説明

圧力容器設置構造とこの構造が適用された飽和蒸気加熱機

【課題】 筒状の胴の両端部に板材を溶接で固定する構成の圧力容器において、万一その固定が外れても、それら板材が飛ぶのを防止する。
【解決手段】 圧力容器は、処理槽本体3とドアとを備える。処理槽本体3は、円筒状の胴27を備え、その軸線を前後方向へ沿って配置される。胴27の後方開口部は、後板28が溶接で固定されて閉塞される。胴27の前方外周部には、フランジ状に前板29が溶接で固定される。処理槽本体3は、前板29および後板28を介して架台4に取り付けられる。胴27の前方開口部は、円板状のドアにて開閉可能とされる。ドアと前板29との隙間は、パッキン49にて封止可能とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内部が大気圧を超える圧力となり得る容器の架台への設置構造と、この構造が適用された飽和蒸気加熱機とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒸煮機や蒸気滅菌器などでは、食材や被滅菌物などが収容される容器内は、大気圧を超える圧力とされ得る。従って、この種の装置では、要求される圧力に応じた圧力容器が用いられる。この際、比較的小型の装置の場合、圧力容器は、両端部に板材を設けた横向き略円筒状の胴と、その開口部を開閉するドアとを備えて構成される。具体的には、横向き略円筒状の胴は、一端部には、一方の開口部を閉塞するよう板材が設けられ、他端部には、フランジ状に板材が設けられると共に、その板材と重ね合わされるようドアが設けられて、他方の開口部が閉鎖可能とされる。そして、このような構成の圧力容器は、その胴自体が架台に取り付けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のように、胴自体を架台に取り付ける構成では、胴の両端部に設けられる板材は、胴に溶接のみで固定される。従って、万一、その溶接が外れた場合には、各板材およびドアを受ける手段がなく、これらが飛んでしまうおそれがある。
【0004】
この発明が解決しようとする課題は、胴の両端部に板材を溶接などで固定する構成の圧力容器において、万一その固定が外れても、それら板材が飛ぶのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、圧力容器は、筒状の胴と、その両端部に設けられる板材とを備えて構成され、一方の板材は、前記胴の一方の開口部を閉塞するか、その開口部をドアとの間で閉塞するよう前記胴に設けられ、他方の板材は、前記胴の他方の開口部を閉塞するか、その開口部をドアとの間で閉塞するよう前記胴に設けられ、前記胴は、前記各板材を介して架台に取り付けられることを特徴とする圧力容器設置構造である。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、胴の両端部に板材を固定した構成の圧力容器は、その各板材が架台に取り付けられる。従って、万一、胴と各板材との固定が外れても、それら板材が飛ぶのが防止される。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記胴は、横向き略円筒状とされ、前記一方の板材は、前記胴の一方の開口部を閉塞するよう前記胴の一端部に固定され、前記他方の板材は、前記胴の他方の開口部をドアとの間で閉塞するよう前記胴の他端部に固定され、前記架台またはこれに設けられる部材に、ドアレールが取り付けられ、前記胴の他方の開口部を開閉可能に、前記ドアレールにドアが保持されることを特徴とする請求項1に記載の圧力容器設置構造である。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、一端部が閉塞され他端部がドアにて開閉される圧力容器は、そのドアを開閉可能に保持するドアレールが、架台またはこれに設けられる部材に取り付けられる。従って、ドアレールおよびドアの飛びも確実に防止される。
【0009】
