説明

圧力測定装置

【課題】高さの低い空間内に収納可能であり、低コストで、且つ耐久性の高い圧力測定装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る圧力測定装置は、支持面を有する基部と、圧力センサを有する可動部材と、表面にネジが形成された棒状部材と、棒状部材を軸周りに回転駆動する駆動手段と、棒状部材に螺合し、この棒状部材の軸周りの一方向の回転により軸方向の一方に、支持面に沿って移動可能な第1スライド部材と、第1スライド部材から離れた位置で棒状部材に螺合し、当該棒状部材の軸周りの一方向の回転により軸方向の他方に、支持面に沿って移動可能な第2スライド部材と、一端部が第1スライド部材に揺動自在に連結されるとともに、他端部が前記可動部材に揺動自在に連結された第1リフト部材と、一端部が第2スライド部材に揺動自在に連結されるとともに、他端部が可動部材に揺動自在に連結された第2リフト部材と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサを有する圧力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活習慣病の予防の観点から、体重、血圧、血糖などを日常的に管理することが提案されている。一般的に、体重などの指標は、被験者が体重計、血圧計などの機器を自ら操作し、記録することで管理が行われる。このような指標の管理は、長期間に亘って行うことに意義があるが、操作、記録を行うことが徐々に面倒になり、結局やめてしまうことが往々にしてある。そこで、機器の操作、記録を被験者が一切行わない無意識計測法の開発が進められている。無意識測定法とは、例えば、浴槽に浸かるだけで心電図を測定できたり、ベッドに横たわるだけで体温を測定することができるなど、被験者が意識することなく、日常生活を送っていく中で、自動的に上述した指標の測定を行う測定方法である。
【0003】
このような無意識測定法の1つとして、非特許文献1には、次のような血圧測定システムが記載されている。このシステムは、トイレの便座に血圧の計測装置を内蔵しておき、被験者が便座に座ると自動的に血圧の測定を行うものである。より詳細に説明すると、このシステムでは、上下動可能なセンサープレートが便座に内蔵されており、被験者が便座に座ると、センサープレートが上昇し大腿部を押圧する。これにより、センサープレートが大腿部圧迫圧を検出し、ここから血圧を算出している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】田中志信、外4名、「ホームヘルスケアのための便座内蔵型血圧測定システムの試作」、生体医工学第44巻第3号、日本生体医工学会、2006年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記測定方法においては、便座という極めて高さの低い部材の中に、センサーを昇降する機構を内蔵しなければならない。そのため、上記システムでは、ヘリコイド式のアクチュエータを用いてセンサープレートを昇降させている。しかしながら、ヘリコイド式アクチュエータは、コストが高く、また大腿部を圧迫するような高い負荷がかかる際には安定性が低いという問題がある。このような問題は、便座に内蔵したセンサーの昇降装置に限られた問題ではなく、高さの低い空間内に収納され、高い負荷を受ける圧力測定装置全般に起こりうる問題である。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、高さの低い空間内に収納可能であり、低コストで、且つ耐久性の高い圧力測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る圧力測定装置は、支持面を有する基部と、圧力センサを有する可動部材と、表面にネジが形成された棒状部材と、前記棒状部材を軸周りに回転駆動する駆動手段と、前記棒状部材に螺合し、当該棒状部材の前記軸周りの一方向の回転により軸方向の一方に、前記支持面に沿って移動可能な第1スライド部材と、前記第1スライド部材から離れた位置で前記棒状部材に螺合し、当該棒状部材の前記軸周りの一方向の回転により軸方向の他方に、前記支持面に沿って移動可能な第2スライド部材と、一端部が前記第1スライド部材に揺動自在に連結されるとともに、他端部が前記可動部材に揺動自在に連結された第1リフト部材と、一端部が前記第2スライド部材に揺動自在に連結されるとともに、他端部が前記可動部材に揺動自在に連結された第2リフト部材と、を備えている。
