圧力式炊飯器
【課題】2個の圧力弁を設けて鍋内の圧力を調節して炊飯する圧力式炊飯器を提供する。
【解決手段】鍋内を大気圧以上に昇圧して炊飯する圧力式炊飯器において、制御装置は、炊飯プログラムを記憶する記憶手段を備え、記憶手段には、鍋内の炊飯量に対応させて、沸騰維持工程における圧力弁の選択並びに開回数及び開時間を記憶しておき、制御装置は、沸騰維持工程において、量判定手段で判定された炊飯量に応じて、2個の圧力弁のうちのいずれか一方、又は双方の圧力弁の選択を前記記憶手段から呼出して作動させる弁選択・作動手段と、前記弁選択・作動手段で選択された圧力弁の開回数及び開時間を記憶手段から呼出して制御する弁開回数・時間制御手段とを備えている。
【解決手段】鍋内を大気圧以上に昇圧して炊飯する圧力式炊飯器において、制御装置は、炊飯プログラムを記憶する記憶手段を備え、記憶手段には、鍋内の炊飯量に対応させて、沸騰維持工程における圧力弁の選択並びに開回数及び開時間を記憶しておき、制御装置は、沸騰維持工程において、量判定手段で判定された炊飯量に応じて、2個の圧力弁のうちのいずれか一方、又は双方の圧力弁の選択を前記記憶手段から呼出して作動させる弁選択・作動手段と、前記弁選択・作動手段で選択された圧力弁の開回数及び開時間を記憶手段から呼出して制御する弁開回数・時間制御手段とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍋内を大気圧以上に昇圧して炊飯する圧力式炊飯器に係り、さらに詳しくは、2個の圧力弁を設けて鍋内の圧力を調節して炊飯する圧力式炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電気炊飯器(以下、炊飯器という)は、マイクロコンピュータが搭載されて、このマイクロコンピュータによって、白米・玄米などの米種に応じた米種炊飯メニュー、或いは硬め・柔らかめなどを調節してお好みの硬さに炊飯できるお好み炊飯メニューなどの炊飯ができるようになっている。この炊飯器は、米と水とからなる炊飯物を入れる鍋と、この鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段と、この加熱手段を制御する制御手段と、炊飯メニューを選定するメニュー選定手段とを備え、所定の炊飯メニューが選定されると、制御手段は、その炊飯メニューに対応して、鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、この沸騰状態を維持して米のデンプンを糊化させて炊き上げる沸騰維持工程、及び炊き上ったご飯から余分な水分を除去するとともに糊化を更に促進させる蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程を実行して、炊飯している。
【0003】
このような炊飯器は、上記加熱手段に、電熱ヒーター又は電磁誘導コイルを用いて、これらのヒーター熱源を鍋底に設置して、鍋底から鍋内の炊飯物を加熱している。ところが、この構造の炊飯器は、鍋底にヒーター熱源を設置するので、熱源に最も近い鍋底内壁面が集中的に加熱されて高温となり、まず、この内壁面に接触している炊飯物が高温に加熱されて、この高温度が内壁面から離れるにしたがって降下し、炊飯物の中央部が低くなり、そして、この中央部上方の部分が最も低くなって、鍋底内壁面と炊飯物の中央上方部との間に温度差が発生する。そのために、炊き上がったご飯は、この温度差に起因して、全体が均一に炊き上がらずに不均一になる、いわゆる炊きムラが発生することがある。
【0004】
これまでの炊飯器は、上記のような課題を抱えているので、この課題を解決するために、炊飯中に鍋内の炊飯物を攪拌するようにして炊き上げる炊飯器が提案されている。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、鍋内を大気圧以上に昇圧して、沸騰維持工程において鍋内を所定回数に亘って減圧して、これらの減圧作用により鍋内の炊飯物を攪拌するようにした圧力式炊飯器が記載されている。具体的には、この炊飯器は、炊飯物を入れる鍋と、この鍋を収容し鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、この炊飯器本体の一側に枢支して鍋及び炊飯器本体の開口を覆う蓋体と、この蓋体に装着されて鍋内の圧力を調整する圧力弁と、この圧力弁を開放制御する圧力弁開放機構と、各種の炊飯コースを表示して選択する表示操作部と、表示操作部で選択された炊飯コース/メニューに基づいて加熱手段及び圧力弁開放機構を制御して鍋内の炊飯物を所定温度に加熱して、吸水工程、立上加熱工程、沸騰維持工程及び蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程を実行する制御装置とを備え、制御装置は、立上加熱工程において、鍋内を大気圧以上(1.10〜2.20気圧)に昇圧して、次の沸騰維持工程では圧力弁を少なくとも1回以上強制的に単位時間だけ開放させて沸騰中の鍋内圧力を大気圧近傍まで一気に低下させる制御をして炊飯している。
【0006】
この圧力式炊飯器によれば、鍋内を大気圧以上、すなわち、1.10〜2.20気圧に昇圧して、沸騰維持工程中に圧力弁を少なくとも1回以上強制的に開放するので、この圧力弁の開放時に鍋内が高圧状態から大気圧近傍まで一気に低下し、鍋内に激しい沸騰現象、いわゆる突沸現象が発生する。この突沸現象により鍋内の炊飯物が攪拌されるため、炊飯ムラの無い美味しいご飯が炊上がる。また、同様の構造を備えた圧力式炊飯器において、炊飯量に応じて、圧力弁の開回数及び開時間の少なくとも一方を変更することによって、炊飯量の大小に左右されずに炊きムラが生じないようにして炊飯するものも下記特許文献2に記載されている。さらに、これらの特許文献1、2の炊飯器は、圧力弁が1個となっているが、2個の圧力弁を設け、同様の攪拌を行なうようにしたものも下記特許文献3に記載されている。なお、これらの特許文献1〜3は、本件出願人の出願に係るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3851293号公報(段落〔0031〕〜〔0036〕、図6)
【特許文献2】特開2006−325720号公報(段落〔0019〕、図5)
【特許文献3】特開2008−48766号公報(段落〔0011〕、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1〜3の炊飯器は、いずれも沸騰維持工程中に圧力弁を強制的に開放させることにより、加圧状態にある鍋内を減圧し、この減圧により鍋内に突沸現象を生じさせて、米粒を攪拌、いわゆる米粒を踊らせてかき混ぜるので、炊きムラがない炊き上がりとなる。
【0009】
しかしながら、これらの炊飯器でも、炊飯量により、攪拌過多になり、一方でまた攪拌不足となり、これらの攪拌過多及び不足により、ご飯の炊き崩れ或は炊きムラが発生することが分った。すなわち、炊飯量が少ないときに、圧力弁の開時間を長く、しかも開回数を多くすると、攪拌が激しすぎた攪拌過多となる。この攪拌過多により、米粒の割れなどが生じて炊き上がったご飯が炊き崩れてしまい、味も劣ったものとなることがある。また、炊飯量が多いときに、圧力弁の開時間を長く、開回数を多くしても、炊飯量が多いので攪拌不足となり、炊きムラが発生することがある。このとき、圧力弁の開時間を長く、しかも開回数を多くすると、鍋内の圧力が低下し過ぎて圧力炊飯ができなくなるので美味しさが欠けたものとなる。また、圧力弁の開時間を長く、開回数を多くすると、うまみ成分のおねばの噴出量が多くなって、貯留タンクの容量を超えて、外部へ吹き零れることがある。なお、これらの炊飯器でも、上記特許文献3のものは、2個の圧力弁を設けているが、この炊飯器においても、同様の課題が潜在していることが分った。
【0010】
そこで、本発明は、従来技術が抱える課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、2個の圧力弁を設けて、炊飯量の増大に伴い、沸騰維持工程で2個の圧力弁のいずれか一方又は双方が所定回数開放して、鍋内の炊飯物が効率よく攪拌され、特に、炊飯量が大のときにも、攪拌不足が発生しないようにした圧力式炊飯器を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、上記の目的を有し、白米炊き分けメニューふつう炊飯のときに、炊飯量の増大に伴い、沸騰維持工程で2個の圧力弁の開放回数を多くしても、鍋内の炊飯物が効率よく攪拌されるとともに、おねばの吹き零れがないようにした圧力式炊飯器を提供することにある。
【0012】
さらに、本発明の他の目的は、玄米系の炊飯のときに、沸騰維持工程で前記2個の圧力弁の双方が所定回数開放されて、鍋内の炊飯物が効率よく攪拌され、特に、炊飯量の大のときにも、攪拌不足が発生しないようにした圧力式炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本願の請求項1に記載の圧力式炊飯器は、米と水とを含む炊飯物を入れる鍋と、前記鍋を収容して前記炊飯物を加熱する加熱手段を設けた炊飯器本体と、前記鍋及び炊飯器本体の開口を塞ぐ開閉自在な蓋体と、前記蓋体に配設した2個の圧力弁と、前記加熱手段及び圧力弁を制御して、吸水工程、立上加熱工程及び沸騰維持工程を含む一連の炊飯工程を実行し、前記沸騰維持工程では前記圧力弁を所定の開時間で所定回数間歇的に開放制御する炊飯プログラム及び前記鍋内の炊飯量を判定する量判定手段を有する制御装置と、米種を含む炊飯コース/メニューを選択するコース選択手段とを備え、前記鍋内を大気圧以上に昇圧して炊飯する圧力式炊飯器において、前記制御装置は、前記炊飯プログラムを記憶する記憶手段を備え、前記記憶手段には、前記鍋内の炊飯量に対応させて、前記沸騰維持工程における前記圧力弁の選択並びに開回数及び開時間を記憶しておき、前記制御装置は、前記沸騰維持工程において、前記量判定手段で判定された炊飯量に応じて、前記2個の圧力弁のうちのいずれか一方、又は双方の圧力弁の選択を前記記憶手段から呼出して作動させる弁選択・作動手段と、前記弁選択・作動手段で選択された圧力弁の開回数及び開時間を前記記憶手段から呼出して制御する弁開回数・時間制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載の圧力式炊飯器において、前記記憶手段には、さらに、硬さ炊き分けメニューに対応させて、前記沸騰維持工程における前記圧力弁の選択並びに開回数及び開時間を記憶しておき、
前記制御装置は、前記沸騰維持工程において、さらに、前記コース選択手段で選定された硬さ炊き分けメニューに応じて、前記弁選択・作動手段は、前記2個の圧力弁のうちのいずれか一方、又は双方の圧力弁を選択し、前記弁開回数・時間制御手段は前記弁選択・作動手段で選択された圧力弁の開回数及び開時間を制御するとことを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の圧力式炊飯器において、前記コース選択手段で白米が選定されたときに、前記弁選択・作動手段は、所定の基準炊飯量以下のときに、前記2個の圧力弁のうち、一方を閉成した状態にして他方のみを所定の開回数及び開時間開閉させ、前記基準炊飯量を超える炊飯量のときに前記2個の圧力弁を同時に所定の開回数及び開時間開閉させることを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明は、請求項3に記載の圧力式炊飯器において、前記制御装置は、前記コース選択手段で白米・ふつうメニューが選定されたときに、前記沸騰維持工程において、前記圧力弁の開回数が基準回数を超えたときに、開時間を前記基準回数前の開時間に比べて短くして開閉させることを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明は、請求項3に記載の圧力式炊飯器において、前記制御装置は、前記コース選択手段で白米・かためメニューが選定されたときに、沸騰維持工程において、前記圧力弁が所定回数開閉された後に、開成して沸騰維持工程を続行することを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1に記載の圧力式炊飯器において、前記記憶手段は、玄米に対応させて、前記沸騰維持工程における前記圧力弁の開回数及び開時間を記憶しておき、前記制御装置は、前記沸騰維持工程において、さらに、前記コース選択手段で選定された玄米に応じて、前記弁選択・作動手段は、前記圧力弁を選択し、前記弁開回数・時間制御手段は、前記弁選択・作動手段で選択された圧力弁の開回数及び開時間を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記の構成を備えることにより、以下に示すような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1の発明によれば、炊飯量に応じて、2個の圧力弁は、いずれか一方又は双方の圧力弁が選択されるので、沸騰維持工程中に鍋内圧力の減圧スピードの調節が可能になる。すなわち、一方の圧力弁が選択されると、双方の選択のときと比べて減圧スピードが遅くなり、また、双方が選択されたとき、減圧スピードが速くなる。したがって、炊飯量が少ないときに、一つの圧力弁を選択すると、減圧スピードが遅くなり、炊飯物の過攪拌を防止でき、また、炊飯量が多いときに、双方の圧力弁を選択すると、炊飯物の攪拌が効率よく行なえる。
