圧接型の電気コネクタ及びその製造方法
【課題】 電気的接合物と被電気的接合物との接続を安定化させ、組み込み作業性の向上が図れる圧接型の電気コネクタ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 電気コネクタ17を、絶縁性発泡エラストマー15と、断面略U字形の絶縁性ゴムシート2Aと、絶縁性ゴムシート2Aに略U字形に接着固定され、絶縁性発泡エラストマー15の一端面方向から他端面方向に等ピッチで並設される複数の導電細線3と、絶縁性発泡エラストマー15の他側面に設けられる高硬度の絶縁保護ゴムシート11とから構成する。そして、絶縁性ゴムシート2Aの表面における複数の導電細線3と裏面における複数の導電細線3のいずれか一方を電子回路基板に、他方を被電子回路基板にそれぞれ接触可能とし、絶縁性ゴムシート2Aの一側面における複数の導電細線3に高硬度で絶縁性の変形規制ゴムシート14を接着固定する。
【解決手段】 電気コネクタ17を、絶縁性発泡エラストマー15と、断面略U字形の絶縁性ゴムシート2Aと、絶縁性ゴムシート2Aに略U字形に接着固定され、絶縁性発泡エラストマー15の一端面方向から他端面方向に等ピッチで並設される複数の導電細線3と、絶縁性発泡エラストマー15の他側面に設けられる高硬度の絶縁保護ゴムシート11とから構成する。そして、絶縁性ゴムシート2Aの表面における複数の導電細線3と裏面における複数の導電細線3のいずれか一方を電子回路基板に、他方を被電子回路基板にそれぞれ接触可能とし、絶縁性ゴムシート2Aの一側面における複数の導電細線3に高硬度で絶縁性の変形規制ゴムシート14を接着固定する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶ディスプレイと回路基板との接続、あるいは回路基板同士の接続等に使用される圧接型の電気コネクタ及びその製造方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】圧接型の電気コネクタには様々な種類があるが、近年、液晶ディスプレイと電子回路基板との接続、あるいは電子回路基板同士の接続にU字形の金属線コネクタが使用されている。このU字形の金属線コネクタは、図12に示すように、スポンジシリコーンゴム原料を用いて断面略半小判形のブロックに成形される絶縁性発泡エラストマー15と、この絶縁性発泡エラストマー15の周面の表面、湾曲一側面及び裏面に覆着される断面略U字形の絶縁性ゴムシート2Aと、この絶縁性ゴムシート2Aの表面にU字形に接着固定され、絶縁性発泡エラストマー15の一端面方向から他端面方向に等ピッチで平行に並設される複数の導電細線3とを備えている。
【0003】このように構成されたU字形の金属線コネクタは、図示しない電気的接合物である電子回路基板の電極と図示しない被電気的接合物である被電子回路基板の電極との間に圧接挟持され、電子回路基板が圧下押圧されることにより、弾性変形して電子回路基板と被電子回路基板とを複数の導電細線3で電気的に、かつソフトに導通させる。
【0004】なお、この種の電気コネクタに関する先行技術文献として、特開昭9−115577号、特公昭7−105174号公報及び特許第2796872号等があげられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来における圧接型の電気コネクタは、以上のように構成され、導電細線3の配列ピッチが50μm〜100μmときわめて狭く、各導電細線3の径も30μm〜40μmときわめて小さいので、僅かな力で圧下押圧しても導電細線3が簡単に変形してしまい、携帯電話等の製品の不良率が高くなるという問題があった。さらに、小さな力を作用させるだけで電気コネクタ17の表面が容易に変形するので、電子回路基板と被電子回路基板との接続が実に不安定となり、しかも、組み込み作業性に欠けるという問題もあった。
【0006】本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、導電線条材や電気コネクタの表面が僅かな力で簡単に変形して製品の不良率が高くなるのを防止し、電気的接合物と被電気的接合物との接続を安定化させ、しかも、組み込み作業性の向上を図ることのできる圧接型の電気コネクタ及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明においては、上記課題を達成するため、電気的接合物と被電気的接合物との間に電気コネクタを挟み、該電気的接合物と該被電気的接合物とを導通させるものであって、上記電気コネクタは、絶縁性発泡エラストマーと、この絶縁性発泡エラストマーの表面、一側面及び裏面を被覆するとともに、絶縁性発泡エラストマーの両端面及び他側面を露出させる断面略U字形の絶縁性ゴムシートと、この絶縁性ゴムシートに略U字形に設けられ、上記絶縁性発泡エラストマーの一端面方向から他端面方向に略等ピッチで並べられる複数の導電線条材と、該絶縁性発泡エラストマーの他側面に設けられる高硬度の絶縁保護ゴムシートとを含み、上記絶縁性ゴムシートの表面における複数の導電線条材と裏面における複数の導電線条材のいずれか一方を上記電気的接合物に接触可能とし、かつ他方を上記被電気的接合物に接触可能とし、上記絶縁性ゴムシートの一側面における複数の導電線条材に高硬度で絶縁性の変形規制ゴムシートを設けたことを特徴としている。
【0008】また、請求項2記載の発明においては、上記課題を達成するため、相互に平行な複数の導電線条材を並べ備えた絶縁性ゴムシートと、基材シートに未加硫で高硬度の絶縁性の変形規制ゴムシートが設けられたシート積層体と、断面略U字形の成形空間を有する金型と、絶縁性発泡エラストマー原料に高硬度の絶縁保護ゴムシートが設けられた積層発泡体とを用い、電気的接合物と被電気的接合物との間に挟まれてこれら電気的接合物と被電気的接合物とを上記複数の導電線条材で導通させる圧接型の電気コネクタを製造する方法であって、上記金型の成形空間に上記シート積層体を収容するとともに、上記複数の導電線条材を外側に露出させた上記絶縁性ゴムシートを断面略U字形に屈曲して収容し、上記シート積層体の変形規制ゴムシートに該絶縁性ゴムシートの底部における複数の導電線条材を接触させ、該絶縁性ゴムシート内に積層発泡体をインサートしてその絶縁保護ゴムシートを該絶縁性ゴムシートの開口方向に向ける工程と、上記金型を型締めして加圧加熱し、上記シート積層体の変形規制ゴムシートと上記絶縁性ゴムシートの底部における複数の導電線条材とを接着するとともに、上記積層発泡体の絶縁性発泡エラストマー原料を発泡させて絶縁性発泡エラストマーを形成し、上記絶縁性ゴムシート及び該絶縁性発泡エラストマー、並びに該絶縁性発泡エラストマー及び上記絶縁保護ゴムシートを一体化して上記変形規制ゴムシートと該絶縁保護ゴムシートとをそれぞれ露出させた電気コネクタ中間体を成形する工程と、上記金型を型開きし、上記電気コネクタ中間体を取り出して上記シート積層体の基材シートを除去し、この電気コネクタ中間体を所定の長さに分割して電気コネクタを得る工程とを含んでなることを特徴としている。
【0009】ここで、特許請求の範囲における電気的接合物と被電気的接合物には、液晶ディスプレイ(COG、TAB)、回路基板、電子回路基板、プリント基板、又はビルドアップ配線板に代表される各種の電気電子部品が含まれる。また、絶縁性発泡エラストマーとしては、各種エラストマー原料、具体的にはブタジエンースチレン、ブタジエンーアクリロニトリル、ブタジエンーイソブチレン等のブタジエン系共重合体、クロロプレン重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、又はシリコーンゴム等があげられる。これらの中でも、エラストマー原料として耐熱性、耐寒性、耐侯性及び電気絶縁性等に優れ、無毒でもあるスポンジシリコーンゴムの使用が好ましい。また、略U字形には、C字形、U字形、コ字形、又はおおよそこれらに類似する形状が含まれる。
【0010】絶縁性ゴムシートとしては、例えはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、若しくはポリエチレンニトリル等のようなポリエステルフィルムやポリイミドフィルム等のフィルム上に、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、又はウレタンゴム等から選択したゴム硬度20°H〜60°Hのゴム原料をトッピング法等の一般的な方法により厚さ50〜200μm程度に塗布した絶縁性ゴムシートが使用される。この厚さのバラツキは±5μm以下、より好ましくは0μm〜3μmが良い。これは、厚さのバラツキ(Rmax)が10μmを超えると、導電線条材の配列ピッチが乱れやすくなるためである。