さらに、請求項3に記載の発明は、円筒状でその軸線を前後方向へ沿って配置される胴と、この胴の後方開口部を閉塞するよう設けられる後板と、前記胴の前方外周部にフランジ状に設けられる前板と、この前板および前記後板を介して前記胴が取り付けられる架台と、この架台またはこれに設けられる部材に取り付けられるドアレールと、前記胴の前方開口部を開閉可能に、前記ドアレールに保持されるドアと、前記胴内に予め貯留しておいた水を加熱して、これにより生ずる蒸気で前記胴内の被加熱物の加熱を図る電気ヒータとを備えることを特徴とする飽和蒸気加熱機である。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、被加熱物が収容される胴は、その両端部の前板と後板とが架台に取り付けられる。従って、万一、胴と各板材との固定が外れても、それら板材が飛ぶのが防止される。また、ドアを開閉可能に保持するドアレールは、架台またはこれに設けられる部材に取り付けられる。このようにして、安全性を一層向上させた貯水型の飽和蒸気加熱機を実現することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、胴の両端部に板材を固定する構成の圧力容器において、万一その固定が外れても、それら板材が飛ぶことを防止することができる。これにより、安全性が一層向上した飽和蒸気加熱機などを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
この発明の圧力容器設置構造は、架台に圧力容器を取り付けるための構造である。圧力容器は、内部が大気圧を超える圧力で使用され得る容器である。圧力容器は、その種類を特に問わないが、たとえば「小型ボイラー及び小型圧力容器構造規格」に適合する小型圧力容器とされる。但し、これ以外の規定による圧力容器や、各種規定の適用外の圧力容器にも同様に適用可能である。
【0013】
いずれにしても、圧力容器は、筒状の胴を備えて構成される。胴は、その形状を特に問わないが、耐圧性および構造の簡略化の関係で、円筒状であるのが好ましい。胴は、通常、その軸線を水平に配置されるが、場合により、傾斜させたり垂直に配置したりしてもよい。筒状の胴は、その両端の開口部が、板材にて閉塞されるか、ドアにて開閉可能とされる。通常、胴は、一方の開口部が板材で閉塞され、他方の開口部がドアにて開閉可能とされる。但し、胴は、両方の開口部がドアにて開閉可能とされてもよい。その場合、一方の開口部から食材などを収容し、他方の開口部から取り出すことができる。
【0014】
ドアにて開閉可能とされる開口部には、胴の外周部にフランジ状に板材が設けられる。そして、この板材に重ね合わされるようにドアが閉められることで、胴の開口部が閉塞される。この際、ドアと板材との隙間は、パッキンにて封止される。このようにして、胴の両端部には、開口部を閉塞する板材か、ドアとの間で開口部を閉塞する板材が設けられる。そして、これらの板材を介して、胴が架台に取り付けられる。胴の両端部に設けた板材が架台に取り付けられるので、万一、胴と各板材との固定が外れても、それらの板材が飛ぶのが防止される。
【0015】
ところで、ドアをドアレールに沿って回転またはスライドさせて開閉する構成の場合、架台またはこれに設けられる部材(従って前記板材自体でもよいし、前記板材を架台に取り付けるための取付座などでもよい)に、ドアレールを取り付けるのがよい。これにより、ドアレールおよびドアの飛びも防止される。但し、ドアは、ドアレールに沿って可動する構成ではなく、ヒンジで吊り下げて開き戸のように設けるなどしてもよい。
【0016】
本発明の圧力容器設置構造にて架台に設置される圧力容器は、その用途を特に問わない。すなわち、本発明の圧力容器設置構造が適用される装置は、特に問わないが、たとえば貯水型の飽和蒸気加熱機とされる。この飽和蒸気加熱機は、処理槽内に予め貯留しておいた水を電気ヒータにより加熱して、これにより生ずる蒸気(飽和蒸気)で処理槽内の被加熱物の加熱を図る装置である。処理槽内の圧力を調整することで、処理槽内の飽和蒸気温度を調整して、被加熱物の加熱温度を変更することができる。
【0017】
被加熱物は、特に問わないが、たとえば食材または食品などの被調理物とされる。この場合、飽和蒸気加熱機は、飽和蒸気調理機ということができる。あるいは、被加熱物は、手術用メスなどの被滅菌物とされる。この場合、飽和蒸気加熱機は、蒸気滅菌器ということができる。
【0018】
処理槽は、圧力容器から構成され、処理槽本体と、その開口部を開閉するドアとを備える。処理槽本体は、円筒状でその軸線を前後方向へ沿って配置される胴と、この胴の後方開口部を閉塞するよう設けられる後板と、胴の前方外周部にフランジ状に設けられる前板とを備える。そして、このような構成の処理槽本体は、前板および後板を介して、架台上に取り付けられる。また、架台またはこれに設けられる部材には、ドアレールが取り付けられ、このドアレールにはドアが保持される。ドアが胴の前方開口部を閉じるよう配置された状態で、前板とドアとの隙間はパッキンにて封止される。
