圧潰可能な端部を有する分岐ステント
【課題】枝血管に流入する血流に対する抵抗を最小限に抑えた支持を行うことができる分岐ステントシステムを提供する。
【解決手段】分岐ステント400は、第2の端部412より小さい力で変形可能又は圧潰可能である第1の端部410を有する。分岐ステントの圧潰可能な第1の端部及び剛性を高めた第2の端部により、ステントの一端部を血管分岐部の側枝血管300内で組織支持形態に拡張させておきながら、他端部を容易に圧潰させて、ステント450が通っている主血管200の側壁に当てることができる。
【解決手段】分岐ステント400は、第2の端部412より小さい力で変形可能又は圧潰可能である第1の端部410を有する。分岐ステントの圧潰可能な第1の端部及び剛性を高めた第2の端部により、ステントの一端部を血管分岐部の側枝血管300内で組織支持形態に拡張させておきながら、他端部を容易に圧潰させて、ステント450が通っている主血管200の側壁に当てることができる。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[背景]
従来より、通路の開通性を維持するために身体通路内に埋め込むように、永久又は生分解性の装置が開発されてきた。これらの装置は一般的に、経皮的に導入されて、身体通路内の所望位置に位置付けられるまで、管腔内を運搬される。
【0002】
装置は次に、装置の内部に配置されたマンドレル又はバルーンの拡張等によって機械的に拡張されるか、身体内での作動時に貯蔵エネルギを解放することによって自ら拡張するかのいずれかである。管腔内で一旦拡張すると、ステントと呼ばれるこれらの装置は、身体組織内に封入されて、永久的な埋め込み物であり続ける。
【0003】
そのような装置によって支持すべき領域は、分岐部と呼ばれる、2つ以上の管腔の接合部又はその付近に位置することが多い。たとえば、冠動脈血管形成処置において、15%〜20%のケースは、2本の動脈の接合部の領域の補強を必要とすると考えられる。そのような接合部での従来のステントの埋め込みは、枝血管の少なくとも部分的な閉塞を生じ、血流に悪影響を与えるとともに、さらなる血管形成処置のための枝血管に対する出入りを妨害する。
【0004】
分岐部を処置する1つの既知の技法は一般的に、メッシュステントを血管に送り込み、装置を分岐部全体に位置付ける。既知の方法によれば、外科医は、バルーンをメッシュ装置の側壁に挿通し、次にバルーンを膨張させ、それにより、メッシュの局部機能部を脇へ押し退けることだけによって、1つ又は複数の枝血管接続穴を形成しようとする。これらの技法は本来、実際に無作為的であり、装置格子の正確な拡張点を予測することができず、装置がその点でうまく拡張することも、しないこともある。分岐動脈を治療するためにこれらの既知の技法によって行われる組織支持も同様に、予測できない。また、多くのメッシュ装置は、装置構造体内の無作為位置でのそのような拡張に対応することができないため、そのような処置の有効性は限定的である。さらに、従来技術のステント送出システムは、枝血管開口全体にわたって特定の装置機能部を正確に位置付けることができない。
【0005】
ステントを分岐血管内で展開させる別の方法が、国際出願第WO98/19628号に記載されている。この方法によれば、実質的に円形の側面開口を有する主ステントと、朝顔形端部を有する朝顔形ステントとを一緒に使用して、2ステップの処理で分岐血管を治療する。第1のステップにおいて、主ステントの内部の膨張式バルーンカテーテルと、ステントの側面開口に挿通される安定化カテーテルとを使用して、主ステントを位置付ける。安定化カテーテルは、主ステント内の側面開口を枝血管の開口に配置するために使用される。次に、主ステントを拡張して、朝顔形ステントを側面開口から血管分岐部内へ挿入する。この方法の1つの欠点は、主ステントの側面開口を血管分岐部での正確な長手方向及び半径方向位置に位置付けることの困難さである。このシステムの別の欠点は、形成及び位置付けが困難である朝顔形ステントであり、血流内へ突出して血栓症を引き起こしやすいであろう。
【0006】
分岐部を治療する1つの現在の方法は、圧潰方法と呼ばれる。この方法では、第1のステントを枝血管内へ配置して、枝血管から主血管内へ延出させ、また、第2のステントを、分岐部を横切って主血管内に配置する。第1のステントを枝血管内で展開させ、第1のバルーンを後退させる。次に、第2のステントを主血管内で展開させて、第1のステントの近位部分を圧潰して、主血管壁に当てる。この圧潰方法は、主血管及び枝血管の両方を支持するほぼ首尾良い結果をもたらすように見える。しかしながら、第1のステントの近位端部の圧潰が完全でない場合、血流内へ突出して、血栓症の可能性を生じやすいであろう。さらに、第1のステントを圧潰する行為は、支持が最も必要であるまさに血管接合部で、ステントの一部分を、ステントが支持している枝血管から引き離しやすいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の分岐組織支持システムの欠点を考慮して、枝血管に流入する血流に対する抵抗を最小限に抑えたすばらしい支持を行うことができる分岐ステントシステム及び分岐ステント送出システムを有することが有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[発明の概要]
本発明は、分岐した身体管腔を支持する方法であって、分岐ステントを未拡張形態で身体管腔内の分岐部に送出するステップであって、分岐ステントは、遠位部分と、遠位部分より小さい力で変形可能である圧潰可能な近位部分とを有する、送出するステップと、遠位部分が分岐部の側枝血管内に実質的に位置し、近位部分が主血管内に実質的に位置するように、分岐ステントを位置付けるステップと、分岐ステントを側枝血管内で着座する形態に拡張させるステップと、主血管ステントを分岐ステントの脇で拡張させ、それにより、分岐ステントの圧潰可能な近位部分の少なくとも一部分を圧潰して主血管壁に当てるステップと、を含む方法に関する。
