圧接挟持型コネクタ及びその接続構造
【課題】 導電キャップと導電ピンの導通を安定させて低抵抗化を図ることができ、しかも、電気接合物の導体部が小さい場合や複数列に配列されている場合でも、導体部に対する導電ピンの接触を安定させ得る圧接挟持型コネクタ及びその接続構造を提供する。
【解決手段】 配線板1と音響部品3の間に介在されるハウジング10と、ハウジング10の複数の取付孔11にそれぞれ嵌着されて底部21が露出する有底円筒形の導電キャップ20と、各導電キャップ20にスライド可能に挿入されて音響部品3のランド4に接触する複数の導電ピン30と、導電キャップ20と導電ピン30の間に介在されて各導電ピン30をハウジング10から突出させる導電コイルバネ40とを備える。そして、導電ピン30の底面を導電ピン30のスライド方向に対して傾斜させ、音響部品3のランド4に対する導電ピン30の接触部と導電ピン30の軸線を一致させる。
【解決手段】 配線板1と音響部品3の間に介在されるハウジング10と、ハウジング10の複数の取付孔11にそれぞれ嵌着されて底部21が露出する有底円筒形の導電キャップ20と、各導電キャップ20にスライド可能に挿入されて音響部品3のランド4に接触する複数の導電ピン30と、導電キャップ20と導電ピン30の間に介在されて各導電ピン30をハウジング10から突出させる導電コイルバネ40とを備える。そして、導電ピン30の底面を導電ピン30のスライド方向に対して傾斜させ、音響部品3のランド4に対する導電ピン30の接触部と導電ピン30の軸線を一致させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線板、スピーカ、ボタン電池、マイクロホン等に代表される複数の電気接合物の電気的な導通接続に使用される圧接挟持型コネクタ及びその接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話の配線板と音響部品との電気的な導通接続には、小型の圧接挟持型コネクタが使用されているが、この種の圧接挟持型コネクタは、図17や図18に示すように、配線板と音響部品3との間に介在されるハウジング10Aと、このハウジング10Aの複数の取付孔11にそれぞれ嵌着されて底部21が露出する有底筒形の導電キャップ20Aと、各導電キャップ20Aにスライド可能に挿入されて音響部品3のランド4に接触する複数の導電ピン30Aと、これら導電キャップ20Aと導電ピン30Aとの間に介在されて各導電ピン30Aをハウジング10Aから突出させる導電コイルバネ40Aとを備えて構成されている。
【0003】
各導電ピン30Aは、円柱形に形成されてその先端部33が斜めにカットされており、この先端部33の上角が接触部として音響部品3のランド4に接触するよう機能する。このような圧接挟持型コネクタは、配線板と音響部品3の複数のランド4間に介在されてこれらを導通接続する(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2002‐270270号公報
【特許文献2】特開2005‐317227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来における圧接挟持型コネクタは、以上のように構成され、きわめて良好な導通接続が大いに期待できる。
しかしながら、発明者は、係る効果に満足することなく、圧接挟持型コネクタに様々な改良を施して付加価値を付け、技術の飛躍的進歩を刺激することを欲している。具体的には、導電キャップ20Aと導電ピン30Aとの接触に伴う導通をさらに安定させ、今後益々の低抵抗化を図りたいという要望がある。
【0005】
また、発明者には、音響部品3のランド4が小さい場合や複数列に配列されている場合でも、ランド4に対する導電ピン30Aの接触が不安定化したり、ランド4に導電ピン30Aが接触しないおそれを確実に排除したいという要望がある。
この点について説明すると、従来の圧接挟持型コネクタにより配線板と音響部品3とを導通接続しようとすると、図18に示すように、ランド4と導電ピン30Aの中心部(軸線)Cとが一致するものの、ランド4に対する導電ピン30Aの先端部33、すなわち接触部が中心部Cから外側に偏心してランド4の周縁部に接触することとなる。
【0006】
したがって、音響部品3のランド4が小さい場合や複数列に配列されている場合には、ランド4に対する導電ピン先端部33の傾斜方向が一様ではなく、接触位置が必ずしも安定しないので、ランド4に導電ピン30Aを接触させて導通をさらに確保したいという発明者の要望を満たすことができないおそれがある。係る要望は、小型のランドや高密度実装を要する近年のモバイル機器では重要である。
【0007】
さらに、例えランド4に導電ピン30Aが接触する場合でも、圧接挟持型コネクタの組立公差に鑑み、ランド4に対して導電ピン30Aを余裕のある状態で確実に接触させ、導通を確保することが望ましい。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたもので、導電キャップと導電ピンの導通を安定させて低抵抗化を図ることができ、しかも、電気接合物の導体部が小さい場合や複数列に配列されている場合でも、導体部に対する導電ピンの接触を安定させることのできる圧接挟持型コネクタ及びその接続構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては上記課題を解決するため、複数の電気接合物の導体部に挟み持たれて電気的に導通接続するものであって、
支持体に内蔵されて底部が露出する略有底筒形の導電キャップと、この導電キャップにスライド可能に挿入されて電気接合物の導体部に接触する導電ピンと、これら導電キャップと導電ピンとの間に介在されて導電ピンを支持体から突出させる導電バネとを含み、
導電キャップと導電ピンの対向部の少なくともいずれか一方を導電ピンのスライド方向に対して傾斜させ、電気接合物の導体部に対する導電ピンの接触部と導電ピンの軸線とを略一致させるようにしたことを特徴としている。
【0010】
なお、支持体に導電キャップをスライド可能に内蔵してその底部から突部を突出させることもできる。
また、支持体に、導電ピンを案内するガイドボスを形成することができる。
また、導電ピンの自由端部を略半球形、略半楕球形、略円錐形、あるいは鋭利な凹凸形に形成することもできる。
