説明

圧力容器及びこれを備えた分離膜モジュール

【課題】組立時又はメンテナンス時の作業性を向上することができる圧力容器及びこれを備えた分離膜モジュールを提供する。
【解決手段】圧力容器40の一端部に、挿入口43から挿入された分離膜エレメント10に係合する係合部(凹部42)を形成する。圧力容器40の両端部には、他の圧力容器40を直列に連結可能な連結部41を形成する。これにより、圧力容器40内に挿入口43から分離膜エレメント10を挿入して係合部(凹部42)に係合させた後、その圧力容器40を他の圧力容器40と連結部41を介して直列に連結するだけで、分離膜モジュール1を容易に形成することができる。また、分離膜エレメント10を交換する場合であっても、交換の対象となる分離膜エレメント10が収容された圧力容器40に対して作業を行うだけで、分離膜エレメント10を容易に交換することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給流体を濃縮流体と透過流体とに分離するクロスフロー型の分離膜エレメントを収容するための圧力容器及びこれを備えた分離膜モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
分離膜エレメントの一例として、供給流体を膜面に対して平行に通過させることにより濾過を行なうクロスフロー型の分離膜エレメントが知られている。この種の分離膜エレメントを、例えば筒状の圧力容器内に一直線上に並べて複数配置することにより、分離膜モジュールが構成される(例えば、特許文献1及び2参照)。当該分離膜モジュールにおいては、圧力容器の一端部側から供給流体を供給することにより、分離膜モジュール内で濃縮流体と透過流体とに分離され、それらの濃縮流体及び透過流体が圧力容器の他端部側から排出される。
【0003】
一方で、分離膜エレメントを圧力容器と一体化された構成とし、このような分離膜エレメントを直列に複数連結することにより分離膜モジュールを構成することも提案されている(例えば、特許文献3及び4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−523744号公報
【特許文献2】特開2009−220104号公報
【特許文献3】特開昭58−163404号公報
【特許文献4】特開2006−116523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、筒状の圧力容器内に複数の分離膜エレメントが一直線上に並べて配置された分離膜モジュールにおいては、以下のような問題が生じる場合がある。例えば、組立時又はメンテナンス時の作業性の問題として、1本の分離膜エレメントを交換する場合であっても複数本の分離膜エレメントを動かす必要があったり、分離膜エレメントを圧力容器の奥の方まで押し込むための労力を要したりするなどの問題を挙げることができる。このような問題は、1モジュール当たりの水処理効率を高めるために、分離膜エレメントの外径を大型化した場合や、圧力容器内に収容する分離膜エレメントの本数を増やした場合などには、さらに顕著になる。その他にも、例えば供給流体の混合を防ぐためにOリングゴムなどのシール部材を設けた場合にゴムが劣化するなどの耐久性の問題や、圧力容器内に収容する分離膜エレメントの本数が固定化されてしまうといった設計上の自由度の問題なども挙げることができる。
【0006】
一方、圧力容器と一体化された分離膜モジュールを直列に複数連結することにより形成された分離膜モジュールにおいては、以下のような問題が生じる場合がある。例えば、組立時又はメンテナンス時の作業性の問題として、各分離膜モジュール内の分離膜エレメント同士の連結が困難であるなどの問題を挙げることができる。また、耐久性の問題として、高圧条件に対する耐久性が低く、例えば圧力が1MPaを超える逆浸透膜処理での長時間の使用に耐えられない場合がある。その他にも、分離膜エレメントごとの寸法差に応じて隙間のない耐圧部分を形成する必要があり、製造のために高度な技術が求められるといった製造プロセス上の問題や、分離膜エレメントを交換する際には耐圧部分も含めて交換する必要があるといった製造コスト上の問題なども挙げることができる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、組立時又はメンテナンス時の作業性を向上することができる圧力容器及びこれを備えた分離膜モジュールを提供することを目的とする。また、本発明は、耐久性を向上することができる圧力容器及びこれを備えた分離膜モジュールを提供することを目的とする。