説明

圧密材の製造方法及びその装置

【課題】軟化処理工程での成形用金型内のチップ状材料の加熱時間の短縮、圧密固定処理工程でのプレス圧を低下させることによる作業性の向上、圧密材の製造コストの低廉化、及び、高品質の圧密材の提供
【解決手段】この圧密材の製造装置は、チップ状材料8を充填した圧密成形容器2を処理槽1内に載置し、蒸気導入配管3から高温高圧の加熱用の水蒸気を処理槽1に供給するとともに、チップ状材料8を通過した水蒸気を蒸気排出配管4を通して連続的に排出することにより、高温高圧の加熱用の水蒸気を連続的にチップ状材料8全体に均一に通過させることができる。これにより、チップ状材料8全体を早期かつ均一に軟化温度に加熱することができるから、高品質の圧密材を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は水蒸気を加熱手段として用いて木材等を粉砕したチップ状材料を圧密固定処理して製造する圧密材の製造方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】水蒸気を加熱手段に用いてチップ状材料を圧密固定処理する方法として、以下の2つの方法が知られている。
【0003】■チップ状材料を成形用金型に装填したのち圧密用の油圧プレス装置を付設した高温高圧型の水蒸気加熱処理槽に装着し、チップ状材料を水蒸気で所定の温度で軟化し、油圧プレス装置で成形形状にプレス圧縮してから水蒸気を固定処理温度に上げて固定処理する方法。
【0004】■成形用金型に装填したチップ状材料を水蒸気加熱処理装置で軟化処理し、一旦釜外に取り出し、外部に設けられたプレス装置にて所定の形状にプレス圧縮した状態で成形用金型をロックし、再び高温高圧型の水蒸気加熱処理装置に戻して固定処理する方法。
【0005】なお、チップ状材料には、建築廃材や間伐材等の粉砕木材、木材チップ、おがくず、粉砕古紙、植物系繊維、籾殻等や、これらの幾つかを配合した複合材料が含まれる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記■及び■の方法は、共に成形用金型に装填したチップ状材料を水蒸気加熱処理で軟化させているが、このような軟化処理工程で問題となるのは、成形用金型に充填されたチップ状材料の外層部と内層部で温度差が生じやすいことである。即ち、成形用金型に充填されたチップ状材料の外層部は水蒸気により加熱されやすいが、内層部は加熱されるのに時間が掛かるため、軟化処理工程では十分な加熱時間を取り、内外層の温度差を無くすことが必要であった。
【0007】軟化処理工程で温度差がある状態では、圧密固定処理工程での圧縮密度の差になり、外層部の圧密固定がたとえ充分であっても、内層部の圧密固定が不十分になり成形後の形状の保持が不安定になりやすい、また圧密材の硬度や強度の面においても不十分なものになりやすい。例えば、圧密材を厚み方向にスライスカットして使用する場合には、このような内層部の欠陥が表面化することがある。
【0008】また、軟化処理工程での成形用金型に充填されたチップ状材料の内層部と外層部の温度差は当然に圧密時のプレス荷重の負担となり、均一に軟化処理されたものに比べてより大きなプレス荷重が必要となるため、プレス装置や成形用金型等の強度を上げるために設備のコストアップや作業性の悪化を招くことになる。
【0009】軟化処理工程での温度差を無くすためには、軟化処理工程で十分な加熱時間を取り、前記の内層部と外層部の温度差を無くすことが必要であるが、作業性を向上させ、製造コストを低下させるためには、軟化処理工程での加熱時間をできるだけ短時間にする必要がある。
