説明

圧力平衡化された触媒付き排気物品

【課題】触媒組成物により被覆された内壁を有する壁流基材上に形成される触媒付きすすフィルターを提供する。
【解決手段】フィルターの長さに沿った基材の内壁を通る排出ガスの均質な流れを被覆設計により維持することにより、触媒機能の効率および耐久性は、両方とも慣用的に設計された触媒付きすすフィルターよりも増大される。また、第1の触媒被膜と第2の触媒被膜を設けるで、排気のガス状成分(例えばCOおよびHC)とフィルター中に堆積された粒子状物質を同時に処理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジーゼルエンジンからの排出ガスを処理するのに有用な触媒物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ジーゼルエンジン排気は、一酸化炭素(「CO」)、未燃焼炭化水素(「HC」)および窒素酸化物(「NOx」)などのガス状排出物のみならず、いわゆる粒子または粒子状物質を構成する凝縮相材料(液体および固体)も含有する不均質な混合物である。ジーゼルエンジン用の排出物処理システムは、排気成分をすべて処理して、世界中の種々の規制当局による排出物標準の組に適合しなければならない。
【0003】
ジーゼル排気の全粒子状物質排出物は3つの主成分を含有する。第1の成分は固体の、乾燥した固体炭素質画分またはすす画分である。この乾燥した炭素質画分はジーゼル排気と通常関連する肉眼で見えるすす排出物に寄与する。この粒子状物質の第2の成分は可溶性有機画分(「SOF」)である。SOFは、ジーゼル排気の温度に依存して蒸気またはエアロゾル(微細な液滴または液体凝縮物)のいずれかとしてジーゼル排気中に存在することができる。これは、U.S.Heavy Duty Transient Federal Test Procedureなどの標準測定試験により規定されているように、希薄排気中52℃の標準の粒子捕集温度で凝縮液体として一般に存在する。これらの液体は、(1)ピストンが上下するたびにエンジンのシリンダー壁から掃去される潤滑油;および(2)未燃焼あるいは部分燃焼したジーゼル燃料の2つの源から発生する。粒子状物質の第3の成分は、ジーゼル燃料中に存在する少量のイオウ成分から形成されるいわゆるサルフェート画分である。
【0004】
触媒組成物および組成物が配設される基材は、通常ジーゼルエンジン排気系中に設けられて、これらの排気成分の一部または全部を無害の成分に転換させる。例えば、白金族金属、卑金属およびこれらの組み合わせ物を含有する酸化触媒は、これらの汚染物質の二酸化炭素および水への酸化による未燃焼炭化水素(HC)および一酸化炭素(CO)ガス状汚染物質と、一部の比率の粒子状物質の転換を促進することにより、ジーゼルエンジン排気の処理を促進する。このような触媒は、ジーゼルエンジンの排気中に配置されて、大気に排出される前に排気を処理する種々の基材(例えば、モノリス基材を通るハニカム流(honeycomb flow))上に一般に配設されるものであった。しかるべき酸化触媒はNOのNOへの酸化も促進する。
【0005】
酸化触媒の使用に加えて、ジーゼル粒子フィルターを使用して、ジーゼル排出物処理システムにおける粒子状物質の著しい低減が達成される。ジーゼル排気から粒子状物質を除去する既知のフィルター構造物は、ハニカム壁流(honeycomb wall flow)フィルター、巻付けあるいは充填形ファイバーフィルター、連続気泡フォーム、焼結金属フィルターなどを含む。しかしながら、下記に述べるセラミック壁流フィルターは最も注意を集めている。これらのフィルターは、ジーゼル排気から90%以上の粒子物質を除去する能力がある。
【0006】
通常のセラミック壁流フィルター基材はコーディエライトまたは炭化ケイ素などの耐火性材料から構成される。壁流基材は、ジーゼルエンジン排出ガスから粒子状物質を濾過するのに特に有用である。共通の構成は、ハニカム構造体の入口および出口側上の交互する通路の末端が栓をされている多数通路のハニカム構造体(10)である(図1を参照)。この構成は、いずれかの末端上に市松模様タイプのパターンを生じる。入口軸方向の末端で栓をされた通路は出口軸方向の末端上で開いている。このことによって、同伴された粒
子状物質を含む排出ガスは、開いた入口通路に入り、多孔質内壁を通って流れ、そして開いた出口軸方向の末端を有するチャンネルから出ることができる。これにより、この粒子状物質は基材の内壁上に濾過される。このガス圧力は、上流軸方向の末端で閉じ、そして下流軸方向の末端で開いたチャンネルの中に多孔質構造壁から排出ガスを押し出す。この蓄積する粒子はエンジンのフィルターからの背圧を増加させる。したがって、この蓄積する粒子をフィルターから連続的あるいは周期的に焼き飛ばして、許容し得る背圧を維持しなければならない。
【0007】
壁流基材の内壁に沿って堆積された触媒組成物は、蓄積された粒子状物質の燃焼を促進することにより、フィルター基材の再生を助ける。蓄積された粒子状物質の燃焼は排気系内で許容し得る背圧を回復させる。これらの過程は受動的あるいは能動的な再生過程のいずれかであり得る。両方の過程はOまたはNOなどの酸化物質を使用して、粒子状物質を燃焼させる。
【0008】
受動的な再生過程は、ジーゼル排気系の正規の運転範囲内の温度で粒子状物質を燃焼させる。すす画分は、Oが酸化物質として働く場合に必要とされる温度よりもずっと低い温度で燃焼するので、好ましくは、再生過程で使用される酸化物質はNOである。Oは大気から容易に入手し得,一方NOは排気流中のNOを酸化する上流の酸化触媒を使用することにより能動的に生成可能である。
【0009】
触媒組成物の存在およびNOを酸化物質として使用するための準備に拘わらず、蓄積された粒子状物質を除去し、そしてフィルター内の許容し得る背圧を回復するには、能動的な再生過程が一般に必要とされる。酸素リッチ(リーン)条件下で燃焼するためには、粒子状物質のすす画分は、ジーゼル排気中で通常存在する温度よりも高い温度である500℃を超える温度を一般に必要とする。能動的な再生過程は、エンジン管理を変更して、フィルターの前での温度を570〜630℃まで上げることにより通常開始される。運転モードに依って、再生時の冷却が充分でない場合に(低速/低負荷またはアイドル運転モード)、高い発熱がフィルター内部で起こり得る。このような発熱はフィルター内で800℃を超え得る。
【0010】
被覆された壁流フィルター中では、再生イベント時にこのような高い温度に暴露することは、基材の長さに沿って被覆される触媒組成物の有効寿命を短縮する。更には、基材の長さに沿った異なる区分は再生過程により偏った影響を受ける。粒子状物質の堆積は壁流フィルターの長さに沿って均質でなく、高比率の粒子状物質がフィルターの下流区分で蓄積する。結果として、この温度は基材の長さにわたって均質に分布しないが、能動的な再生イベント時に下流区分で最高温度を示す。このように、下流区分に沿った触媒組成物の耐久性が触媒で被覆された壁流基材全体の有効寿命を制限する。
【0011】
白金族金属含有組成に関連する高い材料コストは、能動的な再生イベントによる触媒被膜の劣化を遅延させるか、あるいは防止する必要性を増大させる。壁流フィルター上に配設される触媒被膜は、ジーゼル排気のガス状排出物(HC、CO)の無害成分(例えば、CO、HO)への許容し得る転換を確実に行うように、能動的な触媒成分として白金族金属成分を時には含有する。このような成分の装填量は、触媒基材が触媒老化後でも排出物規制に適合するように一般に調整される。結果として、基材に沿った白金族金属使用の効率および耐久性を最大とする被覆設計が望ましい。
【0012】
壁流基材用のしかるべき慣用の被覆設計は、内壁の軸方向の長さ全体に沿って触媒被膜の均質な分布を有する。このような設計において、白金族金属濃度は、最も厳しい条件下での排出物要求に適合するように通常調整される。このような条件は、ほとんどの場合、触媒が老化した後の触媒の性能を指す。必要とされる白金族金属濃度に関連するコストは
、所望するよりも往々にして高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
