説明

圧力調整装置

【課題】保持部材に対して弁体が回動し過ぎることを抑止して、圧力調整機能を確保することが可能な圧力調整装置を提供すること。
【解決手段】弁体52は、略半球状の調芯ボール部52aと調芯ボール部52aの下端から下方に延びる比較的高さが低い円柱状部52bとにより構成されている。弁保持部51には下面から凹んだ凹部51aが形成され、凹部51a内に調芯ボール部52aが収容されて、弁保持部51が弁体52を回動可能に保持している。弁体52の円柱状部52bの一部は、調芯ボール部52aの球状外周面を下方へ仮想延長した面よりも外方に突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃料タンクから内燃機関に供給される燃料等の流体の圧力を調整する圧力調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料の導入口およびリターン排出口が形成されたハウジングと、ハウジング内を導入口およびリターン排出口が臨む第1室と第2室とに区画するダイヤフラムに取り付けられた保持部材と、保持部材に保持された弁体と、ハウジングのリターン排出口の周縁部に形成され弁体が離着座する弁座と、を備える圧力調整装置がある。
【0003】
弁体は、球状体が球状体の中心を通らない平面で分割されて形成された一対の分割体のうち球状体の中心を含む方の分割体と同等の略半球形状をなしている。保持部材には、弁座の側から凹んだ収容凹部が形成されて、収容凹部内に弁体を収容して弁体を保持している。そして、弁体は、略半球状の球状外周面が保持部材の収容凹部の内表面と摺接して、保持部材に対して球状外周面の中心を移動することなく回動することで、弁座に着座する平面部が変位可能となっている圧力調整装置が知られている。
【0004】
このような構成により、保持部材が弁座に対して若干傾いたとしても、弁体が弁座に当接する際に平面部が弁座に正対するように弁体が回動して補正されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4653382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術の圧力調整装置では、保持部材に対して弁体が大きく回動し過ぎてしまう場合がある。このような状態で弁体が弁座に当接する際には、平面部が弁座に正対するように弁体が回動できず、圧力調整機能が損なわれるという問題がある。具体的には、弁体が回動し過ぎると、弁体の着座領域である平面部が大きく傾いてしまい、弁体が弁座に当接するときには、弁体の平面部以外の部分が弁座に当接し、圧力調整機能が得られるように弁体が回動補正されないという不具合を発生する。
【0007】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、保持部材に対して弁体が回動し過ぎることを抑止して、圧力調整機能を確保することが可能な圧力調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
流体の導入口および排出口が形成されたハウジングと、
ハウジングの排出口の周縁部に形成された弁座と、
ハウジング内に配設され、弁座に離着座可能な弁体と、
ハウジング内に配設され、弁体を保持する保持部材と、を備え、
ハウジング内の流体の圧力に応じて保持部材が変位することで弁体が弁座に離着座する圧力調整装置であって、
弁体は、
球状体が球状体の中心を通らない平面で分割されて形成された一対の分割体のうち球状体の中心を含む分割体と同等の略半球形状をなす略半球状部と、
略半球状部の平面に相当する部分から平面に交差する方向に延出され、軸線が球状体の中心を通る円柱形状の円柱状部と、からなり、
円柱状部の軸線方向の一方の端部の面が弁座への着座領域となるとともに、円柱状部の軸線方向の他方の端部は全域が略半球状部に接続しており、
保持部材には、弁座の側から凹んだ収容凹部が形成されて、収容凹部内に略半球状部を収容して保持部材が弁体を保持するとともに、略半球状部の球状外周面が収容凹部の内表面と摺接して、保持部材に対して球状外周面の中心を移動することなく円柱状部の一方の端部の面が変位可能となっており、
