説明

圧力容器用シール部材及びそれを用いた圧力容器並びに酸素浴機

【課題】簡素な構成でありながら、従来と比較し極めて高い耐久性をもたらすことができる圧力容器用シール部材及びそれを用いた圧力容器並びに酸素浴機を提供する。
【解決手段】弾性素材からなる中空の外層材10と、この外層材10の内部に挿入され作動流体の給排により膨縮し、膨張時は外層材10を内側から押圧して膨張させるチューブ13と、を備え、外層材10の背面に、背面側からチューブ13の挿入を可能にするスリット11を形成するとともに、このスリット11をチューブ13の挿入後に封止する接着剤17がチューブ13と接触するのを阻止するチューブ保護材15を、外層材10の背面とチューブ13との間に介装した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力容器用シール部材及びそれを用いた圧力容器並びに人体に酸素を供給する酸素浴機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の圧力容器に用いられるシール部材の一つとして、作動流体の給排により膨縮する中空のパッキンが知られている。
【0003】
このパッキンは、圧力容器の開口部の周縁であって、該開口部を閉蓋する蓋体の当接面と接する箇所に設けられる。そして、蓋体を閉じると共に、蓋体を適宜なロック機構で開口部に係止したのち、パッキン内に高圧空気などの作動流体を供給すると、パッキンが蓋体の当接面と開口部の周縁との間で膨張する。これによって蓋体が押し動かされてロック機構がロック状態となると同時に蓋体の当接面と開口部の周縁との間が密閉される。蓋体を開く場合は、パッキンに供給した作動流体を排出してパッキン内部を減圧する。これによってロック機構のロック状態が解除され元の係止状態に戻るので、その後ロック機構による蓋体の係止状態を解いて蓋体を開く。
【0004】
ところで、近年、高気圧・高濃度に高められた酸素を人体に供給し、高気圧酸素療法を好適に実施するように構成した酸素浴機が一般に普及しつつある。この酸素浴は、空気中の酸素濃度(約21%)より高い濃度の酸素を、気圧を上昇させた空間で人体に供給すると、高濃度酸素がガス化して体液中に直接溶け込み(溶解型酸素)、溶け込んだ酸素は、血液中のヘモグロビンと結合した結合型酸素に比べて小さいため、毛細血管を通ることができ、人体の隅々にある細胞の代謝又は活性を促して、美容又は健康増進等に有用であるといった知見によるものである。
【0005】
上記酸素浴機も、内部に高気圧・高濃度酸素を封入するものであることから、圧力容器の一つである。この酸素浴機においても、他の種類の圧縮容器と同様、シール部材が必要不可欠であり、シール部材の性能が酸素浴機の性能を左右するといっても過言ではない。
【0006】
酸素浴機に使用される従来のシール構造としては、例えば特許文献1や2に示されるようなものがある。すなわち、酸素浴機の収容体の開口端面に凹部が形成される一方これと嵌合する凸部が蓋体の開口端面に形成され、収容体側の凹部内に、空気の給排により膨縮するチューブが取付けられている。蓋体が閉じられると、収容体の凹部と蓋体の凸部とが嵌合する。これによって収容体側凹部内のチューブが蓋体側凸部により押圧される。この状態でチューブに空気が注入されるとチューブが膨張し、これにより収容体側凹部内のすべての間隙が封止され、酸素浴機の開口部からの高濃度酸素の漏出が防止される。
【特許文献1】実用新案登録第3121656号公報
【特許文献2】特開2007−202995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2に示されるシール構造にあっては、シール部材であるチューブは収容体と蓋体との嵌合部内に設けられている。このため、シール部材は蓋体の開閉の度に収容体側凹部又は蓋体側凸部の角部と擦れ合うように接触することとなる。これによりシール部材の表面が傷つく。この傷は、蓋体の開閉及びシール部材の膨縮が繰り返されることにより次第に大きくなり、最後には破裂してしまう。このように、酸素浴機における従来のシール構造にあってはシール部材が損傷し易く耐久性に問題があった。
【0008】
本発明は上記従来の問題を解決すべく創案されたものであり、簡素な構成でありながら、従来と比較し極めて高い耐久性をもたらすことができる圧力容器用シール部材及びそれを用いた圧力容器並びに酸素浴機を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る圧力容器用シール部材は、弾性素材からなる中空の外層材と、この外層材の内部に挿入され作動流体の給排により膨縮し、膨張時は前記外層材を内側から押圧して膨張させるチューブと、を備え、前記外層材の背面に、該背面側から前記チューブの挿入を可能にするスリットが形成されるとともに、このスリットを前記チューブの挿入後に封止する接着剤が前記チューブと接触するのを阻止するチューブ保護材が、前記外層材の背面と前記チューブとの間に介装されたことを特徴とするものである。
