説明

圧接挟持型コネクタ

【課題】 コイルスプリングの偏押し、芯ズレ組み込みの可能性を大幅に減ずる圧接挟持型コネクタが得られる構造を確立する
【解決手段】 樹脂製ハウジング2と、前記ハウジングに設けた貫通孔3にスライド可能に嵌められた導電ピン8と、前記ハウジングに嵌入固定された導電プレート7と、前記導電ピン8と前記導電プレート7との間に挟持されたコイルスプリング9とからなる圧接挟持型コネクタ1であって、前記導電ピン8の底面の前記コイルスプリング9に対向する端面に、前記導電ピンの底面に平行な上面を有する前記コイルスプリング9の端部に係合可能な掘り込み部15が形成されていることを特徴とする。前記掘り込み部15の前記上面が、前記コイルスプリングの頂部に対応する面積であり、かつ、前記掘り込み部が円錐台形状をなしていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に用いられる圧接挟持型コネクタに関し、特には導電ピンの形状を工夫することによって圧接挟持型コネクタの高さを低くすることを可能にした圧接挟持型コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器において相互に対向配置された一対の基板上の電子回路間を弾性接触により相互に導通させて信号伝達するものとして、電気接続用コネクタピンがあり、この電気接続用コネクタピンを改良発展させたものとして、本発明者はコイルを利用したいくつかのタイプの圧接挟持型コネクタを提案している(特許文献1、特許文献2参照)。
そして、本発明者は、アセンブリ高さをさらに低くすることができる改良型の圧接挟持型コネクタを提案している(特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−100431号公報
【特許文献2】特開2005−317227号公報
【特許文献3】特開2006−120501号公報
【0004】
各種電子機器の小型化、薄型化、軽量化への要求は、近時、益々厳しくなってきている。それに対応するために、接点部材、圧縮挟持型コネクタの更なる小型化、薄型化、軽量化も要請されている。
コイルスプリングを利用したタイプの圧縮挟持型コネクタは、電子機器等に実装された場合には、コイルスプリングの弾発力に抗して、所定のストローク分押し下げられて、電子機器等の電極間が、導電ピン、コイルスプリング、導電キャップ(プレートともいう)を介して電気的に接続される。
【0005】
図4に示すように、特許文献3に示されるコイルスプリングを利用したタイプの圧接挟持型コネクタ21は、絶縁性樹脂製のハウジング22の厚さ方向に配向させて設けられた貫通孔23内に導電ピン24、コイルスプリング25、導電キャップ26が配置されている。
ハウジング22に設けられた貫通孔23の一端には、小径部30が形成されており、その小径部30が、導電ピン24に設けられたフランジ部28と係合し、導電ピン24がハウジング22から導電ピン24の先端側に抜け出すことが阻止されている。
【0006】
貫通孔23の他端は、拡径部31となっており、その拡径部31内に導電キャップ26が、圧入等により、固定されている。
導電ピン24は、先端側が一方の接点である柱状部27、後端側がフランジ部28となっており、フランジ部28の下面には、コイルスプリング25の先端部が収まる掘り込み部29が形成されている。
コイルスプリング25は、円錐状、樽状、鼓状等、コイルスプリングを構成する線材の軸が上下方向に重ならない状態のものとすることが望ましいとされている。
【0007】
特許文献3の圧接挟持型コネクタにおいては、コイルスプリングの先端が掘り込み部の分だけ見かけの高さを減じることができるものであり、掘り込み部29の形状は、円錐状(図示の場合)、角錐状あるいは球面状とすることができるとされており、掘り込み部29を形成することにより、掘り込み部29と係合するコイルスプリング25の先端部の位置が横ずれ等することを阻止することができ、換言すればコイルスプリング25の軸が傾くことが、通常は、避けられる効果として得られる。
【0008】
そして、導電ピンに掘り込み部を設けること、導電ピンとハウジングとの係合部を水平面状から錐体面状、球面状等の三次元的な衝接面とすること、さらには、コイルスプリングを構成する線材の軸が上下方向に重ならないコイルスプリングを用いること、によって、安定した作動性と、小さな専有面積とを確保・維持しながら、従来達成することができなかった、圧接挟持型コネクタの不作動時の高さ1.5mm、押圧作動ストローク0.5mmを量産品として実現するものである。
【0009】