壁流基材向けの他の慣用の被覆設計は、基材の軸方向の長さに沿った白金族金属成分の濃度勾配を使用する。これらの設計においては、しかるべき触媒域(例えば、上流域)は、隣接する軸方向の域(例えば、下流域)よりも高い濃度の白金族金属を有する。通常、高濃度の白金族金属成分が配設される軸方向の域の内壁は、高ウオッシュコート装填量により低濃度の白金族金属を有する隣接する域よりも低い透過性を有する。入口通路の長さに沿って通過するガス流は、最も高い透過性を有する区分中の内壁を移動する。このように、ガス流は、低濃度の白金族金属成分を有する内壁区分を通って流れる傾向がある。この差分的な流れパターンは不適当な汚染物質転換を生じる可能性がある。例えば、しかるべきガス状汚染物質、例えば未燃焼炭化水素は、充分なレベルの燃焼を達成するように粒子成分よりも高い濃度の白金族金属成分との接触を必要とする。この要求は、排気温度が冷たい運転条件時、例えばスタートアップ時に増幅される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一つの局面においては、本発明は、入口末端、出口末端、入口末端と出口末端の間に延びる基材軸方向の長さ(length)および壁流基材の内壁により規定される複数の通路を含んでなる壁流基材を有する触媒付きすすフィルターに関する。複数の通路は、開いた入口末端および閉じた出口末端を有する入口通路と、閉じた入口末端および開いた出口末端を有する出口通路を有する。入口通路の内壁は、入口末端から第1の入口被膜末端まで延び、それにより第1の入口被膜長さを規定する第1の入口被膜を有する。第1の入口被膜長さは基材軸方向の長さよりも短かい。出口通路の内壁は、出口末端から出口被膜末端まで延び、それにより出口被膜長さを規定する出口被膜を有する。出口被膜長さは基材軸方向の長さよりも短かい。第1の入口被膜と出口被膜長さの和は基材軸方向の長さに実質的に等しい。
【0015】
第1の入口被膜長さは上流域を規定し、そして出口被膜長さは下流域を規定する。第1の入口被膜は少なくとも1つの第1の入口白金族金属成分(one first inlet platinum group metal component)を含有する。白金族金属成分の少なくとも50%は上流域中に存在する。
【0016】
この触媒付きすすフィルターの一つの態様においては、第1の入口および出口被膜は、第1の入口被膜/出口被膜0.5:1.5(0.5 to 1.5)のウオッシュコート装填量比で壁流基材上に存在する。第1の入口被膜は0.1〜2.0g/inのウオッシュコート装填量で上流域中に通常存在し、そして出口被膜は0.1〜2.0g/inのウオッシュコート装填量で下流域中に通常存在する。
【0017】
一般に、上流域の長さは基材軸方向の長さの20〜80%である。好ましくは、上流域の長さは基材軸方向の長さの30〜70%、更に好ましくは、40〜60%である。
【0018】
この触媒付きすすフィルター中の第1の入口白金族金属成分は、第1の入口白金成分(a first inlet platinum component)、第1の入口パラジウム成分(a first inlet palladium component)、第1の入口ロジウム成分(a first inlet rhodium component)および第1の入口イリジウム成分(a first inlet iridium component)から通常選択される。一般に、白金族金属成分は、5〜180g/ftの濃度で入口域中に存在する。一つの好ましい態様においては、第1の入口白金族金属(the first inlet platinum group me
tal)は第1の入口白金成分(a first inlet platinum component)である。
【0019】
この触媒付きすすフィルターの一部の態様においては、少なくとも1つの白金族金属成分は2〜90g/ftの濃度で出口域中に存在する。出口白金族金属成分は、出口白金成分、出口パラジウム成分、出口ロジウム成分および出口イリジウム成分からなる群から通常選択される。
【0020】
一部の態様においては、この触媒付きすすフィルターの入口および出口被膜の両方は、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミノシリケート、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミア、アルミナ−希土類金属酸化物、チタニア、チタニア−シリカ、チタニア−ジルコニアおよびチタニア−アルミナからなる群から選択される耐火性金属酸化物を含有する。
【0021】
この触媒付きすすフィルターのある態様においては、入口および出口被膜の少なくとも1つは、セリウム、プラセオジウム、ランタン、ネオジムおよびサマリウムの酸化物から選択される希土類金属酸化物を含有する。別法としてあるいは追加として、入口および出口被膜の少なくとも1つはゼオライトを含有する。
【0022】
この触媒付きすすフィルターの一つの態様においては、壁流基材は第1の入口被膜と出口被膜からなる。
【0023】
この触媒付きすすフィルターのもう一つの態様においては、入口通路の内壁は、入口壁と第1の入口被膜の間に介在された第2の入口被膜も有する。第2の入口被膜は入口末端から基材の出口末端まで延びる。
【0024】
第2の入口被膜を有するしかるべき態様においては、第2の入口被膜は第2の入口白金族金属成分(a second inlet platinum group metal component)を有する。通常、第2の入口白金族金属成分は、第2の入口白金成分(a second inlet platinum component)、第2の入口パラジウム成分(a second inlet palladium component)、第2の入口ロジウム成分(a second inlet rhodium component)および第2の入口イリジウム成分(a second inlet iridium component)から選択される。これらの態様においては、第2の入口白金族金属成分は100g/ftまでの濃度で一般に存在し、そして好ましくは10〜100g/ftで存在し、そして更に好ましくは10〜60g/ftで存在する。
【0025】
この触媒付きすすフィルターの一つの好ましい態様においては、入口あるいは出口被膜の少なくとも1つは、0.1〜2.0g/inのガンマアルミナまたはシリカ−アルミナおよび0.05〜1g/inのセリア−ジルコニア−プラセオジミア複合体を含有する。
【0026】
この触媒付きすすフィルターのもう一つの好ましい態様においては、入口あるいは出口被膜の少なくとも1つは、0.1〜2.0g/inのガンマアルミナまたはシリカ−アルミナ、0.05〜1g/inのセリア−ジルコニア−プラセオジミア複合体;およびベータ−ゼオライト、鉄ドープされたベータゼオライト、USY−ゼオライトおよびZSM−5ゼオライトからなる群から選択される0.025〜0.25g/inのゼオライトを含有する。
【0027】
本発明のもう一つの態様は、すす、NOx、COおよび未燃焼炭化水素を含んでなって、この明細書で述べられる域で被覆されたすすフィルターを用いて浄化されたガス流を形成する排出ガス流を処理する方法に関する。この方法は、排出ガス流を触媒付きすすフィルターに通過させて、すす、NOx、COおよび未燃焼炭化水素を除去して、浄化されたガス流を形成することを含む。
【0028】
第2の局面においては、本発明は、入口域および入口軸方向の域の下流にある出口域を含む、触媒を被覆した壁流フィルター基材上に形成される排気物品に関する。入口域は、出口軸方向の域に対して入口域に配設された、比較的高い濃度の白金族金属成分を含有する。なかんずく、この排気物品は、最少の全体の白金族金属成分材料コストで排出ガス汚染物質の高転換をもたらす。この排気物品は、入口末端、出口末端、入口末端と出口末端の間に延びる基材軸方向の長さおよび壁流基材の内壁により規定される複数の通路を含んでなる壁流基材を有する。通路の少なくとも一部は入口末端で開口を有し、かつ出口末端で栓をされ、そして通路の少なくとも一部は出口末端で開口を有し、かつ入口末端で栓をされている。
【0029】