【0010】
この特定事項により、収容体側凹部内で蓋体の開閉により傷が付くことの多かったチューブは、その全体が外層材で覆われることになり、蓋体側凸部と直接接触しなくなる。このため、チューブが極めて傷つきにくく、シール部材の耐久性を飛躍的に向上させることができる。
【0011】
また、チューブ保護材が介装されたことにより、外層材のスリットを封止する接着剤がチューブと結着するのが防がれることとなる。したがって、チューブを膨張させる際、接着剤からの影響を受けずに済む。ここで、チューブ保護材を、チューブに臨む面が凹面とされた断面アーチ状の板体とした場合は、膨張していくチューブを外層材の内部において最適な位置に導くことができる。
【0012】
本発明に係る圧力容器は、開口部を有する収容体と、この収容体の前記開口部を閉蓋する蓋体と、これら収容体と蓋体との相互の接合面間に介装される上記のシール部材と、前記収容体と蓋体とを閉蓋時にロックするロック機構とを備えたものである。
【0013】
この特定事項により、本発明に係る圧力容器は、シール部材の耐久性が上述のように従来に比べて格段に向上したものであるから、シール部材の交換頻度が低く、保守作業に要する経費を従来に比べて大幅に削減することができる。
【0014】
本発明に係る酸素浴機は、人体を収容するチャンパと、このチャンバに高濃度酸素を供給する高濃度酸素供給手段とを少なくとも備えた酸素浴機において、前記チャンバは、その本体と蓋体との相互の接合面間に上記のシール部材が介装されたものであることを特徴とするものである。
【0015】
この特定事項により、本発明に係る酸素浴機は、そのチャンバのシール部材の耐久性が極めて高いものであることから、シール部材の交換頻度が低くなる。したがって、特に、酸素浴機の主たるユーザである医療機関やスポーツ施設などにとって、保守作業の面から取り扱い易いものとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡素でありながら従来と比較し極めて高い耐久性を有する圧力容器用シール部材を提供することができる。
【0017】
また、保守作業が容易な圧力容器及び酸素浴機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る圧力容器用シール部材(以下、単にシール部材と呼ぶ)の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、シール部材の断面図、図2は、図1に示すシール部材のエア供給口取付部における断面図、図3は、図1に示すシール部材のエア供給口取付部を示す部分斜視図である。
【0020】
このシール部材1は、外層材10とチューブ13との二層構造で構成されたものであり、図4に示すように、開口部を有する収容体24と、この収容体24の開口部を閉塞する蓋体20と、これら収容体24と蓋体20とを閉塞時にロックするロック機構(図示せず)とを備えた圧力容器2において、収容体24と蓋体20との相互の接合面21,25間に介装される。
【0021】
外層材10は、例えばネオプレンゴムから中空状に成形されており、平滑面とされた背面12にその全長に亘ってスリット11が設けられている。背面12と反対側の前面14は、圧力容器の収容体24と蓋体20との相互の接合面21,25のいずれか一方と膨張時に圧接する圧接面であり、この前面14は、膨張時における接合面21(25)への追従性及びシール性を高めるべく、円弧面とされている。このようになる外層材10は、その内部のチューブ13の内圧を加減圧することにより、チューブ13の膨縮に伴って全体が膨張したり収縮したりする。なお、外層材10の素材は、ネオプレンゴムに限るものではなく、膨縮可能な弾性を有するものであれば、他の合成ゴムであっても、あるいは補強布入りの合成ゴムであってもよい。
【0022】
チューブ13は、例えばニトリルゴムから断面円形に成形されたものである。このチューブ13としては、収縮時には外層材10をその内側から押圧せず、膨張時は外層材10を押圧して膨張させ得る太さのものが用いられる。このようになるチューブ13は、外層材10内にそのスリット11を通じて挿入されている。
【0023】
外層材10のスリット11は、内部にチューブ13が挿入された後接着剤17により封止される。ここで、接着剤17は塗布時にスリット11内に留まらず外層材10の内部にまで浸入する。そこで、本発明に係るシール部材1にあっては、接着剤17によりスリット11を封止するのに先立ち、外層材10とチューブ13との間にチューブ保護材15を介装している。
