説明

圧力調整装置及び環境試験装置

【課題】圧力を調整するための袋体を備えた圧力調整装置において、袋体の耐久性を向上させる。
【解決手段】環境試験装置10は、試験空間Stを有する試験槽12と、圧力調整装置14と備えている。圧力調整装置14は、接続口35cを通して試験空間Stに連通する内部空間Siを有し、試験空間St内からの空気が接続口35cを通して内部空間Siに流入すると膨らむ一方、接続口35cを通して内部空間Siの空気が流出すると萎む袋体35と、袋体35をその上部において吊持する支持部36と、を備えている。袋体35は、変形自在な袋体本体35aと、袋体本体35aよりも変形し難く、かつ袋体本体35aの上部に設けられて支持部36に吊り下げられる保持部35bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力調整装置及び環境試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、環境試験装置等において、試験室内の温度の変動に伴って圧力が変動することにより、外部の空気が試験室内に流入したり、試験室内の空気が外部に漏出したりすることが知られている。外部空気が試験室内に流入して冷却されると冷凍機の熱交換器等での結露や結霜の原因となるため、外部空気が試験室内に流入しないようにするのが好ましい。このような観点から特許文献1〜3に開示された環境試験装置では、試験室内の圧力変動を緩和するための圧力調整部が設けられている。
【0003】
特許文献1に開示された圧力調整部は、試験室の断熱壁に形成された開口を覆うように設けられた袋体によって構成されている。この袋体は、ポリエチレン等の変形自在な柔軟な材料でできており、試験室の室温が上昇して空気が膨張すると試験室内の空気が袋体内に流入して膨らむ一方、試験室の室温が低下すると萎むことにより、試験室内の圧力変動を緩和する。
【0004】
特許文献2に開示された圧力調整部は、ダクトを通して試験室内と連通しているが、この圧力調整部も、ポリエチレン等の変形自在な柔軟な材料からなる袋体によって構成されている。この圧力調整部は、ダクトに接続された接続管の一端部にホースバンド等により、上向き又は横向きに取り付けられている。
【0005】
特許文献3に開示された圧力調整部は、ポリエチレン等の変形自在な柔軟な材料からなる袋体によって構成されており、この袋体の開口縁部は、板部材の縁部及び箱体のフランジ部間に挟み込まれて横向きに配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−48705号公報
【特許文献2】特開2009−257956号公報
【特許文献3】特開2009−257957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3に開示された圧力調整部は、何れも変形自在な材料で構成されているので、試験室内の圧力変動を緩和することができるが、以下の問題点がある。
【0008】
すなわち、特許文献1及び2では、袋体が上向き又は横向きに取り付けられているので、袋体自身の重みで中折れする虞がある。このため、袋体の耐久性が低下してしまう虞がある。また、特許文献3では、袋体の開口周縁部が固定されるとともに、横向きに膨出するように取り付けられているので、袋体が萎んだときには部分的に重なり合うように折れ曲がってしまう虞があり、これによって袋体の耐久性が低下してしまう虞がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、圧力を調整するための袋体を備えた圧力調整装置において、前記袋体の耐久性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明は、内部圧力が変動し得る閉空間内の圧力変動を緩和するための圧力調整装置であって、接続口を通して前記閉空間に連通する内部空間を有し、前記閉空間内からの空気が前記接続口を通して前記内部空間に流入すると膨らむ一方、前記接続口を通して前記内部空間の空気が流出すると萎む袋体と、前記袋体をその上部において吊持する支持部と、を備えている圧力調整装置。
【0011】
本発明では、袋体が支持部によって吊り下げられた状態となっているので、袋体が萎んだ状態になった場合でも、自身の重みによって袋体が中折れしたり、部分的に重なるように折れ曲がったりするのを防止することができる。このため、袋体の耐久性が低下することを防止することができる。しかも、袋体が中折れすることによって接続口の一部が塞がれることを防止することもできる。
【0012】
