説明

圧接ジョイントコネクタ

【課題】任意な形態で電線同士を圧接ジョイント端子を用いて接続できるジョイントコネクタを提供する。
【解決手段】上面開口のハウジングに、2本の電線挿通溝を隔壁を挟んで平行に設けていると共に該隔壁の長さ方向の中心部を切り欠いて連通させ、この連通位置に引掛用ピンを突設し、前記電線挿通溝の長さ方向の一端側または両端から挿入する電線を前記引掛用ピンでUターンさせる構成とした一組の電線ガイドを設け、該電線ガイドを並列に複数組設け、前記各組の仕切壁および前記隔壁には前記引掛用ピンを挟む長さ方向の両側位置に圧接刃挿入用の切込を設け、該切込に圧接端子を押し込んで、前記並列する複数組の電線挿通溝に挿通する電線の絶縁被覆を前記圧接端子の圧接刃で切り込んで圧接接続する構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤハーネスに接続する圧接ジョイントコネクタに関し、特に、被覆電線の絶縁被覆を切断して芯線と接触させる圧接端子を用いて電線同士をジョイントする圧接ジョイントコネクタであって、多様な電線同士のジョイントに対応できる構成とするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の圧接ジョイントコネクタとして、本出願人は特開平9−213383号公報で図10(A)(B)(C)に示すように、コネクタハウジング100内に第1圧接端子101、第2圧接端子102を収容し、該コネクタハウジング100内に複数本の電線W1、W2、W3を平行に配線し、これら電線を第1、第2圧接端子101、102の刃部101a、102aに押し込んで、電線の絶縁被覆層を切断して芯線と接触させて電線W1、W2、W3をジョイントしている。
【0003】
前記のような従来の圧接ジョイントコネクタは、電線の絶縁被覆層を圧接端子で切断して圧接端子と電線の芯線とを接続する作業は、通常、多数の電線と圧接端子との接続を同時に行えるように自動化されている。よって、多品種小ロットのワイヤハーネスを製造する場合には設備費がコストアップする圧接ジョイントコネクタは不向きとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−213383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記圧接端子を用いた圧接ジョイントコネクタに対して、電線端末に圧着端子を圧着接続しておき、ジョイントコネクタ内に予め収容したジョイントバスバーの分岐させた端子を前記電線端末の圧着端子に嵌合接続するジョイントコネクタが汎用されている。該電線端末の圧着端子をジョイントバスバーの端子と嵌合させるジョイントコネクタでは、電線とジョイントコネクタとの接続を作業員の手作業で行えるため小ロットのワイヤハーネスの製造には適している。
【0006】
しかしながら、電線端末に圧着端子を接続する作業は、電線を配索してワイヤハーネスを組み立てるライン工程で行うことができず、電線端末に予め圧着端子を取り付けておく必要がある。また、該圧着端子と接続するジョイントバスバーをジョイントコネクタ内に予め収容固定しているため、該ジョイントバスバーによる接続形態が固定化され、多様な電線のジョイント形態に対応することができない。かつ、ジョイントバスバーの分岐させた端子の個数がジョイント接続する電線本数より少ない場合には、新規にジョイントコネクタを起工する必要があり、多い場合にはジョイントコネクタが接続する電線本数に対してジョイントコネクタが大型化し、配置スペースを取る問題がある。
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、電線に端子を予め取り付けておく必要がなく、ワイヤハーネスの組み立てラインで端子の接続および該端子による多様なジョイントに対応でき、かつ、作業員の手作業での圧接接続を可能として多品種小ロットのワイヤハーネスを安価かつ効率的に提供できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、上面開口のハウジングに、2本の電線挿通溝を隔壁を挟んで平行に設けていると共に該隔壁の長さ方向の中心部を切り欠いて連通させ、この連通位置に引掛用ピンを突設し、前記電線挿通溝の長さ方向の一端側または両端から挿入する電線を前記引掛用ピンでUターンさせる構成とした一組の電線ガイドを設け、該電線ガイドを並列に複数組設け、
