説明

圧力炊飯器

【課題】時間をかけて圧力を加えることにより理想的な米の硬さを調整を行う。また、米の硬さだけでなく、ユーザの嗜好に応じて米の甘みも調整する。
【解決手段】炊き上げる米の硬さを2種以上設定し、その硬さを選択するための硬さ選択部(粘りスイッチ78)を設け、炊飯制御手段(マイコン83)は、調圧工程にて硬さを調整するために、炊飯鍋10内を昇圧可能な設定圧を、炊き上げ硬さが硬く設定されている場合には低設定圧として調圧する一方、炊き上げ硬さが柔らかく設定されている場合には高設定圧として調圧した後、設定圧が低くなるようにを変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯鍋の内部に大気圧より高い圧力を投入可能な圧力炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炊飯器は、炊飯鍋を収容する炊飯器本体と、炊飯器本体に開閉可能に取り付けられた蓋体とを備えている。そして、炊飯器本体内に配設した加熱手段によって炊飯鍋を加熱することにより、炊飯鍋内にセットした飯米を炊飯するものである。
【0003】
特許文献1には、炊飯処理中に炊飯鍋内を大気圧より高い設定圧まで昇圧可能とした圧力炊飯器が記載されている。この圧力炊飯器は、蓋体に設けた排気通路中に、炊飯鍋内を昇圧可能な状態とする調圧手段が設けられている。この調圧手段は、排気通路の一部を構成する通気孔を開放可能に閉塞する球状部材を有するリリーフ弁からなる。球状部材は、炊飯鍋内が設定圧(例えば1.30気圧)を超えて昇圧すると、炊飯鍋内の蒸気圧によって通気孔から浮上し、脱圧を行う。
【0004】
また、特許文献2には、炊飯鍋の内圧を段階的に昇圧可能とした圧力炊飯器が記載されている。この圧力炊飯器は、リリーフ弁とは別に、ステッピングモータの駆動により第2の通気孔への付勢力を調整可能とした弁体を有する調圧弁が配設されている。具体的には、弁体は、スプリングによって第2通気孔に対して所定の付勢力で付勢されている。そして、ステッピングモータに連結した作動部材が、スプリングの上端に配設した作動受部材を下向きに押圧することにより、弁体による第2通気孔への付勢力(炊飯鍋内を昇圧可能な設定圧)を変更できるように構成している。
【0005】
特許文献1に記載の圧力炊飯器では、球状部材によって通気孔を閉塞した調圧時間を変更することにより、炊き上げる米の硬さを調整する構成としている。また、特許文献2に記載の圧力炊飯器では、調圧弁によって昇圧可能な設定圧を変更することにより、炊き上げる米の硬さを調整する構成としている。
【0006】
しかしながら、炊き上げる米の硬さを調整する際には、時間をかけて低い圧力(例えば1.15気圧)を加えることが好ましい。これに対して、特許文献1の炊飯器は、高圧力を短時間で加えることしかできないうえ、特許文献2の炊飯器は、硬さ毎に予め設定した一定の圧力を加える構成としているため、米の硬さ調整に関して未だ改良の余地がある。また、炊き上げた米の「おいしさ」とは、硬さ等の食感だけでなく、甘み等の味覚も大きな影響を及ぼすが、各特許文献の炊飯器は、硬さ等の食感の調整しかできないため、この点からも未だ改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−17567号公報
【特許文献2】特開2010−273711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、時間をかけて圧力を加えることにより理想的な米の硬さを調整を行うことを第1の課題とするものである。また、本発明は、米の硬さだけでなく、ユーザの嗜好に応じて米の甘みも調整できる圧力炊飯器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の圧力炊飯器は、炊飯鍋を収容する炊飯器本体と、前記炊飯鍋内の米を加熱する加熱手段と、前記炊飯鍋の上端開口を閉塞する蓋体と、前記炊飯鍋内と外部とを連通する排気通路と、前記排気通路の一部を構成する通気孔を開放可能に閉塞することにより少なくとも前記内鍋内を大気圧より高い低設定圧および低設定圧より高い高設定圧に昇圧可能な状態とする調圧手段と、前記炊飯鍋または前記炊飯鍋内の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段の検出値に基づいて前記加熱手段および前記調圧手段を制御して調圧工程を有する炊飯処理を実行する炊飯制御手段と、を備えた圧力炊飯器において、炊き上げる米の硬さを2種以上設定し、その硬さを選択するための硬さ選択部を設け、前記炊飯制御手段は、前記調圧工程にて硬さを調整するために、前記炊飯鍋内を昇圧可能な設定圧を、炊き上げ硬さが硬く設定されている場合には低設定圧として調圧する一方、炊き上げ硬さが柔らかく設定されている場合には高設定圧として調圧した後に低設定圧として調圧する構成としている。
【0010】
この圧力炊飯器では、米への圧力投入量を少なくする硬め設定の場合には低設定圧として調圧するため、過剰な圧力投入を防止できる。また、米への圧力投入量を多くする必要がある柔らかめ設定の場合には高設定圧として調圧した後に低設定圧として調圧するため、調圧工程の実行時間を略同一としたうえで、低設定圧での調圧時間を十分に確保できる。よって、理想的な硬さ調整を実現できる。
【0011】
この圧力炊飯器は、前記調圧工程では、前記炊飯鍋内を高設定圧に昇圧可能とした場合、前記炊飯鍋内を低設定圧に昇圧可能な状態とした後、大気圧と平衡するように前記調圧手段を動作させることが好ましい。このようにすれば、高設定圧から大気開放することに伴う排気通路出口からの蒸気の噴出を防止できる。その結果、蒸気による周囲の汚れを防止できるとともに、安全性を確保できる。
