説明

圧力容器

【課題】要求される設計要件を満足しつつ、軽量化を図ることができる圧力容器を提供すること。
【解決手段】多角形状の上壁と、多角形状の底壁と、上壁と底壁との間に設けられる側壁と、上壁と側壁とを接続する上側曲面部と、底壁と側壁と接続する下側曲面部と有する圧力容器であって、上壁の中央の上壁中央部を含んで特定方向に延びるように形成された上壁中央リブと、上壁の隣り合う辺の略中央部同士をそれぞれ結んで上壁中央リブを囲むように形成された上壁環状リブと、上側曲面部の各辺の略中央部に形成された上側曲面部リブと、底壁の中央の底壁中央部を含んで特定方向に延びるように形成された底壁中央リブと、底壁の隣り合う辺の略中央部同士をそれぞれ結んで底壁中央リブを囲むように形成された底壁環状リブと、下側曲面部の各辺の略中央部に形成された下側曲面部リブと、側壁の各主面の略中央部に形成された主面リブとを有すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機用ガスクーラー等に用いられる圧力容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、圧力容器において、力学的に最も適した形状は球形であり、次いで円筒形である。しかしながら、例えば、圧縮機用ガスクーラーとして用いられる圧力容器の場合、他の主要部品、部材や配管系との接続、圧力容器内に収納する熱交換器の形状、さらに、圧力容器自身の設置場所等を考慮する必要がある。よって、装置内の空間を有効に利用するためには、その形状を直方体とすることが好ましい。例えば、特許文献1には、直方体形状の圧力容器が開示されている。なお、直方体形状の圧力容器としては、圧縮機用ガスクーラーに限らず、他の機械、装置においてもよく使用されている形状である。
【0003】
また、圧力容器には剛性や強度上の設計要件が要求される。上記特許文献1に記載の直方体形状の圧力容器においては、その要求される設計要件を満足するために容器の外周に格子状のリブが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−106668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、圧力容器としては、要求される設計要件を満足しつつ、できる限り軽量化を図りたいというニーズがある。しかしながら、上記特許文献1に記載の圧力容器は、容器の外周に設けた格子状のリブの分だけ重量増となっており、軽量化を図ることができているとはいえなかった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、要求される設計要件を満足しつつ、軽量化を図ることができる圧力容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明者らは、圧力容器の各壁には、収容する高圧媒体の内圧が作用することによって生じる応力の分布に、不均一が発生していることに着目した。すなわち、各壁には、相対的に小さな応力しか生じていない部分があり、これらの部分は過剰に補強された構造となっていることに着目した。よって、圧力容器の重量増に直結する格子状のリブを設ける構造に換えて、発生している応力分布の不均一を解消するように、過剰に補強されている部分を削ることで、材料を削減して軽量化を図ることができることに想到した。
【0008】
