説明

圧密地盤改良工法

【課題】締め固めた雪や氷や固化処理土などの、砂質土よりも曲げ引張り強度がある剛質材料を盛土材料として用いる場合でも、圧密沈下形状に盛土が追随して変形することができる圧密地盤改良工法を提供する。
【解決手段】この圧密地盤改良工法は、地盤改良対象の地盤に盛土による荷重を載せる圧密地盤改良工法であって、砂質土よりも曲げ引張り強度がある剛質材料を盛土10に用い、盛土の天端から底面まで縁切り材料1,2を敷設して盛土を複数に区分けすることにより、盛土が地盤の圧密沈下に追随して変形可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盛土による載荷重を用いる圧密地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤の改良工法の1つとして、ドレーンの打設と盛土の載荷重とにより、軟弱地盤中の間隙水を排水する圧密地盤改良工法が知られている(特許文献1,2,3参照)。圧密地盤改良の目的として、間隙水の排水に伴う軟弱地盤の強度増加や地盤の圧密沈下による利用空間の拡大(例えば、最終処分場に処分した汚泥の減容化や河道面積の拡大)などが挙げられる。盛土による載荷重工法は、図9のように、軟弱地盤G上に盛土Mの荷重を直接載せるようにした圧密地盤改良工法であり、盛土材料として一般的には砂が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-328550号公報
【特許文献2】特開2001-226951号公報
【特許文献3】特開2002-138456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軟弱地盤改良の計画地域の地理的条件や採取条件等のために盛土材料としての砂の確保が困難な場合やコスト増となってしまう場合があるが、このような事態に対処するために、砂の代わりの盛土材料として、締め固めた雪や氷や固化処理土などの、砂質土よりも曲げ引張り強度のある剛質材料を使用することが考えられる。
【0005】
しかし、従来の盛土による載荷重工法によれば、図10のように、圧密の進行にともない、地盤表面Sが圧密沈下により凹んで窪地状に変形するとともに砂からなる盛土Mも地盤表面Sの変形に追随して容易に変形するが、盛土Mが剛質材料からなると、その曲げ引張り強度により盛土Mの変形が抑制され、砂の場合とは異なって、図の破線のように地盤改良中央部で沈下が大きく、窪地状に変形しようとする圧密沈下形状に追随できないため、地盤改良中央部に対する載荷荷重の伝達性が低くなって、計画改良域を効果的に圧密改良することができなくなる。
【0006】
特に、真空ポンプによる吸引装置を用い、負圧を作用させて地盤内を減圧することによって地盤の圧密を促進する真空圧密工法(特許文献1〜3参照)と載荷重工法とを併用する場合、盛土荷重とは別の外力(大気圧)によっても地盤改良中央部の圧密沈下が促進されるため、図10の地盤表面Sと盛土Mとの間に空洞ができることを防ぐよう盛土に変形追随性を持たせることが、効果的な圧密改良を行うための重要な課題である。
【0007】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、締め固めた雪や氷や固化処理土などの、砂質土よりも曲げ引張り強度がある剛質材料を盛土材料として用いる場合でも、圧密沈下形状に盛土が追随して変形することができる圧密地盤改良工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1の圧密地盤改良工法は、地盤改良対象の地盤に盛土による荷重を載せる圧密地盤改良工法であって、砂質土よりも曲げ引張り強度がある剛質材料を盛土に用い、前記盛土の天端から底面まで縁切り材料を敷設して前記盛土を複数に区分けすることにより、地盤改良中に前記区分けされた盛土が前記縁切り材料で滑り変形を起こして地盤の圧密沈下に追随して変形可能であることを特徴とする。