また、対向部を導電ピンのスライド方向に対し10°〜30°の角度で傾斜させることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明においては上記課題を解決するため、対向する複数の電気接合物の導体部間に請求項1ないし4いずれかに記載の圧接挟持型コネクタを介在して電気的に導通接続するようにしたことを特徴としている。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における電気接合物には、少なくとも経肺投薬装置やモバイル機器に使用される各種の電子部品や液晶部品、具体的には経肺投薬装置の薬品カートリッジ、スピーカ、マイクロホン、配線板、ボタン電池等が含まれる。支持体は、単数複数の絶縁板やブロック等を組み合わせて矩形、多角形、円形、楕円形等に形成することができる。この支持体には、単数複数の導電キャップ、導電ピン、及び導電バネを配設することができる。
【0013】
導電キャップと導電ピンとは、導電キャップの対向部が傾斜していても良いし、導電ピンの対向部が傾斜していても良い。この対向部を傾斜させる方法としては、少なくとも対向部の対向面を直接傾斜させる方法、平坦な対向部に傾斜面付きの台座を積層する方法等があげられる。
【0014】
電気接合物の導体部に対する導電ピンの接触部と導電ピンの軸線とは、完全に一致していても良いし、おおよそ一致していても良い。さらに、本発明に係る圧接挟持型コネクタは、モバイル機器、具体的には携帯電話、PDA、ノートパソコン、携帯型ゲーム機、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等に使用されるのが主ではあるが、必ずしも特定されるものではない。
【0015】
本発明によれば、支持体に設けられた導電キャップ及び又は導電ピンの傾斜した対向部が導電バネのバネ力を導電キャップの周面方向に作用させるので、導電キャップに導電ピンが強く接触して電気的な導通を安定させる。また、傾斜した対向部の誘導作用により、電気接合物の導体部と導電ピンの中心部とが略一致するとともに、電気接合物の導体部に対する導電ピンの接触部と導電ピンの中心部とが略一致する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、導電キャップと導電ピンの導通を安定させて低抵抗化を図ることができるという効果がある。また、モバイル機器等からなる電気接合物の導体部が小さい場合や複数列に配列されている場合等でも、導体部に対する導電ピンの接触を安定させることができるという効果がある。
また、支持体に、導電ピンを案内するガイドボスを形成すれば、導電ピンが不安定な状態でスライドし、電気接合物の導体部に不安定な状態で接触したり、接触しないという弊害を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における圧接挟持型コネクタは、図1ないし図5に示すように、携帯電話の相対向する配線板1と音響部品3との間に介在される絶縁性のハウジング10と、このハウジング10に内蔵される複数の導電キャップ20と、各導電キャップ20にスライド可能に挿入されてプランジャとして機能する複数の導電ピン30と、これら導電キャップ20と導電ピン30との間に介在される導電コイルバネ40とを備え、導電ピン30の底面を傾斜(バイアス)させるようにしている。
【0018】
配線板1は、例えば可撓性を有する薄いフレキシブル配線板からなり、少なくとも表面の所定部分に、導体パターンである平坦な複数のランド2と絶縁性の保護層とがエッチング法やプリント法等によりそれぞれ印刷されており、音響部品3に対向する(図4参照)。
【0019】
音響部品3は、例えば原音に対する追従性に優れ、高密度実装に適する薄く丸いコンデンサマイクロホン等からなり、裏面の中央部と周縁部とに、電極部として機能する平坦なランド4が円形あるいはリング形に形成されており、図示しない携帯電話のケース内に圧入して装着される(図4参照)。
【0020】
ハウジング10は、絶縁性を有する所定の樹脂を使用して細長い平面長方形のブロックに成形され、長手方向に複数の取付孔11が間隔をおき一列に配列されており、各取付孔11の平坦な表面周縁部には、導電ピン30に貫通される平面リング形のガイドボス12が一体形成されて案内機能や補強機能を発揮する。
【0021】
ハウジング10を成形する樹脂としては、寸法安定性、成形性、耐熱性に優れる汎用のエンジニアリングプラスチック、具体的にはポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリアミド9T、変性ポリアミド6T、ポリプロピレン、ポリカーボネート等があげられる。これらの中でも、耐衝撃性等に優れる変性ポリアミド6Tの使用が最適である。
【0022】
各導電キャップ20は、所定の導電材料を使用して有底円筒形に形成され、ハウジング10の複数の取付孔11にそれぞれ圧入して嵌着固定されており、平坦な底部底面がハウジング10の裏面から僅かに露出して配線板1のランド2にハンダを介し電気的に導通接続される。この導電キャップ20は、例えばニッケルメッキや金メッキ処理された導電性の材料、具体的には銅、真鍮、アルミニウム等を使用して断面略U字形に形成され、周壁の外周面周方向には、ハウジング10の取付孔11に食い込む係止爪22が突出形成される。
【0023】
各導電ピン30は、各導電キャップ20の滑らかな内周面にスライド可能に摺接する円板部31と、この円板部31の表面中心部から起立する円柱形のピン部32とを備えた中実の断面凸字形に形成され、円板部31よりも小径のピン部32がガイドボス12を貫通してハウジング10の表面から上方に貫通突出しており、このピン部32の自由端部である半球形の丸い先端部33が音響部品3のランド4に弾発的に接触する。
【0024】
導電ピン30の材料としては、導電キャップ20の材料同様、ニッケルメッキや金メッキ処理された導電性の材料、具体的には銅、真鍮、アルミニウム等があげられる。この導電ピン30の導電キャップ20の内底面に対向する底部、換言すれば、円板部31の底面は、導電ピン30のスライド方向に対し所定の角度で傾斜形成され、導電キャップ20と導電ピン30とを確実に導通させたり、音響部品3のランド4、導電ピン30の接触部、及び導電ピン30の中心部(軸線)Cを一致させるよう機能する。
【0025】
導電ピン30の円板部底面は、導電キャップ20と導電ピン30の導通を安定させて低抵抗化を図る観点から導電ピン30のスライド方向に対し10°〜30°、好ましくは15°の角度で傾斜する。円板部31底面の傾斜角が10°〜30°の範囲なのは、傾斜角が10°未満の場合には、導電キャップ20と導電ピン30とを確実に接触させることができないおそれがあるからである。逆に、傾斜角が30°を超える場合には、導電ピン30のスライドに支障を来たすからである。
【0026】
導電コイルバネ40は、例えばリン青銅、ベリリウム銅、ばね鋼、ピアノ線材等の金属線、あるいはこれらの金属線にニッケルメッキや金メッキ処理を施した金属細線からなり、コイル状に巻装される。このような導電コイルバネ40は、導電キャップ20内に嵌入されて導電キャップ20と導電ピン30との底部間に接触状態で挟持され、弾圧付勢力により導電ピン30を導電キャップ20の底部21から離隔する方向、換言すれば、ハウジング10の表面方向(図3、図4の上方向)に突出させるよう機能する。