本発明はこのような観点からなされたものであり、多角形状の上壁と、この上壁の下方に設けられた多角形状の底壁と、前記上壁の周縁とそれらに対応する前記底壁の周縁との間に設けられる側壁と、前記上壁の周縁と前記側壁の上端とを外側に凸となった曲面で接続する上側曲面部と、前記底壁の周縁と前記側壁の下端とを外側に凸となった曲面で接続する下側曲面部と有する圧力容器であって、前記上壁の中央の上壁中央部を含んで特定方向に延びるように形成された上壁中央リブと、前記上壁の隣り合う辺の略中央部同士をそれぞれ結んで前記上壁中央リブを囲むように形成された上壁環状リブと、前記上側曲面部の各辺の略中央部に形成されるとともに前記上壁中央リブ及び前記上壁環状リブと連設された上側曲面部リブと、前記底壁の中央の底壁中央部を含んで特定方向に延びるように形成された底壁中央リブと、前記底壁の隣り合う辺の略中央部同士をそれぞれ結んで前記底壁中央リブを囲むように形成された底壁環状リブと、前記下側曲面部の各辺の略中央部に形成されるとともに前記底壁中央リブ及び前記底壁環状リブと連設された下側曲面部リブと、前記側壁の各主面の略中央部に形成されるとともに前記上側曲面部リブ及び前記下側曲面部リブと連設された主面リブとを有することを特徴とする圧力容器を提供する。
【0009】
この発明の圧力容器によれば、相対的に大きな応力が生じる部分、すなわち、上壁中央部、上壁中央部を環状に取り囲む部分、上側曲面部の各辺の略中央部、底壁中央部、底壁中央部を環状に取り囲む部分、下側曲面部の各辺の略中央部及び主面の略中央部に肉厚を大きくしたリブを設け、相対的に小さな応力しか生じないその他の部分の肉厚を小さくすることで、圧力容器全体としては、要求される設計要件を満足しつつ、材料を削減して軽量化を図ることができる。また、圧力容器の上壁、側壁及び底壁への応力分布の不均一の発生を抑制することができる。
【0010】
また、本発明において、前記上壁中央リブは、前記上壁中央部を含む上壁中央リブ本体と、前記上側曲面部リブと連接される上壁中央リブ連設部と、前記上壁中央リブ本体と前記上壁中央リブ連設部との間に当該上壁中央リブにおいて最も薄くなるように形成された上壁中央リブ薄肉部とを有し、前記上壁中央リブ本体における中央部から前記上壁中央リブ薄肉部に向かってその厚さが次第に小さくなる形状を有しており、前記上壁環状リブは、上壁環状リブ本体と、前記上側曲面部リブと連接される上壁環状リブ連設部と、前記上壁環状リブ本体と前記上壁環状リブ連設部との間に当該上壁環状リブにおいて最も薄くなるように形成された上壁環状リブ薄肉部とを有しており、前記底壁中央リブは、前記底壁中央部を含む底壁中央リブ本体と、前記下側曲面リブと連接される底壁中央リブ連設部と、前記底壁中央リブ本体と前記底壁中央リブ連設部との間に当該底壁中央リブにおいて最も薄くなるように形成された底壁中央リブ薄肉部とを有し、前記底壁中央リブ本体における中央部から前記底壁中央リブ薄肉部に向かってその厚さが次第に小さくなる形状を有しており、前記底壁環状リブは、底壁環状リブ本体と、前記下側曲面部リブと連接される底壁環状リブ連設部と、前記底壁環状リブ本体と前記底壁環状リブ連設部との間に当該底壁環状リブにおいて最も薄くなるように形成された底壁環状リブ薄肉部とを有していることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、各リブにおいて相対的に大きな応力が生じる部分の肉厚を大きくし、相対的に小さな応力しか生じない部分の肉厚を小さくすることで、要求される設計要件を満足しつつ、さらに材料を削減して軽量化を図ることができる。また、圧力容器の上壁及び底壁への応力分布の不均一の発生をさらに抑制することができる。
【0012】
また、本発明において、前記上側曲面部の内面及び前記下側曲面部の内面が同じ曲率半径を有しており、前記上壁中央リブ薄肉部は、前記上壁を上から見て前記側壁の内面から前記上壁中央部に向かって、前記底壁中央リブ薄肉部は、前記底壁を下から見て前記側壁の内面から前記底壁中央部に向かって、それぞれ前記曲率半径の1/2倍から2倍の範囲に位置していることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、上壁及び底壁に発生する応力分布の不均一を解消しつつ、圧力容器の軽量化を図ることが容易となる。
【0014】