【0009】
本発明の一つの態様によると、分岐した身体管腔を支持する方法は、事前圧潰ステントを分岐部の側枝血管に送り込むことであって、事前圧潰ステントは、遠位の管状組織支持部分と、近位の圧潰部分とを有する、送り込むステップと、遠位の管状組織支持部分が分岐部の側枝血管内に実質的に位置し、近位の圧潰部分が分岐部の主血管内に延在するように、事前圧潰ステントを配置するステップと、ステントの遠位の管状組織支持部分を側枝血管内で拡張させるステップと、を含む。
【0010】
本発明の別の態様によると、事前圧潰ステントは、送出形態から拡張した組織支持形態に拡張可能な連続管状本体を備え、送出形態の本体は、第1の管状組織支持セグメント、及び第1の管状部分に連結された第2の圧潰部分を有する。
【0011】
本発明のさらなる態様によると、ステント及び送出システムは、送出形態から拡張した組織支持形態に拡張可能な連続管状本体を有する事前圧潰ステントを備え、送出形態の本体は、第1の管状組織支持部分、及び第1の管状部分に連結された第2の圧潰部分を有し、バルーンカテーテルは、事前圧潰ステントの第1の管状組織支持部分内に位置付けられるバルーンを有する。
【0012】
本発明のさらなる態様によると、ステントを分岐した身体管腔に送出する方法は、拡張可能なステントを未拡張形態で身体管腔内の分岐部に送出するステップであって、分岐部は、主血管及び側枝血管を有する、送出するステップと、ステントの近位部分を少なくとも部分的に拡張させるステップと、ステントの遠位端部を分岐部の側枝血管内へ前進させることであって、ステントの拡張した近位部分及び未拡張の遠位部分間の接合部が、側枝血管の開口内に着座するまで、前進させるステップと、側枝血管内でステントの遠位部分を拡張させるステップと、を含む。
【0013】
次に、添付図面に示された好適な実施形態を参照しながら本発明をさらに詳細に説明するが、図面では、同様の部材に同様の参照符号が付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるステントの一例の斜視図である。
【図2】ステントの圧潰可能な端部を示す、図1のステントの一部分の拡大側面図である。
【図3A】血管分岐部、及び圧潰可能な端部を有する分岐ステントを備えるステントシステムの概略側面図である。
【図3B】部分的に拡張した圧潰可能な端部及び分岐ステントが、分岐部内に着座するように前進した状態にある、図3Aのシステムの概略側面図である。
【図3C】分岐ステントが側枝血管内で完全に拡張した状態にある、図3Aのシステムの概略側面図である。
【図3D】主血管ステントが完全に拡張し、分岐ステントの圧潰可能な端部が圧潰した状態にある、図3Aのシステムの概略側面図である。
【図4】分岐部用の拡張した事前圧潰ステントの概略側面図である。
【図5A】未拡張形態にある、バルーンカテーテルに取り付けられた図4の事前圧潰ステントの概略側面図である。
【図5B】バルーンカテーテルに取り付けられ、且つ拡張状態にある図4の事前圧潰ステントの概略側面図である。
【図6A】血管分岐部と、側枝血管内で拡張した分岐ステント及び主血管内の事前圧潰端部を有するステントシステムとの概略側面図である。
【図6B】主血管ステントが完全拡張状態にある、図6Aのシステムの概略側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[詳細な説明]
本明細書で使用する「圧潰」又は「圧潰された」という表現は、管状部材の対向側部の一方又は両方が、その対向側部が互いに接触、又は実質的に接触するように潰れることを表す。
【0016】
図1及び図2は、第2の端部Bより小さい力で変形可能又は圧潰可能である第1の端部Aを有する分岐ステント10の一例を示す。分岐ステントの圧潰可能な第1の端部A及び剛性を高めた第2の端部Bにより、ステントの一端部を血管分岐部の側枝血管内で組織支持形態に拡張させておきながら、他端部を容易に圧潰させて、ステントが通っている主血管の側壁に当てることができる。
【0017】
図1及び図2の例のステント10は、複数の延性ヒンジ20A及び20Bによって相互連結された複数のストラット12を有する。ステントの拡張又は収縮時に、延性ヒンジ20A及び20Bは塑性変形するが、ストラットは塑性変形しない。ステント10の圧潰可能な端部A内の延性ヒンジ20Aの幅WAは、ステントの側枝血管支持端部B内のヒンジ20Bの幅WBより小さい。ヒンジ20A及び20Bの幅は、隣接したストラットの長手軸に対して実質的に垂直方向に、又はステントが未拡張形状にあるときにはステントの長手軸に対して実質的に垂直方向に測定される。ヒンジの幅のこの差が、幅広ヒンジを有する第2の端部Bより小さい力で拡張可能であるとともに、容易に圧潰する(小さい力で圧潰可能である)圧潰可能な端部Aを与える。
【0018】
分岐ステント10の圧潰可能な端部Aを、ステントの他の寸法又は材料を変化させることによって設けることもできる。たとえば、圧潰可能な端部を達成するために、ヒンジ厚さ又はヒンジ材料を変化させてもよい。ステントはまた、ヒンジのないステントであることもでき、また、圧潰可能な端部を達成するために、変形可能なストラット自体の性質を変化させることもできる。たとえば、圧潰可能な端部を形成するために、ストラット厚さ、ストラット幅又はストラット材料を変化させることができる。代替として、圧潰可能な端部Aを形成するために、ストラット構造、ストラットの長さ、数又は形を変化させることができる。
【0019】
一例では、一端部でステント全体の半径方向厚さを減少させ、その結果、薄肉壁の圧潰可能な端部と、厚肉壁の血管支持端部とを生じることによって、圧潰可能な端部を形成する。薄肉壁の圧潰可能な端部は、電解研磨、化学エッチング等で形成されることができる。
【0020】
