説明

圧接型シートコネクタ及び電気接合物の接続構造体

【課題】 バンプの高さのバラツキに追従することができる圧接型シートコネクタ及び電気接合物の接続構造体を提供する。
【解決手段】 検査回路基板1と、検査回路基板1に対する半導体パッケージ10と、検査回路基板1と半導体パッケージ10間に介在される圧接型シートコネクタ20とを備え、圧接型シートコネクタ20を、検査回路基板1と半導体パッケージ10間に介在される変形可能なエラストマーシート21と、エラストマーシート21に内蔵されて両端部23が露出し、検査回路基板1と半導体パッケージ10間を導通接続する複数の金属細線22とから構成し、エラストマーシート21の表面積における金属細線22の占有率を5〜19%とするとともに、エラストマーシート21を30°〜70°Hsの硬度とし、各金属細線22の径を5〜40μmとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板や半導体パッケージ等からなる複数の電気接合物の間に介在され、これらを電気的に接続する圧接型シートコネクタ及び電気接合物の接続構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体パッケージを検査する場合には、検査回路基板に半導体パッケージを圧接型シートコネクタを介し接続している。
この種の圧接型シートコネクタは、図示しないが、回路基板と半導体パッケージの間に介在される弾性変形可能なエラストマーシートと、このエラストマーシートの厚さ方向に内蔵され、回路基板と半導体パッケージ間を電気的に接続する複数の金属細線とから構成されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−55648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の圧接型シートコネクタは、以上のように構成されているが、近年、半導体パッケージとして、複数のバンプ(電極)を備えたBGAタイプが主に使用され、この複数のバンプの高さにはバラツキがある。携帯機器等の高機能化により、半導体パッケージのバンプが従来よりもはるかに細密化・多極化すると、バンプの高さのバラツキに対する追従性が必要になるが、従来の圧接型シートコネクタでは、エラストマーシートに剛性があるので、バンプの高さバラツキに追従することが困難であるという問題がある。
【0004】
また、従来の圧接型シートコネクタは、エラストマーシートに複数の金属細線が単に内蔵されているに止まるので、圧縮時に回路基板や半導体パッケージに複数の金属細線を押し付ける力が低下することがあり、しかも、金属細線が大きく変形するおそれが少なくない。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたもので、バンプの高さのバラツキに追従することができる圧接型シートコネクタ及び電気接合物の接続構造体を提供することを目的としている。また、電極ピッチが細密化した半導体パッケージ等の電気接合物を接続する場合でも、金属細線を押し付ける力が低下することがなく、しかも、金属細線が大きく変形するおそれの少ない圧接型シートコネクタ及び電気接合物の接続構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては上記課題を解決するため、複数の電気接合物の間に介在され、これらを接続するものであって、
複数の電気接合物の間に介在される絶縁性のエラストマーシートと、このエラストマーシートの厚さ方向に内蔵されて両端部が露出し、複数の電気接合物間を電気的に接続する複数の金属細線とを含み、
エラストマーシートの表面積における複数の金属細線の占有率を5〜19%としたことを特徴としている。
【0007】
なお、エラストマーシートを30°〜70°Hsの硬度とし、各金属細線の径を5〜40μmとすることが好ましい。
【0008】
また、本発明においては上記課題を解決するため、回路基板と電極ピッチが細密化した半導体パッケージとの間に圧接型シートコネクタを介在し、この圧接型シートコネクタをその厚さ方向に圧接することにより回路基板と半導体パッケージとを接続するものであって、
半導体パッケージの電極ピッチを150〜300μmとし、
圧接型シートコネクタを、回路基板と半導体パッケージの間に介在される絶縁性のエラストマーシートと、このエラストマーシートの厚さ方向に内蔵されて両端部が露出し、回路基板と半導体パッケージとの間を電気的に接続する複数の金属細線とから構成し、
エラストマーシートの表面積における複数の金属細線の占有率を5〜19%とするとともに、エラストマーシートを30°〜70°Hsの硬度とし、各金属細線の径を5〜40μmとしたことを特徴としている。