【0012】
また、前記加熱制御手段は、前記加熱制御手段は、前記炊飯鍋内への投入圧力量を増やすことにより米の硬さを柔らかくし、前記炊飯鍋内への投入圧力量を減らすことにより米の硬さを硬くすることが好ましい。このようにすれば、炊き上げる米の硬さ調整を確実に行うことができる。
【0013】
さらに、この圧力炊飯器は、炊き上げる米の甘みを2種以上設定し、その甘みを選択するための甘み選択部を設け、前記炊飯制御手段は、前記調圧工程にて水が沸騰し始める温度帯で甘みを調整するための甘み調整ステップを実行し、この甘み調整ステップでは前記炊飯鍋内を昇圧可能な設定圧を、米の甘みが多くなるように設定されている場合には高設定圧とする一方、米の甘みが少なくなるように設定されている場合には低設定圧または大気圧となるように前記調圧手段を動作させるが好ましい。このように、α化が促進する温度帯の設定圧を、甘み選択部の選択状態に基づいて変更するため、デンプンから多くのブドウ糖やショ糖といった甘み成分の引き出し量を調整して、米の表面に付着させることができる。その結果、確実に炊き上げる米の甘みを調整することができる。
【0014】
この場合、前記炊飯制御手段は、前記硬さ選択部による硬さ選択状態に基づいて予め設定した前記調圧工程中の甘み調整ステップでの第1昇圧設定と、前記甘み選択部による甘み選択状態に基づいて予め設定した前記甘み調整ステップでの第2昇圧設定とが異なる場合、前記甘み調整ステップにて前記炊飯鍋内を第2昇圧設定として調圧し、この甘み調整ステップの終了後に、第1および第2昇圧設定の差分を加算または減算して調圧することが好ましい。このようにすれば、甘み調整ステップの実行によって、炊き上げる米の硬さに影響が及ぶことを確実に防止できる。
【0015】
なお、本発明では、ユーザの嗜好に応じて炊き上げる米の硬さと甘みの両方を炊き分けるために、炊飯鍋を収容する炊飯器本体と、前記炊飯鍋内の米を加熱する加熱手段と、前記炊飯鍋の上端開口を閉塞する蓋体と、前記炊飯鍋内と外部とを連通する排気通路と、前記排気通路の一部を構成する通気孔を開放可能に閉塞することにより前記炊飯鍋内を大気圧より高い設定圧に昇圧可能な状態とする調圧手段と、前記炊飯鍋または前記炊飯鍋内の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段の検出値に基づいて前記加熱手段および前記調圧手段を制御して調圧工程を有する炊飯処理を実行する炊飯制御手段と、を備えた圧力炊飯器において、炊き上げる米の硬さを2種以上設定し、その硬さを選択するための硬さ選択部を設け、前記炊飯制御手段は、前記硬さ選択部による硬さの選択状態に基づいて、前記調圧工程にて、前記調圧手段によって前記炊飯鍋内を昇圧可能な設定圧を変更するとともに、炊き上げる米の甘みを2種以上設定し、その甘みを選択するための甘み選択部を設け、前記炊飯制御手段は、前記甘み選択部による甘みの選択状態に基づいて、前記調圧工程中の水が沸騰し始める温度帯で、前記調圧手段によって前記炊飯鍋内を昇圧可能な設定圧を変更する甘み調整ステップを実行するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の圧力炊飯器では、米の硬さを硬くする設定の場合には低設定圧として調圧し、柔らかくする設定の場合には高設定圧として調圧した後に低設定圧として調圧するため、低設定圧での調圧時間を十分に確保し、理想的な硬さ調整を実現できる。また、甘み選択部の選択状態に基づいて、米のα化が促進する温度帯の設定圧を変更するため、確実に炊き上げる米の甘みを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る圧力炊飯器を示す部分断面図である。
【図2】他の部分を切断した状態を示す部分断面図である。
【図3】上板を外した蓋体を示す斜視図である。
【図4】(A),(B)は第1調圧弁の動作を示す断面図である。
【図5】(A),(B)は第2調圧弁の動作を示す断面図である。
【図6】内蓋の上方斜視図である。
【図7】(A)は第1調圧弁を示す拡大断面図、(B)は第2調圧弁を示す拡大断面図である。
【図8】圧力炊飯器の構成を示すブロック図である。
【図9A】投入圧力による硬さ調整を示すタイムテーブルである。
【図9B】投入圧力による甘み調整を示すタイムテーブルである。
【図9C】同一硬さにおいて甘み調整によって調整した調圧工程のタイムテーブルである。
【図10】炊飯処理の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0019】
図1および図2は、本発明の実施形態に係る圧力炊飯器を示す。この圧力炊飯器は、電磁誘導加熱される炊飯鍋10を着脱可能に収容する炊飯器本体11と、炊飯器本体11に回動可能に取り付けた蓋体21とを備え、炊き上げる米の硬さと甘みとをユーザの希望に応じて炊き分けることを可能としたものである。
【0020】
炊飯器本体11は、筒形状をなす胴体12と、胴体12の下端開口を閉塞する底体13と、胴体12の上端開口を覆うように取り付ける肩体14とからなる外装体を備えている。この肩体14は、その中央部に炊飯鍋10を着脱可能に配置するための開口部を備え、その正面側に、蓋体21を閉塞状態に維持するための係合受部(図示せず)が設けられている。また、肩体14の開口部には、筒状をなす内胴15と、非導電性材料からなる受け皿状の保護枠16とが配設され、これらにより炊飯鍋10の収容部が形成されている。保護枠16の下部外周面には、炊飯鍋10を誘導加熱することにより、炊飯鍋10内の米を加熱する第1加熱手段である誘導加熱コイル17がフェライトコア18を介して配設されている。また、内胴15の外周部には、第2加熱手段である胴ヒータ19が配設されている。さらに、保護枠16には、炊飯鍋10の温度を検出する第1温度検出手段である鍋用温度センサ20が保護枠16を貫通して配設されている。