また、本発明において、前記上壁中央リブ薄肉部及び前記上壁環状リブ薄肉部は、内圧作用時に前記上壁に発生する正方向の曲げモーメントと、前記上側曲面部に発生する負方向の曲げモーメントとが釣り合う部分に位置し、前記底壁中央リブ薄肉部及び前記底壁環状リブ薄肉部は、内圧作用時に前記底壁に発生する正方向の曲げモーメントと、前記下側曲面部に発生する負方向の曲げモーメントとが釣り合う部分に位置することが好ましい。
【0015】
このようにすれば、上壁における正方向の曲げモーメントと負方向の曲げモーメントとが釣り合う位置、すなわち、応力の発生が極めて小さくなっている部分に上壁中央リブ薄肉部及び上壁環状リブ薄肉部が位置し、底壁における同部分に底壁中央リブ薄肉部及び底壁環状リブ薄肉部が位置するので、これらの各薄肉部の肉厚を一層小さくすることが可能となり、圧力容器のさらなる軽量化を図るこができる。
【0016】
また、本発明において、前記上壁及び前記底壁は四角形であることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、圧力容器の内部空間を有効に確保しやすくなる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、要求される設計要件を満足しつつ、材料を削減して軽量化を図ることができる圧力容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態の圧力容器の2分の1モデル斜視図である。
【図2】図1に示したモデルの内面を示した状態の斜視図である。
【図3】図1のIII−III断面の斜視図である。
【図4】直方体形状の圧力容器の2分の1モデルの斜視図である。
【図5】図4のV−V断面に生じる曲げモーメントの分布を説明する図である。
【図6】格子状リブが設けられた従来容器の2分の1モデルの斜視図である。
【図7】比較例及び実施例の解析結果を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
直方体形状の圧力容器に内圧が作用する場合、当該容器は基本的に球体に近づくように変形する。まず、この点について、図4及び図5を参照しながら説明する。図4は、直方体形状の圧力容器の2分の1モデルの斜視図である。なお、図4では、直方体形状の圧力容器のうち上壁が示されている。
【0021】
図5は、図4のV−V断面に作用する曲げモーメントの分布図を模式的に示している。同図におけるA部では、曲率を減少させる方向、すなわち、プラス方向の曲げモーメントが作用する。一方、B部では、曲率を増加させる方向、すなわちマイナス方向の曲げモーメントが作用する。このとき、Z部近傍では、曲げモーメントの正負が逆転するので、モーメントがゼロ、あるいは非常に小さい状態となる。
【0022】
本実施形態は、圧力容器に設けるリブの位置及びその肉厚を、上記のように分布するモーメントの大きさに略対応させるものである。つまり、基本的には、モーメントの絶対値が大きい部分に肉厚の大きなリブを設け、絶対値がゼロ、あるいは小さい部分の肉厚を小さくするものである。
【0023】
このように、圧力容器に設けるリブの位置及びその肉厚をモーメントの大きさに合わせたものとすることにより、容器が全体として均一に荷重を負担するので、圧力容器を無駄のない形状とすることができる。換言すれば、従来の直方体形状の圧力容器は、相対的に小さな曲げモーメントしか生じていない部分であっても、相対的に大きな曲げモーメントが生じている部分と同じ厚さのリブを有する形状であったため、その部分が過剰に補強された余肉となっており、重量増につながっていた。
【0024】
