圧力逃がし弁
【課題】呼吸補助器械において患者に対する圧外傷の恐れを無くすと共に加湿器の損傷を引き起こす場合のある過圧の発生を阻止する圧力逃がし弁を提供する。
【解決手段】圧力逃がし弁(100)は、呼吸補助器械に形成された出口ベントと関連した磁気着座部(101)と、着座部及び出口ベントを覆うことができる磁気カバー(103)とを有する。このカバーは、カバーと着座部との間に働く磁力によって着座部に当接保持される。出口ベントは、カバーによって実質的に密封され、呼吸補助回路内のガスの圧力が磁力に打ち勝つ所定の圧力値よりも高くなると、カバーが着座部から脱離して、ガスが出口ベントから出て呼吸補助回路内のガス圧力を減少させることができる。
【解決手段】圧力逃がし弁(100)は、呼吸補助器械に形成された出口ベントと関連した磁気着座部(101)と、着座部及び出口ベントを覆うことができる磁気カバー(103)とを有する。このカバーは、カバーと着座部との間に働く磁力によって着座部に当接保持される。出口ベントは、カバーによって実質的に密封され、呼吸補助回路内のガスの圧力が磁力に打ち勝つ所定の圧力値よりも高くなると、カバーが着座部から脱離して、ガスが出口ベントから出て呼吸補助回路内のガス圧力を減少させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力逃がし弁に関し、特に、陽圧換気システム及び他の呼吸補助器械に用いられる圧力逃がし弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば患者へのガス供給(最も特定的には、陽圧ガス供給)を行うための鼻カニューレ、マスク等の呼吸補助装置内の圧力を減少させる既存の器具には、種々の欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
バイアス流れ穴は、例えばマスク、鼻カニューレ等の器械内の圧力を抜く一方法である。しかしながら、これらバイアス流れ穴は、患者に「オンデマンド」流れを供給する一般的な減圧システムとして意図されている。したがって、圧力減少が、全ての圧力範囲にわたって生じ、高い圧力を患者へのガスの流れの低いレベルに維持するということはない。
【0004】
ばね又は部品の弾性変形で動作する過圧逃がし弁が存在する。しかしながら、これら装置の大きな欠点は、器械内に陽圧があるとすぐにこの弁がガス抜き圧力を生じさせ、圧力が増大するにつれてガス抜き圧力を次第に増大させることにある。さらに、ばね力は、弁内で作用し続ける場合が多く、その結果、送られた圧力は、供給圧力の増大につれて引き続き増大する。この場合、全ての場合ではないが、呼吸ガスが通常の標的動作圧力で搬送されるのが通例である。
【0005】
他の業界においても、逃がし弁が存在する。これら弁は一般に、貯蔵タンク用、化学的精製工場用及び他の重工業用途用の大型流体逃がし弁として石油化学業界において用いられている。
【0006】
計器業界では、磁気圧力制御(PEEP)弁(米国特許第4,210,174号明細書)が製造されている。この弁は、ロッド状磁石から間隔をおくと共にこれと同軸の中央の磁気吸引部材を備えた弁部材を有している。磁石及び弁部材は、これらの間に働く磁気吸引力を調節し、弁の開口圧力を調節するよう相対的に動くことができる。この弁は、磁石が強磁性体から設定された距離のところに配置されると、一定のばね力として働くという基本原理に基づいて動作する。これら圧力制御弁は、安全弁としてではなく、ユーザにより設定される一定圧力をもたらすよう設計されている。
【0007】
本発明の目的は、上述の欠点を無くし又は少なくとも保健医療提供者に有用な選択肢を与える呼吸補助器械用弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、第1の特徴では、本発明は、加圧ガスをガス運搬手段により患者に搬送する呼吸補助器械に用いられる圧力逃がし弁であって、
呼吸補助器械の出口ベントの周りに又はこれと関連して設けられた磁気着座部と、
着座部及び出口ベントを覆うことができる磁気カバーとを有し、
通常の使用中、カバーは、カバーと着座部との間に働く磁力によって着座部に当接保持されて出口ベントが実質的にカバーによって密封され、
呼吸補助器械内のガスの圧力が所定値よりも高い場合には、磁力よりも所定値のガスの圧力の方が高くなり、カバーが着座部から脱離してガスが出口ベントから出て、呼吸補助器械内のガス圧力を減少させる、圧力逃がし弁である。
【0009】
好ましくは、呼吸補助器械は、鼻カニューレである。
【0010】
好ましくは、鼻カニューレは、
患者の外鼻孔の少なくとも一方に嵌まり込むことができる少なくとも1つの鼻枝管を含むフェースマウント部と、
フェースマウント部と流体連通状態にあるガス流マニホルド部とを有し、マニホルド部は、使用中、ガス運搬手段と流体連通関係をなす単一の水平側部ガス入口を有する。
【0011】
好ましくは、出口ベントは、ガス流マニホルド部に形成され、磁気着座部は、出口ベントの上方に配置されている。
変形例として、呼吸補助器械は、ガス入口及びガス出口を備えた加湿器であり、圧力逃がし弁は、入口及び出口の一方に設けられている。
【0012】
変形例として、呼吸補助器械は、顔マスクである。
好ましくは、顔マスクに供給されるガスは、加湿器によって加湿され、磁気着座部及び磁気カバーは、加湿器の入口に設けられている。
【0013】
好ましくは、磁気着座部は、フェライト入りプラスチック材料のリングである。
好ましくは、磁気カバーは、強磁性体で作られている。
変形例として、磁気カバーは、着座部の極性とは逆の極性の磁化材料で作られている。
好ましくは、磁気カバーは、着座部と関連してヒンジ式に配置されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の好ましい形態について添付の図面を参照して説明する。
本発明の圧力逃がし弁は、患者への圧外傷の恐れを無くす過圧制御弁としても、加湿器か呼吸回路(呼吸ガスを患者に供給する)かいずれかに損傷を与える恐れのある呼吸回路内の閉塞により生じる過圧を阻止する呼吸回路用過圧制御弁としても使用できる。
【0015】
呼吸補助器械