ここで、前記袋体は、変形自在な袋体本体と、前記袋体本体よりも変形し難く、かつ前記袋体本体の上部に設けられて前記支持部に吊り下げられる保持部とを備えているのが好ましい。
【0013】
この態様では、変形自在な袋体本体によって前記閉空間の圧力変動に追従し易くすることができる。しかも、袋体本体の上部に袋体本体よりも変形し難い保持部が設けられているので、支持部に吊持された状態で袋体本体に応力集中が発生することを抑制することができる。さらに、袋体本体が萎んだときに、袋体本体の上部での変形をある程度規制することができるため、袋体本体自身によって空気の流通が阻害されることを防止することができる。
【0014】
また、前記支持部は、前記袋体を収容する中空構造に構成されるとともに、その天部において前記袋体を吊持する構成であってもよい。この態様では、袋体が支持部内に収容されるので、人手が袋体に触れたり、外部の物によって袋体が傷ついたりすることを防止でき、袋体の寿命が短くなることを防止することができる。
【0015】
また、前記袋体は、その下部において下部支持部に保持されている構成としてもよい。この態様では、袋体が上部において支持部に保持されているとともに下部において下部支持部に支持されているので、袋体の重量を上部のみで支持する構成に比べて袋体の上部にかかる応力を低減することができる。また、袋体に自重による張力がかからないようにすることができる。したがって、この態様では、袋体の耐久性をさらに向上することができる。
【0016】
この態様において、前記下部支持部が、前記接続口が形成された前記袋体の下部を取り付けるための環状の取付部を備えている場合には、前記袋体は、前記接続口を前記取付部に被せることによって前記取付部に取り付けられているのが好ましい。この態様では、袋体の接続口の形状を一定形状に維持することができるため、袋体が萎んだときでも空気の通り道を常時確保することができる。
【0017】
前記支持部には、当該支持部内の残圧を逃すための貫通孔が設けられていてもよい。この態様では、袋体が膨らんだり萎んだりする際に支持部内の空気圧が抵抗となることを防止することができる。このため、袋体への空気の流入時及び袋体からの空気の流出時にスムーズに圧力緩和を行うことができる。
【0018】
前記袋体の内部空間と前記閉空間とを連通させるダクトを備えている場合には、前記ダクトは前記支持部の中に配置されていてもよい。この態様では、ダクトが支持部の中に配設されているので、外部からダクトに触れることができない。このため、ダクト内に高温の空気が流通する場合でも、安全である。
【0019】
また、前記袋体の内部空間と前記閉空間とを連通させるダクトを備えている場合には、前記ダクトは、前記閉空間との連通部よりも低い位置に位置するトラップ部を有していてもよい。この態様では、ダクト内を流通する空気中の水分が凝縮した場合にそれをトラップしてダクトのトラップ部に溜めることができる。このため、ダクト内の凝縮水が袋体内及び閉空間内に流入することを防止することができる。
【0020】
前記袋体には、前記接続口に向かって徐々に幅が狭くなる形状の絞り部が設けられていてもよい。この態様では、袋体が萎んだときに袋体自身によって接続口をより塞ぎ難くすることができる。
【0021】
本発明は、閉空間となり得る試験空間を有する試験槽と、前記圧力調整装置と、備え、前記袋体の内部空間は、前記試験槽の試験空間に連通している環境試験装置である。
【0022】
前記環境試験装置において、加熱器で加熱された高温空気を前記試験空間に送るための高温側送風機と、冷却器で冷却された低温空気を前記試験空間に送るための低温側送風機と、を備え、前記試験槽には、前記試験空間と前記内部空間とを連通させるための取出し口が設けられている場合には、前記取出し口は、前記高温側送風機の動圧を受け、かつ前記低温側送風機の動圧が遮られるように形成されていてもよい。
【0023】
この態様では、高温側送風機によって高温空気が試験空間に送られるときに、試験空間内が昇圧して袋体を膨らませるが、このとき取出し口には高温側送風機の動圧がかかるので、この動圧を利用して袋体を積極的に膨らませることができる。一方、低温側送風機によって低温空気が試験空間に送られるときには、試験室内の圧力が低下して袋体が萎むことになるが、このときには、低温側送風機の動圧が取出し口にかからないようになっているので、この動圧の影響を受けて袋体が萎み難くなることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、圧力を調整するための袋体を備えた圧力調整装置において、前記袋体の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る環境試験装置を概略的に示す図である。