【0021】
蓋体21は、肩体14の背部に形成されたヒンジ受部に回動可能に取り付けられ、炊飯器本体11の上部を開放可能に閉塞するものである。この蓋体21は、炊飯器本体11の外装体と共に外表面を構成する上板22と、上板22の底を閉塞する下板26とを備えている。閉塞状態で炊飯鍋10の側に位置する下板26の下側には放熱板44が配設され、この放熱板44の下側に内蓋48が着脱可能に配設されている。そして、この蓋体21は、内蓋48に取り付けられた第1および第2調圧弁52,58の内部、これらを収容する下板26の収容部32,38との隙間、内蓋48と放熱板44との隙間、および、蒸気口ユニット24内を経た経路によって、炊飯鍋10内と外部(機外)とを連通させる排気通路が構成されている。
【0022】
上板22には、正面側に蓋体21を開放操作するための操作部材23が配設されている。また、上板22の背部には、排気通路の出口を構成する蒸気口ユニット24が着脱可能に配設されている。この蒸気口ユニット24は、下方へ突出した接続部25が上板22に形成した貫通孔を通して下板26の被接続部29に接続される。
【0023】
図1から図3に示すように、下板26は、肩体14の上側の窪み形状と対応する形状をなす。この下板26の上側には、炊飯時の熱および圧力による変形を防止するために、金属製の補強部材27が配設されている。下板26の背部には、肩体14のヒンジ受部に回動可能に軸着されるヒンジ接続部28が設けられている。また、下板26の背部には、蒸気口ユニット24の下部に位置するように、蒸気口ユニット24の接続部25を着脱可能に接続する被接続部29が設けられている。この被接続部29の下端開口には、放熱板44との間をシールするシール部材30が配設されている。さらに、下板26の正面側には、蓋体21を炊飯器本体11に対して閉塞した状態に維持するロック部材31が回動可能に取り付けられている。このロック部材31は、キックバネによって係合位置に付勢され、操作部材23が押し込まれることにより係合受部との係合が解除される。
【0024】
また、下板26には、内蓋48に配設された第1調圧弁52を収容する第1収容部32が設けられている。この第1収容部32は、下端開口のドーム形状のもので、その側壁の正面側には駆動用開口部が設けられ、この駆動用開口部がパッキン33により閉塞されている。第1収容部32の下端開口は、放熱板44との間がシール部材34によってシールされている。第1収容部32の正面側には、第1調圧弁52の駆動手段である第1ソレノイド35が配設されている。この第1ソレノイド35は、通電されることにより図4(B)に示すように後退し、通電が遮断されることにより図4(A)に示すように進出する第1ロッド36を備えた2ポジションソレノイドである。この第1ロッド36には、パッキン33を介して第1収容部32内に装着される第1調圧弁52の球状部材57を押圧する第1押圧部材37が配設されている。
【0025】
第1収容部32の横には、内蓋48に配設された第2調圧弁58を収容する第2収容部38が設けられている。この第2収容部38は、上下端を開口した筒状のもので、その上端開口にはパッキン39が配設され、下端開口には放熱板44との間をシールするシール部材40が配設されている。第2収容部38の正面側には、第2調圧弁58の駆動手段である第2ソレノイド41が配設されている。この第2ソレノイド41は、図5(A),(B)に示すように、第1ソレノイド35と同様に動作する第2ロッド42を備えた2ポジションソレノイドである。この第2ロッド42の先端には、通電による水平方向の動作を垂直方向の動作(押圧力)に変換するための台形突出部43aを有する第2押圧部材43が配設されている。
【0026】
放熱板44は金属製であり、その上面には第3加熱手段である蓋ヒータ45が配設されている。この放熱板44には、被接続部29の下部に位置するように開口部が設けられ、この開口部の上側縁がシール部材30によってシールされている。同様に、収容部32,38の下部には開口部が設けられ、これら開口部がシール部材34,40によってシールされている。また、放熱板44の外周部には、内蓋48の外周部との間をシールするシール部材46が更に配設されている。そして、この放熱板44の上面側には、炊飯鍋10内の温度を検出する第2温度検出手段である蓋用温度センサ47が配設されている。
【0027】
内蓋48は、図6に示すように、金属製の内蓋本体49と、この内蓋本体49の外周部に配設した蓋パッキン50とを備えている。蓋パッキン50は、炊飯鍋10の上端開口の内周壁に密着してシールするもので、外周部に樹脂枠51を配設することにより、内蓋本体49に対して離脱不可能に装着されている。この内蓋48の上面側には、蓋体21への装着により各収容部32,38に収容される第1および第2調圧弁52,58が配設されている。
【0028】