図1を参照すると、鼻カニューレ及び本発明の圧力逃がし弁と併用される加湿器を含む呼吸補助器械が示されている。患者1は、加湿ガス運搬経路又は吸気導管3に連結された鼻カニューレ2を介して、加湿され且つ加圧されたガスを受けている。導管3は、加湿器8(加湿室5を含む)に連結され、この加湿器には、ガス供給源、例えばガス混合機15又は他の適当なガス供給手段、例えばブロワ即ち連続陽圧装置からガスが供給されている。吸気導管3は、或る量の水6を収容した加湿室5の出口4に連結されている。加湿室5は、好ましくは、プラスチック材料で作られ、この加湿室は、加湿器8の加熱板7と直接接触状態にある熱伝導率の高いベース(例えば、アルミニウム製ベース)を有するのがよい。加湿器8は、制御手段すなわち電子コントローラ9を備え、この電子コントローラは、関連のメモリに記憶されたコンピュータソフトウェアコマンドを実行するマイクロプロセッサ利用型コントローラから成るのがよい。吸気導管3を通って流れるガスは、鼻カニューレ2を経て患者に送られる。
【0016】
コントローラ9は、例えばユーザ入力手段すなわちダイアル10のような源から入力を受け、器械のユーザは、このようなダイアル10で、患者1に供給されるガスの湿度又は温度の所定の所要値(設定値)を設定することができる。ダイアル10及び他の考えられる入力、例えばガス流量又はガス温度を検出する内部センサにより又はコントローラ内で計算されたパラメータにより入力されるユーザによる設定湿度又は温度値に応答して、コントローラ9は、加湿室5内の水6を加熱するのにいつ(又は、どのレベルまで)加熱板7に通電するかを決定する。加湿室5の水6が加熱されると、水蒸気が水面の上方の室の空間を満たし始め、この水蒸気は、入口16を通って室に流入するガス供給手段又は混合機15から提供されるガス(例えば、空気)の流れと一緒になって加湿室5の出口4から流出する。注意すべきこととして、加湿室5内のガスの湿度と加熱板7の温度との間の関係を得ることが可能である。したがって、加熱板の温度をアルゴリズム又はルックアップテーブルで利用してガスの湿度を求めることが可能である。
【0017】
酸素混合機が、本発明の呼吸補助器械を備えることが好ましい。ただし、他のガス供給器械を用いてもよい。図1に示すような酸素混合機15は、酸素と空気の混合気、又は圧縮医用ガスラインから供給される任意他の医用ガスを供給する。ガスラインは、通常、圧力が約6バールのものであり、病院等に提供されている。
【0018】
発熱体11を導管又はチューブ3内に設けて導管内の加湿ガスの凝縮の阻止を助けるのがよい。この凝縮は、導管の壁の温度が通常導管内の加湿ガスの温度よりも低い周囲温度(周囲雰囲気の温度である)に近いことによって生じる。発熱体は、導管による移送中に熱伝導や熱対流によるガスからのエネルギ損失を効果的に埋め合わせる。したがって、導管の発熱体は、送り出されたガスが最適な温度及び湿度状態にする。
【0019】
鼻カニューレ
図2〜図4を参照すると、第1の実施形態の圧力逃がし弁100が、鼻カニューレ2に設けられた状態で示されている。鼻カニューレは、フィッシャー・アンド・パイケル・ヘルスケア・リミテッド社のニュージーランド国特許出願第526362号明細書、更に、米国特許出願第10/855,146号明細書に記載されている形式のものであり、これら特許文献の記載内容を参照によりここに援用する。
【0020】
鼻カニューレ2は、フェースマウント部21と、1対の鼻枝管22,23と、吸気導管3に取り付けられたガス流マニホルド部24とを有している。フェースマウント部21及び1対の鼻枝管22,23は、軟質プラスチック材料、例えばシリコーンから一体品として一体に成形されるのが好ましい。ただし、他の形態では、フェースマウント部及び枝管は、使用の際に互いに固定される2つの部品であってもよい。鼻枝管22,23は、形状が管状であり、直径が一様であるのがよいが、ヒトの外鼻孔の輪郭に適合するような形状のものであるのがよい。
【0021】
鼻カニューレ組立体2を患者の顔面の周りに定位置に保持することができるようにするために、ストラップ又はストラップ形取付け手段25をフェースマウント部21に一体に成形し又はこれに取り付けるのがよい。
【0022】
フェースマウント部21は、鼻枝管22,23の下に延びていて、吸気導管3に取り付けられ又はこれに一体に形成されたガス流マニホルド部24を受け入れることができる開口した管状凹部26を有する。鼻枝管22,23内の管状通路は、フェースマウント部21を貫通して凹部26内へ延びている。ガス流マニホルド部24は、一端部27が閉鎖されているが、他端部が導管に取り付けられており、このガス流マニホルド部は、導管3から受け取ったガスの出口として働く細長い開口部28を有している。フェースマウント部21の構成材料が柔軟性のものであり、そしてガス流マニホルド部24が硬質プラスチック材料で作られているので、ガス流マニホルド部24をフェースマウント部21の管状凹部26中へ押し込むことができる。このように、ガス流マニホルド部24の細長い開口部28は、枝管22,23の管状通路と出会う。したがって、使用中、導管3を通ってガス流マニホルド部24に流入するガスは、開口部28を通って出て枝管22,23内の管状通路に流入し、次に患者の外鼻孔に流入する。
【0023】
圧力逃がし弁
本発明の圧力逃がし弁は、主として、ガス運搬手段(上述したように、導管又はチューブ)により加圧ガスを患者に送ることができる呼吸補助装置に用いられる。本発明の圧力逃がし弁は、呼吸補助器械に設けられた出口ベントの周り又はこれと関連して設けられた磁気着座部と、着座部及び出口ベントを覆うことができる磁気カバーとを有する。通常の使用中、カバーは、カバーと着座部との間に働く磁力によって着座部に当接保持されて出口ベントが実質的にカバーによって密封されるようになっている。呼吸補助器械内のガスの圧力が所定値よりも高い場合には、磁力よりも所定値のガスの圧力の方が高くなる。その結果、カバーが着座部から脱離してガスが出口ベントから出て、呼吸補助器械内のガス圧力を減少させる。
【0024】
本発明の圧力逃がし弁100は、弁カバー103によって拘束された強磁性体カバー102で密封されている磁性弁座101を有する。この弁は、内部圧力が着座部101と強磁性体カバー102との間の磁気密封力よりも高くなる時点まで弁座101及び強磁性体カバー102を互いに密封することによって動作する。内部圧力が磁気密封力よりも大きくなると、弁100が開き、カニューレを通るガスの流れの一部が抜かれ、カニューレ2内の圧力が安全レベルまで下がる。
【0025】
図4を参照すると、本発明の呼吸補助器械の好ましい形態では、孔104が鼻カニューレマニホルド24に形成され、円形凹部105が、磁気弁着座部101を収容するようマニホルド24に形成されている。孔104は、呼吸補助器械からの排出ガスの出口ベントとして働く。磁気弁着座部101は好ましくは、フェライトで作られたリングであり、又、変形例として、フェライト入りプラスチック又は任意の他の適当な材料、例えば磁化されたステンレス鋼で作られたリングである。弁着座部101は、ガス流から分離されているが、鼻カニューレマニホルド24の表面と面一であり、従って、弁着座部は、円形凹部105内に収容される。強磁性体カバー102は、好ましくは形状が円形であり、弁カバー103に取り付けられ、弁閉鎖位置では、この磁性体カバーは、磁気弁着座部101と面一をなし且つ実質的に気密状態で着座する。