また、本発明は、設計上の自由度が高い圧力容器及びこれを備えた分離膜モジュールを提供することを目的とする。また、本発明は、製造プロセス上又は製造コスト上の観点から有利な圧力容器及びこれを備えた分離膜モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る圧力容器は、供給流体を濃縮流体と透過流体とに分離するクロスフロー型の分離膜エレメントを収容するための圧力容器であって、前記圧力容器の一端部には、前記分離膜エレメントを挿入するための挿入口と、当該挿入口から挿入された前記分離膜エレメントに係合する係合部とが形成され、前記圧力容器の両端部には、他の圧力容器を直列に連結可能な連結部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、圧力容器内に挿入口から分離膜エレメントを挿入して係合部に係合させた後、その圧力容器を他の圧力容器と連結部を介して直列に連結するだけで、分離膜モジュールを容易に形成することができる。また、分離膜エレメントを交換する場合であっても、交換の対象となる分離膜エレメントが収容された圧力容器に対して作業を行うだけで、分離膜エレメントを容易に交換することができる。したがって、組立時又はメンテナンス時の作業性を向上することができる。
【0010】
また、分離膜エレメントとは別個に構成された圧力容器内に分離膜エレメントが挿入されるため、高圧条件に対する耐久性を向上することができる。さらに、任意の数の分離膜エレメントを直列に連結可能であるため、連結する分離膜エレメントの本数や種類を選択する際の設計上の自由度を向上することができる。
【0011】
また、圧力容器とは別個に分離膜エレメントが構成されているため、分離膜エレメントごとの寸法差をある程度許容できることに加えて、圧力容器を廃棄することなく分離膜エレメントのみを交換することが可能である。したがって、製造プロセス上及び製造コスト上の観点からも有利である。
【0012】
前記圧力容器には、前記挿入口が形成された前記一端部からのみ前記分離膜エレメントを挿入可能であってもよい。
【0013】
このような構成によれば、圧力容器における分離膜エレメントが挿入される側の端部と、他の圧力容器における分離膜エレメントが挿入される側とは反対側の端部とを順次に連結することにより、分離膜モジュールを形成することができる。したがって、連結時の圧力容器の向きが分かりやすく、組立時又はメンテナンス時の作業性をより向上することができる。
【0014】
前記係合部は、前記分離膜エレメントの一端部に形成された凸部と係合する凹部を有していてもよい。
【0015】
このような構成によれば、分離膜エレメントを圧力容器内に挿入して、当該分離膜エレメントの一端部に形成された凸部を、圧力容器の一端部に形成された係合部の凹部に係合させるだけで、分離膜エレメント同士を容易に連結することができる。したがって、組立時又はメンテナンス時の作業性をさらに向上することができる。
【0016】
前記圧力容器の一端部は、供給流体の供給方向の上流側端部であってもよい。
【0017】
このような構成によれば、圧力容器内に供給される供給流体の流圧によって、当該圧力容器内の分離膜エレメントがずれるのを防止することができるので、耐久性をより向上することができる。
【0018】
本発明に係る分離膜モジュールは、前記圧力容器が、前記分離膜エレメントを収容した状態で、前記連結部を介して直列に複数連結されたことを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、上記のような特有の効果を奏する分離膜モジュールを提供することができる。
【0020】
前記圧力容器が前記連結部を介して直列に複数連結されることにより、各圧力容器に収容されている前記分離膜エレメントの端部同士が密着していてもよい。
【0021】
このような構成によれば、各圧力容器に収容されている分離膜エレメントの端部同士を密着させることにより、隣接する分離膜エレメント間を互いに連通することができるため、分離膜エレメント同士の連結が容易であり、組立時又はメンテナンス時の作業性を向上することができる。
【0022】
密着する前記分離膜エレメントの端部間には、透過流体を通過させるための挿入管が挿入されていてもよい。
【0023】
このような構成によれば、密着する分離膜エレメントの端部間に挿入管を挿入するだけで、当該挿入管を介して透過流体を良好に流通させることができるため、組立時又はメンテナンス時の作業性を向上することができる。
【0024】
前記圧力容器が前記連結部を介して直列に複数連結されることにより、各圧力容器の端部同士が密着し、前記係合部に係合している前記分離膜エレメントの端部が、隣接する前記圧力容器の端部間に挟み込まれてもよい。