第1調圧弁52は、排気通路中に設けられる第1の調圧手段である。図6および図7(A)に示すように、第1調圧弁52は、第1収容部32の中心に位置するように内蓋本体49に第1挿通孔53が設けられ、その上部に配設されている。この第1調圧弁52は、第1挿通孔53に炊飯鍋10の側から配設される第1弁座54を備えている。この第1弁座54には、排気通路の第1の入口となり、炊飯鍋10内が沸騰した状態で、炊飯鍋10の内圧が大気圧と同等になるように排気可能な開口面積の第1通気孔55が設けられている。また、第1弁座54には、下端を開口したドーム状をなす第1カバー56が配設されている。この第1カバー56は、第1収容部32のパッキン33の側に、第1ソレノイド35の第1押圧部材37を進退可能に挿通するとともに、第1収容部32内に連通する孔56aを備えている。この第1カバー56の内部には、第1通気孔55を開放可能に閉塞する球状部材57が配設されている。この球状部材57は、図4(B)に示すように第1ロッド36が後退すると転動により第1通気孔55を閉塞し、図4(A)に示すように第1ロッド36が進出すると第1通気孔55上から離間される。本実施形態の球状部材57は、第1通気孔55を閉塞した状態で、炊飯鍋10内の圧力が1.40気圧を超えると、蒸気圧で第1通気孔55上から離反する重量のものを使用している。
【0029】
第2調圧弁58は、排気通路中に設けられる第2の調圧手段である。図6および図7(B)に示すように、第2調圧弁58は、第2収容部38の中心に位置するように内蓋本体49に第2挿通孔59が設けられ、その上部に配設されている。第2調圧弁58は、第2挿通孔59に炊飯鍋10の側から配設される第2弁座60を備えている。この第2弁座60には、排気通路の第2の入口となる第2通気孔61が設けられている。また、第2弁座60には、上下端を開口した筒状をなす第2カバー62が配設されている。この第2カバー62は、下部に第2収容部38に連通する孔62aを備えている。この第2カバー62の内部には、第2通気孔61を閉塞する弁体63と、この弁体63による閉塞力を変更するための作動受部材64およびスプリング65を備えている。この第2調圧弁58は、図5(B)に示すように第2ロッド42が後退するとスプリング65による弁体63の付勢力が強くなり、図5(A)に示すように第2ロッド42が進出するとスプリング65による弁体63の付勢力が弱くなる。本実施形態では、付勢力を弱くした図5(A)の状態で、炊飯鍋10内の圧力が1.15気圧を超えると蒸気圧で弁体63が第2通気孔61上から離反し、付勢力を強くした図5(B)の状態で、炊飯鍋10内の圧力が1.30気圧を超えると蒸気圧で弁体63が第2通気孔61上から離反するように設定している。
【0030】
この内蓋48を装着した蓋体21は、第1および第2通気孔55,61から炊飯鍋10内の空気(蒸気)が機外に排気される。具体的には、炊飯鍋10内の空気は、第1および第2通気孔55,61を通って第1および第2調圧弁52,58内に流入し、第1および第2調圧弁52,58のカバー56,62と収容部32,38との間を通って放熱板44と内蓋48との隙間に至る。そして、これらの隙間を通って被接続部29から蒸気口ユニット24を経て機外に排気される。
【0031】
また、第1および第2調圧弁58を搭載した本実施形態の圧力炊飯器は、第1ソレノイド35を動作させることによって球状部材57で第1通気孔55を塞ぐと、第2調圧弁58の弁体63の作用によって、炊飯鍋10内を大気圧(1.00気圧)より高い低設定圧(1.15気圧)まで昇圧することができる。さらに、第2ソレノイド41を動作させることによって第2調圧弁58の弁体63の付勢力を強くすると、炊飯鍋10内を低設定圧より高い高設定圧(1.30気圧)まで昇圧することができる。即ち、本実施形態の圧力炊飯器は、第1調圧弁52によって第1通気孔55を開放した大気圧状態を含み、炊飯鍋10内を3段階で調圧することが可能である。なお、例えば炊飯中に米粒によって第2通気孔61が塞がれ、高設定圧より高い異常圧力(1.40気圧)まで炊飯鍋10内が昇圧すると、第1調圧弁52の球状部材57が作動することにより、それ以上の圧力上昇を防止する。
【0032】
この圧力炊飯器において、肩体14の正面側上部には、ユーザが炊飯条件を入力したり、操作状態や動作状態を表示するための操作パネル66が配設されている。この操作パネル66は、図8に示すように、表示手段である中央の液晶表示板67の周囲に、選択部である複数のスイッチ75〜82を配設したものである。
【0033】
液晶表示板67の略中央には、現在時刻や予約時刻、そして、炊飯に要する残時間等を表示する数値セグメント68が設けられている。数値セグメント68の左側から下側にかけた領域には、複数の炊飯メニューの選択状態を示すメニューセグメント69が設けられている。また、数値セグメント68の上部には、白米炊飯の選択状態を示すとともに、炊き上げる米の硬さの選択状態を示す黒塗り△印の印セグメント70が設けられている。数値セグメント68の右側の領域には、予約炊飯の選択状態を示す予約セグメント71が設けられている。この予約セグメント71の下部には、炊飯処理の実行中において、炊飯鍋10内が大気圧より高い状態になっていることを示す圧力セグメント72が設けられている。
【0034】
液晶表示板67の下部には、炊き上げる米の甘みの選択状態を示す甘み表示部73が設けられている。この甘み表示部73は、3個のLED74a〜74cを有し、LED74aが甘みを多くするように選択した状態、LED74bが甘みを普通(中)とするように選択した状態、LED74cが甘みを少なくするように選択した状態を示す。
【0035】
数値セグメント68の設定変更は、液晶表示板67の右側に配設した△印のアップスイッチ75および▽印のダウンスイッチ76により行われる。メニューセグメント69の設定変更は、液晶表示板67の左側上部に配設したメニュースイッチ77により行われる。印セグメント70の設定変更は、メニュースイッチ77の下部に配設した硬さ選択部である粘りスイッチ78により行われる。予約炊飯の選択は、ダウンスイッチ76の下部に配設した予約スイッチ79により行われる。甘み表示部73の設定変更は、粘りスイッチ78の下部に配設した甘み選択部である甘みスイッチ80により行われる。そして、アップスイッチ75の右側には、予約炊飯を含む炊飯処理の実行スイッチとして、炊飯スイッチ81が配設されている。メニュースイッチ77の左側には、炊飯処理および保温処理を停止したり、他のスイッチ操作による選択状態を解除するためのとりけしスイッチ82が配設されている。