円柱状部の一部が、球状体の外表面に相当する球面よりも外方に位置することを特徴としている。
【0009】
これによると、弁体は、球状体が球状体の中心を通らない平面で分割されて形成された一対の分割体のうち球状体の中心を含む方の分割体と同等形状の略半球状部と、略半球状部の平面に相当する部分から平面に交差する方向に延出され軸線が球状体の中心を通る円柱状部とが接続された構成である。弁体の略半球状部が保持部材の収容凹部に収容され、略半球状部の球状外周面が収容凹部の内表面と摺接して、弁体が保持部材に対して回動可能となっている。そして、この弁体は、円柱状部の一部が、球状体の外表面に相当する球面よりも外方に位置している。
【0010】
したがって、弁体が、保持部材に対して、略半球状部の球状外周面の中心を移動することなく回動しても、収容凹部の開口縁部と円柱状部との当接により、保持部材に対して弁体が回動し過ぎることを抑止できる。これにより、保持部材が弁座に対して若干傾いたとしても、弁体が弁座に当接する際に、円柱状部の軸線方向の一方の端部の面が弁座に正対するように弁体が回動して補正される。
【0011】
このようにして、保持部材に対して弁体が回動し過ぎることを抑止して、圧力調整機能を確保することができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明では、弁体の略半球状部は、平面に相当する部分の全域が、円柱状部の他方の端部に接続していることを特徴としている。すなわち、円柱状部の軸線方向の他方の端部の全域と、略半球状部の平面に相当する部分の全域とが、相互に接続している。
【0013】
これによると、略半球状部と円柱状部との接続部の周囲に、略半球状部の球状外周面よりも内方に凹んだ形状が形成されない。したがって、収容凹部の開口縁部に円柱状部が当接するまで保持部材に対して弁体が回動しても、保持部材の収容凹部と弁体と間に異物等を噛み込むことを防止することができる。これにより、保持部材に対する弁体の回動が不能となり圧力調整機能が失われることを防止することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明では、略半球状部と円柱状部とは、一体成形されていることを特徴としている。これによると、略半球状部と円柱状部とが接続する弁体を製造することが容易である。
【0015】
また、請求項4に記載の発明では、略半球状部と円柱状部とは、鍛造加工されていることを特徴としている。すなわち、略半球状部と円柱状部とは、鍛造加工により一体成形されている。これによると、略半球状部と円柱状部とが接続する、例えば金属材からなる弁体を製造することが容易である。
【0016】
また、請求項5に記載の発明では、略半球状部には、球状外周面の一部から内方に向かって凹んだ凹部が形成されており、略半球状部は、球状外周面の残部が、収容凹部の内表面と摺接することを特徴としている。これによると、弁体の略半球状部を構成する材料の量を低減することができる。
【0017】
また、請求項6に記載の発明では、保持部材は、収容凹部の開口の周縁部を塑性変形加工することにより開口の径が略半球状部の径よりも小さくなるように縮径されて、弁体を保持していることを特徴としている。これによると、収容凹部内に略半球状部を収容して保持部材が弁体を保持する構成を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態における圧力調整装置であるプレッシャレギュレータ10の概略構成を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態におけるプレッシャレギュレータ10の弁体52の概略構成を示す断面図である。
【図3】第1の実施形態における弁保持部51が弁座42に対して傾いた状態を示す要部断面図である。
【図4】第2の実施形態におけるプレッシャレギュレータ10の要部断面図である。
【図5】第2の実施形態における弁体152の概略構成を示す断面図である。
【図6】他の実施形態における弁体52の概略構成を示す断面図である。