次に、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態の圧力容器の2分の1モデルの斜視図である。本実施形態の圧力容器は、Zの各方向の中央に対して対称な形状であるため、Zの各方向のそれぞれの中央で切断した2分の1のモデルを用いて説明する。なお、図1では、本実施形態の圧力容器のうち上壁が示されている。図2は、図1に示したモデルを−Z方向から見た状態、すなわち、上壁の内面を示した状態の斜視図である。図3は、図1のモデルをIII−III断面で切断した状態を示した斜視図である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の圧力容器の2分の1モデルは、上壁1と、上壁1と図示しない底壁との間に設けられた側壁2と、上壁1の周縁と側壁2の上端とを外側に凸となった曲面で接続する上側曲面部3とを有している。この圧力容器1はまた、その内部に熱交換器や配管等を有するが、これらは図示を省略している。
【0027】
上壁1は、その中央の上壁中央部1aを含んで特定方向(X軸方向)に延びるように形成された上壁中央リブ1bと、この上壁中央リブ1bの近傍に形成された上壁補助リブ1fと、上壁1の隣り合う各辺の略中央部同士をそれぞれ結ぶように形成された上壁環状リブ1jとを有している。また、図2に示すように、上壁1の内面は平坦に形成されている。
【0028】
図3に示すように、上壁中央リブ1bは、上壁中央部1aを含む上壁中央リブ本体1cと、後述する上側曲面部リブ3cと連接される上壁中央リブ連設部1dと、上壁中央リブ本体1cと上壁中央リブ連設部1dとの間に上壁中央リブ1bにおいて最も薄くなるように形成された上壁中央リブ薄肉部1eとを有している。上壁中央部1aは、高圧媒体の内圧が作用することによって当該上壁中央部1aに生じる応力が容器内で最も大きいため、上壁中央リブ1bにおける上壁中央リブ本体1cの中央の厚さが当該上壁中央リブ1bにおいて最も大きくなるように形成されている。そして、この上壁中央リブ1bは、上壁中央部1aから上壁中央リブ薄肉部1eにかけて次第に厚さが小さくなるとともにその外面が外側に凸となった曲面で接続された形状を有している。具体的に、上壁中央リブ1bにおける最も厚い部分の厚さは、上壁中央リブ薄肉部1eの厚さの2.5倍から8倍であることが好ましい。
【0029】
上壁中央リブ薄肉部1eは、上壁1を上から見て、側壁2における上壁中央リブ連設部1dと接続される主面2aの内面から上壁中央部1aに向かって、後述する上側曲面部3の内面の曲率半径rの1/2倍から2倍の範囲に位置するように形成される。より好ましくは、上壁に生じる正方向の曲げモーメントと、上側曲面部3に生じる負方向の曲げモーメントとが釣り合う部分、つまり、曲げモーメントの合計がゼロ、あるいは非常に小さい状態となっている部分に形成される。この上壁中央リブ薄肉部1eの外面は、内側に凸となった曲面に形成されている。また、上壁中央リブ薄肉部1eの厚さは、上壁1における後述する隅角部3b近傍の厚さと比べて、大きくても小さくても、あるいは同じであってもよい。
【0030】
上壁補助リブ1fは、上壁中央リブ1bの長手方向の各端部の近傍に一対ずつ形成されて上壁中央リブ1bの負担する荷重を補助するものである。上壁補助リブ1fは、上壁中央リブ1bの長手方向と平行な方向に延びる形状を有しており、上壁補助リブ本体1gと、上側曲面部リブ3cと連接される上壁補助リブ連設部1hと、上壁補助リブ本体1gと上壁補助リブ連設部1hとの間に上壁補助リブ1fにおいて最も薄くなるように形成された上壁補助リブ薄肉部1iとを有している。そして、この上壁補助リブ1fの外面は、上壁補助リブ薄肉部1iの部分が内側に凸となり、その他の部分が外側に凸となった曲面に形成されている。
【0031】
上壁環状リブ1jは、上壁1の隣り合う各辺の略中央部同士を結ぶように形成されている。この上壁環状リブ1jは、上壁1の隣り合う辺の略中央部同士を結ぶ線分よりも、その中央部分が上壁中央部1aに近づくように湾曲した形状を有している。上壁環状リブ1jは、上壁環状リブ本体1kと、上側曲面部リブ3cと連接される上壁環状リブ連設部1lと、上壁環状リブ本体1kと上壁環状リブ連設部1lとの間に当該上壁環状リブ1jにおいて最も薄くなるように形成された上壁環状リブ薄肉部1mとを有している。
【0032】