【0008】
この構成によれば、ネジが形成された棒状部材の軸周りの回転により、第1及び第2スライド部材が近接離間するように構成されている。そして、各スライド部材に揺動自在に連結されるリフト部材が、圧力センサを有する可動部材と揺動自在に連結されている。そのため、両スライド部材が近接すると、リフト部材が立ち上がって傾斜角度が大きくなり、これによって、可動部材が押し上げられて上昇する。一方、両スライド部材が離間すると、リフト部材の傾斜角度が小さくなり、これによって、可動部材が降下する。このように、本発明においては、棒状部材、スライド部材、及びリフト部材といった簡易な部材で昇降機構が構成されているため、装置の構造を簡素化することができる。その結果、製造コストを低減することができる。また、可動部材は、リフト部材に支持され、リフト部材はスライド部材によって支持されている。そして、スライド部材は、基部の支持面上にあるため、可動部材が受ける負荷は、基部上で受けることができる。したがって、高い負荷に対する耐久性を向上することができる。
【0009】
上記装置においては、第1または2スライド部材に取り付けられ、一端部が可動部材に揺動自在に連結されるとともに、他端部が第1または第2リフト部材よりも棒状部材の端部側に揺動自在に連結された第3リフト部材をさらに設けることができる。そして、この第3リフト部材は、その両端部を結ぶ直線よりも棒状部材の端部側へ屈曲した形状とすることができる。
【0010】
この構成によれば、可動部材が第3リフト部材によっても支持されるため、負荷に対する耐久性をさらに向上することができる。また、第3リフト部材は、その両端部を結ぶ直線よりも棒状部材の端部側へ屈曲した形状、例えば、L字型、円弧型などに形成される。そのため、可動部材の降下とともに、第3リフト部材の傾斜角度が小さくなった場合に、他のリフト部材と干渉するのを防止することができる。すなわち、同じスライド部材に連結されるリフト部材は、可動部材が降下すると、傾斜角度が小さくなって重なるように干渉するおそれがあるが、上記のように屈曲した形状にしておけば、干渉が防止できる。
【0011】
上記装置において、第1及び第2スライド部材は、衝撃吸収材を介して支持面上に配置することができる。上記のように、可動部材が受ける負荷は、各スライド部材で支持するため、基部とスライド部材との間に衝撃吸収材を配置しておけば、負荷に対する耐久性を向上することができる。衝撃吸収材としては、例えば、ゴム、樹脂などを採用することができる。
【0012】
また、上記装置において、可動部材が、被測定面に接触する測定面を有する接触部材を備え、圧力センサが、接触部材の測定面とは反対側の面に配置され、当該接触部材が受けた圧力を検出するように構成することができる。また、接触部材を、弾性を有する中央部と、中央部の周囲を囲み弾性を有する環状に形成され、当該中央部よりも硬度の低い環状部とで、構成することができる。
【0013】
可動部材は、被測定面から圧力を受けるのであるが、この際、被測定面に接触する接触部材は、押しつぶされて押圧方向と垂直な方向に押し広げられることがあり、このような状態になると、正確な圧力を測定できない可能性がある。そこで、本発明においては、接触部材を中央部と、それよりも硬度の低い環状部とで構成しているため、圧力を受けた中央部の変形を硬度の低い環状部が吸収することができる。そのため、中央部が押しつぶされて環状部側に変形したとしても、環状部が中央部の変形に追従するため、受けた圧力が環状部に分散するのを防止することができる。したがって、接触部材に作用する圧力を中央部に集中させることができ、正確な圧力の測定が可能となる。
【0014】