化学エッチング処理の一例では、浸漬等により、ステント全体にフォトレジストを塗布する。ステントの内面又は外面上のフォトレジストを除去し、それにより、ストラットの側面又は穴の内面のエッチングを行うことなく、ステント壁の半径方向エッチングすなわち薄肉化が可能になる。ステントの圧潰可能な端部の内部だけにピンを挿入することにより、フォトレジストの選択的除去を行うことができる。ピンをステントにはめ込んで、圧潰可能な端部の内面へ進む光を遮断する。次に、ステント全体にUV光を浴びせ、それにより、露光したフォトレジストを架橋結合させて、それが次の溶剤によって除去されることを防止する。次に、ピンを取り外し、溶剤を使用して、未架橋のフォトレジストを圧潰可能な端部の内面から取り除く。ステントを電解研磨し、それにより、圧潰可能な端部を所望厚さまで薄くし、次に、フォトレジストを溶剤を用いてステントの残り部分から除去する。
【0021】
図1及び図2のステント10は、抗再狭窄治療薬等の有益な作用物質を与えるための複数の開口14を有するように示されている。薬剤を望まない場合、これらの開口を省いてもよいことを理解されたい。代替として、ステント10を有益な作用物質で被覆する、又は別法でそれを含浸させることができる。
【0022】
図3A〜図3Dは、上記のような圧潰可能な端部Aを有する第1のステント100と、圧潰可能な端部を有していない第2のステント110とを備えたステントシステム、及び分岐部にステントを埋め込む方法を示す。図3A〜図3Dは、主血管200と、主血管から延びてY字形を形成する側枝血管300とを有する血管分岐部を示す。図3Aに示すように、分岐ステント100は、第1のバルーンカテーテル102及び第1のガイドワイヤ104を使用して、既知の方法で血管系内を分岐部の位置まで前進させられる。第2のステント110すなわち主血管ステントは、第2のバルーンカテーテル112及び第2のガイドワイヤ114で送られる。
【0023】
図3Bは、第1のバルーンを第1の圧力で拡張させることによって部分的に拡張させた、分岐ステント100の圧潰可能な端部Aを示す。圧潰可能な端部の半径方向強度が低いため、ステント100の圧潰可能な端部すなわち近位端部は、第1の圧力の印加時に少なくとも部分的に拡張するが、ステントの遠位端部Bは拡張しない。
【0024】
一実施形態によれば、圧潰可能な端部Aを部分的に拡張させた状態で、分岐ステント100をわずかに前進させ、それにより、図3Bに示すように、ステントを分岐部の側枝血管開口内に着座させることができる。着座は、接触時に感じられる押し込みに対する抵抗によって決定されることができる。このように、分岐ステント100の圧潰可能な近位端部A及び遠位端部B間の移行領域106を、側枝血管開口に正確に位置付けることができる。前進中に血管壁を傷つけることを防止するために、ステントは、主血管の内径より小さい直径まで、好ましくは主血管の直径より少なくとも10%小さい直径まで拡張されるようにすべきである。
【0025】
別法として、移行領域106を側枝血管開口に位置付けるために、マーカーバンド又は他の可視化手段を使用することができる。そのような既知の可視化技法を使用するとき、図3Bの部分膨張段階を省くことができ、バルーン膨張の前に、視覚的に分岐ステント100を位置付けることができる。
【0026】
図3Cは、圧潰可能な近位端部Aが主血管200内へ延出している状態で、分岐ステント100が側枝血管300内で完全に拡張しているところを示す。図3A及び図3Bに示されたバルーンカテーテル102を、図3Bに示されている近位端部の部分拡張を達成するために使用された圧力より高い第2の圧力まで膨張させることにより、ステント100が拡張されている。拡張形態において、分岐ステント100は、側枝血管300の分岐部より遠位の壁を支持し、また、主血管200内の第2のステント110の脇に並んで延在している。
【0027】
図3Dは、バルーンカテーテル112による主血管ステント110の拡張を示す。この拡張は、分岐ステント100の圧潰可能な近位端部Aを圧潰して、血管の壁に当てる。圧潰可能な近位端部を圧潰するために必要な力は、遠位端部Bを圧潰するために必要な力の約80%以下であることができる。一例では、圧潰可能な端部Aを圧潰するために必要な力は、遠位端部Bを圧潰するために必要な力の60%以下である。
【0028】
図3Dに示されているように、分岐ステント100の遠位端部Bは、側枝血管300を支持し続ける。側枝血管300に流入する血流は、主血管ステント110内及び分岐ステント100内のストラット間の開口を通り抜ける。側枝血管300に通じる開口を横切るステントストラットの位置は一般的に、側枝血管に流入する血流に大した影響を与えない。一部の例では、側枝血管開口の位置で、ストラット間にバルーンカテーテルを挿入してバルーンを拡張させ、それにより、ストラット間の空間を増加させることにより、ストラット間の開口の1つ又は複数をさらに開くことが望ましいであろう。
【0029】
図4及び図5は、分岐部にステントを埋め込むのに使用される、事前に圧潰された端部410を有する事前圧潰分岐ステント400の代替実施形態を示す。ステント400は、実質的に円筒形の端部を形成する複数の相互連結したストラットで形成された拡張可能な端部412を有する。拡張可能な円筒形端部412は、複数のストラットによって圧潰端部410に連結されている。分岐ステント400は、送出前にステントの一端部を圧潰することにより、任意の既知のステントから形成されることができる。事前圧潰端部410の構造は、拡張可能な端部412と同一でも、異なってもよい。たとえば、事前圧潰端部で、ストラットの数を減らしてもよい。
【0030】