【0027】
上記構成において、配線板1と音響部品3とを導通接続する場合には、用意した配線板1と音響部品3の複数のランド2・4間に圧接挟持型コネクタを挟持させて低荷重を加えれば良い。
すると、導電ピン30が導電コイルバネ40を圧縮しつつ下降し、導電キャップ20、導電ピン30、及び導電コイルバネ40が導通経路を形成して配線板1と音響部品3とを導通接続する。この際、導電ピン30の傾斜した底部と圧縮された導電コイルバネ40の端部とが圧接するので、導電キャップ20の内周面に導電ピン30の円板部31が僅かに傾斜して絶えず圧接する。
【0028】
上記構成によれば、導電ピン30の傾斜した底部が導電コイルバネ40の弾圧付勢力を導電キャップ20の内周面方向に誘導するので、導電キャップ20と傾斜した導電ピン30とが確実に接触して導通を著しく安定させ、さらなる抵抗の安定化や低抵抗化を図ることができる。また、導電ピン30の傾斜した底部の誘導作用により、音響部品3のランド4と導電ピン30の中心部Cとを一致させ、かつランド4に対する導電ピン30の先端部33、すなわち接触部を導電ピン30の中心部Cと一致させることができる(図5参照)。
【0029】
したがって、薄型化、小型化、軽量化が要望されている近年のモバイル機器において、例え音響部品3のランド4が小さい場合や複数列に配列されている場合でも、ランド4に対する導電ピン先端部33の接触位置をさらに安定させることができ、ランド4に導電ピン30が接触せずに導通を確保できないおそれをきわめて有効に排除することができる。また、音響部品3のランド4と導電ピン30の中心部Cとを一致させることができるので、組立公差を最大限確保し、ランド4に対して導電ピン30を余裕のある状態で確実に接触させ、容易に導通を確保することが可能になる。
【0030】
また、ハウジング10に取付穴を穿孔してその底部と周面とに金メッキ処理により導電性をそれぞれ施すのではなく、ハウジング10の取付孔11に導電性を有する別体の導電キャップ20を嵌着するので、金メッキ処理に伴う微細な凹凸で導電ピン30のスライドに支障を来たすことが全くない。また、導電ピン30の底部に傾斜面付きの台座を別に積層するのではなく、導電ピン30の底部底面を直接傾斜させるので、製造や組み立て作業の簡素化、容易化、部品点数の削減を図ることが可能になる。この効果は、薄型化や小型化が益々要望されている近年の小型コネクタや小型モバイル機器においてはきわめて重要である。
【0031】
また、導電ピン30の先端部33が尖っておらず、接触面積の拡大が期待できる半球形なので、例え音響部品3のランド4が小面積でも、位置ずれや非接触を防止することが可能になる。さらに、ハウジング10のガイドボス12に導電ピン30における円板部31とピン部32との段差部を接触させるので、簡易な構成で導電ピン30の抜けや脱落防止が大いに期待できる。
【0032】
次に、図6は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、ハウジング10を小さい円柱形に形成して単一の導電キャップ20、導電ピン30、及び導電コイルバネ40を組み合わせて内蔵するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、部品点数を削減して圧接挟持型コネクタの薄型化、小型化、軽量化を図ることができるのは明らかである。
【0033】
次に、図7は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、ハウジング10を小さい角柱形に形成して単一の導電キャップ20、導電ピン30、及び導電コイルバネ40を組み合わせて内蔵し、ガイドボス12を省略するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、ハウジング10の形状の多様化を図ることができるのは明らかである。
【0034】
次に、図8は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、ハウジング10を幅広の長方形に形成して複数の導電キャップ20、導電ピン30、及び導電コイルバネ40を組み合わせて2×3に内蔵し、ガイドボス12を省略するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、圧接挟持型コネクタを高密度実装に容易に対応させることができるのは明白である。
【0035】
次に、図9ないし図12は本発明の第5の実施形態を示すもので、この場合には、ハウジング10と複数の取付孔11とを複数枚の樹脂板13を積層することにより形成し、ハウジング10の各取付孔11に導電キャップ20をスライド可能に内蔵してその底部21底面から導電トーピン23を突出させ、導電キャップ20の導電トーピン23と導電ピン30とを導電コイルバネ40の弾圧付勢力によりハウジング10からそれぞれ弾発的に突出させるようにしている。
【0036】
各樹脂板13は、汎用のエンジニアリングプラスチック、具体的にはポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリアミド9T、変性ポリアミド6T、ポリプロピレン、ポリカーボネート等により成形され、表面には、導電ピン30や導電トーピン23に貫通される平面リング形のガイドボス12が一体形成されて案内機能や補強機能を発揮する。また、導電キャップ20は、その周壁の外周面から係止爪22が省略され、導電トーピン23が先端の丸まった円柱形に形成されて配線板1のランド2に弾発的に接触するよう機能する。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0037】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、ハウジング10から露出する導電キャップ20の導電トーピン23と導電ピン30とをそれぞれ可動とするので、圧接挟持型コネクタの種類の多様化を図ることができるのは明白である。また、導電キャップ20の底部21をハンダ付けしない場合に有意義である。
【0038】
次に、図13は本発明の第6の実施形態を示すもので、この場合には、ハウジング10と取付孔11とを小さく丸い樹脂板13を積層することにより形成し、ハウジング10の取付孔11に導電キャップ20をスライド可能に内蔵してその底部底面から円柱形の導電トーピン23を突出させるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、ハウジング10の形状の多様化を図ることができる。
【0039】