【図2】高温曝し試験時の前記環境試験装置を説明するための図である。
【図3】低温曝し試験時の前記環境試験装置を説明するための図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る環境試験装置を概略的に示す図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る環境試験装置を概略的に示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る環境試験装置における圧力調整装置を概略的に示す図である。
【図7】(a)(b)本発明の他の実施形態に係る環境試験装置における圧力調整装置を概略的に示す図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る環境試験装置における圧力調整装置を概略的に示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る環境試験装置における圧力調整装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係る環境試験装置10は、試料を収容可能な試験空間St(図2参照)を有する試験槽12と、試験空間Stの圧力変動を緩和するための圧力調整装置14と、を備えている。
【0028】
本実施形態の環境試験装置10は、例えば、試料に熱負荷を与えて試料の熱的強度等を試験可能な熱衝撃試験装置として構成されている。したがって、試験槽12は、図2及び図3に示すように、試験空間Stと、試験空間Stの上側に位置する高温側空調空間Shと、試験空間Stの下側に位置する低温側空調空間Slとを有する。具体的には、試験槽12は、箱型で中空のケーシング17と、このケーシング17の中間高さ位置でケーシング17内に架設された第1仕切り部材18と、第1仕切り部材18よりも下側の位置でケーシング17内に架設された第2仕切り部材19と、を備えている。第1仕切り部材18及び第2仕切り部材19により、ケーシング17内の空間が高温側空調空間Shと試験空間Stと低温側空調空間Slとに仕切られている。
【0029】
ケーシング17、第1仕切り部材18及び第2仕切り部材19は何れも、金属製又は樹脂製のパネルで断熱材をカバーした断熱パネルによって構成されている。
【0030】
高温側空調空間Shには、空気を加熱する加熱器21と、加熱された高温空気を試験空間Stに送るための高温側送風機22と、が配設されており、この空調空間Shでは、例えば200℃程度までの高温空気を生成可能である。
【0031】
低温側空調空間Slには、空気を冷却する冷却器25と、冷却された低温空気を試験空間Stに送るための低温側送風機26とが配設されており、この空調空間Slでは、例えば、−70℃程度までの低温空気を生成可能である。
【0032】
第1仕切り部材18には、試験空間Stと高温側空調空間Shとを連通する連通孔18a,18bが形成されている。連通孔18a,18bには、高温側空調空間Shから試験空間Stに流入する空気が流れる導入側連通孔18aと、試験空間Stから高温側空調空間Shに流出する空気が流れる導出側連通孔18bとがある。導入側連通孔18a及び導出側連通孔18bは、何れもダンパー(開閉部材)29によって開閉される。
【0033】
第2仕切り部材19には、試験空間Stと低温側空調空間Slとを連通する連通孔19a,19bが形成されている。連通孔19a,19bには、低温側空調空間Slから試験空間Stに流入する空気が流れる導入側連通孔19aと、試験空間Stから低温側空調空間Slに流出する空気が流れる導出側連通孔19bとがある。導入側連通孔19a及び導出側連通孔19bは、何れもダンパー(開閉部材)30によって開閉される。
【0034】
ケーシング17には、試験空間Stに面するように取出し口17aが設けられている。この取出し口17aは、試験空間St内の空気を圧力調整装置14に導くためのものである。この取出し口17aは、第1仕切り部材18のダンパー29が連通孔18a,18bを開放したときでも、このダンパー29の位置からずれた位置に形成され、かつ第2仕切り部材19のダンパー30が連通孔19a,19bを開放したときには、このダンパー30の位置に対応する位置に形成されている。ただし、この第2仕切り部材19のダンパー30によって取出し口17aが塞がれることはなく、低温側送風機26の動圧が取出し口17aに直接影響するのを遮るようになっている。
【0035】