【図7】他の実施形態における弁体252の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態における圧力調整装置であるプレッシャレギュレータ10の概略構成を示す断面図であり、図2は、プレッシャレギュレータ10の弁体52の概略構成を示す断面図である。
【0021】
本実施形態のプレッシャレギュレータ10は、例えば、燃料タンク内に貯留された燃料を内燃機関であるエンジンに供給するシステムに用いられるものであって、燃料供給経路内の燃料圧力を調整するために用いられる。
【0022】
プレッシャレギュレータ10は、後述する調圧室21Aが燃料供給経路から燃料タンク内への燃料リターン流路の一部をなしている(調圧室21Aがリターン流路のプレッシャレギュレータ10よりも上流側部と連通している)。プレッシャレギュレータ10は、燃料供給経路と連通する調圧室21Aの燃圧が所定圧力よりも高くなったときには開弁し、リターン流路の下流部(リターン流路のプレッシャレギュレータ10よりも下流側の部分)に燃料を流出させて、調圧室21A内が所定圧力になるように調圧を行う。
【0023】
図1に示すように、プレッシャレギュレータ10は、ハウジング20、ダイヤフラム30、ブッシュ40、弁部材50およびスプリング60等により構成されている。
【0024】
ハウジング20は、プレッシャレギュレータ10の外殻をなすものであり、第1ケース21と第2ケース22とからなる。第1ケース21は、例えば金属製の円筒状部材であり、第2ケース22側から(図示上方側から)大径部211、中径部212、小径部213の順に直径が段階的に小さくなっている。一方、第2ケース22は、例えば金属製の下方に開口するカップ状部材である。
【0025】
第1ケース21の大径部211の図示上方開口端部と第2ケース22の図示下方開口端部とを巻がしめにより接合することで、第1ケース21と第2ケース22とが一体化してハウジング20をなしている。第1ケース21と第2ケース22との接合部には、ダイヤフラム30の外周縁部が全周にわたって挟持されている。したがって、ダイヤフラム30は、外周部がハウジング20に固定されている。
【0026】
ダイヤフラム30は、例えばゴム製(具体的には、厚さ方向の中央部に基布を有するゴム製シート部材)であり、可撓性を有している。ハウジング20の内部空間は、このダイヤフラム30により、第1ケース21の内側(具体的には大径部211の内側かつ後述するブッシュ40の外側)の調圧室21Aと第2ケース22の内側の背圧室22A(ダイヤフラム30の背面側の圧力室)とに区画されている。
【0027】
第1ケース21の大径部211と中径部212との間の段部には、複数の導入口214が開口している。この導入口214により、ハウジング20内の調圧室21Aは、前述した燃料供給経路と常時連通している。導入口214の下方部には、導入される液体燃料中の異物等を捕捉するためのフィルタ部材が装着されている。
【0028】
第1ケース21の中径部212の内側には、例えば金属製の円筒状部材であるブッシュ40が圧入固定され、その上部は大径部211内に突出している。ブッシュ40の上端開口は、調圧室21A内から燃料を排出するための排出口41である。ブッシュ40の上端面、すなわち、排出口41の周縁部は、後述する弁体52が着座する弁座42となっている。ブッシュ40内、第1ケース21の中径部212内および小径部213内は、排出口41から排出される燃料の通路である。
【0029】
弁部材50は、いずれも例えば金属製の、弁保持部51と弁体52とばね受け部53とを備えている。弁保持部51は、ダイヤフラム30の中央に形成された通孔に貫通固定されている。弁保持部51は、本実施形態における保持部材に相当する。
【0030】
図2にも示すように、弁体52は、調芯ボール部52aと円柱状部52bとにより構成されている。調芯ボール部52aと円柱状部52bとは、例えば鍛造加工等の塑性変形加工により一体的に成形されている。
【0031】
調芯ボール部52aは、球状体が、球状体の中心を通らない平面で分割されたときに形成される一対の分割体のうち、球状体の中心を含む方の分割体と同等の略半球形状をなしている。調芯ボール部52aは、本実施形態における略半球状部に相当する。
【0032】