第1の触媒被膜は、壁流基材の内壁上で出口末端から第1の被覆末端まで配設されて、壁流基材の少なくとも一部分の長さに延びている。第1の触媒被膜は、第1の共形成されたセリア−ジルコニア−プラセオジミア複合体と第1の耐火性金属酸化物を含有する。
【0030】
第2の触媒被膜は、壁流基材の内壁上で出口末端から第2の被覆末端まで配設され、それにより入口域を規定する。入口域は、壁流基材の長さの50%以下であり、好ましくは壁流基材の長さの40%以下(そして、更に好ましくは30%以下)である。第2の触媒被膜は、第2の白金族金属成分(a second platinum group metal component)を含有する。
【0031】
この明細書で使用されるように、クレームを含んで、用語「第2の白金族金属成分(second platinum group metal components)」は、第2の触媒被膜(the second catalyst coating)中に存在する白金族金属またはこれらの酸化物を指す。同じように、用語「第1の白金族金属成分(first platinum group metal components)」は、第1の触媒被膜(the first catalyst coating)中に存在する白金族金属またはこれらの酸化物を指す。第1および第2の触媒被膜の両方に好ましい白金族金属成分は、白金、パラジウムおよびロジウム成分を含む。
【0032】
第2の局面の好ましい態様においては、第1の触媒被膜は壁流基材の長さの少なくとも80%に延びる。好ましくは、第1の触媒被膜は壁流基材の全長に延びる。
【0033】
第2の局面の一部の態様においては、第1の触媒被膜は、20〜80重量%の第1の共形成されたセリア−ジルコニア−プラセオジミア複合体と20〜80重量%の第1の耐火性金属酸化物を含有する。好ましくは、第1の触媒被膜は、40〜60重量%の第1の共形成されたセリア−ジルコニア−プラセオジミア複合体;および40〜60重量%の第1の耐火性金属酸化物を含有する。通常、第1の共形成されたセリア−ジルコニア−プラセオジミア複合体は、40〜80重量%のセリア、5〜25重量%のジルコニアおよび10〜50重量%のプラセオジミアを含有する。
【0034】
第1の触媒被膜は、本発明の第2の局面の一部の態様においては、第1の白金族金属成分を場合によっては含有し得る。存在する場合には、壁流基材は0.1〜10g/ftの第1の白金族金属成分を含有する。好ましい第1の白金族金属成分は第1の白金成分である。
【0035】
通常、第1の耐火性金属酸化物は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、シリカ−アルミナ、ゼオライト、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン、酸化イットリウムおよびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される。第2の局面の一つの好ましい態様においては、第1の耐火性金属酸化物は、少なくとも10m/gのBET表面積を有するガンマアルミナである。
【0036】
本発明の第2の態様においては、第2の白金族金属成分は、10〜250g/ftの濃度で入口域中に通常存在する。一つの好ましい態様においては、第2の白金族金属成分は、25〜200g/ftの濃度で入口域中に存在する。第2の白金族金属成分は、白金、パラジウムおよびロジウム成分からなる群から通常選択される。このような金属成分の相互に組み合わされて使用され得る。一つの好ましい態様においては、第2の白金族金属は第2の白金成分である。
【0037】
一般に、第2の触媒被膜は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、シリカ−アルミナ、ゼオライト、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム、酸化ランタンおよび酸化イットリウムからなる群から選択される第2の耐火性金属酸化物を更に含有する。好ましい第2の耐火性金属酸化物は少なくとも10m/gのBET表面積を有するガンマアルミナである。例えば、一部の態様においては、第2の白金族金属成分はガンマアルミナ上に担持される。
【0038】
第2の局面の一部の態様においては、第2の触媒被膜は第2の共形成されたセリア−ジルコニア−プラセオジミア複合体も含有する。一般に、第2の触媒被膜は、20〜80重量%の第2の共形成されたセリア−ジルコニア−プラセオジミア複合体;および20〜80重量%の第2の耐火性金属酸化物を含有する。好ましくは、第2の触媒被膜は、40〜60重量%の第2の共形成されたセリア−ジルコニア−プラセオジミア複合体と40〜60重量%の第2の耐火性金属酸化物を含有する。第2の共形成されたセリア−ジルコニア−プラセオジミア複合体は、40〜80重量%のセリア、5〜25重量%のジルコニアおよび10〜50重量%のプラセオジミアを一般に含有する。
【0039】
本発明の第2の態様の好ましい態様は、入口末端、出口末端、入口末端と出口末端の間に延びる基材軸方向の長さおよび壁流基材の内壁により規定される複数の通路を含む壁流基材を有する排気物品に関する。通路の少なくとも一部は入口末端で開口を有し、かつ出口末端で栓をされ、そして通路の少なくとも一部は出口末端で開口を有し、かつ入口末端で栓をされている。
【0040】
第1の触媒被膜は、壁流基材の内壁上で出口末端から第1の被覆末端まで配設され、そして壁流基材の長さの少なくとも80%に延びる。第1の触媒被膜は、20〜80重量%の第1の共形成されたセリア−ジルコニア−プラセオジミア複合体と20〜80重量%の第1のアルミナ成分を含有する。
【0041】
第2の触媒被膜は、壁流基材の内壁上で入口末端から第2の被覆末端まで配設され、それにより入口域を規定する。入口域は壁流基材の長さの50%以下である。第2の触媒被膜は第2の白金族金属成分を含有する。
【0042】
定義
次の用語は、この出願の目的には、下記に示すそれぞれの意味を有するものとする。
【0043】
「活性化アルミナ」は、ガンマ−、シータ−およびデルタアルミナの1つ以上を含んでなるBET高表面積アルミナの通常の意味を有する。
【0044】
「BET表面積」は、N吸着により表面積を求めるためのBrunauer、Emmett、Teller法を参照する通常の意味を有する。特記しない限り、この明細書中での触媒担体成分または他の触媒成分の表面積へのすべての参照は、BET表面積を意味する。
【0045】
「バルク形」は、材料(例えば、セリア)の物理的な形の記述に使用される場合には、ガンマアルミナなどのもう一つの材料上での溶液中に分散されたものと反対に、この材料が1〜15ミクロンあるいはそれ以下の直径のものであることができる離散粒子として存在するということを意味する。例として、本発明のある態様においては、例えばカ焼時にアルミナ粒子上に配設されるセリアに転換されるセリア前駆体の水溶液によりアルミナ粒子を含浸することと反対に、セリア粒子は、セリアがバルク形中に存在するようにガンマアルミナ粒子と混和される。
【0046】
「下流」および「上流」は、触媒域の記述に使用される場合には、排出ガス流の流れの方向中で検知される相対的位置を指す。
【0047】
「第1の入口白金族金属成分」(“first inlet platinum group metal component”)は、第1の入口被膜中に存在する白金族金属またはこれらの酸化物を指す。同じように、「第2の入口白金族金属成分」(“ second inlet platinum group metal components”)は、第2の入口被膜中に存在する白金族金属またはこれらの酸化物を指し、そして「出口白金族金属成分」(“outlet platinum group metal components”)は、出口被膜中に存在する白金族金属またはこれらの酸化物を指す。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は壁流フィルター基材(10)の斜視図を示す。
【図2】図2は第1の入口被膜と出口被膜を有する断面区分で見た本発明の壁流基材(10)の一つの態様を示す。
【図3】図3は第1の入口被膜、第2の入口被膜および出口被膜を有する断面区分で見た本発明の壁流基材(10A)の一つの態様を示す。
