説明

圧力補償型流量調整弁およびそれを用いた油圧回路

【課題】 従来の圧力補償型流量調整弁にあっては、構造が複雑であることからコストが高く、また、形状も大きく油圧回路に組み込む時に大きなスペースが必要となるために、既存の椅子等に組み込むことが困難であるといった問題があった。
【解決手段】 垂直方向の一端側にネジ孔11bが形成されると共に油路を介して他端側に椅子の座部等の昇降体を昇降させるための油圧シリンダ2に接続するための取付部11dが形成され、かつ、前記油路と連通する出口側制御オリフィス12cを有する油路が形成され前記昇降体の油圧回路に接続するための接続部12aが形成された本体と、前記ネジ孔に螺合され出入自在な調整ネジ4と、前記ネジ孔に連通して形成された油路内に前記調整ネジと対向して移動可能に収容されると共に前記取付部側に差圧発生用オリフィス5aが形成された制御ピストン5と、該制御ピストンと前記調整ネジとの間に張設されたスプリング6とから構成した圧力補償型流量調整弁である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は理美容椅子、歯科用椅子、手術台等の油圧回路中に接続し、被施術者が乗った状態において、該被施術者の体重に関係なく下降および上昇速度が一定となるようにした圧力補償型流量調整弁およびそれを用いた油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における圧力補償型流量調整弁としては、本出願人会社が出願した実開平7−43252号公報の考案がある。この考案は、制御弁2が弁箱1内を摺動可能に設けられた区画壁1aに、同区画壁1aに直交し、かつ、対面側へも浅く埋設された丸孔1kと制御弁2の突起部2c間の絞りで余剰圧力の消費を行うようにして、制御弁2の動きに対する絞り面積の変化を緩やかなものとすると共に、同絞りの程度を制御するための計量弁4の上流の圧力を制御弁2本体を貫通して設けられた圧力導入路2a,2bを介して制御弁2の端面側区画に導いたものである。
【特許文献1】実開平7−43252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記した従来の圧力補償型流量調整弁にあっては、構造が複雑であることからコストが高く、また、形状も大きく油圧回路に組み込む時に大きなスペースが必要となるために、既存の椅子等に組み込むことが困難であるといった問題があった。
【0004】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、構造を簡素化してコストの低減を図ることができると共に、小型化であることから油圧回路に組み込んだ時に組み込むためのスペースを小さくすることができ、また、小型であることから2つを直列に接続することで上昇時と下降時の両方において油量を制御することができる圧力補償型流量調整弁およびそれを用いた油圧回路を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の圧力補償型流量調整弁は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、垂直方向の一端側にネジ孔が形成されると共に油路を介して他端側に椅子の座部等の昇降体を昇降させるための油圧シリンダに接続するための取付部が形成され、かつ、前記油路と連通する出口側制御オリフィスを有する油路が形成され前記昇降体の油圧回路に接続するための接続部が形成された本体と、前記ネジ孔に螺合され出入自在な調整ネジと、前記ネジ孔に連通して形成された油路内に前記調整ネジと対向して移動可能に収容されると共に前記取付部側に差圧発生用オリフィスが形成された制御ピストンと、該制御ピストンと前記調整ネジとの間に張設されたスプリングとから構成し、前記調整ネジのねじ込み量に応じて前記油圧シリンダ側からの油圧によって前記制御ピストンが移動して前記油圧シリンダの油圧の大小に係わらず油圧回路側へ流れる油量が一定となるようにしたものである。
【0006】
請求項2の手段は、前記した請求項1において、前記本体の前記取付部が昇降シリンダのシリンダにネジ止め固定されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の圧力補償型流量調整弁を用いた油圧回路の請求項3の手段は、垂直方向の一端側にネジ孔が形成されると共に油路を介して他端側に椅子の座部等の昇降体を昇降させるための油圧シリンダに接続するための取付部が形成され、かつ、前記油路と連通する出口側制御オリフィスを有する油路が形成され前記昇降体の油圧回路に接続するための接続部が形成された本体と、前記ネジ孔に螺合され出入自在な調整ネジと、前記ネジ孔に連通して形成された油路内に前記調整ネジと対向して移動可能に収容されると共に前記取付部側に差圧発生用オリフィスが形成された制御ピストンと、該制御ピストンと前記調整ネジとの間に張設されたスプリングとから構成し、前記調整ネジのねじ込み量に応じて前記昇降シリンダ側からの油圧によって前記制御ピストンが移動して前記昇降シリンダの油圧の大小に係わらず油圧回路側へ流れる油量が一定となるようにした圧力補償型流量調整弁の2つを前記油圧シリンダと油圧回路との間に向きが逆となるように直列接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は前記したように、本体と、調整ネジと、制御ピストンとおよびスプリングとから構成したので、構造が簡単でコストが安く、かつ、小型であるので如何なるスペースにも取付けて理美容椅子等に着座する被施術者の体重の大小に係わらず座部が一定の速度で下降させることが可能である。
【0009】
また、小型であることから油圧シリンダのシリンダ側に直接取付けることが可能なので、油圧回路として油を移送するためのホースの本数を減らして昇降体の下部を整然とすることが可能となる。
【0010】
さらに、流量調整弁の2つを向きが逆となるようにして直列接続することで、椅子等の昇降体の上昇および下降速度を、被施術者の体重に関係なく一定の速度で行うことができる等の効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、調整ネジのねじ込み量に応じて油圧シリンダ側からの油圧によって制御ピストンが移動して油圧シリンダ側の油圧の大小に係わらず油圧回路側へ流れる油量が一定となるようにした。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明に係る圧力補償型流量調整弁の一実施例を図1〜図3と共に説明する。
1は青銅等の金属によって略T字状に形成された本体にして、垂直部11には貫通孔11aが形成され、該貫通孔11aの一端にはネジ孔11bが形成され、他端は後述する昇降シリンダ2のシリンダ部にネジ止め固定するためのネジ11cを有する先細りの取付部11dが形成されている。また、水平部12には前記貫通孔11aと連通する油路12aが形成され、該油路12aの入口側には油圧回路にホース3(図3参照)を介して接続するための接続部12bが形成されると共に、出口側には前記貫通孔11aと連通する出口側制御オリフィス12cが形成されている。
【0013】
4は前記本体1における前記ネジ孔11bに螺合される調整ネジにして、ネジを一杯までネジ込んでも前記出口側制御オリフィス12cを塞がない長さに形成されている。また、調整ネジ4の先端側には後述するスプリング6の一端側が収容される突起4aが形成されている。なお、4bは油漏れ防止用のOリングである。
【0014】
5は前記調整ネジ4と対向する位置の貫通孔a内に摺動自在に収容されたカップ状の制御ピストンにして、空洞内に前記突起4aの先端部分が入り込んでいる。また、底部には差圧発生用のオリフィス5aが形成されている。そして、この制御ピストン5は昇降シリンダ2よりの油圧が加わらない状態では前記出口側制御オリフィス12cを塞がない長さに形成されている。
【0015】
6は一端が前記制御ピストン5の空洞内に入り込み、他端が前記調整ネジ4の突起4bが入り込むように配置されたスプリングである。
【0016】
次に、前記した如く構成した圧力補償型流量調整弁A(以下、調整弁という)を図4に示す理美容椅子の油圧回路に応用した場合の動作について説明する。
図4に示す油圧回路7は、オイルタンク71と、オイルタンク71内の油を加圧状態で供給するモータポンプ72と、リリーフバルブ73と、椅子の座部上昇用電磁弁74と、座部下降用電磁弁75と、椅子の背凭れ起立用電磁弁76と、背凭れ伏倒用電磁弁77と、座部の昇降シリンダ78と、背凭れの起伏シリンダ79および絞り弁80と、逆止弁81とより構成されている。
【0017】
そして、調整弁Aの接続部12bは逆止弁81と下降用電磁弁75との接続点と接続されている昇降シリンダ78との間にホース3を介して接続され、また、調整弁A′は逆止弁81と伏倒用電磁弁77との接続点と接続されている伏倒シリンダ79との間にホース3を介して接続されている。なお、調整弁A,A′の取付部11dはそれぞれの昇降シリンダ78,起伏シリンダ79のシリンダ部に接続されている。
【0018】
このように構成されている油圧回路において、座部を上昇させるために図示しない座部上昇用のスイッチを施術者が操作すると上昇用電磁弁74が切替えられると共にモータポンプ72が駆動されて加圧油が上昇用電磁弁74を介して調整弁Aの接続部12bに流れるので、加圧油は油路12a、出口側制御オリフィス12c、貫通孔11a、制御ピストン5、差圧発生用オリフィス5aおよび取付部11dを介して昇降シリンダ2のシリンダ部内に加圧油が供給される。これにより、昇降シリンダのピストンが加圧油によって上昇するので座部の上昇が開始される。