【0011】絶縁性ゴムシートのゴム硬度を20°H〜60°H、好ましくは30°H〜50°Hとするのは、20°Hより小では導電線条材の配列時に未硬化のためゴム原料がだれてしまい、導電線条材の配列ピッチが乱れるからである。また、60°Hより大でも導電線条材の配列ピッチが同様に乱れるからである。絶縁性ゴムシートを得るためには、2〜3本のカレンダーロールで混練したゴム原料を、PET等の非収縮性(5%以下)の基材シート上に分出しするのが良い。ゴム原料としては、ゴム弾性、耐熱性、耐寒性、耐環境特性及び機械特性等に優れるシリコーンゴムが最適である。
【0012】導電線条材としては、金、金合金、白金、銅、アルミニウム、アルミニウムーケイ素合金、真鍮、洋白、リン青銅、ベリリウム銅、ニッケル、モリブテン、タングステン、若しくはステンレス等からなる金属細線、あるいはこれらに金、金合金、若しくはロジウム等の導電性及び耐環境特性に優れる材料をめっき加工した導電線条材を便用することができる。これらの中でも、優れた導電性と耐環境特性、低い接触特性を有する金属線や金めっき金属細線の使用が良い。
【0013】各導電線条材の太さは、3〜500μm、望ましくは10〜100μm、より望ましくは15〜50μmの範囲が良い。これは、細すぎると配線時に断線しやすくなり、逆に太すぎると、細かい配線ピッチが得られなくなり、しかも、屈曲収容時に曲げ弾性が必要以上に強くなり、金型の成形空間に沿って屈曲させ難いからである。また、各導電線条材は、未加硫の絶縁性ゴムシート上に30〜80%、好ましくは40〜60%が埋設される太さが良い。
【0014】また、導電線条材には導電細線の他に金属スリット箔が含まれる。この金属スリット箔としては、鉄、ステンレス、銅、銅チタン合金等からなる金属スリット箔、あるいはこれらに金、金合金、若しくはロジウム等の導電性及び耐環境特性に優れる材料をめっき加工した金属スリット箔を便用することができる。但し、優れた導電性と耐環境特性、低い接触特性を有する金属線、金めっき金属スリット箔が良い。金属スリット箔は、例えば厚さ20μm、ピッチ70μm、金属導体部分の幅30μmのものが使用される。
【0015】絶縁保護ゴムシート及び変形規制ゴムシートとしては、例えはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、若しくはポリエチレンニトリル等のようなポリエステルフィルムやポリイミドフィルム等のフィルム上に、クロロブレンゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、又はウレタンゴム等から選択したゴム硬度の高いゴム原料を一般的な方法であるトツピング法により塗布したゴムシートが使用される。絶縁保護ゴムシート及び変形規制ゴムシートを得るためには、2〜3本のカレンダーロールで混練したゴム原料を、PET等の非収縮性(5%以下)の基材シート上に分出しするのが良い。
【0016】ゴム原料としては、耐環境特性、機械特性、弾性、耐熱性、耐寒性、耐候性、耐湿性、耐薬品性、耐老化性及び電気絶縁性等に優れるシリコーンゴムが好ましい。また、厚みは、電気コネクタを必要以上に大きくしない50μm〜500μm、より好ましくは80μm〜150μmの範囲とするのが良い。さらに、ゴム硬度は、60°H以上が望ましく、より望ましくは80°H以上が好適である。このようなゴム硬度の高い絶縁保護ゴムシートにより、電気コネクタを用いた接続時において低荷重、低圧縮量の接続が可能となり、接続の信頼性を向上させることができる。
【0017】請求項1又は2記載の発明によれば、電気的接合物と被電気的接合物との間に電気コネクタを介在させ、絶縁性ゴムシートの表面における複数の導電線条材と裏面における複数の導電線条材の一方を電気的接合物に接触させるとともに、他方を被電気的接合物に接触させ、その後、電気的接合物と被電気的接合物とを接近させれば、電気コネクタが弾性変形して電気的接合物と被電気的接合物とを複数の導電線条材で電気的に導通させる。この際、電気的接合物と被電気的接合物の導通接続に関与しない一側面の少なくとも一部に設けられた変形規制ゴムシートが導電線条材や電気コネクタの不要な変形を規制する。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではない。本実施形態における圧接型の電気コネクタは、図1に示すように、図示しない電子回路基板と被電子回路基板とを導通させる電気コネクタ17を、絶縁性発泡エラストマー15と、この絶縁性発泡エラストマー15の周面に被覆成形される断面略U字形の絶縁性ゴムシート2Aと、この絶縁性ゴムシート2Aに並設される複数の導電細線3と、絶縁性発泡エラストマー15の他側面に埋設される絶縁保護ゴムシート11と、絶縁性ゴムシート2Aの一側面における複数の導電細線3に接着固定される変形規制ゴムシート14とから構成している。
【0019】絶縁性発泡エラストマー15は、弾性、耐熱性、耐寒性、耐候性、耐湿性、耐薬品性、耐老化性及び電気絶縁性等に優れるスポンジシリコーンゴム原料12(発泡倍率1.3〜1.7倍)を用いて略棒形に成形されている。また、絶縁性ゴムシート2Aは、絶縁性発泡エラストマー15の周面の表面、一側面及び裏面に巻装して被覆成形され、絶縁性発泡エラストマー15の両端面15a及び他側面をそれぞれ絶縁性の露出面とするよう作用する。露出面である両端面15aの寸法は、接続される電極幅やピッチ等にもよるが、0.2〜0.3mm程度である。これだけの寸法があれば、電気コネクタ17が必要以上に大きくなることがなく、しかも、接続される回路(電極形状)の設計等にも悪影響を及ぼすこともない。
【0020】複数の導電細線3は、絶縁性発泡エラストマー15の一端面方向から他端面方向に等ピッチで平行に並設されている。各導電細線3は、金めっきされた真鍮線からなり、絶縁性発泡エラストマー15を挟持するよう絶縁性ゴムシート2Aの表面、一側面及び裏面に略U字形に屈曲して接着固定されている。絶縁性ゴムシート2Aの表面における各導電細線3は電子回路基板の電極に接触し、裏面における各導電細線3は被電子回路基板の電極に接触するよう機能する。
【0021】絶縁保護ゴムシート11は、弾性、耐熱性、耐寒性、耐候性、耐湿性、耐薬品性、耐老化性及び電気絶縁性等に優れる高硬度のシリコーンゴムを使用して成形されている。この絶縁保護ゴムシート11は、0.05mm〜0.5mm程度の厚さを有する平坦な長方形の板形に成形され、絶縁性発泡エラストマー15の周面の他側面に同一平面で埋設成形されるとともに、表面が露出している。さらに、変形規制ゴムシート14は、高硬度のシリコーンゴムを使用して0.05mm〜0.5mm程度の厚さを有する平坦な長方形の板形に成形され、電子回路基板と被電子回路基板の導通接続に関与せずに電極と接触しない部分、具体的には、絶縁性ゴムシート2Aの一側面における複数の導電細線3に横長の状態で接着固定されている。
【0022】上記構成において、上下一対の電子回路基板と被電子回路基板との間に電気コネクタ17を圧接挟持させ、電子回路基板の電極に絶縁性ゴムシート2Aの表面における複数の導電細線3を接触させるとともに、被電子回路基板の電極に絶縁性ゴムシート2Aの裏面における複数の導電細線3を接触させ、その後、電子回路基板を圧下押圧すれば、電気コネクタ17が弾性変形して電子回路基板と被電子回路基板とを複数の導電細線3で電気的に、かつソフトに導通させる。
【0023】次に、圧接型の電気コネクタの製造方法を説明する。本実施形態の電気コネクタ17を製造するには、相互に平行な複数の導電線条材を並べ備えた絶縁性ゴムシート2Aと、基材シート5上に未加硫で高硬度の絶縁性のシリコーンゴム原料6が積層されたシート積層体4と、断面略U字形の成形空間(キャビティ)9を有する金型7と、スポンジシリコーンゴム原料12上に高硬度の絶縁保護ゴムシート11が積層された積層発泡体10とを用意する。
【0024】最初に絶縁性ゴムシート2Aを製造する。絶縁性ゴムシート2Aを製造するには、先ず、PET製の長い基材シート1にシリコーンゴム原料2を図示しないカレンダーロールを使用してシーティングし、図2に示す一応の絶縁性ゴムシート2Aを形成する。シリコーンゴム原料2としては、所定のシリコーンゴムコンパウンド、加硫剤及びシランカップリング剤を添加配合した原料を使用する。