【0009】
この圧密地盤改良工法によれば、剛質材料からなる盛土の天端から底面まで縁切り材料を敷設して盛土を複数に区分けすることで、地盤改良中に、区分けされた盛土が縁切り材料で滑り変形をして地盤の圧密沈下に追随して変形でき、このため、砂質土よりも曲げ引張り強度がある剛質材料を盛土材料として用いても、軟弱地盤の圧密沈下形状に対して盛土に変形追随性を与えることができ、盛土荷重を効果的に軟弱地盤に作用させることができる。
【0010】
上記圧密地盤改良工法において前記縁切り材料は、板状部材、シート状部材、または、袋詰め材料であることが好ましい。また、前記剛質材料は、締め固めた雪、氷、または固化処理土であることが好ましい。
【0011】
上記目的を達成するための第2の圧密地盤改良工法は、地盤改良対象の地盤に盛土による荷重を載せる圧密地盤改良工法であって、砂質土よりも曲げ引張り強度がある剛質材料を盛土に用い、前記盛土の法肩近傍において天端から底面近傍まで延びる空洞部を形成することにより、地盤改良中に前記盛土が前記空洞部で変形をして地盤の圧密沈下に追随して変形可能であることを特徴とする。
【0012】
この圧密地盤改良工法によれば、剛質材料からなる盛土の天端から底面近傍まで延びる空洞部を形成しておくことで、地盤改良中に、盛土が空洞部で倒れ込んで大きく変形できるため地盤の圧密沈下に追随して変形でき、このため、砂質土よりも曲げ引張り強度がある剛質材料を盛土材料として用いても、軟弱地盤の圧密沈下形状に対して盛土に変形追随性を与えることができ、盛土荷重を効果的に軟弱地盤に作用させることができる。
【0013】
上記圧密地盤改良工法において前記剛質材料は、締め固めた雪、氷、または固化処理土であることが好ましい。
【0014】
また、上記第1,第2の圧密地盤改良工法において前記盛土の設置前に地盤中にドレーン材を打設することが好ましく、この場合、真空ポンプを用いた真空圧密地盤改良工法を併用することが好ましい。なお、真空圧密を併用する場合は、ドレーン材の打設後、盛土の設置前に真空圧密改良工程を開始する。
【0015】
さらに、前記真空圧密地盤改良工法により圧密度50%程度を達成した後に前記盛土を設置することが好ましい。このように、真空圧密による地盤改良が50%完了した後に盛土を設置することにより、盛土後の軟弱地盤の変形が小さくなり、盛土の変形追随性を保ちやすくなり、このため、圧密地盤改良を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の圧密地盤改良工法によれば、締め固めた雪や氷や固化処理土などの、砂質土よりも曲げ引張り強度がある剛質材料を盛土材料として用いる場合でも、圧密沈下形状に盛土が追随して変形することができるため、従来の砂を用いた場合と同様に、計画地盤改良域に目標の荷重を作用させることができる。また、重点的に計画改良域に盛土荷重を作用させることができるため、計画改良範囲外の周辺域に対する圧密沈下の影響を極力抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態の圧密地盤改良工法を説明するために初期時の盛土を概略的に示す側面図(a)及び同じく圧密地盤改良後の盛土を概略的に示す側面図(b)である。
【図2】図1の変形例の圧密地盤改良工法を説明するために初期時の盛土を概略的に示す側面図(a)及び同じく圧密地盤改良後の盛土を概略的に示す側面図(b)である。
【図3】本実施形態において縁切り材料の設置位置と地盤改良深度とを示す図1(a)と同様の側面図である。
【図4】図3と同じく図2(a)と同様の側面図である。
【図5】第2の実施形態の圧密地盤改良工法を説明するために初期時の盛土を概略的に示す側面図(a)及び同じく圧密地盤改良後の盛土を概略的に示す側面図(b)である。