前記各組の仕切壁および前記隔壁には前記引掛用ピンを挟む長さ方向の両側位置に圧接刃挿入用の切込を設け、該切込に圧接端子を押し込んで、前記並列する複数組の電線挿通溝に挿通する電線の絶縁被覆を前記圧接端子の圧接刃で切り込んで圧接接続する構成としている圧接ジョイントコネクタを提供している。
【0009】
前記本発明の圧接ジョイントコネクタは、電線を圧接端子を用いて接続するために、ワイヤハーネスの組立ライン上で各電線との接続と電線同士の接続を同時に行える。かつ、ハウジングに設けた電線ガイドに電線をUターンして安定して配線でき、このハウジング内に隣接する電線間に圧接端子を作業員が押し込んで圧接接続できる構成としているため、多品種小ロットのワイヤハーネスの製造工程に用いることができる。また、電線ガイドに配線する電線、該電線に接続する圧接端子の配置の変更調節を任意かつ容易に行えるため、このことも多品種小ロットのワイヤハーネスの製造に適している。
【0010】
前記圧接端子を保持する支持プレートの一端を前記ハウジングの一端に回転自在に連結して取り付け、かつ、前記圧接端子で電線を圧接した後に前記支持プレートに重ねた状態で閉鎖する蓋を設けている。
【0011】
このように、コネクタのハウジングに圧接端子を保持する支持プレートの一端を回転自在に取り付け、該支持プレートを回転させるだけで圧接端子で電線の絶縁被覆を切断して芯線と接触させて圧接できる構成としているため、圧接作業時の作業員の負担を低減できる。
【0012】
前記圧接端子として、圧接接続する電線本数に対応した個数の前記圧接刃を同一列に並列に設けた第1種圧接端子と、圧接接続する電線本数に対応した個数の前記圧接刃を同一列に並列に設けていると共に前記連通位置を越える連結部の両側に設けているコ型の第2種圧接端子の少なくともいずれか一方を用いている。
前記第1種圧接端子は同一列に2つの圧接刃を設け、第2種圧接端子は対向する両側にそれぞれ2つの圧接刃を設けている
【発明の効果】
【0013】
前記のように、本発明に係わる圧接ジョイントコネクタとしているため、電線に端子を予め接続しておく必要はなく、ワイヤハーネス組立ラインで電線と端子の接続および該端子を介して電線同士の接続を同時に行え、作業性を高めることができる。かつ、圧接端子を用いる接続としながら作業員が手作業で圧接接続作業ができる構成とし、かつ、多様な接続形態にできる構成としているため、多品種小ロットのワイヤハーネスの製造に適している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の圧接ジョイントコネクタを適用する自動車用ワイヤハーネスの概略全体図である。
【図2】前記圧接ジョイントコネクタを示し、(A)は圧接端子による接続前の断面図、(B)は圧接端子による接続後の断面図である。
【図3】前記圧接ジョイントコネクタの一部を断面とした概略平面図であり、(A)は電線および圧接端子の取付前の状態を示し、(B)は電線および圧接端子の取付後の状態を示す。
【図4】図2(B)のA部拡大図である。
【図5】前記圧接ジョイントコネクタ内に組みつける支持プレートに圧接端子を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図6】(A)(B)は前記圧接端子の斜視図である。
【図7】前記圧接端子による電線の圧接接続状態を示す図面である。
【図8】(A)は電線の斜視図、(B)は該電線を圧接端子で圧接接続している状態を示す図面である。
【図9】(A)〜(C)は他の圧接接続状態を示す概略図である。
【図10】(A)〜(C)は従来例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図8に実施形態を示す。
図1に示す圧接ジョイントコネクタ1(以下、コネクタ1と略称する)は、ワイヤハーネス・メーカにおいて自動車に配索するハーネス2に取り付けてワイヤハーネスとして組み立て、カーメーカにおいて自動車への配索時に追加のハーネス3、4をコネクタ1に接続している。
【0016】
コネクタ1は一方側からハーネス2の電線群2W(2Wー1〜2W−4)を挿入し、他方側からハーネス3の電線3W(3W−1、3W−2)とハーネス4の電線4W(4W−1、4W−2)を挿入し、これら電線を図7および図9(A)〜(C)に示す4パターンのうちから任意のパターンでジョイントできるようにしている。なお、該4つのパターンに限定されず、電線本数や圧接端子を変えることにより他の接続パターンとすることもできる。