【0024】
チューブ保護材15は、外層材10やチューブ13と同様、長尺の板体からなるものである。チューブ保護材15の素材としては、合成樹脂又は金属のいずれであってもよく、また合成ゴムから成形したものであってもよい。
【0025】
チューブ13には作動流体としての空気の給排を行うためのエア供給口16が設けられている。このエア供給口16は、金属からなるパイプであり、その一端が外層材10のスリット11を通しチューブ13と直接接合され、他端が外層材10の外側に突出されている。
【0026】
次に、以上説明したシール部材1の圧力容器(図示例では酸素浴機)での使用形態について、図4及び図5を参照して説明する。
【0027】
図4に示す例では、圧力容器の蓋体20側の接合面21にシール部材取付用の溝22が形成され、この溝22の底面がシール部材1の取付面23とされており、このシール部材取付面23に図1〜3に示したシール部材1が接着剤により固着されている。その接着剤としては、スリット11を封止する接着剤17を用いることもできるし、新たな別の接着剤を用いることもできる。一方、上記溝22に対向して圧力容器の収容体24側の接合面25にはシール部材挿入溝26が形成されている。
【0028】
蓋体20が閉じられ、シール部材1のチューブ13に作動流体である空気が圧入されると、チューブ13が膨張し、これに伴って外層材10が膨張する。これによりシール部材挿入溝26内におけるすべての間隙が封止されるとともに、図示しないロック機構が作動して蓋体20と収容体24とがロックされる。
以後、蓋体20の開閉が繰り返され、シール部材1が収容体24のシール部材挿入溝26の角部と擦れ合うように接触し、たとえ外層材10が傷ついたとしても、その傷は外層材10だけに留まり、チューブ13には至らないので、外層材10に生じた傷によってシール部材1そのものが破裂することはない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る圧力容器用シール部材の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示すシール部材のエア供給口取付部における断面図である。
【図3】図1及び図2に示すシール部材のエア供給口取付部を示す部分斜視図である。
【図4】本発明に係る圧力容器としての酸素浴機の一実施例を示す概略断面図である。
【図5】図4に示すA部の拡大図である。
【符号の説明】
【0030】
1 シール部材
10 外層材
11 スリット
13 チューブ
15 チューブ保護材
17 接着剤
2 圧力容器(酸素浴機)
20 蓋体
24 収容体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する収容体と、この収容体の前記開口部を閉蓋する蓋体と、これら収容体と蓋体とを閉蓋時にロックするロック機構とを備えた圧力容器において、前記収容体と蓋体との相互の接合面間に介装される膨縮可能なシール部材であって、
弾性素材からなる中空の外層材と、
この外層材の内部に挿入され作動流体の給排により膨縮し、膨張時は前記外層材を内側から押圧して膨張させるチューブと、を備え、
前記外層材の背面に、該背面側から前記チューブの挿入を可能にするスリットが形成されるとともに、このスリットを前記チューブの挿入後に封止する接着剤が前記チューブと接触するのを阻止するチューブ保護材が、前記外層材の背面と前記チューブとの間に介装されたことを特徴とする圧力容器用シール部材。
【請求項2】
開口部を有する収容体と、この収容体の前記開口部を閉蓋する蓋体と、これら収容体と蓋体との相互の接合面間に介装される請求項1に記載のシール部材と、このシール部材の膨張に伴い前記蓋体が収容体の前記開口部から押し広げられる動作に連動して収容体と蓋体とをロックするロック機構とを備えた圧力容器。
【請求項3】
人体を収容するチャンバと、このチャンバに高濃度酸素を供給する高濃度酸素供給手段とを少なくとも備えた酸素浴機において、
前記チャンバは、その本体と蓋体との相互の接合面間に請求項1に記載のシール部材が介装されたものであることを特徴とする酸素浴機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−297076(P2009−297076A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151789(P2008−151789)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(504420272)株式会社エスジーエー (4)
【Fターム(参考)】