ところが、希にではあるが、図5に示されるように、コイルスプリング25’の先端部の位置が導電ピンに設けた掘り込み部29の錐面に、あるいは、球面の中心から外れた位置に接触し、コイルスプリング25’が傾斜(湾曲)することがあることが見出された。この原因としては、コイルスプリングの加工精度が一番影響するようであるが、細かいコイルスプリングの加工に際してのこれ以上の精度向上は、コスト高に直結する可能性が高い。この状態で装置に組み込まれると、偏押し、コイルスプリングのへたり等が発生し、所期の性能が得られなくなることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような事情に鑑みて、コイルスプリングの偏押し、芯ズレ組み込みの可能性を大幅に減ずる圧接挟持型コネクタが得られる構造を確立することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の圧接挟持型コネクタは、樹脂製ハウジングと、前記ハウジングに設けた貫通孔にスライド可能に嵌められた導電ピンと、前記ハウジングに嵌入固定された導電プレートと、前記導電ピンと前記導電プレートとの間に挟持されたコイルスプリングとからなる圧接挟持型コネクタであって、前記導電ピンの底面の前記コイルスプリングに対向する端面に、前記導電ピンの底面に平行な上面を有する前記コイルスプリングの端部に係合可能な掘り込み部が形成されていることを特徴とする。前記掘り込み部の前記上面が、前記コイルスプリングの頂部に対応する面積であり、かつ、前記掘り込み部が円錐台形状をなしていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、導電ピン裏面にコイルスプリング巻き小径部が当接する平面部を設けたことによって、圧縮時のスプリングコイルの偏押しがなくなり、垂直方向への確実な荷重伝達(導電度の確保)が保証されることになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、コイルスプリング巻きの小径部が水平面に当接するようにしたことを基本としている。
以下に、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明のコイルスプリングを利用したタイプの圧接挟持型コネクタの一実施の形態を示す断面概念図であり、図2は、本発明のコイルスプリングを利用したタイプの圧接挟持型コネクタの他の実施の形態を示す断面概念図である。
【0014】
図1において、本発明のコイルスプリングを利用したタイプの1端子を示す単位圧接挟持型コネクタ1の樹脂ハウジング2には樹脂ハウジング貫通孔3が形成されており、樹脂ハウジング貫通孔3は、大径部4と小径部5、およびそれを繋ぐ樹脂ハウジング貫通孔段部のC面取り部6からなる。
樹脂ハウジング貫通孔3には、大径部4側に導電プレート7が、小径部5側に導電ピン8が、それらの中間にテーパ状コイルスプリング9が、それぞれ配置されている。導電プレート7は、基本的に有底円筒体形状をしており、導電プレート7には、樹脂ハウジング貫通孔3の壁面と係合する導電プレート抜け防止用爪10がその外周壁面の適宜の箇所に適宜の数設けられていることが好ましい。
【0015】
導電ピン8は、導電ピン本体11と導電ピンフランジ部12とを有し、その間は、導電ピンフランジ傾斜面13で繋がれており、導電ピンフランジ傾斜面13が樹脂ハウジング貫通孔段部のC面取り部6に係合することで、導電ピン8が樹脂ハウジング2から抜け出さないようになっている。
また、導電ピン8は、導電ピン本体11頭部(頂部)を押圧されると、導電ピンフランジ部12によって、導電プレート7に沿って上下動可能となっている。
さらに、導電ピン8の底部(導電ピンフランジ部12下面)には、導電ピン底部掘り込み部15が形成されている。この導電ピン底部掘り込み部15は、テーパ状コイルスプリング9の頂部を受容するもので、この導電ピン底部掘り込み部15の存在によって、コイルスプリングの作動長さを確保しながら、圧接挟持型コネクタの高さを低位にすることが可能となるものである。
【0016】
導電ピン底部掘り込み部15は、その底部が、導電ピン8の底部(導電ピンフランジ部12下面)と基本的に平行になっている。この点が、特許文献3にものと異なるところであって、導電ピン底部掘り込み部15の底部と導電ピン8の底部(導電ピンフランジ部12下面)とを平行とすることによって、テーパ状コイルスプリング9の頂部が傾いて係合したり、圧縮時にスプリングコイルが偏押しされることがなくなる効果が確実に得られる。
導電ピン底部掘り込み部の形状は、導電ピン底部掘り込み部15の底部と導電ピン8の底部(導電ピンフランジ部12下面)とを平行とすることが条件であり、他の部分の形状は適宜となし得る。本発明の一実施の形態を示す図1に示されるものでは、導電ピン8の底部(導電ピンフランジ部12下面)面の中心で底部面に垂直な線を軸とする円筒状の掘り込み部(導電ピン底部円柱状掘り込み部16)となっている。
【0017】
本発明の他の実施の形態を示す図2に示されるものでは、導電ピン底部掘り込み部の形状は、導電ピン8の底部(導電ピンフランジ部12下面)面の中心で底部面に垂直な線を軸とする円錐台形状であって、その円錐台形状の上面の面積がほぼテーパ状コイルスプリング巻き小径部14の面積に等しい掘り込み部(導電ピン底部円錐台形状掘り込み部17)となっている。