【0017】
コネクタ1は、図2および図3に示すように、上面開口のハウジング5の一側壁5aの上端に、支持プレート6の一端を回転自在に軸支し、該支持プレート6に設けた切断ラインからなる差込隙6a、6bに、図5および図6(A)(B)に示す第1種圧接端子10および/または第2種圧接端子11を圧入保持している。ハウジング5の他側壁5bに蓋7をヒンジ8を介して回転自在に取り付け、支持プレート6をハウジング5の上面開口を閉鎖するように倒した後に、蓋7を支持プレート6を押し下げるように倒して重ねるようにしている。図4に示すように、蓋7の先端は前記一側壁5aの外面に重ねた状態で底壁5cに設けた係止段部5rにサイドロック7rをロック結合できるようにしている。
【0018】
ハウジング5には、図3に示すように、2本の電線挿通溝12(12Aと12B)を隔壁13を挟んで平行に設けると共に隔壁13の長さ方向の中心部に切り欠きを設けて連通部14を形成し、この連通部14に引掛用ピン15を突設して、一組の電線ガイド部20を形成している。ハウジング5内に電線ガイド部20を仕切壁16を挟んで4組を並列している。
【0019】
図3(B)に示すように、電線ガイド部20では、電線挿通溝12の長さ方向の一端側または両端から挿入する電線2Wと3W、4Wを引掛用ピン15に引っ掛けてUターンさせている。なお、必要に応じて、Uターンさせずに電線挿通溝12に一端から他端へと直進させることもできる。
【0020】
前記仕切壁16および前記隔壁13には引掛用ピン15を挟む長さ方向の両側位置に圧接刃挿入用の切込17、18を設けている。仕切壁16に設ける切込17は両面に開口した溝であり、該切込17と対向して設ける隔壁13の切込18は凹状としている。
【0021】
前記第1種圧接端子10は、図6(A)に示すように、導電性金属板からなる平板状の基板21に2つの圧接刃22、23を間隔をあけて設けている。圧接刃22、23はU字状に切り込んだ圧接スロット22a、23aの周縁に刃部22b、23bを設けている。該第1種圧接端子10は引掛用ピン15の一方側の圧接刃挿入用の切込17、18に押し込み、一方側から挿入する電線同士をジョイントするものとしている。また、第1種圧接端子10は支持プレート6の差込隙6aまたは6bのいずれかに差し込むものとしている。
【0022】
第2種圧接端子11は、図6(B)に示すように、導電性金属板からなるコ字状の基板の両側基板24、25に第1種圧接端子10と同様に2つの圧接刃26と27、28と29を設けている。圧接刃26、27、28、29はU字状に切り込んだ圧接スロット26a〜29aの周縁に刃部26b〜29bを設けている。
該第2種圧接端子11は引掛用ピン15の上方にコ字状の基板の連結部30を配置し、両側基板24、25は引掛用ピン15を挟む両側の圧接刃挿入用の切込17、18に押し込み、両側から挿入する電線同士をジョイントするものとしている。また、第2種圧接端子11は両側基板24、25を支持プレート6の差込隙6aと6bに差し込むものとしている。
【0023】
次に、前記コネクタ1を用いた電線のジョイント方法について説明する。
図3(B)および図7に示すように、ハウジング5の電線ガイド部20の電線挿通溝12Aと12Bの一端側から4本の電線2W−1〜2W−4を挿入し引掛用ピン15に引っ掛けてUターンさせ、ループ状にセットする。
また、電線挿通溝12Aと12Bの他端側から2本の電線3W(3W−1、3W−2)と2本の電線4W(4W−1、4W−2)を挿入し引掛用ピン15に引っ掛けてUターンさせ、ループ状にセットする。引掛用ピン15には電線2Wと3W、2Wと4Wの引っ掛け部分を重ねている。
【0024】
前記コネクタ1に挿入した8本の電線は、図7に示すように、4個の第1種圧接端子10と1つの第2種圧接端子11を用いて8本を1回路にジョイントしている。
即ち、支持プレート6の差込隙6aと6bの両側にそれぞれ2個の第1種圧接端子10を差し込み、該第1種圧接端子10で挟まれる中央部に第2種圧接端子11を配置し、その両側基板を差込隙6aと6bに差し込む。このように第1種および第2種圧接端子10、11を支持した支持プレート6を作業員が押し下げ、図8(A)(B)に示すように、各圧接刃で電線2W、3W、4Wの絶縁被覆hを切断して芯線cに接触させる。これにより第1種圧接端子10で電線2W−1と2W−2、2W−3と2W−4、3W−1と3W−2、4W−1と4W−2がジョイントされる。また、第2種圧接端子11で電線2W−2、2W−3、3W−2および4W−1がジョイントされるため、前記8本の全電線がジョイントされる。
