説明

圧力式炊飯器

【課題】蓋体内部の圧力弁や貯留タンクなど、丸洗いしても手の届きにくい場所の汚れや臭いを落とすことができる圧力式炊飯器を提供する。
【解決手段】鍋と、鍋が収容される開口部及び鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、開閉自在な蓋体と、鍋内の圧力を調整する圧力弁と、炊飯コース及びクリーニングコースを実行する制御手段とを備える圧力式炊飯器において、前記制御手段は、前記クリーニングコースが選択された際に、前記鍋内の水を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程と沸騰状態に維持する沸騰維持工程を実行し、立上加熱工程において鍋内を加熱して加圧した後に、沸騰維持工程において、圧力弁を所定時間開放して一気に大気圧まで減圧して鍋内を突沸させる工程を行い、沸騰維持工程の終了後に加熱を中止し、前記圧力弁を所定時間開放した後、前記圧力弁を所定時間閉じて前記鍋内を負圧にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器の鍋及び蓋部分のクリーニングを行うクリーニングコースを有する圧力式炊飯器に関し、特に蓋等を取り外して洗浄する際に手の届かない部分のクリーニングを行うことのできる圧力式炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気炊飯器(以下、炊飯器という)は、鍋内に米と水とからなる被炊飯物を投入し、この鍋内の被炊飯物を加熱して炊飯するものである。この種の炊飯器は、炊飯時に鍋内の圧力をほぼ常圧で炊飯するタイプのものと、所定圧力に昇圧して炊飯するタイプのものに大別されている。近年、これらの炊飯器には、マイクロコンピュータが搭載され、このマイクロコンピュータによって、様々な炊飯コース、例えば、白米・玄米などの米種に応じた米種炊飯コース、硬め・柔らかめなどを調節してお好みの炊飯ができるお好み炊飯コース、及び具材や調味料等を加えて炊き込みご飯を炊飯する炊き込み炊飯コースなどが1台でできるようになっている。
【0003】
また、圧力式炊飯器においては、この鍋内の被炊飯物を加熱すると共に蓋体に設けられた圧力弁により鍋内を昇圧して炊飯するため、炊飯時は、鍋内が高温となっていると共に、内圧が高くなっている。さらに、従来の炊飯器には、炊飯の立上加熱工程時に生じる蒸気を外部へ逃がすための蒸気口が設けられている。また、炊飯時には、鍋内の被炊飯物が沸騰するので、吹きこぼれが生じる。この吹きこぼれは、粘り気のある糊状の汁であって、この糊状の汁は旨み成分を含んでおり、通常、「おねば」と呼ばれている(以下、この吹きこぼれを「おねば」ともいう)。
【0004】
この吹きこぼれが、そのまま鍋外へ放出されてしまうと、旨み成分も排出されてしまうので、ご飯が美味しく炊きあがらない。そこで、炊飯器内にこのおねばを貯留する貯留タンクを設けて、この貯留タンクにおねばを一時貯留して置き、立上加熱工程終了後に鍋内が負圧になったときにおねばを鍋内に戻して美味しく炊きあげる炊飯器が開発されている。
【0005】
このような炊飯器において、炊飯回数が増えると次第に鍋や内蓋、蓋パッキン等の部材に汚れが蓄積し、炊き上がったご飯に臭いが残ることがあった。また、具材や調味料等を加える炊き込み炊飯コースを実行した後にも、同様の問題が生じていた。一方、一定期間炊飯器を使用しない場合にも、炊飯器内部に埃等の汚れが蓄積し、炊飯器を使用する前に鍋や内蓋等を水洗いしても、取り外しのできない部分は汚れを完全に落とすことが難しかった。
【0006】
そこで、クリーニング機能を有し、このクリーニング機能によって炊飯器の鍋に入れられた水を加熱し、一定時間沸騰状態あるいは沸騰状態に近い状態を維持して、鍋や内蓋、蓋パッキン等のについた臭いを減少させることができる炊飯器が知られている。
【0007】
例えば、下記特許文献1に開示された炊飯器は、内鍋を開閉自在に覆う鍋蓋と、鍋蓋の下部に配置され内鍋の上面開口部に当接する鍋パッキンと、内鍋を加熱する鍋加熱手段とを備え、少なくとも内鍋、鍋蓋、及び鍋パッキンの臭いを減少させるべく内鍋に入れた水を所定時間沸騰させるコースを有している。そして、制御手段が鍋加熱手段を駆動して内鍋に入れた水を一定時間沸騰させることにより、水蒸気を発生させる。内鍋表面と鍋蓋と鍋パッキンにこの水蒸気が当たると、その水蒸気により臭いが抽出され、内鍋表面と鍋蓋と鍋パッキンに付着浸透した臭いを減少させることができるようになる。