【0010】そこで、本発明は、軟化処理工程での成形用金型内のチップ状材料の加熱時間の短縮、圧密固定処理工程でのプレス圧を低下させることによる作業性の向上、圧密材の製造コストの低廉化、及び、高品質の圧密材の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の圧密材の製造方法は、チップ状材料を成形用金型に充填する材料充填工程と、前記成形用金型に充填したチップ状材料に、加熱用の水蒸気を連続的に通過させ、チップ状材料全体を所定の軟化温度に均一に加熱する軟化処理工程と、前記チップ状材料を成形用金型内でプレス圧縮すると共に、圧密固定処理温度に加熱する圧密固定処理工程とを備えることを特徴とする。この方法では、軟化処理工程において、チップ状材料に加熱用の水蒸気を連続的に通過させているので、チップ状材料全体を早期かつ均一に所定の軟化温度に加熱することができる。
【0012】ここで、「軟化温度」は、チップ状材料を軟化させるのに適した温度であり、加工するチップ状材料の性質を考慮して決定する。また、「圧密固定処理温度」は、チップ状材料を圧密固定するのに適した温度であり、加工するチップ状材料の性質を考慮して決定する。
【0013】請求項2に記載の圧密材の製造方法は、前記軟化処理工程において軟化温度として圧密固定処理温度を採用したことを特徴とする。圧密固定処理温度は、一般に軟化温度より高温である。このため、軟化温度として圧密固定処理温度を採用し、かつ、水蒸気をチップ状材料に連続的に通過させることで、チップ状材料を早期かつ均一に圧密固定処理温度に加熱できるため、圧密固定処理工程ではそのプレス圧力を大幅に低下させることができ、かつ、内層部、外層部の均一な圧密材を製造することができる。
【0014】請求項3に記載の圧密材の製造方法は、成形用金型に充填したチップ状材料を通過する前の水蒸気の温度と、成形用金型に充填したチップ状材料を通過した後の水蒸気の温度が略同じになった段階で、軟化処理工程から圧密固定処理工程に移行することを特徴とする。これにより適切な時間に軟化処理工程から圧密固定処理工程に移行することができる。
【0015】請求項4に記載の圧密材の製造装置は、成形用金型に充填したチップ状材料を通過した水蒸気を連続的に排出する蒸気排出部と、水蒸気加熱処理槽内を所定の温度又は圧力にすべく、蒸気導入部から流入する水蒸気量と前記蒸気排出部から排出する蒸気の排出量を調節する制御部とを備え、チップ状材料に水蒸気を連続的に通過させてチップ状材料を軟化させる軟化処理手段を備えていることを特徴とする。これにより、蒸気導入部から水蒸気加熱処理槽に導入され、成形用金型に充填したチップ状材料を通過して蒸気排出部から排出される水蒸気の流路が形成され、軟化処理においてチップ状材料に水蒸気を連続的に通過させてチップ状材料を早期かつ均一に軟化温度に加熱することができるようになっている。
【0016】請求項5に記載の圧密材の製造装置は、成形用金型に充填したチップ状材料を通過する前の水蒸気の温度と、成形用金型に充填したチップ状材料を通過した後の水蒸気の温度を測定する測定手段を備えており、成形用金型に充填したチップ状材料を通過する前の水蒸気の温度と、成形用金型に充填したチップ状材料を通過した後の水蒸気の温度が略同じ温度になった段階で、軟化処理工程から圧密固定処理工程に移行することができるようになっている。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の第1実施形態に係る圧密材の製造装置を図面に基づいて説明する。
【0018】圧密材の製造装置を示す図1において、1は水蒸気加熱処理槽としての処理槽、2は成形用金型としての圧密成形容器、3は蒸気導入配管、4は蒸気排出配管、5及び6は、圧密固定処理手段としてのプレス板と油圧シリンダである。
【0019】この圧密材の製造装置は、チップ状材料8を充填した圧密成形容器2を処理槽1内に載置し、軟化処理工程において、蒸気導入配管3から高温高圧に加熱した水蒸気を処理槽1に供給するとともに、チップ状材料8を通過した水蒸気を蒸気排出配管4を通して連続的に排出することにより、高温高圧の加熱用の水蒸気を連続的にチップ状材料8に通過させることができる。これにより、早期かつ均一にチップ状材料8を軟化温度に加熱することができるようになり、高品質の圧密材を製造することができ、さらには圧密材の製造時間を短縮することができる。以下、この圧密材の製造装置を詳細に説明する。