【0026】
弁カバー103は、マニホルド取付け部107にヒンジ止めされた熱可塑性フラップ106で構成されている。マニホルド取付け部107は、本発明のこの実施形態では、鼻カニューレマニホルド24のチューブ部周りに滑って嵌まることができるリングである。マニホルドとカバーとの間の他の適当な取り付け機構については以下に詳細に説明する。
【0027】
弁カバー103は、弁着座部101の側部寄りの或る箇所の周りにヒンジ止めされ、従って弁カバーは、図3で理解できるようにハッチ又はトラップドアと類似した仕方で開くようになっている。強磁性体カバー102と弁着座部101との間の密封は、これら2つの部品の構成材料相互間の磁気吸引力によって維持される。これら部品の近接状態と生じる力との間の指数関数的な関係により、弁は、閉鎖状態の弁の磁気力にいったん打ち勝つと、急に開く。フラップ106に及ぼされた磁気力は、弁100がいったん開くと大幅に小さくなり、弁100の背後のガス圧力が、弁を完全に開くことができる。その結果、カニューレ2内部の圧力は、弁100が開く前のレベルよりも低いレベルに下がる。弁着座部101と強磁性体カバー102との間の初期着座力により、圧力は、弁100が閉じられている間に、高速流鼻カニューレ2により陽圧換気流を送り出す際に、カニューレに内部で通常は変動することがある。しかしながら、圧力が非安全レベルに達した場合、弁100は開き、ガス圧力の大部分を抜いて、カニューレ内の圧力が安全且つ低レベルに減少するようにする。呼吸補助器械内の圧力の非安全レベルは好ましくは、試験によりあらかじめ決定され、従って、磁気弁及び磁気密封レベル(上述した)を設計することができ、材料構造を製造業者又はユーザにより設定されることが必要な圧力レベルに応じて変更することができる。
【0028】
呼吸補助器械内の圧力が使用中に下がって、弁と関連した(そして、弁カバー103内の弾性ヒンジの弾性によりあらかじめ決定される)しきい再着座圧力よりも低くなると、弁フラップ106は、弁カバー103内に設けられていて、マニホルド取付け部107とフラップ106との間に位置する弾性ヒンジによって閉じる。すると、弁は、強磁性カバー102と弁着座部101との間の磁気吸引力により再び密封を行い、そして上述の圧力増大を引き起こした要因がどんなものであれ、これが除去されたという仮定の下で自動的にリセットする。
【0029】
孔104のサイズは、弁100が開いたとき、カニューレ2中の圧力が、バイアス流れ出口ベントに類似した仕方で、適当な流れを患者1に送り出すのに十分なままであるようなものである。
【0030】
利点
本発明の圧力逃がし弁100は、最高、弁が非安全圧力に起因して開く時点まで、100%の圧力送り出しを維持して陽圧換気の治療上の効果をもたらすことができ、この時点で、患者に対する外傷を回避するために、圧力を著しく下げる。
【0031】
高速流鼻カニューレによる患者への陽圧換気では、カニューレは、外鼻孔とカニューレとの間の高速流及び僅かな隙間により、この圧力が誘起されるので、外鼻孔に密着しないことが必要である。幾つかの理由で、鼻カニューレが患者の外鼻孔に密着した場合、更に患者の唇周りに気密封止状態が存在している場合、カニューレ内の圧力は、圧外傷を誘発させるほどの高いレベルまで増大する場合があり、その結果、患者に対して外傷が生じ、又は、起こる可能性は殆どないが極端な場合には、患者が死亡することになる。その結果、本発明の圧力逃がし弁100は好ましくは、鼻カニューレ2と並列に配置され、この圧力逃がし弁は、圧力が設定レベル(安全ではないと考えられるレベル)に達した場合、開いて、患者に送り出される圧力を著しく減少させる。
【0032】
上述したような圧力逃がし弁に磁気シールを用いることにより、弁の構成は、非常に単純になり、しかも必要な部品は最小限である。本発明の磁気圧力逃がし弁は、効果的には、3つの部品だけで構成され、従って比較的安価である。
【0033】
ばね付きの既存の弁は、手の込んだ組立てを必要とし、場合によっては、オンラインでの較正を必要とし、過剰なコストが生じる。弁のポップオフ圧力は、用いられる材料及び弁部品の寸法形状の関数であり、弁の挙動を種々の圧力/用途に合うよう改造できる。弁の再着座圧力は、磁気カバーと磁気着座部との間の磁気吸引力とヒンジ止め機構の弾性の両方の関数である。したがって、ヒンジ止め機構を変更することにより、弁の特性が変更されることになる。
【0034】
図10は、ばね型圧力逃がし弁と本発明の磁気圧力逃がし弁の両方についての圧力と漏れ流量の関係を表すグラフ図である。理解できるように、磁気弁がその開放ブレーク圧力に達すると(図10のA参照)、鼻カニューレ内の圧力は減少し、多量のガスを圧力が再び高いレベルに上昇する前に抜くことができる。ばね弁は、ブレーク時に、僅かな量のガスを抜くよう始動するに過ぎない。ばね弁が大量の空気を抜くためには、患者に送り出されているカニューレ内の圧力が、弁が開き始めるレベルよりも高いレベルまで増大する。
【0035】
図10のグラフ図は、圧力が本発明の圧力逃がし弁に関して約12cm圧力のところでブレークしたときの不連続性を示している。この不連続性の意味するところによれば、圧力が12cmH2O圧力に達すると、弁が開いて空気を抜き、圧力が約2cmH2Oまでほぼ瞬間的に下がりようになり、漏れ流量が約14L/分まで増大する。圧力が増大すると、弁を通る流量が急増する。これとは逆に、ばね弁は、不連続性を示しておらず、ばね弁が約10cmH2Oでいったん開くと、圧力は、より多くの流量が導入されながら迅速に上昇を続ける。
【0036】
上述した特性に鑑みて、本発明の圧力逃がし弁は、高い場合によっては危険な圧力を患者に送り出さないで、多量のガスを抜くことができる。これは、先行技術の弁と比較して大きな技術的進歩である。また、圧力が危険な状態になる時点まで漏れの無い密封状態を維持することができることは、本発明の弁のもう1つの利点である。
【0037】
最後に、本発明の圧力逃がし弁は、寸法形状が小さく且つ軽量であり、これらは先行技術の弁と比較して別の利点をもたらす。
【0038】
弁カバーの変形実施形態
強磁性体カバー102を多くの方法で拘束することができる。カバー102を熱可塑性ヒンジ(図2〜図4に示されている)を介して取り付けること又は変形例として、ケージ108(図5に示す)を介して拘束して直接的に制御することが提案される。