【0008】
また、下記特許文献2には、内鍋と、内鍋を取出し可能に収容する本体と、本体に取り付けられる蓋体と、内鍋を加熱する鍋加熱手段と、蓋体を加熱する蓋加熱手段と、内鍋の温度を検出する鍋温度検出手段と、蓋体の温度を検出する蓋温度検出手段と、鍋温度検出手段と蓋温度検出手段による検出温度に基づいて鍋加熱手段と蓋加熱手段を制御して炊飯を行うとともに、内鍋内に入れられた水を煮沸する制御手段とからなる炊飯調理器において、制御手段は、鍋加熱手段と蓋加熱手段により内鍋内の水を加熱して沸騰させる沸騰工程と、蓋温度検出手段により沸騰を検出すると蓋加熱手段による加熱を停止するとともに、鍋加熱手段による加熱量を低減して所定時間沸騰を維持する沸騰維持工程とを実行する炊飯調理器が開示されている。このように、沸騰維持工程で蓋加熱手段による加熱を停止するので、蓋内の蒸気通路を通過する蒸気の乾燥がなくなり、湿った蒸気により蓋内の蒸気通路のクリーニングを十分に行うことができるようになる。
【0009】
また、下記特許文献2に開示された炊飯調理器は、沸騰工程および沸騰維持工程において、内鍋内を大気圧を越える一定の圧力に調節する調圧手段を備え、この調圧手段により、内鍋内の水の温度が100℃を越えるのでクリーニング性が向上する一方、煮沸中は蒸気が放出されないので、周囲に悪影響を及ぼすことがなく、安全である。
【0010】
また、下記特許文献3に開示された電気炊飯器は、米と水とを収容する内鍋を取出自在に収納する炊飯器本体と、内鍋を加熱する加熱手段と、内鍋の温度を検出する温度センサーと、マイコン機能とを備え、所定の炊飯曲線に従ってご飯を炊き上げる炊飯モード、所定の保温温度にご飯を保温する保温モードおよび内鍋内に所定量の水を収容して加熱することにより内鍋等をクリーニングするクリーニングモードを択一的に選択できるように構成した電気炊飯器であって、クリーニングモードが選択された場合、保温温度よりも高いが沸騰には至らない設定温度にまで加熱する昇温工程と、昇温工程終了後において設定温度以下の第1の所定温度に所定時間保持する第1の温度保持工程とを行うことを特徴とする。
【0011】
下記特許文献3に開示された電気炊飯器では、クリーニングモードが選択された場合には、内鍋内に収容された水は、保温温度よりも高いが沸騰には至らない設定温度にまで加熱され、その後前記設定温度以下の第1の所定温度に所定時間保持されるため、昇温工程後における第1の温度保持工程において、内鍋を含む炊飯器本体内の部品は、高温にさらされて、炊飯の繰り返しにより付着した臭いが大幅に減少することとなる。また、クリーニング制御中においては、保温温度よりも高いが沸騰には至らない設定温度以下の第1の所定温度に所定時間保持されることとなるため、消費電力が抑制できるとともに、発生する水蒸気の量が可及的に少なくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3446515号公報
【特許文献2】特許第3029429号公報
【特許文献3】特許第4066957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記特許文献1及び3に開示された炊飯器等は常圧式のものであり、クリーニングを実行することによって、鍋や内蓋等の汚れや臭いを減少させることができる。しかしながら、圧力式炊飯器においては、蓋体に鍋内を昇圧するための圧力弁や蒸気口及びおねば貯留タンクなどが設けられ、構造が複雑化しているため、従来の蒸気によるクリーニングでは汚れ落ちが不十分であった。
【0014】
また、上記特許文献3に開示された炊飯器は蓋体を取り外して丸洗いすることが可能であり、沸騰させない状態でのクリーニング制御であっても十分なクリーニング効果が期待できるものであるが、上述のように蓋体の構造が複雑化している圧力式炊飯器においては、蓋を丸洗いしても手の届きにくい場所、例えば圧力弁内のボール部周辺などについた汚れや異物等を完全に落とすことが難しかった。
【0015】
上記特許文献2に開示された炊飯調理器は圧力式のものであり、内鍋内は大気圧以上の圧力に加圧されるので、沸騰温度が上昇し、クリーニング性が向上する。なお、調圧ボールによって蒸気流路が遮断されるが、一定圧力以上に内圧が上昇すると、内蓋に設けた安全弁が開いて蒸気流路に蒸気が流れるが、調圧ボール周辺の汚れを完全に落とすためには蒸気量が十分ではなかった。
