説明

圧着工具

【課題】取扱が改善された、多軸骨固定装置を製造するための圧着工具を提供する。
【解決手段】多軸骨固定装置(1,1’)を製造するための圧着工具(200)が提供される。圧着工具(200)は、圧着チップ(209a,209b)と傾斜通路(216a,216b)とを有する少なくとも1つのチップホルダ(213a,213b)と、少なくとも1つの傾斜脚部(207a,207b)を有する作動部材(205)とを備え、傾斜通路(216a,216b)の傾斜は、傾斜脚部(207a,207b)の傾斜に相当する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸骨固定装置を製造するための圧着工具に関し、この圧着工具は、圧着チップと傾斜通路(216a,216b)とを有する少なくとも1つのチップホルダと、少なくとも1つの傾斜脚部を有する作動部材とを備え、傾斜通路の傾斜は傾斜脚部の傾斜に相当する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,716,356号には、ねじ要素と、旋回可能な状態でねじ要素に接続される収容部と、ねじ要素の頭部上に圧力を加えることによってねじ要素と収容部との間の角度をロックする圧力要素とを含む、多軸骨ねじが記載されている。収容部は、安定化ロッドを収容するためのU字型の溝を有する。圧力要素は、このU字型の溝と位置合わせされてロッドを収容する円筒形の窪みを含む。圧力要素を、U字型の溝と位置合わせされた適所で保持するために、圧力要素の位置を、収容部に設けられたボアを通して圧着を行なうことによって固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,716,356号A
【特許文献2】米国特許出願第2010/0211114号A1
【特許文献3】米国特許第5,261,913号A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
骨固定要素の頭部が、まだ最終的な角度位置でロックされておらず、収容部に対して自由に旋回できるとき、収容部の位置合わせおよびロッドの挿入は、たとえば複数の骨固定具をロッドに接続しなければならないときのように、より複雑な臨床応用では、困難な場合がある。
【0005】
本発明の目的は、取扱が改善された、多軸骨固定装置を製造するための圧着工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載の圧着工具によって達成される。さらなる展開形態は従属する請求項に記載されている。
【0007】
この圧着工具を用いれば、多軸骨固定装置の頭部を、収容部に対して所望の角度位置で、この頭部をロックせずに、一時的に締めることができる。これにより、収容部を、調整可能な角度位置で保つことができる。この状態で、圧力要素が、ロックされていないが自由に旋回できない状態の頭部に対し、予荷重を加える。頭部を一時的に締めているときには、特に複数の骨固定具をロッドに接続する必要がある場合、収容部のロッドに対する位置合わせおよびロッドの挿入が容易になる。
【0008】
この多軸骨固定装置も圧着工具も、簡単な設計のわずかな部品しか含まない。頭部をロックする前に摩擦で維持する仕組みであるため、ばね部材またはばね部分はない。このため、多軸骨固定装置の製造が容易になる。さらに、既存の収容部および圧力要素をこれらの形状を再設計せずに使用できる。圧着ボアの位置は簡単に変更できる。
【0009】
圧力部材によって頭部に加える予荷重の量は、圧着ボアの位置および形状を選択することによって、簡単なやり方で、正確に前もって定めることができる。この多軸骨固定装置は、予め組立てられた状態で外科医に提供される。この予め組立てられた状態とは、圧力要素が、位置合わせされた位置から落ちるまたは回転することができない程度に、軸方向および回転方向において固定されている状態である。このため、外科医は安全に取扱うことができる。
【0010】
この圧着工具により、1工程で圧着作業を行なうことができるので、骨固定装置を完全にロックすることなく、収容部の内部において、圧力要素と、ねじ頭部と、ねじ頭部の座部との間に高摩擦力が得られる。それでもなお、ねじは収容部に対して多軸移動することができる。この工具の構造は頑丈であり圧着の手順は容易である。このため、外科医による取扱が改善される。