次に、図14は本発明の第7の実施形態を示すもので、この場合には、ハウジング10と2×3の複数の取付孔11とを複数枚の樹脂板13を積層することにより形成し、ハウジング10の各取付孔11に導電キャップ20をスライド可能に内蔵してその底部底面から導電トーピン23を突出させるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、圧接挟持型コネクタやハウジング10の多種多様化を図ることができる。
【0040】
次に、図15は本発明の第8の実施形態を示すもので、この場合には、各導電ピン30の先端部33を半球形ではなく、尖った円錐形に形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0041】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、音響部品3のランド4に導電ピン30の尖った先端部33が食い込むので、良好な導通や導電ピン30形状の多様化が大いに期待できる。この効果は、音響部品3の代わりに半導体パッケージ(例えば、BGAタイプやCSPタイプ等)が使用され、ランドがハンダボールの場合に特に有意義である。
【0042】
次に、図16は本発明の第9の実施形態を示すもので、この場合には、導電ピン30の自由端部を半球形ではなく、鋭利な凹凸形、例えば建築分野で使用される略ねずみ歯きり状に形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0043】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、音響部品3のランド4に導電ピン30の凸凹の先端部33が食い込むので、良好な導通や導電ピン形状の多様化が大いに期待できる。この効果は、音響部品3の代わりに半導体パッケージ(例えば、BGAタイプやCSPタイプ等)が使用され、ランドがハンダボールの場合に特に有意義である。
【0044】
なお、上記実施形態では携帯電話の配線板1と音響部品3とを導通接続したが、何らこれに限定されるものではなく、例えば液晶基板と音響部品3、半導体パッケージと音響部品3、複数の音響部品3等を導通接続しても良い。また、上記実施形態ではハウジング10から導電ピン30を単に突出させたが、ハウジング10の表面や裏面に、導電ピン30や導電トーピン23に貫通される単数複数のエラストマーを積層して防塵機能や防水機能を確保するようにしても良い。
【0045】
また、導電キャップ20や導電ピン30に傾斜加工を施したくない場合には、導電キャップ20の平坦な内底面に傾斜面や段差面付きの台座を積層したり、導電ピン30の平坦な円板部31に傾斜面や段差面付きの台座を積層しても良い。また、導電コイルバネ40の一端部、他端部、又は中央部の径を拡径にして姿勢の安定化、組立性の向上、ストロークの拡大等を図るようにしても良い。さらに、同様の機能が期待できるのであれば、導電コイルバネ40の代わりに導電板バネ等を使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る圧接挟持型コネクタの実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図2】本発明に係る圧接挟持型コネクタの実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【図3】本発明に係る圧接挟持型コネクタの実施形態を模式的に示す正面説明図である。
【図4】本発明に係る圧接挟持型コネクタ及びその接続構造の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図5】本発明に係る圧接挟持型コネクタ及びその接続構造の実施形態を模式的に示す要部断面説明図である。
【図6】本発明に係る圧接挟持型コネクタの第2の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図7】本発明に係る圧接挟持型コネクタの第3の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図8】本発明に係る圧接挟持型コネクタの第4の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図9】本発明に係る圧接挟持型コネクタの第5の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図10】図9の平面説明図である。
【図11】図9の正面説明図である。
【図12】図9の断面説明図である。
【図13】本発明に係る圧接挟持型コネクタの第6の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図14】本発明に係る圧接挟持型コネクタの第7の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図15】本発明に係る圧接挟持型コネクタの第8の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図16】本発明に係る圧接挟持型コネクタの第9の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図17】従来の圧接挟持型コネクタを示す断面斜視説明図である。
【図18】従来の圧接挟持型コネクタの問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 配線板(電気接合物)
2 ランド(導体部)
3 音響部品(電気接合物)
4 ランド(導体部)
10 ハウジング(支持体)
11 取付孔
12 ガイドボス
13 樹脂板
20 導電キャップ
21 底部(対向部)
22 係止爪
23 導電トーピン(突部)
30 導電ピン
31 円板部(対向部、底部)
32 ピン部
33 先端部(接触部、自由端部)
40 導電コイルバネ(導電バネ)
C 中心部(軸線)
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線板、スピーカ、ボタン電池、マイクロホン等に代表される複数の電気接合物の電気的な導通接続に使用される圧接挟持型コネクタ及びその接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話の配線板と音響部品との電気的な導通接続には、小型の圧接挟持型コネクタが使用されているが、この種の圧接挟持型コネクタは、図17や図18に示すように、配線板と音響部品3との間に介在されるハウジング10Aと、このハウジング10Aの複数の取付孔11にそれぞれ嵌着されて底部21が露出する有底筒形の導電キャップ20Aと、各導電キャップ20Aにスライド可能に挿入されて音響部品3のランド4に接触する複数の導電ピン30Aと、これら導電キャップ20Aと導電ピン30Aとの間に介在されて各導電ピン30Aをハウジング10Aから突出させる導電コイルバネ40Aとを備えて構成されている。