【0016】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、その目的は、クリーニングコースを実行することによって、鍋、内蓋のみならず蓋体内部の圧力弁や貯留タンクなど、丸洗いしても手の届きにくい場所の汚れや臭いを落とすことができる圧力式炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、被炊飯物が投入される鍋と、前記鍋が収容される開口部及び前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、この炊飯器本体の開口部を塞ぐ開閉自在な蓋体と、前記鍋内の圧力を調整する圧力弁と、炊飯コース及びクリーニングコースを実行する制御手段とを備える圧力式炊飯器において、前記制御手段は、前記クリーニングコースが選択された際に、前記鍋内の水を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程と沸騰状態に維持する沸騰維持工程を実行し、前記立上加熱工程において、前記鍋内を加熱して加圧した後に、前記沸騰維持工程において、前記圧力弁を所定時間開放して一気に大気圧まで減圧して鍋内を突沸させる工程を複数回行い、前記沸騰維持工程の終了後に加熱を中止し、前記圧力弁を所定時間開放した後、前記圧力弁を所定時間閉じて前記鍋内を負圧にすることを特徴とする。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の圧力式炊飯器において、前記制御手段は、前記沸騰維持行程において、前記圧力弁を所定時間開放して一気に大気圧まで減圧して鍋内を突沸させる工程を複数回行うことを特徴とする。
【0019】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の圧力式炊飯器において、前記蓋体には、炊飯コースの実行時に吹きこぼれるおねばを一時貯留する貯留タンクが設けられ、前記クリーニングコースが選択された際には、前記貯留タンクに取り除かれた汚れを含む水分が貯留され、前記鍋内を負圧にした際に前記貯留タンクに貯留された汚れを含む水分が鍋内に戻されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の圧力式炊飯器の発明によれば、クリーニングコースにおいて、鍋内を加熱して加圧した後に加熱を中止して一気に大気圧まで減圧して鍋内を突沸させることにより、高温の蒸気が勢いよく噴出し、この蒸気によって、手の届きにくい場所の汚れや異物を取り除くことができる。
【0021】
また、本発明の圧力式炊飯器によると、沸騰維持工程の終了後に圧力弁を開放することによって、高温の蒸気によりふやけた汚れが貯留タンクに溜まり、その後圧力弁を閉じて鍋内を負圧にすることによって、溜まった汚れが鍋内に落ちることにより、圧力弁付近等の汚れを確実に除去することができる。
【0022】
また、請求項2に記載の圧力式炊飯器の発明によれば、鍋内を複数回突沸させることによって、こびりついた汚れをより取り除きやすくなる。
【0023】
また、請求項3に記載の圧力式炊飯器の発明によれば、炊飯コースの実行時に吹きこぼれるおねばを一時貯留する貯留タンクをクリーニングコースにおける取り除かれた汚れを含む水分の貯留手段として利用できるので、特にクリーニングコースのための特殊な構成を設けることなく、有効にクリーニングコースを実行することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る炊飯器の正面図である。
【図2】図1の炊飯器の部分断面図である。
【図3】図2の圧力弁開放機構を拡大した拡大断面図である。
【図4】クリーニングコースにおける鍋内の温度及び圧力弁の作動状況を示した温度曲線図である。
【図5】クリーニングコースのフローチャート図である。
【図6】図5に引き続くクリーニングコースのフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための圧力式炊飯器を例示するものであって、本発明をこの圧力式炊飯器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【0026】