【0019】
そして、所望の高さ位置において施術者が前記スイッチを操作してオフにすると、モータポンプの動作が停止しすると共に上昇用電磁弁74が切替えられ、加圧油の流れは停止し座部はその位置において停止する。
【0020】
次に、施術が終了するなどして施術者が座部下降用のスイッチを操作すると、下降用電磁弁75が切替えられるので、昇降シリンダ78内の油が座部の重量と被施術者の体重とによって取付部11d内に流れ込む。この昇降シリンダ75よりの加圧油が取付部11d内から差圧発生用オリフィス5a内から出口側制御オリフィス12cに流れる。この油の流れる力は制御ピストン5をスプリング6のバネ力に抗して移動させようとする。
【0021】
この移動させようとする力は、座部の重量と被施術者の体重による油の流れによって決定されるので、スプリング6によるバネ力を標準的な体重の被施術者が着座しても制御ピストン5がバネ力に抗して移動したとしても、該制御ピストン5の上端によって出口側制御オリフィス12cの開口部を塞ぐ位置まで上昇しないように調整ネジ4のネジ込み量を調整しておく。
【0022】
これにより、標準的な体重の被施術者が着座した場合には、制御ピストン5が移動しても出口側制御オリフィス12cの開口部が塞がれないことから、差圧発生用オリフィス5aを通過した加圧油は制御ピストン5の内部から出口側制御オリフィス12c、接続部12a、ホース3を介して下降用電磁弁75からオイルタンク71内に戻される。従って、昇降シリンダ78のピストン(座部)の下降速度は出口側制御オリフィス12cの開口を流れる油量による速度で下降することになる。
【0023】
一方、前記した標準体重の被施術者より体重の重い被施術者が着座している場合には、昇降ピストン78より流れ出る加圧油量が多くなるので、制御ピストン5を移動させる押圧力が大きくなってスプリング6のバネ力に抗して制御ピストン5を標準体重の被施術者が着座している場合より移動量が大きくなって、制御ピストン5の上端が出口側制御オリフィス12cの開口部の一部を塞ぐ状態となる。
【0024】
これにより、差圧発生用オリフィス5aを通過する油量が多くなっても出口側制御オリフィス12cを通過する油量は、標準的な被施術者が着座している場合における座部の下降速度と略同じ速度となる。従って、本発明の調整弁Aにあっては、体重に相違があっても座部の下降速度は一定に保たれることになる。
【0025】
前記した動作説明は座部の昇降について説明したが、背凭れの起伏動作(座部の上昇に対して背凭れの起立に対応し、座部の下降に対して背凭れの伏倒に対応する)は、座部の昇降と同じ動作なので、説明は省略する。
【0026】
前記した油圧回路にあっては、座部の下降時および背凭れの伏倒時に被施術者の体重差があっても同じ速度で下降するようにしたものであるが、座部の上昇時および背凭れの起立時にも体重差があると上昇および起立の速度が異なる。そこで、図5の油圧回路は、両方向において体重差があっても同じ速度で行われるようにしたものである。なお、前記した図4と同一符号は同一部材を示し説明は省略する。
【0027】
先ず、図4における調整弁AまたはA′に、それぞれ向きを逆にしてもう一つの調整弁A1,A1′を接続する。すなわち、シリンダ2に接続されている調整弁A,A′の接続部12bに、もう一つの調整弁A1,A1′における接続部12bをネジ管等を利用して接続し、該調整弁A1,A1′の取付部11dを逆止弁81と下降用電磁弁75との接続点にホース等を介して接続する。また、この実施例においては、上昇用電磁弁74と起立用電磁弁76とモータポンプ72との間に接続された油量調整弁80は必要としない。
【0028】
施術者が座部上昇用のスイッチを操作すると上昇用電磁弁74が切替えられると共にモータポンプ72が駆動されて加圧油が上昇用電磁弁74を介して調整弁A′の取付部11d内に流れ込が、この時、座部に着座している被施術者の体重が重い場合には昇降シリンダ78のピストンに加わる荷重が大きいため上昇用電磁弁74に流れる油量が少なくなるようにリリースバルブ73を介してオイルタンク71に戻される。従って、制御ピストン5に流れる油量が少ないので、該制御ピストン5の移動量は小さく出口側制御オャフィス12cの開口は全開状態となり、昇降シリンダ78のピストンを移動させる油量は出口側制御オャフィス12cを流れる油量によって決定される。
【0029】