【0036】
この炊飯器には、炊飯器本体11の正面側に制御基板(図示せず)が配設され、この制御基板に制御手段であるマイコン83が実装されている。マイコン83は、操作パネル66の炊飯スイッチ81の操作を検出すると、炊飯制御手段の役割をなし、内蔵した記憶手段であるROM84に記憶された炊飯プログラムに従って、予熱工程、昇温(中ぱっぱ)工程、沸騰維持工程、炊き上げ工程、および、2度炊き工程を含むむらし工程からなる炊飯処理を実行する。その後、引き続いて保温制御手段の役割をなし、炊き上げた米飯を所定温度に保温する保温処理を実行する。なお、炊き上げ工程は設けることなく、沸騰維持工程が終了すると、むらし工程を実行する構成としてもよい。
【0037】
炊飯処理にてマイコン83は、温度センサ20,47の検出値に基づいて、加熱手段である誘導加熱コイル17、胴ヒータ19および蓋ヒータ45の加熱制御を行う(加熱制御手段)。また、温度センサ20,47の検出値と、予め設定された実行時間などの動作条件に基づいて、第1および第2調圧弁52,58のソレノイド35,41を動作させ、炊飯鍋10内を大気圧以上の設定圧に調圧する調圧工程を並行処理する(調圧制御手段)。
【0038】
調圧工程では、通常の白米炊飯において、粘りスイッチ78の操作により選択された米の硬さ(言い換えれば「粘り」)と、甘みスイッチ80の操作により選択された米の甘みとに基づいて、第1および第2調圧弁52,58を動作させる動作条件(時間または温度(圧力)など)を設定して制御を行う。なお、第1および第2調圧弁52,58を動作させるとは、本実施形態では、第1調圧弁52を非動作状態とすることによる大気圧状態、第1調圧弁52を動作状態とすることによって低設定圧まで昇圧可能な状態、更に第2調圧弁58を動作状態とすることによって高設定圧まで昇圧可能な状態のうち、いずれかの状態とすることを意味する。
【0039】
具体的には、本実施形態の調圧工程は、昇温工程に移行すると同時に実行される。そして、この調圧工程は、炊き上げる米の硬さを調整する調圧工程全体と、炊き上げる米の甘みを調整する一部(以下「甘み調整ステップ」と称する。)とからなる。そのうち、甘み調整ステップは、炊飯鍋10内の水が沸騰し始める温度帯(α化が促進する温度帯)で実行するものである。これら硬さと甘みを組み合わせた各動作条件(時間)は、動作テーブルとしてROM84に予め記憶されている。但し、硬さ設定に基づいた各動作テーブルと甘み設定に基づいた各動作テーブルをそれぞれROM84に予め記憶し、炊飯処理の開始時に、各動作テーブルを組み合わせ、調整する構成としてもよい。
【0040】
次に、炊き上げる米の硬さと、投入圧力および時間の関係を説明する。図9Aに示すように、本実施形態の圧力炊飯器は、選択可能な米の硬さの種類を、調圧手段である調圧弁52,58によって炊飯鍋10内を調圧可能な可変数(3段階)より多く(5段階)している。これらの硬さ調整は、高設定圧まで昇圧可能とする時間、低設定圧まで昇圧可能とする時間、大気圧とする時間を組み合わせ、炊飯鍋10内に投入する圧力(熱)の総量(投入圧力量≒加熱量)を変更することにより実現される。本実施形態では、昇圧工程に移行すると同時に調圧工程を実行するため、開始直後の炊飯鍋10内は温度上昇が不十分であり、昇圧しない状態である。よって、この昇圧不可能な時間帯(2分)は除外して実行時間を設定(加算設定)する。なお、時間帯の代わりに温度帯を除外して実行する構成としてもよい。
【0041】
具体的には、上側に位置する「もちもち」は、炊飯鍋10内への投入圧力量を多くすることにより米の硬さを柔らかくし、下側に位置する「しゃっきり」は、炊飯鍋10内への投入圧力量を少なくすることにより米の硬さを硬くする。また、調圧工程の実行時間は、炊飯鍋10内を昇圧可能な設定圧を高くすることにより短くなり、設定圧を低くすることにより長くなる。さらに、高設定圧とした状態から、圧力投入を解除して大気圧に降圧(平衡)可能な状態とすると、炊飯鍋10内の高温の水蒸気が蒸気口ユニット24の出口から噴出してしまう。そのため、本実施形態では、米の硬さ「ふつう」を低設定圧で炊飯する場合の実行時間を基準として、硬めである「ややしゃっきり」「しゃっきり」および柔らかめである「ややもちもち」「もちもち」の設定圧と時間を設定している。具体的には、炊き上げ硬さが硬く設定されている場合には、まず低設定圧として調圧した後、大気圧と平衡するように調圧する。一方、炊き上げ硬さが柔らかく設定されている場合には、まず高設定圧として調圧した後に、低設定圧として調圧し、最後に大気圧と平衡するように調圧する。これにより、調圧工程の実行時間をできるだけ長く設定できるように構成している。
【0042】
このように、本実施形態の圧力炊飯器では、炊き上げる米の硬さ毎に投入圧力量(加熱量)を設定し、低設定圧での調圧時間を最大限に設定したうえで、過少分を高設定圧で調圧することにより補う構成としている。そして、米への圧力投入量を少なくする硬め設定の場合には低設定圧として調圧するため、過剰な圧力投入を防止できる。また、米への圧力投入量を多くする必要がある柔らかめ設定の場合には高設定圧として調圧した後に低設定圧として調圧するため、調圧工程の実行時間を略同一としたうえで、低設定圧での調圧時間を十分に確保できる。よって、理想的な硬さ調整を実現できる。しかも、高設定圧から大気開放することに伴う排気通路の出口からの蒸気の噴出を防止できる。その結果、蒸気による周囲の汚れを防止できるとともに、安全性を確保できる。
【0043】
次に、炊き上げる米の甘みと、投入圧力および時間の関係を説明する。図9Bに示すように、本実施形態の圧力炊飯器は、選択可能な米の甘みの種類を、調圧弁52,58によって炊飯鍋10内を調節可能な可変数と同じ(3段階)にしている。これらの甘み調整は、炊飯鍋10内を昇圧可能な設定圧を変更することにより実現される。具体的には、炊飯鍋10内を昇圧可能な設定圧を高くすることにより米の甘みを多くし、炊飯鍋10内を昇圧可能な設定圧を低くすることにより米の甘みを少なくする構成としている。なお、本実施形態では、この甘み調整ステップは、圧力投入開始時間から予め設定した時間Ta(昇圧不可能な時間帯を含めて8分)としている。但し、圧力炊飯器に圧力センサを実装する場合には、所定圧力まで昇圧した後の時間とすることが好ましい。
【0044】
次に、調圧工程での硬さ調整と甘み調整を組み合わせた動作テーブルについて、図9Cの一例を参照しながら説明する。この図9Cは、炊き上げる米の硬さを「ふつう」とした状態での甘み調整を示す。図9Aに示すように、米の硬さを「ふつう」として炊飯する場合には、調圧工程は、予め設定した時間(昇圧不可能な時間帯を含めて13分)炊飯鍋10内が低設定圧となるように、調圧弁52,58を制御する。一方、甘み調整ステップでは、図9Bに示すように、甘みを多くする場合には投入圧力を高設定圧とし、甘みを普通とする場合には投入圧力を低設定圧とし、甘みを少なくする場合には圧力を投入しない大気圧とする。
【0045】
即ち、調圧工程において、甘み調整ステップを実行する時間帯Taでは、固さ調整を行うための第1昇圧設定が低設定圧となっているのに対して、甘み調整を行うための第2昇圧設定が、甘み「多」では高設定圧、甘み「少」では大気圧となっており、設定圧が異なる場合がある。この場合、調圧工程の甘み調整ステップでは、第2昇圧設定として調圧を行う構成としている。そして、甘み調整ステップの終了後に、第1および第2昇圧設定の差分を加算または減算することにより、調整する構成としている。
【0046】
具体的には、図9Cの「多」に示すように、硬さがふつうで甘みが多い米を炊き上げる場合には、甘み調整ステップにて甘みを調整するための高設定圧に調圧した後、硬さを調整するための低設定圧で調圧する。そして、この際に甘み調整ステップにて過剰に加えた圧力分を減算して調圧した後、大気圧と平衡するように調圧弁52,58を動作させる。ここで、この例では、調圧弁52,58による低設定圧での調圧の完了時点は10.0分であるが、大気圧と平衡させた非昇圧設定状態であっても、米には相当の熱量が加わるため、その熱量を加算して調圧工程(圧力投入量)は13.0分までで演算する。
【0047】
また、図9Cの「中」に示すように、硬さがふつうで甘みが普通の米を炊き上げる場合には、甘み調整ステップにて甘みを調整するための低設定圧に調圧した後、残りを硬さを調整するための低設定圧で調圧する。この例では、硬さを調整するための第1昇圧設定と、甘みを調整するための第2昇圧設定とは同一であるため、硬さのみを調整する場合と同じ(何ら調整することなく)の時間(13.0分)が経過した時点で調圧工程を終了する。
【0048】
さらに、図9Cの「少」に示すように、硬さがふつうで甘みが少ない米を炊き上げる場合には、甘み調整ステップにて甘みを調整するための大気圧に調圧した後、残りを硬さを調整するための低設定圧で調圧する。そして、甘み調整ステップにて過少になった圧力分を加算して調圧工程を終了する。この際、甘み調整ステップにて炊飯鍋10内を大気圧状態としていても、米には相当量の熱量が加わっているため、13.0分経過後に、その熱量相当分を減算した時間(1分)分を低設定圧で継続する。
【0049】
このように、甘みを少なくする場合には、調圧工程の実行時間が若干延びる場合があるが、大気圧状態を含む調圧工程の実行時間は、略同一である。これは、5段階(もちもち、ややもちもち、普通、ややしゃっきり、しゃっきり)の米の炊き上げ硬さのうち、いずれの場合でも同様である。そして、この構成は、調圧工程内において、大気圧状態、大気圧より高い低設定圧状態、および、低設定圧より高い高設定圧状態に切り換えることにより、実現できる。
【0050】
次に、甘み調整ステップを有する調圧工程を並行処理する炊飯処理の一例を説明する。図10は、炊き上げる米の硬さを「ややもちもち」とし、甘みを多くする場合を示す。なお、この図10には、炊飯鍋10内の圧力を検証するために、実際には搭載しない圧力センサを搭載し、その変移も表している。
【0051】
ユーザが操作パネル66のスイッチを操作して炊飯処理を実行すると、マイコン83は、ユーザが設定した炊き上げる米の硬さと甘みの選択状態を読み込む。そして、その選択状態に基づいて、甘み調整ステップを含む昇圧工程の実行条件(投入圧力と時間)をROM84から読み込んで、炊飯処理を開始する。
【0052】
炊飯処理では、まず、予熱工程を予め設定した時間実行する。この予熱工程では、誘導加熱コイル17と蓋ヒータ45とが動作され、鍋用温度センサ20による下部測定温度が約40℃を維持するように、誘導加熱コイル17をオンオフ制御(温調)する。これにより、飯米に水を吸収させる。
【0053】
予熱工程が終了すると、炊飯鍋10内を沸騰直前の温度まで昇温させる昇温工程を実行する。この昇温工程は、炊飯鍋10内にセットした米の炊飯容量を判別する容量判別工程を含む。また、この昇温工程の実行と同時に、炊飯鍋10内を大気圧より高い圧力に昇圧可能とする調圧工程の並行処理が開始される。
【0054】