本発明の実施形態に係る圧力式炊飯器の構造について、図1〜図3を用いて説明する。なお、図1は本発明の一実施例に係る炊飯器の正面図である。図2は図1の炊飯器の部分断面図である。また、図3は図2の圧力弁開放機構を拡大した拡大断面図である。
【0027】
圧力式炊飯器1は、炊飯器本体(以下「本体」という)2と本体2を覆う開閉自在の蓋体3とで構成される。本体2には、被炊飯物である米及び水が投入される深底の容器からなる鍋4と、上方にこの鍋4が収容される開口部及び内部にこの鍋4を加熱して被炊飯物を加熱する加熱手段5を有しており、さらに炊飯を制御する制御部(図示省略)と、炊飯メニューを操作する操作部6と、操作された炊飯メニューを表示する表示部7とが、正面側に設けられている。
【0028】
操作部6は、炊飯メニュー選択ボタン8、炊飯スタート/保温ボタン9、予約ボタン10、取り消しボタン11、十字キー12よりなり、これらの操作ボタンを適宜操作して、炊飯やクリーニングを行うように設定できるようになっている。
【0029】
本体2は、有底箱状の外部ケース13と、この外部ケース13に収容される収納ケース14(図2参照)とからなり、外部ケース13と収納ケース14との間に隙間が形成され、この隙間に制御部(制御手段)を構成する制御装置(図示省略)が配設されている。収納ケース14には鍋4が収容される。この鍋4は、例えばアルミニウムとステンレスとのクラッド材で形成されている。
【0030】
蓋体3は、一端をヒンジ15により本体2に枢着した着脱自在の内蓋16と、外方を覆う外蓋17とで構成されており、内蓋16には、圧力弁18及び圧力弁開放機構23が形成されている。また、内蓋16には鍋4内が異常に加圧された時、例えば炊飯中に圧力弁18が故障して開かないときなどに開放して鍋内の圧力を逃がす安全弁24を備えている。
【0031】
圧力弁18は、図3に示すように、圧力孔19を有する弁座20と、この弁座20の上に自重により圧力孔19を塞ぐ金属性のボール21と、このボール21を覆うカバー22とからなる。この圧力弁18は、鍋4内の圧力とボール21の自重とのバランスによって、ボール21が圧力孔19上に移動されたり離れたりすることにより、さらには圧力弁開放機構23の制御によって強制的にボール21を移動させることにより、圧力孔19の開閉が行われる。
【0032】
また、圧力弁開放機構23は、電磁コイルが巻回されたシリンダー23aと、このシリンダー内を電磁コイルの励磁により入出し、ボール21を移動させるプランジャー23bと、プランジャー23bの先端に装着された作動棹25と、シリンダーの一端部と作動棹25との間に設けられたバネ26とで構成されている。
【0033】
圧力弁開放機構23は、制御手段27(図2参照)により制御される。すなわち、圧力弁開放機構23は、制御手段27からの出力を受けていないときは、プランジャー23bがシリンダー23aから突出して圧力孔19上のボール21を圧力孔19の横方向に押し、圧力孔19を強制的に開放する。また、制御手段27の出力を受けた時には、プランジャー23bがシリンダー23a内に引き込まれる。このときボール21は、自重により圧力孔19上に戻り、圧力孔19を閉塞する。このように圧力弁開放機構23が動作すると、このプランジャー23bによる圧力弁18の開放動作により、炊飯工程中に加圧された鍋4内の圧力を強制的に低下させることができる。
【0034】
外蓋17には、吹きこぼれるおねばを一時貯留する貯留タンク28が着脱自在に装着されている。貯留タンク28の内部は蒸気とおねばとを分離させるために上下から分離構造を設けた多室構造となっており、蒸気口28aを蒸気のみが通過できるようになっている。おねばは、立上加熱工程、沸騰維持工程で貯留タンク28に溜まり、蒸らし工程で、鍋4内の圧力が低下すると、負圧弁(図示省略)より、鍋4内に還元されるようになっている。
【0035】
本体2は、図1に示すように、炊飯メニュー選択ボタン8により各種の炊飯コースを選択するための選択手段29を備えている。制御手段27は、周知のようにCPU、ROM、RAMなどで構成されたハードウエアと、後述するフローチャートの内容を実行するためのソフトウエアとにより構成される。
【0036】