【0019】
このような構成の圧力容器から処理槽が構成される貯水型の飽和蒸気加熱機は、胴の前方開口部の下端部が閉塞されて、内部空間の下部が貯水部とされる。そして、この貯水部には、電気ヒータが設けられて、貯留水の加熱が可能とされる。従って、処理槽内に被加熱物を収容すると共に、貯水部に水を貯留した状態で、ドアを閉じて、電気ヒータを作動させることで、蒸気により被加熱物の加熱を図ることができる。
【実施例】
【0020】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の圧力容器設置構造は、各種の装置に適用可能であるが、ここでは貯水型の飽和蒸気加熱機に適用した例について説明する。貯水型の飽和蒸気加熱機は、処理槽内に予め貯留しておいた水を電気ヒータにより加熱して、これにより生ずる蒸気で処理槽内の被加熱物の加熱を図る装置である。
【0021】
図1は、本発明の圧力容器設置構造が適用された貯水型の飽和蒸気加熱機1の一実施例を示す概略斜視図であり、ドア2を開いた状態を示している。また、図2は、本実施例の飽和蒸気加熱機1の処理槽本体3の架台4への設置構造を示す分解斜視図である。
【0022】
処理槽5は、内部が大気圧を超える圧力となり得る圧力容器として構成され、処理槽本体3とドア2とを備える缶体である。処理槽5は、架台4の上に設置される。架台4は、略直方体状に組み立てられた形材から構成される。具体的には、前後左右の四隅には、上下方向へ沿って支柱6,6,7,7が設けられる。各支柱6,7は、同一断面形状の角パイプから構成される。具体的には、断面正方形状の角パイプが使用され、上下方向へ沿って配置される。この際、後方左右の支柱7,7は、前方左右の支柱6,6よりも、上方へ延出している。また、前方右側の支柱6は、前方左側の支柱6よりも、上方への延出部8を有している。
【0023】
架台4の左右両端部において、前後の支柱6,7同士は第一接続材9により接続される。この第一接続材9は、支柱6,7と同様の角パイプから構成され、前後方向へ沿って配置される。この際、支柱6,7の下端部において、前後の支柱6,7同士が接続されると共に、前方左側の支柱6の上端部と対応する高さにおいても、前後の支柱6,7同士が接続される。
【0024】
架台4の前後両端部で且つ上方の第一接続材9と同一平面において、後方左右の支柱7,7同士、および左右の第一接続材9,9同士は、第二接続材10により接続される。この第二接続材10は、支柱6,7と同様の角パイプから構成され、左右方向へ沿って配置される。また、この前後の第二接続材10,10同士は、第三接続材11により接続される。この第三接続材11は、支柱6,7と同様の角パイプから構成され、前後方向へ沿って配置される。この第三接続材11は、架台4の左右方向中央部よりやや右側に配置される。
【0025】
架台4の下部において、左右の第一接続材9,9同士は、第四接続材12により接続される。この第四接続材12は、断面略L字形状の形材から構成され、左右方向へ沿って配置される。その際、一片を水平に配置して、その水平片の左右両端部が左右の第一接続材9,9の上面に重ね合わされて固定される。本実施例では、第四接続材12は、架台4の前後方向中央部よりもやや前方に配置される。
【0026】
第四接続材12の左右両端部には、それぞれキャスタ13が設けられる。各キャスタ13は、同一の形状および大きさとされ、下方へ開放した断面略コ字形状のヨーク14と、このヨーク14の左右の支持片15,15間に架け渡される車軸16と、この車軸16に回転自在に保持される車輪17とを備える。このようなキャスタ13は、ヨーク14の中央片18が第四接続材12の水平片に固定される。この際、キャスタ13は、その車軸16を左右方向へ沿って配置されて、第四接続材12の左右両端部に設けられる。
【0027】
後方左右の支柱7,7の上端部同士は、第五接続材19により接続される。この第五接続材19は、支柱6,7と同様の角パイプから構成され、左右方向へ沿って配置される。また、前方右側の支柱6の上端部には、左側へ延出して、断面略L字形状の補助材20が設けられる。この補助材20は、前方右側の支柱6の上端部と同一高さにおいて、一片を水平に配置され、他片を垂直下方へ向けて配置される。
【0028】