【0020】
請求項2の発明によれば、さらに、硬さ炊き分けメニューに応じて、2個の圧力弁は、いずれか一方又は双方の圧力弁が選択されるので、沸騰維持工程中に鍋内圧力の減圧スピードの調節が可能になる。
【0021】
請求項3の発明によれば、さらに、米種「白米」に応じて、2個の圧力弁は、いずれか一方又は双方の圧力弁が選択されるので、沸騰維持工程中に鍋内圧力の減圧スピードの調節が可能になる。
【0022】
請求項4、5の発明によれば、白米・ふつうメニュー/白米・かためメニューにおいて、
2個の圧力弁は、いずれか一方又は双方の圧力弁が選択されるので、沸騰維持工程中に鍋内圧力の減圧スピードの調節が可能になる。
【0023】
請求項6の発明によれば、玄米炊飯コースにおいて、2個の圧力弁は、いずれか一方又は双方の圧力弁が選択されるので、沸騰維持工程中に鍋内圧力の減圧スピードの調節が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る圧力式炊飯器の外観斜視図である。
【図2】図2は図1の圧力式炊飯器の蓋体を開けた状態の斜視図である。
【図3】図3は内蓋を外した状態の蓋体の背面図である。
【図4】図4は図1の圧力式炊飯器を略中央部で縦切断した断面図である。
【図5】図5は図4の蓋体の一部を示し、図5Aは一部の概略断面図、図5Bは蓋体に配置された2個の圧力弁の断面図である。
【図6】図6は図1の圧力式炊飯器の外蓋を外した状態の蓋体の斜視図である。
【図7】図7は圧力弁開放機構の平面図である。
【図8】図8は図7の圧力弁開放機構の動作を説明する平面図である。
【図9】図9は制御装置を構成する制御ブロック図である。
【図10】図10は炊飯コース/メニューのフローチャート図である。
【図11】図11は炊飯工程における鍋内の温度及び圧力変化を示した温度・圧力曲線図である。
【図12】図12は硬さ炊き分けメニュー「白米・ふつう」における炊飯量と圧力弁の開回数及び開時間との関係を規定した規定表図である。
【図13】図13Aは「白米・かため」、図13Bは「白米・やわらか」における炊飯量と圧力弁の開回数及び開時間との関係を規定した規定表図である。
【図14】図14は玄米の炊飯量と圧力弁の開回数及び開時間との関係を規定した規定表図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための圧力式炊飯器を例示するものであって、本発明をこれに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0026】
まず、図1〜図5を参照して、本発明の実施形態に係る圧力式炊飯器の構造を説明する。なお、図1は本発明の実施形態に係る圧力式炊飯器の外観斜視図、図2は図1の圧力式炊飯器の蓋体を開けた状態の斜視図、図3は内蓋を外した状態の蓋体の背面図、図4は図1の圧力式炊飯器を略中央部で縦切断した断面図、図5は図4の一部を示し、図5Aは一部の概略断面図、図5Bは蓋体に配置された2つの圧力弁の断面図である。
【0027】
本発明の実施形態に係る圧力式炊飯器(以下、単に「炊飯器」という)1は、図1、図4、図5に示すように、米と水とを含む炊飯物を入れる鍋9と、上方にこの鍋9が収容される開口及び内部に鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段5を設けた炊飯器本体(以下、本体という)2と、この本体2の一側に枢支して鍋及び本体の開口を覆う蓋体10と、この蓋体10に配設して鍋9内の内圧を調整(昇圧、減圧)する2個の圧力弁13A、13Bと、これらの圧力弁の開放をする圧力弁開放機構17A、17Bと、これらの圧力弁開放機構に連動して蓋体10の開成をロックする蓋係止部材23(図7、図8参照)と、各種の炊飯コース/メニューを表示して選択する表示操作部30と、表示操作部で選択された炊飯コースに基づいて加熱手段5及び各圧力弁13A、13Bを制御して鍋9内の炊飯物を所定温度に加熱して吸水工程、立上加熱工程、沸騰維持工程及び蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程を実行する制御装置33(図9参照)とを有している。以下、これらの部材を説明する。
【0028】
本体2は、図2、図4に示すように、有底箱型の外部ケース3と、この外部ケース3に収容される内部ケース4とからなる。外部ケース3と内部ケース4との間には隙間が形成されており、この隙間に制御装置33を構成する制御回路基板6などが設けられている。内部ケース4には、深底の容器からなる鍋9が収容される。この鍋9は、アルミニウムとステンレスとのクラッド材で形成されている。また、内部ケース4は、その底部4a及び側部4bにそれぞれ鍋底ヒーター5b及び側部ヒーター5aが設けられ、底部4aに鍋底温度を検知するサーミスタ等からなる鍋底温度検知センサーS1が設けられている。鍋底ヒーター5bは環状に巻装した電磁誘導コイル(以下、単にIHコイルともいう)が使用されている。また、この本体2には、図4に示すように、蓋体10を閉成状態に係止する蓋係止機構7及びこの蓋係止機構の係止を解除して蓋体10を開成させる解除釦8が設けられている。
【0029】
蓋体10は、図4〜図6に示すように、鍋9の開口を塞ぐ内蓋11と、この内蓋11が着脱自在に装着されて本体2の開口などを覆う外蓋29とを有している。この蓋体10は、一側がヒンジ機構2Aにより本体2に枢支されて、他側に蓋係止部材23が設けられて、この蓋係止部材23により本体2の蓋係止機構7に係止される構造となっている。蓋係止部材23は、図7に示すように、蓋枠に固定された係止軸26と、この係止軸26に回転可能に取付けた係止部材24とを有している。この係止部材24は、一端辺に所定の間隔をあけて設けた本体2の蓋係止機構7に係止される一対の係止爪25a、25bと、他端辺に蓋ロック部材28(図8参照)に当接して係止部材24の動きをロックするロック片27とが設けてある。
【0030】
内蓋11は、図2〜図4に示すように、鍋9の開口を塞ぐ大きさの円盤状をなし、外蓋29に取外し自在に装着されている。この内蓋11は、鍋9側におねばを分散させるおねば分散板12(図2、図4参照)が設けられている。このおねば分散板12は、内蓋11に取外し自在な固定手段により装着されて、後述するおねば貯留タンク32に貯留されたおねばを鍋9内に略均等に分散して戻すものとなっている。また、この内蓋11には、図5、図6に示すように、外蓋側に2個の圧力弁13A、13Bが設けられている。これらの圧力弁13A、13Bは、同じ構造のものとなっている。一方の圧力弁13Aを説明する。この圧力弁13Aは、図4、図5に示すように、所定口径の弁孔14aを設けた弁座14bと、この弁孔14aを塞ぐように弁座14b上に移動自在に載置された金属製のボール15と、このボール15の移動を規制することで弁座14b上にボール15を保持するカバー14cとからなり、金属製のボール15は、その自重で弁座14b上を転がって弁孔14aを塞ぐ構造となっている。カバー14cには、鍋内の蒸気温度を検知する蒸気温度検知センサーS2が設けてある。
【0031】
これらの圧力弁13A、13Bは、制御装置33からの指令により、それぞれ対応する圧力弁開放機構17A、17Bを介して、沸騰維持工程において所定の単位時間で間歇的に所定回数開放して、鍋9内の炊飯物を攪拌する働きをするものとなっている。
【0032】
これらの圧力弁開放機構17A、17Bは、図6、図7に示すように、外蓋29が固定される枠体16に設けられている。この枠体16は、機械的強度の強いフレーム体で構成されている。これらの圧力弁開放機構17A、17Bは、同じ構造となっている。一方の圧力弁開放機構17Aは、図7、図8に示すように、ソレノイドコイルが巻回されたシリンダー18aと、このシリンダー内からソレノイドコイルの励磁により入出するプランジャー19aと、このプランジャー19aの先端に装着されたスライド移動自在な移動部材20aと、ボール15を押動させる作動棹22aとを有し、これらの移動部材20aと作動棹22aとはリンクバー21aで連結されている。このリンクバー21aは、略中央部に作動棹22aの遊嵌孔222に遊嵌される突起211が設けられている。作動棹22aは、一端にボール15を押動する先端部22a’、他端に遊嵌孔222、略中央部にリンクバー21aの一端が固定される固体突起223、さらに、側辺に作動棹22aのスライド移動により蓋ロック部材28を押して移動させる押動片221が設けられている。他方の圧力弁開放機構17Bも圧力弁開放機構17Aと同様の構成、すなわちソレノイドコイルが巻回されたシリンダー18bと、このシリンダー18b内からソレノイドコイルの励磁により入出するプランジャー19bと、プランジャー19bの先端に装着された移動部材20bと、ボール15を押動させる作動棹22bと、移動部材20bと作動棹22bとを繋ぐリンクバー21bとを有している。両リンクバー21a、21bは、交差して、一端がそれぞれの移動部材20a、20b及び他端が両作動棹22a、22bに連結されている。両シリンダー18a、18bには、バネ体(図示省略)を装着して、両シリンダー18a、18bのソレノイドコイルが無励磁のときに、両作動棹22a、22bの先端部棹22a’、22b’が前方へこのバネ体の力により飛出して、ボール15を押動してそれぞれの弁孔14a(図5参照、なお、一方は不図示)を開放させるようになっている。
【0033】
また、これらの圧力弁開放機構17A、17Bと蓋係止部材23との間には、蓋ロック部材28が介在されている。この蓋ロック部材28は、図7、図8に示すように、両作動棹22a、22bの間にスライド移動自在に固定されている。この蓋ロック部材28は、一端に蓋係止部材23のロック片27に当接してロック片27の移動を規制するストッパー部28aと、他端に両作動棹22a、22bの押動片221に突き当たってバネ体28b’の付勢力に抗してスライド移動される一対の移動片281、282とを有している。この蓋ロック部材28は、いずれかの圧力弁13A、13Bが閉成状態にあるときに、蓋体10が開放されない働きをするものとなっている。なお、両圧力弁13A、13Bは、鍋9内が非加圧状態のときに開、すなわち開放状態にあり、これらの弁孔14aは、各作動桿22a、22bの先端部22a’、22b’が図示を省略したバネ体の力により押動されて開口している。
【0034】
2個の圧力弁13A、13Bは、制御装置33からの指令により、それぞれの圧力弁開放機構17A、17Bを介して、両圧力弁が同時に開閉、又はいずれか一方の圧力弁のみが開閉される。それぞれの圧力弁13A、13Bの開閉動作は、同じになっている。そして、いずれかの圧力弁13A、13Bが閉成状態にあるときに、蓋体10が開放されないようになっている。例えば、一方の圧力弁13Aの開閉は、制御装置33からの指令に基づき、ソレノイドコイルが励磁されると、プランジャー19aがシリンダー18a内へ引っ込められて、移動部材20a、リンクレバー21aを介して作動桿22aが後退して、作動桿22aの先端部22a’がボール15から離れて、このボール15の自重により弁孔14aが閉鎖される。また、この動作で作動桿22aが後退されると、作動桿22aの押動片221が蓋ロック部材28の作動片281に突き当たって、バネ体28b’の付勢力に抗してスライド移動されて、ストッパー部28aが蓋係止部材23のロック片27の下方へ潜り込んで蓋係止部材23の作動を無効、すなわち、解除釦8を操作しても蓋体10が開成されないようになる。なお、圧力弁13Aが閉状態で、ソレノイドコイルへの励磁がストップされると、プランジャー19aが図示を省略したバネ体の付勢力によりシリンダー18a内から外へ飛出す。この飛出しにより、作動桿22aの先端部22a’がボール15を押動して、弁孔14aを開にする。また、他方の圧力弁13Bも同じ方法で開閉され、閉状態では蓋係止部材23がロックされる。さらに、両圧力弁13A、13Bの同時開閉も同様の方法で行なわれ、両圧力弁の閉状態では蓋係止部材23がロックされる。
【0035】
また、本体2には、図1に示すように、その正面に表示操作部30が設けられている。この表示操作部30には、図1に示すように、各種の炊飯コース/メニュー及び時刻等が表示される表示パネル31と、この表示パネル31の左右及び下方に設けられた複数個のスイッチ操作釦とを備えている。これらのスイッチ操作釦は、炊飯器1を作動させる炊飯/スタート釦、炊飯コースを選択するコース選択釦、米種選択釦など及び表示パネルに表示された炊飯コース/メニュー等を選択・決定するキーなどとなっている。なお、炊飯コース/メニューのうち、炊飯コースは、米種などを選ぶコースを言い、炊飯メニューは、米種が選択された後に炊飯する際の硬さなどの炊き分けメニューなどとなっている。
【0036】
