説明

圧力検知装置

【課題】特定周波数帯の圧力を検出することが可能な圧力検知装置を提供する。
【解決手段】圧力検知装置1は、流体の圧力に応じて変位するダイアフラム11aを有し、当該ダイアフラム11aの変位に基づいて信号を出力する圧力センサ10と、圧力センサ10の周囲を覆って空間部25を形成するパッケージ20と、を備え、パッケージ20は、ダイアフラム11aの下部に流体を導入する導入孔23aと、導入孔23aよりも小径とされダイアフラム11aの上部に流体を導入する小孔23bとが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンデンサの静電容量変化を利用して圧力を検出する圧力検知素子が知られている。この圧力検知素子は、圧力導入部より検知対象となる圧力を有した気体を導入し、導入した気体の圧力によりコンデンサ電極の一方を有した平板が撓むことで、他方のコンデンサ電極との距離が変化する。これにより、コンデンサの静電容量が変化し、この変化により圧力を検出することができる。
【0003】
特許文献1に記載された圧力検知素子は、一対の対向した電極の距離が圧力変動により変化することで静電容量が変化し、圧力を検出できる。また、圧力の他に振動を検知するために一方の平板に振動検知体を有し、振動検知体により振動をとらえるようになっている。この圧力検知素子からの信号は判別回路に接続されており、判別回路による判断により圧力と振動とが区別して検出される。さらに、圧力導入部には、圧力導入孔側にオリフィス状の絞り部と、絞り部により形成された空間部分とが形成され、絞り部と空間部分との高周波減衰効果により、振動する圧力のうち高周波成分が取り除かれるようになっている。このため、平板には平均的な圧力が導入されることとなり、振動する圧力が入力されても、外部振動による振動と区別することができる。特に、この圧力検出素子では、絞り部と空間部分との大きさを調整することで取り除く高周波の周波数を調整することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−170375号公報(図1及び図7参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の圧力検知素子では、設計精度が高くなければ狙った周波数を検知することができなくなってしまう可能性がある。すなわち、特許文献1に記載の圧力検知素子において樹脂材料は切削や金型により加工されるため、加工限界が100μm程度であり、精度良く絞り部等を形成できないことから、取り除く高周波の周波数を調整できず、狙った周波数を検知することができなくなってしまう可能性がある。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その発明の目的とするところは、特定周波数帯の圧力を検出することが可能な圧力検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の圧力検知装置は、流体の圧力に応じて変位するダイアフラムを有し、当該ダイアフラムの変位に基づいて信号を出力する圧力センサと、圧力センサの周囲を覆って空間部を形成するパッケージと、を備え、パッケージは、ダイアフラムの下部に流体を導入する導入孔と、導入孔よりも小径とされダイアフラムの上部に流体を導入する小孔とが形成されていることを特徴とする。
【0008】
この圧力検知装置によれば、圧力センサの周囲を覆って空間部を形成するパッケージを備え、パッケージは、ダイアフラムの下部に流体を導入する導入孔と、導入孔よりも小径とされダイアフラムの上部に流体を導入する小孔とが形成されている。このため、空間部の容積Cと小孔の大きさRとによる擬似的なRC回路となり、特定周波数帯の圧力を検出することができる。よって、特許文献1のようにパッケージの圧力導入部に加工する必要がなく、容易に特定周波数帯の圧力を検出できる。
【0009】
また、本発明の圧力検知装置のパッケージには、圧力センサが載置された回路基板があり、小孔は、回路基板に形成されたスルーホールであることが好ましい。
【0010】
この圧力検知装置によれば、パッケージには、圧力センサが載置された回路基板があり、小孔は、回路基板に形成されたスルーホールである。このため、新たに小孔を形成するためにレーザ等により孔を形成する必要がなく、回路基板形成時に作成するスルーホールを利用することができる。
【0011】
また、本発明の圧力検知装置は、小孔に前記回路基板のビアを利用してもよい。
【0012】