【0025】
このような構成によれば、分離膜エレメントを各圧力容器内に挿入して、各圧力容器の端部同士を密着させて連結するだけで、隣接する圧力容器の端部間に分離膜エレメントの端部を挟み込んで固定することができる。したがって、組立時又はメンテナンス時の作業性をさらに向上することができる。
【0026】
隣接する前記圧力容器の前記連結部同士が、3本以上かつ16本以下のボルト及びナットを用いて連結されていてもよい。
【0027】
このような構成によれば、3本以上かつ16本以下のボルト及びナットを用いて、隣接する圧力容器の連結部同士を強固に連結することができるため、耐久性を向上することができる。
【0028】
前記分離膜エレメントには、供給流体の供給方向の下流側端部から、前記分離膜エレメントの外周面と前記圧力容器の内周面との間の空間へと濃縮流体を通過させるための通路が形成されていてもよい。
【0029】
このような構成によれば、分離膜エレメントの内外における圧力差を低減し、分離膜エレメント内での濃縮流体の圧力により分離膜エレメントが膨張して破裂するのを防止することができるため、耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る分離膜モジュールの一例を示した概略断面図である。
【図2】図1の分離膜モジュールに備えられた分離膜エレメントの内部構成の一部を示した斜視図である。
【図3A】分離膜エレメントに備えられた第1端部部材の構成例を示した平面図であって、図1におけるA−A矢視図を示している。
【図3B】分離膜エレメントに備えられた第2端部部材の構成例を示した平面図であって、図1におけるB−B矢視図を示している。
【図4】分離膜モジュールの概略断面図であって、図1におけるB−B矢視図を示している。
【図5】分離膜モジュールの別の実施形態を示した概略断面図である。
【図6】分離膜モジュールのさらに別の実施形態を示した概略断面図である。
【図7】図6の分離膜モジュールの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る分離膜モジュール1の一例を示した概略断面図である。図2は、図1の分離膜モジュール1に備えられた分離膜エレメント10の内部構成の一部を示した斜視図である。この分離膜モジュール1は、濾過膜で原水(供給流体)を濾過することにより、濾過後の原水である濃縮水(濃縮流体)と、浄化された透過水(透過流体)とに分離する装置である。
【0032】
本実施形態に係る分離膜モジュール1は、分離膜エレメント10が収容された圧力容器40が、直列に複数連結されることにより構成されている。すなわち、1つの圧力容器内に複数の分離膜エレメントが一直線上に配置された構成ではなく、それぞれ分離膜エレメント10を収容する複数の圧力容器40が一直線上に並べた状態で連結されることにより、複数の分離膜エレメント10同士が連通するように構成されている。
【0033】
圧力容器40は、ベッセルと呼ばれる樹脂製の筒体であり、例えばFRP(Fiberglass Reinforced Plastics)により形成される。この例では、圧力容器40は、円筒状に形成されているが、このような形状に限らず、他の各種形状及び材料で圧力容器40を構成することが可能である。
【0034】
各圧力容器40の両端部には、他の圧力容器40を直列に連結可能な連結部41が形成されている。この例では、各連結部41が圧力容器40の端部から径方向に突出するように形成されたフランジ部からなり、隣接する圧力容器40の連結部41同士を密着させた状態で、例えばボルト71及びナット72などの固定部材70を用いて連結されるようになっている。密着する連結部41の一方には、例えばOリングからなるシールパッキン44が取り付けられ、当該シールパッキン44を介して連結部41同士が水密に連結されるようになっている。
【0035】
分離膜モジュール1の一端部に位置する圧力容器40には、当該分離膜モジュール1の一端部を閉塞するための蓋50が取り付けられている。蓋50には、圧力容器40の連結部41に対応する形状の連結部51が形成されており、圧力容器40の連結部41と蓋50の連結部51とを密着させた状態で、例えばボルト71及びナット72などの固定部材70を用いて連結される。この蓋50には、排水や海水などの原水が流入する原水流入口52が形成されており、当該原水流入口52から流入する原水が複数の分離膜エレメント10で濾過されることにより、透過水と濃縮水とが得られる。密着する連結部41,51の一方には、例えばOリングからなるシールパッキン53が取り付けられ、当該シールパッキン53を介して連結部41,51同士が水密に連結されるようになっている。