内蓋11と外蓋29とは、図4に示すように、その間に所定広さの隙間空間をあけて結合されている。外蓋29には、鍋9から噴出される水分を含むおねばを一時貯留するおねば貯留タンク(以下、貯留タンクという)32が着脱自在に装着されている。この貯留タンク32は、その内部におねばを一時貯留する空間と、蒸気を外部へ逃す蒸気口32aと、タンク弁とを有している。隙間空間及び貯留タンク32の空間は、おねばを一時貯留する貯留部となっている。なお、おねばは粘り気のある糊状の汁であって、この糊状の汁は旨み成分を含んでおり、このおねばがそのまま鍋9外へ排出されてしまうとご飯が美味しく炊きあがらない。そこで、このおねばを貯留する貯留タンク32を設けて、この貯留タンク32におねばを一時貯留しておき、鍋9内の加熱が終了して鍋9内が負圧になったときに、おねば分散板12を介して、おねばを鍋内に戻すことで美味しく炊きあげることができる。
【0037】
制御装置33は、図9に示すように、CPU、ROM、RAMなどが搭載された回路基板からなるハードウェアを備え、炊飯/スタート釦、コース選択釦、お米選択釦及び鍋底温度検知センサーS1、蒸気温度検知センサーS2などにそれぞれ接続されて、これらの釦及びセンサーの信号がCPUに入力されるようになっている。また、CPUには、所定時間を計時するタイマー及びROM、RAM(記憶手段)などが接続されている。記憶手段には、一連の炊飯工程を実行する炊飯プログラム及び鍋内の炊飯量に対応させて、沸騰維持工程における圧力弁の選択並びに開回数及び開時間などのデータが記憶されている。また、この制御装置は、鍋内の炊飯量を判定する炊飯量判定手段、及び騰維持工程において、炊飯量判定手段で判定された炊飯量に応じて、2個の圧力弁のうちのいずれか一方、又は双方の圧力弁を選択して作動させる弁選択・作動手段と、この弁選択・作動手段で選択された圧力弁の開回数及び開時間を制御する弁開回数・時間制御手段とを備えている。
【0038】
さらに、出力部(ドライバー)には、ヒーター5a、5bなどの加熱手段5、圧力弁開放機構17A、17B、及び表示パネル31などが接続されている。
【0039】
この制御装置33は、米種コース/炊き分けメニューに対応して加熱手段及び圧力弁開放機構17A、17Bを制御し、図11に示すように、鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程I、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程II、沸騰状態を維持して炊き上げる沸騰維持工程III、炊き上ったご飯から余分な水分を除去する蒸らし工程、本工程などを含む一連の炊飯工程を実行する。蒸らし工程は、蒸らし1、追炊き及び蒸らし2となっている。炊飯中は、鍋内の圧力は、1.2気圧に昇圧される。なお、この昇圧時の圧力は、これ以上でもよい。この発明は、これらの炊飯工程のうち、特に、沸騰維持工程における制御に特徴があるので、以下、この沸騰維持工程の制御を詳述し、その他の工程の説明を省略する。
【0040】
図10〜図14を参照して、米種炊飯コース/硬さ炊き分けメニューの炊飯工程を説明する。なお、図10は米種炊飯コース/硬さ炊き分けにおける炊飯工程を示したフローチャート図、図11は炊飯工程における鍋内の温度及び圧力変化を示した温度・圧力曲線図、図12〜図14は、硬さ炊き分けメニューにおける炊飯量と圧力弁の開回数及び開時間との関係を規定したもので、図12は「白米・ふつう」、図13Aは「白米・かため」及び図13Bは「白米・やわらか」の規定表図である。なお、これらの図表では、圧力弁13A、13Bは、圧力弁A、Bと表記されている。
【0041】
「白米」硬さ炊き分けメニューは、図12、図13に示すように、白米における「ふつう」、「かため」及び「やわらか」に区分して、これらのメニューの沸騰維持工程における圧力弁の開回数及び開時間は、炊飯量に対応して以下の値に規定する。
1.白米・ふつう
この白米・ふつうメニューにおける炊飯量は、図12に示すように、炊飯量が少ない「少」の「QS」、以下同様にして「中」の「QM」及び「大」の「QL」に大別、すなわち大分類に分けるとともに、この大分類の炊飯量QS、QM及びQLを、それぞれ炊飯量QSを炊飯量「少」の「QS1」、「中」の「QS2」及び「大」の「QS3」、炊飯量QMを「少」の「QM1」、「中」の「QM2」及び「大」の「QM3」、炊飯量QLを「少」の「QL1」、「中」の「QL2」及び「大」の「QL3」に細分、すなわち中分類に分けて、それぞれの圧力弁の開回数及び開時間を規定する。
【0042】
大分類のQS、QM及びQLの関係は、QS<QM<QLとなり、具体例は、「QS(少)」0.5〜1.5カップ、「QM(中)」2.0〜3.0カップ、「QL(大)」3.5〜5.5カップ、また、中分類の関係は、QS1<QS2<QS3、QM1<QM2<QM3及びQL1<QL2<QL3となり、具体例は、「QS1〜QS3」は、0.5〜1.5カップ、「QM1〜QM3」は2.0〜3.0カップ及び「QL1〜QL3」は3.5〜5.5カップである。
【0043】
1−1.炊飯量QSにおける圧力弁の開回数及び開時間
この炊飯量QSは、他の炊飯量QM及びQLより少ないので、2個の圧力弁13A、13B(以下、圧力弁A、圧力弁Bという)のうち、一方の圧力弁Bを閉状態にして他方の圧力弁Aのみを開閉させる。この圧力弁Aの開回数は、各炊飯量QS1、QS2及びQS3(QS1<QS2<QS3)に対して、それぞれの開回数をam1、am2及びam3(am1≦am2≦am3、1≦(am1、am2、am3)≦NMm)と設定する。具体例は、am1≦am2≦am3=4(回)である。この圧力弁Aの開時間は、各炊飯量QS1、QS2及びQS3に対して、それぞれ開時間をtAM1、tAM2及びtAM3(tAM1≦tAM2≦tAM3)と設定する。具体例は、tAM1、tAM2及びtAM3は、2.0秒、2.5秒及び3.0秒である。
【0044】
この規定により、少ない炊飯量QSにおいては、一つの圧力弁のみを用いて、所定の開回数及び開時間で作動させるので、沸騰維持工程中に、鍋内の圧力を高圧から大気圧近傍まで一気に低下、すなわち減圧させる減圧スピードが両圧力弁を開動作させる場合に比べて遅くなり、鍋内の炊飯物の攪拌が抑制されるため、米粒が激しく衝突して生じる割れが防止されて炊き崩れがなくなる。また、中分類の炊飯量QS1、QS2及びQS3でも炊飯量に対応して開回数及び開時間を規定してあるので、鍋内の炊飯物をよりきめ細かく効率よく攪拌できる。
【0045】
1−2.炊飯量QMにおける圧力弁の開回数及び開時間
この炊飯量QMは、炊飯量QSより多くなり、1個の圧力弁のみでは攪拌が不十分になるので、2個の圧力弁A、Bを使用し、双方の圧力弁を同時に開閉させる。
【0046】
両圧力弁A、Bの開回数は、各炊飯量QM1、QM2及びQM3(QM1<QM2<QM3)に対して、それぞれの開回数をbm1、bm2及びbm3(bm1≦bm2≦bm3、1≦(bm1、bm2、bm3)≦Nma)と設定する。具体例は、bm1≦bm2≦bm3=4(回)である。
【0047】
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QM1、QM2及びQM3に対して、それぞれ開時間をtAM4、tAM5及びtAM6(tAM4≦tAM5≦tAM6)、tBM4、tBM5及びtBM6(tBM4≦tBM5≦tBM6)と設定する。具体例は、(tAM4、tAM5、tAM6)及び(tBM4、tBM5、tBM6)とは、それぞれ2.0秒、2.0秒及び3.0秒である。
【0048】
この規定により、大分類の炊飯量「QM」では、二つの圧力弁を用い、これらの圧力弁を所定の開回数及び開時間で作動させるので、沸騰維持工程中に、鍋内の圧力を高圧から大気圧近傍まで一気に低下、すなわち減圧させる減圧スピードが速くなり、鍋内の炊飯物が効率よく攪拌される。また、中分類の炊飯量QM1、QM2及びQM3でも炊飯量に対応して開回数及び開時間を規定してあるので、鍋内の炊飯物をよりきめ細かく効率よく攪拌できる。
【0049】
1−3.炊飯量QLにおける圧力弁の開回数及び開時間
この炊飯量QLは、炊飯量QMよりさらに多くなるので、炊飯量QMと同様に、2個の圧力弁A、Bの双方を同時に開閉させる。これら2個の圧力弁A、Bは、前半の所定回数NMmまでと、NMm後の後半の所定回数とで開時間を変更する。
【0050】
両圧力弁A、Bの開回数は、各炊飯量QL1、QL2及びQL3(QL1<QL2<QL3)に対して、それぞれの開回数をcm1、cm2及びcm3(cm1≦cm2≦cm3、NMm<(cm1、cm2、cm3))と設定する。具体例は、NMm=4、cm1≦cm2≦cm3=4〜5(回)である。
【0051】
(i)前半の開時間(所定回数NMmまで)
これらの圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QL7、QL8及びQL9に対して、それぞれの開時間をtAM7、tAM8及びtAM9(tAM7≦tAM8≦tAM9)、tBM7、tBM8及びtBM9(tBM7≦tBM8≦tBM9)とする。具体例は、(tAM7、tAM8、tAM9)及び(tBM7、tBM8、tBM9)は、それぞれ4.0秒、5.0秒及び6.0秒である。
【0052】
(ii)後半の開時間(所定回数NMm後)
所定回数NMm後の開回数は、各炊飯量QL1、QL2及びQL3(QL1<QL2<QL3)に対して、それぞれの開回数cm1、cm2、cm3から所定回数NMmを減じた値であり、この値をnとする。具体例は、n=1(回)である。
【0053】
これらの圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QL1、QL2及びQL3に対して、それぞれの開時間をtAM’7、tAM’8及びtAM’9(tAM’7≦tAM’8≦tAM’9)、tBM’7、tBM’8及びtBM’9(tBM’7≦tBM’8≦tBM’9)と設定する。具体例は、(tAM’7、tAM’8、tAM’9)及び(tBM’7、tBM’8、tBM’9)は、それぞれ2.0秒、2.0秒及び2.0秒である。
【0054】
この規定により、大分類の炊飯量「QH」では、二つの圧力弁を用い、これらの圧力弁を前半と後半とに分けて、所定の開回数及び開時間で作動させるので、鍋内の炊飯物を過不足なく攪拌できる。すなわち、前半で開時間を長くしてあるので、減圧スピードを速くして効率よく攪拌でき、また、後半では開時間を短くしてあるので、おねばの吹き零れを防止できる。
2.白米・かため
この白米・かためメニューにおける炊飯量も、図13Aに示すように、米・ふつうメニューと同様に、大分類QS、QM及びQLに分けるとともに、これらを中分類のQS1、QS2及びQS3、QM1、QM2及びQM3、QL1、QL2及びQL3に分けて、圧力弁の開回数及び開時間を規定する。
【0055】
2−1.炊飯量QSにおける圧力弁の開回数及び開時間
炊飯量「QS(少)」は、それぞれ炊飯量「少」の「QS1」、「中」の「QS2」及び「大」の「QS3」とに細分される。これらの関係は、QS1<QS2<QS3の関係となり、具体例は、QS1、QS2及びQS3は、0.5カップ、1.0カップ及び1.5カップである。
【0056】
この炊飯量QSは、他の炊飯量QM及びQLより少ないので、2個の圧力弁A、Bのうち、他方の圧力弁Bを閉成状態にして、一方の圧力弁Aのみを開閉させる。この圧力弁Aの開回数は、各炊飯量QS1、QS2及びQS3(QS1<QS2<QS3)に対して、それぞれ開回数をah1、ah2及びah3(ah1≦ah2≦ah3)とする。具体例は、ah1≦ah2≦ah3=2(回)である。
【0057】
圧力弁Aの開時間は、各炊飯量QS1、QS2及びQS3に対して、開時間tAH1、tAH2及びtAH3(tAH1<tAH2<tAH3)にする。具体例は、tAH1、tAH2及びtAH3は、2.0秒、2.5秒及び3.0秒である。
【0058】
この規定により、大分類の炊飯量「QS」で、一つの圧力弁のみで、規定した開回数及び開時間で効率よく鍋内を攪拌できる。また、中分類の炊飯量でも炊飯量に対応して、規定した開回数及び開時間で効率よく鍋内を攪拌でき、さらに、過攪拌が防止できる。
【0059】
2−2.炊飯量QMにおける圧力弁の開回数及び開時間
この炊飯量QMは、炊飯量QSより多いので、2個の圧力弁A、Bを使用し、双方の圧力弁を同時に開閉させる。
【0060】
圧力弁A、Bの開回数は、各炊飯量QM1、QM2及びQM3(QM1<QM2<QM3)対して、それぞれの開回数をbh1、bh2及びbh3(bh1≦bh2≦bh3)にする。具体例は、bh1≦bh2≦bh3=2(回)である。
【0061】
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QH1、QM2及びQM3に対して、開時間tAH4、tAH5及びtAH6(tAH4<tAH5<tAH6)、tBH4、tBH5及びtBH6(tBH4<tBH5<tBH6)とする。具体例は、(tAH4、tAH5、tAH6)及び(tBH4、tBH5、tBH6)は、2.0秒、2.0秒及び3.0秒である。
【0062】
この規定により、大分類の炊飯量「QM」では、二つの圧力弁を用い、規定した開回数及び開時間で効率よく鍋内を攪拌できる。また、中分類の炊飯量でも炊飯量に対応して、規定した開回数及び開時間で効率よく鍋内を攪拌できる。
【0063】
2−3.炊飯量QLにおける圧力弁の開回数及び開時間