各支柱6,7の下端部には、アジャスト脚21が設けられる。各アジャスト脚21は、床面に設置される逆椀状の受座22と、この受座22から上方へ延出すると共に受座22に対し回転自在なネジ棒23と、このネジ棒23に進退可能にねじ込まれるロックナット24とを備える。このようなアジャスト脚21は、そのネジ棒23の上部が、支柱6,7の下端部に進退可能にねじ込まれて設けられる。従って、支柱6,7の下端部にロックナット24を締め付けることで、支柱6,7から下方へのネジ棒23の突出量を固定できる一方、そのロックナット24を緩めて支柱6,7に対しネジ棒23を回転させて前記突出量を調整できる。
【0029】
飽和蒸気加熱機1は、通常、キャスタ13の車輪17を浮かした状態で、四隅のアジャスト脚21にて水平に設置される。そして、メンテナンスなどのために、飽和蒸気加熱機1を前後へ移動させたい場合には、手前側二箇所に設置されたアジャスト脚21,21を縮めればよい。これにより、キャスタ13,13の車輪17,17が接地されることになる。また、側面視において、飽和蒸気加熱機1の重心は、キャスタ13の設置位置かそれよりも前方に配置されるので、前方左右のアジャスト脚21,21を縮めると、後方左右のアジャスト脚21,21が僅かに浮き上がることになる。従って、飽和蒸気加熱機1の前方を起こしながらキャスタ13,13を用いて、飽和蒸気加熱機1を前後へ容易に移動させることができる。
【0030】
架台4の右側には、制御ボックス25が設けられる。この制御ボックス25は、前方下端部が前記補助材20に載せられて固定されると共に、後方上部においても架台4に固定される。制御ボックス25の前面上部には、操作パネル26が設けられている。
【0031】
架台4の左側には、処理槽本体3が設けられる。処理槽本体3は、円筒状の胴27を備え、その軸線を前後方向へ沿って水平に配置される。胴27の後方開口部は、後板28によって閉塞される。後板28は、略矩形の板材であり、その端辺を上下左右へ沿って配置されると共に、胴27よりも径方向外側へ延出して設けられる。そして、胴27と後板28とは、胴27の後端部の全周において溶接され、両者の隙間は完全に閉塞される。
【0032】
胴27の前端部には、胴27の外周部からフランジ状に延出して前板29が設けられる。この前板29も、略矩形の板材であり、その端辺を上下左右へ沿って配置されると共に、胴27よりも径方向外側へ延出して設けられる。そして、胴27と前板29とは、胴27の前端部の全周において溶接され、両者の隙間は完全に閉塞される。
【0033】
このような構成の処理槽本体3は、上方左側の第一接続材9と、その右側に配置される第三接続材11と、それらの前後に配置される第二接続材10,10とで構成される略矩形状の枠に固定される。具体的には、後板28が後方取付座30を介して、その第一接続材9と第三接続材11とに固定される一方、前板29が左右一対の前方取付座31,31を介して、前方の第二接続材10に固定される。
【0034】
後方取付座30は、左右方向へ延出する断面略L字形状の部材であり、その左右方向寸法は後板28の左右方向寸法と対応している。断面略L字形状の後方取付座30は、その垂直片32が後板28の後面に重ね合わされて、ボルトナット33により固定されるか、溶接されて一体化される。そして、垂直片32の下端部から手前側へ延出する水平片34が、前述した第一接続材9と第三接続材11とを架け渡すように、それら部材の上部に載せられる。そして、その状態で、水平片34の左右両端部が、第一接続材9と第三接続材11とに固定される。具体的には、第一接続材9と第三接続材11とには、下方から座金35を介してボルト36が上方へ貫通して設けられ、そのボルト36が水平片34の左右両端部に形成されたボルト挿通穴37を通される。このようにして水平片34から上方へ突出するボルト36の先端部に、ナット(図示省略)をねじ込むことで、架台4に後方取付座30が固定される。
【0035】
一方、左右の前方取付座31は、断面逆T字形状の部材から構成される。具体的には、水平に配置される略矩形状の水平板38を備え、その水平板38の左右方向中央部には、垂直上方へ延出して垂直板39が固定される。さらに、垂直板39の前端部には、左右方向内側への延出板40が設けられる。このような構成の前方取付座31は、延出板40が前板29の後面に重ね合わされてボルトナット(図示省略)または溶接により固定される。そして、水平板38が手前側の第二接続材10の上部に載せられて固定される。具体的には、第二接続材10には、下方から座金41を介してボルト42が上方へ貫通して設けられ、そのボルト42が水平板38の後方左右両端部に形成されたボルト挿通穴43を通される。このようにして水平板38から上方へ突出するボルト42の先端部に、ナット(図示省略)をねじ込むことで、架台4に前方取付座31が固定される。
