説明

圧延機ロールの円錐ころ軸受を予負荷するための方法および装置

【解決手段】 チョック4を用いて、ロールスタンド内において配設されたロール2、特にバックアップロールの、先細りに形成された圧延ロールネック3の上で、円錐形の座部を用いて固定された円錐ころ軸受1を、液圧力でもっての負荷によって予負荷するために、円錐ころ軸受1の軸受内側リング18、軸受ころ17、および軸受外側リング13が、圧延の間じゅう存在する圧力でもって負荷され、且つロールに対して付勢される。リング状の圧力負荷装置5は、ロール端末ジャーナル8の上に配置されたスラスト軸受9を介してこのロール2に対して支持されており、円錐ころ軸受1の軸受外側リング13との当接状態でもって配設されており、且つ、圧力負荷の際に、チョック4を、この軸受外側リング13でもって、ロール胴15の方向に、または、このロール(2)を反対の方向に位置移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョックを用いて、ロールスタンド内において配設されたロール、特にバックアップロールの、先細りに形成された圧延ロールネックの上で、円錐形の座部を用いて固定された円錐ころ軸受を、液圧力でもっての負荷によって予負荷するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーロッパ特許第425 072号明細書(特許文献1)によって、圧延機ロールのための円錐部を有する円錐ころ軸受が公知である。この円錐部は、多数の外方へと指向する傾斜された走行面、および多数の傾斜された走行面を備える軸受外側リングを有している。軸受内側リングとは対照的に、固定されていないこれら軸受外側リングが、円錐ころと共に圧延ロールネックから滑り落ちることを防止するために、この円錐ころ軸受は、チョックを駆動側および操作側で相対して付勢する、4つの引張りロッドを用いて予負荷される。このことは、これら引張りロッドの周囲に配設されたばねによって支援され、これらばねが、軸線方向に整向された力を作用し;且つ、選択的、及び/または補完的に、この目的で、流動体によって操作されるシリンダーが設けられている。ここで全体として開示されたシステムの保持のために必要とされる引張りロッドは、比較的に手間暇がかかる組み付けを必要とするだけでなく、これら引張りロッドのために必要とされる貫通穿孔に基づいて同様に材料弱体化をも誘起する。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許第195 04 401号明細書(特許文献2)から、円錐ころ軸受を、1つの液圧的な緊締めナット、または、多数の液圧的に互いに結合されたピストンを有する軸受調節リングもしくはリングシリンダーの使用の際に、先ず第一に、高い圧力のもとで予負荷すること、および引き続いて無圧力状態で弛緩することが公知である。この目的で、これらピストンの間挿された圧力リングが、それらピストンに所属して設けられた間隔保持部片によって、軸受内側リングに対して負荷されている。この円錐ころ軸受の予負荷の後、これら間隔保持部片は、無圧力状態の、しかしながら液圧的に締め付けられた緊締めナット、または液圧的に締め付けられた軸受調節リングの場合に除去される。軸受調節リングが第1に圧力でもって負荷され、および次いで無圧力状態で弛緩されるというやり方で、結果として上記のことに伴って、軸受遊び、即ち軸受内側リングと圧力リングとの間の遊隙は調節され、これによってしかしながら、円錐ころ軸受自体内において、即ち円錐形の圧延ロールネックに沿っての軸受内側リングと当接面との間で、遊びが生じることは防止され得ない。
【0004】
圧延作業状態において、その円錐ころ軸受内において、ロールの両側の端部が軸受けされている、公知の円錐ころ軸受の場合、不可避にがたつき(Rattern)(がたつき音を伴う回転(Shattern))を発生し、且つ、これらに伴って現れる振動が軸受け耐用期間を減少させる。更に、圧延された材料の品質は、極めて高い圧延速度において不利な影響を及ぼされ、並びに、最大に可能な圧延速度が利用され得ない。この設備の全製造性能は、従って達せられない。