【0025】次いで、絶縁性ゴムシート2Aを所定の長さに切断し、この絶縁性ゴムシート2Aを図示しない回転ドラムの周面に固定してシリコーンゴム原料2を表面側に位置させ、回転ドラムを回転させるとともに、シリコーンゴム原料2上に導電細線3を図示しない送り出し装置の供給部から供給する。この際、送り出し装置の供給部を回転ドラムの軸方向に徐々に移動させ、絶縁性ゴムシート2Aの全表面に複数の導電細線3を平行に配列する。複数の導電細線3を配列が終了したら、回転ドラムを停止させて取り外し、複数の導電細線3が配列された図3の絶縁性ゴムシート2A′を形成する。
【0026】次いで、絶縁性ゴムシート2A′をオーブン中で所定時間加熱して1次加硫を行い、基材シート1を剥離除去し、残部からなる絶縁性ゴムシート2A″をオーブン中で所定時間加熱して2次加硫を行い、図4の絶縁性ゴムシート2A″を形成する。そして、絶縁性ゴムシート2A″をその導電細線3を横断する方向に適宜切断すれば、絶縁性ゴムシート2A'''を製造することができる(図5参照)。
【0027】次にシート積層体4を製造する。シート積層体4を製造するには、PET製の長い基材シート5にシリコーンゴム原料6を図示しないカレンダーロールを使用してシーティングした後、所定の大きさに切断すれば、図6に示すシート積層体4を製造することができる。シリコーンゴム原料6としては、所定のシリコーンゴムコンパウンド及び加硫剤を添加配合した原料を使用する。
【0028】絶縁性ゴムシート2A'''とシート積層体4とを製造したら、図7に示すように、金型7を構成する成形用下型8の成形空間9の底部にシート積層体4を収容してシリコーンゴム原料6を上向きに配置するとともに、複数の導電細線3を外側に露出させた絶縁性ゴムシート2A'''を断面略U字形に湾曲させて収容密嵌する。この際、シート積層体4のシリコーンゴム原料6に複数の導電細線3を接触させ、成形空間9の成形面に絶縁性ゴムシート2A'''の複数の導電細線3を対向させ、かつ密接させる。
【0029】次に積層発泡体10を製造する。積層発泡体10を製造するには、絶縁保護ゴムシート11上にスポンジシリコーンゴム原料12を図示しないカレンンダーロールで所定の厚さにシーティングし、所定の幅、長さに切断すれば良い(図8参照)。絶縁保護ゴムシート11は、シリコーンゴムコンパウンドに所定の加硫剤を添加配合してシリコーンゴム原料12を製造し、このシリコーンゴム原料12をカレンダーロールで所定の厚さに図示しないPET製の基材シートにシーティングし、オーブン中で所定時間加熱して加硫することにより成形される。スポンジシリコーンゴム原料12としては、シリコーンゴムコンパウンドに所定の加硫剤や発泡剤を添加配合した原料を使用する。
【0030】こうして積層発泡体10を製造したら、この積層発泡体10を上下逆にして絶縁性ゴムシート2A'''の内底に隙間を介しインサートする。この際、積層発泡体10の絶縁保護ゴムシート11は、絶縁性ゴムシート2A'''の開口方向(図9の上方向)に指向する。
【0031】絶縁性ゴムシート2A'''内に積層発泡体10を配置したら、同図に示すように、成形用下型8に成形用上型13を型締めして加圧加熱し、シリコーンゴム原料6と複数の導電細線3とを接着し、シリコーンゴム原料6を変形規制ゴムシート14に形成する。また、積層発泡体10のスポンジシリコーンゴム原料12を絶縁性発泡エラストマー15に発泡成形し、絶縁性ゴムシート2A'''の内周面及び絶縁性発泡エラストマー15、並びに絶縁性発泡エラストマー15及び絶縁保護ゴムシート11を一体成形する。この一体成形により、両端面15aが絶縁性の露出面に形成され、変形規制ゴムシート14が露出するとともに、絶縁保護ゴムシート11が絶縁性発泡エラストマー15の他側面に同一平面で埋設され、かつ一部が露出した電気コネクタ中間体16が成形される。
【0032】そして、金型7を型開きし、成形した電気コネクタ中間体16を取り出してシート積層体4の基材シート5を剥離除去し、この電気コネクタ中間体16に所定の条件でポストキュア(二次加硫)を施し、長棒形の電気コネクタ中間体16を形成する(図10参照)。そしてその後、この電気コネクタ中間体16を長手方向にカッタ等で所定の大きさ、長さで切断すれば、圧接型の電気コネクタ17を単数複数製造することができる(図11R>1参照)。
【0033】上記構成によれば、電子回路基板と被電子回路基板の導通接続に関与しない箇所に接着固定された変形規制ゴムシート14が導電細線3や電気コネクタ17の撓みや変形を制限するので、僅かな力で圧下押圧しても導電細線3が簡単に変形することがなく、携帯電話等の製品の不良率を著しく抑制防止することができる。また、小さな力を作用させても電気コネクタ17の表面が容易に変形することがないので、電子回路基板と被電子回路基板との接続が実に安定し、しかも、組み込み作業性やハンドリング性の大幅な向上が大いに期待できる。また、変形規制ゴムシート14が0.05mm〜0.5mm程度の厚さに成形されているので、電気コネクタ17が大型化したり、電子回路基板や被電子回路基板の電極設計になんら悪影響を及ぼすことがない。
【0034】また、フィラーを多く含む平面状の絶縁保護ゴムシート11が絶縁性発泡エラストマー15の周面の他側面、換言すれば、複数の導電細線3の非存在箇所に同一平面で埋設され、一部が露出しているので、絶縁保護ゴムシート11の表面の粗さにより、タック効果が弱まる。すなわち、スリップ性が著しく向上するので、ベタ付きにくく、例え電気コネクタ17の高さが高い場合でも、組み込み作業性を大幅に向上させることができるとともに、電子回路基板や被電子回路基板との接続が実に安定化し、確実な導通が大いに期待できる。また、初期コンタクト性を大幅に改善することが可能になる。したがって、電子回路基板と被電子回路基板との未接続を有効に防止し、品質の安定化を図ることができる。
【0035】さらに、タック効果が弱まるので、電気コネクタ17の部分的な変形を実に有効に防止することが可能になる。さらにまた、絶縁性発泡エラストマー15の両端面15aがそれぞれ絶縁性の露出面に形成されているので、導電性のバリの発生することがなく、絶縁状態を常に維持することができる。
【0036】なお、上記実施形態では断面略方形の絶縁性発泡エラストマー15を示したが、なんらこれに限定されるものではなく、断面略半小判形等の類似形の絶縁性発泡エラストマー15でも良い。また、絶縁性発泡エラストマー15の周面の他側面から絶縁保護ゴムシート11を僅かに突出させた状態で露出させることもできる。また、変形規制ゴムシート14の数、大きさ、又は形状等は、適宜増減変更することが可能である。また、回転ドラムを一定速度で徐々に移動させる等の手段により、絶縁性ゴムシート2Aの表面に複数の導電細線3を平行に配列しても良い。さらに、成形前に積層発泡体10を予め製造しておくことも可能である。
【0037】
【実施例】実施例以下、図2ないし図11の製造工程図に基づいて電気コネクタ17の製造方法を詳説する。先ず、非伸縮性基材である厚さ50μm、幅350mmのPETシートからなる長尺の基材シート1を用意した。また、シリコーンゴムコンパウンドKE−153U(信越化学工業製、商品名)ゴム硬度50°Hに、加硫剤C−19A、B(同前)及びシランカップリング剤KBM403(同前)を添加配合してシリコーンゴム原料2を製造した。こうして準備が完了した後、基材シート1上にシリコーンゴム原料2を厚さ100μm、幅300mmとなるよう図示しないカレンダーロールでシーティングし、絶縁性ゴムシート2Aを形成した。
【0038】次いで、絶縁性ゴムシート2Aを長さ600mmに切断し、これを外周600mmの回転ドラムの周面上に絶縁性ゴムシート2Aが外側となるように固定し、絶縁性ゴムシート2A上に、金めっきを施した線径40μmの真鍮線からなる導電細線3を送り出し装置から回転している回転ドラム上に供給した。この際、導電細線3の供給部を回転ドラムの軸方向に1回転当たり100μm移動させながらピッチ100μmで導電細線3を軸方向に10mm配列した後、回転ドラムを1回転させて導電細線3の供給部を回転ドラムの軸方向に0.4mm移動し、その後引き続きピッチ100μmで導電細線3を軸方向に10mm配列した。
【0039】この操作を繰り返して絶縁性ゴムシート2Aの全面に複数の導電細線3を配列し、この配列が終了した時点で回転ドラムを停止させて回転ドラムから取り外し、上記0.4mm移動箇所の導電細線3を除去し、図3R>3に示す絶縁性ゴムシート2A′を形成した。