上記装置においては、可動部材が進退する開口を有するハウジングをさらに設け、この開口を伸縮可能なカバーで覆うことができる。この構成によれば、次のような利点がある。まず、可動部材が開口を進退するときには、可動部材と開口周縁との隙間に被測定物を挟むおそれがある。これに対して、上記のように開口を伸縮可能なカバーで覆うと、可動部材と開口周縁との隙間が覆われるため、被測定物が挟まるのを防止することができる。なお、可動部材が上昇した場合には、カバーが押し上げられるが、カバーは伸縮性があるため、可動部材の上昇に追従することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る圧力測定装置によれば、高さの低い空間内に収納可能であり、低コストで、且つ耐久性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る圧力測定装置の一実施形態が取り付けられる生体計測システムの斜視図である。
【図2】図1において便座カバーを取り外した状態を示す平面図である。
【図3】図1において便器を取り外した状態の側面図である。
【図4】便座の下面を示す斜視図である。
【図5】基台からカバー部材を取り外した状態を示す平面図である。
【図6】図5のA−A線矢視図である。
【図7】圧力測定装置の平面図である。
【図8】図7の断面図である。
【図9】センサ収容部の断面図(a)及び平面図(b)である。
【図10】圧力測定装置において可動部材が下死点にある時の断面図である。
【図11】可動部材の動作開始後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る圧力測定装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、この圧力測定装置を、トイレ用生体計測システムに組み込んで使用する場合について説明する。ここで説明するトイレ用生体計測システムは、被験者の体重、血圧などを自動的に測定するものである。以下、図1は、生体計測システムの斜視図、図2は図1において便座カバーを取り外した状態を示す平面図、図3は図1において便器を取り外した状態の側面図である。
【0018】
図1〜図3に示すように、このトイレ用生体計測システムは、洋風水洗式便器に取り付けられるものであり、便鉢を有する便器本体1の下端部を囲むU字型の基台2を有している。この基台2の両側には、台形状のサイドフレーム3がそれぞれ垂直に取り付けられている。また、各サイドフレーム3の高さ方向の中間部には、水平方向に延びるサイドバー31が取り付けられている。そして、両サイドバー31を連結するように、プレート状の便座支持体4が固定されている。この便座支持体4は、便鉢を臨む貫通孔41が形成されており、便座本体1の上方に配置されている。また、この便座支持体4上には、貫通孔51が形成されたO型の便座5が配置されており、便器本体1に揺動自在に固定されている。
【0019】
図4は便座の下面を示す斜視図である。同図に示すように、便座5の下面の右側には、後述する圧力測定装置6のケーシング61が取り付けられており、このケーシング61と同じ高さの3個のクッション部材42が便座の下面に取り付けられている。そして、3個のクッション部材42及び圧力測定装置6のケーシング61を介して、便座5が便座支持体4上に水平に支持される。
【0020】
続いて、基台について図5及び図6も参照しつつ説明する。図5は基台から蓋部材を取り外した状態を示す平面図、図6は図5のA−A線矢視図である。図2及び図5に示すように、基台2は、複数の板体を組み合わせた板体組立部21に、U字型の蓋部材22(図3参照)で覆うことで構成されている。そして、この蓋部材22の上面に上述したサイドフレーム3が取り付けられている。図5及び図6に示すように、板体組立部21は、便器本体1の両側で延びる一対の第1板体211と、これら第1板体211を連結する3つの第2板体212とで構成されており、全体としてU字型に形成されている。各板体211,212は、金属板をU字型に折り曲げて形成されたものであり、各第1板体211の両端部には、ロードセル2111が取り付けられており、その近傍にロードセル2111からの信号を増幅する基板2112が取り付けられている。そして、上述した蓋部材22は、4つのロードセル2111によって支持されている。
【0021】