【特許文献1】ヨーロッパ特許第425 072号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許第195 04 401号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の根底をなす課題は、それら方法および装置が、無振動のロール軸受け、特にバックアップロール軸受け、および従って、比較的に長い軸受け耐用期間を提供し、且つそれら方法および装置でもって上記の欠点を回避可能である、冒頭に記載した様式の方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明により、円錐ころ軸受の軸受内側リング、軸受ころ、および軸受外側リングが、圧延の間じゅう存在する圧力でもって負荷され、且つロールに対して付勢されるという方法でもって解決される。上記のことに伴って、この円錐ころ軸受が自体で常に遊びが無く、即ち、全作動の間じゅう軸受外側リング、軸受ころ、および軸受内側リングの間で、如何なる間隙も存在しないということが達成され得る。このがたつき、即ちがたつき音を伴う回転の現象はもはや生じない。何故ならば、この軸受の軸受ころが、スリーブリング内における半径方向の、ロールに対して作用する予負荷に基づいて、常に当接の状態にあるからである。諸検査が有効であると確認したように、軸受け耐用期間は、従来の軸受けに比して、上記のことによって明確に増大(ほぼ2倍)される。それに加えて、このロールの着脱は、これらころ軸受でもって可能である。何故ならば、これら部材が、常にまとめられ、且つばらばらに崩れ得ないからである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の有利な提案により、それぞれのロール端部に設けられている円錐ころ軸受は、予め調節された液圧的な圧力でもって、または選択的に、圧延力に依存して制御された状態で付勢される。それぞれのロール端部に、即ちそれぞれの側方に、閉鎖されたシステムが設けられており、その際、付勢の圧延力に依存する制御は、動力学的な軸受予負荷、即ち軸受付勢(Lagervorspannung bzw. -verspannung)を可能にする。これら圧延力が上昇した場合、同様に液圧力も増大され、および逆さまに、これら圧延力が低下した場合、同様に液圧力も減少される。
【0008】
この方法を実施するための装置は、本発明により、リング状の圧力負荷装置が、ロール端末ジャーナルの上に配置されたスラスト軸受を介してこのロールに対して支持されており、円錐ころ軸受の軸受外側リングとの当接状態でもって配設されており、且つ、圧力負荷の際に、チョックを、この軸受外側リングでもって、ロール胴の方向に、または、このロールを反対の方向に位置移動する。
圧力負荷装置、有利には、多数のお互いの間で液圧的に結合された個別ピストンを有するリングシリンダー、選択的にリングピストンが、
スラスト軸受、例えば円錐ころ軸受または心合わせころ軸受の上で配設されており、
且つ、圧力負荷が、円錐ころ軸受の軸受外側リングに対して、
ロール胴に向ってのロール長手軸線方向におけるチョックの位置移動でもってか、それとも、反対方向における、即ち外方へのこのロールの位置移動でもって作用するというやり方で、
この円錐ころ軸受は、このロールに対して半径方向に付勢され、従って、この円錐ころ軸受内において、如何なる遊びももはや存在しない。この軸受けは、従って極めて十分に無振動である。
【0009】
圧力負荷装置と円錐ころ軸受の軸受外側リングとの間の、押圧力の伝達のために、
押圧リングが配置されていることが提案され、この押圧リングが、本発明の1つの実施形態により、半径方向の内側カラー部として、チョックと共に1つの部材から成るように形成されていることは可能である。
【0010】
圧力負荷装置、およびスラスト軸受が、チョック内において配設されている場合、全ての、ロールのそれぞれの側方において締め付けられた、それ自身を自体で支持するシステムは、外方から目視不可能であり、且つ保護された状態で格納されている。
【0011】
本発明の更なる利点および詳細は、従属請求項、および、本発明の唯一の図内において図示された実施例の以下の説明から与えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
詳しくは図示されていない通例のロールスタンドの内、この図は、詳細として、部分縦断面図において、両側でそれぞれに、円錐ころ軸受1内において軸受けされているロール2の端部を示している。この複数列の円錐ころ軸受1は、円錐形の座部でもって、外側に向かって先細りに形成された圧延ロールネック3の上に配置されており、且つ、ロールチョック4内に配設されている。このロール2のそれぞれの側方、即ちそれぞれの端部において、このロールチョック4内にリング状の圧力負荷装置5が格納されており、この圧力負荷装置は、ここで、多数の個別ピストン6を有するリングシリンダー7として形成されており、且つ、円筒形のロール端末ジャーナル8の上に配設された、スラスト円錐ころ軸受9を介して、このロール2に対して支持されている。このリングシリンダー7、および従って個別ピストン6は、導管接続部10を介して、図示されていない圧力媒体供給源に接続されている。
【0013】