図5A及び図5Bに示すように、事前圧潰分岐ステント400はバルーンカテーテル430に取り付けられ、バルーンがカテーテルの拡張可能な円筒形端部412内に配置され、且つバルーンが事前圧潰端部410の脇に配置される。この構造は、バルーンカテーテル430をステント400のストラット間の開口に挿通することによって達成される。圧潰端部410は扁平化されて、比較的平坦な形態でバルーンの外側に沿って置かれる。バルーンをステント400の側面穴に挿通したカテーテルの配置により、ステント400の拡張中に側枝血管の位置の格子を拡張するという追加的な利益が得られる。側枝血管開口の位置の格子をこのように拡張することにより、その開口を横切るストラットの数が減り、したがって、血流が改善される。
【0031】
図6A及び図6Bは、図4、図5A及び図5Bの事前圧潰ステント400を備えたステントシステム、及び分岐部にステントを埋め込む方法を示す。図6Aに示されているように、事前圧潰ステント400をバルーンカテーテルによって分岐部に送り、膨張可能な遠位端部412を側枝血管300内に入れて位置付ける。事前圧潰ステント400は、カテーテル軸を回転させることにより、事前圧潰端部410が側枝血管開口の近位側に位置するように配置される。適当なステントの向きは、既知の方法によって視覚的に確認されることができる。ステントが見えない場合、放射線不透過マーカーバンド又は他のマーカを既知の方法で使用してもよい。事前圧潰端部410の好適な向きは、図6A及び図6Bに示されているように、側面開口のすぐ近くであるが、横向きの事前圧潰端部も首尾良く使用することができる。
【0032】
事前圧潰ステント400を位置付け、向きを定めた後、次にステント400をバルーンカテーテルによって拡張させ、それにより、事前圧潰端部410が、主血管の側壁に沿って延びるようにする。事前圧潰ステント400の拡張前、又はその後のいずれかで、主血管ステント450をカテーテル452によって分岐位置まで前進させることができる。主血管ステント450は、図6Bに示されているように、拡張され、それにより、分岐部で主血管を支持することができ、また、分岐ステント400の事前圧潰端部410を主血管壁に押し付けて捕らえる。その結果、図6Bに示されているように分岐部を支持するための2つの拡張ステント構造は、図3Dで得られたものに似ている。
【0033】
上記の実施形態において、主血管ステントは、側枝血管ステントと同じ全体形状であることができる。代替として、主血管ステント及び圧潰可能又は事前圧潰ステント用に、異なった寸法、形及び構造を使用することができる。一実施形態では、主血管ステントを側枝血管ステントより長くして、それにより、側枝血管ステントの近位端部全体が確実に圧潰されて扁平になり、主血管壁に押し付けられるようにすることができる。
【0034】
本発明の一態様によれば、上記ステントは、薬剤送出ステントであることができる。薬剤送出を、本明細書に記載した圧潰可能な分岐ステントと組み合わせて使用するとき、圧潰可能なステントが圧潰可能又は事前圧潰端部上に含む薬剤をなくすか、減らし、それにより、圧潰された近位端部の位置での血管壁への二重投与を防止することができる。特に問題となる部位で、薬剤濃度をさらに高めることができる。たとえば、側枝血管の開口領域は、分岐部の特に問題になる部位であり、圧潰可能なステントの中央領域で薬剤濃度を高めることにより、より多くの薬剤を受け取ることができる。
【0035】
ステントが開口内に薬剤を含むとき、1開口当たりの薬剤を増加すること、開口の数を増加すること、又は開口の寸法を大きくすることにより、薬剤濃度を高くすることができる。
【0036】
本発明をその好適な実施形態に関連して詳細に説明してきたが、本発明から逸脱しない限り、さまざまな変化及び修正を加えるとともに、均等物を用いることができることは、当業者には明らかであろう。
【背景技術】
【0001】
[背景]
従来より、通路の開通性を維持するために身体通路内に埋め込むように、永久又は生分解性の装置が開発されてきた。これらの装置は一般的に、経皮的に導入されて、身体通路内の所望位置に位置付けられるまで、管腔内を運搬される。
【0002】
装置は次に、装置の内部に配置されたマンドレル又はバルーンの拡張等によって機械的に拡張されるか、身体内での作動時に貯蔵エネルギを解放することによって自ら拡張するかのいずれかである。管腔内で一旦拡張すると、ステントと呼ばれるこれらの装置は、身体組織内に封入されて、永久的な埋め込み物であり続ける。
【0003】
そのような装置によって支持すべき領域は、分岐部と呼ばれる、2つ以上の管腔の接合部又はその付近に位置することが多い。たとえば、冠動脈血管形成処置において、15%〜20%のケースは、2本の動脈の接合部の領域の補強を必要とすると考えられる。そのような接合部での従来のステントの埋め込みは、枝血管の少なくとも部分的な閉塞を生じ、血流に悪影響を与えるとともに、さらなる血管形成処置のための枝血管に対する出入りを妨害する。
【0004】
分岐部を処置する1つの既知の技法は一般的に、メッシュステントを血管に送り込み、装置を分岐部全体に位置付ける。既知の方法によれば、外科医は、バルーンをメッシュ装置の側壁に挿通し、次にバルーンを膨張させ、それにより、メッシュの局部機能部を脇へ押し退けることだけによって、1つ又は複数の枝血管接続穴を形成しようとする。これらの技法は本来、実際に無作為的であり、装置格子の正確な拡張点を予測することができず、装置がその点でうまく拡張することも、しないこともある。分岐動脈を治療するためにこれらの既知の技法によって行われる組織支持も同様に、予測できない。また、多くのメッシュ装置は、装置構造体内の無作為位置でのそのような拡張に対応することができないため、そのような処置の有効性は限定的である。さらに、従来技術のステント送出システムは、枝血管開口全体にわたって特定の装置機能部を正確に位置付けることができない。
【0005】