円柱状部52bは、軸線が調芯ボール部52aの中心(前述した球状体の中心)を通る、比較的高さが低い(軸線方向の長さが短い)円柱形状をなしている。円柱状部52bは、調芯ボール部52aの図示下端部(前述した略半球状部の平面に相当する部分)から図示下方(前述した平面に直交する方向)に延出されている。
【0033】
円柱状部52bは、図示下方端面(軸線方向の一方の端部の面)が弁座42への着座領域となっている。円柱状部52bの図示上方端(軸線方向の他方の端部)は全域が調芯ボール部52aに接続している。また、調芯ボール部52aは、図示下端部(略半球状部の平面に相当する部分)の全域が、円柱状部52bの図示上方端に接続している。すなわち、調芯ボール部52aの図示下端の略半球状体の平面に相当する部分の全域と、円柱状部52bの図示上方端の全域とが、相互に接続している。
【0034】
したがって、図2からも明らかなように、調芯ボール部52aと円柱状部52bとは、調芯ボール部52aの球状外周面と円柱状部52bの円筒状側面とが連続するように接続している。調芯ボール部52aの略半球状体の平面に相当する部分は、調芯ボール部52aの球状外周面と円柱状部52bの円筒状側面との間に実体を有する平面部としては形成されていない。
【0035】
また、円柱状部52bは、外周縁部に位置する環状の部分が、調芯ボール部52aの球状外周面の延長面(図2に二点鎖線で図示した球面、前述した球状体の外表面に相当する球面)よりも外方に位置している。換言すれば、円柱状部52bの外周縁部に位置する環状の部分は、調芯ボール部52aの中心からの距離が、調芯ボール部52aの中心から調芯ボール部52aの球状外周面までの距離よりも大きくなっている。
【0036】
図1に示すように、弁保持部51の下面中央部には、図示下方から(弁座42の側から)凹んだ凹部51aが形成されており、弁体52の調芯ボール部52aがこの凹部51a内に収容されて保持されている。凹部51aは、本実施形態における収容凹部に相当する。
【0037】
弁保持部51の凹部51a内に弁体52の調芯ボール部52aを配設した後に、凹部51aの図示下端開口の周縁部を塑性変形加工(例えば、かしめ加工)することによって凹部51aの開口径を調芯ボール部52aの径よりも小さくなるように縮径することで、弁保持部51は弁体52を保持している。
【0038】
このような弁保持部51および弁体52の構成により、調芯ボール部52aの球状外周面が凹部51aの内表面と摺接しつつ、弁保持部51に対して弁体52が回動可能となっている。これにより、弁保持部51に対して調芯ボール部52aの中心(球状外周面の中心)を移動することなく円柱状部52bの図示下方端面が変位可能となっている。
【0039】
弁保持部51のダイヤフラム30よりも図示上方に突出した部分の外周には、ばね受け部53がかしめ固定されている。ばね受け部53は、周縁が立ち上がった平板リング状をなしている。
【0040】
弾性部材であるコイル状のスプリング60は、第2ケース22の内部に圧縮状態で収容されている。スプリング60の下端は、弁部材50のばね受け部53の上面に圧接しており、スプリング60の上端は、第2ケース22の天井面(図示上方面)に形成されたばね受け段部221に圧接している。したがって、スプリング60は、弁体52を弁座42に着座する着座方向に付勢している。
【0041】
第2ケース22の側壁部および天井部には、複数の通気孔223が開口している。この複数の通気孔223により、ハウジング20内の背圧室22Aは、例えば燃料タンク内の空間と常時連通しており、背圧室22Aはほぼ大気圧となっている。
【0042】
上述した構成のプレッシャレギュレータ10は、調圧室21Aと背圧室22Aとの差圧によりダイヤフラム30に調圧室21A側から反着座方向に付勢される付勢力の大きさが、スプリング60による着座方向への付勢力の大きさを上回ったときに、弁体52が図示上方へ変位して弁座42から離れる。
【0043】
そして、調圧室21Aと背圧室22Aとの差圧による調圧室21A側からの付勢力が大きくなるにつれて、ダイヤフラム30のハウジング20に固定された外周縁部と弁部材50が取り付けられた中央部との間の部分の撓み状態を変化させつつ、弁体52が反着座方向への変位量を増大させ、導入口214から調圧室21Aへ導入された燃料を排出口41から排出して、調圧室21A内の圧力を調整する。