なお、試験空間Stには、試料を載置するための棚状の試料台33等が配設されている。また、ケーシング17には、試料を出し入れするための出し入れ口が形成されるとともに、この出し入れ口を開閉する開閉扉(図示省略)が設けられている。
【0036】
圧力調整装置14は、試験空間St内からの空気が出入り可能な袋体35と、この袋体35を吊持する支持部36と、袋体35の内部空間Siと試験空間Stとを連通させるダクト37と、を備えている。
【0037】
支持部36は、袋体35を収容可能な中空構造の箱型に構成されており、底部36aと、底部36aの周囲から立設された側部36bと、側部36bの上端部に掛け渡された天部36cと、を備えている。天部36cには、袋体35を吊り下げるための吊り部材40が設けられている。支持部36は、試験槽12との間に僅かな間隙を形成するように試験槽12に近接して配置されている。なお、支持部36は、一側面が開放されるとともに、この開放された側面が試験槽12の一側面によって塞がれる構成としてもよい。
【0038】
袋体35は、支持部36内に配置されており、空気が出入りする内部空間Siが形成される袋体本体35aと、この袋体本体35aの上部に設けられる保持部35bとを備えている。袋体本体35aは、例えばポリエチレン、ビニル樹脂、シリコン等の変形自在な柔軟な材質で構成されている。
【0039】
袋体本体35aは、下端が開口するとともに上下方向に長い縦長の形状であり、内部空間Siの横断面が細長い形状となるように形成されている。袋体本体35aの下端開口は、ダクト37や支持部36に固定するための接続口35cとなる。袋体本体35aは、主として一方向(横断面の短尺方向)に膨張および収縮する構成であり、内部空間Siの膨張収縮量は、上端部及び下端部でごく僅かであるのに対し、上下方向の中間部で大きくなっている。この横断面の短尺方向と直交する方向(袋体本体35aの幅方向)における膨張収縮量は比較的少ない。本実施形態では、袋体35は、袋体本体35aの幅方向が支持部36における試験槽12側の側部36bに平行になるように配置されている。これにより、これと直交する方向の支持部36の幅(支持部36の厚み)が大きくならないようにすることができる。
【0040】
保持部35bは、袋体本体35aよりも変形し難い構成であり、袋体本体35aの幅方向のほぼ全体に亘る大きさに形成されている。保持部35bには、支持部36の吊り部材40を引っ掛けるための引っ掛け孔35dが設けられている。本実施形態では、保持部35bが横方向に長い平板状に形成されており、引っ掛け孔35dは、長手方向に並ぶように複数形成されている。保持部35bでは、袋体35が吊り部材40に吊り下げられたときに吊り部材40の周囲で応力集中が発生するが、袋体本体35aよりも高剛性に構成されているので、自重によって袋体本体35aに応力集中が発生するのを防止することができる。
【0041】
保持部35bは、袋体35の重量によっては変形しない程度の剛性又は変形するとしても僅かである剛性を有しており、袋体本体35aと同じ材質又は異なる材質で構成されている。ただし、保持部35bが袋体本体35aと同じ材質で構成される場合には、保持部35bの厚みを袋体本体35aよりも厚くする等して剛性を確保する必要がある。
【0042】
ダクト37は、試験槽12の試験空間Stと袋体35の内部空間Siとを連通させるためのものであり、本実施形態では支持部36内に配置されている。ダクト37は、支持部36の内面に沿うように設けられており、支持部36の側部36bに沿って上下方向に延びる縦部37aと、この縦部37aの下端部につながり、支持部36の底部36aに沿って水平方向に延びる横部37bと、を備えている。ダクト37は、空気の流路面積は流れ方向に沿ってほぼ一定になるように形成されており、例えば金属製のものである。
【0043】
縦部37aの上端部には、試験槽12の取出し口17aに連通するように側方を向いた第1連通口37cが設けられており、支持部36の側部36bには、第1連通口37cと対応する位置に開口部が形成されている。そして、ダクト37内の通路は、この第1連通口37c、開口部及び取出し口17aを通して試験空間Stに連通している。
【0044】
横部37bにおける端部には、ダクト37内の通路を開口させる第2連通口37dが形成されており、この横部37bの端部には、第2連通口37dを囲むように環状の取付部42が設けられている。この取付部42は、横部37bの上面に上側に突出するように設けられており、袋体本体35aの接続口35cを被せた状態で、例えばホースバンド等の固定部材44で袋体35を固定できるようになっている。すなわち、取付部42及び固定部材44により、袋体35の下部を保持する下部支持部が構成されている。
【0045】