【0036】
分離膜モジュール1の他端部に位置する圧力容器40には、当該分離膜モジュール1の他端部を閉塞するための蓋60が取り付けられている。蓋60には、圧力容器40の連結部41に対応する形状の連結部61が形成されており、圧力容器40の連結部41と蓋60の連結部61とを密着させた状態で、例えばボルト71及びナット72などの固定部材70を用いて連結される。この蓋60には、透過水が流出する透過水流出口62と、濃縮水が流出する濃縮水流出口63とが形成されている。密着する連結部41,61の一方には、例えばOリングからなるシールパッキン64が取り付けられ、当該シールパッキン64を介して連結部41,61同士が水密に連結されるようになっている。
【0037】
分離膜エレメント10は、原水を膜面に対して平行に通過させることにより濾過を行なうクロスフロー型の分離膜エレメントである。より具体的には、本実施形態における分離膜エレメント10は、図2に示すように、濾過膜12と供給側流路材18と透過側流路材14とが積層された状態で中心管20の周囲にスパイラル状に巻回されることにより形成されたRO(Reverse Osmosis:逆浸透)膜エレメントである。なお、本発明は、限外濾過膜や精密濾過膜を用いたエレメントにも適用可能である。
【0038】
樹脂製の網状部材からなる矩形形状の透過側流路材14の両面には、同一の矩形形状からなる濾過膜12が重ね合わせられ、その3辺に接着剤を塗布することにより、1辺に開口部を有する袋状の膜部材16が形成される。そして、この膜部材16の開口部が中心管20の外周面に取り付けられ、樹脂製の網状部材からなる供給側流路材18とともに中心管20の周囲に巻回した後、接着剤を硬化させることにより、上記分離膜エレメント10が形成される。上記濾過膜12は、例えば不織布層上に多孔性支持体及びスキン層(緻密層)が順次に形成される。前記スキン層は、界面重合法により形成されたポリアミド系スキン層であることが好ましい。巻回された膜部材16の外周面は、図1に示すように、外装部材19により覆われる。
【0039】
上記のようにして形成された分離膜エレメント10の一端側から原水を供給すると、供給側流路材18により形成された原水流路を介して、分離膜エレメント10内を原水が通過する。その際、原水が濾過膜12により濾過され、原水から濾過された透過水が、透過側流路材14により形成された透過水流路内に浸透する。
【0040】
その後、透過水流路内に浸透した透過水が、当該透過水流路を通って中心管20側に流れ、中心管20の外周面に形成された複数の通水孔(図示せず)から中心管20内に導かれる。これにより、分離膜エレメント10の他端側から、中心管20を介して透過水が流出するとともに、供給側流路材18により形成された原水流路を介して濃縮水が流出することとなる。
【0041】
図3Aは、分離膜エレメント10に備えられた第1端部部材31の構成例を示した平面図であって、図1におけるA−A矢視図を示している。図3Bは、分離膜エレメント10に備えられた第2端部部材32の構成例を示した平面図であって、図1におけるB−B矢視図を示している。第1端部部材31及び第2端部部材32に共通する構成については、図に同一符号を付して説明する。
【0042】
第1端部部材31は、分離膜エレメント10における原水の供給方向D1の上流側端部に位置している。一方、第2端部部材32は、分離膜エレメント10における原水の供給方向D1の下流側端部に位置している。これにより、スパイラル状に巻回された膜部材16の両端部が第1端部部材31及び第2端部部材32により挟持されるため、膜部材16が上記供給方向D1にずれることによってテレスコープ状に変形するのを防止することができる。
【0043】
本実施形態における第1端部部材31及び第2端部部材32は、それぞれ、中心管20が挿通される円環状の中心部33と、当該中心部33の径方向外側に位置する円環状の外周部34とが、一体的に形成された構成となっている。中心部33と外周部34とは、径方向に向かって放射状に延びる複数のリブ35によって連結されており、これにより、中心部33と外周部34との間に濃縮水を通過させるための開口部36が形成されている。
【0044】