【0040】次いで、絶縁性ゴムシート2A′を120℃のオーブン中で30分間加熱して1次加硫を行い、基材シート1を剥離除去し、195℃のオーブン中で4時間加熱して2次加硫を行い、図4に示す絶縁性ゴムシート2A″を得た。こうして図4の絶縁性ゴムシート2A″を形成したら、絶縁性ゴムシート2A″を導電細線3を横断する方向に切断して幅8.0mm、長さ300mmの絶縁性ゴムシート2A'''を製造した(図5参照)。
【0041】次いで、非伸縮性基材である厚さ50μm、幅350mmのPETシートからなる長尺の基材シート5を用意した。また、シリコーンゴムコンパウンドKE−981(信越化学工業製、商品名)ゴム硬度80°Hに、加硫剤C−19A、B(同前)を添加配合してシリコーンゴム原料6を製造した。こうして準備が完了した後、基材シート5上にシリコーンゴム原料6を幅4.0mm、長さ300mmとなるよう図示しないカレンダーロールでシーティングし、シート積層体4を形成した(図6参照)。
【0042】次いで、図7に示すように成形空間9がU字形の成形用下型8内にシート積層体4を収容配置するとともに、絶縁性ゴムシート2A'''の導電細線3側を成形面に向けてセットした。また、シリコーンゴムコンパウンドKE−981(信越化学工業製、商品名)に、加硫剤C−19A、C−19B(同前)を添加配合してシリコーンゴム原料を製造し、このシリコーンゴム原料をカレンダーロールでシーティングし、300℃のオーブンで1分間加熱加硫して厚さ10μmの絶縁保護ゴムシート11を成形した。
【0043】また、シリコーンゴムコンパウンドKE−151U(信越化学工業製、商品名)に、加硫剤C−1、C−3(同前)及び発泡剤2,2−アゾビスイソブチロニトリルを添加配合してスポンジシリコーンゴム原料12を製造した。こうして準備が完了したら、絶縁保護ゴムシート11上にスポンジシリコーンゴム原料12を所定の厚さでシーティングして積層体を製造し、この積層体を所定の幅、長さに切断して積層発泡体10を製造した(図8参照)。そして、この積層発泡体10を図9に示すように、絶縁性ゴムシート2A'''の内底上に載置した。
【0044】次いで、成形用下型8上に成形用上型13を被せて型締めし、10kg/cm2の加圧下において175℃、5分間加熱し、スポンジシリコーンゴム原料12を発泡成形して絶縁性発泡エラストマー15とした(図10R>0参照)。
【0045】次いで、型開きした金型7から成形した電気コネクタ中間体16を取り出し、シート積層体4の基材シート5を剥離し、200℃で1時間のポストキュアを行い、図10に示す長尺の電気コネクタ中間体16を得た。そしてその後、この電気コネクタ中間体16を、導電細線3が配設されておらず、絶縁性ゴムシート2A'''が露出する上記0.4mm移動箇所で切断(好ましくは、移動箇所の中央部における切断)して図12に示す電気コネクタ17を製造した。
【0046】得られた電気コネクタ17は、変形規制ゴムシート14の存在箇所に僅かな力を加えても、全く変形しなかった。また、電気コネクタ17の高さが高い場合でも作業性が実に良好であった。さらに、電気コネクタ17と電子回路基板及び被電子回路基板との所定の圧接が得られないため、液晶ディスプレイと回路基板間又は電子回路基板間の接続において導通しないということが全くなく、回路の未接続が発生することもなかった。
【0047】比較例絶縁保護ゴムシート11及び変形規制ゴムシート14を有しない図12の電気コネクタ17の場合、液晶ディスプレイと回路基板間、又は電子回路基板間の接続に関与しない導電細線3の一側面に僅かな力を加えても、電気コネクタ17が簡単に変形し、回路の未接続が多発した。また、電気コネクタ17の高さが高い場合には作業性が悪化した。さらに、電気コネクタ17と電子回路基板との所定の圧接が得られないため、液晶ディスプレイと回路基板間、又は電子回路基板間の接続において全く導通しないことが多く、回路の未接続が発生した。
【0048】
【発明の効果】以上のように請求項1又は2記載の発明によれば、導電線条材や電気コネクタの表面が僅かな力で簡単に変形するのを防止することができ、これを通じて製品の不良率を低減することができるという効果がある。さらに、電気的接合物と被電気的接合物との接続を安定化させることができ、組み込み作業性等の向上も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る圧接型の電気コネクタの実施形態を示す全体斜視説明図である。
【図2】本発明に係る圧接型の電気コネクタの製造方法の実施形態における絶縁性ゴムシートを示す斜視説明図である。
【図3】図2の絶縁性ゴムシート上に複数の導電細線を並設した状態を示す斜視説明図である。
【図4】図3の絶縁性ゴムシートに1次加硫、基材シートの除去及び2次加硫等を施した状態を示す斜視説明図である。
【図5】図4の絶縁性ゴムシートを切断して最終的な絶縁性ゴムシートを製造した状態を示す斜視説明図である。
【図6】本発明に係る圧接型の電気コネクタの製造方法の実施形態におけるシート積層体を示す斜視説明図である。
【図7】本発明に係る圧接型の電気コネクタの製造方法の実施形態における金型の成形空間にシート積層体と絶縁性ゴムシートとを順次収容した状態を示す断面説明図である。
【図8】本発明に係る圧接型の電気コネクタの製造方法の実施形態における積層発泡体を示す斜視説明図である。
【図9】図7の絶縁性ゴムシートに積層発泡体をインサートした状態を示す断面説明図である。
【図10】本発明に係る圧接型の電気コネクタの製造方法の実施形態における電気コネクタ中間体を示す斜視説明図である。
【図11】図10の電気コネクタ中間体を切断して電気コネクタを製造した状態を示す斜視説明図である。
【図12】従来の圧接型の電気コネクタを示す斜視説明図である。
【符号の説明】
1 基材シート
2 シリコーンゴム原料
2A 絶縁性ゴムシート
2A′ 絶縁性ゴムシート
2A″ 絶縁性ゴムシート
2A''' 絶縁性ゴムシート
3 導電細線(導電線条材)
4 シート積層体
5 基材シート
6 シリコーンゴム原料
7 金型
9 成形空間
10 積層発泡体
11 絶縁保護ゴムシート
12 スポンジシリコーンゴム原料
14 変形規制ゴムシート
15 絶縁性発泡エラストマー
15a 両端面
16 電気コネクタ中間体
17 電気コネクタ
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶ディスプレイと回路基板との接続、あるいは回路基板同士の接続等に使用される圧接型の電気コネクタ及びその製造方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】圧接型の電気コネクタには様々な種類があるが、近年、液晶ディスプレイと電子回路基板との接続、あるいは電子回路基板同士の接続にU字形の金属線コネクタが使用されている。このU字形の金属線コネクタは、図12に示すように、スポンジシリコーンゴム原料を用いて断面略半小判形のブロックに成形される絶縁性発泡エラストマー15と、この絶縁性発泡エラストマー15の周面の表面、湾曲一側面及び裏面に覆着される断面略U字形の絶縁性ゴムシート2Aと、この絶縁性ゴムシート2Aの表面にU字形に接着固定され、絶縁性発泡エラストマー15の一端面方向から他端面方向に等ピッチで平行に並設される複数の導電細線3とを備えている。
【0003】このように構成されたU字形の金属線コネクタは、図示しない電気的接合物である電子回路基板の電極と図示しない被電気的接合物である被電子回路基板の電極との間に圧接挟持され、電子回路基板が圧下押圧されることにより、弾性変形して電子回路基板と被電子回路基板とを複数の導電細線3で電気的に、かつソフトに導通させる。
【0004】なお、この種の電気コネクタに関する先行技術文献として、特開昭9−115577号、特公昭7−105174号公報及び特許第2796872号等があげられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来における圧接型の電気コネクタは、以上のように構成され、導電細線3の配列ピッチが50μm〜100μmときわめて狭く、各導電細線3の径も30μm〜40μmときわめて小さいので、僅かな力で圧下押圧しても導電細線3が簡単に変形してしまい、携帯電話等の製品の不良率が高くなるという問題があった。さらに、小さな力を作用させるだけで電気コネクタ17の表面が容易に変形するので、電子回路基板と被電子回路基板との接続が実に不安定となり、しかも、組み込み作業性に欠けるという問題もあった。