具体的には、まず、誘導加熱コイル17をフルパワーで動作させ、炊飯鍋10を高加熱量(電力)で加熱する(昇温1)。これにより、鍋用温度センサ20による下部測定温度が急激に上昇し始め、その測定温度が第1目標温度(60℃)になると昇温1を終了し、昇温2に移行する。昇温2では、誘導加熱コイル17のパワー(出力)を少し抑えて加熱、蓋用温度センサ47による上部測定温度が第2目標温度(60℃)になると終了し、昇温3に移行する。なお、この昇温2の実行中に、炊飯鍋10内の温度が急激に上昇することにより、炊飯鍋10内の圧力が急激に上昇し始める。また、この昇圧2と並行して炊飯鍋10内にセットした米の炊飯容量を判別する。この容量判別工程は、昇温2の実行時間とROM84に記憶したデータテーブルとに基づいて判断する。昇温3では、過熱によるふきこぼれを防止するために、誘導過熱コイル17をオンオフ制御して加熱し、蓋用温度センサ47による上部測定温度が第3目標温度(70℃)になると昇温3(昇温工程)を終了する。
【0055】
昇温工程が終了すると、炊飯鍋10内を沸騰温度に維持する沸騰維持工程を実行する。この沸騰維持工程は、誘導加熱コイル17、胴ヒータ19および蓋ヒータ45を動作させ、炊飯鍋10内の水がほぼ無くなるまで実行される。なお、この沸騰維持工程では、まず、昇温工程から引き続く高加熱量によってふきこぼれが発生することを防止する(沸騰維持1)。この沸騰維持1では、誘導加熱コイル17への通電を停止するため、炊飯鍋10の内圧が一時的に降圧する。この沸騰維持1を所定時間(1分)実行すると、誘導加熱コイル17をオンオフ制御して加熱する沸騰維持2を実行する。この沸騰維持2は、鍋用温度センサ20による下部測定温度がドライアップ温度(110℃)になると終了する。この沸騰維持2が終了すると、誘導加熱コイル17の出力を抑えてオンオフ制御して加熱する沸騰維持3を実行する。そして、この沸騰維持3を所定時間(5分)実行すると、沸騰維持3(沸騰維持工程)を終了する。
【0056】
沸騰維持工程が終了すると、再び誘導加熱コイル17の出力を上げてオンオフ制御して加熱し、炊飯鍋10内を完全にドライアップさせる炊き上げ工程を実行する。この炊き上げ工程は、鍋用温度センサ20による下部測定温度がドライアップ温度(110℃)になると終了する。
【0057】
炊き上げ工程が終了すると、炊き上げた炊飯鍋10内の米を蒸らすむらし工程を実行する。このむらし工程の実行時には、殆どの場合、調圧工程は終了している。そのため、むらし工程では、炊飯鍋10内の蒸気は排気通路を通して外部に排出され、炊飯鍋10内の圧力は大気圧と平衡した状態をなす。
【0058】
具体的には、まず、誘導加熱コイル17への通電を遮断した状態で、調圧工程が終了するまで待機する(むらし0)。そして、調圧工程が終了して脱圧すると、所定時間(3分)経過するまで待機するむらし1を実行する。そして、むらし1が終了すると、誘導加熱コイル17をオンオフ制御して加熱する2度炊き工程を実行する。この2度炊き工程を所定時間(1分)実行すると、誘導加熱コイル17、胴ヒータ19および蓋ヒータ45を低加熱量で動作させるむらし2を実行する。このむらし2は、予め設定した時間が経過すると終了する。これにより、炊飯処理が終了し、保温処理に移行する。
【0059】
一方、昇温工程への移行と同時に開始された調圧工程では、まず、高設定圧まで昇圧可能とした甘み調整ステップを設定時間(8分)実行する。ここで、炊飯鍋10内の圧力は、調圧弁52,58の作動により高設定圧まで昇圧可能な状態であるが、昇温工程に移行した直後の所定時間(2分)は温度が低いため、大気圧と平衡した状態をなす。しかし、昇温2に移行し、炊飯鍋10内が昇温し始めることにより急激に昇圧し始める。そして、昇温工程(昇温3)が終了する時点では、1.20気圧を超えた状態をなす。この状態での炊飯鍋10内の温度は、米のα化が促進する温度帯である。そのため、この調圧工程の甘み調整ステップでは、米に含まれるデンプンから多くのブドウ糖やショ糖といった甘み成分を引き出し、米の表面に付着させることができる。
【0060】
甘み調整ステップの実行時間が経過すると、硬さ調整を行うための制御を継続する。図示の例では、硬さを調整するための第1昇圧設定と甘みを調整するための第2昇圧設定とが同一の高設定圧であるとともに、その実行時間(6分)も同一である。そのため、甘み調整ステップが終了すると、第2調圧弁58を動作させて、炊飯鍋10内を低設定圧まで昇圧可能な状態に切り換える。そして、この低設定圧での第2実行時間(5分)が経過すると、第1調圧弁52を動作させて、炊飯鍋10内を大気開放した状態とし、調圧工程を終了する。
【0061】
このように、本実施形態の圧力炊飯器は、調圧工程にて、調圧弁52,58によって炊飯鍋10内を昇圧可能な設定圧を、粘りスイッチ78の操作による選択状態に基づいて変更するため、確実に炊き上げる米の硬さを調整することができる。しかも、α化が促進する調圧工程の開始直後の設定圧を、甘みスイッチ80の操作による選択状態に基づいて変更するため、デンプンから多くのブドウ糖やショ糖といった甘み成分の引き出し量を調整して、米の表面に付着させることができる。その結果、確実に炊き上げる米の甘みを調整することができる。
【0062】
また、本実施形態では、硬さ選択状態に基づいた第1昇圧設定と、甘み選択状態に基づいた第2昇圧設定とが異なる場合、調圧工程の開始直後に実行する甘み調整ステップを第2昇圧設定として調圧し、甘み調整ステップの終了後に、第1および第2昇圧設定の差分を加算または減算して調整するため、甘み調整を行うことによって、炊き上げる米の硬さに影響が及ぶことを確実に防止できる。
【0063】
なお、本発明の圧力炊飯器は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0064】