【0003】
各導電ピン30Aは、円柱形に形成されてその先端部33が斜めにカットされており、この先端部33の上角が接触部として音響部品3のランド4に接触するよう機能する。このような圧接挟持型コネクタは、配線板と音響部品3の複数のランド4間に介在されてこれらを導通接続する(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2002‐270270号公報
【特許文献2】特開2005‐317227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来における圧接挟持型コネクタは、以上のように構成され、きわめて良好な導通接続が大いに期待できる。
しかしながら、発明者は、係る効果に満足することなく、圧接挟持型コネクタに様々な改良を施して付加価値を付け、技術の飛躍的進歩を刺激することを欲している。具体的には、導電キャップ20Aと導電ピン30Aとの接触に伴う導通をさらに安定させ、今後益々の低抵抗化を図りたいという要望がある。
【0005】
また、発明者には、音響部品3のランド4が小さい場合や複数列に配列されている場合でも、ランド4に対する導電ピン30Aの接触が不安定化したり、ランド4に導電ピン30Aが接触しないおそれを確実に排除したいという要望がある。
この点について説明すると、従来の圧接挟持型コネクタにより配線板と音響部品3とを導通接続しようとすると、図18に示すように、ランド4と導電ピン30Aの中心部(軸線)Cとが一致するものの、ランド4に対する導電ピン30Aの先端部33、すなわち接触部が中心部Cから外側に偏心してランド4の周縁部に接触することとなる。
【0006】
したがって、音響部品3のランド4が小さい場合や複数列に配列されている場合には、ランド4に対する導電ピン先端部33の傾斜方向が一様ではなく、接触位置が必ずしも安定しないので、ランド4に導電ピン30Aを接触させて導通をさらに確保したいという発明者の要望を満たすことができないおそれがある。係る要望は、小型のランドや高密度実装を要する近年のモバイル機器では重要である。
【0007】
さらに、例えランド4に導電ピン30Aが接触する場合でも、圧接挟持型コネクタの組立公差に鑑み、ランド4に対して導電ピン30Aを余裕のある状態で確実に接触させ、導通を確保することが望ましい。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたもので、導電キャップと導電ピンの導通を安定させて低抵抗化を図ることができ、しかも、電気接合物の導体部が小さい場合や複数列に配列されている場合でも、導体部に対する導電ピンの接触を安定させることのできる圧接挟持型コネクタ及びその接続構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては上記課題を解決するため、複数の電気接合物の導体部に挟み持たれて電気的に導通接続するものであって、
支持体に内蔵されて底部が露出する略有底筒形の導電キャップと、この導電キャップにスライド可能に挿入されて電気接合物の導体部に接触する導電ピンと、これら導電キャップと導電ピンとの間に介在されて導電ピンを支持体から突出させる導電バネとを含み、
導電キャップと導電ピンの対向部の少なくともいずれか一方を導電ピンのスライド方向に対して傾斜させ、電気接合物の導体部に対する導電ピンの接触部と導電ピンの軸線とを略一致させるようにしたことを特徴としている。
【0010】
なお、支持体に導電キャップをスライド可能に内蔵してその底部から突部を突出させることもできる。
また、支持体に、導電ピンを案内するガイドボスを形成することができる。
また、導電ピンの自由端部を略半球形、略半楕球形、略円錐形、あるいは鋭利な凹凸形に形成することもできる。
また、対向部を導電ピンのスライド方向に対し10°〜30°の角度で傾斜させることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明においては上記課題を解決するため、対向する複数の電気接合物の導体部間に請求項1ないし4いずれかに記載の圧接挟持型コネクタを介在して電気的に導通接続するようにしたことを特徴としている。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における電気接合物には、少なくとも経肺投薬装置やモバイル機器に使用される各種の電子部品や液晶部品、具体的には経肺投薬装置の薬品カートリッジ、スピーカ、マイクロホン、配線板、ボタン電池等が含まれる。支持体は、単数複数の絶縁板やブロック等を組み合わせて矩形、多角形、円形、楕円形等に形成することができる。この支持体には、単数複数の導電キャップ、導電ピン、及び導電バネを配設することができる。
【0013】
導電キャップと導電ピンとは、導電キャップの対向部が傾斜していても良いし、導電ピンの対向部が傾斜していても良い。この対向部を傾斜させる方法としては、少なくとも対向部の対向面を直接傾斜させる方法、平坦な対向部に傾斜面付きの台座を積層する方法等があげられる。
【0014】
電気接合物の導体部に対する導電ピンの接触部と導電ピンの軸線とは、完全に一致していても良いし、おおよそ一致していても良い。さらに、本発明に係る圧接挟持型コネクタは、モバイル機器、具体的には携帯電話、PDA、ノートパソコン、携帯型ゲーム機、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等に使用されるのが主ではあるが、必ずしも特定されるものではない。
【0015】
本発明によれば、支持体に設けられた導電キャップ及び又は導電ピンの傾斜した対向部が導電バネのバネ力を導電キャップの周面方向に作用させるので、導電キャップに導電ピンが強く接触して電気的な導通を安定させる。また、傾斜した対向部の誘導作用により、電気接合物の導体部と導電ピンの中心部とが略一致するとともに、電気接合物の導体部に対する導電ピンの接触部と導電ピンの中心部とが略一致する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、導電キャップと導電ピンの導通を安定させて低抵抗化を図ることができるという効果がある。また、モバイル機器等からなる電気接合物の導体部が小さい場合や複数列に配列されている場合等でも、導体部に対する導電ピンの接触を安定させることができるという効果がある。