上述した構成によると、便座支持体4は、便器本体1に接触することなく、わずかな隙間をあけて配置されており、サイドフレーム3のみによって支持されている。そして、サイドフレーム3は、ロードセル2111上に配置された蓋部材22に取り付けられているため、便座支持体4に作用する負荷は、すべてロードセル2111で検出されるようになっている。そして、便座支持体4によって便座5が支持されるため、便座5に座る被験者の体重は、便座5、便座支持体4、サイドフレーム3、及び蓋部材22を介してロードセル2111で逐次検出できるようになっている。
【0022】
次に、便座に内蔵された圧力測定装置について図7及び図8を参照しつつ説明する。図7は圧力測定装置の平面図、図8は図7の断面図である。この圧力測定装置は、次のような原理で血圧の測定を行うものである。すなわち、便座5に座った被験者の大腿部を可動部材で圧迫し、その際の大腿部−可動部材間の接触圧、及び光電容積脈波を計測し、容積振動法の原理に基づいて最高血圧及び平均血圧の決定を行う。なお、図7の断面図は、可動部材が上死点にあるときを示している。また、以下の圧力測定装置の説明においては、説明の便宜のため、図7の上下方向を幅方向、図7及び図8の左右方向を長手方向と称することとする。
【0023】
図7及び図8に示すように、この圧力測定装置6は、上部が開口した直方体状のケーシング61を有しており、このケーシング61が便座5の下面に取り付けられている。このように、ケーシング61と便座5とで形成される空間内に圧力測定装置6の種々の部品が内蔵されている。また、便座5においてケーシングが取り付けられた部分には、円形の開口53が形成されており、この開口53から各種センサが設けられた可動部材62が昇降するようになっている。この可動部材62は、円筒状の筐体621と、その上部に配置されたセンサ収容部622とを有している。
【0024】
図9は、センサ収容部622の断面図(a)及び平面図(b)である。同図に示すように、センサ収容部622は、中央に被測定面に接触する接触部材623が取り付けられている。接触部材623は、センサ収容部622の中央に形成された円形の凹部に嵌め込まれており、円筒状の中央部6231と、その周囲を囲む環状部6232とで構成されている。中央部6231は、例えば、アスカーC硬度(SRIS0101規定)が30〜35の樹脂材料で形成されており、環状部6232は中央部6231よりも硬度が低く、例えば、アスカーC硬度が0〜2の樹脂材料で形成されている。このような樹脂材料としては、例えば、いわゆる人肌ゲルを用いることができる。人肌ゲルとは、人肌ゲルは人肌そっくりの柔らかさをもった超軟質ウレタン造形用樹脂である。この接触部材623は、例えば、中央部6231を凹部の中央に配置した後、周囲の隙間を硬度の低い樹脂を流し込んで環状部6232とすることで形成することができる。これにより、接触部材623が凹部に強固に固定される。また、この接触部材623の下面には、薄板状の圧力センサ624が取り付けられており、接触部材623に作用する圧力を検出する。
【0025】
また、センサ収容部622には、光電容積脈波を検出するため反射型光電センサが収納されている。この光電センサは、光源としての6個の近赤外発光ダイオード625と、検出器としての3個のフォトダイオード626とで構成されている。6個の近赤外発光ダイオード625は、センサ収容部622の周縁に沿って等間隔に配置されている。一方、3個のフォトダイオード626は、接触部材を囲む三角形の各辺を構成するように、発光ダイオード625よりも径方向内方に配置されている。このような対称配置により、光電センサは、被験者の体格や座り直しなどに対しても安定して光電容積脈波を検出可能となっている。
【0026】
また、図7及び図8に示すように、筐体621の下面には、後述するリフト部材が連結される固定部627が取り付けられている。固定部627は、長手方向の右側及び左側の幅が狭く、中央の幅が広くなるような平面視十字型に形成されている。
【0027】
続いて、ケーシング内の構造について説明する。図7及び図8に示すように、ケーシング61には、ネジが形成された棒状部材71が水平方向に延びるように配置されており、その両端部がベアリング72で回転可能に支持されている。棒状部材71の右側の端部には、カップリング73を介してモータ74が連結されており、このモータ74が回転駆動することで棒状部材71が軸周りに回転するようになっている。なお、モータ74は、種々のものを採用することができるが、例えば、遊星減速ギア付きのものを使用することができる。これにより、可動部材62の昇降速度とトルク設定の選択を容易に行うことができる。