【0020】処理槽1は、図1に示すように、略円筒形状の容器を横置きに設置したもので、図中左側の側面に開閉可能な蓋11を取り付け、処理槽1の底に長手方向にローラ12のついたレール13を配設している。レール13は、圧密成形容器2を載置するものであって、圧密成形容器2をレール13に沿って移動させ、処理槽1の図中左側の側面から出し入れすることを容易にするものである。
【0021】処理槽1内の圧密成形容器2が配設される領域の外側には、図1及び図2に示すように、長手方向に多数の噴霧孔14aが形成された噴霧配管14を、処理槽1の長手方向に延在させて配設している。
【0022】処理槽1の上部には、圧力計15と安全弁16を備え、処理槽1が所定の圧力以上になったときに、安全弁16を開放して処理槽1を減圧する安全装置17が配設されている。また、処理槽1の下部にはドレン管18が設置されており、処理槽1の下部に溜まった水を排出するようになっている。また、処理槽1の右側面には蒸気排出配管4の接続部24が設置されている。
【0023】次に、圧密成形容器2は、チップ状材料8の圧密固定処理を行うための成形用金型で、処理槽1のレール13上に載置されて処理槽1の左側の側面から出し入れが可能な状態になっている。
【0024】圧密成形容器2の底面よりも所定の高さの位置には、通気性を有する仕切板21が配設されている。仕切板21は、例えば、チップ状材料8が落ちない程度の大きさの通気孔を多数形成したパンチングメタルプレートで構成することができる。
【0025】仕切板21の上側の領域はチップ状材料8を充填する充填領域になり、仕切板21の下側の空間は水蒸気の排出流路22になる。排出流路22の図中右側の側面には、蒸気排出配管4に接続するための接続部23が設けてある。排出流路22の接続部23は蒸気排出配管4の接続部24と一対の構造であって、気密性を確保した状態で水蒸気の排気を行うことができる構造になっている。
【0026】例えば、排出流路22の接続部23と蒸気排出配管4の接続部24は、それぞれ対面状態で合致するフランジ23a24aを形成すると共に、両者のフランジ23a、24aの接合面にそれぞれシール部材25を装着した構造とし、圧密成形容器2を処理槽1のレール13上に設置する際に、蒸気排出配管4の接続部24に排出流路22の接続部23を押し付けた状態で圧密成形容器2を固定することにより、圧密成形容器2の排出流路22と蒸気排出配管4を気密性を確保した状態で接続する構造にすることができる。
【0027】蒸気導入配管3は、高温高圧の水蒸気の供給源(図示省略)から、処理槽1内に高温高圧の水蒸気を導入する配管であって、圧力計31と、手動弁32と、自動制御弁33と、制御装置34とを備えている。圧力計31は処理槽1に導入する水蒸気の圧力を測定するためのものである。手動弁32は水蒸気の導入量を手動調節するためのものである。自動制御弁33は、水蒸気の導入量を自動調節するためのものである。制御装置34は処理槽1内に取り付けたセンサ(温度センサ)35で温度を測定し、処理槽1内の温度が所定の温度になるように、自動制御弁33の開放量を調節するものである。なお、制御装置34は、上記のように処理槽1内の温度を基に水蒸気の供給量を調節するものでもよいが、処理槽1内に圧力センサを取り付けて、処理槽1内の圧力が所定の圧力になるように、自動制御弁33の開放量を調節して水蒸気の供給量を調節するようにしてもよい。また、温度による制御と圧力による制御を併用して、温度及び圧力の両方を基に自動制御弁33の開放量を調節して水蒸気の供給量を調節するようにしてもよい。蒸気導入配管3は、処理槽1内において、圧密成形容器2の外側で長手方向に延在するように配設された噴霧配管14に接続されている。