この炊飯量QLは、炊飯量QMより多いので、炊飯量QMと同様に、2個の圧力弁A、Bの双方を同時に開閉する。両圧力弁A、Bは、各炊飯量QL1、QL2及びQL3(QL1<QL2<QL3)に対して、それぞれの開回数をch1、ch2及びch3(ch1≦ch2≦ch3)とする。具体例は、ch1≦ch2≦ch3=4〜5(回)である。
【0064】
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QL1、QL2及びQL3に対して、それぞれの開時間をtAH7、tAH8及びtAH9(tAH7<tAH8<tAH9)、tBH7、tBH8及びtBH9(tBH7<tBH8<tBH9)とする。具体例は、(tAH7、tAH8、tAH9)及び(tBH7、tBH8、tBH9)は、それぞれ4.0秒、5.0秒及び6.0秒である。
この規定により、大分類の炊飯量「QM」では、二つの圧力弁を用い、規定した開回数及び開時間で効率よく鍋内を攪拌できる。また、中分類の炊飯量でも炊飯量に対応して、規定した開回数及び開時間で効率よく鍋内を攪拌できる。
【0065】
また、「白米・かため」が選択された場合、この圧力弁の開閉動作が終了した後の沸騰維持工程において、両圧力弁は開成状態で炊飯が行われる。圧力をかけずに炊飯することにより、昇圧状態に比べ白米に水が浸透せず、かためのご飯が炊き上がる。
3.「白米・やわらか」
この炊飯メニューにおける炊飯量も、白米・ふつうメニューと同様に、大分類QS、QM及びQLに分けるとともに、これらを中分類のQS1、QS2及びQS3と、QM1、QM2及びQM3と、QL1、QL2及びQL3とに分けて、圧力弁の開回数及び開時間を規定する。
【0066】
3−1.炊飯量QSにおける圧力弁の開回数及び開時間
炊飯量「QS(少)」Sは、それぞれ炊飯量「少」の「QS1」、「中」の「QS2」及び「大」の「QS3」とに細分する。これらの関係は、QS1<QS2<QS3の関係となり、具体例は、QS1、QS2及びQS3は、0.5カップ、1.0カップ及び1.5カップである。
【0067】
この炊飯量QSは、他の炊飯量QM及びQLより少ないので、2個の圧力弁A、Bのうち、他方の圧力弁Bを閉成状態にして、一方の圧力弁Aのみを開閉させる。
【0068】
この圧力弁Aの開回数は、各炊飯量QS1、QS2及びQS3(QS1<QS2<QS3)に対して、それぞれの開回数がas1、as2及びas3(as1≦as2≦as3)にする。具体例は、as1≦as2≦as3=3(回)である。
【0069】
圧力弁Aの開時間は、各炊飯量QS1、QS2及びQS3に対して、それぞれの開時間がtAS1、tAS2及びtAS3(tAS1<tAS2<tAS3)にする。具体例は、tAS1、tAS2及びtAS3は、2.0秒、2.5秒及び3.0秒である。
【0070】
3−2.炊飯量QMにおける圧力弁の開回数及び開時間
この炊飯量QMは、炊飯量QSより多いので、2個の圧力弁A、Bを使用し、双方の圧力弁を同時に開閉させる。
【0071】
両圧力弁A、Bの開回数は、1〜Nmaの範囲にあって、各炊飯量QM1、QM2及びQM3(QM1<QM2<QM3)対して、それぞれの開回数がbs1、bs2及びbs3(bs1≦bs2≦bs3)にする。具体例は、bs1≦bs2≦bs3=3(回)である。
【0072】
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QS1、QM2及びQM3に対して、それぞれの開時間がtAS4、tAS5及びtAS6(tAS4≦tAS5<tAS6)、tBS4、tBS5及びtBS6(tBS4≦tBS5<tBS6)にする。具体例は、(tAS4、tAS5、tAS6)及び(tBS4、tBS5、tBS6)は、それぞれ2.0秒、2.0秒及び3.0秒である。
【0073】
3−3.炊飯量QLにおける圧力弁の開回数及び開時間
この炊飯量QLは、炊飯量QMより多いので、炊飯量QMと同様に、2個の圧力弁A、Bの双方を同時に開閉させる。両圧力弁A、Bは、各炊飯量QL1、QL2及びQL3(QL1<QL2<QL3)に対して、それぞれの開回数がcs1、cs2及びcs3(cs1≦cs2≦cs3)にする。具体例は、cs1≦cs2≦cs3=3(回)である。両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QL1、QL2及びQL3に対して、それぞれの開時間がtAS7、tAS8及びtAS9(tAS7<tAS8<tAS9)、tBS7、tBS8及びtBS9(tBS7<tBS8<tBS9)にする。具体例は、(tAS7、tAS8、tAS9)及び(tBS7、tBS8、tBS9)はそれぞれ4.0秒、5.0秒及び6.0秒である。
【0074】
図14は、玄米炊飯における炊飯量と圧力弁の開回数及び開時間との関係を表している。
4.玄米炊飯
この玄米炊飯における炊飯量は、炊き分けメニューと同様に、大分類QS、QM及びQLに分けるとともに、これらを中分類のQS1、QS2及びQS3、QM1、QM2及びQM3、QL1、QL2及びQL3に分けて、圧力弁の開回数及び開時間を規定する。
【0075】
4−1.炊飯量QSにおける圧力弁の開回数及び開時間
(i)開回数p回までの開時間
両圧力弁A、Bは開回数p回まで、各炊飯量QS1、QS2及びQS3(QS1<QS2<QS3)に対して、それぞれの開時間がtC11、tC21及びtC31(tC11≦tC21≦tC31)にする。具体例は、p=1、tC11、tC21及びtC31は、それぞれ3.0秒、3.0秒及び3.0秒である。
【0076】
(ii)開回数p<n≦q回までの開時間
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QS1、QS2及びQS3(QS1<QS2<Qs3)に対して、それぞれの開時間がtC12、tC22及びtC32(tC12≦tC22≦tC32)、にする。具体例は、q=4、tC12、tC22及びtC32は、それぞれ3.0秒、3.0秒及び3.0秒である。
【0077】
(iii)開回数q<n≦r回までの開時間
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QS1、QS2及びQS3(QS1<QS2<QS3)に対して、それぞれの開時間がtC13、tC23及びtC33(tC13≦tC23≦tC33)、にする。具体例は、r=12、tC13、tC23及びtC33は、それぞれ2.0秒、2.0秒及び2.0秒である。
4−2.炊飯量QMにおける圧力弁の開回数及び開時間
(i)開回数p回までの開時間
両圧力弁A、Bは開回数p回まで、各炊飯量QM1、QM2及びQM3(QM1<QM2<QM3)に対して、それぞれの開時間がtC41、tC51及びtC61(tC41≦tC51≦tC61)にする。具体例は、p=1、tC41、tC51及びtC61は、それぞれ4.0秒、4.0秒及び4.0秒である。
【0078】
(ii)開回数p<n≦q回までの開時間
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QM1、QM2及びQM3(QM1<QM2<QM3)に対して、それぞれの開時間がtC42、tC52及びtC62(tC42≦tC52≦tC62)にする。具体例は、q=4、tC42、tC52及びtC62は、それぞれ4.0秒、4.0秒及び4.0秒である。
【0079】
(iii)開回数q<n≦r回までの開時間
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QM1、QM2及びQM3(QM1<QM2<QM3)に対して、それぞれの開時間がtC43、tC53及びtC63(tC43≦tC53≦tC63)にする。具体例は、r=12、tC43、tC53及びtC63は、それぞれ2.0秒、2.0秒及び2.0秒である。
4−3.炊飯量QLにおける圧力弁の開回数及び開時間
(i)開回数p回までの開時間
両圧力弁A、Bは開回数p回まで、各炊飯量QH1、QH2及びQH3(QH1<QH2<QH3)に対して、それぞれの開時間がtC71、tC81及びtC91(tC71<tC81≦tC91)にする。具体例は、p=1、tC71、tC81及びtC91は、それぞれ4.0秒、5.0秒及び4.0秒である。
【0080】
(ii)開回数p<n≦q回までの開時間
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QH1、QH2及びQH3(QH1<QH2<QH3)に対して、それぞれの開時間がtC72、tC82及びtC92(tC72>tC82≧tC92)にする。具体例は、p=1、tC72、tC82及びtC92は、それぞれ4.0秒、2.0秒及び2.0秒である。
【0081】
(iii)開回数q<n≦r回までの開時間
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QH1、QH2及びQH3(QH1<QH2<QH3)に対して、それぞれの開時間がtC73、tC83及びtC93(tC73>tC83≧tC93)にする。具体例は、r=12、tC73、tC83及びtC93は、それぞれ2.0秒、1.0秒及び1.0秒である。
【0082】
玄米は、白米に比べ吸水率が悪くなっている。その原因は、玄米の表面が果皮、種皮及び糊粉層などで覆われ、この果皮などが米芯への水の浸入を阻止しているからである。この炊飯方法によれば、玄米は、互いに擦り合わされ且つ衝突し合って、玄米の表面を覆っている果皮及び種皮が傷つけ破られ、この傷つき破られた部分から熱湯が芯部分へ浸透して、
胚乳や果皮、種皮をも軟化膨潤させて白米飯のような柔らかく炊き上げることができる。
なお、この方法は、玄米だけでなく、雑穀系の米にも適用できるものである。
【符号の説明】
【0083】
1 圧力式炊飯器
2 炊飯器本体
3 外部ケース
4 内ケース
5 加熱手段
5a 鍋底ヒーター
5b 側部ヒーター
7 蓋係止機構
8 解除釦
9 鍋
10 蓋体
11 内蓋
12 おねば分散板
13A、13B 圧力弁
15 ボール
17A、17B 圧力弁開放機構
23 蓋係止部材
24 係止部材
27 ロック片
28 蓋ロック部材
29 外蓋
30 表示操作部
31 表示パネル
32 おねば貯留タンク
33 制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍋内を大気圧以上に昇圧して炊飯する圧力式炊飯器に係り、さらに詳しくは、2個の圧力弁を設けて鍋内の圧力を調節して炊飯する圧力式炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電気炊飯器(以下、炊飯器という)は、マイクロコンピュータが搭載されて、このマイクロコンピュータによって、白米・玄米などの米種に応じた米種炊飯メニュー、或いは硬め・柔らかめなどを調節してお好みの硬さに炊飯できるお好み炊飯メニューなどの炊飯ができるようになっている。この炊飯器は、米と水とからなる炊飯物を入れる鍋と、この鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段と、この加熱手段を制御する制御手段と、炊飯メニューを選定するメニュー選定手段とを備え、所定の炊飯メニューが選定されると、制御手段は、その炊飯メニューに対応して、鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、この沸騰状態を維持して米のデンプンを糊化させて炊き上げる沸騰維持工程、及び炊き上ったご飯から余分な水分を除去するとともに糊化を更に促進させる蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程を実行して、炊飯している。
【0003】
このような炊飯器は、上記加熱手段に、電熱ヒーター又は電磁誘導コイルを用いて、これらのヒーター熱源を鍋底に設置して、鍋底から鍋内の炊飯物を加熱している。ところが、この構造の炊飯器は、鍋底にヒーター熱源を設置するので、熱源に最も近い鍋底内壁面が集中的に加熱されて高温となり、まず、この内壁面に接触している炊飯物が高温に加熱されて、この高温度が内壁面から離れるにしたがって降下し、炊飯物の中央部が低くなり、そして、この中央部上方の部分が最も低くなって、鍋底内壁面と炊飯物の中央上方部との間に温度差が発生する。そのために、炊き上がったご飯は、この温度差に起因して、全体が均一に炊き上がらずに不均一になる、いわゆる炊きムラが発生することがある。
【0004】