【0039】
熱可塑性(又はこれに類似した)ヒンジを用いることは、患者の近くで鼻カニューレの端部に組み込むのに非常に適している。というのは、これには、潜在的に軽量であるという利点があるからである。ケージの設計は、所要の構造により課されるその大きな物理的寸法に起因して、ガス供給源(混合機15)又は加湿室(入口又は出口)のところに過圧安全弁として用いるのに適している場合がある。
【0040】
強磁性体弁カバー102を拘束する他の変形例は次の通りである。
・弁着座部(図示せず)をケージ108内に捕捉すること。この場合、強磁性体弁カバー110は、少なくとも1本のピン109(図5参照)によって案内される。
・弁カバー112を図7に示すようにタイロッド113により拘束すること。この実施形態では、患者か介護者かのいずれかにより手動再着座圧力を加える必要がある。また、
・多数の要素から成る従来型ヒンジ要素111(図6参照)又は同様な結果をもたらすよう用いることができる任意のものを用いること。
【0041】
室弁
本発明の弁の第4の実施形態は、図8、図9及び図11に示されている。この場合、圧力逃がし弁120は、加湿器8の加湿室5の入口16又は出口4に設けられている。弁120の形態は好ましくは、図2を参照して上述した構造のものであり、弁着座部128及び弁カバー121を備えている。この実施形態では、依然として同一の原理で動作する状態で僅かに嵩が大きく且つより頑丈な設計が可能である。弁のこの実施形態は、閉塞部又は障害物により引き起こされる器械全体、ガス供給源、加湿器及び導管内の圧力の発生を阻止できるという利点を有する。なお、このような閉塞部又は障害物は、この圧力にさらされる機器に対して害を生じさせる可能性を有している。
【0042】
図11では、患者インタフェース122は、フルフェースマスクであり、ガスは、酸素混合機123によって高圧で加湿器124に供給され、次に患者125に送られる。この実施形態では、逃がし弁120を加湿器の入口126(又は出口127)のところに設けることが推奨される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の圧力逃がし弁と併用できる呼吸加湿システム及び鼻カニューレの略図である。
【図2】鼻カニューレに用いられた場合の本発明の圧力逃がし弁の第1の実施形態の斜視図であり、弁が閉鎖位置にある状態を示す図である。
【図3】図2の圧力逃がし弁の斜視図であり、弁が開放位置にある状態を示す図である。
【図4】図2の弁の分解組立て図である。
【図5】弁がケージ及びばねにより拘束されるカバーを有している本発明の弁の第2の実施形態を示す図である。
【図6】弁が機械的ヒンジ式のものであり、開放位置で示されている本発明の弁の第3の実施形態を示す図である。
【図7】弁がプランジャシステムにより拘束される弁カバーを有している本発明の弁の第4の実施形態を示す図である。
【図8】弁が加湿室の入口又は出口のところで用いることができる圧力ポップオフ弁である本発明の弁の第5の実施形態の側面図である。
【図9】図8の弁の斜視図である。
【図10】本発明の第1の実施形態の圧力逃がし弁及び先行技術のばね弁についての圧力と流量の関係を示すグラフ図である。
【図11】加湿器入口に設けられた本発明の圧力逃がし弁を備えた呼吸加湿システム及び顔マスクの変形実施形態の略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力逃がし弁に関し、特に、陽圧換気システム及び他の呼吸補助器械に用いられる圧力逃がし弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば患者へのガス供給(最も特定的には、陽圧ガス供給)を行うための鼻カニューレ、マスク等の呼吸補助装置内の圧力を減少させる既存の器具には、種々の欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
バイアス流れ穴は、例えばマスク、鼻カニューレ等の器械内の圧力を抜く一方法である。しかしながら、これらバイアス流れ穴は、患者に「オンデマンド」流れを供給する一般的な減圧システムとして意図されている。したがって、圧力減少が、全ての圧力範囲にわたって生じ、高い圧力を患者へのガスの流れの低いレベルに維持するということはない。
【0004】
ばね又は部品の弾性変形で動作する過圧逃がし弁が存在する。しかしながら、これら装置の大きな欠点は、器械内に陽圧があるとすぐにこの弁がガス抜き圧力を生じさせ、圧力が増大するにつれてガス抜き圧力を次第に増大させることにある。さらに、ばね力は、弁内で作用し続ける場合が多く、その結果、送られた圧力は、供給圧力の増大につれて引き続き増大する。この場合、全ての場合ではないが、呼吸ガスが通常の標的動作圧力で搬送されるのが通例である。
【0005】
他の業界においても、逃がし弁が存在する。これら弁は一般に、貯蔵タンク用、化学的精製工場用及び他の重工業用途用の大型流体逃がし弁として石油化学業界において用いられている。
【0006】
計器業界では、磁気圧力制御(PEEP)弁(米国特許第4,210,174号明細書)が製造されている。この弁は、ロッド状磁石から間隔をおくと共にこれと同軸の中央の磁気吸引部材を備えた弁部材を有している。磁石及び弁部材は、これらの間に働く磁気吸引力を調節し、弁の開口圧力を調節するよう相対的に動くことができる。この弁は、磁石が強磁性体から設定された距離のところに配置されると、一定のばね力として働くという基本原理に基づいて動作する。これら圧力制御弁は、安全弁としてではなく、ユーザにより設定される一定圧力をもたらすよう設計されている。
【0007】
本発明の目的は、上述の欠点を無くし又は少なくとも保健医療提供者に有用な選択肢を与える呼吸補助器械用弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、第1の特徴では、本発明は、加圧ガスをガス運搬手段により患者に搬送する呼吸補助器械に用いられる圧力逃がし弁であって、
呼吸補助器械の出口ベントの周りに又はこれと関連して設けられた磁気着座部と、
着座部及び出口ベントを覆うことができる磁気カバーとを有し、
通常の使用中、カバーは、カバーと着座部との間に働く磁力によって着座部に当接保持されて出口ベントが実質的にカバーによって密封され、
呼吸補助器械内のガスの圧力が所定値よりも高い場合には、磁力よりも所定値のガスの圧力の方が高くなり、カバーが着座部から脱離してガスが出口ベントから出て、呼吸補助器械内のガス圧力を減少させる、圧力逃がし弁である。