【0036】
このようにして処理槽本体3は架台4に取り付けられるが、その処理槽本体3の開口部の上下と対応した高さ位置には、左右方向へ沿うと共に処理槽本体3の右側へ延出して、ドアレール44,45が設けられる。上下のドアレール44,45は、互いに平行で水平に配置される。
【0037】
上側のドアレール44は、断面が下向き略コ字形状の部材とされ、前板29の上端部に固定されたドアレールステー46の左右両端部に、ボルトナット(図示省略)にて固定される。一方、下側のドアレール45は、断面が上向き略コ字形状の部材とされ、左右の前方取付座31の延出板40の下端部にボルトナット(図示省略)にて固定される。また、上下のドアレール44,45は、右端部において補強連結材47にて連結される。ところで、上下のドアレール44,45は、ドアレールステー46や前方取付座31を介して固定したが、これら部材を介さずに、前板29に直接に固定してもよい。
【0038】
このようにして設けられた上下のドアレール44,45には、円板状のドア2が回転可能に保持される。円板状のドア2の前面には、円環状のハンドル48が固定される。このような構成であるから、ドア2を回転させることによって、処理槽本体3の開口部を全閉または全開することができる。
【0039】
ところで、フランジ状の前板29の前面には、処理槽本体3の開口部を取り囲むように連続的にパッキン49が設けられる。このパッキン49は、処理槽本体3の開口部を取り巻くように形成されたパッキン溝50(図3)内に収容されている。このパッキン溝50には、エアコンプレッサ(図示省略)または真空ポンプ51(図3)に択一的に接続される。
【0040】
処理槽本体3の開口部をドア2で封止するには、ドア2を前板29と重ねるように全閉位置に配置した状態で、エアコンプレッサからの圧縮空気を利用して、パッキン溝50を加圧すればよい。これにより、パッキン49は、ドア2側へ押し出され、ドア2の後面に円環状に密着する。この際、ドア2は、その上下両端部において、ドアレール44,45の前片にパッキン49にて押し付けられる。逆に、処理槽本体3とドア2との密着を解除するには、パッキン溝50に真空ポンプ51を接続すればよい。これにより、真空ポンプ51の吸引力を利用して、パッキン49をパッキン溝50内に戻して収容することができる。そして、ドア2をドアレール44,45に沿って、右へ回転させて開けることができる。
【0041】
以上のようにして架台4に取り付けられた処理槽5には、各種構成が付加されて、飽和蒸気加熱機1が構成される。図3は、本実施例の飽和蒸気加熱機1の具体的構成を示す概略図であり、一部を断面にすると共に一部を省略して示している。本実施例の飽和蒸気加熱機1は、食材や食品などの被加熱物52が収容される中空構造の処理槽5と、この処理槽5内の気体を外部へ吸引排出する減圧手段53と、減圧下の処理槽5内へ外気を導入する復圧手段54と、処理槽5内から蒸気を排出する排蒸手段55と、処理槽5内の貯水部56に貯留された水を加熱する電気ヒータ57と、貯水部56に水を供給する給水手段58と、貯水部56から水を排出する排水手段59と、処理槽5内の圧力を検出する圧力センサ60と、処理槽5内に収容された被加熱物52の温度を検出する品温センサ61と、貯水部56に貯留された水の温度を検出する水温センサ62と、これら各センサ60,61,62の検出信号や経過時間などに基づき前記各手段53,54,55,57,58,59を制御する制御手段(図示省略)とを備える。さらに、飽和蒸気加熱機1は、図1に示すように、パネル63で覆われてボックス状とされるが、その手前側の右上部に操作パネル26を備える。
【0042】
これまで述べてきたように、処理槽5は、架台4の上部において、手前側へ開口可能に設けられる。処理槽5は、手前側へ開口して中空部を有する処理槽本体3と、この処理槽本体3の開口部を開閉するドア2とを備える。処理槽本体3は、円筒状に形成され、その軸線を前後方向へ沿って水平に配置される。ドア2は、処理槽本体3の開口部よりも大径の円板状に形成される。
【0043】