【図4】図4はすす装填量再生手順のグラフ表示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の一つの態様は、壁流フィルター基材上に形成される触媒付きすすフィルターに関する。壁流フィルター基材は触媒組成物により被覆される内壁を有する。すすフィルターは、フィルターの長さに沿った基材の内壁からの排出ガスの均質な流れを維持する。すすフィルターの被覆設計とその長さに沿って堆積される組成物の選択によって、触媒機能の効率と耐久性は、両方とも慣用的に設計される触媒付きすすフィルターよりも増大される。
【0050】
触媒付きすすフィルターは、排気のガス状成分(例えば、COおよびHC)とフィルター中に堆積される粒子状物質を同時に処理するための集積化された機能を提供する。被覆設計によって、このすすフィルターは、触媒が老化した後でもガス状汚染物質の燃焼を接触する能力を維持する。
【0051】
本発明の触媒付きすすフィルター(10)の一つの態様を図2中の断面区分で示す。壁流基材は複数の通路(2a、2b)を規定する内壁(1)を有する。通常基材の長さに沿って延びる入口通路(2a)と出口通路(2b)が存在する。入口通路が入口末端(3)
で開口を有し、そして出口末端(4)で閉じるように、基材は形成される。出口通路は基材の入口末端で閉じ、そして基材の出口末端で開いている。基材の内壁は多孔質であって、排出ガスの通過を可能とさせる。
【0052】
入口通路の内壁上に堆積されているのは、基材の入口末端から第1の入口被膜末端(5a)まで延びて、第1の入口被膜長さを規定する第1の入口被膜(5)である。第1の入口被膜長さは基材軸方向の長さよりも短かい。例えば、第1の入口被膜長さは基材軸方向の長さの20〜80%であることができる。好ましくは、第1の入口被膜長さは、基材の軸方向の長さの30〜70%、そして更に好ましくは40〜60%である。
【0053】
出口通路の内壁上に堆積されているのは、基材の出口末端から出口被膜末端(6a)まで延びて、出口被膜長さを規定する出口被膜(6)である。出口被膜長さは基材軸方向の長さよりも短かい。例えば、第1の入口被膜長さは基材軸方向の長さの20〜80%であることができる。好ましくは、出口被膜長さは、基材の軸方向の長さの30〜70%、そして更に好ましくは40〜60%である。
【0054】
第1の入口被膜と出口被膜長さの和は基材軸方向の長さに実質的に等しい。この明細書で使用されるように、クレームを含めて、被覆長さの和を基材軸方向の長さと比較する場合には、用語「実質的に等しい」は、比較すべき長さがお互いの5%以内であるということを意味する。
【0055】
第1の入口被膜と出口被膜の長さは基材を2つの軸方向の域に分割する。第1の入口被膜長さは基材の軸方向の長さに沿って上流域(7)を規定し、そして出口被膜長さは下流域(8)を規定する。
【0056】
運転中、ガス状汚染物質と粒子状物質の両方を含有する排気流は、入口チャンネル経由で基材に入る。排気流は基材の軸方向の長さに沿って進行し、上流域から下流域に通過する。入口通路は封鎖されているので、排気流は基材の触媒を被覆した内壁を通過しなければならない。基材の触媒被膜と内壁の両方は多孔質であり、流れのガス状成分は被覆と内壁から出口通路の中に通過することができる。しかしながら、粒子は基材の内壁中に堆積し、それにより排気流から除去される。出口通路が出口末端で開いている場合には、出口通路を通過する濾過されるガス流は出口末端経由で基材を出る。
【0057】
この触媒付きすすフィルターの代替の態様においては、壁流フィルター基材(10A)は、入口壁と第1の入口被膜の間に介在する第2の入口被膜(9)を含む(図3を参照)。第2の入口被膜は入口通路(2a)の内壁(1)上に配設され、そして基材の入口末端3から出口末端4まで延びる。入口通路の内壁はこの態様においては、第2の入口被膜に重なり、そして付着する、第1の入口被膜5も含む。第1の入口被膜は基材の入口末端4から第1の入口被膜末端(5a)まで延びて、第1の入口被膜長さを規定する。ここでも、第1の入口被膜長さは基材軸方向の長さよりも短かい。例えば、第1の入口被膜長さは基材軸方向の長さの30〜70%であることができ、そして好ましくは、基材の軸方向の長さの40〜60%である。
【0058】
出口通路(2b)の内壁上に堆積されているのは、出口末端4から出口被膜末端(6a)まで延びて、出口被膜長さを規定する出口被膜(6)である。ここでも、出口被膜長さは基材軸方向の長さよりも短かい。例えば、第1の入口被膜長さは基材軸方向の長さの20〜80%であることができる。好ましくは、第1の入口被膜長さは、基材の軸方向の長さの30〜70%、そして更に好ましくは40〜60%である。
【0059】
第1の入口被膜と出口被膜長さの和は基材軸方向の長さに実質的に等しい。第1の入口
被膜と出口被膜の長さは基材を2つの軸方向の域に分割する。第1の入口被膜長さは基材の軸方向の長さに沿って上流域(7)を規定し、そして出口被膜長さは下流域(8)を規定する。
【0060】
本出願人らは、本発明の物品で使用される被覆設計のしかるべき特徴が全体の汚染物質性能と耐久性を改善するということを見出した。第1に、第1の入口被膜組成物と出口被膜組成物の透過性は、基材の軸方向の長さに沿った内壁上の均質な透過性を確保するように調整される。第2に、触媒被膜は、充分に高い白金族金属成分濃度を壁流基材の上流域中に配設するように選択される。
【0061】
本発明の被覆設計の2つの局面は、被覆された基材が基材の内壁の任意の区分に対して均質な透過性を維持するということを確実にする。これらの局面は入口および出口被膜の長さと透過性を含む。
【0062】
第1に、入口および出口被膜長さの和は、本発明のすすフィルター中の基材軸方向の長さに実質的に等しい。第1の入口および出口被膜の被覆長さの注意深い制御は、基材の長さに沿った異なる内壁区分からの一貫性のない圧力低下のリスクを最小とする。例えば、内壁の1つの区分が隣接する区分よりも高い触媒被膜レベルを有するならば、高い被覆レベルの壁区分中の高い圧力低下が予期される。
【0063】
第2に、出口被膜の透過性が入口被膜の透過性に等しく調整される。少なくとも2つのパラメーターを使用して、被膜の透過性を調整することができる。出口組成物のウオッシュコート装填量を調整して、入口被膜のウオッシュコート装填量に合わせることができる。一般に、第1の入口および出口被膜は、第1の入口被膜/出口被膜0.5〜1.5のウオッシュコート装填量比で壁流基材上に存在する。更に好ましくは、第1の入口被膜/出口被膜の比は0.75〜1.25、例えば約1.0である。
【0064】
更には、第1の入口および出口被膜の透過性が釣り合うように、出口被膜の粒子サイズを調整することができる。例えば、組成物を基材の内壁上の被覆として配設する場合、小さな粒子サイズ(例えば、触媒担体の粒子サイズ)ほど低い透過性を生じる。一般に、入口および出口被膜で使用される耐火性金属酸化物担体は、粒子の95%が<5マイクロメーターの、そして好ましくは<3マイクロメーターの直径を有するようにミル掛けされる。
【0065】
これらのパラメーターの適切な最適化は、フィルターの軸方向の長さに沿った基材の内壁からの排出ガスの均質な流れを維持するすすフィルターの設計を可能とさせる。例として、すすフィルターを等価のウオッシュコート装填量(例えば、各々1.0g/in)を有する第1の入口および出口被膜により被覆した場合、第1の入口および出口被膜の両方に対する耐火性酸化物金属担体の粒子サイズはほぼ同一でなければならない。例えば、入口および出口被膜中の担体の粒子直径はお互いに約20%、そして更に好ましくは約10%以内である。
【0066】
基材の内壁中に配設される触媒被膜は、排気流が被覆から通過するときに、ガス状および粒子状成分の両方を処理する役割をする。
【0067】
通常、リーンバーン燃焼エンジン(例えば、ジーゼルエンジン)からの排気流のガス状成分はガス状未燃焼炭化水素、一酸化炭素およびNOを含有する。触媒被膜は、未燃焼炭化水素および一酸化炭素の二酸化炭素と水への酸化を促進する。この触媒被膜、特に白金族金属成分を含有する被膜はNOのNOへの酸化も促進する。
【0068】