一方、座部に着座している被施術者の体重が軽い場合には、前記したとは逆に大量の加圧油量が制御ピストン5に流れ込むので、該制御ピストン5はスプリング6のバネ力に抗して移動して出口側制御オリフィス12cの開口を小さくすることになる。これにより、出口側制御オリフィス12cより流れ込む油量は少なくなり、従って、昇降シリンダ78のピストンの移動は遅くなり体重の重い被施術者の上昇速度と同じ速度となる。なお、この上昇速度の調整は調整ネジ4のネジ込み量によって行うことができる。
【0030】
そして、調整弁A1の接続部12aから出る油は、前記した調整弁Aの接続部12aに流れ込むので、前記した上昇時の動作で説明したように、出口側制御オリフィス12c、制御ピストン5の差圧発生用オリフィス5aを介して昇降シリンダ78のシリンダ内に供給されてピストンを上昇させ、座部を被施術者の体重に関係なく同じ速度で上昇させることになる。
【0031】
また、座部の下降動作においては、前記したように調整弁Aの動作によって接続部12aから一定の油量が流れ出し、調整弁A1の接続部12aに流れ込むが、この流れ込んだ油は出口側制御オリフィス12c、制御ピストン5の差圧発生用オリフィス5a、下降用電磁弁75を介してオイルタンク71内に戻されるので、下降動作も被施術者の体重に関係なく同じ速度で行われる。
【0032】
なお、前記した動作説明は座部の昇降について説明したが、背凭れの起伏も同様の動作で行われる。また、理美容椅子のみならず、歯科用椅子や手術台にも応用できることは勿論のことである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る圧力補償型流量調整弁の一実施例を示す断面図である。
【図2】同上の制御ピストンが油圧シリンダよりの圧力油によって移動した状態を示す断面図である。
【図3】油圧シリンダに組み込んだ状態の側面図である。
【図4】圧力補償型流量調整弁を単体で接続した場合の油圧回路である。
【図5】圧力補償型流量調整弁の2個を直列接続した場合の油圧回路である。
【符号の説明】
【0034】
1 本体
11 垂直部
11b ネジ孔
11c 取付部
12 水平部
12a 接続部
12c 出口側制御オリフィス
2 油圧シリンダ
3 ホース
4 調整ネジ
5 制御ピストン
5a 差圧発生用オリフィス
6 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向の一端側にネジ孔が形成されると共に油路を介して他端側に椅子の座部等の昇降体を昇降させるための油圧シリンダに接続するための取付部が形成され、かつ、前記油路と連通する出口側制御オリフィスを有する油路が形成され前記昇降体の油圧回路に接続するための接続部が形成された本体と、
前記ネジ孔に螺合され出入自在な調整ネジと、
前記ネジ孔に連通して形成された油路内に前記調整ネジと対向して移動可能に収容されると共に前記取付部側に差圧発生用オリフィスが形成された制御ピストンと、
該制御ピストンと前記調整ネジとの間に張設されたスプリングと、
から構成し、前記調整ネジのねじ込み量に応じて前記油圧シリンダ側からの油圧によって前記制御ピストンが移動して前記油圧シリンダの油圧の大小に係わらず油圧回路側へ流れる油量が一定となるようにしたことを特徴とする圧力補償型流量調整弁。
【請求項2】
前記本体の前記取付部が昇降シリンダのシリンダにネジ止め固定されていることを特徴とする請求項1記載の圧力補償型流量調整弁。
【請求項3】
垂直方向の一端側にネジ孔が形成されると共に油路を介して他端側に椅子の座部等の昇降体を昇降させるための油圧シリンダに接続するための取付部が形成され、かつ、前記油路と連通する出口側制御オリフィスを有する油路が形成され前記昇降体の油圧回路に接続するための接続部が形成された本体と、
前記ネジ孔に螺合され出入自在な調整ネジと、
前記ネジ孔に連通して形成された油路内に前記調整ネジと対向して移動可能に収容されると共に前記取付部側に差圧発生用オリフィスが形成された制御ピストンと、
該制御ピストンと前記調整ネジとの間に張設されたスプリングと、
から構成し、前記調整ネジのねじ込み量に応じて前記昇降シリンダ側からの油圧によって前記制御ピストンが移動して前記昇降シリンダの油圧の大小に係わらず油圧回路側へ流れる油量が一定となるようにした圧力補償型流量調整弁の2つを前記油圧シリンダと油圧回路との間に向きが逆となるように直列接続したことを特徴とする圧力補償型流量調整弁を用いた油圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−8346(P2008−8346A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177607(P2006−177607)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000108672)タカラベルモント株式会社 (113)
【Fターム(参考)】