【0011】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を用いた実施の形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態に従う多軸骨固定装置の分解斜視図を示す。
【図2】組立てられた状態の、図1の多軸骨固定装置を示す。
【図3】組立てられた状態で、頭部を最終的にロックする前の、多軸骨固定装置の断面図を示す。
【図4a】圧力要素を収容部に仮固定する前の、多軸骨固定装置の断面図を示す。
【図4b】図4aの拡大部分を示す。
【図5a】圧力要素を収容部に仮固定した後の、予め組立てられた状態の多軸骨固定装置の断面図を示す。
【図5b】図5aの拡大部分を示す。
【図6】圧力要素を収容部に仮固定するための工具の断面図を示す。
【図7】図6の拡大部分を示す。
【図8】頭部をロックする前の、多軸骨固定装置の実施の形態の変形例の断面図を示す。
【図9】頭部をロックする前の状態の、多軸骨固定装置の実施の形態のさらなる変形例の断面図を示す。
【図10】多軸骨固定装置の第2の実施の形態の分解斜視図を示す。
【図11】図10の骨固定装置の圧力要素の一部の拡大断面図を示す。
【図12】圧力要素を収容部に仮固定する前の、第2の実施の形態の多軸骨固定装置の断面図を示す。
【図13】圧力要素を収容部に仮固定した後の、予め組立てられた状態の図12の多軸骨固定装置の断面図を示す。
【図14a】開始位置にある、第2の実施の形態に従う圧力要素を収容部に仮固定するための工具の斜視図を示す。
【図14b】圧着位置にある第2の実施の形態に従う工具の斜視図を示す。
【図15a】開始位置にある第2の実施の形態に従う工具の斜視図を示す。
【図15b】開始位置にある第2の実施の形態に従う工具の斜視図および骨固定装置の斜視図を示す。
【図15c】骨固定装置が挿入されている、開始位置にある第2の実施の形態に従う工具の斜視図を示す。
【図15d】圧着位置にある第2の実施の形態に従う工具の斜視図を示す。
【図16a】開始位置にある第2の実施の形態に従う工具の断面図を示す。
【図16b】図16aの拡大部分を示す。
【図17a】中間位置にある第2の実施の形態に従う工具の断面図を示す。
【図17b】図17aの拡大部分を示す。
【図18a】圧着位置にある第2の実施の形態に従う工具の断面図を示す。
【図18b】図18aの拡大部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜図3に示される、第1の実施の形態に従う多軸骨固定装置1は、ねじ切りされた軸3と頭部4とを有するねじ部材2の形態の骨固定要素を含む。頭部4は、概ね球状であり、その自由端に、ねじ切りされた軸3を骨に挿入するために工具と係合するための窪み4aを含む。この骨固定装置はさらに、ねじ部材2をロッド20と接続するための収容部5を含む。圧力要素6は、収容部の中において頭部4の上に配置される。ロッド20を収容部に固定するためかつ圧力を頭部に加えるために、収容部5と協働するロック装置、たとえば内部ねじ7が設けられる。
【0014】
収容部5は、実質的に円筒形の一体型部品であり、上端51と下端52とを有する。この上端から下端まで延びる通路は、同軸ボア53と、これに続く、ねじ部材2の頭部4を収容するための座部54とによって形成される。座部54は下端52に開口部55を有し、この開口を通してねじ部材の軸3が延びる。座部54は、球形として示されているが、先細りになったテーパ形状でもよく、または、頭部4が収容部5に対して旋回できるように頭部4を収容することができるその他任意の形状であってもよい。上端51には実質的にU字型の窪み56が設けられており、この窪みによって、ロッド20を収容するための溝の側壁である2つの自由脚部57、58が形成される。内部ねじ7と協働するためにこれら脚部には内ねじ山59が設けられている。
【0015】
圧力要素6は一体的に形成されている。この圧力要素は、実質的に円筒形の構造であり、その外径は、収容部5のボア53の中で軸方向に移動できる大きさの外径である。圧力要素6は上端61と下端62とを有する。圧力要素を収容部に挿入すると、下端62はねじ要素2の頭部4と向き合うことになる。下端62には、頭部4の大きさと形状に適合させた球状の窪み63が設けられている。この球状の窪みは、頭部の球面と摩擦係合するように構成されている。上端61にはU字型の窪み64が設けられており、これにより、ロッド20を収容する溝を形成する2つの自由脚部65、66が形成される。さらに、圧力要素6は、工具(図示せず)がねじの頭部4にアクセスするための同軸ボア67を含む。図示のように、圧力要素6は、圧力要素を可撓性にすることができるばね部分のない堅い部材である。圧力要素は、収容部5のU字型の窪み56と圧力要素のU字型の窪み64とが揃うように、収容部の中に配置される。