この圧力検知装置によれば、小孔に回路基板のビアを利用するため、回路基板の実装に利用されない孔を利用することができる。
【0013】
また、本発明の圧力検知装置は、小孔には多孔質材料が詰められていてもよい。
【0014】
この圧力検知装置によれば、小孔には多孔質材料が詰められている。このため、パッケージに形成された小孔により充分な抵抗を生み出せない場合には、アルミナやゼオライトなどの多孔質材料を埋め込むことで、充分な抵抗を生み出すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特定周波数帯の圧力を検出することが可能な圧力検知装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る圧力検知装置を示す構成図である。
【図2】図1に示した圧力センサを示す概略構成図であって、(a)は側面図を示し、(b)は上面図を示している。
【図3】図1に示した小孔の変形例を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る圧力検知装置を示す構成図であって、断面図を示している。
【0018】
図1に示すように、圧力検知装置1は、気体や液体などの流体の圧力を検出するものであって、例えばガスメータ内の気体など流体の圧力が変動する部位に設けられる。このような圧力検知装置1は、圧力センサ10と、パッケージ20とから構成されている。
【0019】
圧力センサ10は、流体の圧力に応じた圧力信号を端子30を通じて出力するものである。端子30を通じて出力された圧力信号は、CPU等の圧力算出部(図示せず)に送信され、圧力算出部にて演算により圧力が求められることとなる。
【0020】
パッケージ20は、上側部材21と、下側部材22と、回路基板23と、Oリング24とから構成され、上側部材21と回路基板23とによって圧力センサ10の周囲を覆って空間部25を形成している。
【0021】
詳細に上側部材21は、断面コの字形状の部材である。一方、下側部材22は、略漏斗形状の部材であって、漏斗の大径開放部22a側が上側部材21の開放側と合致するようにされている。すなわち、上側部材21は、コの字の先端側21aにて下側部材22の大径開放部22a側を受容するように構成されている。また、下側部材22の小径開放部22b側は検知対象となる流体を受け入れる流体の導入部として機能することとなる。
【0022】
回路基板23は、上側部材21と下側部材22とによって形成される空間内に設けられるものであり、圧力センサ10を載置するものである。圧力センサ10への電力供給等は、回路基板23上に形成された回路を通じて行われる。このような回路基板23は下側部材22の段差部22cとOリング24とによって固定され、上側部材21と下側部材22との空間を隔てる役割を果たしている。
【0023】
また、回路基板23には、導入孔23aと小孔23bとが形成されている。ガス導入孔23a及び小孔23bは、下側部材22の空間における流体を導入する孔である。また、小孔23bは導入孔23aよりも小径とされている。
【0024】
図2は、図1に示した圧力センサ10を示す概略構成図であって、(a)は側面図を示し、(b)は上面図を示している。図2に示すように、圧力センサ10は、基板11と、ガラス部材12と、上部電極13と、下部電極14と、ボンディングパッド15とを有している。
【0025】
基板11は、例えばシリコンにより構成され、回路基板23上に載置されている。この基板11は、流体の圧力に応じて変位するダイアフラム11aを有している。ダイアフラム11aは、基板11の裏面から異方性エッチングやRIE(Reactive ion・etching)により形成され、ダイアフラム11aの表裏の圧力差に応じて上下方向に変位する薄膜である。また、回路基板23の導入孔23aはダイアフラム11aの裏面側に通じており(図1参照)、ダイアフラム11aの裏面側は下側部材22と回路基板23とによって形成される空間の圧力を受けることとなる。
【0026】
ガラス部材12は、基板11上に載置されるものである。このガラス部材12にはダイアフラム11aの表面まで通じる貫通孔12aが形成されている。また、回路基板23の小孔23bはガラス部材12側に通じており(図1参照)、ガラス部材12側の圧力は貫通孔12aを通ってダイアフラム11aの表面側に至ることとなる。
【0027】