これまでの炊飯器は、上記のような課題を抱えているので、この課題を解決するために、炊飯中に鍋内の炊飯物を攪拌するようにして炊き上げる炊飯器が提案されている。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、鍋内を大気圧以上に昇圧して、沸騰維持工程において鍋内を所定回数に亘って減圧して、これらの減圧作用により鍋内の炊飯物を攪拌するようにした圧力式炊飯器が記載されている。具体的には、この炊飯器は、炊飯物を入れる鍋と、この鍋を収容し鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、この炊飯器本体の一側に枢支して鍋及び炊飯器本体の開口を覆う蓋体と、この蓋体に装着されて鍋内の圧力を調整する圧力弁と、この圧力弁を開放制御する圧力弁開放機構と、各種の炊飯コースを表示して選択する表示操作部と、表示操作部で選択された炊飯コース/メニューに基づいて加熱手段及び圧力弁開放機構を制御して鍋内の炊飯物を所定温度に加熱して、吸水工程、立上加熱工程、沸騰維持工程及び蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程を実行する制御装置とを備え、制御装置は、立上加熱工程において、鍋内を大気圧以上(1.10〜2.20気圧)に昇圧して、次の沸騰維持工程では圧力弁を少なくとも1回以上強制的に単位時間だけ開放させて沸騰中の鍋内圧力を大気圧近傍まで一気に低下させる制御をして炊飯している。
【0006】
この圧力式炊飯器によれば、鍋内を大気圧以上、すなわち、1.10〜2.20気圧に昇圧して、沸騰維持工程中に圧力弁を少なくとも1回以上強制的に開放するので、この圧力弁の開放時に鍋内が高圧状態から大気圧近傍まで一気に低下し、鍋内に激しい沸騰現象、いわゆる突沸現象が発生する。この突沸現象により鍋内の炊飯物が攪拌されるため、炊飯ムラの無い美味しいご飯が炊上がる。また、同様の構造を備えた圧力式炊飯器において、炊飯量に応じて、圧力弁の開回数及び開時間の少なくとも一方を変更することによって、炊飯量の大小に左右されずに炊きムラが生じないようにして炊飯するものも下記特許文献2に記載されている。さらに、これらの特許文献1、2の炊飯器は、圧力弁が1個となっているが、2個の圧力弁を設け、同様の攪拌を行なうようにしたものも下記特許文献3に記載されている。なお、これらの特許文献1〜3は、本件出願人の出願に係るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3851293号公報(段落〔0031〕〜〔0036〕、図6)
【特許文献2】特開2006−325720号公報(段落〔0019〕、図5)
【特許文献3】特開2008−48766号公報(段落〔0011〕、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1〜3の炊飯器は、いずれも沸騰維持工程中に圧力弁を強制的に開放させることにより、加圧状態にある鍋内を減圧し、この減圧により鍋内に突沸現象を生じさせて、米粒を攪拌、いわゆる米粒を踊らせてかき混ぜるので、炊きムラがない炊き上がりとなる。
【0009】
しかしながら、これらの炊飯器でも、炊飯量により、攪拌過多になり、一方でまた攪拌不足となり、これらの攪拌過多及び不足により、ご飯の炊き崩れ或は炊きムラが発生することが分った。すなわち、炊飯量が少ないときに、圧力弁の開時間を長く、しかも開回数を多くすると、攪拌が激しすぎた攪拌過多となる。この攪拌過多により、米粒の割れなどが生じて炊き上がったご飯が炊き崩れてしまい、味も劣ったものとなることがある。また、炊飯量が多いときに、圧力弁の開時間を長く、開回数を多くしても、炊飯量が多いので攪拌不足となり、炊きムラが発生することがある。このとき、圧力弁の開時間を長く、しかも開回数を多くすると、鍋内の圧力が低下し過ぎて圧力炊飯ができなくなるので美味しさが欠けたものとなる。また、圧力弁の開時間を長く、開回数を多くすると、うまみ成分のおねばの噴出量が多くなって、貯留タンクの容量を超えて、外部へ吹き零れることがある。なお、これらの炊飯器でも、上記特許文献3のものは、2個の圧力弁を設けているが、この炊飯器においても、同様の課題が潜在していることが分った。
【0010】
そこで、本発明は、従来技術が抱える課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、2個の圧力弁を設けて、炊飯量の増大に伴い、沸騰維持工程で2個の圧力弁のいずれか一方又は双方が所定回数開放して、鍋内の炊飯物が効率よく攪拌され、特に、炊飯量が大のときにも、攪拌不足が発生しないようにした圧力式炊飯器を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、上記の目的を有し、白米炊き分けメニューふつう炊飯のときに、炊飯量の増大に伴い、沸騰維持工程で2個の圧力弁の開放回数を多くしても、鍋内の炊飯物が効率よく攪拌されるとともに、おねばの吹き零れがないようにした圧力式炊飯器を提供することにある。
【0012】
さらに、本発明の他の目的は、玄米系の炊飯のときに、沸騰維持工程で前記2個の圧力弁の双方が所定回数開放されて、鍋内の炊飯物が効率よく攪拌され、特に、炊飯量の大のときにも、攪拌不足が発生しないようにした圧力式炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本願の請求項1に記載の圧力式炊飯器は、米と水とを含む炊飯物を入れる鍋と、前記鍋を収容して前記炊飯物を加熱する加熱手段を設けた炊飯器本体と、前記鍋及び炊飯器本体の開口を塞ぐ開閉自在な蓋体と、前記蓋体に配設した2個の圧力弁と、前記加熱手段及び圧力弁を制御して、吸水工程、立上加熱工程及び沸騰維持工程を含む一連の炊飯工程を実行し、前記沸騰維持工程では前記圧力弁を所定の開時間で所定回数間歇的に開放制御する炊飯プログラム及び前記鍋内の炊飯量を判定する量判定手段を有する制御装置と、米種を含む炊飯コース/メニューを選択するコース選択手段とを備え、前記鍋内を大気圧以上に昇圧して炊飯する圧力式炊飯器において、前記制御装置は、前記炊飯プログラムを記憶する記憶手段を備え、前記記憶手段には、前記鍋内の炊飯量に対応させて、前記沸騰維持工程における前記圧力弁の選択並びに開回数及び開時間を記憶しておき、前記制御装置は、前記沸騰維持工程において、前記量判定手段で判定された炊飯量に応じて、前記2個の圧力弁のうちのいずれか一方、又は双方の圧力弁の選択を前記記憶手段から呼出して作動させる弁選択・作動手段と、前記弁選択・作動手段で選択された圧力弁の開回数及び開時間を前記記憶手段から呼出して制御する弁開回数・時間制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載の圧力式炊飯器において、前記記憶手段には、さらに、硬さ炊き分けメニューに対応させて、前記沸騰維持工程における前記圧力弁の選択並びに開回数及び開時間を記憶しておき、
前記制御装置は、前記沸騰維持工程において、さらに、前記コース選択手段で選定された硬さ炊き分けメニューに応じて、前記弁選択・作動手段は、前記2個の圧力弁のうちのいずれか一方、又は双方の圧力弁を選択し、前記弁開回数・時間制御手段は前記弁選択・作動手段で選択された圧力弁の開回数及び開時間を制御するとことを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の圧力式炊飯器において、前記コース選択手段で白米が選定されたときに、前記弁選択・作動手段は、所定の基準炊飯量以下のときに、前記2個の圧力弁のうち、一方を閉成した状態にして他方のみを所定の開回数及び開時間開閉させ、前記基準炊飯量を超える炊飯量のときに前記2個の圧力弁を同時に所定の開回数及び開時間開閉させることを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明は、請求項3に記載の圧力式炊飯器において、前記制御装置は、前記コース選択手段で白米・ふつうメニューが選定されたときに、前記沸騰維持工程において、前記圧力弁の開回数が基準回数を超えたときに、開時間を前記基準回数前の開時間に比べて短くして開閉させることを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明は、請求項3に記載の圧力式炊飯器において、前記制御装置は、前記コース選択手段で白米・かためメニューが選定されたときに、沸騰維持工程において、前記圧力弁が所定回数開閉された後に、開成して沸騰維持工程を続行することを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1に記載の圧力式炊飯器において、前記記憶手段は、玄米に対応させて、前記沸騰維持工程における前記圧力弁の開回数及び開時間を記憶しておき、前記制御装置は、前記沸騰維持工程において、さらに、前記コース選択手段で選定された玄米に応じて、前記弁選択・作動手段は、前記圧力弁を選択し、前記弁開回数・時間制御手段は、前記弁選択・作動手段で選択された圧力弁の開回数及び開時間を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記の構成を備えることにより、以下に示すような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1の発明によれば、炊飯量に応じて、2個の圧力弁は、いずれか一方又は双方の圧力弁が選択されるので、沸騰維持工程中に鍋内圧力の減圧スピードの調節が可能になる。すなわち、一方の圧力弁が選択されると、双方の選択のときと比べて減圧スピードが遅くなり、また、双方が選択されたとき、減圧スピードが速くなる。したがって、炊飯量が少ないときに、一つの圧力弁を選択すると、減圧スピードが遅くなり、炊飯物の過攪拌を防止でき、また、炊飯量が多いときに、双方の圧力弁を選択すると、炊飯物の攪拌が効率よく行なえる。
【0020】
請求項2の発明によれば、さらに、硬さ炊き分けメニューに応じて、2個の圧力弁は、いずれか一方又は双方の圧力弁が選択されるので、沸騰維持工程中に鍋内圧力の減圧スピードの調節が可能になる。
【0021】
請求項3の発明によれば、さらに、米種「白米」に応じて、2個の圧力弁は、いずれか一方又は双方の圧力弁が選択されるので、沸騰維持工程中に鍋内圧力の減圧スピードの調節が可能になる。
【0022】
請求項4、5の発明によれば、白米・ふつうメニュー/白米・かためメニューにおいて、
2個の圧力弁は、いずれか一方又は双方の圧力弁が選択されるので、沸騰維持工程中に鍋内圧力の減圧スピードの調節が可能になる。
【0023】
請求項6の発明によれば、玄米炊飯コースにおいて、2個の圧力弁は、いずれか一方又は双方の圧力弁が選択されるので、沸騰維持工程中に鍋内圧力の減圧スピードの調節が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る圧力式炊飯器の外観斜視図である。
【図2】図2は図1の圧力式炊飯器の蓋体を開けた状態の斜視図である。
【図3】図3は内蓋を外した状態の蓋体の背面図である。
【図4】図4は図1の圧力式炊飯器を略中央部で縦切断した断面図である。
【図5】図5は図4の蓋体の一部を示し、図5Aは一部の概略断面図、図5Bは蓋体に配置された2個の圧力弁の断面図である。
【図6】図6は図1の圧力式炊飯器の外蓋を外した状態の蓋体の斜視図である。
【図7】図7は圧力弁開放機構の平面図である。
【図8】図8は図7の圧力弁開放機構の動作を説明する平面図である。
【図9】図9は制御装置を構成する制御ブロック図である。
【図10】図10は炊飯コース/メニューのフローチャート図である。
【図11】図11は炊飯工程における鍋内の温度及び圧力変化を示した温度・圧力曲線図である。
【図12】図12は硬さ炊き分けメニュー「白米・ふつう」における炊飯量と圧力弁の開回数及び開時間との関係を規定した規定表図である。
【図13】図13Aは「白米・かため」、図13Bは「白米・やわらか」における炊飯量と圧力弁の開回数及び開時間との関係を規定した規定表図である。
【図14】図14は玄米の炊飯量と圧力弁の開回数及び開時間との関係を規定した規定表図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための圧力式炊飯器を例示するものであって、本発明をこれに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0026】
まず、図1〜図5を参照して、本発明の実施形態に係る圧力式炊飯器の構造を説明する。なお、図1は本発明の実施形態に係る圧力式炊飯器の外観斜視図、図2は図1の圧力式炊飯器の蓋体を開けた状態の斜視図、図3は内蓋を外した状態の蓋体の背面図、図4は図1の圧力式炊飯器を略中央部で縦切断した断面図、図5は図4の一部を示し、図5Aは一部の概略断面図、図5Bは蓋体に配置された2つの圧力弁の断面図である。
【0027】
本発明の実施形態に係る圧力式炊飯器(以下、単に「炊飯器」という)1は、図1、図4、図5に示すように、米と水とを含む炊飯物を入れる鍋9と、上方にこの鍋9が収容される開口及び内部に鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段5を設けた炊飯器本体(以下、本体という)2と、この本体2の一側に枢支して鍋及び本体の開口を覆う蓋体10と、この蓋体10に配設して鍋9内の内圧を調整(昇圧、減圧)する2個の圧力弁13A、13Bと、これらの圧力弁の開放をする圧力弁開放機構17A、17Bと、これらの圧力弁開放機構に連動して蓋体10の開成をロックする蓋係止部材23(図7、図8参照)と、各種の炊飯コース/メニューを表示して選択する表示操作部30と、表示操作部で選択された炊飯コースに基づいて加熱手段5及び各圧力弁13A、13Bを制御して鍋9内の炊飯物を所定温度に加熱して吸水工程、立上加熱工程、沸騰維持工程及び蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程を実行する制御装置33(図9参照)とを有している。以下、これらの部材を説明する。