袋体35は、上端部で天部36cの吊り部材40に吊り下げられる一方、下端部が下部支持部に保持されている。そして、袋体35は、この状態で中折れせず、かつ膨らんだり萎んだりするのに支障のない程度の余裕を持たせた寸法に設計されている。なお、袋体35は、吊り部材40に吊り下げられる構成に代え、上端部において天部36cに固定されて、天部36cに直接吊持される構成としてもよい。
【0046】
袋体本体35aの容量は、80〜120リットル程度であり、本実施形態では約90リットルに構成されている。そして、袋体本体35aは、高さが幅のおよそ3倍(2倍以上)になるように構成されている。
【0047】
試験槽12のケーシング17は、取出し口17aを含む部分が少し側方に突出した状態に形成されており、この部分のみが支持部36の側部36bに接触する構成となっている。これにより、試験槽12のケーシング17と支持部36との接触面積が小さくなり、試験槽12から支持部36への伝熱が抑制さる。なお、ケーシング17と支持部36との間に断熱材(図示省略)を介在させるようにしてもよい。
【0048】
本実施形態に係る環境試験装置10では、少なくとも高温曝し試験と低温曝し試験とを行うことができる。
【0049】
高温曝し試験のときには、図2に示すように、ダンパー29によって第1仕切り部材18の導入側連通孔18a及び導出側連通孔18bを開放する一方、ダンパー30によって第2仕切り部材19の導入側連通孔19a及び導出側連通孔19bを閉じる。第2仕切り部材19のダンパー30が連通孔19a,19bを閉じる姿勢となっているので、このダンパー30によってケーシング17の取出し口17aが塞がれることはない。そして、加熱器21を駆動するとともに高温側送風機22を駆動する。これにより、加熱器21によって加熱された高温空気が高温側空調空間Shと試験空間Stとの間で循環し、試験空間St内が設定温度に調整される。このとき、試験空間St内の温度が上昇するのに伴って空気が膨張するが、この空気膨張に伴って試験空間St内の空気がダクト37を通して袋体35の内部空間Siに流入し、袋体本体35aが膨らむ。このとき、高温側送風機22の動圧の影響を受けつつ試験空間St内の空気がダクト37内へと流入する。このため、試験空間St内の圧力上昇を効果的に緩和することができる。
【0050】
低温曝し試験のときには、図3に示すように、第1仕切り部材18の導入側連通孔18a及び導出側連通孔18bを閉じる一方、第2仕切り部材19の導入側連通孔19a及び導出側連通孔19bを開放する。そして、冷却器25を駆動するとともに低温側送風機26を駆動する。これにより、冷却器25によって冷却された低温空気が低温側空調空間Slと試験空間Stとの間で循環し、試験空間St内が設定温度に調整される。このとき、試験空間St内の温度が低下するのに伴って空気が収縮するが、この収縮に伴って袋体本体35a内の空気がダクト37を通して試験空間St内に流入する。これにより袋体本体35aが萎む。このとき、第2仕切り部材19のダンパー30が連通孔19a,19bを開放する姿勢となっていて、このダンパー30によって、低温側送風機26の動圧が取出し口17aに直接作用しないようになっている。このため、試験空間St内の圧力低下に伴って袋体本体35aの内部空間Siから試験空間Stに向かって空気が流れるときに、低温側送風機26の動圧によって空気が流れ難くなることを防止することができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態では、袋体35が支持部36によって吊り下げられた状態となっているので、袋体35が萎んだ状態になった場合でも、自身の重みによって袋体35が中折れしたり、部分的に重なるように折れ曲がったりするのを防止することができる。このため、袋体35の耐久性が低下することを防止することができる。しかも、袋体35が中折れすることによって接続口35cの一部が塞がれることを防止することもできる。
【0052】
さらに本実施形態では、変形自在な袋体本体35aによって試験空間Stの圧力変動に追従し易くすることができる一方、袋体本体35aの上部に袋体本体35aよりも変形し難い保持部35bが設けられているので、支持部36に吊持された状態で袋体本体35aに応力集中が発生することを抑制することができる。また、袋体本体35aが萎んだときに袋体本体35aの上部での変形を保持部35bによってある程度規制することができるため、袋体本体35a自身によって空気の流通が阻害されることを防止することができる。
【0053】