また、支持体に、導電ピンを案内するガイドボスを形成すれば、導電ピンが不安定な状態でスライドし、電気接合物の導体部に不安定な状態で接触したり、接触しないという弊害を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における圧接挟持型コネクタは、図1ないし図5に示すように、携帯電話の相対向する配線板1と音響部品3との間に介在される絶縁性のハウジング10と、このハウジング10に内蔵される複数の導電キャップ20と、各導電キャップ20にスライド可能に挿入されてプランジャとして機能する複数の導電ピン30と、これら導電キャップ20と導電ピン30との間に介在される導電コイルバネ40とを備え、導電ピン30の底面を傾斜(バイアス)させるようにしている。
【0018】
配線板1は、例えば可撓性を有する薄いフレキシブル配線板からなり、少なくとも表面の所定部分に、導体パターンである平坦な複数のランド2と絶縁性の保護層とがエッチング法やプリント法等によりそれぞれ印刷されており、音響部品3に対向する(図4参照)。
【0019】
音響部品3は、例えば原音に対する追従性に優れ、高密度実装に適する薄く丸いコンデンサマイクロホン等からなり、裏面の中央部と周縁部とに、電極部として機能する平坦なランド4が円形あるいはリング形に形成されており、図示しない携帯電話のケース内に圧入して装着される(図4参照)。
【0020】
ハウジング10は、絶縁性を有する所定の樹脂を使用して細長い平面長方形のブロックに成形され、長手方向に複数の取付孔11が間隔をおき一列に配列されており、各取付孔11の平坦な表面周縁部には、導電ピン30に貫通される平面リング形のガイドボス12が一体形成されて案内機能や補強機能を発揮する。
【0021】
ハウジング10を成形する樹脂としては、寸法安定性、成形性、耐熱性に優れる汎用のエンジニアリングプラスチック、具体的にはポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリアミド9T、変性ポリアミド6T、ポリプロピレン、ポリカーボネート等があげられる。これらの中でも、耐衝撃性等に優れる変性ポリアミド6Tの使用が最適である。
【0022】
各導電キャップ20は、所定の導電材料を使用して有底円筒形に形成され、ハウジング10の複数の取付孔11にそれぞれ圧入して嵌着固定されており、平坦な底部底面がハウジング10の裏面から僅かに露出して配線板1のランド2にハンダを介し電気的に導通接続される。この導電キャップ20は、例えばニッケルメッキや金メッキ処理された導電性の材料、具体的には銅、真鍮、アルミニウム等を使用して断面略U字形に形成され、周壁の外周面周方向には、ハウジング10の取付孔11に食い込む係止爪22が突出形成される。
【0023】
各導電ピン30は、各導電キャップ20の滑らかな内周面にスライド可能に摺接する円板部31と、この円板部31の表面中心部から起立する円柱形のピン部32とを備えた中実の断面凸字形に形成され、円板部31よりも小径のピン部32がガイドボス12を貫通してハウジング10の表面から上方に貫通突出しており、このピン部32の自由端部である半球形の丸い先端部33が音響部品3のランド4に弾発的に接触する。
【0024】
導電ピン30の材料としては、導電キャップ20の材料同様、ニッケルメッキや金メッキ処理された導電性の材料、具体的には銅、真鍮、アルミニウム等があげられる。この導電ピン30の導電キャップ20の内底面に対向する底部、換言すれば、円板部31の底面は、導電ピン30のスライド方向に対し所定の角度で傾斜形成され、導電キャップ20と導電ピン30とを確実に導通させたり、音響部品3のランド4、導電ピン30の接触部、及び導電ピン30の中心部(軸線)Cを一致させるよう機能する。
【0025】
導電ピン30の円板部底面は、導電キャップ20と導電ピン30の導通を安定させて低抵抗化を図る観点から導電ピン30のスライド方向に対し10°〜30°、好ましくは15°の角度で傾斜する。円板部31底面の傾斜角が10°〜30°の範囲なのは、傾斜角が10°未満の場合には、導電キャップ20と導電ピン30とを確実に接触させることができないおそれがあるからである。逆に、傾斜角が30°を超える場合には、導電ピン30のスライドに支障を来たすからである。
【0026】
導電コイルバネ40は、例えばリン青銅、ベリリウム銅、ばね鋼、ピアノ線材等の金属線、あるいはこれらの金属線にニッケルメッキや金メッキ処理を施した金属細線からなり、コイル状に巻装される。このような導電コイルバネ40は、導電キャップ20内に嵌入されて導電キャップ20と導電ピン30との底部間に接触状態で挟持され、弾圧付勢力により導電ピン30を導電キャップ20の底部21から離隔する方向、換言すれば、ハウジング10の表面方向(図3、図4の上方向)に突出させるよう機能する。
【0027】
上記構成において、配線板1と音響部品3とを導通接続する場合には、用意した配線板1と音響部品3の複数のランド2・4間に圧接挟持型コネクタを挟持させて低荷重を加えれば良い。
すると、導電ピン30が導電コイルバネ40を圧縮しつつ下降し、導電キャップ20、導電ピン30、及び導電コイルバネ40が導通経路を形成して配線板1と音響部品3とを導通接続する。この際、導電ピン30の傾斜した底部と圧縮された導電コイルバネ40の端部とが圧接するので、導電キャップ20の内周面に導電ピン30の円板部31が僅かに傾斜して絶えず圧接する。
【0028】
上記構成によれば、導電ピン30の傾斜した底部が導電コイルバネ40の弾圧付勢力を導電キャップ20の内周面方向に誘導するので、導電キャップ20と傾斜した導電ピン30とが確実に接触して導通を著しく安定させ、さらなる抵抗の安定化や低抵抗化を図ることができる。また、導電ピン30の傾斜した底部の誘導作用により、音響部品3のランド4と導電ピン30の中心部Cとを一致させ、かつランド4に対する導電ピン30の先端部33、すなわち接触部を導電ピン30の中心部Cと一致させることができる(図5参照)。
【0029】
したがって、薄型化、小型化、軽量化が要望されている近年のモバイル機器において、例え音響部品3のランド4が小さい場合や複数列に配列されている場合でも、ランド4に対する導電ピン先端部33の接触位置をさらに安定させることができ、ランド4に導電ピン30が接触せずに導通を確保できないおそれをきわめて有効に排除することができる。また、音響部品3のランド4と導電ピン30の中心部Cとを一致させることができるので、組立公差を最大限確保し、ランド4に対して導電ピン30を余裕のある状態で確実に接触させ、容易に導通を確保することが可能になる。
【0030】