【0009】
ここで、特許請求の範囲における複数の電気接合物には、少なくとも回路基板や電極ピッチが細密化した半導体パッケージが含まれる。回路基板には、検査回路基板、プリント基板、フレキシブル基板等が含まれ、半導体パッケージには、各種のBGA、CSP、FC等が含まれる。さらに、全部又は一部の金属細線の上下両端部は、鋭利な凹凸形状に形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例え半導体パッケージのバンプの高さにバラツキがある場合でも、バンプの高さのバラツキにエラストマーシートを追従させることができるという効果がある。また、電極ピッチが細密化した半導体パッケージ等の電気接合物を接続する場合でも、金属細線を押し付ける力が低下することが少なく、しかも、金属細線が大きく変形するおそれが少ないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における電気接合物の接続構造体は、図1等に示すように、検査回路基板1と、この検査回路基板1に対向する表面実装型の半導体パッケージ10と、これら検査回路基板1と半導体パッケージ10との間に介在される圧接型シートコネクタ20とを備えている。
【0012】
表面実装型の半導体パッケージ10は、例えば下面にボールハンダ端子である複数のバンプ11をXY方向に並べ備えたFPBGAタイプからなり、検査回路基板1の表面に対向する。この半導体パッケージ10は、電極であるバンプ11のピッチが150〜300μm、好ましくは180〜200μmの範囲とされ、各バンプ11が75〜200μm、好ましくは100μmの径に形成されており、バンプ11のピッチが細密化・多極化される。
【0013】
圧接型シートコネクタ20は、図2ないし図4に示すように、検査回路基板1と半導体パッケージ10の間に介在される弾性変形可能な絶縁性のエラストマーシート21と、このエラストマーシート21の厚さ方向に縦に内蔵されて上下両端部23が露出し、検査回路基板1の導体パターン2と半導体パッケージ10のバンプ11との間を電気的に導通接続する複数の金属細線22とから構成される。
【0014】
エラストマーシート21の表面積における複数の金属細線22の占有率は、5〜19%、好ましくは8〜15%、より好ましくは8〜9%とされる。これは、金属細線22の占有率が5%未満の場合には、金属細線22の相互に支え合う効果が消失し、圧縮時に金属細線22をバンプ11に押し付ける反力が低下するからである。また、圧縮時に金属細線22が大きく変形する可能性が高くなるからである。逆に、金属細線22の占有率が19%を超える場合には、エラストマーシート21に剛性が生じて追従性が著しく低下するからである。
【0015】
エラストマーシート21は、所定の絶縁材料を使用して0.5mm程度の厚さを有する平面矩形のシートに成形され、30°〜70°Hsの硬度に形成されており、シリコーンゴム等からなる枠体内に一体形成される。このエラストマーシート21の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば絶縁性のシリコーンゴム、エポキシ樹脂等のエラストマー性の熱硬化性樹脂、合成ゴム又はポリエチレン、ポリウレタン、軟質塩化ビニル樹脂等があげられる。これらの中でも、耐環境特性、耐熱性、耐寒性に優れるシリコーンゴムが最適である。
【0016】
エラストマーシート21は、絶縁性を確保するため、体積抵抗率1012Ω・cm以上のシートが使用される。また、エラストマーシート21の厚さは0.5mm程度とされるが、これは、0.5mm未満の場合、例えば0.1mm程度の場合には、反力が減少して機能低下を招くからである。エラストマーシート21の硬度は30°〜70°Hsの範囲とされるが、これは柔軟性や繰り返し圧縮時の耐久性を確保するためである。
【0017】
複数の金属細線22は、図2や図3に示すように、エラストマーシート21のXY方向に並べて屈曲可能に埋設される。各金属細線22は、可撓性を有する材料を使用して所定の長さに形成され、5〜40μmの径、好ましくは10〜40μmの径に形成される。この金属細線22の材料としては、特に限定されるものではないが、接続抵抗や破断強度に優れるタングステンや銅合金等が好適に使用される。
【0018】
金属細線22の上下両端部23は、傾斜したり尖った鋭利な形状に形成され、エラストマーシート21の表裏両面からそれぞれ僅かに突出する(図4参照)。金属細線22の径は5〜40μmの範囲とされるが、これは、5μm未満の場合には、金属細線22の強度が低下し、加工の際のハンドリングに支障を来たすという理由に基づく。逆に40μmを超える場合には、エラストマーシート21に剛性が発生して追従性が低下するという理由に基づく。