【0009】
好ましくは、呼吸補助器械は、鼻カニューレである。
【0010】
好ましくは、鼻カニューレは、
患者の外鼻孔の少なくとも一方に嵌まり込むことができる少なくとも1つの鼻枝管を含むフェースマウント部と、
フェースマウント部と流体連通状態にあるガス流マニホルド部とを有し、マニホルド部は、使用中、ガス運搬手段と流体連通関係をなす単一の水平側部ガス入口を有する。
【0011】
好ましくは、出口ベントは、ガス流マニホルド部に形成され、磁気着座部は、出口ベントの上方に配置されている。
変形例として、呼吸補助器械は、ガス入口及びガス出口を備えた加湿器であり、圧力逃がし弁は、入口及び出口の一方に設けられている。
【0012】
変形例として、呼吸補助器械は、顔マスクである。
好ましくは、顔マスクに供給されるガスは、加湿器によって加湿され、磁気着座部及び磁気カバーは、加湿器の入口に設けられている。
【0013】
好ましくは、磁気着座部は、フェライト入りプラスチック材料のリングである。
好ましくは、磁気カバーは、強磁性体で作られている。
変形例として、磁気カバーは、着座部の極性とは逆の極性の磁化材料で作られている。
好ましくは、磁気カバーは、着座部と関連してヒンジ式に配置されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の好ましい形態について添付の図面を参照して説明する。
本発明の圧力逃がし弁は、患者への圧外傷の恐れを無くす過圧制御弁としても、加湿器か呼吸回路(呼吸ガスを患者に供給する)かいずれかに損傷を与える恐れのある呼吸回路内の閉塞により生じる過圧を阻止する呼吸回路用過圧制御弁としても使用できる。
【0015】
呼吸補助器械
図1を参照すると、鼻カニューレ及び本発明の圧力逃がし弁と併用される加湿器を含む呼吸補助器械が示されている。患者1は、加湿ガス運搬経路又は吸気導管3に連結された鼻カニューレ2を介して、加湿され且つ加圧されたガスを受けている。導管3は、加湿器8(加湿室5を含む)に連結され、この加湿器には、ガス供給源、例えばガス混合機15又は他の適当なガス供給手段、例えばブロワ即ち連続陽圧装置からガスが供給されている。吸気導管3は、或る量の水6を収容した加湿室5の出口4に連結されている。加湿室5は、好ましくは、プラスチック材料で作られ、この加湿室は、加湿器8の加熱板7と直接接触状態にある熱伝導率の高いベース(例えば、アルミニウム製ベース)を有するのがよい。加湿器8は、制御手段すなわち電子コントローラ9を備え、この電子コントローラは、関連のメモリに記憶されたコンピュータソフトウェアコマンドを実行するマイクロプロセッサ利用型コントローラから成るのがよい。吸気導管3を通って流れるガスは、鼻カニューレ2を経て患者に送られる。
【0016】
コントローラ9は、例えばユーザ入力手段すなわちダイアル10のような源から入力を受け、器械のユーザは、このようなダイアル10で、患者1に供給されるガスの湿度又は温度の所定の所要値(設定値)を設定することができる。ダイアル10及び他の考えられる入力、例えばガス流量又はガス温度を検出する内部センサにより又はコントローラ内で計算されたパラメータにより入力されるユーザによる設定湿度又は温度値に応答して、コントローラ9は、加湿室5内の水6を加熱するのにいつ(又は、どのレベルまで)加熱板7に通電するかを決定する。加湿室5の水6が加熱されると、水蒸気が水面の上方の室の空間を満たし始め、この水蒸気は、入口16を通って室に流入するガス供給手段又は混合機15から提供されるガス(例えば、空気)の流れと一緒になって加湿室5の出口4から流出する。注意すべきこととして、加湿室5内のガスの湿度と加熱板7の温度との間の関係を得ることが可能である。したがって、加熱板の温度をアルゴリズム又はルックアップテーブルで利用してガスの湿度を求めることが可能である。
【0017】
酸素混合機が、本発明の呼吸補助器械を備えることが好ましい。ただし、他のガス供給器械を用いてもよい。図1に示すような酸素混合機15は、酸素と空気の混合気、又は圧縮医用ガスラインから供給される任意他の医用ガスを供給する。ガスラインは、通常、圧力が約6バールのものであり、病院等に提供されている。
【0018】
発熱体11を導管又はチューブ3内に設けて導管内の加湿ガスの凝縮の阻止を助けるのがよい。この凝縮は、導管の壁の温度が通常導管内の加湿ガスの温度よりも低い周囲温度(周囲雰囲気の温度である)に近いことによって生じる。発熱体は、導管による移送中に熱伝導や熱対流によるガスからのエネルギ損失を効果的に埋め合わせる。したがって、導管の発熱体は、送り出されたガスが最適な温度及び湿度状態にする。
【0019】
鼻カニューレ
図2〜図4を参照すると、第1の実施形態の圧力逃がし弁100が、鼻カニューレ2に設けられた状態で示されている。鼻カニューレは、フィッシャー・アンド・パイケル・ヘルスケア・リミテッド社のニュージーランド国特許出願第526362号明細書、更に、米国特許出願第10/855,146号明細書に記載されている形式のものであり、これら特許文献の記載内容を参照によりここに援用する。
【0020】
鼻カニューレ2は、フェースマウント部21と、1対の鼻枝管22,23と、吸気導管3に取り付けられたガス流マニホルド部24とを有している。フェースマウント部21及び1対の鼻枝管22,23は、軟質プラスチック材料、例えばシリコーンから一体品として一体に成形されるのが好ましい。ただし、他の形態では、フェースマウント部及び枝管は、使用の際に互いに固定される2つの部品であってもよい。鼻枝管22,23は、形状が管状であり、直径が一様であるのがよいが、ヒトの外鼻孔の輪郭に適合するような形状のものであるのがよい。
【0021】
鼻カニューレ組立体2を患者の顔面の周りに定位置に保持することができるようにするために、ストラップ又はストラップ形取付け手段25をフェースマウント部21に一体に成形し又はこれに取り付けるのがよい。
【0022】
フェースマウント部21は、鼻枝管22,23の下に延びていて、吸気導管3に取り付けられ又はこれに一体に形成されたガス流マニホルド部24を受け入れることができる開口した管状凹部26を有する。鼻枝管22,23内の管状通路は、フェースマウント部21を貫通して凹部26内へ延びている。ガス流マニホルド部24は、一端部27が閉鎖されているが、他端部が導管に取り付けられており、このガス流マニホルド部は、導管3から受け取ったガスの出口として働く細長い開口部28を有している。フェースマウント部21の構成材料が柔軟性のものであり、そしてガス流マニホルド部24が硬質プラスチック材料で作られているので、ガス流マニホルド部24をフェースマウント部21の管状凹部26中へ押し込むことができる。このように、ガス流マニホルド部24の細長い開口部28は、枝管22,23の管状通路と出会う。したがって、使用中、導管3を通ってガス流マニホルド部24に流入するガスは、開口部28を通って出て枝管22,23内の管状通路に流入し、次に患者の外鼻孔に流入する。