【図6】図3(a)の盛土を上面からみた上面図である。
【図7】第3の実施形態の圧密地盤改良工法を説明するために初期時の盛土を概略的に示す側面図(a)及び同じく圧密地盤改良後の盛土を概略的に示す側面図(b)である。
【図8】本各実施形態の剛質材料として適用可能な締め固め雪の引張り曲げ強度を得るための曲げ引張り強度試験の実験装置を概略的に示す図である。
【図9】従来の盛土による載荷重工法を説明するための盛土の概略的な側面図である。
【図10】従来の載荷重工法において盛土材料として剛質材料を用いた場合の問題を説明するための図9と同様の側面図である。
【図11】図2の変形例の圧密地盤改良工法を説明するために初期時の盛土を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0019】
〈第1の実施形態〉
図1は第1の実施形態の圧密地盤改良工法を説明するために初期時の盛土を概略的に示す側面図(a)及び同じく圧密地盤改良後の盛土を概略的に示す側面図(b)である。
【0020】
図1(a)のように、軟弱地盤Gの上に台形状の盛土10を形成し、盛土10は、シート1,2によって複数の盛土部分11,12,13に区分けされている。盛土材料は、砂質土よりも曲げ引張り強度が高く、曲げ剛性のある材料であり、例えば、締め固めた雪であるが、氷やセメント等による固化処理土等であってもよい。また、シート1,2は、ビニールシートであってよいが、他の材料からなるシート材であってもよく、また、板材や土のうなどの袋詰め材料等であってもよく、剛質材料が固着せずに剛質材料に対し滑りやすい材料が好ましい。
【0021】
まず、図1(a)の中央の盛土部分12を台形状に形成する。盛土部分12の傾斜面に縁切り材料としてシート1,2を敷設してから、その両脇にシート1,2に接するように盛土部分11,13を形成することで、シート1,2により区分けされた複数の盛土部分11,12,13からなる計画形状の盛土10を軟弱地盤Gの上に設置することができる。このとき、シート1,2は盛土10の天端から底面まで延びている。盛土部分11,12はそれらの間にシート1が介在しているため相対的にすべり易くなっており、圧密沈下によって容易に滑り変形する。盛土部分12,13も同様に相対的にすべり易くなっており、圧密沈下によって容易に滑り変形する。なお、シート1,2は、中央の台形状の盛土部分12の両端部に敷設してよいが、盛土部分12を包囲するように敷設してもよい。
【0022】
上述のように、軟弱地盤G上の盛土10の載荷重により軟弱地盤Gの圧密が進行し、図1(b)のように、地盤改良中央部Cを中心にして圧密沈下が生じ、その地盤表面Sが窪地状に変形する。そして、その圧密沈下による地盤表面Sの変形に対応して、中央の盛土部分12が両脇の盛土部分11,13に対しシート1,2で滑るようにして相対的にスムーズに変形しながら沈下し、その結果、図1(b)のように、各盛土部分11,12,13が、変形した窪地状の圧密沈下形状に沿うようにして地盤表面Sに載り続けることができる。
【0023】
次に、図1の変形例について図2を参照して説明する。図2は、図1の変形例の圧密地盤改良工法を説明するために初期時の盛土を概略的に示す側面図(a)及び同じく圧密地盤改良後の盛土を概略的に示す側面図(b)である。
【0024】
本例は、図2(a)のように、軟弱地盤Gの上に台形状の盛土20を形成し、盛土20は、シート3,4によって複数の盛土部分21,22,23に区分けされているものである。なお、盛土材料、シート3,4は、図1と同様のものであってよい。
【0025】
まず、図2(a)の両脇の盛土部分21,23をそれぞれ台形状に形成する。盛土部分21,23の内側の互いに対向する各傾斜面に縁切り材料としてシート3,4を敷設してから、その間にシート3,4に接するように中央の盛土部分22を形成することで、シート3,4により区分けされた複数の盛土部分21,22,23からなる計画形状の盛土20を軟弱地盤Gの上に設置することができる。このとき、シート3,4は盛土20の天端から底面まで延びている。