各圧力容器40が連結部41を介して直列に複数連結された状態では、図1に示すように、各圧力容器40に収容されている分離膜エレメント10の端部同士が密着する。より具体的には、隣接する2つ分離膜エレメント10のうち一方の分離膜エレメント10の第1端部部材31と、他方の分離膜エレメント10の第2端部部材32とが密着する。この状態では、第1端部部材31及び第2端部部材32の中心部33同士が密着するとともに、外周部34同士が密着することにより、第1端部部材31及び第2端部部材32の開口部36同士が連通する。このように、各圧力容器40に収容されている分離膜エレメント10の端部同士を密着させることにより、隣接する分離膜エレメント10間を互いに連通することができるため、分離膜エレメント10同士の連結が容易であり、組立時又はメンテナンス時の作業性を向上することができる。
【0045】
密着する分離膜エレメント10の端部間には、透過水を通過させるための挿入管21が挿入されている。当該挿入管21は、密着する2つの分離膜エレメント10の各中心管20を跨ぐように、各中心管20内に嵌め込まれた状態で取り付けられる。これにより、密着する分離膜エレメント10の端部間に挿入管21を挿入するだけで、当該挿入管21を介して透過水を良好に流通させることができるため、組立時又はメンテナンス時の作業性をより向上することができる。
【0046】
蓋50に隣接する分離膜エレメント10における蓋50側の端部には、中心管20の端部を閉塞するための端部栓22が取り付けられている。一方、蓋60に隣接する分離膜エレメント10における蓋60側の端部には、中心管20の端部と蓋60の透過水流出口62とを連通するための端部管23が取り付けられている。
【0047】
図1に示すように、原水流入口48から流入した原水は、当該原水流入口48側の分離膜エレメント10から順に原水流路内に流れ込み、各分離膜エレメント10で原水から濾過された透過水が、挿入管21により接続された複数本の中心管20を介して透過水流出口62から流出する。一方、各分離膜エレメント10の原水流路を通過することにより透過水が濾過されて濃縮された濃縮水は、濃縮水流出口63から流出する。
【0048】
第1端部部材31の外周部34には、径方向に突出するフランジ状の凸部37が形成されている。外周部34の外径が圧力容器40の内径よりも小さいのに対して、凸部37の外径は圧力容器40の内径よりも大きい。図1に示すように、各圧力容器40の一端部の内周縁には、第1端部部材31の凸部37に対応する形状の凹部42が形成されている。当該凹部42は、分離膜エレメント10を圧力容器40に係合させるための係合部を構成しており、凹部42に分離膜エレメント10(第1端部部材31)の凸部37が係合するようになっている。圧力容器40の凹部42には、例えばOリングからなるシールパッキン45が取り付けられ、当該シールパッキン45を介して凸部37と凹部42とが水密に連結されるようになっている。
【0049】
各圧力容器40の両端面に形成されている開口部のうち、凹部42が形成されている側の開口部は、分離膜エレメント10を挿入するための挿入口43を構成している。本実施形態では、圧力容器40における原水の供給方向D1の上流側端部に、挿入口43が形成されている。圧力容器40に対して挿入口43から挿入された分離膜エレメント10は、第1端部部材31の凸部37が圧力容器40の凹部42に係合することにより、原水の供給方向D1への移動が規制されるようになっている。
【0050】
本実施形態では、圧力容器40内に挿入口43から分離膜エレメント10を挿入して係合部(凹部42)に係合させた後、その圧力容器40を他の圧力容器40と連結部41を介して直列に連結するだけで、分離膜モジュール1を容易に形成することができる。また、分離膜エレメント10を交換する場合であっても、交換の対象となる分離膜エレメント10が収容された圧力容器40に対して作業を行うだけで、分離膜エレメント10を容易に交換することができる。したがって、組立時又はメンテナンス時の作業性を向上することができる。
【0051】
特に、分離膜エレメント10を圧力容器40内に挿入して、当該分離膜エレメント10の一端部に形成された凸部37を、圧力容器40の一端部に形成された凹部42に係合させるだけで、分離膜エレメント10同士を容易に連結することができるため、組立時又はメンテナンス時の作業性をさらに向上することができる。
【0052】
また、分離膜エレメント10とは別個に構成された圧力容器40内に分離膜エレメント10が挿入されるため、高圧条件に対する耐久性を向上することができる。さらに、任意の数の分離膜エレメント10を直列に連結可能であるため、連結する分離膜エレメント10の本数や種類を選択する際の設計上の自由度を向上することができる。
【0053】
また、圧力容器40とは別個に分離膜エレメント10が構成されているため、分離膜エレメント10ごとの寸法差をある程度許容できることに加えて、圧力容器40を廃棄することなく分離膜エレメント10のみを交換することが可能である。したがって、製造プロセス上及び製造コスト上の観点からも有利である。
