説明

圧油供給制御装置

【課題】現物サイズの大容量の圧油タンクを備えた圧油供給制御装置を用いて圧油確立訓練を実施する際に、個々の研修者が圧油確立訓練を修了するのに要する時間を大幅に短縮できる。
【解決手段】油槽3と、圧油タンク5と、圧油タンクと配管接続された小型圧油タンク7と、圧油タンクと小型圧油タンクとの間の油供給用配管に設置される油用バルブ11と、油槽から小型圧油タンクを経由して圧油タンクに油を供給するポンプ15と、を備え、小型圧油タンク内の油圧を高める場合には、油用バルブを開放することによって圧油タンク内の圧油を小型圧油タンク内に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水力発電所、工場等の各種施設において、圧油によって駆動される機器に対する圧油の供給を制御するために使用される圧油供給制御装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電所、工場等の各種施設においては設備を構成する機器の動力源として圧力を高められた油、即ち圧油が多用されている(特許文献1)。
図2は水力発電所に設置される従来の圧油供給制御装置の概略構成図である。
圧油によって駆動される水力発電用機器(被駆動機器)は、圧油供給制御装置から供給される圧油によってその作動を制御される。
圧油供給制御装置100は、油を収容する油槽102と、圧油を収容する大容量(例えば、800リットル)の圧油タンク104と、油槽102、圧油タンク104、及び被駆動機器120との間を連接して油を流通させる油供給用配管105と、圧油タンク104と被駆動機器120との間の油供給用配管に設置されて開閉する油用バルブ107と、油槽102から圧油タンク104に油を供給するポンプ109と、圧油タンク104内の油を夫々油槽102に排出する排出用配管111と、を備える。
【0003】
設備点検作業時の安全性を確保するためには各種被駆動機器120に対する圧油の供給を停止する必要があり、その際には排出用配管111を経由して圧油タンク104内の油を油槽102に排出して圧油タンク内の油圧を低下させる作業が実施される。油用バルブ107、その他のバルブを閉じることによって各種被駆動機器120に対する圧油の供給は遮断することができるが、バルブ操作にはミスが発生し易いため、作業者の安全性を高めるためには圧油タンク104の圧力を低下させることが必要である。
一方、設備点検が終了したことによって圧油タンク104内の油圧を高める復旧作業に際しては、排出用配管111上のバルブ、油用バルブ107を閉じた状態でポンプ109を駆動して油槽102から圧油タンク104へ油を供給する作業を実施する。通常、800リットルの圧油タンク104に油を充填するには約2時間を要する。
【0004】
ところで、水力発電所では、未習熟の作業員に圧油供給制御装置の操作を習得させるために、老朽化や設備変更によって不要となった設備一式を操作訓練用に流用することがある。この操作訓練には、設備点検のために各種バルブを操作して圧油タンク104内の油圧を低下させた後で、圧力復旧のために行われる圧油確立と呼ばれる訓練が含まれる。
一方、圧油確立訓練において内部の油を排出した大容量(800リットル)の圧油タンク104内にポンプ109を用いて油を供給する作業に約2時間を要するとすれば、圧油確立訓練を一度実施してから次の研修者が訓練を開始するまでの待機時間が長期化することとなる。このため、全研修者が圧油確立訓練を修了するまでに長期間を要しているのが実情であり、この点の改善が求められていた。
なお、大容量の圧油タンクに代えて、圧油確立訓練専用に小容量の圧油タンクを用いることも考えられるが、小容量の圧油タンクでは接続された被駆動機器を実際に駆動する訓練を行うことができなくなり、他の運転研修に支障が生じる。