【0026】
上述のようにして軟弱地盤G上の盛土20の載荷重により軟弱地盤Gの圧密が進行し、図2(b)のように、地盤改良中央部Cを中心にして圧密沈下が生じ、その地盤表面Sが窪地状に変形する。そして、その圧密沈下による地盤表面Sの変形に対応して、中央の盛土部分22が両脇の盛土部分21,23に対しシート3,4で滑るようにして相対的にスムーズに変形しながら沈下し、その結果、図2(b)のように、各盛土部分21,22,23が、変形した窪地状の圧密沈下形状に沿うようにして地盤表面Sに載り続けることができる。
【0027】
以上のように、本実施形態の圧密地盤改良工法によれば、複数に区分けされた盛土部分からなる盛土は、各盛土部分がシートにより区分けされ、シートで滑り変形を起こすため、圧密の進行により生じる地盤表面Sの圧密沈下に追随して変形することができる。したがって、砂質土よりも曲げ引張り強度が高い剛質材料を盛土材料として用いた場合でも、従来の砂を用いた場合と同様に、計画地盤改良域に目標の荷重を確実に作用させることができる。また、重点的に計画改良域に盛土荷重を作用させることができるため、計画改良範囲外の周辺域に対する圧密沈下の影響を極力抑制することができる。
【0028】
次に、図1,図2において、縁切り材料(シート)の好ましい設置位置について図3,図4を参照して説明する。図3は本実施形態において縁切り材料の設置位置と地盤改良深度とを示す図1(a)と同様の側面図である。図4は同じく図2(a)と同様の側面図である。
【0029】
図3のように、シート1,2を設置した図1(a)の盛土10の場合、盛土10の底面におけるシート1,2の位置6から盛土10の端部7までの距離B1(両側の盛土部分11,13の底面における幅)は、改良対象域の地盤改良深度Hよりも短い(B1<H)ことが好ましい。
【0030】
また、図4のように、シート3,4を設置した図2(a)の盛土20の場合、盛土20の底面におけるシート3,4の位置8から盛土20の端部9までの距離B2(両側の盛土部分21,23の底面における幅)は、改良対象域の地盤改良深度Hよりも短い(B2<H)ことが好ましい。
【0031】
〈第2の実施形態〉
図5は第2の実施形態の圧密地盤改良工法を説明するために初期時の盛土を概略的に示す側面図(a)及び同じく圧密地盤改良後の盛土を概略的に示す側面図(b)である。
【0032】
本実施形態の圧密地盤改良工法は、図1,図2のシートの代わりに、剛質材料からなる盛土に空洞部を設けるものである。すなわち、図5(a)のように、軟弱地盤Gの上に台形状の盛土30を形成し、盛土30には、天端30aから底面近傍まで延びるように空洞部として溝状部31,32が形成されている。なお、盛土材料は、図1と同様のものであってよい。
【0033】
軟弱地盤G中に公知のドレーン材(図示省略)を打設してから、計画形状の盛土30を軟弱地盤Gの上に形成する。盛土30の天端30aの法肩部近傍において天端30aから底面近傍まで掘削し、複数の溝状部31,32を形成する。
【0034】
上述のようにして軟弱地盤G上の盛土30の載荷重により軟弱地盤Gの圧密が進行し、図5(b)のように、地盤改良中央部Cを中心にして圧密沈下が生じ、その地盤表面Sが窪地状に変形する。そして、その圧密沈下による地盤表面Sの変形に対応して、図5(b)のように、盛土30の外側部34,35が空洞の溝状部31,32側に倒れ込みながら容易に変形し、盛土30の中央部33が外側部34,35に対し相対的に変形しながら沈下し、その結果、盛土30の中央部33及び外側部34,35が、変形した窪地状の圧密沈下形状に沿うようにして地盤表面Sに載り続けることができる。
【0035】