また、ハウジング10に取付穴を穿孔してその底部と周面とに金メッキ処理により導電性をそれぞれ施すのではなく、ハウジング10の取付孔11に導電性を有する別体の導電キャップ20を嵌着するので、金メッキ処理に伴う微細な凹凸で導電ピン30のスライドに支障を来たすことが全くない。また、導電ピン30の底部に傾斜面付きの台座を別に積層するのではなく、導電ピン30の底部底面を直接傾斜させるので、製造や組み立て作業の簡素化、容易化、部品点数の削減を図ることが可能になる。この効果は、薄型化や小型化が益々要望されている近年の小型コネクタや小型モバイル機器においてはきわめて重要である。
【0031】
また、導電ピン30の先端部33が尖っておらず、接触面積の拡大が期待できる半球形なので、例え音響部品3のランド4が小面積でも、位置ずれや非接触を防止することが可能になる。さらに、ハウジング10のガイドボス12に導電ピン30における円板部31とピン部32との段差部を接触させるので、簡易な構成で導電ピン30の抜けや脱落防止が大いに期待できる。
【0032】
次に、図6は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、ハウジング10を小さい円柱形に形成して単一の導電キャップ20、導電ピン30、及び導電コイルバネ40を組み合わせて内蔵するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、部品点数を削減して圧接挟持型コネクタの薄型化、小型化、軽量化を図ることができるのは明らかである。
【0033】
次に、図7は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、ハウジング10を小さい角柱形に形成して単一の導電キャップ20、導電ピン30、及び導電コイルバネ40を組み合わせて内蔵し、ガイドボス12を省略するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、ハウジング10の形状の多様化を図ることができるのは明らかである。
【0034】
次に、図8は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、ハウジング10を幅広の長方形に形成して複数の導電キャップ20、導電ピン30、及び導電コイルバネ40を組み合わせて2×3に内蔵し、ガイドボス12を省略するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、圧接挟持型コネクタを高密度実装に容易に対応させることができるのは明白である。
【0035】
次に、図9ないし図12は本発明の第5の実施形態を示すもので、この場合には、ハウジング10と複数の取付孔11とを複数枚の樹脂板13を積層することにより形成し、ハウジング10の各取付孔11に導電キャップ20をスライド可能に内蔵してその底部21底面から導電トーピン23を突出させ、導電キャップ20の導電トーピン23と導電ピン30とを導電コイルバネ40の弾圧付勢力によりハウジング10からそれぞれ弾発的に突出させるようにしている。
【0036】
各樹脂板13は、汎用のエンジニアリングプラスチック、具体的にはポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリアミド9T、変性ポリアミド6T、ポリプロピレン、ポリカーボネート等により成形され、表面には、導電ピン30や導電トーピン23に貫通される平面リング形のガイドボス12が一体形成されて案内機能や補強機能を発揮する。また、導電キャップ20は、その周壁の外周面から係止爪22が省略され、導電トーピン23が先端の丸まった円柱形に形成されて配線板1のランド2に弾発的に接触するよう機能する。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0037】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、ハウジング10から露出する導電キャップ20の導電トーピン23と導電ピン30とをそれぞれ可動とするので、圧接挟持型コネクタの種類の多様化を図ることができるのは明白である。また、導電キャップ20の底部21をハンダ付けしない場合に有意義である。
【0038】
次に、図13は本発明の第6の実施形態を示すもので、この場合には、ハウジング10と取付孔11とを小さく丸い樹脂板13を積層することにより形成し、ハウジング10の取付孔11に導電キャップ20をスライド可能に内蔵してその底部底面から円柱形の導電トーピン23を突出させるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、ハウジング10の形状の多様化を図ることができる。
【0039】
次に、図14は本発明の第7の実施形態を示すもので、この場合には、ハウジング10と2×3の複数の取付孔11とを複数枚の樹脂板13を積層することにより形成し、ハウジング10の各取付孔11に導電キャップ20をスライド可能に内蔵してその底部底面から導電トーピン23を突出させるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、圧接挟持型コネクタやハウジング10の多種多様化を図ることができる。
【0040】
次に、図15は本発明の第8の実施形態を示すもので、この場合には、各導電ピン30の先端部33を半球形ではなく、尖った円錐形に形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0041】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、音響部品3のランド4に導電ピン30の尖った先端部33が食い込むので、良好な導通や導電ピン30形状の多様化が大いに期待できる。この効果は、音響部品3の代わりに半導体パッケージ(例えば、BGAタイプやCSPタイプ等)が使用され、ランドがハンダボールの場合に特に有意義である。
【0042】
次に、図16は本発明の第9の実施形態を示すもので、この場合には、導電ピン30の自由端部を半球形ではなく、鋭利な凹凸形、例えば建築分野で使用される略ねずみ歯きり状に形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0043】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、音響部品3のランド4に導電ピン30の凸凹の先端部33が食い込むので、良好な導通や導電ピン形状の多様化が大いに期待できる。この効果は、音響部品3の代わりに半導体パッケージ(例えば、BGAタイプやCSPタイプ等)が使用され、ランドがハンダボールの場合に特に有意義である。
【0044】
なお、上記実施形態では携帯電話の配線板1と音響部品3とを導通接続したが、何らこれに限定されるものではなく、例えば液晶基板と音響部品3、半導体パッケージと音響部品3、複数の音響部品3等を導通接続しても良い。また、上記実施形態ではハウジング10から導電ピン30を単に突出させたが、ハウジング10の表面や裏面に、導電ピン30や導電トーピン23に貫通される単数複数のエラストマーを積層して防塵機能や防水機能を確保するようにしても良い。