また本実施形態では、支持部36が中空構造に構成されるとともに、その天部36cにおいて袋体35を吊持する構成となっているので、人手が袋体35に触れたり、外部の物によって袋体35が傷ついたりすることを防止でき、袋体35の寿命が短くなることを防止することができる。
【0054】
また本実施形態では、袋体35が上部において支持部36に保持されているとともに下部において下部支持部に支持されているので、袋体35の重量を上部のみで支持する構成に比べて袋体35の上部にかかる応力を低減することができる。また、袋体35に自重による張力がかからないようにすることができる。したがって、本実施形態では、袋体35の耐久性をさらに向上することができる。なお、袋体35が萎んだときに中折れしたり、部分的に折れ曲がったりしないように、袋体35及び支持部36の寸法設計をしておけばよい。
【0055】
また本実施形態では、袋体35の接続口35cを取付部42に被せることによって取付部42に取り付けられているので、袋体35の接続口35cの形状を一定形状に維持することができる。これにより、袋体35が萎んだときでも空気の通り道を常時確保することができる。
【0056】
また本実施形態では、ダクト37が支持部36の中に配設されているので、外部からダクト37に触れることができない。このため、ダクト37内に高温の空気が流通する場合でも、安全である。
【0057】
また本実施形態では、高温側送風機22によって高温空気が試験空間Stに送られるときに、試験空間St内が昇圧して袋体35を膨らませるが、このとき取出し口17aには高温側送風機22の動圧がかかるので、この動圧を利用して袋体35を積極的に膨らませることができる。一方、低温側送風機26によって低温空気が試験空間Stに送られるときには、試験空間St内の圧力が低下して袋体35が萎むことになるが、このときには、低温側送風機26の動圧が取出し口17aにかからないようになっているので、この動圧の影響を受けて袋体35が萎み難くなることを抑制することができる。
【0058】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態ではダクト37が支持部36内に配設された構成としたが、この構成に限られるものではない。例えば、図4に示すように、ダクト37は、支持部36の外側に配設されるようにしてもよい。このダクト37は、一端部において試験槽12のケーシング17の側面に固定される一方、他端部において支持部36の底部36aに固定されており、底部36aには、この他端部に対応する位置に開口部が形成されるとともにこの開口部を囲むように環状で且つ上向きに突出した取付部42が設けられている。そして、この取付部42に袋体本体35aの接続口35cを被せた状態で袋体35が固定されている。すなわち、ダクト37は、水平方向に延びる水平部37eと、この水平部37eの端部から上方に延びる垂直部37fとを有しており、水平部37eの端面に第1連通口37cが設けられ、垂直部37fの上端面に第2連通口37dが設けられている。第1連通口37cは、ケーシング17において試験空間Stに対応する位置に形成された取出し口17aに連通し、第2連通口37dは、支持部36の底部36aに形成された開口部に連通している。したがって、ダクト37内の通路は、第2連通口37dを介して袋体本体35aの内部空間Siと連通している。この構成では、支持部36の底部36aに下部支持部が設けられていることになる。
【0059】
袋体本体35aは、例えば横断面が楕円形の筒状の筒状部35eと、この筒状部35eの下端部に形成された絞り部35fとを備えている。筒状部35eでは、径方向に膨張及び収縮が可能である。絞り部35fは、下側ほど幅が狭くなる略円錐台状に形成されており、その下端部が接続口35cとなっている。袋体本体35aに絞り部35fが設けられていれば、袋体本体35aが萎んだときに袋体本体35a自身によって接続口35cをより塞ぎ難くすることができる。なお、この形態でも、袋体本体35aは図1と同様の形状に形成してもよい。また図4では、袋体35が試験槽12側の側部36bに対して斜めを向いているが、図1と同様に、試験槽12側の側部36bに対して平行な向きになるように配設されていてもよい。また、ダクト37は、図6に示すような曲がり変形自在な構成としてもよい。
【0060】