ステントを分岐血管内で展開させる別の方法が、国際出願第WO98/19628号に記載されている。この方法によれば、実質的に円形の側面開口を有する主ステントと、朝顔形端部を有する朝顔形ステントとを一緒に使用して、2ステップの処理で分岐血管を治療する。第1のステップにおいて、主ステントの内部の膨張式バルーンカテーテルと、ステントの側面開口に挿通される安定化カテーテルとを使用して、主ステントを位置付ける。安定化カテーテルは、主ステント内の側面開口を枝血管の開口に配置するために使用される。次に、主ステントを拡張して、朝顔形ステントを側面開口から血管分岐部内へ挿入する。この方法の1つの欠点は、主ステントの側面開口を血管分岐部での正確な長手方向及び半径方向位置に位置付けることの困難さである。このシステムの別の欠点は、形成及び位置付けが困難である朝顔形ステントであり、血流内へ突出して血栓症を引き起こしやすいであろう。
【0006】
分岐部を治療する1つの現在の方法は、圧潰方法と呼ばれる。この方法では、第1のステントを枝血管内へ配置して、枝血管から主血管内へ延出させ、また、第2のステントを、分岐部を横切って主血管内に配置する。第1のステントを枝血管内で展開させ、第1のバルーンを後退させる。次に、第2のステントを主血管内で展開させて、第1のステントの近位部分を圧潰して、主血管壁に当てる。この圧潰方法は、主血管及び枝血管の両方を支持するほぼ首尾良い結果をもたらすように見える。しかしながら、第1のステントの近位端部の圧潰が完全でない場合、血流内へ突出して、血栓症の可能性を生じやすいであろう。さらに、第1のステントを圧潰する行為は、支持が最も必要であるまさに血管接合部で、ステントの一部分を、ステントが支持している枝血管から引き離しやすいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の分岐組織支持システムの欠点を考慮して、枝血管に流入する血流に対する抵抗を最小限に抑えたすばらしい支持を行うことができる分岐ステントシステム及び分岐ステント送出システムを有することが有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[発明の概要]
本発明は、分岐した身体管腔を支持する方法であって、分岐ステントを未拡張形態で身体管腔内の分岐部に送出するステップであって、分岐ステントは、遠位部分と、遠位部分より小さい力で変形可能である圧潰可能な近位部分とを有する、送出するステップと、遠位部分が分岐部の側枝血管内に実質的に位置し、近位部分が主血管内に実質的に位置するように、分岐ステントを位置付けるステップと、分岐ステントを側枝血管内で着座する形態に拡張させるステップと、主血管ステントを分岐ステントの脇で拡張させ、それにより、分岐ステントの圧潰可能な近位部分の少なくとも一部分を圧潰して主血管壁に当てるステップと、を含む方法に関する。
【0009】
本発明の一つの態様によると、分岐した身体管腔を支持する方法は、事前圧潰ステントを分岐部の側枝血管に送り込むことであって、事前圧潰ステントは、遠位の管状組織支持部分と、近位の圧潰部分とを有する、送り込むステップと、遠位の管状組織支持部分が分岐部の側枝血管内に実質的に位置し、近位の圧潰部分が分岐部の主血管内に延在するように、事前圧潰ステントを配置するステップと、ステントの遠位の管状組織支持部分を側枝血管内で拡張させるステップと、を含む。
【0010】
本発明の別の態様によると、事前圧潰ステントは、送出形態から拡張した組織支持形態に拡張可能な連続管状本体を備え、送出形態の本体は、第1の管状組織支持セグメント、及び第1の管状部分に連結された第2の圧潰部分を有する。
【0011】
本発明のさらなる態様によると、ステント及び送出システムは、送出形態から拡張した組織支持形態に拡張可能な連続管状本体を有する事前圧潰ステントを備え、送出形態の本体は、第1の管状組織支持部分、及び第1の管状部分に連結された第2の圧潰部分を有し、バルーンカテーテルは、事前圧潰ステントの第1の管状組織支持部分内に位置付けられるバルーンを有する。
【0012】
本発明のさらなる態様によると、ステントを分岐した身体管腔に送出する方法は、拡張可能なステントを未拡張形態で身体管腔内の分岐部に送出するステップであって、分岐部は、主血管及び側枝血管を有する、送出するステップと、ステントの近位部分を少なくとも部分的に拡張させるステップと、ステントの遠位端部を分岐部の側枝血管内へ前進させることであって、ステントの拡張した近位部分及び未拡張の遠位部分間の接合部が、側枝血管の開口内に着座するまで、前進させるステップと、側枝血管内でステントの遠位部分を拡張させるステップと、を含む。
【0013】
次に、添付図面に示された好適な実施形態を参照しながら本発明をさらに詳細に説明するが、図面では、同様の部材に同様の参照符号が付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるステントの一例の斜視図である。
【図2】ステントの圧潰可能な端部を示す、図1のステントの一部分の拡大側面図である。
【図3A】血管分岐部、及び圧潰可能な端部を有する分岐ステントを備えるステントシステムの概略側面図である。
【図3B】部分的に拡張した圧潰可能な端部及び分岐ステントが、分岐部内に着座するように前進した状態にある、図3Aのシステムの概略側面図である。
【図3C】分岐ステントが側枝血管内で完全に拡張した状態にある、図3Aのシステムの概略側面図である。
【図3D】主血管ステントが完全に拡張し、分岐ステントの圧潰可能な端部が圧潰した状態にある、図3Aのシステムの概略側面図である。
【図4】分岐部用の拡張した事前圧潰ステントの概略側面図である。
【図5A】未拡張形態にある、バルーンカテーテルに取り付けられた図4の事前圧潰ステントの概略側面図である。
【図5B】バルーンカテーテルに取り付けられ、且つ拡張状態にある図4の事前圧潰ステントの概略側面図である。
【図6A】血管分岐部と、側枝血管内で拡張した分岐ステント及び主血管内の事前圧潰端部を有するステントシステムとの概略側面図である。
【図6B】主血管ステントが完全拡張状態にある、図6Aのシステムの概略側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[詳細な説明]