触媒被膜は、排気流の粒子成分の酸化も促進し、そして基材の再生を促進する。粒子状物質は基材の内壁中に堆積し、内壁上に配設されている触媒を接触する。粒子状物質と触媒組成物の間の接触は、粒子状物質の燃焼とフィルター再生を促進する。
【0069】
本発明の好ましい態様においては、ガス状成分と粒子状物質の処理は、基材の上流および下流域の間で少なくとも部分的に隔離される。反応の隔離は、上流域中で基材の下流域中よりも高い白金族金属濃度を配設することにより達成される。好ましくは、上流域中に少なくとも60%の白金族金属成分が存在する。例えば、上流域中で濃縮された70%以上の白金族金属成分が存在することができる。一般に、上流域中に5〜180g/ftの白金族金属成分が存在する。例えば、上流域中に90〜170g/ftの、そして好ましくは120〜160g/ftの白金族金属成分が存在することができる。
【0070】
図2中に例示されている本発明の態様においては、第1の入口被膜は少なくとも1つの第1の入口白金族金属成分を含有し、そして出口被膜は出口白金族金属成分を場合によっては含有する。図3中に例示されている本発明の態様においては、第1の入口被膜は少なくとも1つの第1の入口白金族金属成分を含有し、そして第2の入口被膜は第2の入口白金族金属成分を場合によっては含有する。
【0071】
基材の上流域中に高い白金族金属濃度を配設することは、白金族金属の使用の効率を改善し、そして多数回の再生サイクル後でも基材の触媒機能の維持を可能とさせる。
【0072】
好ましい態様においては、下流域中よりも上流域中に高い白金族金属濃度を配設することは、ガス状成分転換の性能を改善する。排気流のガス状成分に対する排出物目標に適合するのに、粒子成分に対する標準に適合するのに必要とされるよりも高い白金族金属濃度が通常必要とされる。本発明のすすフィルター中の出口被膜の存在は、著しい比率のガス状成分が高白金族金属濃度を配設させた基材の上流域中の内壁を通過するということを確保する。特に、出口被膜は、大きい白金族金属濃度に伴なう高いウオッシュコート装填量による上流域における内壁中での圧力低下の増大を補償する。
【0073】
上流域中に高い白金族金属濃度を配設することは、すすの燃焼とフィルターの再生も支持する。白金族金属成分はNOのNOへの酸化を促進し、それにより排気流中のNO濃度を増加させる。NOは基材の内壁中に捕捉されるすすの燃焼に使用可能な強力な酸化物質として機能するために、高NO濃度が望ましい。特に、NOが酸化物質として機能する場合、粒子状物質のすす画分は、Oが酸化物質として働く場合に必要とされる温度よりも低い温度で燃焼可能である。基材の上流域中で増大したNO濃度を生成させることによって、NOは基材の出口末端に向かって流れ、そして高比率のすすが集められる下流域中で堆積されるすすの燃焼に使用されることが可能である。
【0074】
排気の粒子成分を燃焼させるには低濃度が通常必要であるために、下流域は上流域よりも比較的低い白金族金属濃度を有する。上述のように、上流域中よりもすすフィルターの下流域中で高比率の粒子状物質が集まり、そして燃焼する。
【0075】
被覆設計によって、多数回の再生サイクル後でもすすフィルターの触媒機能の維持が可能となる。いかなる特定の理論によっても束縛されるのではないが、本出願人らは、すすフィルターの再生に関連する温度分布に適合させるにはこの被覆設計が好適であると考える。再生に関連する高い温度、例えば>800℃は、高比率の粒子状物質が集まる基材の下流域中に主として存在する。このような高い温度は白金族金属含有触媒の触媒活性に有害な影響を及ぼす。しかしながら、前方(front)における高い濃度と反対に基材の後方(rear)においては低い白金族金属濃度が配設されるので、白金族金属成分の大部分は、すす燃焼に関連する高熱に比較的非暴露なままである。このように、この被覆設
計は、基材の上流域中に配設される白金金属成分の触媒活性を保持させる。
【0076】
出口被膜は少なくとも3つの触媒機能を果たす。第1に、出口被膜は圧力平衡化機能を果たす。言い換えれば、第1の入口被膜の堆積により引き起こされる、上流域中の内壁にわたる圧力増加は、下流域の内壁上に出口被膜を堆積することにより補償される。第2に、出口層被覆は、出口チャンネルまで貫流する任意のガス状汚染物質(例えば、COおよび未燃焼炭化水素)の酸化を促進する。特に、白金族金属成分を含有する出口被膜はこの機能を補助する。終わりに、出口被膜により促進される、反応から生成される熱は、基材の出口域を加熱するように機能して、すすの燃焼を助ける。
【0077】
壁流基材上の被覆の各々は、1つ以上の高表面積の耐火性金属酸化物、例えば高表面積のアルミナを含有するウオッシュコート組成物から形成される。結合剤および安定化剤などの他の添加物もこの組成物中に含めることができる。この組成物を被覆として基材に塗布する場合、成分の比率は、被覆された基材1立方インチ(例えば、表示された組成物により被覆される基材の容積、そして必ずしも全基材容積ではない)当たりの材料のグラム数として慣用的に表現される。この尺度は異なるモノリシック基材中の異なるガス流の通路セルサイズに対応するためである。この被膜は薄い被覆として内壁の表面上に配設され得るか、そして/あるいは多孔質壁をある程度浸透し得る。
【0078】
触媒成分を含有するこれらの被覆(「触媒被膜」)は、高表面積の耐火性金属酸化物上に担持される1つ以上の白金族金属成分を通常有する。白金族金属成分の場合には、堆積されるこれらの成分の比率は、被覆された基材1立方フィート当たりの材料のグラム数として普通表現される。好ましい触媒においては、この明細書中で挙げる白金族金属成分の重量は金属の重量を基準とする。好ましい白金族金属成分は、白金、パラジウム、ロジウムおよびイリジウム成分を含む。
【0079】
水溶性あるいは水分散性の白金族金属前駆体により含浸し、続いて乾燥および固定段階を行うことにより、白金族金属成分は高表面積の耐火性金属酸化物上に分散可能である。好適な白金族金属前駆体は、塩化カリウム白金、アンモニウム白金チオシアネート、アミンで可溶化された白金水酸化物、クロロ白金酸、硝酸パラジウム、塩化ロジウム、硝酸ロジウム、塩化ヘキサミンロジウムなどを含む。他の好適な白金族金属前駆体は当分野の熟練者には明白であろう。次に、含浸された成分はその上に固定された白金族金属と共に乾燥され得る。固定は、カ焼又は、白金族金属を水不溶性の形とせしめる酢酸処理によるかもしくは他の既知の手段によって行われ得る。カ焼時あるいは少なくとも触媒の初期相時に、このような化合物は、存在するならば、触媒的に能動的な元素状白金族金属またはその酸化物(例えば、白金族金属成分)に転換される。
【0080】
入口および出口被膜中で触媒担体としても機能する有用な耐火性金属酸化物は、同一あるいは異なることができる。耐火性酸化物は、アルミニウム、チタン、ケイ素、ジルコニウム、希土類金属およびこれらの組み合わせ物の酸化物などの材料から選択される。好ましい耐火性金属酸化物は、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ(ここで、シリカは担体の0.5〜10重量%を占める)、アルミノシリケート(非晶質あるいは結晶性であり得る)、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミアおよびアルミナ−希土類金属酸化物(例えば、アルミナ−セリア)、チタニア、チタニア−シリカ、チタニア−ジルコニアおよびチタニア−アルミナからなる群から選択される活性化された化合物である。
【0081】
一つの好ましい態様においては、耐火性金属酸化物は、好ましくはガンマアルミナおよびイータアルミナなどのガンマアルミナまたは活性化アルミナの一族の構成員を含むアルミナと、存在する場合には少量の、例えば約20重量パーセントまでの他の耐火性金属酸化物から好ましくは実質的に構成される。好ましくは、活性化アルミナは60〜300m
/gの比表面積を有する。
【0082】