例えば、前記実施形態では、調圧手段として一対の調圧弁52,58を用いた3段圧力調整のものとしたが、第1調圧弁52のみを用いた2段圧力調整のものであってもよい。この場合でも、調圧工程にて第1調圧弁52の切り換えにより2種以上の硬さ調整を実現できるとともに、2種以上の甘み調整を実現できる。また、ステッピングモータを用いて第2調圧弁58を多段階で調整する構成としても、調圧工程にて昇圧可能な設定圧を変更することにより、設定圧の可変数より多種の硬さ調整および甘み調整を実現できる。また、前記実施形態では、炊き上げる米の硬さと甘みの両方をユーザの嗜好に応じて変更できるようにしたが、硬さのみを変更できるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…炊飯鍋
11…炊飯器本体
17…誘導加熱コイル(加熱手段)
19…胴ヒータ(加熱手段)
20…鍋用温度センサ(温度検出手段)
21…蓋体
24…蒸気口ユニット(排気通路)
35…第1ソレノイド(調圧手段)
41…第2ソレノイド(調圧手段)
45…蓋ヒータ(加熱手段)
47…蓋用温度センサ(温度検出手段)
48…内蓋
52…第1調圧弁(調圧手段)
58…第2調圧弁(調圧手段)
66…操作パネル
67…液晶表示板
70…印セグメント(硬さ選択部)
73…甘み表示部(甘み選択部)
74a〜74c…LED(甘み選択部)
78…粘りスイッチ(硬さ選択部)
80…甘みスイッチ(甘み選択部)
83…マイコン(炊飯制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯鍋を収容する炊飯器本体と、前記炊飯鍋内の米を加熱する加熱手段と、前記炊飯鍋の上端開口を閉塞する蓋体と、前記炊飯鍋内と外部とを連通する排気通路と、前記排気通路の一部を構成する通気孔を開放可能に閉塞することにより少なくとも前記内鍋内を大気圧より高い低設定圧および低設定圧より高い高設定圧に昇圧可能な状態とする調圧手段と、前記炊飯鍋または前記炊飯鍋内の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段の検出値に基づいて前記加熱手段および前記調圧手段を制御して調圧工程を有する炊飯処理を実行する炊飯制御手段と、を備えた圧力炊飯器において、
炊き上げる米の硬さを2種以上設定し、その硬さを選択するための硬さ選択部を設け、
前記炊飯制御手段は、前記調圧工程にて硬さを調整するために、前記炊飯鍋内を昇圧可能な設定圧を、炊き上げ硬さが硬く設定されている場合には低設定圧として調圧する一方、炊き上げ硬さが柔らかく設定されている場合には高設定圧として調圧した後に低設定圧として調圧するようにしたことを特徴とする圧力炊飯器。
【請求項2】
前記調圧工程では、前記炊飯鍋内を高設定圧に昇圧可能とした場合、前記炊飯鍋内を低設定圧に昇圧可能な状態とした後、大気圧と平衡するように前記調圧手段を動作させることを特徴とする請求項1に記載の圧力炊飯器。
【請求項3】
前記加熱制御手段は、前記炊飯鍋内への投入圧力量を増やすことにより米の硬さを柔らかくし、前記炊飯鍋内への投入圧力量を減らすことにより米の硬さを硬くすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧力炊飯器。
【請求項4】
炊き上げる米の甘みを2種以上設定し、その甘みを選択するための甘み選択部を設け、
前記炊飯制御手段は、前記調圧工程にて水が沸騰し始める温度帯で甘みを調整するための甘み調整ステップを実行し、この甘み調整ステップでは前記炊飯鍋内を昇圧可能な設定圧を、米の甘みが多くなるように設定されている場合には高設定圧とする一方、米の甘みが少なくなるように設定されている場合には低設定圧または大気圧となるように前記調圧手段を動作させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の圧力炊飯器。
【請求項5】
前記炊飯制御手段は、前記硬さ選択部による硬さ選択状態に基づいて予め設定した前記調圧工程中の甘み調整ステップでの第1昇圧設定と、前記甘み選択部による甘み選択状態に基づいて予め設定した前記甘み調整ステップでの第2昇圧設定とが異なる場合、前記甘み調整ステップにて前記炊飯鍋内を第2昇圧設定として調圧し、この甘み調整ステップの終了後に、第1および第2昇圧設定の差分を加算または減算して調圧することを特徴とする請求項4に記載の圧力炊飯器。
【請求項6】
炊飯鍋を収容する炊飯器本体と、前記炊飯鍋内の米を加熱する加熱手段と、前記炊飯鍋の上端開口を閉塞する蓋体と、前記炊飯鍋内と外部とを連通する排気通路と、前記排気通路の一部を構成する通気孔を開放可能に閉塞することにより前記炊飯鍋内を大気圧より高い設定圧に昇圧可能な状態とする調圧手段と、前記炊飯鍋または前記炊飯鍋内の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段の検出値に基づいて前記加熱手段および前記調圧手段を制御して調圧工程を有する炊飯処理を実行する炊飯制御手段と、を備えた圧力炊飯器において、
炊き上げる米の硬さを2種以上設定し、その硬さを選択するための硬さ選択部を設け、前記炊飯制御手段は、前記硬さ選択部による硬さの選択状態に基づいて、前記調圧工程にて、前記調圧手段によって前記炊飯鍋内を昇圧可能な設定圧を変更するとともに、
炊き上げる米の甘みを2種以上設定し、その甘みを選択するための甘み選択部を設け、前記炊飯制御手段は、前記甘み選択部による甘みの選択状態に基づいて、前記調圧工程中の水が沸騰し始める温度帯で、前記調圧手段によって前記炊飯鍋内を昇圧可能な設定圧を変更する甘み調整ステップを実行するようにした
ことを特徴とする圧力炊飯器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図10】
image rotate