このように支持プレート6を回転させて第1種、第2種圧接端子10、11で電線をジョイントした後に、蓋7を回転させて支持プレート6上に重ね、支持プレート6に下向きの押圧力を付加して電線と第1種、第2種圧接端子10、11との圧接接続状態を固定する。
【0025】
図9(A)(B)(C)は前記実施形態と異なる接続パターンを示している。
図9(A)では前記電線2W、3W、4Wは第1種圧接端子10のみを用いてジョイント接続している。
図9(B)では第2種圧接端子11のみを用いてジョイント接続している。
図9(C)では2つの第1種圧接端子10と1つの第2種圧接端子11を用いてジョイント接続している。
【0026】
さらに、コネクタでジョイント接続する電線本数は前記8本に限定されず、任意に変更できる。さらに、コネクタ1に設ける電線ガイド部20の並列する組を増減して、ジョイント接続する電線の形態を多様化してもよい。
【0027】
前記のように、本発明の圧接ジョイントコネクタでは、電線同士のジョイント接続形態を任意に変更することができ、かつ、ジョイントする電線本数が増減してもコネクタハウジングを共用化できる。また、圧接端子を支持プレートに差し込むだけで支持し、該支持プレートを片持ち回転機構としているため、作業員が支持プレートを回転させて押し下げるだけで、圧接端子に押し下げ力を付加して電線に圧接接続させることができる。即ち、ワイヤハーネスの組立工程のインラインで作業員がワンタッチ手圧により圧接接続できる。このように、簡単に電線同士のジョイント接続を行うことができるため、ジョイントコネクタの少極小型化ができ、その結果、配置位置の制約が緩和されると共に、ジョイントコネクタを分散配置して電線長さを削減することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 圧接ジョイントコネクタ
2、3、4 ハーネス
2W、3W、4W 電線
5 ハウジング
6 支持プレート
7 蓋
10 第1種圧接端子
11 第2種圧接端子
12(12A、12B) 電線挿通溝
13 隔壁
14 連通部
15 引掛用ピン
16 仕切壁
17、18 切込
20 電線ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面開口のハウジングに、2本の電線挿通溝を隔壁を挟んで平行に設けていると共に該隔壁の長さ方向の中心部を切り欠いて連通させ、この連通位置に引掛用ピンを突設し、前記電線挿通溝の長さ方向の一端側または両端から挿入する電線を前記引掛用ピンでUターンさせる構成とした一組の電線ガイドを設け、該電線ガイドを並列に複数組設け、
前記各組の仕切壁および前記隔壁には前記引掛用ピンを挟む長さ方向の両側位置に圧接刃挿入用の切込を設け、該切込に圧接端子を押し込んで、前記並列する複数組の電線挿通溝に挿通する電線の絶縁被覆を前記圧接端子の圧接刃で切り込んで圧接接続する構成としている圧接ジョイントコネクタ。
【請求項2】
前記圧接端子を保持する支持プレートの一端を前記ハウジングの一端に回転自在に連結して取り付け、かつ、前記圧接端子で電線を圧接した後に前記支持プレートに重ねた状態で閉鎖する蓋を設けている請求項1に記載の圧接ジョイントコネクタ。
【請求項3】
前記圧接端子として、圧接接続する電線本数に対応した個数の前記圧接刃を同一列に並列に設けた第1種圧接端子と、圧接接続する電線本数に対応した個数の前記圧接刃を同一列に並列に設けていると共に前記連通位置を越える連結部の両側に設けているコ型の第2種圧接端子の少なくともいずれか一方を用いている請求項1または請求項2に記載の圧接ジョイントコネクタ。
【請求項4】
前記第1種圧接端子は平板からなる基板に2つの圧接刃を同一列で設け、第2種圧接端子は対向する両側にそれぞれ2つの圧接刃を設けている請求項3に記載の圧接ジョイントコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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