本明細書で使用する「圧潰」又は「圧潰された」という表現は、管状部材の対向側部の一方又は両方が、その対向側部が互いに接触、又は実質的に接触するように潰れることを表す。
【0016】
図1及び図2は、第2の端部Bより小さい力で変形可能又は圧潰可能である第1の端部Aを有する分岐ステント10の一例を示す。分岐ステントの圧潰可能な第1の端部A及び剛性を高めた第2の端部Bにより、ステントの一端部を血管分岐部の側枝血管内で組織支持形態に拡張させておきながら、他端部を容易に圧潰させて、ステントが通っている主血管の側壁に当てることができる。
【0017】
図1及び図2の例のステント10は、複数の延性ヒンジ20A及び20Bによって相互連結された複数のストラット12を有する。ステントの拡張又は収縮時に、延性ヒンジ20A及び20Bは塑性変形するが、ストラットは塑性変形しない。ステント10の圧潰可能な端部A内の延性ヒンジ20Aの幅WAは、ステントの側枝血管支持端部B内のヒンジ20Bの幅WBより小さい。ヒンジ20A及び20Bの幅は、隣接したストラットの長手軸に対して実質的に垂直方向に、又はステントが未拡張形状にあるときにはステントの長手軸に対して実質的に垂直方向に測定される。ヒンジの幅のこの差が、幅広ヒンジを有する第2の端部Bより小さい力で拡張可能であるとともに、容易に圧潰する(小さい力で圧潰可能である)圧潰可能な端部Aを与える。
【0018】
分岐ステント10の圧潰可能な端部Aを、ステントの他の寸法又は材料を変化させることによって設けることもできる。たとえば、圧潰可能な端部を達成するために、ヒンジ厚さ又はヒンジ材料を変化させてもよい。ステントはまた、ヒンジのないステントであることもでき、また、圧潰可能な端部を達成するために、変形可能なストラット自体の性質を変化させることもできる。たとえば、圧潰可能な端部を形成するために、ストラット厚さ、ストラット幅又はストラット材料を変化させることができる。代替として、圧潰可能な端部Aを形成するために、ストラット構造、ストラットの長さ、数又は形を変化させることができる。
【0019】
一例では、一端部でステント全体の半径方向厚さを減少させ、その結果、薄肉壁の圧潰可能な端部と、厚肉壁の血管支持端部とを生じることによって、圧潰可能な端部を形成する。薄肉壁の圧潰可能な端部は、電解研磨、化学エッチング等で形成されることができる。
【0020】
化学エッチング処理の一例では、浸漬等により、ステント全体にフォトレジストを塗布する。ステントの内面又は外面上のフォトレジストを除去し、それにより、ストラットの側面又は穴の内面のエッチングを行うことなく、ステント壁の半径方向エッチングすなわち薄肉化が可能になる。ステントの圧潰可能な端部の内部だけにピンを挿入することにより、フォトレジストの選択的除去を行うことができる。ピンをステントにはめ込んで、圧潰可能な端部の内面へ進む光を遮断する。次に、ステント全体にUV光を浴びせ、それにより、露光したフォトレジストを架橋結合させて、それが次の溶剤によって除去されることを防止する。次に、ピンを取り外し、溶剤を使用して、未架橋のフォトレジストを圧潰可能な端部の内面から取り除く。ステントを電解研磨し、それにより、圧潰可能な端部を所望厚さまで薄くし、次に、フォトレジストを溶剤を用いてステントの残り部分から除去する。
【0021】
図1及び図2のステント10は、抗再狭窄治療薬等の有益な作用物質を与えるための複数の開口14を有するように示されている。薬剤を望まない場合、これらの開口を省いてもよいことを理解されたい。代替として、ステント10を有益な作用物質で被覆する、又は別法でそれを含浸させることができる。
【0022】
図3A〜図3Dは、上記のような圧潰可能な端部Aを有する第1のステント100と、圧潰可能な端部を有していない第2のステント110とを備えたステントシステム、及び分岐部にステントを埋め込む方法を示す。図3A〜図3Dは、主血管200と、主血管から延びてY字形を形成する側枝血管300とを有する血管分岐部を示す。図3Aに示すように、分岐ステント100は、第1のバルーンカテーテル102及び第1のガイドワイヤ104を使用して、既知の方法で血管系内を分岐部の位置まで前進させられる。第2のステント110すなわち主血管ステントは、第2のバルーンカテーテル112及び第2のガイドワイヤ114で送られる。
【0023】
図3Bは、第1のバルーンを第1の圧力で拡張させることによって部分的に拡張させた、分岐ステント100の圧潰可能な端部Aを示す。圧潰可能な端部の半径方向強度が低いため、ステント100の圧潰可能な端部すなわち近位端部は、第1の圧力の印加時に少なくとも部分的に拡張するが、ステントの遠位端部Bは拡張しない。
【0024】
一実施形態によれば、圧潰可能な端部Aを部分的に拡張させた状態で、分岐ステント100をわずかに前進させ、それにより、図3Bに示すように、ステントを分岐部の側枝血管開口内に着座させることができる。着座は、接触時に感じられる押し込みに対する抵抗によって決定されることができる。このように、分岐ステント100の圧潰可能な近位端部A及び遠位端部B間の移行領域106を、側枝血管開口に正確に位置付けることができる。前進中に血管壁を傷つけることを防止するために、ステントは、主血管の内径より小さい直径まで、好ましくは主血管の直径より少なくとも10%小さい直径まで拡張されるようにすべきである。
【0025】
別法として、移行領域106を側枝血管開口に位置付けるために、マーカーバンド又は他の可視化手段を使用することができる。そのような既知の可視化技法を使用するとき、図3Bの部分膨張段階を省くことができ、バルーン膨張の前に、視覚的に分岐ステント100を位置付けることができる。
【0026】