上壁環状リブ薄肉部1mは、上壁1を上から見て、上壁1の所定の辺に接続される主面2aの内面の略中央部から、その所定の辺と隣り合う辺に接続される主面2aの内面の略中央部へ向かって、上側曲面部3の内面の曲率半径rの1/2倍から2倍の範囲に位置するように形成される。より好ましくは、上壁に生じる正方向の曲げモーメントと、上側曲面部3に生じる負方向の曲げモーメントとが釣り合う部分、つまり、曲げモーメントの合計がゼロ、あるいは非常に小さい状態となっている部分に形成される。また、上壁環状リブ薄肉部1mの外面は、内側に凸となった曲面に形成されている。
【0033】
側壁2は、上壁1の周縁と底壁の周縁との間に設けられている。側壁2は、図1におけるXZ面と平行な面をなす主面2a及びYZ面と平行な面をなす主面2aと、これら主面2a同士を連結する主面連結部2bとを有する。そして、各主面2aは、その略中央部に主面リブ2cを有している。本実施形態では、上壁1が一方向(Y方向)に長い長方形であるため、その短辺(X軸と平行な辺)には1つ、その長辺(Y軸と平行な辺)には2つの主面リブ2cが形成されている。また、図2に示すように、主面2aの内面は、平坦に形成されている。
【0034】
主面連結部2bは、互いに直交する方向に広がる主面2a同士を連結する部分であり、外側に凸となった曲面形状を呈する。この主面連結部2bは、図2に示すように、各主面2aの平坦な内面同士を連結する曲面状の内面を有する。
【0035】
主面リブ2cは、高圧媒体の内圧が作用した際に主面2aに生じる応力が最も大きくなる主面2a内の中央部に形成されている。主面リブ2cは、その上端で上側曲面部リブ3cと、その下端で図示しない下側曲面部リブとそれぞれ接続されている。
【0036】
上側曲面部3は、上壁1の周縁と側壁2の上端とを外側に凸となった曲面で接続する部分であり、上壁1の各辺に対応する辺部3aと、隣接する辺部3a同士を連結する隅角部3bとを有している。そして、辺部3aの中央部に上側曲面部リブ3cが形成されている。
【0037】
図2に示すように、辺部3aは、上壁1の平坦な内面と主面2aの平坦な内面とを接続する曲面状の内面を有する。隅角部3bは、隣接する辺部3aの曲面状の内面同士を連結するとともに、上壁1の内面と主面連結部2bの内面とを接続する曲面状の内面を有する。そして、隅角部3bの厚さは、上側曲面部3において最も小さくなるように形成されている。また、図2に示すように、上側曲面部3の内面は、所定の曲率半径rを有する円弧状に形成されている。
【0038】
上側曲面部リブ3cは、高圧媒体の内圧が作用した際に辺部3aに生じる応力が最も大きくなる辺部3aの中央部に形成されている。長辺に位置する上側曲面部リブ3cは、その上端で上壁中央リブ連設部1d、上壁補助リブ連設部1h及び上壁環状リブ連設部1lと連接され、その下端で主面リブ2cに連設されている。また、短辺に位置する上側曲面部リブ3cは、その上端で上壁環状リブ連設部1lと連接され、その下端で主面リブ2cと連設されている。
【0039】
なお、圧縮機用ガスクーラーは鋳造法により製造されるため、本実施形態のように肉厚の変化する形状の容器であっても製造することができる。
【0040】
以上のように、本実施形態の圧力容器では、相対的に大きな応力が生じる部分、すなわち、上壁中央部1a、上壁中央部1aを環状に取り囲む部分、上側曲面部3の各辺の略中央部、底壁中央部、底壁中央部を環状に取り囲む部分、下側曲面部の各辺の略中央部及び主面2aの略中央部に肉厚を大きくしたリブを設け、相対的に小さな応力しか生じないその他の部分の肉厚を小さくすることで、圧力容器全体としては、要求される設計要件を満足しつつ、材料を削減して軽量化を図ることができる。また、圧力容器の上壁1、底壁及び側壁2への応力分布の不均一の発生を抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態では、上壁中央リブ1bは、上壁中央部1aから上壁中央リブ薄肉部1eにかけてその厚さが次第に小さくなる形状を有しており、上壁環状リブ1jは、上壁環状リブ薄肉部1mを有している。