【0028】
本体2は、図2、図4に示すように、有底箱型の外部ケース3と、この外部ケース3に収容される内部ケース4とからなる。外部ケース3と内部ケース4との間には隙間が形成されており、この隙間に制御装置33を構成する制御回路基板6などが設けられている。内部ケース4には、深底の容器からなる鍋9が収容される。この鍋9は、アルミニウムとステンレスとのクラッド材で形成されている。また、内部ケース4は、その底部4a及び側部4bにそれぞれ鍋底ヒーター5b及び側部ヒーター5aが設けられ、底部4aに鍋底温度を検知するサーミスタ等からなる鍋底温度検知センサーS1が設けられている。鍋底ヒーター5bは環状に巻装した電磁誘導コイル(以下、単にIHコイルともいう)が使用されている。また、この本体2には、図4に示すように、蓋体10を閉成状態に係止する蓋係止機構7及びこの蓋係止機構の係止を解除して蓋体10を開成させる解除釦8が設けられている。
【0029】
蓋体10は、図4〜図6に示すように、鍋9の開口を塞ぐ内蓋11と、この内蓋11が着脱自在に装着されて本体2の開口などを覆う外蓋29とを有している。この蓋体10は、一側がヒンジ機構2Aにより本体2に枢支されて、他側に蓋係止部材23が設けられて、この蓋係止部材23により本体2の蓋係止機構7に係止される構造となっている。蓋係止部材23は、図7に示すように、蓋枠に固定された係止軸26と、この係止軸26に回転可能に取付けた係止部材24とを有している。この係止部材24は、一端辺に所定の間隔をあけて設けた本体2の蓋係止機構7に係止される一対の係止爪25a、25bと、他端辺に蓋ロック部材28(図8参照)に当接して係止部材24の動きをロックするロック片27とが設けてある。
【0030】
内蓋11は、図2〜図4に示すように、鍋9の開口を塞ぐ大きさの円盤状をなし、外蓋29に取外し自在に装着されている。この内蓋11は、鍋9側におねばを分散させるおねば分散板12(図2、図4参照)が設けられている。このおねば分散板12は、内蓋11に取外し自在な固定手段により装着されて、後述するおねば貯留タンク32に貯留されたおねばを鍋9内に略均等に分散して戻すものとなっている。また、この内蓋11には、図5、図6に示すように、外蓋側に2個の圧力弁13A、13Bが設けられている。これらの圧力弁13A、13Bは、同じ構造のものとなっている。一方の圧力弁13Aを説明する。この圧力弁13Aは、図4、図5に示すように、所定口径の弁孔14aを設けた弁座14bと、この弁孔14aを塞ぐように弁座14b上に移動自在に載置された金属製のボール15と、このボール15の移動を規制することで弁座14b上にボール15を保持するカバー14cとからなり、金属製のボール15は、その自重で弁座14b上を転がって弁孔14aを塞ぐ構造となっている。カバー14cには、鍋内の蒸気温度を検知する蒸気温度検知センサーS2が設けてある。
【0031】
これらの圧力弁13A、13Bは、制御装置33からの指令により、それぞれ対応する圧力弁開放機構17A、17Bを介して、沸騰維持工程において所定の単位時間で間歇的に所定回数開放して、鍋9内の炊飯物を攪拌する働きをするものとなっている。
【0032】
これらの圧力弁開放機構17A、17Bは、図6、図7に示すように、外蓋29が固定される枠体16に設けられている。この枠体16は、機械的強度の強いフレーム体で構成されている。これらの圧力弁開放機構17A、17Bは、同じ構造となっている。一方の圧力弁開放機構17Aは、図7、図8に示すように、ソレノイドコイルが巻回されたシリンダー18aと、このシリンダー内からソレノイドコイルの励磁により入出するプランジャー19aと、このプランジャー19aの先端に装着されたスライド移動自在な移動部材20aと、ボール15を押動させる作動棹22aとを有し、これらの移動部材20aと作動棹22aとはリンクバー21aで連結されている。このリンクバー21aは、略中央部に作動棹22aの遊嵌孔222に遊嵌される突起211が設けられている。作動棹22aは、一端にボール15を押動する先端部22a’、他端に遊嵌孔222、略中央部にリンクバー21aの一端が固定される固体突起223、さらに、側辺に作動棹22aのスライド移動により蓋ロック部材28を押して移動させる押動片221が設けられている。他方の圧力弁開放機構17Bも圧力弁開放機構17Aと同様の構成、すなわちソレノイドコイルが巻回されたシリンダー18bと、このシリンダー18b内からソレノイドコイルの励磁により入出するプランジャー19bと、プランジャー19bの先端に装着された移動部材20bと、ボール15を押動させる作動棹22bと、移動部材20bと作動棹22bとを繋ぐリンクバー21bとを有している。両リンクバー21a、21bは、交差して、一端がそれぞれの移動部材20a、20b及び他端が両作動棹22a、22bに連結されている。両シリンダー18a、18bには、バネ体(図示省略)を装着して、両シリンダー18a、18bのソレノイドコイルが無励磁のときに、両作動棹22a、22bの先端部棹22a’、22b’が前方へこのバネ体の力により飛出して、ボール15を押動してそれぞれの弁孔14a(図5参照、なお、一方は不図示)を開放させるようになっている。
【0033】
また、これらの圧力弁開放機構17A、17Bと蓋係止部材23との間には、蓋ロック部材28が介在されている。この蓋ロック部材28は、図7、図8に示すように、両作動棹22a、22bの間にスライド移動自在に固定されている。この蓋ロック部材28は、一端に蓋係止部材23のロック片27に当接してロック片27の移動を規制するストッパー部28aと、他端に両作動棹22a、22bの押動片221に突き当たってバネ体28b’の付勢力に抗してスライド移動される一対の移動片281、282とを有している。この蓋ロック部材28は、いずれかの圧力弁13A、13Bが閉成状態にあるときに、蓋体10が開放されない働きをするものとなっている。なお、両圧力弁13A、13Bは、鍋9内が非加圧状態のときに開、すなわち開放状態にあり、これらの弁孔14aは、各作動桿22a、22bの先端部22a’、22b’が図示を省略したバネ体の力により押動されて開口している。
【0034】
2個の圧力弁13A、13Bは、制御装置33からの指令により、それぞれの圧力弁開放機構17A、17Bを介して、両圧力弁が同時に開閉、又はいずれか一方の圧力弁のみが開閉される。それぞれの圧力弁13A、13Bの開閉動作は、同じになっている。そして、いずれかの圧力弁13A、13Bが閉成状態にあるときに、蓋体10が開放されないようになっている。例えば、一方の圧力弁13Aの開閉は、制御装置33からの指令に基づき、ソレノイドコイルが励磁されると、プランジャー19aがシリンダー18a内へ引っ込められて、移動部材20a、リンクレバー21aを介して作動桿22aが後退して、作動桿22aの先端部22a’がボール15から離れて、このボール15の自重により弁孔14aが閉鎖される。また、この動作で作動桿22aが後退されると、作動桿22aの押動片221が蓋ロック部材28の作動片281に突き当たって、バネ体28b’の付勢力に抗してスライド移動されて、ストッパー部28aが蓋係止部材23のロック片27の下方へ潜り込んで蓋係止部材23の作動を無効、すなわち、解除釦8を操作しても蓋体10が開成されないようになる。なお、圧力弁13Aが閉状態で、ソレノイドコイルへの励磁がストップされると、プランジャー19aが図示を省略したバネ体の付勢力によりシリンダー18a内から外へ飛出す。この飛出しにより、作動桿22aの先端部22a’がボール15を押動して、弁孔14aを開にする。また、他方の圧力弁13Bも同じ方法で開閉され、閉状態では蓋係止部材23がロックされる。さらに、両圧力弁13A、13Bの同時開閉も同様の方法で行なわれ、両圧力弁の閉状態では蓋係止部材23がロックされる。
【0035】
また、本体2には、図1に示すように、その正面に表示操作部30が設けられている。この表示操作部30には、図1に示すように、各種の炊飯コース/メニュー及び時刻等が表示される表示パネル31と、この表示パネル31の左右及び下方に設けられた複数個のスイッチ操作釦とを備えている。これらのスイッチ操作釦は、炊飯器1を作動させる炊飯/スタート釦、炊飯コースを選択するコース選択釦、米種選択釦など及び表示パネルに表示された炊飯コース/メニュー等を選択・決定するキーなどとなっている。なお、炊飯コース/メニューのうち、炊飯コースは、米種などを選ぶコースを言い、炊飯メニューは、米種が選択された後に炊飯する際の硬さなどの炊き分けメニューなどとなっている。
【0036】
内蓋11と外蓋29とは、図4に示すように、その間に所定広さの隙間空間をあけて結合されている。外蓋29には、鍋9から噴出される水分を含むおねばを一時貯留するおねば貯留タンク(以下、貯留タンクという)32が着脱自在に装着されている。この貯留タンク32は、その内部におねばを一時貯留する空間と、蒸気を外部へ逃す蒸気口32aと、タンク弁とを有している。隙間空間及び貯留タンク32の空間は、おねばを一時貯留する貯留部となっている。なお、おねばは粘り気のある糊状の汁であって、この糊状の汁は旨み成分を含んでおり、このおねばがそのまま鍋9外へ排出されてしまうとご飯が美味しく炊きあがらない。そこで、このおねばを貯留する貯留タンク32を設けて、この貯留タンク32におねばを一時貯留しておき、鍋9内の加熱が終了して鍋9内が負圧になったときに、おねば分散板12を介して、おねばを鍋内に戻すことで美味しく炊きあげることができる。
【0037】
制御装置33は、図9に示すように、CPU、ROM、RAMなどが搭載された回路基板からなるハードウェアを備え、炊飯/スタート釦、コース選択釦、お米選択釦及び鍋底温度検知センサーS1、蒸気温度検知センサーS2などにそれぞれ接続されて、これらの釦及びセンサーの信号がCPUに入力されるようになっている。また、CPUには、所定時間を計時するタイマー及びROM、RAM(記憶手段)などが接続されている。記憶手段には、一連の炊飯工程を実行する炊飯プログラム及び鍋内の炊飯量に対応させて、沸騰維持工程における圧力弁の選択並びに開回数及び開時間などのデータが記憶されている。また、この制御装置は、鍋内の炊飯量を判定する炊飯量判定手段、及び騰維持工程において、炊飯量判定手段で判定された炊飯量に応じて、2個の圧力弁のうちのいずれか一方、又は双方の圧力弁を選択して作動させる弁選択・作動手段と、この弁選択・作動手段で選択された圧力弁の開回数及び開時間を制御する弁開回数・時間制御手段とを備えている。
【0038】
さらに、出力部(ドライバー)には、ヒーター5a、5bなどの加熱手段5、圧力弁開放機構17A、17B、及び表示パネル31などが接続されている。
【0039】
この制御装置33は、米種コース/炊き分けメニューに対応して加熱手段及び圧力弁開放機構17A、17Bを制御し、図11に示すように、鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程I、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程II、沸騰状態を維持して炊き上げる沸騰維持工程III、炊き上ったご飯から余分な水分を除去する蒸らし工程、本工程などを含む一連の炊飯工程を実行する。蒸らし工程は、蒸らし1、追炊き及び蒸らし2となっている。炊飯中は、鍋内の圧力は、1.2気圧に昇圧される。なお、この昇圧時の圧力は、これ以上でもよい。この発明は、これらの炊飯工程のうち、特に、沸騰維持工程における制御に特徴があるので、以下、この沸騰維持工程の制御を詳述し、その他の工程の説明を省略する。
【0040】
図10〜図14を参照して、米種炊飯コース/硬さ炊き分けメニューの炊飯工程を説明する。なお、図10は米種炊飯コース/硬さ炊き分けにおける炊飯工程を示したフローチャート図、図11は炊飯工程における鍋内の温度及び圧力変化を示した温度・圧力曲線図、図12〜図14は、硬さ炊き分けメニューにおける炊飯量と圧力弁の開回数及び開時間との関係を規定したもので、図12は「白米・ふつう」、図13Aは「白米・かため」及び図13Bは「白米・やわらか」の規定表図である。なお、これらの図表では、圧力弁13A、13Bは、圧力弁A、Bと表記されている。
【0041】
「白米」硬さ炊き分けメニューは、図12、図13に示すように、白米における「ふつう」、「かため」及び「やわらか」に区分して、これらのメニューの沸騰維持工程における圧力弁の開回数及び開時間は、炊飯量に対応して以下の値に規定する。
1.白米・ふつう
この白米・ふつうメニューにおける炊飯量は、図12に示すように、炊飯量が少ない「少」の「QS」、以下同様にして「中」の「QM」及び「大」の「QL」に大別、すなわち大分類に分けるとともに、この大分類の炊飯量QS、QM及びQLを、それぞれ炊飯量QSを炊飯量「少」の「QS1」、「中」の「QS2」及び「大」の「QS3」、炊飯量QMを「少」の「QM1」、「中」の「QM2」及び「大」の「QM3」、炊飯量QLを「少」の「QL1」、「中」の「QL2」及び「大」の「QL3」に細分、すなわち中分類に分けて、それぞれの圧力弁の開回数及び開時間を規定する。