他の好ましい態様においては、入口および出口被膜は、1つ以上の希土類金属酸化物を含有するウオッシュコートから好ましくは形成される。希土類金属酸化物は、セリウム、プラセオジウム、ランタン、ネオジムおよびサマリウムの1つ以上の酸化物から選択される。最も好ましくは、希土類金属酸化物は、セリウムあるいはプラセオジウム化合物を含み、最も好ましい希土類金属酸化物はセリウム酸化物(セリア)である。希土類金属酸化物担体は被覆中に1.5g/inまでの濃度で通常含まれる。好ましくは、このような成分は被覆中に0.2〜1.0g/inの濃度で含まれる。
【0083】
希土類金属酸化物はウオッシュコート組成物中にバルクの形で好ましくは含まれる。バルク形とは、この組成物が固体、好ましくは微細な粒子の形のものであり、更に好ましくは少なくとも約95重量%の粒子が0.1〜5.0マイクロメーターの、そして好ましくは3マイクロメーター未満の直径を通常有するような粒子サイズ分布を有するという意味である。バルク粒子の議論は、引用により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,714,694号および第5,057,483号が参照される。
【0084】
一部の態様においては、希土類金属酸化物担体は、共形成された複合体組成物としてのもう一つの耐火性金属酸化物と共に使用され得る。この組成物は、真の固溶体であり得るか、あるいは真の固溶体であり得ない複合体としてキャラクタリゼーション可能である混合物である。複合体はジルコニアと共に好ましくは形成される。特に好ましい組成物は、少なくとも10重量パーセントのセリアと少なくとも60重量パーセントのジルコニアを含有する共沈澱させたセリア−ジルコニア複合体である。好ましくは、共形成された複合体は少なくとも70重量パーセントのジルコニアを含有する。加えて、約0.3〜1cc/gの細孔容積を有する多孔質のセリア−ジルコニア複合体材料も使用され得る。
【0085】
この組成物は、セリアとジルコニアに加えて、ランタナ、ネオジミア、プラセオジミア、イットリアまたはこれらの混合物の1つ以上を場合によっては含有し得る。もう一つの好ましい希土類金属酸化物含有複合体担体は、約5〜20重量%のセリア、5〜30重量%のジルコニア、1〜10重量%のプラセオジミアおよび50〜80重量%のアルミナを含有する複合体である。
【0086】
存在する場合には、共形成された希土類金属酸化物−耐火性金属酸化物複合体は0.10g/in〜1.5g/inの濃度で存在する。
【0087】
ある態様においては、耐火性金属酸化物はナノ構造型材料から形成される。このような材料は、例えば0.1マイクロメーター以下の粒子直径を通常有する、小粒子サイズを有する。ナノ構造型材料は、例えばナノ−アルミナ、ナノ−シリカ−アルミナおよびナノセリア−ジルコニアを含む。ナノ構造型材料は、ナノ−β−ゼオライト、ナノ−Y−ゼオライトおよびナノ−ZSM−5ゼオライトなどのナノ結晶性ゼオライトも含む。ナノ構造型材料は、材料の小粒子サイズにより最少のウオッシュコート装填量を用いて壁流基材の内壁の区分の流れ特性を調整することにおいて特に有用であることができる。
【0088】
一部の態様においては、白金族金属成分もゼオライト担体上に分散可能(完全に、あるいは一部)である。白金族金属成分の担体として機能することに加えて、ゼオライト成分は、下記に述べるように組み込まれる場合、さもなくば排出ガスが比較的冷たい間触媒から処理されずに逃散する、未燃焼炭化水素を捕捉することができる。捕捉された炭化水素は、ゼオライト内で酸化されるか、あるいは捕捉された炭化水素の酸化を有効に接触するのに触媒組成物の温度が充分に高い場合にのみゼオライトから放出されるか、あるいはこの両方であると考えられる。
【0089】
ゼオライト成分は、例えばベーターゼオライト、Y−ゼオライト、ペンタシル(例えば、ZSM−5)、モルデナイトおよびこれらの混合物の群から選択されるゼオライトであることができる。本発明で使用されるゼオライトは通常ドーピングされ、例えば水素、白金、ロジウム、パラジウム、イリジウム、銅、鉄、ニッケル、クロムおよびバナジウムの1つ以上からなる群から選択されるイオンまたは中性の金属含有種によりイオン交換されるか、あるいは含浸される。好ましくは、ゼオライト成分は白金と鉄の一方あるいは両方によりドーピングされる。
【0090】
金属または水素によるゼオライトのドーピングを指すのに使用される、用語「ドーピングされている」は、金属あるいは水素部分がゼオライトの細孔内に組み込まれているということを意味する。これは、ゼオライトの表面上に分散されていることから識別されるが、ゼオライトの細孔内ではいかなる顕著な程度でも識別されない。ゼオライトのドーピングは、ゼオライトを金属カチオン(または水素イオンをもたらす酸)を含有する溶液により繰り返し洗うか、あるいはゼオライト細孔をこのような溶液により溢れさせる、既知のイオン交換法により好ましくは行われる。しかしながら、この定義された用語は、触媒部分、例えば1つ以上の金属をイオンまたは中性の金属含有種または水素イオンとして特にゼオライトのカチオンの交換または置換によりゼオライトの細孔内に組み込むためのいかなる好適な方法も含む。ゼオライトをドーピングする方法は、例えば開示が引用により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,274,107号で開示されている。
【0091】
通常、本発明の目的には、ゼオライト成分は、耐火性金属酸化物担体(例えば、シリカアルミナおよび/またはバルクセリア)との混和物として使用される。一般に触媒被膜中には約0.025〜0.25g/inのゼオライト成分が存在する。
【0092】
ジルコニウム成分、好ましくはジルコニアは入口および/または出口被膜中に包含可能である。これらの成分は安定化剤と促進剤の両方として作用する。通常、入口および出口触媒被覆の各々の中に約0.02g/in〜0.15g/inの、そして好ましくは約0.05g/inの酸化ジルコニウムが存在する。
【0093】
場合によっては、安定化剤は入口あるいは出口の触媒区分のいずれかの中に包含可能である。米国特許第4,727,052号で開示されているように、活性化アルミナなどの担体材料は、高温でのガンマからアルファへの望ましくないアルミナ相変態を遅延させるために熱安定化可能である。安定化剤は、マグネシウム、バリウム、カルシウムおよびストロンチウムからなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ土類金属成分、好ましくはストロンチウムとバリウムから選択可能である。存在する場合には、安定化剤材料は、被覆中約0.01g/in〜0.15g/inで添加される。
【0094】
第1の/第2の入口あるいは出口被膜のいずれかとして使用され得る一つの好ましい被膜組成物は、0.1〜2.0g/inのガンマアルミナまたはシリカ−アルミナ(例えば、アルミナ上の1.5重量%のシリカ);および
0.05〜1g/inのセリア−ジルコニア−プラセオジミア複合体(5−60重量%のセリア、30〜85重量%のジルコニア、5〜10重量%のプラセオジミアを含有する)
を含有する。
【0095】
この被膜組成物は1つ以上の白金族金属成分を場合によっては含有する。
【0096】
第1の/第2の入口あるいは出口被膜のいずれかとして使用され得るもう一つの好ましい被膜組成物は、
0.1〜2.0g/inのガンマアルミナまたはシリカ−アルミナ(例えば、アルミナ上の1.5重量%のシリカ);
0.05〜1g/inのセリア−ジルコニア−プラセオジミア複合体(5−60重量%のセリア、30−85重量%のジルコニア、5−10重量%のプラセオジミアを含有する);および
ベータ−ゼオライト、鉄ドープされたベータゼオライト、USY(超安定Y)−ゼオライトおよびZSM−5ゼオライトからなる群から選択される0.025〜0.25g/inのゼオライト
を含有する。
【0097】
この被膜組成物は1つ以上の白金族金属成分を場合によっては含有する。
【0098】
壁流基材
壁流基材は、基材の長手方向の軸に沿って延びる、複数の微細で、実質的に平行なガス流通路を有する。通常、各通路は基材体の一方の末端で封鎖され、交互する通路は相対する末端面で封鎖されている。このようなモノリシックキャリアは、更に少ない数を使用し得るが、断面1平方インチ当たり約400本までの流れ通路(または「セル」)を含み得る。例えば、キャリアは、1平方インチ当たり約7〜400セル、更に通常約100〜400セル(「cpsi」(cells per square inch))を有し得る。セルは、長方形、正方形、円形、卵形、三角形、六角形または他の多角形である断面を有することができる。