【0028】
棒状部材71は、軸方向の中央部を挟む両側で、反対向きのネジ711,712が形成されている。そして、棒状部材71の左側のネジ711には、直方体状の第1スライド部材81が螺合している。この第1スライド部材81の底面には、シート状に形成された衝撃吸収材811が取り付けられており、この衝撃吸収材811を介して、第1スライド部材81は、ケーシング61の底面に接触している。このように、第1スライド部材81の底面は、ケーシング61上で向きを固定されているため、棒状部材71が軸周りに回転すると、図7の右側または左側に移動するようになっている。なお、衝撃吸収材811は、例えば、デルリン(登録商標)等のポリアセタール樹脂(POM)などの硬質で潤滑性の有る樹脂などで形成することができる。
【0029】
また、棒状部材71の左側のネジ712には、第2スライド部材82が螺合している。第2スライド部材82は、第1スライド部材81よりも長手方向に長く、しかも第1スライド部材81と対向する左側の幅が広く、それとは反対の右側の幅が狭くなっている。すなわち、幅が広い幅広部821と、狭い幅狭部822とで構成されており、幅狭部822は第1スライド部材81とほぼ同じ幅を有している。そして、第2スライド部材82の底面には同じく衝撃吸収材823が取り付けられている。また、棒状部材71のネジが右側と左側で反対向きになっていることから、棒状部材71が回転すると、両スライド部材81,82は、反対方向に移動する。すなわち、棒状部材71の回転により、両スライド部材81,82は、近接離間するようになっている。
【0030】
そして、各スライド部材81,82には、可動部材62を下方から支持する、3つのリフト部材91,92,93が取り付けられている。第1スライド部材81には、第1リフト部材91が取り付けられている。この第1リフト部材91は、平行に延びる一対の揺動片911と、これらを連結する矩形状の連結板912とで構成されている。各揺動片911の一端部は、それぞれ第1スライド部材81の両側(図7の上下方向)に揺動自在にピンで連結されている。一方、各揺動片911の他端部は、可動部材62の下面の固定部627の左側に揺動自在にピンで連結されている。
【0031】
第2スライド部材82には、2つのリフト部材が取り付けられている。まず、第2リフト部材92から説明する。第2リフト部材92は、幅広部821の両側に取り付けられる一対の揺動片921で構成されている。各揺動片921の一端部は、幅広部821の両側にそれぞれ揺動自在にピンで連結されている。一方、各揺動片921の他端部は、可動部材62の固定部627の中央に揺動自在にピンで連結されている。
【0032】
また、第2スライド部材82の幅狭部822には、第3リフト部材93が取り付けられている。第3リフト部材93は、幅狭部822の両側に取り付けられる一対の揺動片931とこれらを連結する連結板932とで構成されている。但し、第1及び第2リフト部材91,92の揺動片911,921が直線状に延びているのに対し、第3リフト部材93の揺動片931は、L字型に形成されている。各揺動片931の一端部は、幅狭部822の両側にそれぞれ揺動自在にピンで連結されている。一方、各揺動片931の他端部は、可動部材62の固定部627の右側に揺動自在にピンで連結されている。こうして、図8に示すように、第2及び第3リフト部材92,93の揺動片921,931は、平行リンクを形成し、可動部材62を安定して昇降させることができる。
【0033】
ケーシング61の底面には、スライド部材81,82の移動を規制する2個のストッパーが取り付けられている。第1ストッパー65は、棒状部材71の中央よりやや左寄りに取り付けられており、第1スライド部材81の右側への移動を規制する。このストッパー65は、可動部材62の上死点を規定する。第2ストッパー66は、棒状部材71の右側の端部付近に取り付けられており、第2スライド部材82の右側への移動を規制する。このストッパー66により、可動部材62の下死点が規定される。また、ケーシング61において、モータ74の上方には、圧力センサアンプ基板77が固定されている。このアンプ基板77は、筐体621内を通過する導線78を介して、上述した光電センサ及び圧力センサと接続されている。各センサからの信号は、このアンプ基板77によって増幅後、所定のサンプリング周波数でA/D変換され、パーソナルコンピュータ(図示省略)に送られる。そして、パーソナルコンピュータで、容積振動法に基づいて、最高血圧及び平均血圧が算出される。