【0016】
図3に示される組立てられた状態において、ねじ頭部4は座部54の中に位置し、圧力要素6はねじ頭部4の上端の上に配置される。圧力要素の自由脚部65、66の高さは、ロッドが挿入されて溝の底の上に載っている状態で、自由脚部65、66がロッド20の高さを超えて延びているように、構成される。
【0017】
内部ねじ7の形態のロック装置は、圧力要素6の自由脚部65、66によって形成される溝の中まで延びる突起71を有する。この突起71の軸方向の大きさは、内部ねじ7を締めたときに、突起71が、圧力要素の上端61と内部ねじ7の下側との間に隙間21が残る状態でロッドを押す大きさである。したがって、1つの内部ねじ7を用いて圧力をロッド20上のみに加えることができ、これにより、圧力を圧力要素6上に加えることができる。なお、内部ねじ7の形態の一体型ロック装置の代わりに、2つの部分で構成されたロック装置(図示せず)を使用してもよい。この2つの部分で構成されたロック装置は、収容部の脚部57、58間にねじ込まれる第1の部分を含む。この第1の部分は圧力要素6の上端61上に作用する。さらに、内部ねじの形態の第2の部分は、第1の部分の中に設けられてロッド20を押す。このようにすれば頭部4とロッド5を個別に固定できる。
【0018】
圧力要素6は、図3〜図5に示されるように収容部5の中で保持される。特に図4aおよび図4bに示されるように、収容部は、外面から、同軸ボア53の内壁から一定の距離の場所まで延びる、圧着ボアを形成する2つの止まり穴500a、500bを含む。この止まり穴500a、500bは、互いに180°ずらして、かつ、U字型の窪み56によって形成される溝に対して90°ずらして配置される。止まり穴500a、500bは、同軸ボア53のボア軸Mに対して垂直方向に並んでいる。これら止まり穴は、その端部で、ボア軸Mに平行な軸に対して好ましくは45°未満、たとえば22.5°の角度αをなして先細りになったテーパ形状である。止まり穴500a、500bのボア軸A、Bは、収容部の第2の端部52から距離Hだけ離れた場所に設けられている。
【0019】
止まり穴500a、500bの閉じた側の端部と、収容部の同軸ボア53との間にある、収容部の部分は、変形可能な部分501a、501bとして構成されている。
【0020】
これに対応して、圧力要素6は2つの窪み600a、600bを含む。これら窪みは、互いに180°ずれており、かつU字型の窪み64によって形成される溝に対して90°ずれている。これら窪み600a、600bはそれぞれ、ボア軸Mに対して垂直な中心軸a、bを有する。図示の実施の形態では、窪み600a、600bは円錐形状である。窪み600a、600bの下向きに延在するフランク601a、601bは各々、中心のボア軸Mに対して約45°の角度βを含む。図4aおよび図4bに示されるように、圧力要素6を、ねじ要素の頭部4の上に載るように挿入したとき、窪み600a、600bの中心軸a、bは、止まり穴500a、500bの中心軸A、Bの距離Hよりも大きい、収容部5の第2の端部52からの距離hを有する。すなわち、窪み600a、600bは止まり穴500a、500bよりも上に配置されている。
【0021】
これら窪みと止まり穴との間の距離は、たとえば圧着工具を介して止まり穴500a、500bに力が加えられたことによって、変形可能な部分501a、501bが変形したときに、変形した材料が収容部の内壁から突出して窪み600a、600bそれぞれの下側のフランク601a、601bを上から押圧することにより、下向きの力が圧力要素6に加わるような、距離である。図5aおよび図5bに示されるように、変形可能な部分501a、501bが変形して変形部分502a、502bとなると、これが、圧力要素6の窪み600a、600bの下側のフランク601a、601bに圧力を加える。たとえば、変形後の角度αは約45°であり、これは下側のフランク601a、601bの角度とほぼ同じである。それぞれの変形可能な部分501a、501bを有する止まり穴500a、500bと、窪み600a、600bの構成によって、変形可能な部分501a、501bを変形させて変形部分502a、502bにすると、この変形部分が窪み600a、600bと係合して力を圧力要素6に加え、これによって頭部4に対する予荷重が生じ、この頭部を摩擦によって締める。