【0045】
また、導電キャップ20や導電ピン30に傾斜加工を施したくない場合には、導電キャップ20の平坦な内底面に傾斜面や段差面付きの台座を積層したり、導電ピン30の平坦な円板部31に傾斜面や段差面付きの台座を積層しても良い。また、導電コイルバネ40の一端部、他端部、又は中央部の径を拡径にして姿勢の安定化、組立性の向上、ストロークの拡大等を図るようにしても良い。さらに、同様の機能が期待できるのであれば、導電コイルバネ40の代わりに導電板バネ等を使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る圧接挟持型コネクタの実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図2】本発明に係る圧接挟持型コネクタの実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【図3】本発明に係る圧接挟持型コネクタの実施形態を模式的に示す正面説明図である。
【図4】本発明に係る圧接挟持型コネクタ及びその接続構造の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図5】本発明に係る圧接挟持型コネクタ及びその接続構造の実施形態を模式的に示す要部断面説明図である。
【図6】本発明に係る圧接挟持型コネクタの第2の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図7】本発明に係る圧接挟持型コネクタの第3の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図8】本発明に係る圧接挟持型コネクタの第4の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図9】本発明に係る圧接挟持型コネクタの第5の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図10】図9の平面説明図である。
【図11】図9の正面説明図である。
【図12】図9の断面説明図である。
【図13】本発明に係る圧接挟持型コネクタの第6の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図14】本発明に係る圧接挟持型コネクタの第7の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図15】本発明に係る圧接挟持型コネクタの第8の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図16】本発明に係る圧接挟持型コネクタの第9の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図17】従来の圧接挟持型コネクタを示す断面斜視説明図である。
【図18】従来の圧接挟持型コネクタの問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 配線板(電気接合物)
2 ランド(導体部)
3 音響部品(電気接合物)
4 ランド(導体部)
10 ハウジング(支持体)
11 取付孔
12 ガイドボス
13 樹脂板
20 導電キャップ
21 底部(対向部)
22 係止爪
23 導電トーピン(突部)
30 導電ピン
31 円板部(対向部、底部)
32 ピン部
33 先端部(接触部、自由端部)
40 導電コイルバネ(導電バネ)
C 中心部(軸線)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気接合物の導体部に挟み持たれて電気的に導通接続する圧接挟持型コネクタであって、
支持体に内蔵されて底部が露出する略有底筒形の導電キャップと、この導電キャップにスライド可能に挿入されて電気接合物の導体部に接触する導電ピンと、これら導電キャップと導電ピンとの間に介在されて導電ピンを支持体から突出させる導電バネとを含み、
導電キャップと導電ピンの対向部の少なくともいずれか一方を導電ピンのスライド方向に対して傾斜させ、電気接合物の導体部に対する導電ピンの接触部と導電ピンの軸線とを略一致させるようにしたことを特徴とする圧接挟持型コネクタ。
【請求項2】
支持体に導電キャップをスライド可能に内蔵してその底部から突部を突出させた請求項1記載の圧接挟持型コネクタ。
【請求項3】
支持体に、導電ピンを案内するガイドボスを形成した請求項1又は2記載の圧接挟持型コネクタ。
【請求項4】
導電ピンの自由端部を略半球形、略半楕球形、略円錐形、あるいは鋭利な凹凸形に形成した請求項1、2、又は3記載の圧接挟持型コネクタ。
【請求項5】
対向する複数の電気接合物の導体部間に請求項1ないし4いずれかに記載の圧接挟持型コネクタを介在して電気的に導通接続するようにしたことを特徴とする圧接挟持型コネクタの接続構造。
【請求項1】
複数の電気接合物の導体部に挟み持たれて電気的に導通接続する圧接挟持型コネクタであって、
支持体に内蔵されて底部が露出する略有底筒形の導電キャップと、この導電キャップにスライド可能に挿入されて電気接合物の導体部に接触する導電ピンと、これら導電キャップと導電ピンとの間に介在されて導電ピンを支持体から突出させる導電バネとを含み、
導電キャップと導電ピンの対向部の少なくともいずれか一方を導電ピンのスライド方向に対して傾斜させ、電気接合物の導体部に対する導電ピンの接触部と導電ピンの軸線とを略一致させるようにしたことを特徴とする圧接挟持型コネクタ。
【請求項2】
支持体に導電キャップをスライド可能に内蔵してその底部から突部を突出させた請求項1記載の圧接挟持型コネクタ。
【請求項3】
支持体に、導電ピンを案内するガイドボスを形成した請求項1又は2記載の圧接挟持型コネクタ。
【請求項4】
導電ピンの自由端部を略半球形、略半楕球形、略円錐形、あるいは鋭利な凹凸形に形成した請求項1、2、又は3記載の圧接挟持型コネクタ。
【請求項5】
対向する複数の電気接合物の導体部間に請求項1ないし4いずれかに記載の圧接挟持型コネクタを介在して電気的に導通接続するようにしたことを特徴とする圧接挟持型コネクタの接続構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−220482(P2007−220482A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39720(P2006−39720)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]