図3Cは、圧潰可能な近位端部Aが主血管200内へ延出している状態で、分岐ステント100が側枝血管300内で完全に拡張しているところを示す。図3A及び図3Bに示されたバルーンカテーテル102を、図3Bに示されている近位端部の部分拡張を達成するために使用された圧力より高い第2の圧力まで膨張させることにより、ステント100が拡張されている。拡張形態において、分岐ステント100は、側枝血管300の分岐部より遠位の壁を支持し、また、主血管200内の第2のステント110の脇に並んで延在している。
【0027】
図3Dは、バルーンカテーテル112による主血管ステント110の拡張を示す。この拡張は、分岐ステント100の圧潰可能な近位端部Aを圧潰して、血管の壁に当てる。圧潰可能な近位端部を圧潰するために必要な力は、遠位端部Bを圧潰するために必要な力の約80%以下であることができる。一例では、圧潰可能な端部Aを圧潰するために必要な力は、遠位端部Bを圧潰するために必要な力の60%以下である。
【0028】
図3Dに示されているように、分岐ステント100の遠位端部Bは、側枝血管300を支持し続ける。側枝血管300に流入する血流は、主血管ステント110内及び分岐ステント100内のストラット間の開口を通り抜ける。側枝血管300に通じる開口を横切るステントストラットの位置は一般的に、側枝血管に流入する血流に大した影響を与えない。一部の例では、側枝血管開口の位置で、ストラット間にバルーンカテーテルを挿入してバルーンを拡張させ、それにより、ストラット間の空間を増加させることにより、ストラット間の開口の1つ又は複数をさらに開くことが望ましいであろう。
【0029】
図4及び図5は、分岐部にステントを埋め込むのに使用される、事前に圧潰された端部410を有する事前圧潰分岐ステント400の代替実施形態を示す。ステント400は、実質的に円筒形の端部を形成する複数の相互連結したストラットで形成された拡張可能な端部412を有する。拡張可能な円筒形端部412は、複数のストラットによって圧潰端部410に連結されている。分岐ステント400は、送出前にステントの一端部を圧潰することにより、任意の既知のステントから形成されることができる。事前圧潰端部410の構造は、拡張可能な端部412と同一でも、異なってもよい。たとえば、事前圧潰端部で、ストラットの数を減らしてもよい。
【0030】
図5A及び図5Bに示すように、事前圧潰分岐ステント400はバルーンカテーテル430に取り付けられ、バルーンがカテーテルの拡張可能な円筒形端部412内に配置され、且つバルーンが事前圧潰端部410の脇に配置される。この構造は、バルーンカテーテル430をステント400のストラット間の開口に挿通することによって達成される。圧潰端部410は扁平化されて、比較的平坦な形態でバルーンの外側に沿って置かれる。バルーンをステント400の側面穴に挿通したカテーテルの配置により、ステント400の拡張中に側枝血管の位置の格子を拡張するという追加的な利益が得られる。側枝血管開口の位置の格子をこのように拡張することにより、その開口を横切るストラットの数が減り、したがって、血流が改善される。
【0031】
図6A及び図6Bは、図4、図5A及び図5Bの事前圧潰ステント400を備えたステントシステム、及び分岐部にステントを埋め込む方法を示す。図6Aに示されているように、事前圧潰ステント400をバルーンカテーテルによって分岐部に送り、膨張可能な遠位端部412を側枝血管300内に入れて位置付ける。事前圧潰ステント400は、カテーテル軸を回転させることにより、事前圧潰端部410が側枝血管開口の近位側に位置するように配置される。適当なステントの向きは、既知の方法によって視覚的に確認されることができる。ステントが見えない場合、放射線不透過マーカーバンド又は他のマーカを既知の方法で使用してもよい。事前圧潰端部410の好適な向きは、図6A及び図6Bに示されているように、側面開口のすぐ近くであるが、横向きの事前圧潰端部も首尾良く使用することができる。
【0032】
事前圧潰ステント400を位置付け、向きを定めた後、次にステント400をバルーンカテーテルによって拡張させ、それにより、事前圧潰端部410が、主血管の側壁に沿って延びるようにする。事前圧潰ステント400の拡張前、又はその後のいずれかで、主血管ステント450をカテーテル452によって分岐位置まで前進させることができる。主血管ステント450は、図6Bに示されているように、拡張され、それにより、分岐部で主血管を支持することができ、また、分岐ステント400の事前圧潰端部410を主血管壁に押し付けて捕らえる。その結果、図6Bに示されているように分岐部を支持するための2つの拡張ステント構造は、図3Dで得られたものに似ている。
【0033】
上記の実施形態において、主血管ステントは、側枝血管ステントと同じ全体形状であることができる。代替として、主血管ステント及び圧潰可能又は事前圧潰ステント用に、異なった寸法、形及び構造を使用することができる。一実施形態では、主血管ステントを側枝血管ステントより長くして、それにより、側枝血管ステントの近位端部全体が確実に圧潰されて扁平になり、主血管壁に押し付けられるようにすることができる。
【0034】
本発明の一態様によれば、上記ステントは、薬剤送出ステントであることができる。薬剤送出を、本明細書に記載した圧潰可能な分岐ステントと組み合わせて使用するとき、圧潰可能なステントが圧潰可能又は事前圧潰端部上に含む薬剤をなくすか、減らし、それにより、圧潰された近位端部の位置での血管壁への二重投与を防止することができる。特に問題となる部位で、薬剤濃度をさらに高めることができる。たとえば、側枝血管の開口領域は、分岐部の特に問題になる部位であり、圧潰可能なステントの中央領域で薬剤濃度を高めることにより、より多くの薬剤を受け取ることができる。
【0035】
ステントが開口内に薬剤を含むとき、1開口当たりの薬剤を増加すること、開口の数を増加すること、又は開口の寸法を大きくすることにより、薬剤濃度を高くすることができる。
【0036】