【0044】
調圧室21Aと背圧室22Aとの差圧によりダイヤフラム30に調圧室21A側から反着座方向に付勢される付勢力の大きさが、スプリング60による着座方向への付勢力の大きさを下回ったときには、弁体52が図示下方へ変位して弁座42に着座する。
【0045】
弁体52が弁座42に着座する際に、例えば図3に示すように、弁保持部51が弁座42に対して若干傾いていたとしても、弁体52の着座領域(円柱状部52bの図示下端面)が弁座42に正対するように弁体52が回動して補正される。
【0046】
上述の構成および作動によれば、弁体52は、略半球状の調芯ボール部52aと調芯ボール部52aの下端から下方に延びる比較的高さが低い円柱状部52bとにより構成されている。弁保持部51には下面から凹んだ凹部51aが形成され、凹部51a内に調芯ボール部52aが収容されて、弁保持部51が弁体52を回動可能に保持している。弁体52の円柱状部52bの一部は、調芯ボール部52aの球状外周面を下方へ仮想延長した面(図2に二点鎖線で示した球面)よりも外方に突出している。
【0047】
したがって、弁保持部51に対して弁体52が回動したとしても、弁保持部51の凹部51aの開口縁部と、弁体52の円柱状部52bのうち調芯ボール部52aの球状外周面を下方へ仮想延長した面よりも外方に突出した部分とが当接することにより、弁保持部51に対して弁体52が回動し過ぎることを抑止できる。これにより、弁体52が弁座42に当接する際に、弁保持部51が弁座42に対して若干傾いたとしても、弁体52の円柱状部52bの図示下端面が弁座42に正対するように、確実に弁体52を回動させて補正することができる。
【0048】
このようにして、弁保持部51に対して弁体52が回動し過ぎることを抑止して、プレッシャレギュレータ10の圧力調整機能を確実に確保することができる。
【0049】
また、弁体52は、調芯ボール部52aの図示下端の略半球状体の平面に相当する部分の全域と、円柱状部52bの図示上方端の全域とが、相互に接続している。これによると、調芯ボール部52aと円柱状部52bとの接続部の周囲に、調芯ボール部52aの球状外周面よりも内方に凹んだ環状の凹部が形成されない。したがって、弁保持部51の凹部51aの開口縁部に弁体52の円柱状部52bが当接するまで弁体52が回動しても、弁保持部51の凹部51aと弁体52と間に異物等を噛み込むことを防止することができる。このようにして、弁保持部51に対して弁体52が回動不能となり圧力調整機能が失われることを防止することができる。
【0050】
また、弁体52は、調芯ボール部52aと円柱状部52bとが一体成形されている。したがって、調芯ボール部52aと円柱状部52bとが相互に接続する弁体52を製造することが容易である。
【0051】
また、調芯ボール部52aと円柱状部52bとは、例えば鍛造加工等の塑性変形加工により一体成形されている。これによると、調芯ボール部52aと円柱状部52bとが接続する金属材からなる弁体52を製造することが極めて容易である。
【0052】
また、弁保持部51は、凹部51aの開口周縁部を塑性変形加工することにより開口の径が調芯ボール部52aの径よりも小さくなるように縮径されて、弁体52を保持している。したがって、一部材からなる弁保持部51の凹部51a内に調芯ボール部52aを収容して、弁保持部51が弁体52を保持する構成を容易に形成することができる。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図4および図5に基づいて説明する。
【0054】
本第2の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、弁体の調芯ボール部52aの一部を肉盗みした点が異なる。ここで、肉盗みとは、成形後の部材から除肉をするものに限らず、基本形状から体積を減少した部材を直接成形するものを含む。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
【0055】