以上のように、本実施形態の圧密地盤改良工法によれば、盛土に天端から底面近傍まで延びる空洞部である溝状部を形成することで、盛土は、圧密の進行により生じる地盤表面Sの圧密沈下に追随して変形することができる。したがって、砂質土よりも曲げ引張り強度が高い剛質材料を盛土材料として用いた場合でも、従来の砂を用いた場合と同様に、計画地盤改良域に目標の荷重を確実に作用させることができる。また、重点的に計画改良域に盛土荷重を作用させることができるため、計画改良範囲外の周辺域に対する圧密沈下の影響を極力抑制することができる。
【0036】
なお、図5(a)の溝状部31,32は、図6の上面図のように、盛土30の両端部に形成してよいが、破線で示す溝状部31a、32aを加えて、一周するように形成してもよく、また、連続的に形成してよいが、断続的に形成してもよく、例えば、溝状部31,32を破線の断続部31b,32bを設け、断続的に形成してもよい。また、溝状部31,32は、天端から底面まで鉛直方向に形成してよいが、傾斜して形成してもよく、さらに、溝状部31,32の縦方向断面は、図5(a)のように略長方形状であるが、これに限定されず、地盤の安定性や施工性を考慮して、例えば、天端30a側が広く底部側が狭くなる逆三角形状に形成してもよい。
【0037】
〈第3の実施形態〉
図7は第3の実施形態の圧密地盤改良工法を説明するために初期時の盛土を概略的に示す側面図(a)及び同じく圧密地盤改良後の盛土を概略的に示す側面図(b)である。
【0038】
本実施形態の圧密地盤改良工法は、図1または図2の圧密地盤改良工法に真空ポンプを用いた真空圧密地盤改良工法を併用するものである。すなわち、図7(a)のように、図1(a)または図2(a)の盛土10,20を設置する前に、軟弱地盤G中に透水性を有する複数本のドレーン材41を所定間隔で打設する。ドレーン材41には気密性キャップ42を介して排水ホース43が連結される。ドレーン材41が軟弱地盤G中に気密性キャップ42が地盤表面とほぼ同一高さとなるように挿入される。排水ホース43は集水管44に連結され、集水管44が真空ポンプPに連通する。なお、ドレーン材41や気密性キャップ42は、例えば、本出願人による上記特許文献2,3で開示されたものを用いることができる。
【0039】
図7(a)の真空ポンプPを作動させると、負圧作用により地盤表面Sから大気圧が外力として加わることで真空圧密が進行し地盤改良を行う。この真空圧密工法を前もって実行し、地盤表面Sがある程度沈下してから、図7(b)のように、例えば、図1(a)と同様にしてシート1,2とともに盛土10を設置する。盛土材料としては例えば雪を用いて地盤表面Sに盛って、盛土10として締め固める。真空ポンプPの作動を続けることで真空圧密工程を引き続き行う。
【0040】
本実施形態では、軟弱地盤Gに対し盛土10による載荷重に加えて真空圧密による大気圧が外力として加わることで圧密地盤改良をより効率的に実行することができる。
【0041】
また、盛土の設置前に真空圧密をある程度実行し、真空圧密による地盤沈下がある程度生じてから盛土を設置することで、盛土設置後の軟弱地盤の変形の程度が小さくなり、盛土の変形追随性を保ちやすくなる。このため、例えば、真空圧密の工程を圧密度が50%に達するまで行い、その後、盛土を設置することが好ましい。
【0042】
本実施形態の真空圧密工法と載荷重工法との併用によれば、複数に区分けされた盛土部分からなる盛土は各盛土部分がシートにより区分けされ、シートで滑り変形を起こすため、圧密の進行により生じる地盤表面Sの圧密沈下に追随して変形することができる。したがって、砂質土よりも曲げ引張り強度が高い剛質材料を盛土材料として用いた場合でも、従来の砂を用いた場合と同様に、計画地盤改良域に目標の荷重を確実に作用させることができる。特に、真空圧密工法を併用する場合、真空圧密による沈下の進行に盛土が変形追随できるため、軟弱地盤と盛土との間に空洞を生じることがなく、圧密改良を効率的に行うことができる。また、重点的に計画改良域に盛土荷重を作用させることができるため、計画改良範囲外の周辺域に対する圧密沈下の影響を極力抑制することができる。