【0042】
大分類のQS、QM及びQLの関係は、QS<QM<QLとなり、具体例は、「QS(少)」0.5〜1.5カップ、「QM(中)」2.0〜3.0カップ、「QL(大)」3.5〜5.5カップ、また、中分類の関係は、QS1<QS2<QS3、QM1<QM2<QM3及びQL1<QL2<QL3となり、具体例は、「QS1〜QS3」は、0.5〜1.5カップ、「QM1〜QM3」は2.0〜3.0カップ及び「QL1〜QL3」は3.5〜5.5カップである。
【0043】
1−1.炊飯量QSにおける圧力弁の開回数及び開時間
この炊飯量QSは、他の炊飯量QM及びQLより少ないので、2個の圧力弁13A、13B(以下、圧力弁A、圧力弁Bという)のうち、一方の圧力弁Bを閉状態にして他方の圧力弁Aのみを開閉させる。この圧力弁Aの開回数は、各炊飯量QS1、QS2及びQS3(QS1<QS2<QS3)に対して、それぞれの開回数をam1、am2及びam3(am1≦am2≦am3、1≦(am1、am2、am3)≦NMm)と設定する。具体例は、am1≦am2≦am3=4(回)である。この圧力弁Aの開時間は、各炊飯量QS1、QS2及びQS3に対して、それぞれ開時間をtAM1、tAM2及びtAM3(tAM1≦tAM2≦tAM3)と設定する。具体例は、tAM1、tAM2及びtAM3は、2.0秒、2.5秒及び3.0秒である。
【0044】
この規定により、少ない炊飯量QSにおいては、一つの圧力弁のみを用いて、所定の開回数及び開時間で作動させるので、沸騰維持工程中に、鍋内の圧力を高圧から大気圧近傍まで一気に低下、すなわち減圧させる減圧スピードが両圧力弁を開動作させる場合に比べて遅くなり、鍋内の炊飯物の攪拌が抑制されるため、米粒が激しく衝突して生じる割れが防止されて炊き崩れがなくなる。また、中分類の炊飯量QS1、QS2及びQS3でも炊飯量に対応して開回数及び開時間を規定してあるので、鍋内の炊飯物をよりきめ細かく効率よく攪拌できる。
【0045】
1−2.炊飯量QMにおける圧力弁の開回数及び開時間
この炊飯量QMは、炊飯量QSより多くなり、1個の圧力弁のみでは攪拌が不十分になるので、2個の圧力弁A、Bを使用し、双方の圧力弁を同時に開閉させる。
【0046】
両圧力弁A、Bの開回数は、各炊飯量QM1、QM2及びQM3(QM1<QM2<QM3)に対して、それぞれの開回数をbm1、bm2及びbm3(bm1≦bm2≦bm3、1≦(bm1、bm2、bm3)≦Nma)と設定する。具体例は、bm1≦bm2≦bm3=4(回)である。
【0047】
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QM1、QM2及びQM3に対して、それぞれ開時間をtAM4、tAM5及びtAM6(tAM4≦tAM5≦tAM6)、tBM4、tBM5及びtBM6(tBM4≦tBM5≦tBM6)と設定する。具体例は、(tAM4、tAM5、tAM6)及び(tBM4、tBM5、tBM6)とは、それぞれ2.0秒、2.0秒及び3.0秒である。
【0048】
この規定により、大分類の炊飯量「QM」では、二つの圧力弁を用い、これらの圧力弁を所定の開回数及び開時間で作動させるので、沸騰維持工程中に、鍋内の圧力を高圧から大気圧近傍まで一気に低下、すなわち減圧させる減圧スピードが速くなり、鍋内の炊飯物が効率よく攪拌される。また、中分類の炊飯量QM1、QM2及びQM3でも炊飯量に対応して開回数及び開時間を規定してあるので、鍋内の炊飯物をよりきめ細かく効率よく攪拌できる。
【0049】
1−3.炊飯量QLにおける圧力弁の開回数及び開時間
この炊飯量QLは、炊飯量QMよりさらに多くなるので、炊飯量QMと同様に、2個の圧力弁A、Bの双方を同時に開閉させる。これら2個の圧力弁A、Bは、前半の所定回数NMmまでと、NMm後の後半の所定回数とで開時間を変更する。
【0050】
両圧力弁A、Bの開回数は、各炊飯量QL1、QL2及びQL3(QL1<QL2<QL3)に対して、それぞれの開回数をcm1、cm2及びcm3(cm1≦cm2≦cm3、NMm<(cm1、cm2、cm3))と設定する。具体例は、NMm=4、cm1≦cm2≦cm3=4〜5(回)である。
【0051】
(i)前半の開時間(所定回数NMmまで)
これらの圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QL7、QL8及びQL9に対して、それぞれの開時間をtAM7、tAM8及びtAM9(tAM7≦tAM8≦tAM9)、tBM7、tBM8及びtBM9(tBM7≦tBM8≦tBM9)とする。具体例は、(tAM7、tAM8、tAM9)及び(tBM7、tBM8、tBM9)は、それぞれ4.0秒、5.0秒及び6.0秒である。
【0052】
(ii)後半の開時間(所定回数NMm後)
所定回数NMm後の開回数は、各炊飯量QL1、QL2及びQL3(QL1<QL2<QL3)に対して、それぞれの開回数cm1、cm2、cm3から所定回数NMmを減じた値であり、この値をnとする。具体例は、n=1(回)である。
【0053】
これらの圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QL1、QL2及びQL3に対して、それぞれの開時間をtAM’7、tAM’8及びtAM’9(tAM’7≦tAM’8≦tAM’9)、tBM’7、tBM’8及びtBM’9(tBM’7≦tBM’8≦tBM’9)と設定する。具体例は、(tAM’7、tAM’8、tAM’9)及び(tBM’7、tBM’8、tBM’9)は、それぞれ2.0秒、2.0秒及び2.0秒である。
【0054】
この規定により、大分類の炊飯量「QH」では、二つの圧力弁を用い、これらの圧力弁を前半と後半とに分けて、所定の開回数及び開時間で作動させるので、鍋内の炊飯物を過不足なく攪拌できる。すなわち、前半で開時間を長くしてあるので、減圧スピードを速くして効率よく攪拌でき、また、後半では開時間を短くしてあるので、おねばの吹き零れを防止できる。
2.白米・かため
この白米・かためメニューにおける炊飯量も、図13Aに示すように、米・ふつうメニューと同様に、大分類QS、QM及びQLに分けるとともに、これらを中分類のQS1、QS2及びQS3、QM1、QM2及びQM3、QL1、QL2及びQL3に分けて、圧力弁の開回数及び開時間を規定する。
【0055】
2−1.炊飯量QSにおける圧力弁の開回数及び開時間
炊飯量「QS(少)」は、それぞれ炊飯量「少」の「QS1」、「中」の「QS2」及び「大」の「QS3」とに細分される。これらの関係は、QS1<QS2<QS3の関係となり、具体例は、QS1、QS2及びQS3は、0.5カップ、1.0カップ及び1.5カップである。
【0056】
この炊飯量QSは、他の炊飯量QM及びQLより少ないので、2個の圧力弁A、Bのうち、他方の圧力弁Bを閉成状態にして、一方の圧力弁Aのみを開閉させる。この圧力弁Aの開回数は、各炊飯量QS1、QS2及びQS3(QS1<QS2<QS3)に対して、それぞれ開回数をah1、ah2及びah3(ah1≦ah2≦ah3)とする。具体例は、ah1≦ah2≦ah3=2(回)である。
【0057】
圧力弁Aの開時間は、各炊飯量QS1、QS2及びQS3に対して、開時間tAH1、tAH2及びtAH3(tAH1<tAH2<tAH3)にする。具体例は、tAH1、tAH2及びtAH3は、2.0秒、2.5秒及び3.0秒である。
【0058】
この規定により、大分類の炊飯量「QS」で、一つの圧力弁のみで、規定した開回数及び開時間で効率よく鍋内を攪拌できる。また、中分類の炊飯量でも炊飯量に対応して、規定した開回数及び開時間で効率よく鍋内を攪拌でき、さらに、過攪拌が防止できる。
【0059】
2−2.炊飯量QMにおける圧力弁の開回数及び開時間
この炊飯量QMは、炊飯量QSより多いので、2個の圧力弁A、Bを使用し、双方の圧力弁を同時に開閉させる。
【0060】
圧力弁A、Bの開回数は、各炊飯量QM1、QM2及びQM3(QM1<QM2<QM3)対して、それぞれの開回数をbh1、bh2及びbh3(bh1≦bh2≦bh3)にする。具体例は、bh1≦bh2≦bh3=2(回)である。
【0061】
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QH1、QM2及びQM3に対して、開時間tAH4、tAH5及びtAH6(tAH4<tAH5<tAH6)、tBH4、tBH5及びtBH6(tBH4<tBH5<tBH6)とする。具体例は、(tAH4、tAH5、tAH6)及び(tBH4、tBH5、tBH6)は、2.0秒、2.0秒及び3.0秒である。
【0062】
この規定により、大分類の炊飯量「QM」では、二つの圧力弁を用い、規定した開回数及び開時間で効率よく鍋内を攪拌できる。また、中分類の炊飯量でも炊飯量に対応して、規定した開回数及び開時間で効率よく鍋内を攪拌できる。
【0063】
2−3.炊飯量QLにおける圧力弁の開回数及び開時間
この炊飯量QLは、炊飯量QMより多いので、炊飯量QMと同様に、2個の圧力弁A、Bの双方を同時に開閉する。両圧力弁A、Bは、各炊飯量QL1、QL2及びQL3(QL1<QL2<QL3)に対して、それぞれの開回数をch1、ch2及びch3(ch1≦ch2≦ch3)とする。具体例は、ch1≦ch2≦ch3=4〜5(回)である。
【0064】
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QL1、QL2及びQL3に対して、それぞれの開時間をtAH7、tAH8及びtAH9(tAH7<tAH8<tAH9)、tBH7、tBH8及びtBH9(tBH7<tBH8<tBH9)とする。具体例は、(tAH7、tAH8、tAH9)及び(tBH7、tBH8、tBH9)は、それぞれ4.0秒、5.0秒及び6.0秒である。
この規定により、大分類の炊飯量「QM」では、二つの圧力弁を用い、規定した開回数及び開時間で効率よく鍋内を攪拌できる。また、中分類の炊飯量でも炊飯量に対応して、規定した開回数及び開時間で効率よく鍋内を攪拌できる。
【0065】
また、「白米・かため」が選択された場合、この圧力弁の開閉動作が終了した後の沸騰維持工程において、両圧力弁は開成状態で炊飯が行われる。圧力をかけずに炊飯することにより、昇圧状態に比べ白米に水が浸透せず、かためのご飯が炊き上がる。
3.「白米・やわらか」
この炊飯メニューにおける炊飯量も、白米・ふつうメニューと同様に、大分類QS、QM及びQLに分けるとともに、これらを中分類のQS1、QS2及びQS3と、QM1、QM2及びQM3と、QL1、QL2及びQL3とに分けて、圧力弁の開回数及び開時間を規定する。
【0066】
3−1.炊飯量QSにおける圧力弁の開回数及び開時間
炊飯量「QS(少)」Sは、それぞれ炊飯量「少」の「QS1」、「中」の「QS2」及び「大」の「QS3」とに細分する。これらの関係は、QS1<QS2<QS3の関係となり、具体例は、QS1、QS2及びQS3は、0.5カップ、1.0カップ及び1.5カップである。
【0067】
この炊飯量QSは、他の炊飯量QM及びQLより少ないので、2個の圧力弁A、Bのうち、他方の圧力弁Bを閉成状態にして、一方の圧力弁Aのみを開閉させる。
【0068】
この圧力弁Aの開回数は、各炊飯量QS1、QS2及びQS3(QS1<QS2<QS3)に対して、それぞれの開回数がas1、as2及びas3(as1≦as2≦as3)にする。具体例は、as1≦as2≦as3=3(回)である。
【0069】
圧力弁Aの開時間は、各炊飯量QS1、QS2及びQS3に対して、それぞれの開時間がtAS1、tAS2及びtAS3(tAS1<tAS2<tAS3)にする。具体例は、tAS1、tAS2及びtAS3は、2.0秒、2.5秒及び3.0秒である。
【0070】
3−2.炊飯量QMにおける圧力弁の開回数及び開時間
この炊飯量QMは、炊飯量QSより多いので、2個の圧力弁A、Bを使用し、双方の圧力弁を同時に開閉させる。
【0071】
両圧力弁A、Bの開回数は、1〜Nmaの範囲にあって、各炊飯量QM1、QM2及びQM3(QM1<QM2<QM3)対して、それぞれの開回数がbs1、bs2及びbs3(bs1≦bs2≦bs3)にする。具体例は、bs1≦bs2≦bs3=3(回)である。
【0072】
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QS1、QM2及びQM3に対して、それぞれの開時間がtAS4、tAS5及びtAS6(tAS4≦tAS5<tAS6)、tBS4、tBS5及びtBS6(tBS4≦tBS5<tBS6)にする。具体例は、(tAS4、tAS5、tAS6)及び(tBS4、tBS5、tBS6)は、それぞれ2.0秒、2.0秒及び3.0秒である。
【0073】
3−3.炊飯量QLにおける圧力弁の開回数及び開時間