スラスト軸受9でもってロールチョック4の中ぐり部内に格納されているリングシリンダー7は、このリングシリンダーの個別ピストン6の圧力負荷の際に、ここでロールチョック4と共に1つの部材から成る半径方向の内側カラー部12として形成されている、押圧リング11を介して、直接的に円錐ころ軸受1の軸受外側リング13に対して作用し、且つ、ロール胴15に向かっての矢印方向14におけるこのロールチョック4の位置移動を、または、矢印16による反対の方向におけるロール2の位置移動を生じさせる。この軸受外側リング13は、従ってこのロール2に対して半径方向に付勢され、このことによって、この円錐ころ軸受1が常に遊びが無く、即ち、この軸受外側リング13、軸受ころ17、および軸受内側リング18の間で、如何なる間隙も存在しない。これら軸受ころ17は、この軸受内側リング18内において、常に、大きな接触面でもって、当接されている。
【0014】
リングシリンダー7は、常時、圧力でもって負荷され、従って、円錐ころ軸受1が、全圧延作業の間じゅう遊びが無く、且つロールに対して付勢されている。これに伴って圧力が無く弛緩されていないリングシリンダー7は、圧延力に依存する動力学的な制御状態を可能にする。このロール軸受けは、従って無振動であり、且つ、高い圧延速度のもとで高い軸受け耐用期間を保証する。このことは、圧延材の高い品質のもとで、同時に生産増大を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョック(4)を用いて、ロールスタンド内において配設されたロール(2)、特にバックアップロールの、先細りに形成された圧延ロールネック(3)の上で、
円錐形の座部を用いて固定された円錐ころ軸受(1)を、液圧力でもっての負荷によって予負荷するための方法において、
円錐ころ軸受(1)の軸受内側リング(18)、軸受ころ(17)、および軸受外側リング(13)が、圧延の間じゅう存在する圧力でもって負荷され、且つロールに対して付勢されることを特徴とする方法。
【請求項2】
円錐ころ軸受(1)は、予め調節された液圧的な圧力でもって付勢されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
円錐ころ軸受(1)は、圧延力に依存して制御された状態で付勢されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の方法を実施するための、
チョック(4)を用いて、ロールスタンド内において配設されたロール(2)、特にバックアップロールの、先細りに形成された圧延ロールネック(3)の上で、
円錐形の座部を用いて固定された円錐ころ軸受(1)を、液圧力でもっての負荷によって予負荷するための装置において、
リング状の圧力負荷装置(5)が、ロール端末ジャーナル(8)の上に配置されたスラスト軸受(9)を介してこのロール(2)に対して支持されており、円錐ころ軸受(1)の軸受外側リング(13)との当接状態でもって配設されており、且つ、圧力負荷の際に、チョック(4)を、この軸受外側リング(13)でもって、ロール胴(15)の方向に、または、このロール(2)を反対の方向に位置移動するように構成されている
ことを特徴とする装置。
【請求項5】
圧力負荷装置(5)は、多数の個別ピストン(6)を有するリングシリンダー(7)であることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
圧力負荷装置(5)はリングピストンであることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項7】
圧力負荷装置(5)およびスラスト軸受(9)は、チョック(4)内において配設されていることを特徴とする請求項4から6のいずれか一つに記載の装置。
【請求項8】
圧力負荷装置(5)と、円錐ころ軸受(1)の軸受外側リング(13)との間に、押圧リング(11)が配置されていることを特徴とする請求項4から7のいずれか一つに記載の装置。
【請求項9】
押圧リング(11)は、半径方向の内側カラー部(12)として、チョック(4)と共に1つの部材から成るように形成されていることを特徴とする請求項8に記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2007−513781(P2007−513781A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544243(P2006−544243)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013104
【国際公開番号】WO2005/061140
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・デマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【Fターム(参考)】