また、現物の圧油タンクと異なるため、臨場感が損なわれ、研修効果が著しく低下する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−366201公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように従来、現物サイズの圧油タンクを備えた圧油供給制御装置を用いて圧油確立訓練を実施する際には、圧油タンク内に油を供給して圧力を復旧させるまでに長時間を要するため、多数の研修者が圧油確立訓練を修了するまでに長期間を要するという問題があった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、現物サイズの大容量の圧油タンクを備えた圧油供給制御装置を用いて操作訓練を行う場合に、圧油タンク内に油を供給して圧力を復旧させる時間を大幅に短縮し、個々の研修者が圧油確立訓練を修了するのに要する時間を大幅に短縮することができる圧油供給制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、圧油により駆動される被駆動機器に対する圧油の供給を制御する圧油供給制御装置であって、油を収容する油槽と、圧油を収容する圧油タンクと、該圧油タンクと配管接続され且つ前記圧油タンクよりも圧油収容量を小さく設定した小型圧油タンクと、前記油槽、圧油タンク、小型圧油タンク、及び前記被駆動機器との間を連接して油を供給する油供給用配管と、前記圧油タンクと前記小型圧油タンクとの間の油供給用配管に設置される油用バルブと、前記油用バルブを開放した状態で前記油槽から前記小型圧油タンクを経由して前記圧油タンクに油を供給するポンプと、前記圧油タンク内、及び前記小型圧油タンク内の各油を夫々前記油槽に排出する排出用配管と、を備え、前記小型圧油タンク内の油圧を低下させる際には、前記油用バルブを閉じて前記圧油タンクから前記小型圧油タンクへの油の供給を阻止した状態で前記小型圧油タンク側の前記排出用配管から油を排出し、前記小型圧油タンク内の油圧を高める場合には、前記油用バルブを開放することによって前記圧油タンク内の圧油を前記小型圧油タンク内に供給することを特徴とする。
請求項2の発明は、圧油により駆動される被駆動機器に対する圧油の供給を制御する圧油供給制御装置であって、油を収容する油槽と、圧油を収容する圧油タンクと、該圧油タンクと配管接続され且つ前記圧油タンクよりも圧油収容量を小さく設定した小型圧油タンクと、前記油槽、圧油タンク、小型圧油タンク、及び前記被駆動機器との間を連接して油を供給する油供給用配管と、前記圧油タンクと前記小型圧油タンクとの間の油供給用配管に設置される油用バルブと、前記油用バルブを開放した状態で前記油槽から前記小型圧油タンクを経由して前記圧油タンクに油を供給するポンプと、前記圧油タンク内、及び前記小型圧油タンク内の各油を夫々前記油槽に排出する排出用配管と、を備え、前記小型圧油タンク内の油圧を低下させる際には、前記油用バルブを閉じて前記圧油タンクから前記小型圧油タンクへの油の供給を阻止した状態で前記小型圧油タンク側の前記排出用配管から油を排出し、前記小型圧油タンク内の油圧を高める場合には、前記油用バルブを閉じた状態で前記ポンプによって前記油槽から前記小型圧油タンクに油を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、小型圧油タンクを付加した圧油供給制御装置を操作訓練用に利用することができるので、圧力復旧訓練が短時間で実施可能となり、同じ時間でより多人数に対する訓練を実施することが可能となる。圧力確立時のポンプ運転時間が短くなり、消費電力量を低減することが可能となる。小型圧油タンクを利用した訓練中においても、大容量の圧油タンクは常に十分な圧力を維持しているので、被駆動機器の操作力を常に正常な状態に維持できる。また、実使用されている被駆動機器、及び圧油供給制御装置と同等の設備を使用した訓練となるため、実機と変わりのない臨場感ある効果の高い研修内容とすることができる。
また、この圧油供給制御装置を実使用されている設備に適用することにより、設備点検後の試運転で組立不良があった際の漏油量を微小にして安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る圧油供給制御装置の概略構成説明図である。
【図2】従来の圧油供給制御装置の構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図面に示した実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る圧油供給制御装置の概略構成説明図である。
本発明の係る圧油供給制御装置1は、例えば水力発電所に設置されて圧油により駆動される被駆動機器(水力発電用機械)30に対する圧油の供給を制御する手段である。