【0054】
また、本実施形態では、第1端部部材31の凸部37の外径が圧力容器40の内径よりも大きいため、圧力容器40には、挿入口43が形成された一端部からのみ分離膜エレメント10を挿入可能となっている。言い換えれば、挿入口43が形成された一端部から圧力容器40に分離膜エレメント10を挿入した場合にのみ、圧力容器40の内部に分離膜エレメント10を完全に収納することができるようになっている。
【0055】
これにより、圧力容器40における分離膜エレメント10が挿入される側の端部と、他の圧力容器40における分離膜エレメント10が挿入される側とは反対側の端部とを順次に連結することにより、分離膜モジュール1を形成することができる。したがって、連結時の圧力容器40の向きが分かりやすく、組立時又はメンテナンス時の作業性をより向上することができる。
【0056】
特に、圧力容器40における原水の供給方向D1の上流側端部からのみ分離膜エレメント10を挿入可能となっているため、圧力容器40内に供給される原水の流圧によって、当該圧力容器40内の分離膜エレメント10がずれるのを防止することができ、これにより耐久性をさらに向上することができる。
【0057】
また、本実施形態では、各圧力容器40が連結部41を介して直列に複数連結されることにより、各圧力容器40の端部同士が密着し、凹部42に係合している分離膜エレメント10の端部(第1端部部材31の凸部37)が、隣接する圧力容器40の端部間に挟み込まれるようになっている。これにより、分離膜エレメント10を各圧力容器40内に挿入して、各圧力容器40の端部同士を密着させて連結するだけで、隣接する圧力容器40の端部間に分離膜エレメント10の端部を挟み込んで固定することができるため、組立時又はメンテナンス時の作業性をさらに向上することができる。
【0058】
ただし、分離膜エレメント10に係合する圧力容器40の係合部は、凹部42により構成されるものに限らず、例えば凹部42に加えて凸部を含む構成や、他の全く異なる構成からなるものであってもよい。例えば、上記係合部は、その形状又は姿勢を変化させて係合可能な可動係合部などであってもよい。
【0059】
図3Bに示すように、第2端部部材32の外周部34における膜部材16側とは反対側の端面には、複数の凹部38が形成されている。当該凹部38は、分離膜エレメント10における原水の供給方向D1の下流側端部から、当該分離膜エレメント10の外周面と圧力容器40の内周面との間の空間Sへと濃縮水を通過させるための通路を構成している。すなわち、凹部38が形成されていることにより、隣接する分離膜エレメント10の第1端部部材31と第2端部部材32とが密着した状態であっても、当該凹部38を介して、第1端部部材31及び第2端部部材32の内部に形成された開口部36と上記空間Sとが連通するようになっている。
【0060】
これにより、第1端部部材31及び第2端部部材32の開口部36を通過する濃縮水が、凹部38により形成された通路を介して上記空間Sへと流れ込むため、分離膜エレメント10の内外における圧力差を低減し、分離膜エレメント10内での濃縮水の圧力により分離膜エレメント10が膨張して破裂するのを防止することができる。したがって、耐久性をさらに向上することができる。
【0061】
ただし、分離膜エレメント10の外周面と圧力容器40の内周面との間の空間Sへと濃縮水を通過させるための通路は、凹部38に限らず、孔などの他の構成であってもよい。また、上記通路は、分離膜エレメント10における原水の供給方向D1の下流側端部に、複数形成された構成に限らず、1つだけ形成された構成であってもよい。
【0062】
図4は、分離膜モジュール1の概略断面図であって、図1におけるB−B矢視図を示している。図4に示すように、隣接する圧力容器40の連結部41同士は、複数の固定部材70を用いて連結される。この例では、連結部41の周方向に沿って等間隔で8本のボルト71及びナット72が取り付けられている。
【0063】
隣接する圧力容器40の連結部41同士は、3本以上かつ16本以下のボルト71及びナット72を用いて連結されることが好ましい。2本以下であれば安定性に欠け、17本以上であれば必要以上に多くなるという観点に基づくものである。3本以上かつ16本以下のボルト71及びナット72を用いることにより、隣接する圧力容器40の連結部41同士を強固に連結することができるため、耐久性を向上することができる。ただし、ボルト71及びナット72は上記本数に限られるものではない。また、固定部材70が、ボルト71及びナット72以外の構成からなるものであってもよい。