【0099】
好ましい壁流フィルター基材は、コーディエライト、α−アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカ−マグネシアまたはジルコニウムシリケートなどのセラミック様材料から、あるいはステンレススチールなどの耐火性金属から構成される。好ましい壁流基材はコーディエライトと炭化ケイ素から形成される。このような材料は、環境、特に排気流の処理で遭遇する高温に耐えることが可能である。
【0100】
セラミック壁流基材は約40〜70%の多孔率を有する材料から通常形成される。例えばいくつかの構成においては、60%の多孔率と約15〜25ミクロンの平均細孔直径を有する壁流基材は適切な排気流をもたらす。
【0101】
加えて、セル密度と壁の厚さの両方は、排気系において観察される排気流特性と圧力低下に影響を及ぼす。17ミルの壁を有する100cpsiの壁流フィルターを使用する構成および300cpsi且つ12〜14ミルの壁付きの壁流基材は両方とも、本発明の物品において有用であるフィルター基材中の流れと圧力低下をもたらす。
【実施例】
【0102】
次の実施例は本発明を更に例示するが、勿論いかなる形でもその範囲を制限するように解釈されるべきでない。
【0103】
実施例1−均質な触媒被膜:参照触媒A
粒子状物質(すす)を捕捉し、そして残存する炭化水素と燃焼時にジーゼル排気中に生成するCOを減少させる意図で使用される炭化ケイ素フィルター上にこの触媒組成物を被覆した。
【0104】
313gのアミンで可溶化された白金水酸化物(約17%Pt)溶液を546gの1.5%のシリカアルミナ担体(120m/g)上に含浸し、続いて酢酸溶液を用いてPtを固定することにより、この触媒被膜を作製した。この材料を約40%固体のスラリーと
し、8ミクロン未満の粒子サイズまでミル掛けした。ミル掛け後、1100gのCeO−Pr11−ZrO複合体(30重量%のセリア、10重量%のプラセオジミアおよび60重量%のジルコニアを含有する)をこのスラリーに添加し、続いて酢酸ジルコニル(30%ZrOで296g)を添加し、そして5ミクロン未満までミル掛けした。次に、このスラリーを約30%固体まで希釈した。このスラリーを使用して、炭化ケイ素壁流フィルター基材(寸法5.66”×6.0”、300cpsi)の壁の一方をカ焼の後で測定して約1g/inおよびPt=75g/ftのウオッシュコート装填量まで被覆した。このフィルターの被覆側をこの評価で使用されるジーゼルエンジンから排出される排出ガスの入口として使用した。この被覆されたフィルター基材を参照触媒Aと呼ぶ。
【0105】
実施例2:触媒B
このすすフィルターは図3に示す被覆設計を有し、そして第1の入口被膜、第2の入口被膜および出口被膜を有するものであった。
【0106】
異なる濃度の白金と異なる固体含量を除いて、この被覆の各々のためのスラリーを同様に作製した。白金濃度と固体含量を調整して、各被覆に対する標的ウオッシュコート装填量を得た。このPt塩溶液をガンマ−アルミナ上に含浸させることにより、このスラリーを作製した。酢酸を使用して、Ptを沈澱させた。水と若干の酢酸を添加することにより、この含浸されたアルミナを約40%固体のスラリーとした。酢酸ジルコニウムを添加し、そしてこのスラリーを5ミクロン未満の粒子サイズまでミル掛けした。3つのスラリーを上記の手順に基づき作製し、そして各スラリーを次の順序で被覆した。
【0107】
第2の入口被膜:このフィルターの入口の100%を被覆して、カ焼重量基準で約0.27g/inのウオッシュコート装填量、0.05g/inのジルコニア濃度および約30g/ftのPt濃度を得た。入口を被覆した後、このフィルターを乾燥し、そして450℃で1時間カ焼した。
【0108】
第1の入口被膜:このフィルターの入口の50%を被覆して、カ焼重量基準で約0.45g/inのウオッシュコート装填量、0.05g/inのジルコニア濃度および約60g/ftのPt濃度を得た。入口を被覆した後、このフィルターを乾燥し、そして450℃で1時間カ焼した。
【0109】
出口被膜:このフィルターの出口の50%を被覆して、カ焼重量基準で約0.27g/inのウオッシュコート装填量、0.05g/inのジルコニア濃度および約30g/ftのPt濃度を得た。入口を被覆した後、このフィルターを乾燥し、そして450℃で1時間カ焼した。
【0110】
この炭化ケイ素フィルター上の平均ウオッシュコート装填量は約0.6g/inであり、Pt濃度は75g/ftであった。この被覆されたフィルター基材を参照触媒Bと呼ぶ。
【0111】
実施例3:触媒C
このすすフィルターは図3に示す被覆設計を有し、そして第1の入口被膜と出口被膜を有するものであった。
【0112】
異なる濃度の白金と異なる固体含量を除いて、この被覆の各々のためのスラリーを同様に作製した。白金濃度と固体含量を調整して、各被覆に対する標的ウオッシュコート装填量を得た。このPt塩溶液をガンマ−アルミナ上に含浸させることにより、このスラリーを作製した。酢酸を使用して、Ptを沈澱させた。水と酢酸を添加することにより、この含浸されたアルミナを約40%固体のスラリーとした。酢酸ジルコニウムを添加し、そし
てこのスラリーを5ミクロン未満の粒子サイズまでミル掛けした。2つのスラリーを上記の手順に基づき作製し、そして各スラリーを次の順序で被覆した。
【0113】
第1の入口被膜:このフィルターの入口の50%を被覆して、カ焼重量基準で約0.6g/inのウオッシュコート装填量、0.05g/inのジルコニア濃度および約100g/ftのPt濃度を得た。入口を被覆した後、このフィルターを乾燥し、そして450℃で1時間カ焼した。
【0114】
出口被膜:このフィルターの出口の50%を被覆して、カ焼重量基準で約0.6g/inのウオッシュコート装填量、0.05g/inのジルコニア濃度および約50g/ftのPt濃度を得た。出口を被覆した後、このフィルターを乾燥し、そして450℃で1時間カ焼した。
【0115】
この炭化ケイ素フィルター上の平均ウオッシュコート装填量は約0.6g/inであり、Pt濃度は75g/ftであった。この被覆されたフィルター基材を参照触媒Cと呼ぶ。
【0116】
実施例4:参照触媒A、触媒Bおよび触媒Cに対する触媒試験手順および評価結果
被覆されたすすフィルターの使用時間の間、多数回の再生イベントが行われ、触媒被膜の活性の減少を生じさせる。
【0117】
車両を使用して、ECE規制83、ECE規制70/220EC98169に規定されたNew European Driving Cycle(NEDC)試験にしたがってこれらの被覆されたフィルターを評価した。この評価で使用されるサイクル数は14であった。
【0118】
図4は、実際のモード運転において起こる老化の影響をシミュレーションする評価手順を示す。被覆されたすすフィルターに10g/Lのすすを装填し、このすすを着火し、次に速度を低下させて、800℃の標的温度により発熱を生じさせた。
【0119】
表1は、均質に被覆された参照と均質な流れ分布の域化された概念の技術の間の比較を示す。この表は、すす装填量/再生の前(「新鮮」と呼ばれる)および後での車両評価後のバッグの結果における域化された技術の改善を示す。
【0120】
【表1】

【0121】
触媒Cはこのタイプの老化の後の最良の性能を示した。これは均質な被覆よりも殆ど50%ほど炭化水素とCOを低減させた。これは、触媒Cが高老化条件に耐える能力があるということを明らかに示す。触媒Cは最良の性能を示したが、触媒Bは、均質な被覆触媒Aよりも著しい性能および耐久性の改善をなお示した。
【0122】
実施例4:均質な触媒被膜:参照触媒D