【0019】
上記において、表面実装型の半導体パッケージ10を検査する場合には、検査回路基板1、圧接型シートコネクタ20、及び半導体パッケージ10の順に積層し、検査回路基板方向に半導体パッケージ10を圧下すれば良い。
すると、圧接型シートコネクタ20がその厚さ方向に圧縮変形し、屈曲した金属細線22の上下両端部23が導体パターン2やバンプ11に食い込み、相対向する検査回路基板1と半導体パッケージ10とを導通接続して検査することができる。
【0020】
上記構成によれば、複数の金属細線22の占有率が5〜19%の範囲であるから、例え半導体パッケージ10がBGAタイプの場合で複数のバンプ11の高さにバラツキがあっても、バンプ11の高さバラツキに容易に追従することができる。また、エラストマーシート21の断面における複数の金属細線22の占有率が5〜19%、好ましくは8〜15%の範囲なので、半導体パッケージ10のバンプピッチの細密化・多極化にかかわらず、検査回路基板1や半導体パッケージ10に複数の金属細線22を押し付ける力が低下することがない。
【0021】
また、金属細線22が必要以上に大きく変形するおそれをきわめて有効に排除することができる。また、金属細線22の端部23が円錐形や角錐形等に尖って半導体パッケージ10のバンプ11に食い込むので、このアンカー効果により、導通接続の確実化が可能になる。さらに、エラストマーシート21に複数の金属細線22がXY方向に並べて埋設されるので、半導体パッケージ10の位置決めの必要が全くなく、作業の円滑化、簡易化、容易化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る圧接型シートコネクタ及び電気接合物の接続構造体の実施形態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図2】本発明に係る圧接型シートコネクタの実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図3】本発明に係る圧接型シートコネクタの実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【図4】本発明に係る圧接型シートコネクタの実施形態を模式的に示す要部断面説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 検査回路基板(電気接合物)
2 導体パターン(電極)
10 半導体パッケージ(電気接合物)
11 バンプ(電極)
20 圧接型シートコネクタ
21 エラストマーシート
22 金属細線
23 金属細線の端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気接合物の間に介在され、これらを接続する圧接型シートコネクタであって、
複数の電気接合物の間に介在される絶縁性のエラストマーシートと、このエラストマーシートの厚さ方向に内蔵されて両端部が露出し、複数の電気接合物間を電気的に接続する複数の金属細線とを含み、
エラストマーシートの表面積における複数の金属細線の占有率を5〜19%としたことを特徴とする圧接型シートコネクタ。
【請求項2】
エラストマーシートを30°〜70°Hsの硬度とし、各金属細線の径を5〜40μmとした請求項1記載の圧接型シートコネクタ。
【請求項3】
回路基板と電極ピッチが細密化した半導体パッケージとの間に圧接型シートコネクタを介在し、この圧接型シートコネクタをその厚さ方向に圧接することにより回路基板と半導体パッケージとを接続する電気接合物の接続構造体であって、
半導体パッケージの電極ピッチを150〜300μmとし、
圧接型シートコネクタを、回路基板と半導体パッケージの間に介在される絶縁性のエラストマーシートと、このエラストマーシートの厚さ方向に内蔵されて両端部が露出し、回路基板と半導体パッケージとの間を電気的に接続する複数の金属細線とから構成し、
エラストマーシートの表面積における複数の金属細線の占有率を5〜19%とするとともに、エラストマーシートを30°〜70°Hsの硬度とし、各金属細線の径を5〜40μmとしたことを特徴とする電気接合物の接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−140004(P2006−140004A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−327995(P2004−327995)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】