【0064】
図5は、分離膜モジュール1の別の実施形態を示した概略断面図である。図1の例では、分離膜エレメント10が収容された圧力容器40が直列に複数連結された構成について説明したが、図5の例では、圧力容器40を1つだけ用いた構成となっている。
【0065】
具体的には、1つの圧力容器40の一端部に蓋50が取り付けられ、他端部に蓋60が取り付けられている。蓋50は、連結部51を圧力容器40の連結部41と密着させた状態で、例えばボルト71及びナット72などの固定部材70を用いて固定される。密着する連結部41,51の一方には、例えばOリングからなるシールパッキン53が取り付けられ、当該シールパッキン53を介して連結部41,51同士が水密に連結されるようになっている。
【0066】
蓋60は、連結部61を圧力容器40の連結部41と密着させた状態で、例えばボルト71及びナット72などの固定部材70を用いて固定される。密着する連結部41,61の一方には、例えばOリングからなるシールパッキン64が取り付けられ、当該シールパッキン64を介して連結部41,61同士が水密に連結されるようになっている。
【0067】
蓋50に隣接する分離膜エレメント10の一端部には、中心管20の端部を閉塞するための端部栓22が取り付けられている。一方、蓋60に隣接する分離膜エレメント10の他端部には、中心管20の端部と蓋60の透過水流出口62とを連通するための端部管23が取り付けられている。
【0068】
圧力容器40に収容された分離膜エレメント10の一端部(蓋50側の端部)には、第1端部部材31が設けられ、他端部(蓋60側の端部)には、第2端部部材32が設けられている。圧力容器40の一端部の内周縁には、第1端部部材31の凸部37に対応する形状の凹部42が形成されている。当該凹部42は、分離膜エレメント10を圧力容器40に係合させるための係合部を構成しており、凹部42に分離膜エレメント10(第1端部部材31)の凸部37が係合するようになっている。圧力容器40の凹部42には、例えばOリングからなるシールパッキン45が取り付けられ、当該シールパッキン45を介して凸部37と凹部42とが水密に連結されるようになっている。
【0069】
圧力容器40の両端面に形成されている開口部のうち、凹部42が形成されている側の開口部は、分離膜エレメント10を挿入するための挿入口43を構成している。本実施形態では、圧力容器40における原水の供給方向D1の上流側端部に、挿入口43が形成されている。圧力容器40に対して挿入口43から挿入された分離膜エレメント10は、第1端部部材31の凸部37が圧力容器40の凹部42に係合することにより、原水の供給方向D1への移動が規制されるようになっている。
【0070】
本実施形態では、圧力容器40が蓋50と連結されることにより、圧力容器40と蓋50とが密着し、凹部42に係合している分離膜エレメント10の端部(第1端部部材31の凸部37)が、隣接する圧力容器40と蓋50との間に挟み込まれるようになっている。これにより、分離膜エレメント10を圧力容器40内に挿入して、圧力容器40と蓋50とを密着させて連結するだけで、隣接する圧力容器40と蓋50との間に分離膜エレメント10の端部を挟み込んで固定することができるため、組立時又はメンテナンス時の作業性を向上することができる。
【0071】
図6は、分離膜モジュール1のさらに別の実施形態を示した概略断面図である。図7は、図6の分離膜モジュール1の概略断面図である。本実施形態では、圧力容器40同士の連結態様、及び、蓋50,60の圧力容器40に対する連結態様のみが上記実施形態とは異なり、他の構成については上記実施形態と同様であるため、同様の構成については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0072】
本実施形態では、隣接する圧力容器40の連結部41同士、圧力容器40と蓋50の連結部41,51同士、及び、圧力容器40と蓋60の連結部41,61同士をそれぞれ固定するための固定部材80が、クランプを用いた構成となっている。具体的には、固定部材80は、連結部41,51,61の外形に対応する形状からなる円弧状の2つのアーム部81を備えており、これらの2つのアーム部81で隣接する連結部同士(2つの連結部41同士、連結部41,51同士、又は、連結部41,61同士)を挟み込んで固定することができるようになっている。
【0073】