鍋4の底部には、図2に示すように、炊飯量検出手段としても機能する鍋底温度を検出するための温度センサー30bが取り付けられており、また、蓋体3には適切な位置に蒸気温度を検出するための沸騰検出手段となる蒸気センサー30aが取付けられており、各センサー30a、30bの出力は制御手段27に送られるようになっている。なお、温度センサー30bの出力により鍋内の炊飯量を検出することは、既に公知であるので詳細な説明を省略する。
【0037】
前記圧力弁18の下部には、図2、図3に示すように、弁座20に着脱自在に装着され複数個の小孔を穿設したフィルター31が装着されている。このフィルター31を装着することにより、圧力弁18の開放時に鍋内を一気に流動する米粒がこのフィルター31によって阻止されて外気中に放出されるのを防止できる。
【0038】
次に、本発明の実施形態に係る圧力式炊飯器1における制御手段27による制御工程を図2、図3、温度曲線図である図4及びフローチャート図である図5、図6を用いて説明するが、炊飯時の制御工程については省略し、クリーニングコースに関する制御工程について説明する。なお、図4は、クリーニングコースにおける鍋底温度センサーにより検出された鍋底温度曲線(太線)及び蒸気温度曲線(点線)と、圧力弁の作動状況を相関的に示す説明図である。図5はクリーニングコースの制御工程のフローチャート図であり、図6は図5に引き続くクリーニングコースの制御工程のフローチャート図である。
【0039】
はじめに、所定量の水が入れられた鍋4が本体2内に収納されて蓋体3が閉められ、操作部6が操作されてクリーニングコースが選択される(S1)。クリーニングコースがスタートされると(S2)、立上加熱工程Iが開始され(S3)、加熱手段5への通電が行われる(S4)。加熱手段5への通電によって加熱手段5の底部ヒータに高周波電流が流れ、鍋4に渦電流が生じることにより鍋が発熱する。同時に、圧力弁開放機構23により、プランジャー23bがシリンダー23a内へ引き込まれ、ボール21が自重によって圧力孔19を塞ぐことにより圧力弁18が閉成され、鍋内は大気圧を超える圧力に昇圧される(S5)。また、タイマー(図示せず)が所定の時間T1の計時を開始する(S6)。鍋4内が昇圧・沸騰すると、蒸気センサー30aが蒸気温度θを検出し(S7)、蒸気温度θが所定温度θ1(例えば、75℃)となると(S8)、制御装置は沸騰維持工程IIへ移行させる(S9)。
【0040】
沸騰維持工程IIでは、加熱手段5への通電が行われる(S10)と共に、制御手段27により圧力弁開放機構23を作動させて、圧力弁18を間歇的に所定回数開放させる(S11)。本実施形態においては、具体的には、圧力弁開放機構23による圧力弁18の開放によって、間歇的に圧力を変更する操作を複数回行う。すなわち、圧力弁18を強制的に複数回開作動し、加圧された鍋内と大気とを遮断させた状態から連通させて鍋内の圧力を一気に大気圧まで低下させることを繰り返す。鍋内が加圧された状態では鍋内の水の沸点が上昇しており、鍋内温度は常圧における水の沸点である100℃を超える温度となっている。鍋内圧力が大きく低下する毎に、突沸現象が生じて鍋内に蒸気が発生し、開放された圧力弁から高温の蒸気が勢いよく圧力孔19、弁座20、ボール21などに当たりながら、貯留タンク28、蒸気口28aを通じて噴出する。
【0041】
このように、高温の蒸気が圧力弁18、貯留タンク28等に勢いよくあたることにより、ボール21の周囲など、取り外して丸洗いしても手の届かない部分に付着した汚れをふやかして取り除くことができる。なお、圧力弁の開放回数は一回でも複数回でもよいが、複数回行うことにより、こびりついた汚れをより取り除きやすくなる。また、貯留タンク28には取り除かれた汚れを含む水分が貯留される。圧力弁18の所定回数の開放制御後は、圧力弁を閉成して、残りの沸騰維持工程IIを継続する。
【0042】
タイマーが所定時間T1(例えば、30分)を計測する(S12)と、終了工程IIIに移行し(S13)、加熱を停止する(S14)と共に、圧力弁開放機構23による圧力弁18の開放作動を行い(S15)、所定時間T2の計時を開始する(S16)。加熱を停止しているので鍋内の温度がゆるやかに低下するとともに、圧力弁18が開放されているので鍋4内の蒸気が排出され、鍋4内の圧力は常圧へと近づく。
【0043】