また、底壁中央リブは、底壁中央部から底壁中央リブ薄肉部にかけてその厚さが次第に小さくなる形状を有しており、底壁環状リブは、底壁環状リブ薄肉部を有している。このように、各リブにおいて相対的に大きな応力が生じる部分の肉厚を大きくし、相対的に小さな応力しか生じない部分の肉厚を小さくすることで、要求される設計要件を満足しつつ、さらに材料を削減して軽量化を図ることができる。また、圧力容器の上壁1への応力分布の不均一の発生をさらに抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態では、上側曲面部3及び下側曲面部の内面が同じ曲率半径rを有しており、上壁中央リブ薄肉部1eは、上壁1を上から見て側壁2の内面から上壁中央部1aに向かって曲率半径rの1/2倍から2倍の範囲に位置しており、底壁中央リブ薄肉部は、底壁を上から見て側壁2の内面から底壁中央部に向かって曲率半径rの1/2倍から2倍の範囲に位置しているので、上壁1及び底壁に発生する応力分布の不均一を解消しつつ、圧力容器の軽量化を図ることが容易となる。
【0043】
また、本実施形態では、上壁中央リブ薄肉部1e及び上壁環状リブ薄肉部1mは、内圧作用時に上壁1に発生する正方向の曲げモーメントと、上側曲面部3に発生する負方向の曲げモーメントとが釣り合う部分、すなわち、応力の発生が極めて小さくなっている部分に位置し、底壁中央リブ薄肉部及び底壁環状リブ薄肉部は、内圧作用時に底壁に発生する正方向の曲げモーメントと、下側曲面部に発生する負方向の曲げモーメントとが釣り合う部分、すなわち、応力の発生が極めて小さくなっている部分に位置するので、これらの各薄肉部の肉厚を一層小さくすることが可能となり、圧力容器のさらなる軽量化を図るこができる。
【0044】
また、本実施形態では、上壁1及び底壁は四角形であるので、圧力容器の内部空間を確保しやすくなる。
【0045】
さらに、本実施形態では、圧力容器に発生する応力分布に応じてリブを設けるとともにそのリブの肉厚を変化させたため、容器の各壁への応力分布の不均一の発生を抑制することができ、かつ、圧力容器全体で効率よく負荷を負担することができる。
【0046】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0047】
例えば、上記実施形態では、上壁1及び底壁が四角形である例について示したが、これらは四角形に限らず、その他の多角形であってもよい。なお、その他の多角形の場合も、四角形の場合と同様の作用、効果を奏する。特に、上壁1及び底壁が正方形の場合、上壁中央リブ1bは、上壁中央部1aを含むとともに対向する辺同士を結ぶ十字状に形成され、底壁中央リブは、底壁中央部を含むとともに対向する辺同士を結ぶ十字状に形成され、各主面2aにはそれぞれ1つの主面リブ2cが形成される。
【0048】
また、上記実施形態では、上壁中央リブ1bが上壁中央リブ薄肉部1eを、上壁補助リブ1fが上壁補助リブ薄肉部1iを、上壁環状リブ1jが上壁環状リブ薄肉部1mを、底壁中央リブが底壁中央リブ薄肉部を、底壁補助リブが底壁補助リブ薄肉部を、そして、底壁環状リブが底壁環状リブ薄肉部をそれぞれ有する例について示したが、これら各薄肉部は省略してもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、上壁中央リブ1b及び上側曲面部リブ3cと、上壁環状リブ1j及び上側曲面部リブ3cと、底壁中央リブ及び下側曲面部リブと、底壁環状リブ及び下側曲面部リブとがそれぞれ曲面で接続された例について示したが、これらの箇所はすべて平面で接続されていてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、上壁1が上壁補助リブ1fを、底壁が底壁補助リブをそれぞれ有する例について示したが、これらの各補助リブは省略してもよい。その場合、単に各補助リブを省略するだけでは要求される設計要件を満足することができないので、上壁及び底壁の各中央リブがこれらの補助リブの負担していた荷重分を負担できるように、その短手方向(Y軸方向)の幅を大きく形成される必要がある。