圧油供給制御装置1は、油を収容する油槽3と、圧油を収容する大容量(例えば、800リットル)の圧油タンク5と、圧油タンク5と配管接続され且つ圧油タンクよりも圧油収容量を小さく(例えば、数十リットル)設定された小型圧油タンク7と、油槽3、圧油タンク5、小型圧油タンク7、及び被駆動機器30との間を連接して油を供給する油供給用配管9と、圧油タンク5と小型圧油タンク7との間の油供給用配管に設置される油用バルブ11と、圧油タンク5と小型圧油タンク7との間の空気用配管に設置される空気用バルブ13と、油用バルブ11及び空気用バルブ13を開放した状態で油槽3から小型圧油タンク7を経由して圧油タンク5に油を供給するポンプ15と、圧油タンク5内、及び小型圧油タンク7内の各油を夫々油槽3に排出する排出用配管17、18と、制御手段(プラント制御装置)25と、を備える。
【0011】
本例では、油槽3と各圧油タンク5、7とを接続する油供給配管20は一部共通しており、油供給配管にポンプ15とバルブ21、23を配置することにより、油槽3内の油を圧油タンク5と小型圧油タンク7の何れか一方に対して選択的に供給できるように構成されている。
圧油タンク5内の圧油を使用して被駆動機器30を駆動させると、使用した油量だけ圧油タンク内の油圧が低下するため、ポンプ及びバルブを駆動、操作することによって適宜油槽3から油を供給して圧油タンクの油量を所定に維持する作業が行われる。
被駆動機器の点検時に点検作業の安全性を確保するために圧油供給制御装置1と被駆動機器30とを接続する油供給用配管9内の油圧を低下させる場合には、圧油タンク5内の圧力を低下させずに、小型圧油タンク内の圧力だけを低下させる作業を実施する。即ち、油用バルブ11及び空気用バルブ13を夫々閉じて圧油タンク5から小型圧油タンク7への油の供給を阻止した状態で、小型圧油タンク側の排出用配管18から油を排出することにより、小型圧油タンク内の油圧低下作業を実施する。
【0012】
被駆動機器30を駆動するための圧油の圧力が低下した状態から圧力を復旧させる圧油確立を行う場合には、ポンプ15を駆動して小型圧油タンク内の油圧を高める作業を実施する。小型圧油タンクの容量は圧油タンクに比して大幅に小さいため、十数分程度の短時間で圧油確立を完了できる。
なお、油用バルブ11及び空気用バルブ13を夫々開放して圧油タンク5内の圧油を小型圧油タンク7へ供給することによっても復旧を短時間で行うことができる。ポンプ15による復旧と、圧油タンク5からの圧油供給による復旧を併用してもよい。いずれにしてもポンプ15の駆動時間を短縮できるため、省エネルギー化を達成できる。
【0013】
小型圧油タンク7を用いた圧油の低下作業、及び復旧作業を実施している間、油用バルブ11及び空気用バルブ13が閉塞されていることによって、圧油タンク5内の圧力は高い状態に維持されているため、小型圧油タンク7内の油圧が復旧した時点では、圧油タンク5内の圧油を利用した被駆動機器30の駆動が可能な状態となっている。このため、油用バルブ11及び空気用バルブ13を開放することにより被駆動機器の駆動再開が直ちに可能となる。
小型圧油タンク7は、小型圧油タンクを有しない既存の圧油供給制御装置に対して後付けが可能であり、既存設備に対する大きな改変が不要である。このため、短期間で小型圧油タンクの後付け工事を完了することができる。
実使用されている既存の圧油供給制御装置に小型圧油タンクを組み込むことにより、被駆動機器の点検後の試運転で組立不良があった際の漏油量を微小にでき、安全性を高めることができる。即ち、各所のバルブを閉じることによって点検対象となる被駆動機器の点検後に初めて圧油を通すとき、小型圧油タンク7のみで圧油を供給すれば、万一、組立不良箇所があった場合の漏油量が小型圧油タンク内のみのものになり、微小漏油とすることが可能となる。
【0014】
次に、上記構成を備えた圧油供給制御装置は圧油装置操作訓練の研修専用手段としての利用が可能である。
即ち、老朽化や設備変更によって圧油供給制御装置を含む水力発電の設備一式が不要となった場合に、これらを廃棄せずに操作訓練用に流用することがあるが、小型圧油タンクを有しない既存の圧油供給制御装置に対して小型圧油タンクを組み込むことによって、操作訓練用の圧油供給制御装置を構築することができる。