この炊飯量QLは、炊飯量QMより多いので、炊飯量QMと同様に、2個の圧力弁A、Bの双方を同時に開閉させる。両圧力弁A、Bは、各炊飯量QL1、QL2及びQL3(QL1<QL2<QL3)に対して、それぞれの開回数がcs1、cs2及びcs3(cs1≦cs2≦cs3)にする。具体例は、cs1≦cs2≦cs3=3(回)である。両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QL1、QL2及びQL3に対して、それぞれの開時間がtAS7、tAS8及びtAS9(tAS7<tAS8<tAS9)、tBS7、tBS8及びtBS9(tBS7<tBS8<tBS9)にする。具体例は、(tAS7、tAS8、tAS9)及び(tBS7、tBS8、tBS9)はそれぞれ4.0秒、5.0秒及び6.0秒である。
【0074】
図14は、玄米炊飯における炊飯量と圧力弁の開回数及び開時間との関係を表している。
4.玄米炊飯
この玄米炊飯における炊飯量は、炊き分けメニューと同様に、大分類QS、QM及びQLに分けるとともに、これらを中分類のQS1、QS2及びQS3、QM1、QM2及びQM3、QL1、QL2及びQL3に分けて、圧力弁の開回数及び開時間を規定する。
【0075】
4−1.炊飯量QSにおける圧力弁の開回数及び開時間
(i)開回数p回までの開時間
両圧力弁A、Bは開回数p回まで、各炊飯量QS1、QS2及びQS3(QS1<QS2<QS3)に対して、それぞれの開時間がtC11、tC21及びtC31(tC11≦tC21≦tC31)にする。具体例は、p=1、tC11、tC21及びtC31は、それぞれ3.0秒、3.0秒及び3.0秒である。
【0076】
(ii)開回数p<n≦q回までの開時間
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QS1、QS2及びQS3(QS1<QS2<Qs3)に対して、それぞれの開時間がtC12、tC22及びtC32(tC12≦tC22≦tC32)、にする。具体例は、q=4、tC12、tC22及びtC32は、それぞれ3.0秒、3.0秒及び3.0秒である。
【0077】
(iii)開回数q<n≦r回までの開時間
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QS1、QS2及びQS3(QS1<QS2<QS3)に対して、それぞれの開時間がtC13、tC23及びtC33(tC13≦tC23≦tC33)、にする。具体例は、r=12、tC13、tC23及びtC33は、それぞれ2.0秒、2.0秒及び2.0秒である。
4−2.炊飯量QMにおける圧力弁の開回数及び開時間
(i)開回数p回までの開時間
両圧力弁A、Bは開回数p回まで、各炊飯量QM1、QM2及びQM3(QM1<QM2<QM3)に対して、それぞれの開時間がtC41、tC51及びtC61(tC41≦tC51≦tC61)にする。具体例は、p=1、tC41、tC51及びtC61は、それぞれ4.0秒、4.0秒及び4.0秒である。
【0078】
(ii)開回数p<n≦q回までの開時間
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QM1、QM2及びQM3(QM1<QM2<QM3)に対して、それぞれの開時間がtC42、tC52及びtC62(tC42≦tC52≦tC62)にする。具体例は、q=4、tC42、tC52及びtC62は、それぞれ4.0秒、4.0秒及び4.0秒である。
【0079】
(iii)開回数q<n≦r回までの開時間
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QM1、QM2及びQM3(QM1<QM2<QM3)に対して、それぞれの開時間がtC43、tC53及びtC63(tC43≦tC53≦tC63)にする。具体例は、r=12、tC43、tC53及びtC63は、それぞれ2.0秒、2.0秒及び2.0秒である。
4−3.炊飯量QLにおける圧力弁の開回数及び開時間
(i)開回数p回までの開時間
両圧力弁A、Bは開回数p回まで、各炊飯量QH1、QH2及びQH3(QH1<QH2<QH3)に対して、それぞれの開時間がtC71、tC81及びtC91(tC71<tC81≦tC91)にする。具体例は、p=1、tC71、tC81及びtC91は、それぞれ4.0秒、5.0秒及び4.0秒である。
【0080】
(ii)開回数p<n≦q回までの開時間
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QH1、QH2及びQH3(QH1<QH2<QH3)に対して、それぞれの開時間がtC72、tC82及びtC92(tC72>tC82≧tC92)にする。具体例は、p=1、tC72、tC82及びtC92は、それぞれ4.0秒、2.0秒及び2.0秒である。
【0081】
(iii)開回数q<n≦r回までの開時間
両圧力弁A、Bの開時間は、各炊飯量QH1、QH2及びQH3(QH1<QH2<QH3)に対して、それぞれの開時間がtC73、tC83及びtC93(tC73>tC83≧tC93)にする。具体例は、r=12、tC73、tC83及びtC93は、それぞれ2.0秒、1.0秒及び1.0秒である。
【0082】
玄米は、白米に比べ吸水率が悪くなっている。その原因は、玄米の表面が果皮、種皮及び糊粉層などで覆われ、この果皮などが米芯への水の浸入を阻止しているからである。この炊飯方法によれば、玄米は、互いに擦り合わされ且つ衝突し合って、玄米の表面を覆っている果皮及び種皮が傷つけ破られ、この傷つき破られた部分から熱湯が芯部分へ浸透して、
胚乳や果皮、種皮をも軟化膨潤させて白米飯のような柔らかく炊き上げることができる。
なお、この方法は、玄米だけでなく、雑穀系の米にも適用できるものである。
【符号の説明】
【0083】
1 圧力式炊飯器
2 炊飯器本体
3 外部ケース
4 内ケース
5 加熱手段
5a 鍋底ヒーター
5b 側部ヒーター
7 蓋係止機構
8 解除釦
9 鍋
10 蓋体
11 内蓋
12 おねば分散板
13A、13B 圧力弁
15 ボール
17A、17B 圧力弁開放機構
23 蓋係止部材
24 係止部材
27 ロック片
28 蓋ロック部材
29 外蓋
30 表示操作部
31 表示パネル
32 おねば貯留タンク
33 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米と水とを含む炊飯物を入れる鍋と、前記鍋を収容して前記炊飯物を加熱する加熱手段を設けた炊飯器本体と、前記鍋及び炊飯器本体の開口を塞ぐ開閉自在な蓋体と、前記蓋体に配設した2個の圧力弁と、前記加熱手段及び圧力弁を制御して、吸水工程、立上加熱工程及び沸騰維持工程を含む一連の炊飯工程を実行し、前記沸騰維持工程では前記圧力弁を所定の開時間で所定回数間歇的に開放制御する炊飯プログラム及び前記鍋内の炊飯量を判定する量判定手段を有する制御装置と、米種を含む炊飯コース/メニューを選択するコース選択手段とを備え、前記鍋内を大気圧以上に昇圧して炊飯する圧力式炊飯器において、
前記制御装置は、前記炊飯プログラムを記憶する記憶手段を備え、
前記記憶手段には、前記鍋内の炊飯量に対応させて、前記沸騰維持工程における前記圧力弁の選択並びに開回数及び開時間を記憶しておき、
前記制御装置は、前記沸騰維持工程において、前記量判定手段で判定された炊飯量に応じて、前記2個の圧力弁のうちのいずれか一方、又は双方の圧力弁の選択を前記記憶手段から呼出して作動させる弁選択・作動手段と、前記弁選択・作動手段で選択された圧力弁の開回数及び開時間を前記記憶手段から呼出して制御する弁開回数・時間制御手段とを備えていることを特徴とする圧力式炊飯器。
【請求項2】
前記記憶手段には、さらに、硬さ炊き分けメニューに対応させて、前記沸騰維持工程における前記圧力弁の選択並びに開回数及び開時間を記憶しておき、
前記制御装置は、前記沸騰維持工程において、さらに、前記コース選択手段で選定された硬さ炊き分けメニューに応じて、前記弁選択・作動手段は、前記2個の圧力弁のうちのいずれか一方、又は双方の圧力弁を選択し、前記弁開回数・時間制御手段は前記弁選択・作動手段で選択された圧力弁の開回数及び開時間を制御するとことを特徴とする請求項1に記載の圧力式炊飯器。
【請求項3】
前記コース選択手段で白米が選定されたときに、前記弁選択・作動手段は、所定の基準炊飯量以下のときに、前記2個の圧力弁のうち、一方を閉成した状態にして他方のみを所定の開回数及び開時間開閉させ、前記基準炊飯量を超える炊飯量のときに前記2個の圧力弁を同時に所定の開回数及び開時間開閉させることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力式炊飯器。
【請求項4】
前記制御装置は、前記コース選択手段で白米・ふつうメニューが選定されたときに、前記沸騰維持工程において、
前記圧力弁の開回数が基準回数を超えたときに、開時間を前記基準回数前の開時間に比べて短くして開閉させることを特徴とする請求項3に記載の圧力式炊飯器。
【請求項5】
前記制御装置は、前記コース選択手段で白米・かためメニューが選定されたときに、沸騰維持工程において、
前記圧力弁が所定回数開閉された後に、開成して沸騰維持工程を続行することを特徴とする請求項3に記載の圧力式炊飯器。
【請求項6】
前記記憶手段は、玄米に対応させて、前記沸騰維持工程における前記圧力弁の開回数及び開時間を記憶しておき、
前記制御装置は、前記沸騰維持工程において、さらに、前記コース選択手段で選定された玄米に応じて、前記弁選択・作動手段は、前記圧力弁を選択し、前記弁開回数・時間制御手段は、前記弁選択・作動手段で選択された圧力弁の開回数及び開時間を制御することを特徴とする請求項1に記載の圧力式炊飯器。
【請求項1】
米と水とを含む炊飯物を入れる鍋と、前記鍋を収容して前記炊飯物を加熱する加熱手段を設けた炊飯器本体と、前記鍋及び炊飯器本体の開口を塞ぐ開閉自在な蓋体と、前記蓋体に配設した2個の圧力弁と、前記加熱手段及び圧力弁を制御して、吸水工程、立上加熱工程及び沸騰維持工程を含む一連の炊飯工程を実行し、前記沸騰維持工程では前記圧力弁を所定の開時間で所定回数間歇的に開放制御する炊飯プログラム及び前記鍋内の炊飯量を判定する量判定手段を有する制御装置と、米種を含む炊飯コース/メニューを選択するコース選択手段とを備え、前記鍋内を大気圧以上に昇圧して炊飯する圧力式炊飯器において、
前記制御装置は、前記炊飯プログラムを記憶する記憶手段を備え、
前記記憶手段には、前記鍋内の炊飯量に対応させて、前記沸騰維持工程における前記圧力弁の選択並びに開回数及び開時間を記憶しておき、
前記制御装置は、前記沸騰維持工程において、前記量判定手段で判定された炊飯量に応じて、前記2個の圧力弁のうちのいずれか一方、又は双方の圧力弁の選択を前記記憶手段から呼出して作動させる弁選択・作動手段と、前記弁選択・作動手段で選択された圧力弁の開回数及び開時間を前記記憶手段から呼出して制御する弁開回数・時間制御手段とを備えていることを特徴とする圧力式炊飯器。
【請求項2】
前記記憶手段には、さらに、硬さ炊き分けメニューに対応させて、前記沸騰維持工程における前記圧力弁の選択並びに開回数及び開時間を記憶しておき、
前記制御装置は、前記沸騰維持工程において、さらに、前記コース選択手段で選定された硬さ炊き分けメニューに応じて、前記弁選択・作動手段は、前記2個の圧力弁のうちのいずれか一方、又は双方の圧力弁を選択し、前記弁開回数・時間制御手段は前記弁選択・作動手段で選択された圧力弁の開回数及び開時間を制御するとことを特徴とする請求項1に記載の圧力式炊飯器。
【請求項3】
前記コース選択手段で白米が選定されたときに、前記弁選択・作動手段は、所定の基準炊飯量以下のときに、前記2個の圧力弁のうち、一方を閉成した状態にして他方のみを所定の開回数及び開時間開閉させ、前記基準炊飯量を超える炊飯量のときに前記2個の圧力弁を同時に所定の開回数及び開時間開閉させることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力式炊飯器。
【請求項4】
前記制御装置は、前記コース選択手段で白米・ふつうメニューが選定されたときに、前記沸騰維持工程において、
前記圧力弁の開回数が基準回数を超えたときに、開時間を前記基準回数前の開時間に比べて短くして開閉させることを特徴とする請求項3に記載の圧力式炊飯器。
【請求項5】
前記制御装置は、前記コース選択手段で白米・かためメニューが選定されたときに、沸騰維持工程において、
前記圧力弁が所定回数開閉された後に、開成して沸騰維持工程を続行することを特徴とする請求項3に記載の圧力式炊飯器。
【請求項6】
前記記憶手段は、玄米に対応させて、前記沸騰維持工程における前記圧力弁の開回数及び開時間を記憶しておき、
前記制御装置は、前記沸騰維持工程において、さらに、前記コース選択手段で選定された玄米に応じて、前記弁選択・作動手段は、前記圧力弁を選択し、前記弁開回数・時間制御手段は、前記弁選択・作動手段で選択された圧力弁の開回数及び開時間を制御することを特徴とする請求項1に記載の圧力式炊飯器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−50488(P2012−50488A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193316(P2010−193316)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】
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