【0006】本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、導電線条材や電気コネクタの表面が僅かな力で簡単に変形して製品の不良率が高くなるのを防止し、電気的接合物と被電気的接合物との接続を安定化させ、しかも、組み込み作業性の向上を図ることのできる圧接型の電気コネクタ及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明においては、上記課題を達成するため、電気的接合物と被電気的接合物との間に電気コネクタを挟み、該電気的接合物と該被電気的接合物とを導通させるものであって、上記電気コネクタは、絶縁性発泡エラストマーと、この絶縁性発泡エラストマーの表面、一側面及び裏面を被覆するとともに、絶縁性発泡エラストマーの両端面及び他側面を露出させる断面略U字形の絶縁性ゴムシートと、この絶縁性ゴムシートに略U字形に設けられ、上記絶縁性発泡エラストマーの一端面方向から他端面方向に略等ピッチで並べられる複数の導電線条材と、該絶縁性発泡エラストマーの他側面に設けられる高硬度の絶縁保護ゴムシートとを含み、上記絶縁性ゴムシートの表面における複数の導電線条材と裏面における複数の導電線条材のいずれか一方を上記電気的接合物に接触可能とし、かつ他方を上記被電気的接合物に接触可能とし、上記絶縁性ゴムシートの一側面における複数の導電線条材に高硬度で絶縁性の変形規制ゴムシートを設けたことを特徴としている。
【0008】また、請求項2記載の発明においては、上記課題を達成するため、相互に平行な複数の導電線条材を並べ備えた絶縁性ゴムシートと、基材シートに未加硫で高硬度の絶縁性の変形規制ゴムシートが設けられたシート積層体と、断面略U字形の成形空間を有する金型と、絶縁性発泡エラストマー原料に高硬度の絶縁保護ゴムシートが設けられた積層発泡体とを用い、電気的接合物と被電気的接合物との間に挟まれてこれら電気的接合物と被電気的接合物とを上記複数の導電線条材で導通させる圧接型の電気コネクタを製造する方法であって、上記金型の成形空間に上記シート積層体を収容するとともに、上記複数の導電線条材を外側に露出させた上記絶縁性ゴムシートを断面略U字形に屈曲して収容し、上記シート積層体の変形規制ゴムシートに該絶縁性ゴムシートの底部における複数の導電線条材を接触させ、該絶縁性ゴムシート内に積層発泡体をインサートしてその絶縁保護ゴムシートを該絶縁性ゴムシートの開口方向に向ける工程と、上記金型を型締めして加圧加熱し、上記シート積層体の変形規制ゴムシートと上記絶縁性ゴムシートの底部における複数の導電線条材とを接着するとともに、上記積層発泡体の絶縁性発泡エラストマー原料を発泡させて絶縁性発泡エラストマーを形成し、上記絶縁性ゴムシート及び該絶縁性発泡エラストマー、並びに該絶縁性発泡エラストマー及び上記絶縁保護ゴムシートを一体化して上記変形規制ゴムシートと該絶縁保護ゴムシートとをそれぞれ露出させた電気コネクタ中間体を成形する工程と、上記金型を型開きし、上記電気コネクタ中間体を取り出して上記シート積層体の基材シートを除去し、この電気コネクタ中間体を所定の長さに分割して電気コネクタを得る工程とを含んでなることを特徴としている。
【0009】ここで、特許請求の範囲における電気的接合物と被電気的接合物には、液晶ディスプレイ(COG、TAB)、回路基板、電子回路基板、プリント基板、又はビルドアップ配線板に代表される各種の電気電子部品が含まれる。また、絶縁性発泡エラストマーとしては、各種エラストマー原料、具体的にはブタジエンースチレン、ブタジエンーアクリロニトリル、ブタジエンーイソブチレン等のブタジエン系共重合体、クロロプレン重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、又はシリコーンゴム等があげられる。これらの中でも、エラストマー原料として耐熱性、耐寒性、耐侯性及び電気絶縁性等に優れ、無毒でもあるスポンジシリコーンゴムの使用が好ましい。また、略U字形には、C字形、U字形、コ字形、又はおおよそこれらに類似する形状が含まれる。
【0010】絶縁性ゴムシートとしては、例えはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、若しくはポリエチレンニトリル等のようなポリエステルフィルムやポリイミドフィルム等のフィルム上に、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、又はウレタンゴム等から選択したゴム硬度20°H〜60°Hのゴム原料をトッピング法等の一般的な方法により厚さ50〜200μm程度に塗布した絶縁性ゴムシートが使用される。この厚さのバラツキは±5μm以下、より好ましくは0μm〜3μmが良い。これは、厚さのバラツキ(Rmax)が10μmを超えると、導電線条材の配列ピッチが乱れやすくなるためである。
【0011】絶縁性ゴムシートのゴム硬度を20°H〜60°H、好ましくは30°H〜50°Hとするのは、20°Hより小では導電線条材の配列時に未硬化のためゴム原料がだれてしまい、導電線条材の配列ピッチが乱れるからである。また、60°Hより大でも導電線条材の配列ピッチが同様に乱れるからである。絶縁性ゴムシートを得るためには、2〜3本のカレンダーロールで混練したゴム原料を、PET等の非収縮性(5%以下)の基材シート上に分出しするのが良い。ゴム原料としては、ゴム弾性、耐熱性、耐寒性、耐環境特性及び機械特性等に優れるシリコーンゴムが最適である。
【0012】導電線条材としては、金、金合金、白金、銅、アルミニウム、アルミニウムーケイ素合金、真鍮、洋白、リン青銅、ベリリウム銅、ニッケル、モリブテン、タングステン、若しくはステンレス等からなる金属細線、あるいはこれらに金、金合金、若しくはロジウム等の導電性及び耐環境特性に優れる材料をめっき加工した導電線条材を便用することができる。これらの中でも、優れた導電性と耐環境特性、低い接触特性を有する金属線や金めっき金属細線の使用が良い。
【0013】各導電線条材の太さは、3〜500μm、望ましくは10〜100μm、より望ましくは15〜50μmの範囲が良い。これは、細すぎると配線時に断線しやすくなり、逆に太すぎると、細かい配線ピッチが得られなくなり、しかも、屈曲収容時に曲げ弾性が必要以上に強くなり、金型の成形空間に沿って屈曲させ難いからである。また、各導電線条材は、未加硫の絶縁性ゴムシート上に30〜80%、好ましくは40〜60%が埋設される太さが良い。
【0014】また、導電線条材には導電細線の他に金属スリット箔が含まれる。この金属スリット箔としては、鉄、ステンレス、銅、銅チタン合金等からなる金属スリット箔、あるいはこれらに金、金合金、若しくはロジウム等の導電性及び耐環境特性に優れる材料をめっき加工した金属スリット箔を便用することができる。但し、優れた導電性と耐環境特性、低い接触特性を有する金属線、金めっき金属スリット箔が良い。金属スリット箔は、例えば厚さ20μm、ピッチ70μm、金属導体部分の幅30μmのものが使用される。
【0015】絶縁保護ゴムシート及び変形規制ゴムシートとしては、例えはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、若しくはポリエチレンニトリル等のようなポリエステルフィルムやポリイミドフィルム等のフィルム上に、クロロブレンゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、又はウレタンゴム等から選択したゴム硬度の高いゴム原料を一般的な方法であるトツピング法により塗布したゴムシートが使用される。絶縁保護ゴムシート及び変形規制ゴムシートを得るためには、2〜3本のカレンダーロールで混練したゴム原料を、PET等の非収縮性(5%以下)の基材シート上に分出しするのが良い。
【0016】ゴム原料としては、耐環境特性、機械特性、弾性、耐熱性、耐寒性、耐候性、耐湿性、耐薬品性、耐老化性及び電気絶縁性等に優れるシリコーンゴムが好ましい。また、厚みは、電気コネクタを必要以上に大きくしない50μm〜500μm、より好ましくは80μm〜150μmの範囲とするのが良い。さらに、ゴム硬度は、60°H以上が望ましく、より望ましくは80°H以上が好適である。このようなゴム硬度の高い絶縁保護ゴムシートにより、電気コネクタを用いた接続時において低荷重、低圧縮量の接続が可能となり、接続の信頼性を向上させることができる。