【0023】
圧力逃がし弁
本発明の圧力逃がし弁は、主として、ガス運搬手段(上述したように、導管又はチューブ)により加圧ガスを患者に送ることができる呼吸補助装置に用いられる。本発明の圧力逃がし弁は、呼吸補助器械に設けられた出口ベントの周り又はこれと関連して設けられた磁気着座部と、着座部及び出口ベントを覆うことができる磁気カバーとを有する。通常の使用中、カバーは、カバーと着座部との間に働く磁力によって着座部に当接保持されて出口ベントが実質的にカバーによって密封されるようになっている。呼吸補助器械内のガスの圧力が所定値よりも高い場合には、磁力よりも所定値のガスの圧力の方が高くなる。その結果、カバーが着座部から脱離してガスが出口ベントから出て、呼吸補助器械内のガス圧力を減少させる。
【0024】
本発明の圧力逃がし弁100は、弁カバー103によって拘束された強磁性体カバー102で密封されている磁性弁座101を有する。この弁は、内部圧力が着座部101と強磁性体カバー102との間の磁気密封力よりも高くなる時点まで弁座101及び強磁性体カバー102を互いに密封することによって動作する。内部圧力が磁気密封力よりも大きくなると、弁100が開き、カニューレを通るガスの流れの一部が抜かれ、カニューレ2内の圧力が安全レベルまで下がる。
【0025】
図4を参照すると、本発明の呼吸補助器械の好ましい形態では、孔104が鼻カニューレマニホルド24に形成され、円形凹部105が、磁気弁着座部101を収容するようマニホルド24に形成されている。孔104は、呼吸補助器械からの排出ガスの出口ベントとして働く。磁気弁着座部101は好ましくは、フェライトで作られたリングであり、又、変形例として、フェライト入りプラスチック又は任意の他の適当な材料、例えば磁化されたステンレス鋼で作られたリングである。弁着座部101は、ガス流から分離されているが、鼻カニューレマニホルド24の表面と面一であり、従って、弁着座部は、円形凹部105内に収容される。強磁性体カバー102は、好ましくは形状が円形であり、弁カバー103に取り付けられ、弁閉鎖位置では、この磁性体カバーは、磁気弁着座部101と面一をなし且つ実質的に気密状態で着座する。
【0026】
弁カバー103は、マニホルド取付け部107にヒンジ止めされた熱可塑性フラップ106で構成されている。マニホルド取付け部107は、本発明のこの実施形態では、鼻カニューレマニホルド24のチューブ部周りに滑って嵌まることができるリングである。マニホルドとカバーとの間の他の適当な取り付け機構については以下に詳細に説明する。
【0027】
弁カバー103は、弁着座部101の側部寄りの或る箇所の周りにヒンジ止めされ、従って弁カバーは、図3で理解できるようにハッチ又はトラップドアと類似した仕方で開くようになっている。強磁性体カバー102と弁着座部101との間の密封は、これら2つの部品の構成材料相互間の磁気吸引力によって維持される。これら部品の近接状態と生じる力との間の指数関数的な関係により、弁は、閉鎖状態の弁の磁気力にいったん打ち勝つと、急に開く。フラップ106に及ぼされた磁気力は、弁100がいったん開くと大幅に小さくなり、弁100の背後のガス圧力が、弁を完全に開くことができる。その結果、カニューレ2内部の圧力は、弁100が開く前のレベルよりも低いレベルに下がる。弁着座部101と強磁性体カバー102との間の初期着座力により、圧力は、弁100が閉じられている間に、高速流鼻カニューレ2により陽圧換気流を送り出す際に、カニューレに内部で通常は変動することがある。しかしながら、圧力が非安全レベルに達した場合、弁100は開き、ガス圧力の大部分を抜いて、カニューレ内の圧力が安全且つ低レベルに減少するようにする。呼吸補助器械内の圧力の非安全レベルは好ましくは、試験によりあらかじめ決定され、従って、磁気弁及び磁気密封レベル(上述した)を設計することができ、材料構造を製造業者又はユーザにより設定されることが必要な圧力レベルに応じて変更することができる。
【0028】
呼吸補助器械内の圧力が使用中に下がって、弁と関連した(そして、弁カバー103内の弾性ヒンジの弾性によりあらかじめ決定される)しきい再着座圧力よりも低くなると、弁フラップ106は、弁カバー103内に設けられていて、マニホルド取付け部107とフラップ106との間に位置する弾性ヒンジによって閉じる。すると、弁は、強磁性カバー102と弁着座部101との間の磁気吸引力により再び密封を行い、そして上述の圧力増大を引き起こした要因がどんなものであれ、これが除去されたという仮定の下で自動的にリセットする。
【0029】
孔104のサイズは、弁100が開いたとき、カニューレ2中の圧力が、バイアス流れ出口ベントに類似した仕方で、適当な流れを患者1に送り出すのに十分なままであるようなものである。
【0030】
利点
本発明の圧力逃がし弁100は、最高、弁が非安全圧力に起因して開く時点まで、100%の圧力送り出しを維持して陽圧換気の治療上の効果をもたらすことができ、この時点で、患者に対する外傷を回避するために、圧力を著しく下げる。
【0031】
高速流鼻カニューレによる患者への陽圧換気では、カニューレは、外鼻孔とカニューレとの間の高速流及び僅かな隙間により、この圧力が誘起されるので、外鼻孔に密着しないことが必要である。幾つかの理由で、鼻カニューレが患者の外鼻孔に密着した場合、更に患者の唇周りに気密封止状態が存在している場合、カニューレ内の圧力は、圧外傷を誘発させるほどの高いレベルまで増大する場合があり、その結果、患者に対して外傷が生じ、又は、起こる可能性は殆どないが極端な場合には、患者が死亡することになる。その結果、本発明の圧力逃がし弁100は好ましくは、鼻カニューレ2と並列に配置され、この圧力逃がし弁は、圧力が設定レベル(安全ではないと考えられるレベル)に達した場合、開いて、患者に送り出される圧力を著しく減少させる。
【0032】
上述したような圧力逃がし弁に磁気シールを用いることにより、弁の構成は、非常に単純になり、しかも必要な部品は最小限である。本発明の磁気圧力逃がし弁は、効果的には、3つの部品だけで構成され、従って比較的安価である。
【0033】