貯水型の飽和蒸気加熱機1として構成する場合、横向き円筒状の処理槽本体3内の中空部は、上下方向中央部からやや下方位置に、板状の隔壁64が水平に設けられて、上下に仕切られる。この隔壁64は、たとえば薄いステンレス板から構成され、処理槽本体3に対し着脱可能に保持される。これにより、処理槽本体3内には、隔壁64より上部に第一領域65が形成され、隔壁64より下部に第二領域66が形成される。第一領域65と第二領域66とは、隔壁64に形成した連通穴67,67,…を介して、互いに連通される。
【0044】
第一領域65は、被加熱物52の収容部とされ、第二領域66は、貯水部56とされる。そのために、処理槽本体3の開口部は、第二領域66と対応する下部が、略半円形状の垂直な前壁68にて閉塞される。第一領域65への被加熱物52の収容は、処理槽本体3の隔壁64に載せて行えばよい。本実施例では、隔壁64に棚枠69が載せられ、食材や食品などの被加熱物52を収容したホテルパンなどの容器70が棚枠に保持される。
【0045】
減圧手段53は、処理槽5内の空気や蒸気を外部へ吸引排出する手段である。具体的には、処理槽本体3の上部には排気路71が接続され、この排気路71には、処理槽5の側から順に、真空弁72、熱交換器73、逆止弁74および水封式真空ポンプ51が設けられる。熱交換器73は、冷却用水が給排水されることで、排気路71内の蒸気を冷却し凝縮を図るものである。
【0046】
復圧手段54は、減圧下の処理槽5内へ外気を導入して復圧する手段である。具体的には、処理槽本体3の上部には給気路75が接続され、この給気路75は、除菌フィルタ76を介して外気と連通可能とされる。この給気路75の中途には、除菌フィルタ76の側から順に、真空解除弁77と逆止弁78とが設けられる。真空解除弁77の開放により、処理槽5内は大気圧に開放可能とされる。
【0047】
排蒸手段55は、大気圧よりも高圧下の処理槽5内から蒸気を外部へ排出する手段である。具体的には、処理槽本体3の上部には排蒸路79が接続され、この排蒸路79には、処理槽5の側から順に、排蒸弁80と逆止弁81とが設けられる。排蒸弁80の開放により、処理槽5内の蒸気は外部へ排出可能とされる。
【0048】
電気ヒータ57は、処理槽5内の貯水部56に貯留される水を加熱する手段である。電気ヒータ57は、その種類を特に問わないが、たとえばシーズヒータまたはフランジヒータなどから構成される。本実施例の電気ヒータ57は、前後方向へ細長く形成されており、処理槽本体3の後壁から前方へ発熱部82を差し込まれて設けられる。
【0049】
給水手段58は、貯水部56への給水を行う手段である。具体的には、処理槽本体3の後壁には給水路83が接続され、この給水路83には、給水設備(図示省略)からの水が、給水弁84と逆止弁85とを介して供給可能とされる。給水弁84を開けて処理槽5内へ給水するが、貯水部56に所望水量が貯留されると給水弁84は閉じられる。
【0050】
排水手段59は、貯水部56の水を外部へ排出する手段である。具体的には、貯水部56の底部には排水路86が接続され、この排水路86には、処理槽5の側から排水弁87および逆止弁88が設けられる。排水弁87の開放により、貯水部56内の水は外部へ排水可能とされる。
【0051】
減圧手段53、復圧手段54、排蒸手段55、電気ヒータ57、給水手段58および排水手段59などは、制御手段(図示省略)により制御される。この制御手段は、それが把握する経過時間の他、圧力センサ60、品温センサ61、水温センサ62などからの検出信号などに基づいて、前記各構成53,54,55,57,58,59を制御する制御器である。具体的には、真空弁72、真空ポンプ51、真空解除弁77、排蒸弁80、電気ヒータ57、給水弁84、排水弁87の他、圧力センサ60、品温センサ61、水温センサ62、操作パネル26(図1)などは、制御器に接続されている。そして、制御器は、所定の手順(プログラム)に従い、処理槽5内の被加熱物52の加熱を行う。
【0052】
たとえば、処理槽本体3とドア2との隙間をパッキン49で封止すると共に、処理槽本体3内の貯水部56に所定量の給水を行った後、減圧手段53などを用いて処理槽5内からの空気排除を図る。その後、電気ヒータ57により、貯水部56内の水を蒸気化して、その蒸気により被加熱物52の加熱を図る。この際、処理槽5内の圧力を調整することで、処理槽5内の飽和蒸気温度を調整して、被加熱物52の加熱温度を調整することができる。たとえば、処理槽5内を大気圧以上として、100℃を超える飽和蒸気により被加熱物52の加熱を図ってもよいし、処理槽5内を大気圧未満として、100℃未満の飽和蒸気により被加熱物52の加熱を図ってもよい。そして、このような加熱処理後には、処理槽5内を大気圧まで復圧し、貯留水を排水する。