【0043】
次に、本実施形態において盛土材料として使用可能な剛質材料の例として雪、氷について検討する。載荷重工法では盛土材料として高い密度を持つ材料が好適であり、雪を載荷重として用いる場合、雪の限界密度を考慮しながら必要に応じて締め固めを行い、密度を0.4〜0.6g/cm3程度に調整して用いることが望ましい。ただし、このような高密度の雪は高い曲げ引張り強度を持つため、軟弱地盤の圧密地盤改良時において窪地状の圧密沈下形状や局所的な地形変化に雪の変形が追随できず、荷重が地盤に効果的に伝わらない問題があるが、図1,図2,図7の本実施形態によれば、かかる問題を解決することができる。
【0044】
ここで、雪の密度は、雪質によって異なり、新雪では0.05〜0.1g/cm3程度、しまり雪やざらめ雪では0.3〜0.5 g/cm3程度となる。また、氷は0.8〜0.9g/cm3程度の密度を持つ(渡辺興亜(1982) 講座「土質工学における雪と氷」4.積雪の分布とその性質、土と基礎、30-8(295)、77〜85頁参照)。
【0045】
荷重の作用下で雪は圧縮に伴って密度が増加する性質を持つが、いくら大きな荷重をかけて密度変化が生じても、ある一定の値を超えない限界密度があり、限界密度は、かわき新雪では、0.35g/cm3、かわき結合雪では、0.6g/cm3となる(上記渡辺興亜の文献参照)。すなわち、雪を締め固めて盛土材に用いる場合、締め固めによって期待できる最大密度はその雪の限界密度に一致する。
【0046】
雪・氷・固化処理土の曲げ引張り強度に関し、次の表1に、しまり雪、締固め雪、セメント固化処理土の各曲げ引張強度を砂質土と比較して示す。
【0047】
【表1】

【0048】
上記表1から雪及びセメント固化処理土は、比較的高い大きな曲げ引張強度を有し、砂質土よりも高いことがわかり、砂質土よりも曲げ剛性のある剛質材料であることがわかる。
【0049】
上記表1の締め固め雪の曲げ引張り強度試験は以下の手順で行った。
(1)室温を10°以下に保った実験室内で、かき氷器を用いて氷を細かく削り、雪に見立てられるような材料を作成する。
(2)材料の密度が0.55g/cm3程度となるように締め固めながら,10cm角×長さ40cmの鉄製の型枠に雪を詰める。
(3)図8に示すように、型枠から取り外した締め固めた雪を支点間に単純梁状に設置してから、梁状の締め固めた雪の中央部に、載荷を少しずつ増やしながら与え、破壊時の荷量および梁の形状より雪の曲げ引張り強度を求め、実験結果を得る。
【0050】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、図1では盛土10を盛土部分11,12,13に区分けし、図2では盛土20を盛土部分21,22,23に区分けしたが、さらにシートを追加して区分けの数を増やしてもよいことはもちろんである。例えば、図11のように、図2(a)に盛土部分を追加してもよい。
【0051】
すなわち、図11の軟弱地盤G上の盛土50は、シート5,6,7,8によって複数の盛土部分51,52,53,54,55に区分けされており、圧密沈下による地盤表面の変形に対応して、内側の盛土部分52,53,54が両脇の盛土部分に対しシート5〜8で滑るようにして相対的にスムーズに変形しながら沈下し、各盛土部分51〜55が、変形した窪地状の圧密沈下形状に沿うようにして地盤表面に載り続けることができる。なお、盛土材料、シート5〜8は、図1と同様のものであってよい。
【0052】
また、縁切り材料として、土のうなどの袋詰め材料を用いる場合、図1(a)の中央部の盛土部分12と縁切り部と端部の盛土部分11,13との天端高を一定に保ちながら、多段階に盛土を層状に積み上げるような施工方法であってもよい。
【0053】