【0018】
導電ピン底部掘り込み部の形状を導電ピン底部円錐台形状掘り込み部17とすることによる特徴としては、導電ピン底部円柱状掘り込み部16とすることに基づき極めて僅かに残るテーパ状コイルスプリング巻き小径部14の掘り込み部上面内での接触位置の変動の可能性をより確実に減少できること、また、導電ピン底部円柱状掘り込み部16とするときに起こる可能性が残る、導電ピン8の最大圧縮時の導電ピン底部円柱状掘り込み部16の底面側端部のテーパ状コイルスプリング9の線材との干渉・接触をより確実に減少できること、が挙げられる。
但し、この効果上の差異は僅かであり、掘り込み部形成方法の都合等で適宜選択することで差し支えない。
【0019】
本発明の圧接挟持型コネクタの標準的な仕様としては、図3に示すように、ハウジング内に図1ないし図2の単位圧接挟持型コネクタを2個並列させたものを想定し、その具体的な形態を以下に示す。なお、図3において、18は樹脂ハウジング外形のC面取り部であり、アセンブリ時に位置決めに便利に利用されるものである。
・ハウジング外径:長さ5.4mm×幅2.2mm
・無負荷時高さ(H):1.5mm
・導電ピンの最大ストローク:0.5mm(最大圧縮時の圧接挟持型コネクタの高さ(h):1.0mm)
・荷重:1.2N
・抵抗:0.1Ω/電極(以下)
【産業上の利用可能性】
【0020】
圧接挟持型コネクタの高さ(厚さ)を従来達成されていたもの(たとえば、無負荷時のH:2.5mm、最大圧縮時のh:1.5mm)が、本発明により、たとえば、無負荷時のH:1.5mm、最大圧縮時のh:1.0mmがより確実に達成できるようになったので、ますます小型化、薄型化が進む各種電子機器の製造分野に裨益するところ大である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のコイルスプリングを利用したタイプの圧接挟持型コネクタの一実施の形態を示す断面概念図である。
【図2】本発明のコイルスプリングを利用したタイプの圧接挟持型コネクタの他の実施の形態を示す断面概念図である。
【図3】本発明の圧接挟持型コネクタの標準的な仕様を示す説明図であり、(a)は説明的な斜視図、(b)は説明的な側面図である。
【図4】特許文献3に示される従来のコイルスプリングを利用したタイプの圧接挟持型コネクタの一実施の形態を示す断面概念図である。
【図5】コイルスプリングの先端が導電ピンの底部に設けた掘り込み部に斜めに組み込まれた例を示す断面概念図である。
【符号の説明】
【0022】
1:(コイルスプリングを利用したタイプの)圧接挟持型コネクタ
2:樹脂ハウジング
3:樹脂ハウジング貫通孔
4:(樹脂ハウジング貫通孔の)大径部
5:(樹脂ハウジング貫通孔の)小径部
6:(樹脂ハウジング貫通孔段部の)C面取り部
7:導電プレート
8:導電ピン
9:テーパ状コイルスプリング
10:導電プレート抜け防止用爪
11:導電ピン本体
12:導電ピンフランジ部
13:導電ピンフランジ傾斜面
14:テーパ状コイルスプリング巻き小径部
15:導電ピン底部掘り込み部
16:導電ピン底部円柱状掘り込み部
17:導電ピン底部円錐台形状掘り込み部
18:(樹脂ハウジング外形)C面取り部
21:(特許文献3に示されるコイルスプリングを利用したタイプの)圧接挟持型コネクタ
22:(絶縁性樹脂製の)ハウジング
23:貫通孔
24:導電ピン
25、25’:コイルスプリング
26:導電キャップ
27:柱状部
28:フランジ部
29:(導電ピン下面の)掘り込み部
30:小径部
31:拡径部
H:無負荷時の圧接挟持型コネクタの高さ
h:最大圧縮時の圧接挟持型コネクタの高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製ハウジングと、前記ハウジングに設けた貫通孔にスライド可能に嵌められた導電ピンと、前記ハウジングに嵌入固定された導電プレートと、前記導電ピンと前記導電プレートとの間に挟持されたコイルスプリングとからなる圧接挟持型コネクタであって、前記導電ピンの底面の前記コイルスプリングに対向する端面に、前記導電ピンの底面に平行な上面を有する前記コイルスプリングの端部に係合可能な掘り込み部が形成されていることを特徴とする圧接挟持型コネクタ。
【請求項2】
前記掘り込み部の前記上面が、前記コイルスプリングの頂部に対応する面積であり、かつ、前記掘り込み部が円錐台形状をなしている請求項1に記載の圧接挟持型コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−130283(P2008−130283A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311912(P2006−311912)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】