【0017】請求項1又は2記載の発明によれば、電気的接合物と被電気的接合物との間に電気コネクタを介在させ、絶縁性ゴムシートの表面における複数の導電線条材と裏面における複数の導電線条材の一方を電気的接合物に接触させるとともに、他方を被電気的接合物に接触させ、その後、電気的接合物と被電気的接合物とを接近させれば、電気コネクタが弾性変形して電気的接合物と被電気的接合物とを複数の導電線条材で電気的に導通させる。この際、電気的接合物と被電気的接合物の導通接続に関与しない一側面の少なくとも一部に設けられた変形規制ゴムシートが導電線条材や電気コネクタの不要な変形を規制する。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではない。本実施形態における圧接型の電気コネクタは、図1に示すように、図示しない電子回路基板と被電子回路基板とを導通させる電気コネクタ17を、絶縁性発泡エラストマー15と、この絶縁性発泡エラストマー15の周面に被覆成形される断面略U字形の絶縁性ゴムシート2Aと、この絶縁性ゴムシート2Aに並設される複数の導電細線3と、絶縁性発泡エラストマー15の他側面に埋設される絶縁保護ゴムシート11と、絶縁性ゴムシート2Aの一側面における複数の導電細線3に接着固定される変形規制ゴムシート14とから構成している。
【0019】絶縁性発泡エラストマー15は、弾性、耐熱性、耐寒性、耐候性、耐湿性、耐薬品性、耐老化性及び電気絶縁性等に優れるスポンジシリコーンゴム原料12(発泡倍率1.3〜1.7倍)を用いて略棒形に成形されている。また、絶縁性ゴムシート2Aは、絶縁性発泡エラストマー15の周面の表面、一側面及び裏面に巻装して被覆成形され、絶縁性発泡エラストマー15の両端面15a及び他側面をそれぞれ絶縁性の露出面とするよう作用する。露出面である両端面15aの寸法は、接続される電極幅やピッチ等にもよるが、0.2〜0.3mm程度である。これだけの寸法があれば、電気コネクタ17が必要以上に大きくなることがなく、しかも、接続される回路(電極形状)の設計等にも悪影響を及ぼすこともない。
【0020】複数の導電細線3は、絶縁性発泡エラストマー15の一端面方向から他端面方向に等ピッチで平行に並設されている。各導電細線3は、金めっきされた真鍮線からなり、絶縁性発泡エラストマー15を挟持するよう絶縁性ゴムシート2Aの表面、一側面及び裏面に略U字形に屈曲して接着固定されている。絶縁性ゴムシート2Aの表面における各導電細線3は電子回路基板の電極に接触し、裏面における各導電細線3は被電子回路基板の電極に接触するよう機能する。
【0021】絶縁保護ゴムシート11は、弾性、耐熱性、耐寒性、耐候性、耐湿性、耐薬品性、耐老化性及び電気絶縁性等に優れる高硬度のシリコーンゴムを使用して成形されている。この絶縁保護ゴムシート11は、0.05mm〜0.5mm程度の厚さを有する平坦な長方形の板形に成形され、絶縁性発泡エラストマー15の周面の他側面に同一平面で埋設成形されるとともに、表面が露出している。さらに、変形規制ゴムシート14は、高硬度のシリコーンゴムを使用して0.05mm〜0.5mm程度の厚さを有する平坦な長方形の板形に成形され、電子回路基板と被電子回路基板の導通接続に関与せずに電極と接触しない部分、具体的には、絶縁性ゴムシート2Aの一側面における複数の導電細線3に横長の状態で接着固定されている。
【0022】上記構成において、上下一対の電子回路基板と被電子回路基板との間に電気コネクタ17を圧接挟持させ、電子回路基板の電極に絶縁性ゴムシート2Aの表面における複数の導電細線3を接触させるとともに、被電子回路基板の電極に絶縁性ゴムシート2Aの裏面における複数の導電細線3を接触させ、その後、電子回路基板を圧下押圧すれば、電気コネクタ17が弾性変形して電子回路基板と被電子回路基板とを複数の導電細線3で電気的に、かつソフトに導通させる。
【0023】次に、圧接型の電気コネクタの製造方法を説明する。本実施形態の電気コネクタ17を製造するには、相互に平行な複数の導電線条材を並べ備えた絶縁性ゴムシート2Aと、基材シート5上に未加硫で高硬度の絶縁性のシリコーンゴム原料6が積層されたシート積層体4と、断面略U字形の成形空間(キャビティ)9を有する金型7と、スポンジシリコーンゴム原料12上に高硬度の絶縁保護ゴムシート11が積層された積層発泡体10とを用意する。
【0024】最初に絶縁性ゴムシート2Aを製造する。絶縁性ゴムシート2Aを製造するには、先ず、PET製の長い基材シート1にシリコーンゴム原料2を図示しないカレンダーロールを使用してシーティングし、図2に示す一応の絶縁性ゴムシート2Aを形成する。シリコーンゴム原料2としては、所定のシリコーンゴムコンパウンド、加硫剤及びシランカップリング剤を添加配合した原料を使用する。
【0025】次いで、絶縁性ゴムシート2Aを所定の長さに切断し、この絶縁性ゴムシート2Aを図示しない回転ドラムの周面に固定してシリコーンゴム原料2を表面側に位置させ、回転ドラムを回転させるとともに、シリコーンゴム原料2上に導電細線3を図示しない送り出し装置の供給部から供給する。この際、送り出し装置の供給部を回転ドラムの軸方向に徐々に移動させ、絶縁性ゴムシート2Aの全表面に複数の導電細線3を平行に配列する。複数の導電細線3を配列が終了したら、回転ドラムを停止させて取り外し、複数の導電細線3が配列された図3の絶縁性ゴムシート2A′を形成する。
【0026】次いで、絶縁性ゴムシート2A′をオーブン中で所定時間加熱して1次加硫を行い、基材シート1を剥離除去し、残部からなる絶縁性ゴムシート2A″をオーブン中で所定時間加熱して2次加硫を行い、図4の絶縁性ゴムシート2A″を形成する。そして、絶縁性ゴムシート2A″をその導電細線3を横断する方向に適宜切断すれば、絶縁性ゴムシート2A'''を製造することができる(図5参照)。
【0027】次にシート積層体4を製造する。シート積層体4を製造するには、PET製の長い基材シート5にシリコーンゴム原料6を図示しないカレンダーロールを使用してシーティングした後、所定の大きさに切断すれば、図6に示すシート積層体4を製造することができる。シリコーンゴム原料6としては、所定のシリコーンゴムコンパウンド及び加硫剤を添加配合した原料を使用する。
【0028】絶縁性ゴムシート2A'''とシート積層体4とを製造したら、図7に示すように、金型7を構成する成形用下型8の成形空間9の底部にシート積層体4を収容してシリコーンゴム原料6を上向きに配置するとともに、複数の導電細線3を外側に露出させた絶縁性ゴムシート2A'''を断面略U字形に湾曲させて収容密嵌する。この際、シート積層体4のシリコーンゴム原料6に複数の導電細線3を接触させ、成形空間9の成形面に絶縁性ゴムシート2A'''の複数の導電細線3を対向させ、かつ密接させる。
【0029】次に積層発泡体10を製造する。積層発泡体10を製造するには、絶縁保護ゴムシート11上にスポンジシリコーンゴム原料12を図示しないカレンンダーロールで所定の厚さにシーティングし、所定の幅、長さに切断すれば良い(図8参照)。絶縁保護ゴムシート11は、シリコーンゴムコンパウンドに所定の加硫剤を添加配合してシリコーンゴム原料12を製造し、このシリコーンゴム原料12をカレンダーロールで所定の厚さに図示しないPET製の基材シートにシーティングし、オーブン中で所定時間加熱して加硫することにより成形される。スポンジシリコーンゴム原料12としては、シリコーンゴムコンパウンドに所定の加硫剤や発泡剤を添加配合した原料を使用する。
【0030】こうして積層発泡体10を製造したら、この積層発泡体10を上下逆にして絶縁性ゴムシート2A'''の内底に隙間を介しインサートする。この際、積層発泡体10の絶縁保護ゴムシート11は、絶縁性ゴムシート2A'''の開口方向(図9の上方向)に指向する。
【0031】絶縁性ゴムシート2A'''内に積層発泡体10を配置したら、同図に示すように、成形用下型8に成形用上型13を型締めして加圧加熱し、シリコーンゴム原料6と複数の導電細線3とを接着し、シリコーンゴム原料6を変形規制ゴムシート14に形成する。また、積層発泡体10のスポンジシリコーンゴム原料12を絶縁性発泡エラストマー15に発泡成形し、絶縁性ゴムシート2A'''の内周面及び絶縁性発泡エラストマー15、並びに絶縁性発泡エラストマー15及び絶縁保護ゴムシート11を一体成形する。この一体成形により、両端面15aが絶縁性の露出面に形成され、変形規制ゴムシート14が露出するとともに、絶縁保護ゴムシート11が絶縁性発泡エラストマー15の他側面に同一平面で埋設され、かつ一部が露出した電気コネクタ中間体16が成形される。
【0032】そして、金型7を型開きし、成形した電気コネクタ中間体16を取り出してシート積層体4の基材シート5を剥離除去し、この電気コネクタ中間体16に所定の条件でポストキュア(二次加硫)を施し、長棒形の電気コネクタ中間体16を形成する(図10参照)。そしてその後、この電気コネクタ中間体16を長手方向にカッタ等で所定の大きさ、長さで切断すれば、圧接型の電気コネクタ17を単数複数製造することができる(図11R>1参照)。