図5に示すように、本実施形態では、弁体152の調芯ボール部52aには、球状外周面の一部から内方に向かって凹んだ凹部52cが形成されている。なお、弁体152の図示最上部に形成された凹部52cは、中央部と外周縁部とが同一高さの平面状の凹部である。このように、球状外周面から内方に向かって凹んでいれば、実質的な凹部形状をなしていなくても、本願発明においては凹部と定義する。
【0056】
これにより、図4に示すように、弁体152の調芯ボール部52aは、球状外周面の残部(球状外周面のうち凹部52cが形成されていない部分)が、弁保持部51の凹部51aの内表面と摺接するようになっている。
【0057】
本実施形態の弁体152も金属材を例えば鍛造加工等の塑性変形加工して一体的に形成されている。凹部52cは、弁体152を鍛造加工等の塑性変形加工する際に形成される。したがって、凹部52cは、図示上下方向に延びる軸線方向における最大径部よりも上方に形成され、加工時の型抜きを容易にしている。
【0058】
また、調芯ボール部52aの側面部に形成された凹部52cは、図示上下方向に延びる円筒状の面と、図示左右方向に延びる平面とを有している。これらの面部は、例えば弁座42への着座領域となる円柱状部52bの図示下端面の面精度向上加工の加工基準面とすることができる。具体的には、これらの面部を加工時の弁体152把持部として加工基準とすることができる。
【0059】
本実施形態の弁体152によれば、弁体152を構成する材料量を低減し、弁体152の軽量化を図ることが可能である。
【0060】
なお、図示はしていないが、弁体152の円柱状部52bの図示下端面のうち、弁座42への着座領域を除く部分から、上方に向かって凹んだ凹部を形成して、弁体152の更なる軽量化等を図ることも可能である。
【0061】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0062】
上記各実施形態では、弁体52、152は調芯ボール部52aと円柱状部52bとにより構成されていたが、円柱状部52bは厳密に円柱形状をなすものに限定されるものではなく、実質的に円柱形状をなすものであればよい。例えば、図6に示すように、円柱状部52bは、軸線方向における図示上方端の径よりも図示下方端の径のほうが若干小さい円錐台状をなすものであってもよい。これによれば、例えば金型を用いて弁体52を成形する際の型抜きが容易である。
【0063】
また、弁体の円柱状部52bは、調芯ボール部52aの図示下端部(略半球状部の平面に相当する部分)から図示下方(前述した平面に直交する方向)に延出されていたが、これに限定されるものではない。例えば、円柱状部52bは、調芯ボール部52aの略半球状部の平面に相当する部分から、平面に直交する方向に対して若干傾斜して延出されていてもよい。すなわち、円柱状部52bの延出方向は、略半球状部の平面に相当する部分に交差する方向であってもよい。
【0064】
また、上記各実施形態では、弁体52、152は、調芯ボール部52aの略半球状体の平面に相当する部分の全域と、円柱状部52bの反着座端(軸線方向の他方の端部に相当)の全域とを相互に接続していたが、これに限定されるものではない。例えば、図7に示す弁体252のように、円柱状部52bの反着座端の全域が、調芯ボール部52aの略半球状体の平面に相当する部分の一部と接続するものであってもよい。
【0065】
また、上記各実施形態では、弁保持部51の凹部51a内に弁体52の調芯ボール部52aを配設した後に、凹部51aの下端開口の周縁部をかしめ加工等の塑性変形加工によって凹部51aの開口径を調芯ボール部52aの径よりも小さくなるように縮径することで、弁保持部51は弁体52、152を保持していたが、これに限定されるものではない。例えば、弁体52の調芯ボール部52aを挿設可能な凹部を形成した弁保持部と、調芯ボール部52aの径よりも若干小さい開口を有するプレート部材とを組み合わせて、弁体52を保持するものであってもよい。
【0066】
また、上記各実施形態では、弁体52、152は、調芯ボール部52aと円柱状部52bとが鍛造加工により一体成形されていたが、これに限定されるものではない。弁体52、152は、鍛造加工法以外の方法により一体成形されていてもかまわない。また、別体の調芯ボール部52aと円柱状部52bとを接合して弁体52、152を形成するものであってもよい。