図4のダクト37は、水平部37eと垂直部37fとを有する構成としたが、これに代え、図5に示すように、ダクト37が水平部37eと第1垂直部37gと第2垂直部37hとを備える構成としてもよい。すなわち、第1垂直部37gは、水平部37eの一端部から上方に延びており、その上端部においてケーシング17の取出し口17aに連通する試験空間Stとの連通部としての第1連通口37cが形成されている。第2垂直部37hは、水平部37eの他端部から上方に延びており、その上端部に内部空間Siとの連通部としての第2連通口37dが形成されるとともにこの第2連通口37dが支持部36の底部36aに設けられた取付部42の内側開口に連通する構成となっている。言い換えると、ダクト37は、両端部間の中間部が前記両端部(連通部のある部位)よりも低い位置となるトラップ部を有するように形成されている。したがって、この形態では、ダクト37内を流通する空気中の水分が凝縮した場合にそれをトラップしてダクト37の中間部に溜めることができる。このため、ダクト37内の凝縮水が袋体35内及び試験空間St内に流入することを防止することができる。なお、この形態のダクト37を支持部36の内側に収容する構成としてもよい。この場合には、取付部42がダクト37の第2垂直部37hの上端部に設けられる構成となる。また、ダクト37は、図6に示すような曲がり変形自在な構成としてもよい。
【0061】
支持部36は、図6に示すように、残圧を逃すための貫通孔36eが設けられる構成としてもよい。この構成では、支持部36の内部と外部とが連通するため、袋体35が膨らんだり萎んだりする際に支持部36内の空気圧が抵抗となることを防止することができる。このため、袋体35への空気の流入時及び袋体35からの空気の流出時にスムーズに圧力緩和を行うことができる。なお、貫通孔36eの形状は、図示のように縦長の形状に限られるものではない。また、貫通孔36eは、側部36bに形成される構成に限られるものではなく、天部36c又は底部36aに設けられていてもよい。また、図1〜図5の何れかに示す支持部36に貫通孔を設けるようにしてもよい。
【0062】
前記実施形態では、袋体35を縦長の形状に形成するとともに圧力調整装置14を試験槽12の側方に配置する構成としたが、これに限られるものではない。例えば、袋体35が横長の形状に形成されるとともに、試験槽12の上に配置される構成としてもよい。この場合でも袋体35の上部で吊り下げる構成となる。この場合、袋体35の接続口35cが側面に形成される構成にすることも可能である。
【0063】
前記実施形態では、圧力調整装置14が1つの袋体35を備える構成としたが、これに限られるものではなく、図7に示すように、複数の袋体35を備える構成としてもよい。例えば、図7の例では、試験槽12に複数の取出し口17aが設けられていて、各取出し口17aに対応してダクト37の第1連通口37cが設けられ、また各ダクト37にそれぞれ袋体35が接続された構成を示している。つまり、1つの試験槽12に複数の圧力調整装置14が設けられる構成となっている。また、この形態に代え、試験槽12に1つの取出し口17aが設けられていて、この取出し口17aに接続された1つのダクト37に複数の袋体35が接続される構成としてもよい。
【0064】
また、図8に示すように、1つのダクト37及び袋体35のセットに追加ユニット48を接続する構成としてもよい。すなわち、ダクト37の横部37bが、支持部36の側部36b(図8の左側の側部)にまで延設されており、この側部36bには連通孔36fが形成されている。追加ユニット48は、ケース49中に追加ダクト50と、この追加ダクト50に接続された追加袋体51とが設けられた構成となっている。追加袋体51は、図1の袋体35と同じ構成のものであり、この追加袋体51はケース49内で吊り下げられている。そして、ケース49を支持部36に固定して、追加ダクト50を、側部36bの連通孔36fを通してダクト37と連通させるようになっている。この追加ユニット48には、さらに別の追加ユニット48を追加できるようにしてもよい。このように追加ユニット48が別に用意されている態様であれば、試験槽12の大きさ・容量に応じて接続する追加ユニット48の数を適宜選択すればよい。このため、種々の大きさの袋体35を用意する必要がなくなるので、部品点数の管理コストを抑えることができる。
【0065】
前記実施形態では、支持部36が袋体35を収容する構成としたが、これに限られるものではない。例えば、支持部36は、天部36cが、互いに対向する一対の側部によって支持される門形、あるいはこの構成にさらに底部が設けられた枠状に構成されていてもよい。
【0066】
前記実施形態では、試験槽12に高温側空調空間Shと低温側空調空間Slが形成された三槽式の構成としたが、二槽式の構成や、恒温槽のように試験空間Stと空調空間とに仕切られる一槽式の環境試験装置としてもよい。また、試料の振動試験を行うための振動環境複合試験装置としてもよい。
【0067】
前記実施形態では、支持部36と試験槽12との間に僅かな間隙が形成される構成としたが、これに限られるものではなく、例えば、支持部36と試験槽12とが互いに接触する配置構成としてもよい。