【0033】上記構成によれば、電子回路基板と被電子回路基板の導通接続に関与しない箇所に接着固定された変形規制ゴムシート14が導電細線3や電気コネクタ17の撓みや変形を制限するので、僅かな力で圧下押圧しても導電細線3が簡単に変形することがなく、携帯電話等の製品の不良率を著しく抑制防止することができる。また、小さな力を作用させても電気コネクタ17の表面が容易に変形することがないので、電子回路基板と被電子回路基板との接続が実に安定し、しかも、組み込み作業性やハンドリング性の大幅な向上が大いに期待できる。また、変形規制ゴムシート14が0.05mm〜0.5mm程度の厚さに成形されているので、電気コネクタ17が大型化したり、電子回路基板や被電子回路基板の電極設計になんら悪影響を及ぼすことがない。
【0034】また、フィラーを多く含む平面状の絶縁保護ゴムシート11が絶縁性発泡エラストマー15の周面の他側面、換言すれば、複数の導電細線3の非存在箇所に同一平面で埋設され、一部が露出しているので、絶縁保護ゴムシート11の表面の粗さにより、タック効果が弱まる。すなわち、スリップ性が著しく向上するので、ベタ付きにくく、例え電気コネクタ17の高さが高い場合でも、組み込み作業性を大幅に向上させることができるとともに、電子回路基板や被電子回路基板との接続が実に安定化し、確実な導通が大いに期待できる。また、初期コンタクト性を大幅に改善することが可能になる。したがって、電子回路基板と被電子回路基板との未接続を有効に防止し、品質の安定化を図ることができる。
【0035】さらに、タック効果が弱まるので、電気コネクタ17の部分的な変形を実に有効に防止することが可能になる。さらにまた、絶縁性発泡エラストマー15の両端面15aがそれぞれ絶縁性の露出面に形成されているので、導電性のバリの発生することがなく、絶縁状態を常に維持することができる。
【0036】なお、上記実施形態では断面略方形の絶縁性発泡エラストマー15を示したが、なんらこれに限定されるものではなく、断面略半小判形等の類似形の絶縁性発泡エラストマー15でも良い。また、絶縁性発泡エラストマー15の周面の他側面から絶縁保護ゴムシート11を僅かに突出させた状態で露出させることもできる。また、変形規制ゴムシート14の数、大きさ、又は形状等は、適宜増減変更することが可能である。また、回転ドラムを一定速度で徐々に移動させる等の手段により、絶縁性ゴムシート2Aの表面に複数の導電細線3を平行に配列しても良い。さらに、成形前に積層発泡体10を予め製造しておくことも可能である。
【0037】
【実施例】実施例以下、図2ないし図11の製造工程図に基づいて電気コネクタ17の製造方法を詳説する。先ず、非伸縮性基材である厚さ50μm、幅350mmのPETシートからなる長尺の基材シート1を用意した。また、シリコーンゴムコンパウンドKE−153U(信越化学工業製、商品名)ゴム硬度50°Hに、加硫剤C−19A、B(同前)及びシランカップリング剤KBM403(同前)を添加配合してシリコーンゴム原料2を製造した。こうして準備が完了した後、基材シート1上にシリコーンゴム原料2を厚さ100μm、幅300mmとなるよう図示しないカレンダーロールでシーティングし、絶縁性ゴムシート2Aを形成した。
【0038】次いで、絶縁性ゴムシート2Aを長さ600mmに切断し、これを外周600mmの回転ドラムの周面上に絶縁性ゴムシート2Aが外側となるように固定し、絶縁性ゴムシート2A上に、金めっきを施した線径40μmの真鍮線からなる導電細線3を送り出し装置から回転している回転ドラム上に供給した。この際、導電細線3の供給部を回転ドラムの軸方向に1回転当たり100μm移動させながらピッチ100μmで導電細線3を軸方向に10mm配列した後、回転ドラムを1回転させて導電細線3の供給部を回転ドラムの軸方向に0.4mm移動し、その後引き続きピッチ100μmで導電細線3を軸方向に10mm配列した。
【0039】この操作を繰り返して絶縁性ゴムシート2Aの全面に複数の導電細線3を配列し、この配列が終了した時点で回転ドラムを停止させて回転ドラムから取り外し、上記0.4mm移動箇所の導電細線3を除去し、図3R>3に示す絶縁性ゴムシート2A′を形成した。
【0040】次いで、絶縁性ゴムシート2A′を120℃のオーブン中で30分間加熱して1次加硫を行い、基材シート1を剥離除去し、195℃のオーブン中で4時間加熱して2次加硫を行い、図4に示す絶縁性ゴムシート2A″を得た。こうして図4の絶縁性ゴムシート2A″を形成したら、絶縁性ゴムシート2A″を導電細線3を横断する方向に切断して幅8.0mm、長さ300mmの絶縁性ゴムシート2A'''を製造した(図5参照)。
【0041】次いで、非伸縮性基材である厚さ50μm、幅350mmのPETシートからなる長尺の基材シート5を用意した。また、シリコーンゴムコンパウンドKE−981(信越化学工業製、商品名)ゴム硬度80°Hに、加硫剤C−19A、B(同前)を添加配合してシリコーンゴム原料6を製造した。こうして準備が完了した後、基材シート5上にシリコーンゴム原料6を幅4.0mm、長さ300mmとなるよう図示しないカレンダーロールでシーティングし、シート積層体4を形成した(図6参照)。
【0042】次いで、図7に示すように成形空間9がU字形の成形用下型8内にシート積層体4を収容配置するとともに、絶縁性ゴムシート2A'''の導電細線3側を成形面に向けてセットした。また、シリコーンゴムコンパウンドKE−981(信越化学工業製、商品名)に、加硫剤C−19A、C−19B(同前)を添加配合してシリコーンゴム原料を製造し、このシリコーンゴム原料をカレンダーロールでシーティングし、300℃のオーブンで1分間加熱加硫して厚さ10μmの絶縁保護ゴムシート11を成形した。
【0043】また、シリコーンゴムコンパウンドKE−151U(信越化学工業製、商品名)に、加硫剤C−1、C−3(同前)及び発泡剤2,2−アゾビスイソブチロニトリルを添加配合してスポンジシリコーンゴム原料12を製造した。こうして準備が完了したら、絶縁保護ゴムシート11上にスポンジシリコーンゴム原料12を所定の厚さでシーティングして積層体を製造し、この積層体を所定の幅、長さに切断して積層発泡体10を製造した(図8参照)。そして、この積層発泡体10を図9に示すように、絶縁性ゴムシート2A'''の内底上に載置した。
【0044】次いで、成形用下型8上に成形用上型13を被せて型締めし、10kg/cm2の加圧下において175℃、5分間加熱し、スポンジシリコーンゴム原料12を発泡成形して絶縁性発泡エラストマー15とした(図10R>0参照)。
【0045】次いで、型開きした金型7から成形した電気コネクタ中間体16を取り出し、シート積層体4の基材シート5を剥離し、200℃で1時間のポストキュアを行い、図10に示す長尺の電気コネクタ中間体16を得た。そしてその後、この電気コネクタ中間体16を、導電細線3が配設されておらず、絶縁性ゴムシート2A'''が露出する上記0.4mm移動箇所で切断(好ましくは、移動箇所の中央部における切断)して図12に示す電気コネクタ17を製造した。
【0046】得られた電気コネクタ17は、変形規制ゴムシート14の存在箇所に僅かな力を加えても、全く変形しなかった。また、電気コネクタ17の高さが高い場合でも作業性が実に良好であった。さらに、電気コネクタ17と電子回路基板及び被電子回路基板との所定の圧接が得られないため、液晶ディスプレイと回路基板間又は電子回路基板間の接続において導通しないということが全くなく、回路の未接続が発生することもなかった。
【0047】比較例絶縁保護ゴムシート11及び変形規制ゴムシート14を有しない図12の電気コネクタ17の場合、液晶ディスプレイと回路基板間、又は電子回路基板間の接続に関与しない導電細線3の一側面に僅かな力を加えても、電気コネクタ17が簡単に変形し、回路の未接続が多発した。また、電気コネクタ17の高さが高い場合には作業性が悪化した。さらに、電気コネクタ17と電子回路基板との所定の圧接が得られないため、液晶ディスプレイと回路基板間、又は電子回路基板間の接続において全く導通しないことが多く、回路の未接続が発生した。
【0048】