粒子状物質(すす)を捕捉し、かつ残存炭化水素と燃焼時にジーゼル排気中に生成するCOを減少させる意図で使用される炭化ケイ素フィルター上にこの触媒を被覆した。アミンで可溶化された白金水酸化物(約17%Pt)溶液をアルミナベースの担体上に含浸し、続いて酢酸溶液を用いてPtを固定することにより、この触媒被膜を作製した。この材料を約40%固体のスラリーとし、5ミクロン未満の粒子サイズまでミル掛けした。ミル掛け後、1100gのCeO−Pr11−ZrO複合体(30重量%のセリア、10重量%のプラセオジミアおよび60重量%のジルコニアを含有する)をこのスラリーに添加し、続いて酢酸ジルコニル(30%ZrOで296g)を添加し、そして5ミクロン未満までミル掛けした。次に、このスラリーを約25%固体まで希釈した。このスラリーを使用して、炭化ケイ素フィルター(寸法5.66”×6.0”、300cpsi)の入口(入口のみ)壁をカ焼後に測定して約1g/inおよびPt=75g/ftのウオッシュコート装填量まで被覆した。この触媒組成物は、0.6g/inのAl、0.3g/inのCeO−Pr11−ZrO、0.05g/inのZrOおよび90g/ftのPtを含有していた。このフィルターの被覆側をこの評価で使用されるジーゼルエンジンから排出される排出ガスの入口として使用した。この被覆されたフィルター基材を参照触媒Dと呼ぶ。
【0123】
実施例5:触媒E
このすすフィルターは図2に示す被覆設計を有し、そして第1の入口被膜と出口被膜を有するものであった。
【0124】
異なる濃度の白金と異なる固体含量を除いて、この被覆の各々のためのスラリーを同様に作製した。白金濃度と固体含量を調整して、各被覆に対する標的ウオッシュコート装填量を得た。アミンで可溶化された白金水酸化物溶液をアルミナベースの担体(1.5%シリカ/アルミナ)上に含浸することにより、このスラリーを作製した。酢酸を使用して、Ptを沈澱させた。水と酢酸を添加することにより、この含浸されたアルミナを約40%固体のスラリーとした。
【0125】
酢酸ジルコニウムを添加し、そしてこのスラリーを5ミクロン未満の粒子サイズまでミル掛けした。2つのスラリーを上記の手順に基づき作製し、そして各スラリーを次の順序で炭化ケイ素フィルター(寸法5.66”×6”、300cpsi)に被覆した。
【0126】
第1の入口被膜:このフィルターの入口の50%を被覆して、カ焼重量基準で約約0.735g/inのウオッシュコート装填量を得た。この第1の入口被膜は、0.6g/inのSiO−Al、0.05g/inのZrOおよび120g/ftのPtを含有していた。入口を被覆した後、このフィルターを乾燥し、そして450℃で1時間カ焼した。
【0127】
出口被膜:このフィルターの出口の50%を被覆して、カ焼重量基準で約0.735g/inのウオッシュコート装填量を得た。この出口被膜は、0.6g/inのSiO−Al、0.05g/inのZrOおよび60g/ftのPtを含有していた。出口を被覆した後、このフィルターを乾燥し、そして450℃で1時間カ焼した。
【0128】
この炭化ケイ素フィルター上の平均ウオッシュコート装填量は約0.6g/inであり、Pt濃度は90g/ftであった。この被覆されたフィルター基材を参照触媒Eと呼ぶ。
【0129】
実施例6:触媒F
このすすフィルターは図2に示す被覆設計を有し、そして第1の入口被膜と出口被膜を有するものであった。
【0130】
異なる濃度の白金と異なる固体含量を除いて、この被覆の各々のためのスラリーを同様に作製した。白金濃度と固体含量を調整して、各被覆に対する標的ウオッシュコート装填量を得た。アミンで可溶化された白金水酸化物溶液をアルミナベースの担体(1.5%シリカ/アルミナ)上に含浸することにより、このスラリーを作製した。酢酸を使用して、Ptを沈澱させた。水と酢酸を添加することにより、この含浸されたアルミナを約40%固体のスラリーとした。
【0131】
酢酸ジルコニウムを添加し、そしてこのスラリーを5ミクロン未満の粒子サイズまでミル掛けした。2つのスラリーを上記の手順に基づき作製し、そして各スラリーを次の順序で炭化ケイ素フィルター(寸法5.66”×6”、300cpsi)に被覆した。
【0132】
第1の入口被膜:このフィルターの入口の50%を被覆して、カ焼重量基準で約約0.735g/inのウオッシュコート装填量を得た。この第1の入口被膜は、0.6g/inのSiO−Al、0.05g/inのZrOおよび150g/ftのPtを含有していた。入口を被覆した後、このフィルターを乾燥し、そして450℃で1時間カ焼した。
【0133】
出口被膜:このフィルターの出口の50%を被覆して、カ焼重量基準で約0.735g/inのウオッシュコート装填量を得た。この出口被膜は、0.6g/inのSiO−Al、0.05g/inのZrOおよび30g/ftのPtを含有していた。出口を被覆した後、このフィルターを乾燥し、そして450℃で1時間カ焼した。
【0134】
この炭化ケイ素フィルター上の平均ウオッシュコート装填量は約0.6g/inであり、Pt濃度は90g/ftであった。この被覆されたフィルター基材を参照触媒Fと呼ぶ。
【0135】
実施例7:触媒D、EおよびFの老化
老化の一つの組においては、この3つの触媒付きすすフィルターを620℃で12時間老化させた。老化の第2の組においては、この被覆されたすすフィルターをエンジンベンチ上で10%スチーム/空気中850℃で12時間老化させた。
【0136】
触媒D、EおよびFの評価
車両を使用して、ECE規制83、ECE規制70/220EC98169に規定されたNew European Driving Cycle(NEDC)試験にしたがってこれらの被覆されたフィルターを評価した。試験サイクル内の異なるバッグを集めることにより、テールパイプから放出されるCOとHCを測定する。用語「安定化された」は620℃で20分間処理された新鮮な触媒を指す。用語「老化した」は10%スチーム/空気中850℃で5時間処理された触媒を指す。この結果を表2に示す。
【0137】
【表2】

【0138】
本発明を好ましい態様に重点を置いて述べてきたが、好ましい器具および方法における変形が使用され得ること、そして本発明がこの明細書で特定して説明したのと他の方法で実施され得るということを意図していることは、当業界の通常の技術を持った者には明白であろう。したがって、本発明は、本発明の精神および添付のクレームにより規定される範囲内に網羅されるすべての改変を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口末端、出口末端、入口末端と出口末端の間に延びる基材軸方向の長さおよび壁流基材の内壁により規定される複数の通路を含んでなる壁流基材であって;通路の少なくとも一部が入口末端で開口を有し、かつ出口末端で栓をされ、そして通路の少なくとも一部が出口末端で開口を有し、かつ入口末端で栓をされているもの;
壁流基材の内壁上で出口末端から第1の被覆末端まで配設され、そして壁流基材の長さの少なくとも一部の間延びる第1の触媒被膜であって;第1の触媒被膜が第1の共形成されたセリア−ジルコニア−プラセオジミア複合体と第1の耐火性金属酸化物を含んでなるもの;および
壁流基材の内壁上で入口末端から第2の被覆末端まで配設され、それにより入口域を規定し、入口域が壁流基材の長さの50%以下である第2の触媒被膜であって;第2の触媒被膜が第2の白金族金属成分を含んでなるもの
を含んでなる排気物品。
【請求項2】
第1の触媒被膜が壁流基材の長さの少なくとも80%に延びる請求項1に記載の排気物品。
【請求項3】
第1の触媒被膜が壁流基材の全長に延びる請求項1に記載の排気物品。
【請求項4】
第1の触媒被膜が第1の白金族金属成分を更に含んでなる請求項1に記載の排気物品。
【請求項5】
第2の触媒被膜が第2の共形成されたセリア−ジルコニア−プラセオジミア複合体を更に含んでなる請求項1に記載の排気物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−99748(P2013−99748A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−2484(P2013−2484)
【出願日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【分割の表示】特願2007−531336(P2007−531336)の分割
【原出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(308009565)バスフ・カタリスツ・エルエルシー (10)
【Fターム(参考)】