【0028】蒸気排出配管4は、上述したように、処理槽1内において、圧密成形容器2の排出流路22の接続部23に接続される接続部24が配設されており、この接続部24から処理槽1の外部に水蒸気を排出する配管である。蒸気排出配管4には、温度センサ41と、自動弁42と、手動弁43と、熱交換器44が取り付けてある。温度センサ41は蒸気排出配管4内の温度を測定するものである。自動弁42は、軟化処理工程及び圧密固定処理工程中において、水蒸気を自動的に排出する弁である。手動弁43は水蒸気の排出量を手動で調節する弁である。熱交換器44は冷却水が流れる冷却水配管45を備えており、蒸気排出配管4を通って排出される水蒸気と冷却水配管45を流れる冷却水との間で熱交換を行い水蒸気を水に変換して排出するものである。
【0029】プレス板5は、圧密成形容器2の横断面形状に合致した形状で、圧密固定処理において、圧密成形容器2内に充填されたチップ状材料8を圧縮固定する部材である。プレス板5は、処理槽1の天井部分に配設された油圧シリンダ6のピストンロッド6aの先端に取り付けられている。圧密固定処理では、油圧シリンダ6を伸長して、プレス板5で圧密成形容器2内に充填されたチップ状材料8をプレス圧縮するようになっている。
【0030】以下、この圧密材の製造装置の使用方法を説明する。
【0031】まず、材料充填工程において、処理槽1の左側の蓋11を開けて圧密成形容器2を取り出し、圧密成形容器2にチップ状材料8を充填し、図1に示すように、圧密成形容器2を処理槽1に戻して蓋11を閉じる。
【0032】次に、軟化処理工程に移行する。軟化処理工程ではチップ状材料8を軟化温度に加熱する。チップ状材料8の加熱は、蒸気導入配管3より高温高圧に加熱した水蒸気を導入すると共に、蒸気排出配管4から水蒸気を排出し、処理槽1内の温度がチップ状材料8の軟化温度になるように、制御装置34で蒸気導入配管3から導入する水蒸気の導入量と蒸気排出配管4から排出する水蒸気の排出量を調節しながら行う。
【0033】この時、高温高圧の水蒸気が導入される処理槽1内は蒸気排出配管4内よりも圧力が高くなっている。この差分圧力により、処理槽1内の水蒸気は、圧密成形容器2内のチップ状材料8の空隙を通過して、圧密成形容器2の排出流路22に流出し、蒸気排出配管4を通って外部に排出されるようになる。即ち、蒸気導入配管3から導入され、チップ状材料8を通過して蒸気排出配管4から排出される水蒸気の流路が形成され、水蒸気が連続的にどんどんチップ状材料8を通過していくので、圧密成形容器2内のチップ状材料8全体が早期かつ均一に軟化温度に加熱される。
【0034】また、処理槽1に取り付けた温度センサ35と蒸気排出配管4に取り付けた温度センサ41により、処理槽1内の温度と蒸気排出配管4内の温度をそれぞれ比較測定することができる。この処理槽1内の温度と蒸気排出配管4内の温度が略同じ温度になれば、チップ状材料8を通過する際に水蒸気の熱エネルギが減少しないことになるから、チップ状材料8が均一に軟化温度に加熱されたことになる。チップ状材料8が均一に軟化温度に加熱された段階で、軟化処理工程から圧密固定処理工程に移行する。
【0035】圧密固定処理工程では、油圧シリンダ6を伸長させ、プレス板5でチップ状材料8をプレス圧縮し、その状態で保持する。そして、処理槽1内に加熱した水蒸気を供給し、処理槽1内の温度を上昇させてチップ状材料8の圧密固定処理に適した温度(圧密固定処理温度)に加熱する。これによりチップ状材料8は、圧密された状態で固定されて圧密材が製造される。
【0036】この装置及び方法によれば、軟化処理工程において、蒸気導入配管3から導入され、チップ状材料8を通過して蒸気排出配管4から排出される水蒸気の流路を形成し、高温の水蒸気をいわば強制的(積極的)にチップ状材料8全体に連続して通過させることができ、チップ状材料8全体を早期かつ均一に軟化温度に加熱することができる。また、処理槽1内の水蒸気の温度とスチーム排出流路4内の水蒸気の温度が略同じ温度になった段階で、軟化処理が完了したことを把握することができる。このように軟化処理の完了を適切に把握することができるから、適切な時間で圧密固定処理に移行することができ、作業効率の向上を図ることができる。そして、圧密固定処理工程では、チップ状材料8が均一かつ充分に軟化されているので、合理的なプレス荷重で圧密固定処理を行うことができると共に、高品質の圧密材を製造することができる。