【発明の効果】以上のように請求項1又は2記載の発明によれば、導電線条材や電気コネクタの表面が僅かな力で簡単に変形するのを防止することができ、これを通じて製品の不良率を低減することができるという効果がある。さらに、電気的接合物と被電気的接合物との接続を安定化させることができ、組み込み作業性等の向上も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る圧接型の電気コネクタの実施形態を示す全体斜視説明図である。
【図2】本発明に係る圧接型の電気コネクタの製造方法の実施形態における絶縁性ゴムシートを示す斜視説明図である。
【図3】図2の絶縁性ゴムシート上に複数の導電細線を並設した状態を示す斜視説明図である。
【図4】図3の絶縁性ゴムシートに1次加硫、基材シートの除去及び2次加硫等を施した状態を示す斜視説明図である。
【図5】図4の絶縁性ゴムシートを切断して最終的な絶縁性ゴムシートを製造した状態を示す斜視説明図である。
【図6】本発明に係る圧接型の電気コネクタの製造方法の実施形態におけるシート積層体を示す斜視説明図である。
【図7】本発明に係る圧接型の電気コネクタの製造方法の実施形態における金型の成形空間にシート積層体と絶縁性ゴムシートとを順次収容した状態を示す断面説明図である。
【図8】本発明に係る圧接型の電気コネクタの製造方法の実施形態における積層発泡体を示す斜視説明図である。
【図9】図7の絶縁性ゴムシートに積層発泡体をインサートした状態を示す断面説明図である。
【図10】本発明に係る圧接型の電気コネクタの製造方法の実施形態における電気コネクタ中間体を示す斜視説明図である。
【図11】図10の電気コネクタ中間体を切断して電気コネクタを製造した状態を示す斜視説明図である。
【図12】従来の圧接型の電気コネクタを示す斜視説明図である。
【符号の説明】
1 基材シート
2 シリコーンゴム原料
2A 絶縁性ゴムシート
2A′ 絶縁性ゴムシート
2A″ 絶縁性ゴムシート
2A''' 絶縁性ゴムシート
3 導電細線(導電線条材)
4 シート積層体
5 基材シート
6 シリコーンゴム原料
7 金型
9 成形空間
10 積層発泡体
11 絶縁保護ゴムシート
12 スポンジシリコーンゴム原料
14 変形規制ゴムシート
15 絶縁性発泡エラストマー
15a 両端面
16 電気コネクタ中間体
17 電気コネクタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電気的接合物と被電気的接合物との間に電気コネクタを挟み、該電気的接合物と該被電気的接合物とを導通させる圧接型の電気コネクタであって、上記電気コネクタは、絶縁性発泡エラストマーと、この絶縁性発泡エラストマーの表面、一側面及び裏面を被覆するとともに、絶縁性発泡エラストマーの両端面及び他側面を露出させる断面略U字形の絶縁性ゴムシートと、この絶縁性ゴムシートに略U字形に設けられ、上記絶縁性発泡エラストマーの一端面方向から他端面方向に略等ピッチで並べられる複数の導電線条材と、該絶縁性発泡エラストマーの他側面に設けられる高硬度の絶縁保護ゴムシートとを含み、上記絶縁性ゴムシートの表面における複数の導電線条材と裏面における複数の導電線条材のいずれか一方を上記電気的接合物に接触可能とし、かつ他方を上記被電気的接合物に接触可能とし、上記絶縁性ゴムシートの一側面における複数の導電線条材に高硬度で絶縁性の変形規制ゴムシートを設けたことを特徴とする圧接型の電気コネクタ。
【請求項2】 相互に平行な複数の導電線条材を並べ備えた絶縁性ゴムシートと、基材シートに未加硫で高硬度の絶縁性の変形規制ゴムシートが設けられたシート積層体と、断面略U字形の成形空間を有する金型と、絶縁性発泡エラストマー原料に高硬度の絶縁保護ゴムシートが設けられた積層発泡体とを用い、電気的接合物と被電気的接合物との間に挟まれてこれら電気的接合物と被電気的接合物とを上記複数の導電線条材で導通させる圧接型の電気コネクタを製造する方法であって、上記金型の成形空間に上記シート積層体を収容するとともに、上記複数の導電線条材を外側に露出させた上記絶縁性ゴムシートを断面略U字形に屈曲して収容し、上記シート積層体の変形規制ゴムシートに該絶縁性ゴムシートの底部における複数の導電線条材を接触させ、該絶縁性ゴムシート内に積層発泡体をインサートしてその絶縁保護ゴムシートを該絶縁性ゴムシートの開口方向に向ける工程と、上記金型を型締めして加圧加熱し、上記シート積層体の変形規制ゴムシートと上記絶縁性ゴムシートの底部における複数の導電線条材とを接着するとともに、上記積層発泡体の絶縁性発泡エラストマー原料を発泡させて絶縁性発泡エラストマーを形成し、上記絶縁性ゴムシート及び該絶縁性発泡エラストマー、並びに該絶縁性発泡エラストマー及び上記絶縁保護ゴムシートを一体化して上記変形規制ゴムシートと該絶縁保護ゴムシートとをそれぞれ露出させた電気コネクタ中間体を成形する工程と、上記金型を型開きし、上記電気コネクタ中間体を取り出して上記シート積層体の基材シートを除去し、この電気コネクタ中間体を所定の長さに分割して電気コネクタを得る工程とを含んでなることを特徴とする圧接型の電気コネクタの製造方法。
【請求項1】 電気的接合物と被電気的接合物との間に電気コネクタを挟み、該電気的接合物と該被電気的接合物とを導通させる圧接型の電気コネクタであって、上記電気コネクタは、絶縁性発泡エラストマーと、この絶縁性発泡エラストマーの表面、一側面及び裏面を被覆するとともに、絶縁性発泡エラストマーの両端面及び他側面を露出させる断面略U字形の絶縁性ゴムシートと、この絶縁性ゴムシートに略U字形に設けられ、上記絶縁性発泡エラストマーの一端面方向から他端面方向に略等ピッチで並べられる複数の導電線条材と、該絶縁性発泡エラストマーの他側面に設けられる高硬度の絶縁保護ゴムシートとを含み、上記絶縁性ゴムシートの表面における複数の導電線条材と裏面における複数の導電線条材のいずれか一方を上記電気的接合物に接触可能とし、かつ他方を上記被電気的接合物に接触可能とし、上記絶縁性ゴムシートの一側面における複数の導電線条材に高硬度で絶縁性の変形規制ゴムシートを設けたことを特徴とする圧接型の電気コネクタ。
【請求項2】 相互に平行な複数の導電線条材を並べ備えた絶縁性ゴムシートと、基材シートに未加硫で高硬度の絶縁性の変形規制ゴムシートが設けられたシート積層体と、断面略U字形の成形空間を有する金型と、絶縁性発泡エラストマー原料に高硬度の絶縁保護ゴムシートが設けられた積層発泡体とを用い、電気的接合物と被電気的接合物との間に挟まれてこれら電気的接合物と被電気的接合物とを上記複数の導電線条材で導通させる圧接型の電気コネクタを製造する方法であって、上記金型の成形空間に上記シート積層体を収容するとともに、上記複数の導電線条材を外側に露出させた上記絶縁性ゴムシートを断面略U字形に屈曲して収容し、上記シート積層体の変形規制ゴムシートに該絶縁性ゴムシートの底部における複数の導電線条材を接触させ、該絶縁性ゴムシート内に積層発泡体をインサートしてその絶縁保護ゴムシートを該絶縁性ゴムシートの開口方向に向ける工程と、上記金型を型締めして加圧加熱し、上記シート積層体の変形規制ゴムシートと上記絶縁性ゴムシートの底部における複数の導電線条材とを接着するとともに、上記積層発泡体の絶縁性発泡エラストマー原料を発泡させて絶縁性発泡エラストマーを形成し、上記絶縁性ゴムシート及び該絶縁性発泡エラストマー、並びに該絶縁性発泡エラストマー及び上記絶縁保護ゴムシートを一体化して上記変形規制ゴムシートと該絶縁保護ゴムシートとをそれぞれ露出させた電気コネクタ中間体を成形する工程と、上記金型を型開きし、上記電気コネクタ中間体を取り出して上記シート積層体の基材シートを除去し、この電気コネクタ中間体を所定の長さに分割して電気コネクタを得る工程とを含んでなることを特徴とする圧接型の電気コネクタの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2000−223179(P2000−223179A)
【公開日】平成12年8月11日(2000.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−26488
【出願日】平成11年2月3日(1999.2.3)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成12年8月11日(2000.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成11年2月3日(1999.2.3)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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