【0068】
前記実施形態では、ダクト37が一端部において取出し口17aに接続される一方、ダクト37の他端部に袋体35が接続される構成としたが、これに限られるものではない。例えば、図9に示すように、ダクト37の中間部において取出し口17aに接続される構成としてもよい。すなわち、このダクト37では、取出し口17aに接続される第1連通口37cが縦部37aの中間部に形成されており、ダクト37の縦部37aには、この第1連通口37cから下方に延びるトラップ部37iが含まれている。トラップ部37iが第1連通口37cから下方に位置することにより、ダクト37内でトラップされた水分を溜めることができる。なお、図9では、ダクト37の縦部37aにおける上端部に横部37bが接続され、この横部37bが試験槽12の天井部に沿って延びる形態となっている。そして、圧力調整装置14は試験槽12の上に配置され、袋体本体35aが横方向に長い形状に形成されている。ただし、圧力調整装置14の形態はこれに限るものではない。
【符号の説明】
【0069】
St 試験空間
10 環境試験装置
12 試験槽
14 圧力調整装置
17a 取出し口
21 加熱器
22 高温側送風機
25 冷却器
26 低温側送風機
35 袋体
35a 袋体本体
35b 保持部
35c 接続口
35f 絞り部
36 支持部
36e 貫通孔
37 ダクト
42 取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部圧力が変動し得る閉空間内の圧力変動を緩和するための圧力調整装置であって、
接続口を通して前記閉空間に連通する内部空間を有し、前記閉空間内からの空気が前記接続口を通して前記内部空間に流入すると膨らむ一方、前記接続口を通して前記内部空間の空気が流出すると萎む袋体と、
前記袋体をその上部において吊持する支持部と、を備えている圧力調整装置。
【請求項2】
前記袋体は、変形自在な袋体本体と、前記袋体本体よりも変形し難く、かつ前記袋体本体の上部に設けられて前記支持部に吊り下げられる保持部とを備えている請求項1に記載の圧力調整装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記袋体を収容する中空構造に構成されるとともに、その天部において前記袋体を吊持する構成である請求項1又は2に記載の圧力調整装置。
【請求項4】
前記袋体は、その下部において下部支持部に保持されている請求項1から3の何れか1項に記載の圧力調整装置。
【請求項5】
前記下部支持部は、前記接続口が形成された前記袋体の下部を取り付けるための環状の取付部を備えており、
前記袋体は、前記接続口を前記取付部に被せることによって前記取付部に取り付けられている請求項4に記載の圧力調整装置。
【請求項6】
前記支持部には、当該支持部内の残圧を逃すための貫通孔が設けられている請求項3から5の何れか1項に記載の圧力調整装置。
【請求項7】
前記袋体の内部空間と前記閉空間とを連通させるダクトを備えており、
前記ダクトは前記支持部の中に配置されている請求項3から6の何れか1項に記載の圧力調整装置。
【請求項8】
前記袋体の内部空間と前記閉空間とを連通させるダクトを備えており、
前記ダクトは、前記閉空間との連通部よりも低い位置に位置するトラップ部を有している請求項1から7の何れか1項に記載の圧力調整装置。
【請求項9】
前記袋体には、前記接続口に向かって徐々に幅が狭くなる形状の絞り部が設けられている請求項1から8の何れか1項に記載の圧力調整装置。
【請求項10】
閉空間となり得る試験空間を有する試験槽と、
請求項1から9の何れか1項に記載の圧力調整装置と、備え、
前記袋体の内部空間は、前記試験槽の試験空間に連通している環境試験装置。
【請求項11】
加熱器で加熱された高温空気を前記試験空間に送るための高温側送風機と、冷却器で冷却された低温空気を前記試験空間に送るための低温側送風機と、を備え、
前記試験槽には、前記試験空間と前記内部空間とを連通させるための取出し口が設けられており、
前記取出し口は、前記高温側送風機の動圧を受け、かつ前記低温側送風機の動圧が遮られるように形成されている請求項10に記載の環境試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−145121(P2011−145121A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4694(P2010−4694)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】