上部電極13は、ダイアフラム11aの上部においてアルミニウムなどの金属膜がガラス部材12に蒸着されて形成されている。下部電極14は、上部電極13と対向配置されており、シリコン上(ダイアフラム11a上)にB(ボロン)やP(リン)を拡散させて形成されている。ボンディングパッド15は、回路基板23と圧力センサ10との電気的に接続するボンディングワイヤを接続するためパット部位である。なお、シリコン上にガラス板20と同様に金属膜を形成して下部電極31bとしてもよい。
【0028】
次に、本実施形態に係る圧力検知装置1の基本動作を説明する。なお、以下では、本実施形態に係る圧力検知装置1をガス流路等に配置した場合を例に説明する。
【0029】
まず、下側部材22の小径開放部22bを通じてパッケージ20内にガスが導入される。また、パッケージ20内に導入されたガスは、導入孔23aを通じてダイアフラム11aの下部に導入される一方、小孔23bを通じてダイアフラム11aの上部に導入される。
【0030】
ここで、小径開放部22bを通じてパッケージ20内に導入されたガスに圧力変化が無い場合、ダイアフラム11aの上部と下部との圧力は等しくなる。これにより、ダイアフラム11aは撓むことなく、上部電極12と下部電極13との距離は一定に保たれる。このため、上部電極12と下部電極13とにより構成されるコンデンサからの出力(すなわち静電容量)は特定の値で安定する。より具値的に静電容量は、C=ε・S/dにより表され、ε、S及びdについてはいずれも変化がないことから、コンデンサからの出力は特定の値で安定する。なお、εは誘電率であり、Sは電極面積であり、dは電極間の距離である。
【0031】
一方、小径開放部22bを通じてパッケージ20内に導入されたガスの圧力が高くなった場合、ガスはダイアフラム11aの上部に伝わるまで小孔23bを経ることから、ダイアフラム11aの上部の圧力は即座に高くならない。これ対して、ダイアフラム11aの下部へ至るガスは導入孔23aを通じて至ることから、ダイアフラム11aの下部の圧力は比較的早期に高くなる。よって、ダイアフラム11aは上方へ変位することとなり、コンデンサからの出力(すなわち静電容量)は変化する。すなわち、dが小さくなることから静電容量は大きくなる。CPU等の圧力算出部(図示せず)は、この変化量をとらえることで圧力を検出することとなる。なお、パッケージ20内に導入されたガスの圧力が低くなった場合はダイアフラム11aが下方に撓むこととなり、同様に圧力が検出される。
【0032】
さらに、本実施形態において圧力検知装置1は、空間部25の容積と小孔23bの大きさとにより、検出対象となる周波数域が設定されている。すなわち、本実施形態において圧力検知装置1は、空間部25の容積をCとし、小孔23bの大きさをRとした擬似的なRC回路となり、特定の周波数成分のみを検出することができる。しかも、小孔23bはドリルやレーザにより形成することができ、ドリルでは100μm程度、レーザでは数十μmの孔を形成することができる。このため、特許文献1に記載の圧力検知素子の加工限界を超えることができると共に、パッケージ20の空間部25の容積Cについてはパッケージ20の大きさを変化させるだけで調整できることから、特許文献1に記載の技術と比較して特定周波数帯の圧力を検出し易い。
【0033】
なお、本実施形態に係る圧力検知装置1では、特定周波数帯の圧力を検出できる一方、外部から振動や温度変化に伴う圧力変化などを検知しないことはいうまでもない。
【0034】
また、本実施形態に係る圧力検知装置1において、小孔23bは、回路基板23に形成されたスルーホールであってもよい。これにより、新たに小孔23bを形成するためにレーザ等により孔を形成する必要がなく、回路基板形成時に作成するスルーホールを利用することができる。特に、スルーホールがビアである場合には実装に利用されない孔を利用することができる。
【0035】
また、小孔23bには多孔質材料が詰められていてもよい。図3は、図1に示した小孔23bの変形例を示す拡大図である。図3に示すように、小孔23bにはアルミナやゼオライトなどの多孔質材料23cが詰められていてもよい。上記したように、小孔23bは擬似的なRC回路において抵抗を表わす。このため、多孔質材料23cを詰めることにより抵抗Rを高めることができ、検出対象とする周波数帯の調整が可能となる。なお、上記実施形態において小孔23bは導入孔23aよりも径が小さいが、多孔質材料23cを用いることにより小孔23bが導入孔23aより径が同じ又は大きくても特定周波数の圧力を検出することが可能となる。
【0036】