【0053】
飽和蒸気加熱機1の運転中、処理槽5内は大気圧を超える圧力とされる場合があるが、本実施例の構成によれば、胴27と前板29との間、および胴27と後板28との間がそれぞれ確実に溶接され、またドア2が上下のドアレール44,45に保持されるので、安全である。しかも、万一、胴27と前板29または後板28との溶接が外れたとしても、前板29および後板28を架台4に固定したことで、それら部材が飛ぶことが防止され、二重に安全性の向上が図られている。
【0054】
本発明の圧力容器設置構造とこの構造が適用された飽和蒸気加熱機は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、被調理物を加熱調理する飽和蒸気調理機に適用した例を示したが、被滅菌物を滅菌する蒸気滅菌器に適用することもできる。その場合も、構成および制御は、前記各実施例と同様である。さらに、本発明の圧力容器設置構造は、飽和蒸気加熱機以外の各種の装置に幅広く適用することができる。
【0055】
また、前記実施例では、処理槽本体3の前板29と後板28とは、前方取付座31や後方取付座30を用いて架台4に取り付けたが、これら取付座を用いずに、前板29および/または後板28を直接に架台4に取り付けてもよい。
【0056】
さらに、架台4は、処理槽5が取り付けられるものであれば、その構成は問わず、前記実施例に限定されないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の圧力容器設置構造が適用された貯水型の飽和蒸気加熱機の一実施例を示す概略斜視図であり、ドアを開いた状態を示している。
【図2】図1の飽和蒸気加熱機において、処理槽本体の架台への設置構造を示す分解斜視図である。
【図3】図1の飽和蒸気加熱機の具体的構成を示す概略図であり、一部を断面にすると共に一部を省略して示している。
【符号の説明】
【0058】
1 飽和蒸気加熱機
2 ドア
3 処理槽本体
4 架台
5 処理槽(圧力容器)
27 胴
28 後板(板材)
29 前板(板材)
44 上側のドアレール
45 下側のドアレール
56 貯水部
57 電気ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器は、筒状の胴と、その両端部に設けられる板材とを備えて構成され、
一方の板材は、前記胴の一方の開口部を閉塞するか、その開口部をドアとの間で閉塞するよう前記胴に設けられ、
他方の板材は、前記胴の他方の開口部を閉塞するか、その開口部をドアとの間で閉塞するよう前記胴に設けられ、
前記胴は、前記各板材を介して架台に取り付けられる
ことを特徴とする圧力容器設置構造。
【請求項2】
前記胴は、横向き略円筒状とされ、
前記一方の板材は、前記胴の一方の開口部を閉塞するよう前記胴の一端部に固定され、
前記他方の板材は、前記胴の他方の開口部をドアとの間で閉塞するよう前記胴の他端部に固定され、
前記架台またはこれに設けられる部材に、ドアレールが取り付けられ、
前記胴の他方の開口部を開閉可能に、前記ドアレールにドアが保持される
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力容器設置構造。
【請求項3】
円筒状でその軸線を前後方向へ沿って配置される胴と、
この胴の後方開口部を閉塞するよう設けられる後板と、
前記胴の前方外周部にフランジ状に設けられる前板と、
この前板および前記後板を介して前記胴が取り付けられる架台と、
この架台またはこれに設けられる部材に取り付けられるドアレールと、
前記胴の前方開口部を開閉可能に、前記ドアレールに保持されるドアと、
前記胴内に予め貯留しておいた水を加熱して、これにより生ずる蒸気で前記胴内の被加熱物の加熱を図る電気ヒータと
を備えることを特徴とする飽和蒸気加熱機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−79738(P2009−79738A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250984(P2007−250984)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】