【0034】
また、ケーシング61の上面には、伸縮性のあるメッシュカバー101が取り付けられ、便座5の開口53を覆っている。これにより、可動部材62が上昇した場合には、カバー101が引き伸ばされる。
【0035】
次に、上記のように構成されたシステムの動作について図10及び図11も参照しつつ説明する。図10は圧力測定装置において可動部材が下死点にある時の断面図、図11は可動部材の動作開始後の断面図である。
【0036】
初期状態では、図10に示すように、可動部材62は下死点にあり、開口53内部に収容された状態となっている。この状態で、被験者が便座5に座ると、便座5に作用する体重が、便座支持体4及びサイドフレーム3に作用し、これが基台2のロードセル2111により検知される。こうして、体重が測定される。そして、排尿または排便が行われているときも体重は逐次測定され、これによって排泄量及び排泄速度が測定される。これらのデータは、パーソナルコンピュータに送信され、蓄積されていく。
【0037】
また、被験者が便座5に座っている間に、上述した圧力測定装置6も駆動する。可動部材62がケーシング61内に収納された初期状態では、第1及び第2スライド部材81,82は離間しており、棒状部材71の両端部付近に配置されている。そのため、各リフト部材91〜93は傾斜角度が小さく、水平またはそれに近い状態に傾いている。この状態で、モータ74が駆動すると、棒状部材71が軸周りに回転する。これにより、図11に示すように、第1及び第2スライド部材81,82が互いに近接し、これに伴って各リフト部材91〜93は傾斜角度が大きくなりつつ、立ち上がっていく。こうして、可動部材62は、リフト部材91〜93により押し上げられ、開口53から突出して被験者の大腿部を押圧する。そして、図8に示すように、第1スライド部材81が第1ストッパー65に当接すると、上死点に達し、モータ74の駆動が停止する。
【0038】
この状態で、反射型光電センサにより光電容積脈波が検出される。また、接触部材623が被験者の大腿部を圧迫するため、その圧力が圧力センサ624により検出される。これら検出値は、アンプ基板77を介してパーソナルコンピュータに送られ、最高血圧及び平均血圧が算出される。その後、圧力の測定が完了すると、モータ74が棒状部材71を逆回転させ、両スライド部材81,82を離間させる。これにより、各リフト部材91〜93の傾斜角度が小さくなり、可動部材62は、下方に降下していく。そして、第2スライド部材82が第2ストッパー66に当接すると、図10に示すように、下死点に達したことになり、モータ74の駆動が停止する。このように、ここで説明した生体計測システムは、被験者の無意識のうちに体重などの生体データを全自動で測定することができる、いわゆる無拘束生体計測を行うことができる。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、ネジ711,712が形成された棒状部材71、これに螺合する第1及び第2スライド部材81,82、及び各スライド部材81,82に揺動自在に連結されるリフト部材91〜93により、可動部材62の昇降機構が構成されている。したがって、ヘリコイド式のアクチュエータに比べ、構造を簡素化することができ、ひいてはコストを低減することができる。
【0040】