ばね付きの既存の弁は、手の込んだ組立てを必要とし、場合によっては、オンラインでの較正を必要とし、過剰なコストが生じる。弁のポップオフ圧力は、用いられる材料及び弁部品の寸法形状の関数であり、弁の挙動を種々の圧力/用途に合うよう改造できる。弁の再着座圧力は、磁気カバーと磁気着座部との間の磁気吸引力とヒンジ止め機構の弾性の両方の関数である。したがって、ヒンジ止め機構を変更することにより、弁の特性が変更されることになる。
【0034】
図10は、ばね型圧力逃がし弁と本発明の磁気圧力逃がし弁の両方についての圧力と漏れ流量の関係を表すグラフ図である。理解できるように、磁気弁がその開放ブレーク圧力に達すると(図10のA参照)、鼻カニューレ内の圧力は減少し、多量のガスを圧力が再び高いレベルに上昇する前に抜くことができる。ばね弁は、ブレーク時に、僅かな量のガスを抜くよう始動するに過ぎない。ばね弁が大量の空気を抜くためには、患者に送り出されているカニューレ内の圧力が、弁が開き始めるレベルよりも高いレベルまで増大する。
【0035】
図10のグラフ図は、圧力が本発明の圧力逃がし弁に関して約12cm圧力のところでブレークしたときの不連続性を示している。この不連続性の意味するところによれば、圧力が12cmH2O圧力に達すると、弁が開いて空気を抜き、圧力が約2cmH2Oまでほぼ瞬間的に下がりようになり、漏れ流量が約14L/分まで増大する。圧力が増大すると、弁を通る流量が急増する。これとは逆に、ばね弁は、不連続性を示しておらず、ばね弁が約10cmH2Oでいったん開くと、圧力は、より多くの流量が導入されながら迅速に上昇を続ける。
【0036】
上述した特性に鑑みて、本発明の圧力逃がし弁は、高い場合によっては危険な圧力を患者に送り出さないで、多量のガスを抜くことができる。これは、先行技術の弁と比較して大きな技術的進歩である。また、圧力が危険な状態になる時点まで漏れの無い密封状態を維持することができることは、本発明の弁のもう1つの利点である。
【0037】
最後に、本発明の圧力逃がし弁は、寸法形状が小さく且つ軽量であり、これらは先行技術の弁と比較して別の利点をもたらす。
【0038】
弁カバーの変形実施形態
強磁性体カバー102を多くの方法で拘束することができる。カバー102を熱可塑性ヒンジ(図2〜図4に示されている)を介して取り付けること又は変形例として、ケージ108(図5に示す)を介して拘束して直接的に制御することが提案される。
【0039】
熱可塑性(又はこれに類似した)ヒンジを用いることは、患者の近くで鼻カニューレの端部に組み込むのに非常に適している。というのは、これには、潜在的に軽量であるという利点があるからである。ケージの設計は、所要の構造により課されるその大きな物理的寸法に起因して、ガス供給源(混合機15)又は加湿室(入口又は出口)のところに過圧安全弁として用いるのに適している場合がある。
【0040】
強磁性体弁カバー102を拘束する他の変形例は次の通りである。
・弁着座部(図示せず)をケージ108内に捕捉すること。この場合、強磁性体弁カバー110は、少なくとも1本のピン109(図5参照)によって案内される。
・弁カバー112を図7に示すようにタイロッド113により拘束すること。この実施形態では、患者か介護者かのいずれかにより手動再着座圧力を加える必要がある。また、
・多数の要素から成る従来型ヒンジ要素111(図6参照)又は同様な結果をもたらすよう用いることができる任意のものを用いること。
【0041】
室弁
本発明の弁の第4の実施形態は、図8、図9及び図11に示されている。この場合、圧力逃がし弁120は、加湿器8の加湿室5の入口16又は出口4に設けられている。弁120の形態は好ましくは、図2を参照して上述した構造のものであり、弁着座部128及び弁カバー121を備えている。この実施形態では、依然として同一の原理で動作する状態で僅かに嵩が大きく且つより頑丈な設計が可能である。弁のこの実施形態は、閉塞部又は障害物により引き起こされる器械全体、ガス供給源、加湿器及び導管内の圧力の発生を阻止できるという利点を有する。なお、このような閉塞部又は障害物は、この圧力にさらされる機器に対して害を生じさせる可能性を有している。
【0042】
図11では、患者インタフェース122は、フルフェースマスクであり、ガスは、酸素混合機123によって高圧で加湿器124に供給され、次に患者125に送られる。この実施形態では、逃がし弁120を加湿器の入口126(又は出口127)のところに設けることが推奨される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の圧力逃がし弁と併用できる呼吸加湿システム及び鼻カニューレの略図である。
【図2】鼻カニューレに用いられた場合の本発明の圧力逃がし弁の第1の実施形態の斜視図であり、弁が閉鎖位置にある状態を示す図である。
【図3】図2の圧力逃がし弁の斜視図であり、弁が開放位置にある状態を示す図である。
【図4】図2の弁の分解組立て図である。
【図5】弁がケージ及びばねにより拘束されるカバーを有している本発明の弁の第2の実施形態を示す図である。
【図6】弁が機械的ヒンジ式のものであり、開放位置で示されている本発明の弁の第3の実施形態を示す図である。
【図7】弁がプランジャシステムにより拘束される弁カバーを有している本発明の弁の第4の実施形態を示す図である。
【図8】弁が加湿室の入口又は出口のところで用いることができる圧力ポップオフ弁である本発明の弁の第5の実施形態の側面図である。
【図9】図8の弁の斜視図である。
【図10】本発明の第1の実施形態の圧力逃がし弁及び先行技術のばね弁についての圧力と流量の関係を示すグラフ図である。
【図11】加湿器入口に設けられた本発明の圧力逃がし弁を備えた呼吸加湿システム及び顔マスクの変形実施形態の略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧ガスをガス運搬手段により患者に搬送する呼吸補助器械に用いられる圧力逃がし弁であって、
前記呼吸補助器械の出口ベントの周り又はこれと関連して設けられた磁気着座部と、
前記着座部及び前記出口ベントを覆うことができる磁気カバーとを有し、
通常の使用中、前記カバーは、前記カバーと前記着座部との間に働く磁力によって前記着座部に当接保持されて前記出口ベントが前記カバーによって実質的に密封され、
前記呼吸補助器械内の前記ガスの圧力が所定値よりも高い場合には、前記磁力よりも前記所定値の前記ガスの前記圧力の方が高くなり、前記カバーが前記着座部から脱離してガスが前記出口ベントから出て、前記呼吸補助器械内のガス圧力を減少させる、
ことを特徴とする圧力逃がし弁。
【請求項2】
前記呼吸補助器械は、鼻カニューレである、
請求項1記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【請求項3】