【0037】以上、本発明の第1実施形態に係る圧密材の製造装置について説明したが、本発明に係る圧密材の製造装置は上記に限定されるものではない。
【0038】圧密材の製造方法として、軟化処理工程において、チップ状材料8を軟化させる温度として、チップ状材料8の軟化温度として高温の圧密固定処理温度を採用しても良い。
【0039】即ち、軟化処理工程の段階でチップ状材料8を加熱する温度を圧密固定処理温度と同一にする。軟化処理工程では、蒸気導入配管3から処理槽1に導入され、チップ状材料8を通過して蒸気排出配管4から排出される水蒸気の流路が形成されているから、チップ状材料8全体に水蒸気を連続的に通過させることができ、圧密成形容器2内のチップ状材料8の温度が早期かつ均一に圧密固定処理温度になる。そして、圧密固定処理工程では、この温度を維持するだけでよいから、製造時間の短縮を図ることができる。
【0040】また、チップ状材料を一般的に用いられる軟化温度より高温の圧密固定処理温度にしてプレス圧縮を行うので、プレス圧力を大幅に低下させることができる。さらに、この場合は、軟化処理工程でチップ状材料8全体が均一に圧密固定処理温度に加熱されていることが担保されているので、より高品質の圧密材を製造することができる。
【0041】また、軟化処理工程では、処理槽1に取り付けた温度センサ35と蒸気排出配管4に取り付けた温度センサ41により、処理槽1内の水蒸気の温度と蒸気排出配管4内の水蒸気の温度をそれぞれ比較測定することができる。このため、この処理槽1内の水蒸気の温度と蒸気排出配管4内の水蒸気の温度が略同じ温度になった段階で、チップ状材料8が均一に圧密固定処理温度に加熱されたことになる。そして、この段階で、軟化処理工程から圧密固定処理工程に移行するようにすれば、適切な処理時間で軟化処理工程から圧密固定処理工程に移行でき、作業効率の向上を図ることができる。
【0042】ただし、上記のように、軟化処理工程において、チップ状材料8の軟化温度よりも高温の圧密固定処理温度を採用した場合、チップ状材料8がより軟化されるので、プレス荷重がより小さくなる。この場合、一般に圧密固定処理ではプレス荷重が高い程、製造される圧密材の強度及び硬度が向上するため、圧密材の強度及び硬度が低下する可能性がある。
【0043】このため、圧密成形容器2に充填するチップ状材料8の量を増やして、圧密材の密度を上げることにより、圧密材の強度及び硬度の低下を補填すると良い。なお、チップ状材料8の量を増やすと一般にプレス荷重は増加するが、チップ状材料8をより高温の圧密固定処理温度で軟化させることにより、十分にプレス荷重が低下するので、プレス荷重が低下することによる製造コスト低廉の効果は維持できる。
【0044】次に、本発明の第2実施形態に係る圧密材の製造装置を説明する。
【0045】この圧密材の製造装置を示す図3において、51は水蒸気加熱処理槽としての処理槽、52は成形用金型としての圧密成形容器、53は蒸気導入配管、54は蒸気排出配管、55と56は圧密固定処理手段としてのプレス板と油圧シリンダであり、処理槽51を縦置きに設置する構造として装置の省スペース化を図ったものである。
【0046】処理槽51は、図3に示すように、略円筒形状の容器を縦置きに設置したもので、上面に開閉可能な蓋61を取り付けたものである。処理槽51には、圧密成形容器52を載置する載置部62があり、載置部62の中央部は処理槽51の底部に囲まれた開口領域62aが形成してある。処理槽51の底部には蒸気排出配管54の水蒸気流入口63が設けてある。処理槽1内には、圧密成形容器2が載置される領域の外側において、多数の噴霧孔64aが形成された噴霧配管64を配設している。
【0047】処理槽51の上部には、圧力計65と安全弁66を備え、処理槽51内が所定の圧力以上になったときに、安全弁66を開放して処理槽51を減圧する安全装置67が配設されている。