【0051】
次に、本実施形態の圧力容器についての実施例を、図6に示す従来の直方体形状の圧力容器と比較して説明する。
【実施例】
【0052】
図6に示す従来の直方体形状の圧力容器、及び図1に示す本実施形態の圧力容器のFEM解析モデルを作成し、弾塑性解析により内圧作用時の応力及び変位を比較した。また、併せて重量についても比較した。ここで、本実施形態の圧力容器、すなわち、圧縮機用ガスクーラーに用いられる圧力容器の主な剛性、強度上の設計要件は、次の2点である。
(1)最高使用圧力1.14MPa時の最大変位量(以下、「要件1の値」という。)を2.5mm以下とすること
(2)最小耐圧破壊強度8.19MPa時の最大応力(以下、「要件2の値」という。)を430MPa以下とすること
なお、以下、本実施形態を実施例を基に説明するが、本実施形態はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されない。
【0053】
(比較例)
図6は、格子状の補強リブを有する従来の直方体形状の圧力容器の解析モデルである。本モデルはシェル要素モデルであり、対称性を踏まえて上側2分の1モデルとしている。本モデルのサイズは、板厚中心における値が、縦772.5mm、横631mm及び高さ180mmであり、板厚は17mmである。また、リブの高さは26.5mm(シェルモデル上は26.5+17/2=35mm)、Y方向リブの厚さは23mm、X方向のリブの厚さは46mmである。
【0054】
この比較例においては、容器全体の重量は254kg、要件1の値は1.36mm、要件2の値は425MPaであった。
【0055】
(実施例)
次に、図1に示した本実施形態の圧力容器1の実施例について説明する。本モデルの内面サイズは、縦755.5mm、横614mm及び高さ163mmである。また、材質は、FCD450を用いた。この実施例では、容器全体の重量は170kg、要件1の値は1.12mm、要件2の値は420MPaであった。
【0056】
以上の結果を表にしたものを図7に示す。この図7から明らかなように、本実施例の圧力容器は、設計要件を満足するとともに、従来の圧力容器より軽量化を図ることができていることが理解できる。より具体的には、実施例の圧力容器では、従来の圧力容器以上の強度特性を確保しながらも、従来の圧力容器の約67%の重量とすることができる。
【0057】
また、実施例の圧力容器では、隅角部を除いてほぼ容器全体にわたって略均一の応力となり、容器が全体として無駄なく荷重を分担する結果となった。これに対し、図6に示した従来容器の場合、本実施形態の実施例と比較して広範囲に相対的に低応力となる部分が発生するため、容器全体で効率良く荷重を分担できていない結果となった。
【符号の説明】
【0058】
1 上壁
1a 上壁中央部
1b 上壁中央リブ
1c 上壁中央リブ本体
1d 上壁中央リブ連設部
1e 上壁中央リブ薄肉部
1f 上壁補助リブ
1g 上壁補助リブ本体
1h 上壁補助リブ連設部
1i 上壁補助リブ薄肉部
1j 上壁環状リブ
1k 上壁環状リブ本体
1l 上壁環状リブ連設部
1m 上壁環状リブ薄肉部
2 側壁
2a 主面
2b 主面連結部
2c 主面リブ
3 上側曲面部
3a 辺部
3b 隅角部
3c 上側曲面部リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多角形状の上壁と、この上壁の下方に設けられた多角形状の底壁と、前記上壁の周縁とそれらに対応する前記底壁の周縁との間に設けられる側壁と、前記上壁の周縁と前記側壁の上端とを外側に凸となった曲面で接続する上側曲面部と、前記底壁の周縁と前記側壁の下端とを外側に凸となった曲面で接続する下側曲面部と有する圧力容器であって、