なお、本明細書において、砂質土とは、粘性土に対し、非粘性土の意味で用いており、その曲げ引張り強度は、上記表1のように、ほぼ0である。
【0054】
また、圧密度とは、荷重によって地盤内に生じる過剰間隙水圧が完全に消散した状態を圧密度100%とし、任意の時点における圧密の進行の程度を百分比で表した指標である。
【0055】
また、図1、図2、図7、図11において、圧密による地盤改良工程が終了すると、盛土及びシートや板材や袋詰め材料等の縁切り材料は除去される。なお、例えば、廃棄物処分場では、廃棄物の搬入量に従って一部をシートで覆って区分けする場合があるが、この場合は、本発明ではシートで区分けされた盛土部分を滑り変形させ、シートが後に除去されるのに対し、廃棄物の漏洩防止のため半永久的にシートで覆うものである点で本発明と相違する。また、道路等の盛土材料として軽量固化処理土(気泡やプラスチックビーズ混入など)を袋詰めにして用いる場合があるが、本発明では袋詰め材料で区分けされた盛土部分を滑り変形させ、袋詰め材料が後に除去されるのに対し、この場合の袋詰め材料は道路盛土の一部として半永久的に使用される点で本発明と相違する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、盛土による載荷重工法によって軟弱地盤の圧密改良を行う場合、盛土材料として一般的な砂に代わる材料として、例えば、締め固めた雪や氷セメント固化処理土等の、砂質土よりも高い曲げ引張り強度を持つ剛質材料を用いることができ、かかる剛質材料を圧密地盤改良に利用できる。特に、真空圧密工法と載荷重工法とを併用する場合、真空圧密による沈下の進行に盛土が変形追随できるため、圧密地盤改良を効率的に行うことができる。
【符号の説明】
【0057】
1,2,3,4 シート(縁切り材料)
10,20,30 盛土
11,12,13 盛土部分
21,22,23 盛土部分
31,32 溝状部(空洞部)
41 ドレーン材
G 軟弱地盤
S 地盤表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良対象の地盤に盛土による荷重を載せる圧密地盤改良工法であって、
砂質土よりも曲げ引張り強度がある剛質材料を盛土に用い、
前記盛土の天端から底面まで縁切り材料を敷設して前記盛土を複数に区分けすることにより、地盤改良中に前記区分けされた盛土が前記縁切り材料で滑り変形を起こして地盤の圧密沈下に追随して変形可能であることを特徴とする圧密地盤改良工法。
【請求項2】
前記縁切り材料は、板状部材、シート状部材、または、袋詰め材料である請求項1に記載の圧密地盤改良工法。
【請求項3】
地盤改良対象の地盤に盛土による荷重を載せる圧密地盤改良工法であって、
砂質土よりも曲げ引張り強度がある剛質材料を盛土に用い、
前記盛土の法肩近傍において天端から底面近傍まで延びる空洞部を形成することにより、地盤改良中に前記盛土が前記空洞部で変形をして地盤の圧密沈下に追随して変形可能であることを特徴とする圧密地盤改良工法。
【請求項4】
前記剛質材料は、締め固めた雪、氷、または固化処理土である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧密地盤改良工法。
【請求項5】
前記盛土の設置前に地盤中にドレーン材を打設する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧密地盤改良工法。
【請求項6】
真空ポンプを用いた真空圧密地盤改良工法を併用する請求項5に記載の圧密地盤改良工法。
【請求項7】
前記真空圧密地盤改良工法により圧密度50%程度を達成した後に前記盛土を設置する請求項6に記載の圧密地盤改良工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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