2つのアーム部81は、例えば半円弧状に形成され、それらの一端部同士が支軸82により回動可能に連結されている。各アーム部81は、略U字状の内壁面を有しており、2つのアーム部81の他端部同士が近接するように支軸82を中心に回動させることにより、2つのアーム部81の内壁面間に隣接する2つの連結部を挟み込むことができる。2つのアーム部81の他端部同士は、例えばボルト及びナットなどからなる止め具83により連結される。ただし、止め具83は、ボルト及びナット以外の構成からなるものであってもよい。
【0074】
その他、圧力容器40同士の連結態様、及び、蓋50,60の圧力容器40に対する連結態様としては、タップ形態やパッチン錠を用いた方法など、他の各種態様を採用することができる。
【0075】
以上の実施形態では、供給流体が原水である場合について説明したが、水ではなく油などの他の流体であってもよいし、気体などであってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 分離膜モジュール
10 分離膜エレメント
20 中心管
21 挿入管
31 第1端部部材
32 第2端部部材
37 凸部
38 凹部
40 圧力容器
41 連結部
42 凹部
43 挿入口
50 蓋
51 連結部
60 蓋
61 連結部
70 固定部材
71 ボルト
72 ナット
80 固定部材
81 アーム部
82 支軸
83 止め具
D1 供給方向
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給流体を濃縮流体と透過流体とに分離するクロスフロー型の分離膜エレメントを収容するための圧力容器であって、
前記圧力容器の一端部には、前記分離膜エレメントを挿入するための挿入口と、当該挿入口から挿入された前記分離膜エレメントに係合する係合部とが形成され、
前記圧力容器の両端部には、他の圧力容器を直列に連結可能な連結部が形成されていることを特徴とする圧力容器。
【請求項2】
前記圧力容器には、前記挿入口が形成された前記一端部からのみ前記分離膜エレメントを挿入可能であることを特徴とする請求項1に記載の圧力容器。
【請求項3】
前記係合部は、前記分離膜エレメントの一端部に形成された凸部と係合する凹部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力容器。
【請求項4】
前記圧力容器の一端部は、供給流体の供給方向の上流側端部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧力容器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の圧力容器が、前記分離膜エレメントを収容した状態で、前記連結部を介して直列に複数連結されたことを特徴とする分離膜モジュール。
【請求項6】
前記圧力容器が前記連結部を介して直列に複数連結されることにより、各圧力容器に収容されている前記分離膜エレメントの端部同士が密着することを特徴とする請求項5に記載の分離膜モジュール。
【請求項7】
密着する前記分離膜エレメントの端部間には、透過流体を通過させるための挿入管が挿入されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の分離膜モジュール。
【請求項8】
前記圧力容器が前記連結部を介して直列に複数連結されることにより、各圧力容器の端部同士が密着し、前記係合部に係合している前記分離膜エレメントの端部が、隣接する前記圧力容器の端部間に挟み込まれることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の分離膜モジュール。
【請求項9】
隣接する前記圧力容器の前記連結部同士が、3本以上かつ16本以下のボルト及びナットを用いて連結されていることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の分離膜モジュール。
【請求項10】
前記分離膜エレメントには、供給流体の供給方向の下流側端部から、前記分離膜エレメントの外周面と前記圧力容器の内周面との間の空間へと濃縮流体を通過させるための通路が形成されていることを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の分離膜モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−217885(P2012−217885A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83796(P2011−83796)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】