいて、
前記推進物質は比較的不活性なガスであることを特徴とする圧力容器システム。
【請求項16】
請求項15に記載の圧力容器システムにおいて、
前記比較的不活性なガスは、窒素と二酸化炭素を含む群中のガスであることを特徴とする圧力容器システム。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の圧力容器システムにおいて、
前記圧力容器システムは2つの部分から構成され、第1の部分は前記圧力容器を備え、第2の部分は前記圧力コントローラと前記高圧圧力室とを備えることを特徴とする圧力容器システム。
【請求項18】
請求項17に記載の圧力容器システムにおいて、
前記第1の部分と前記第2の部分は、互いに一体化するよう結合されていることを特徴とする圧力容器システム。
【請求項19】
請求項17に記載の圧力容器システムにおいて、
前記第1の部分と前記第2の部分は、ばらばらな部材として設計され、使用時に結合可能であることを特徴とする圧力容器システム。
【請求項20】
請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の圧力容器システムにおいて、
使用時に、前記圧力コントローラは前記圧力容器に対して固定されることを特徴とする圧力容器システム。
【請求項21】
請求項2から請求項20のいずれか1項に記載の圧力容器システムにおいて、
前記圧力容器は略円筒形状であり、第1及び第2の端部が設けられ、前記圧力容器には、さらに前記第1の端部の近傍に前記推進物質用の入口孔が設けられ、前記圧力容器開放用の前記供給口が前記第2の端部の近傍に設けられることを特徴とする圧力容器システム。
【請求項22】
請求項6および請求項21に記載の圧力容器システムにおいて、
前記バルーンは、推進物質が充填されたときに前記圧力容器の略軸方向に伸張するよう設計されていることを特徴とする圧力容器システム。
【請求項23】
請求項7および請求項21に記載の圧力容器システムにおいて、
前記蛇腹部材は、推進物質が充填されたときに前記圧力容器の略軸方向に拡張することを特徴とする圧力容器システム。
【請求項24】
請求項1から請求項23に記載の圧力容器システムにおいて、
前記圧力容器は箱状に形成されることを特徴とする圧力容器システム。
【請求項25】
請求項1から請求項24のいずれか1項に記載の圧力容器システムにおいて、
前記圧力容器はプラスチック素材から実質的に製造されることを特徴とする圧力容器システム。
【請求項26】
請求項1から請求項25のいずれか1項に記載の圧力容器システムにおいて、
前記圧力コントローラは、前記高圧圧力室の内壁に対して固定されることを特徴とする圧力容器システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−515549(P2006−515549A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500310(P2006−500310)
【出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000160
【国際公開番号】WO2004/065261
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(500548323)パッケージング テクノロジー ホールディング エス.エー. (4)
【Fターム(参考)】