タイマーが所定時間T2(例えば、3分)を計時すると(S17)、所定時間T3の計時を開始し(S18)、再度圧力弁開放機構23により圧力弁18が閉成される(S19)。圧力弁18が閉成されることにより、鍋4内の圧力が低下し負圧の状態となり、貯留タンク28に貯留された汚れを含む水分が負圧弁を通じて鍋4内に戻される。このように、取り除かれた汚れが鍋内に落ちることにより、汚れを確実に除去することができる。
【0044】
その後、タイマーが所定時間T3(例えば、2分)を計時すると(S20)、圧力弁18を開放して(S21)、クリーニングコースを終了する。圧力弁18をクリーニングコース終了前に再度開放することにより、鍋内が再び常圧となり、蓋体の開閉を容易にすることができる。
【0045】
以上のように、本発明の圧力式炊飯器は、クリーニングコースにおいて、鍋内を加熱して加圧した後に圧力弁を開放して一気に大気圧まで減圧して鍋内を突沸させることにより、蒸気が勢いよく噴出し、この蒸気によって、手の届きにくい場所の汚れや異物を取り除くことができる。
【0046】
また、高温の蒸気によりふやけた汚れを含む水分が貯留タンクに貯留され、沸騰維持工程の終了後に圧力弁を開放することによって、鍋内を大気圧まで減圧し、その後圧力弁を閉じて鍋内を負圧にすることによって、溜まった汚れが鍋内に落ちることにより、圧力弁付近等の汚れを確実に除去することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…圧力式炊飯器
2…炊飯器本体
3…蓋体
4…鍋
5…加熱手段
6…操作部
7…表示部
8…炊飯メニュー選択ボタン
9…炊飯スタート/保温ボタン
10…予約ボタン
11…取り消しボタン
12…十字キー
13…外部ケース
14…収納ケース
15…ヒンジ
16…内蓋
17…外蓋
18…圧力弁
19…圧力孔
20…弁座
21…ボール
22…カバー
23…圧力弁開放機構
23a…シリンダー
23b…プランジャー
24…安全弁
25…作動棹
26…バネ
27…制御手段
28…貯留タンク
28a…蒸気口
29…選択手段
30a…蒸気センサー
30b…温度センサー
31…フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被炊飯物が投入される鍋と、
前記鍋が収容される開口部及び前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、
この炊飯器本体の開口部を塞ぐ開閉自在な蓋体と、
前記鍋内の圧力を調整する圧力弁と、
炊飯コース及びクリーニングコースを実行する制御手段とを備える圧力式炊飯器において、
前記制御手段は、前記クリーニングコースが選択された際に、前記鍋内の水を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程と沸騰状態に維持する沸騰維持工程を実行し、前記立上加熱工程において、前記鍋内を加熱して加圧した後に、前記沸騰維持工程において、前記圧力弁を所定時間開放して一気に大気圧まで減圧して鍋内を突沸させる工程を行い、前記沸騰維持工程の終了後に加熱を中止し、前記圧力弁を所定時間開放した後、前記圧力弁を所定時間閉じて前記鍋内を負圧にすることを特徴とする圧力式炊飯器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記沸騰維持行程において、前記圧力弁を所定時間開放して一気に大気圧まで減圧して鍋内を突沸させる工程を複数回行うことを特徴とする請求項1に記載の圧力式炊飯器。
【請求項3】
前記蓋体には、炊飯コースの実行時に吹きこぼれるおねばを一時貯留する貯留タンクが設けられ、
前記クリーニングコースが選択された際には、前記貯留タンクに取り除かれた汚れを含む水分が貯留され、
前記鍋内を負圧にした際に前記貯留タンクに貯留された汚れを含む水分が鍋内に戻されることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力式炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−95894(P2012−95894A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247229(P2010−247229)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】