【0048】圧密成形容器52は、チップ状材料8の圧密固定処理を行うための成形用金型で、処理槽51内に載置される。圧密成形容器52は、処理槽51の上部の蓋61を開けて、処理槽51の上部からクレーン(図示省略)で吊上げて処理槽51内への出し入れが可能な状態になっている。
【0049】圧密成形容器52は底面よりも少し高い位置に通気性を有する仕切板71が配設されている。仕切板71の上側はチップ状材料8を充填する充填領域になり、仕切板21の下側の空間はチップ状材料8を通過した水蒸気の排出領域72になる。
【0050】圧密成形容器52の底面は開口しており、圧密成形容器52を処理槽51の載置部62に設置したときに、仕切板21の下側の排出領域72と処理槽51の底部中央の開口領域62aに水蒸気が溜まり、水蒸気流入口63から蒸気排出配管54を通して水蒸気が外部に排出されるようになっている。
【0051】蒸気導入配管53は、高温高圧の水蒸気の供給源(図示省略)から、処理槽51内に高温高圧の水蒸気を導入する配管であって、第1実施形態の蒸気導入配管3と同様に、圧力計81と、手動弁82と、自動制御弁83と、制御装置84と、センサ(温度センサ)85を備えている。蒸気導入配管53の機能は、第1実施形態の蒸気導入配管3と同じであるので重複する説明を省略する。蒸気導入配管53は、処理槽51内に配設された噴霧配管64に接続されている。
【0052】蒸気排出配管54は、上述したように、処理槽51の底部に水蒸気流入口63が設けてあり、この水蒸気流入口63から処理槽51の外部に水蒸気を排出する配管が配設されている。蒸気排出配管54には、第1実施形態の蒸気排出配管4と同様に、温度センサ91と、自動弁92と、手動弁93と、熱交換器94と、冷却水配管95が取り付けてある。蒸気排出配管54の機能は、第1実施形態の蒸気排出配管4と同じであるので重複する説明を省略する。
【0053】プレス板55は、圧密成形容器52の内径形状に合致した形状で、圧密固定処理において、圧密成形容器52内に充填されたチップ状材料8を圧縮固定する部材である。プレス板55は、処理槽51の天井部分に配設された油圧シリンダ56のピストンロッド56aの先端に取り付けられている。圧密固定処理では、油圧シリンダ56を伸長して、プレス板55で圧密成形容器52内に充填されたチップ状材料8をプレス圧縮するようになっている。
【0054】以下、この圧密材の製造装置の使用方法を説明する。
【0055】まず、材料充填工程において、処理槽51の上部の蓋61を開けて圧密成形容器52を取り出す。そして、圧密成形容器52にチップ状材料8を充填し、図3に示すように、圧密成形容器52を処理槽51に戻して蓋61を閉じる。
【0056】次に、軟化処理工程に移行する。軟化処理工程では、第1実施形態の圧密材の製造装置と同様に、蒸気導入配管53より高温高圧の水蒸気を導入すると共に、蒸気排出配管54から水蒸気を排出し、処理槽51内の水蒸気の温度がチップ状材料8の軟化温度になるように、制御装置84で蒸気導入配管53から導入する水蒸気の導入量と蒸気排出配管54から排出する水蒸気の排出量を調節しながらチップ状材料8の加熱を行う。
【0057】この時、高温高圧の水蒸気が導入される処理槽51内は蒸気排出配管54内よりも圧力が高くなっている。この差分圧力により、処理槽51内の水蒸気は、圧密成形容器52内のチップ状材料8の空隙を通過して、圧密成形容器52の排出領域72に流出し、蒸気排出配管54を通って外部に排出されるようになる。即ち、この圧密材の製造装置は、軟化処理工程において蒸気導入配管53から圧密成形容器52内に充填されたチップ状材料8を通過して蒸気排出配管54から排出される水蒸気の流路が形成され、水蒸気が連続的にどんどんチップ状材料8に通過していくようになっているので、圧密成形容器52内のチップ状材料8全体が早期かつ均一に軟化温度に加熱される。