この操作訓練用の圧油供給制御装置1を用いた訓練においては、油用バルブ11及び空気用バルブ13が閉塞した状態で、小型圧油タンク7を用いた圧油低下のための操作訓練、及び圧油確立(復旧)のための操作訓練を実施する。圧油確立に際しては、ポンプ15を駆動することによる油槽から小型油圧タンクへの油供給、又は、油用バルブ11及び空気用バルブ13を開放することによる圧油タンク5から小型油圧タンクへの圧油供給により、短時間での復旧が可能となり、一人当たりの訓練に要する時間を短縮し、多人数の訓練に要する期間も短縮することができる。
【0015】
このように小型圧油タンクを付加した圧油供給制御装置を操作訓練用に利用する場合には、圧力復旧訓練が短時間で実施可能となり、同じ時間でより多人数に対する訓練を実施することが可能となる。圧力確立時のポンプ運転時間が短くなり、消費電力量を低減することが可能となる。小型圧油タンクを利用した訓練中においても、大容量の圧油タンクは常に十分な圧力を維持しているので、被駆動機器の操作力を常に正常な状態に維持できる。また、実使用されている被駆動機器、及び圧油供給制御装置と同等の設備を使用した訓練となるため、実機と変わりのない臨場感ある効果の高い研修内容とすることができる。
なお、本発明の圧油供給制御装置は、水力発電所に限らず、油圧によって駆動される各種機器を多数備える施設一般に適用することができる。
【符号の説明】
【0016】
1…圧油供給制御装置、3…油槽、5…圧油タンク、7…小型圧油タンク、9…油供給用配管、11…油用バルブ、13…空気用バルブ、15…ポンプ、17…排出用配管、18…排出用配管、25…制御手段、30…被駆動機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧油により駆動される被駆動機器に対する圧油の供給を制御する圧油供給制御装置であって、
油を収容する油槽と、圧油を収容する圧油タンクと、該圧油タンクと配管接続され且つ前記圧油タンクよりも圧油収容量を小さく設定した小型圧油タンクと、前記油槽、圧油タンク、小型圧油タンク、及び前記被駆動機器との間を連接して油を供給する油供給用配管と、前記圧油タンクと前記小型圧油タンクとの間の油供給用配管に設置される油用バルブと、前記油用バルブを開放した状態で前記油槽から前記小型圧油タンクを経由して前記圧油タンクに油を供給するポンプと、前記圧油タンク内、及び前記小型圧油タンク内の各油を夫々前記油槽に排出する排出用配管と、を備え、
前記小型圧油タンク内の油圧を低下させる際には、前記油用バルブを閉じて前記圧油タンクから前記小型圧油タンクへの油の供給を阻止した状態で前記小型圧油タンク側の前記排出用配管から油を排出し、
前記小型圧油タンク内の油圧を高める場合には、前記油用バルブを開放することによって前記圧油タンク内の圧油を前記小型圧油タンク内に供給することを特徴とする圧油供給制御装置。
【請求項2】
圧油により駆動される被駆動機器に対する圧油の供給を制御する圧油供給制御装置であって、
油を収容する油槽と、圧油を収容する圧油タンクと、該圧油タンクと配管接続され且つ前記圧油タンクよりも圧油収容量を小さく設定した小型圧油タンクと、前記油槽、圧油タンク、小型圧油タンク、及び前記被駆動機器との間を連接して油を供給する油供給用配管と、前記圧油タンクと前記小型圧油タンクとの間の油供給用配管に設置される油用バルブと、前記油用バルブを開放した状態で前記油槽から前記小型圧油タンクを経由して前記圧油タンクに油を供給するポンプと、前記圧油タンク内、及び前記小型圧油タンク内の各油を夫々前記油槽に排出する排出用配管と、を備え、
前記小型圧油タンク内の油圧を低下させる際には、前記油用バルブを閉じて前記圧油タンクから前記小型圧油タンクへの油の供給を阻止した状態で前記小型圧油タンク側の前記排出用配管から油を排出し、
前記小型圧油タンク内の油圧を高める場合には、前記油用バルブを閉じた状態で前記ポンプによって前記油槽から前記小型圧油タンクに油を供給することを特徴とする圧油供給制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−58970(P2012−58970A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200942(P2010−200942)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】