また、可動部材62は、リフト部材91〜93及びスライド部材81,82によって支持されており、スライド部材81,82は、衝撃吸収材811,823を介してケーシング61の底面(支持面)に支持されている。このように、可動部材62が受ける負荷は、ケーシング61で受けることができるため、負荷への耐久性を向上することができる。また、各スライド部材81,82の下面には衝撃吸収材811,823が配置されているため、負荷への耐久性をさらに向上することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、棒状部材71の両端に向きの異なるネジ711,712を形成しているが、棒状部材71のネジの向きを同じにしておき、各スライド部材81,82の雌ねじの向きを反対にしてもよい。また、棒状部材71は、負荷に対する強度を向上するため、例えば、台形ネジを形成することができる。また、センサは、上述したもの以外でもよく、圧力が測定できるものであればよい。また、上記実施形態では、第3リフト部材93を第2スライド部材82に取り付けたが、追加のスライド部材を、第2スライド部材82に隣接させるように棒状部材71に螺合させ、これに第3リフト部材93を揺動自在に取り付けることもできる。すなわち、各リフト部材に専用のスライド部材を設けることもできる。
【0042】
また、上記実施形態では、圧力測定装置を血圧測定装置として用いたが、これに限定されるものではなく、対象物を押圧して圧力を測定する装置全般に提起要することができる。また、本発明におけるハウジングとは、例えば、上記実施形態における便座とケーシングとで構成される筐体を意味するものであり、可動部材が進退する開口が形成された筐体において使用することができる。
【符号の説明】
【0043】
61 ケーシング(ハウジング)
62 可動部材
623 接触部材
6231 中央部
6232 環状部
624 圧力センサ
71 棒状部材
81 第1スライド部材
811 衝撃吸収材
82 第2スライド部材
823 衝撃吸収材
91 第1リフト部材
92 第2リフト部材
93 第3リフト部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持面を有する基部と、
圧力センサを有する可動部材と、
表面にネジが形成された棒状部材と、
前記棒状部材を軸周りに回転駆動する駆動手段と、
前記棒状部材に螺合し、当該棒状部材の前記軸周りの一方向の回転により軸方向の一方に、前記支持面に沿って移動可能な第1スライド部材と、
前記第1スライド部材から離れた位置で前記棒状部材に螺合し、当該棒状部材の前記軸周りの一方向の回転により軸方向の他方に、前記支持面に沿って移動可能な第2スライド部材と、
一端部が前記第1スライド部材に揺動自在に連結されるとともに、他端部が前記可動部材に揺動自在に連結された第1リフト部材と、
一端部が前記第2スライド部材に揺動自在に連結されるとともに、他端部が前記可動部材に揺動自在に連結された第2リフト部材と、
を備えている、圧力測定装置。
【請求項2】
前記第1または2スライド部材に取り付けられ、一端部が前記可動部材に揺動自在に連結されるとともに、他端部が前記第1または第2リフト部材よりも前記棒状部材の端部側に揺動自在に連結された第3リフト部材をさらに備えており、
前記第3リフト部材は、その両端部を結ぶ直線よりも前記棒状部材の端部側へ屈曲した形状をなしている、請求項1に記載の圧力測定装置。
圧力測定装置。
【請求項3】
前記第1及び第2スライド部材は、衝撃吸収材を介して前記支持面上に配置されている、請求項1または2に記載の圧力測定装置。
【請求項4】
前記可動部材は、被測定面に接触する測定面を有する接触部材を備えており、
前記圧力センサは、前記接触部材の測定面とは反対側の面に配置され、当該接触部材が受けた圧力を検出し、
前記接触部材は、
弾性を有する中央部と、
前記中央部の周囲を囲み弾性を有する環状に形成され、当該中央部よりも硬度の低い環状部と、を備えている請求項1から3のいずれかに記載の圧力測定装置。
【請求項5】
前記可動部材が進退する開口を有するハウジングをさらに備え、
前記開口が伸縮可能なカバーで覆われている、請求項4に記載の圧力測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−237088(P2010−237088A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86473(P2009−86473)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【出願人】(509091712)株式会社ポピック (2)
【Fターム(参考)】