前記鼻カニューレは、
前記患者の外鼻孔の少なくとも一方に嵌まる少なくとも1つの鼻枝管を含むフェースマウント部と、
前記フェースマウント部と流体連通状態にあるガス流マニホルド部とを有し、
前記マニホルド部は、使用中、前記ガス運搬手段と流体連通関係をなす単一の水平側部ガス入口を有する、
請求項2記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【請求項4】
前記出口ベントは、前記ガス流マニホルド部に形成され、前記磁気着座部は、前記出口ベントの上方に配置されている、
請求項3記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【請求項5】
前記呼吸補助器械は、ガス入口及びガス出口を備えた加湿器であり、前記圧力逃がし弁は、前記入口及び前記出口の一方に設けられている、
請求項1記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【請求項6】
前記呼吸補助器械は、顔マスクである、
請求項1記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【請求項7】
前記顔マスクに供給される前記ガスは、加湿器によって加湿され、前記磁気着座部及び磁気カバーは、前記加湿器の入口に設けられている、
請求項5記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【請求項8】
前記磁気着座部は、フェライト入りプラスチック材料のリングである、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【請求項9】
前記磁気カバーは、強磁性体で作られている、
請求項8記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【請求項10】
前記磁気カバーは、前記着座部の極性とは逆の極性の磁化材料で作られている、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【請求項11】
前記磁気カバーは、前記着座部と関連してヒンジ式に配置されている、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【請求項1】
加圧ガスをガス運搬手段により患者に搬送する呼吸補助器械に用いられる圧力逃がし弁であって、
前記呼吸補助器械の出口ベントの周り又はこれと関連して設けられた磁気着座部と、
前記着座部及び前記出口ベントを覆うことができる磁気カバーとを有し、
通常の使用中、前記カバーは、前記カバーと前記着座部との間に働く磁力によって前記着座部に当接保持されて前記出口ベントが前記カバーによって実質的に密封され、
前記呼吸補助器械内の前記ガスの圧力が所定値よりも高い場合には、前記磁力よりも前記所定値の前記ガスの前記圧力の方が高くなり、前記カバーが前記着座部から脱離してガスが前記出口ベントから出て、前記呼吸補助器械内のガス圧力を減少させる、
ことを特徴とする圧力逃がし弁。
【請求項2】
前記呼吸補助器械は、鼻カニューレである、
請求項1記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【請求項3】
前記鼻カニューレは、
前記患者の外鼻孔の少なくとも一方に嵌まる少なくとも1つの鼻枝管を含むフェースマウント部と、
前記フェースマウント部と流体連通状態にあるガス流マニホルド部とを有し、
前記マニホルド部は、使用中、前記ガス運搬手段と流体連通関係をなす単一の水平側部ガス入口を有する、
請求項2記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【請求項4】
前記出口ベントは、前記ガス流マニホルド部に形成され、前記磁気着座部は、前記出口ベントの上方に配置されている、
請求項3記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【請求項5】
前記呼吸補助器械は、ガス入口及びガス出口を備えた加湿器であり、前記圧力逃がし弁は、前記入口及び前記出口の一方に設けられている、
請求項1記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【請求項6】
前記呼吸補助器械は、顔マスクである、
請求項1記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【請求項7】
前記顔マスクに供給される前記ガスは、加湿器によって加湿され、前記磁気着座部及び磁気カバーは、前記加湿器の入口に設けられている、
請求項5記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【請求項8】
前記磁気着座部は、フェライト入りプラスチック材料のリングである、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【請求項9】
前記磁気カバーは、強磁性体で作られている、
請求項8記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【請求項10】
前記磁気カバーは、前記着座部の極性とは逆の極性の磁化材料で作られている、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【請求項11】
前記磁気カバーは、前記着座部と関連してヒンジ式に配置されている、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の呼吸補助器械用圧力逃がし弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−239424(P2006−239424A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52554(P2006−52554)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(504298349)フィッシャー アンド ペイケル ヘルスケア リミテッド (41)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(504298349)フィッシャー アンド ペイケル ヘルスケア リミテッド (41)
【Fターム(参考)】
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