【0067】
また、上記第2の実施形態では、調芯ボール部52aの凹部52cは、弁体152を塑性変形加工する際に形成していたが、これに限定されるものではない。例えば、弁体152を成形した後の加工により凹部を形成する肉盗みを行ってもかまわない。
【0068】
また、上記各実施形態では、本発明を適用した圧力調整装置を、燃料タンク内から内燃機関に燃料を供給する燃料供給経路内の液体燃料の圧力を調整するプレッシャレギュレータ10としていたが、これに限定されるものではない。液体燃料以外の流体(液体もしくは気体)の圧力調整を行う圧力調整装置に、本発明を広く適用して有効である。
【符号の説明】
【0069】
10 プレッシャレギュレータ(圧力調整装置)
20 ハウジング
41 排出口
42 弁座
51 弁保持部(保持部材)
51a 凹部(収容凹部)
52、152、252 弁体
52a 調芯ボール部(略半球状部)
52b 円柱状部
52c 凹部
214 導入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の導入口および排出口が形成されたハウジングと、
前記ハウジングの前記排出口の周縁部に形成された弁座と、
前記ハウジング内に配設され、前記弁座に離着座可能な弁体と、
前記ハウジング内に配設され、前記弁体を保持する保持部材と、を備え、
前記ハウジング内の前記流体の圧力に応じて前記保持部材が変位することで前記弁体が前記弁座に離着座する圧力調整装置であって、
前記弁体は、
球状体が前記球状体の中心を通らない平面で分割されて形成された一対の分割体のうち前記中心を含む分割体と同等の略半球形状をなす略半球状部と、
前記略半球状部の前記平面に相当する部分から前記平面に交差する方向に延出され、軸線が前記中心を通る円柱形状の円柱状部と、からなり、
前記円柱状部の軸線方向の一方の端部の面が前記弁座への着座領域となるとともに、前記円柱状部の軸線方向の他方の端部は全域が前記略半球状部に接続しており、
前記保持部材には、前記弁座の側から凹んだ収容凹部が形成されて、前記収容凹部内に前記略半球状部を収容して前記保持部材が前記弁体を保持するとともに、前記略半球状部の球状外周面が前記収容凹部の内表面と摺接して、前記保持部材に対して前記球状外周面の中心を移動することなく前記一方の端部の面が変位可能となっており、
前記円柱状部の一部が、前記球状体の外表面に相当する球面よりも外方に位置することを特徴とする圧力調整装置。
【請求項2】
前記略半球状部は、前記平面に相当する部分の全域が、前記円柱状部の前記他方の端部に接続していることを特徴とする請求項1に記載の圧力調整装置。
【請求項3】
前記略半球状部と前記円柱状部とは、一体成形されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧力調整装置。
【請求項4】
前記略半球状部と前記円柱状部とは、鍛造加工されていることを特徴とする請求項3に記載の圧力調整装置。
【請求項5】
前記略半球状部には、前記球状外周面の一部から内方に向かって凹んだ凹部が形成されており、
前記略半球状部は、前記球状外周面の残部が、前記収容凹部の内表面と摺接することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の圧力調整装置。
【請求項6】
前記保持部材は、前記収容凹部の開口の周縁部を塑性変形加工することにより前記開口の径が前記略半球状部の径よりも小さくなるように縮径されて、前記弁体を保持していることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の圧力調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−96327(P2013−96327A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240965(P2011−240965)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000161840)京三電機株式会社 (99)
【Fターム(参考)】