【0058】また、処理槽51に取り付けた温度センサ85と蒸気排出配管54に取り付けた温度センサ91により、処理槽51内の水蒸気の温度と蒸気排出配管54内の水蒸気の温度をそれぞれ比較測定することができる。この処理槽51内の水蒸気の温度と蒸気排出配管54内の水蒸気の温度が略同じ温度になった段階で、チップ状材料8を通過する際に水蒸気の熱エネルギが減少しないことになるから、チップ状材料8が均一に軟化温度に加熱されたことになる。軟化処理工程では、チップ状材料8が均一に軟化温度に加熱された段階で、軟化処理工程から圧密固定処理工程に移行する。
【0059】圧密固定処理工程では、油圧シリンダ56を伸長させ、プレス板55でチップ状材料8をプレス圧縮し、その状態で保持する。そして、処理槽51内に加熱した水蒸気を供給し、処理槽51内の温度を上昇させてチップ状材料8の圧密固定処理に適した温度(圧密固定処理温度)に加熱する。
【0060】この装置及び方法によれば、第1実施形態の圧密材の製造装置と同様に、軟化処理工程において、蒸気導入配管53から導入され、チップ状材料8を通過して蒸気排出配管54から排出される水蒸気の流路を形成し、高温の水蒸気をいわば強制的(積極的)にチップ状材料8全体に連続して通過させることができ、チップ状材料8全体を早期かつ均一に軟化温度に加熱することができる。また、処理槽51内の水蒸気の温度とスチーム排出流路54内の水蒸気の温度が略同じ温度になった段階で、軟化処理が完了したことを把握することができる。このように軟化処理の完了を適切に把握することができるから、適切な時間で圧密固定処理に移行することができ、作業効率の向上を図ることができる。そして、圧密固定処理工程では、チップ状材料8が均一かつ充分に軟化されているので、合理的なプレス荷重で圧密固定処理を行うことができると共に、高品質の圧密材を製造することができる。
【0061】以上、本発明の第2実施形態に係る圧密材の製造装置について説明したが、この第2実施形態の圧密材の製造装置においても、第1実施形態の圧密材の製造装置と同様に、軟化処理工程において、チップ状材料8を軟化させる温度として、高温の圧密固定処理温度を採用しても良い。
【0062】
【発明の効果】請求項1に記載の圧密材の製造方法は、軟化処理工程において、チップ状材料に加熱用の水蒸気を連続的に通過させているので、チップ状材料全体を早期かつ均一に所定の軟化温度に加熱することができ、これにより作業効率の向上を図り、かつ、高品質の圧密材を提供することができる。
【0063】請求項2に記載の圧密材の製造方法は、軟化処理工程における軟化温度として圧密固定処理温度を採用しているので、軟化処理工程で、チップ状材料全体を早期かつ均一に圧密固定処理温度に加熱できるため、圧密固定処理工程ではその温度を維持すればよいから、チップ状材料の加熱コストの低廉化を図ることができる。また、プレス圧力を大幅に低下させることができ、かつ、内層部と外層部の均一な品質の圧密材を製造することができる。
【0064】請求項3に記載の圧密材の製造方法は、成形用金型に充填したチップ状材料を通過する前の水蒸気の温度と、成形用金型に充填したチップ状材料を通過した後の水蒸気の温度が略同じになった段階で、軟化処理工程から圧密固定処理工程に移行するので、適切な時間に軟化処理工程から圧密固定処理工程に移行することができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0065】請求項4に記載の圧密材の製造装置は、成形用金型に充填したチップ状材料を通過した水蒸気を連続的に排出する蒸気排出部と、水蒸気加熱処理槽内を所定の温度又は圧力にすべく、蒸気導入部から流入する水蒸気量と蒸気排出部から排出する蒸気の排出量を調節する制御部とを備え、チップ状材料に水蒸気を連続的に通過させてチップ状材料を軟化させる軟化処理手段を備えているので、軟化処理工程において、蒸気導入部から水蒸気を導入し、成形用金型に充填したチップ状材料を通過して蒸気排出配管から排出される水蒸気の流路が形成され、チップ状材料全体に水蒸気を連続的に通過させてチップ状材料全体を早期かつ均一に軟化温度に加熱することができる。これにより、加熱コストの低廉化、作業効率の向上を図り、かつ、高品質の圧密材を提供することができる。