本発明をその好適な実施形態に関連して詳細に説明してきたが、本発明から逸脱しない限り、さまざまな変化及び修正を加えるとともに、均等物を用いることができることは、当業者には明らかであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐ステント及び送出システムであって、
送出形態から拡張した組織支持形態に拡張可能な連続管状本体を備えるステントであって、
前記本体が、
分岐部の側枝血管内に位置付けられるように構成された遠位の管状組織支持部分と、
該遠位の管状部分に連結されるとともに、前記分岐部に隣接した主血管内に位置付けられるように構成された近位の圧潰可能な部分とを有し、
該近位の管状部分は、前記遠位の管状部分より圧潰強度が低い、
ステントと、
細長いカテーテル軸の遠位端部に連結されたバルーンを有するバルーンカテーテルであって、前記ステントが、該バルーン上に位置付けられる、バルーンカテーテルと
を備える、システム。
【請求項2】
前記遠位の管状部分は、軸方向長さが前記近位の管状部分と同じか、それより長い、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記近位の管状部分は、前記遠位の管状部分を圧潰するために必要な力の80%以下の力で圧潰可能である、請求項1に記載のステント。
【請求項4】
前記ステントは、変形可能なヒンジによって相互連結された実質的に変形しないストラットの構造を有する、請求項1に記載のステント。
【請求項5】
前記近位の圧潰可能な部分内の前記ヒンジは、前記遠位の管状組織支持セクション内の前記ヒンジより断面が小さい、請求項4に記載のステント。
【請求項6】
前記遠位の管状組織支持部分は、薬剤を含む、請求項1に記載のステント。
【請求項7】
前記近位の圧潰可能な部分は、薬剤を含まない、請求項6に記載のステント。
【請求項8】
前記近位の管状部分は、前記遠位の管状部分を圧潰するために必要な力の60%以下の力で圧潰可能である、請求項1に記載のステント。
【請求項9】
前記ステントは、薬剤を含み、
前記ステントの、前記分岐部の口に対応する部分は、該ステントの残りの部分より高濃度の薬剤を含む、請求項1に記載のステント。
【請求項1】
分岐ステント及び送出システムであって、
送出形態から拡張した組織支持形態に拡張可能な連続管状本体を備えるステントであって、
前記本体が、
分岐部の側枝血管内に位置付けられるように構成された遠位の管状組織支持部分と、
該遠位の管状部分に連結されるとともに、前記分岐部に隣接した主血管内に位置付けられるように構成された近位の圧潰可能な部分とを有し、
該近位の管状部分は、前記遠位の管状部分より圧潰強度が低い、
ステントと、
細長いカテーテル軸の遠位端部に連結されたバルーンを有するバルーンカテーテルであって、前記ステントが、該バルーン上に位置付けられる、バルーンカテーテルと
を備える、システム。
【請求項2】
前記遠位の管状部分は、軸方向長さが前記近位の管状部分と同じか、それより長い、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記近位の管状部分は、前記遠位の管状部分を圧潰するために必要な力の80%以下の力で圧潰可能である、請求項1に記載のステント。
【請求項4】
前記ステントは、変形可能なヒンジによって相互連結された実質的に変形しないストラットの構造を有する、請求項1に記載のステント。
【請求項5】
前記近位の圧潰可能な部分内の前記ヒンジは、前記遠位の管状組織支持セクション内の前記ヒンジより断面が小さい、請求項4に記載のステント。
【請求項6】
前記遠位の管状組織支持部分は、薬剤を含む、請求項1に記載のステント。
【請求項7】
前記近位の圧潰可能な部分は、薬剤を含まない、請求項6に記載のステント。
【請求項8】
前記近位の管状部分は、前記遠位の管状部分を圧潰するために必要な力の60%以下の力で圧潰可能である、請求項1に記載のステント。
【請求項9】
前記ステントは、薬剤を含み、
前記ステントの、前記分岐部の口に対応する部分は、該ステントの残りの部分より高濃度の薬剤を含む、請求項1に記載のステント。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【公開番号】特開2013−99547(P2013−99547A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−287042(P2012−287042)
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2007−532331(P2007−532331)の分割
【原出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(308021741)イノヴェイショナル・ホールディングズ・エルエルシー (6)
【氏名又は名称原語表記】INNOVATIONAL HOLDINGS, LLC
【住所又は居所原語表記】One Johnson & Johnson Plaza, New Brunswick, New Jersey 08933, United States of America
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2007−532331(P2007−532331)の分割
【原出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(308021741)イノヴェイショナル・ホールディングズ・エルエルシー (6)
【氏名又は名称原語表記】INNOVATIONAL HOLDINGS, LLC
【住所又は居所原語表記】One Johnson & Johnson Plaza, New Brunswick, New Jersey 08933, United States of America
【Fターム(参考)】
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