このようにして、本実施形態に係る圧力検知装置1によれば、圧力センサ10の周囲を覆って空間部25を形成するパッケージ20を備え、パッケージ20は、ダイアフラム11aの下部に流体を導入する導入孔23aと、導入孔23aよりも小径とされダイアフラム11aの上部に流体を導入する小孔23bとが形成されている。このため、空間部25の容積Cと小孔23bの大きさRとによる擬似的なRC回路となり、特定周波数帯の圧力を検出することができる。
【0037】
特にパッケージ20に形成される小孔23bはドリルやレーザにより形成することができ、ドリルでは100μm程度、レーザでは数十μmの孔を形成することができる。このため、特許文献1に記載の圧力検知素子の加工限界を超えることができると共に、パッケージ20の空間部の容積Cについてはパッケージ20の大きさを変化させるだけで調整できることから、特許文献1に記載の技術と比較して特定周波数帯の圧力を検出し易い。
【0038】
また、パッケージ20には、圧力センサ10が載置された回路基板23があり、小孔23bは、回路基板23に形成されたスルーホールである。このため、新たに小孔23bを形成するためにレーザ等により孔を形成する必要がなく、回路基板形成時に作成するスルーホールを利用することができる。
【0039】
また、小孔23bに回路基板23のビアを利用するため、回路基板23の実装に利用されない孔を利用することができる。
【0040】
また、小孔23bには多孔質材料23cが詰められている。このため、パッケージ20に形成された小孔23bにより充分な抵抗を生み出せない場合には、アルミナやゼオライトなどの多孔質材料23cを埋め込むことで、充分な抵抗を生み出すことができる。
【0041】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。例えば、本実施形態に係る圧力検知装置1は気体の圧力を検出する例を説明したが、特にこれに限らず、液体の圧力検出に用いられてもよい。
【0042】
また、本実施形態に係る圧力検知装置1は、上部電極13と下部電極14とからなるコンデンサを例に説明しているが、これに限らず、例えば上部電極と下部電極とに形成された接点のオン及びオフを検出するセンサを用いてもよいし、ダイアフラム11aにピエゾ抵抗を形成してダイアフラム11aの変動を抵抗値変化として検出するセンサであってもよい。さらに、応力が加わると電荷を発生する圧電膜をダイアフラム11aに用いて圧力変動を検出するセンサであってもよいし、ダイアフラム11aの変動をレーザ光により測定するセンサであってもよい。
【0043】
また、本実施形態に係る圧力検知装置1は、回路基板23に導入孔23a及び小孔23bが形成されているが、回路基板23でなく、下側部材22など他の部材に導入孔23a及び小孔23bが形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…圧力検知装置
10…圧力センサ
11…基板
11a…ダイアフラム
12…ガラス部材
12a…貫通孔
13…上部電極
14…下部電極
15…ボンディングパッド
20…パッケージ
21…上側部材
21a…先端側
22…下側部材
22a…大径開放部
22b…小径開放部(導入孔)
22c…段差部
23…回路基板
23a…導入孔
23b…小孔
23c…多孔質材料
24…Oリング
25…空間部
30…端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の圧力に応じて変位するダイアフラムを有し、当該ダイアフラムの変位に基づいて信号を出力する圧力センサと、
前記圧力センサの周囲を覆って空間部を形成するパッケージと、を備え、
前記パッケージは、前記ダイアフラムの下部に流体を導入する導入孔と、前記導入孔よりも小径とされ前記ダイアフラムの上部に流体を導入する小孔とが形成されている
ことを特徴とする圧力検知装置。
【請求項2】
前記パッケージには、前記圧力センサが載置された回路基板があり、
前記小孔は、前記回路基板に形成されたスルーホールである
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力検知装置。
【請求項3】
前記小孔に前記回路基板のビアを利用する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧力検知装置。
【請求項4】
前記小孔には多孔質材料が詰められている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の圧力検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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