【0066】請求項5に記載の圧密材の製造装置は、成形用金型に充填したチップ状材料を通過する前の水蒸気の温度と、成形用金型に充填したチップ状材料を通過した後の水蒸気の温度を比較測定する測定手段を備えているので、成形用金型に充填したチップ状材料を通過する前の水蒸気の温度と、成形用金型に充填したチップ状材料を通過した後の水蒸気の温度が略同じ温度になった段階で、適切な時間に軟化処理工程から圧密固定処理工程に移行することができる。これにより、加熱コストの低廉化、作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る圧密材の製造装置を示す横断面図。
【図2】 図1のA‐A断面図。
【図3】 本発明の第2実施形態に係る圧密材の製造装置を示す横断面図。
【符号の説明】
1 処理槽
2 圧密成形容器
3 スチーム導入配管
4 スチーム排出配管
5 プレス板
6 油圧シリンダ
8 チップ状材料
11 蓋
13 レール
14 噴霧配管
17 安全装置
18 ドレン管
21 仕切板
22 排出流路
25 シール部材
31 圧力計
32 手動弁
33 自動制御弁
34 制御装置
35 センサ(温度センサ)
41 温度センサ
42 自動弁
43 手動弁
44 熱交換器
45 冷却水配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】チップ状材料を成形用金型に充填する材料充填工程と、前記成形用金型に充填したチップ状材料に、加熱用の水蒸気を連続的に通過させ、チップ状材料全体を所定の軟化温度に均一に加熱する軟化処理工程と、前記チップ状材料を成形用金型内でプレス圧縮すると共に、圧密固定処理温度に加熱する圧密固定処理工程とを備えることを特徴とする圧密材の製造方法。
【請求項2】請求項1に記載の圧密材の製造方法において、前記軟化処理工程における軟化温度として圧密固定処理温度を採用したことを特徴とする圧密材の製造方法。
【請求項3】請求項1に記載の圧密材の製造方法において、成形用金型に充填したチップ状材料を通過する前の水蒸気の温度と、成形用金型に充填したチップ状材料を通過した後の水蒸気の温度が略同じになった段階で、軟化処理工程から圧密固定処理工程に移行することを特徴とする圧密材の製造方法。
【請求項4】水蒸気を導入する蒸気導入部を備えた水蒸気加熱処理槽と、前記水蒸気加熱処理槽内に設置された成形用金型と、前記成形用金型に充填したチップ状材料を圧密保持する圧密固定処理手段とを備え、前記成形用金型内に充填したチップ状材料を所定の軟化温度に加熱する軟化処理と、成形用金型内でチップ状材料をプレス圧縮した状態で、水蒸気加熱処理槽内を圧密固定処理温度に加熱する圧密固定処理を行う圧密材の製造装置において、前記成形用金型に充填したチップ状材料を通過した水蒸気を連続的に排出する蒸気排出部と、前記水蒸気加熱処理槽内を所定の温度又は圧力にすべく、前記蒸気導入部から流入する水蒸気量と前記蒸気排出部から排出する蒸気の排出量を調節する制御部とを備え、チップ状材料に水蒸気を連続的に通過させてチップ状材料を軟化させる軟化処理手段を備えていることを特徴とする圧密材の製造装置。
【請求項5】請求項4に記載の圧密材の製造装置において、成形用金型に充填したチップ状材料を通過する前の水蒸気の温度と、成形用金型に充填したチップ状材料を通過した後の水蒸気の温度を比較測定する測定手段を備えていることを特徴とする圧密材の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2003−53712(P2003−53712A)
【公開日】平成15年2月26日(2003.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−249231(P2001−249231)
【出願日】平成13年8月20日(2001.8.20)
【出願人】(000152480)株式会社日阪製作所 (60)
【Fターム(参考)】