前記上壁の中央の上壁中央部を含んで特定方向に延びるように形成された上壁中央リブと、
前記上壁の隣り合う辺の略中央部同士をそれぞれ結んで前記上壁中央リブを囲むように形成された上壁環状リブと、
前記上側曲面部の各辺の略中央部に形成されるとともに前記上壁中央リブ及び前記上壁環状リブと連設された上側曲面部リブと、
前記底壁の中央の底壁中央部を含んで特定方向に延びるように形成された底壁中央リブと、
前記底壁の隣り合う辺の略中央部同士をそれぞれ結んで前記底壁中央リブを囲むように形成された底壁環状リブと、
前記下側曲面部の各辺の略中央部に形成されるとともに前記底壁中央リブ及び前記底壁環状リブと連設された下側曲面部リブと、
前記側壁の各主面の略中央部に形成されるとともに前記上側曲面部リブ及び前記下側曲面部リブと連設された主面リブとを有することを特徴とする圧力容器。
【請求項2】
前記上壁中央リブは、前記上壁中央部を含む上壁中央リブ本体と、前記上側曲面部リブと連接される上壁中央リブ連設部と、前記上壁中央リブ本体と前記上壁中央リブ連設部との間に当該上壁中央リブにおいて最も薄くなるように形成された上壁中央リブ薄肉部とを有し、前記上壁中央リブ本体における中央部から前記上壁中央リブ薄肉部に向かってその厚さが次第に小さくなる形状を有しており、
前記上壁環状リブは、上壁環状リブ本体と、前記上側曲面部リブと連接される上壁環状リブ連設部と、前記上壁環状リブ本体と前記上壁環状リブ連設部との間に当該上壁環状リブにおいて最も薄くなるように形成された上壁環状リブ薄肉部とを有しており、
前記底壁中央リブは、前記底壁中央部を含む底壁中央リブ本体と、前記下側曲面リブと連接される底壁中央リブ連設部と、前記底壁中央リブ本体と前記底壁中央リブ連設部との間に当該底壁中央リブにおいて最も薄くなるように形成された底壁中央リブ薄肉部とを有し、前記底壁中央リブ本体における中央部から前記底壁中央リブ薄肉部に向かってその厚さが次第に小さくなる形状を有しており、
前記底壁環状リブは、底壁環状リブ本体と、前記下側曲面部リブと連接される底壁環状リブ連設部と、前記底壁環状リブ本体と前記底壁環状リブ連設部との間に当該底壁環状リブにおいて最も薄くなるように形成された底壁環状リブ薄肉部とを有していることを特徴とする請求項1に記載の圧力容器。
【請求項3】
前記上側曲面部の内面及び前記下側曲面部の内面が同じ曲率半径を有しており、
前記上壁中央リブ薄肉部は、前記上壁を上から見て前記側壁の内面から前記上壁中央部に向かって、前記底壁中央リブ薄肉部は、前記底壁を下から見て前記側壁の内面から前記底壁中央部に向かって、それぞれ前記曲率半径の1/2倍から2倍の範囲に位置していることを特徴とする請求項2に記載の圧力容器。
【請求項4】
前記上壁中央リブ薄肉部及び前記上壁環状リブ薄肉部は、内圧作用時に前記上壁に発生する正方向の曲げモーメントと、前記上側曲面部に発生する負方向の曲げモーメントとが釣り合う部分に位置し、前記底壁中央リブ薄肉部及び前記底壁環状リブ薄肉部は、内圧作用時に前記底壁に発生する正方向の曲げモーメントと、前記下側曲面部に発生する負方向の曲げモーメントとが釣り合う部分に位置することを特徴とする請求項2又は3のいずれかに記載の圧力容器。
【請求項5】
前記上壁及び前記底壁は四角形であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の圧力容器。

【図5】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−44389(P2013−44389A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182509(P2011−182509)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】