上記止まり穴および窪みの大きさならびにこれらの位置を選択することにより、所望の摩擦力が得られる。この摩擦力によって、上記頭部を、所望の角度位置で保つことができるとともに、この摩擦力よりも大きな力をねじ要素および収容部のうちいずれかに加えれば上記の位置から移動させることができる。同時に、圧力要素は、回転しないように固定されるとともに、収容部の上端51から抜けないように固定される。窪み600a、600bは、変形した材料の一部を受け入れる空間を提供する。また、窪み600a、600bは、圧力要素6が下向きに移動して最終的に頭部をロックしたときに突起502a、502bのためのスペースを提供する。
【0022】
多軸骨固定装置の製造方法を、図6、図7、および図4〜図5を参照しながら説明する。図6および図7に示される圧着工具は、一般的に、図4aおよび図4bに示されているようにねじ要素2と圧力要素6が挿入された収容部5を固定するのに役立つ、骨固定装置のためのホルダ100を備える。ロッド20を挿入して反力を加えることによって圧力要素の自由脚部65、66の変形を回避してもよい。この圧着工具はさらに、2つの圧着チップ101a、101bを含む。これら圧着チップは、互いに180°ずらして配置され、その寸法は、止まり穴500a、500bに導入できる寸法となるよう、かつ、変形可能な部分501a、501bを変形させ変形によって押し出された材料が変形部分502a、502bを形成して圧力要素の窪み600a、600bと係合するようにする、寸法となるように、定められる。特に図7からわかるように、圧着チップ101a、101bの角度は、止まり穴500a、500bの底部分の角度よりも鋭い角度である。圧着チップ101a、101bは、変形可能な部分を変形させ、変形した部分が、窪み600a、600bそれぞれの下側のフランク601a、601bを上から押圧する。その後、圧着チップを後退させる。この圧着プロセスを、力によって作動させる(force-actuated)および/または経路制御する(path-controlled)ことが可能である。
【0023】
圧着チップを後退させた後、多軸固定装置をホルダ100から取出すことができる。このとき、多軸骨固定装置は予め組立てられた状態である。すなわち、わずかな予荷重がねじ頭部に加えられることで摩擦が生じてねじ頭部をある角度位置で保持するように、ねじ要素2が挿入され圧力要素が保持されている状態である。
【0024】
なお、止まり穴の形状を変えてもよい。特に、円錐形状を有する底部分の角度を変えてもよく、または、この底部分が丸い形状またはその他の形状であってもよい。圧力要素6に設けられた窪みも、異なる形状を有していてもよい。図8に示されるように、窪み610a、610bは、たとえば断面が実質的に矩形でもよい。この窪みの下側は、変形部分502a、502bと係合するための傾斜したエッジ611a、611bを含む。
【0025】
図9に示されるように、圧力要素の窪み620a、620bの断面は、たとえば、変形部分502a、502bと係合するための傾斜した下側のフランク621a、621bを有する台形であってもよい。
【0026】
骨固定装置の構成部品はすべて、たとえばチタンといった身体適合性金属、たとえばニチノールといった身体適合性合金等の身体適合性材料で、または、たとえポリエーテルエーテルケトン(PEEK)といった身体適合性プラスチック材料から、またはこれらを組み合わせたもので、構成される。
【0027】
通常、骨の複数の部分または椎骨をロッドで安定化させるためにはいくつかの骨固定装置が必要である。使用時、骨固定装置は、図5a、図5bに示されるように予め組立てられている。ねじ部材を骨または椎骨の中にねじ込む。次に、各収容部がロッドを挿入するのに正しい向きになるまで、摩擦力よりも大きな力を加えることによって収容部を旋回させる。この摩擦力によって、各収容部はこの角度位置で保持される。その後、骨固定装置同士を接続するロッドを挿入し、内部ねじを締めて圧力要素を下向きに移動させ、ねじの頭部を座部の中でロックすると、ねじ部材の収容部に対する角度位置が固定される。ロッドは同時に内部ねじによって固定される。変形部分502a、502bは圧力要素に設けられた窪みの下側のフランクとしか係合しないので、この窪みは、変形部分に対して十分なスペースを提供し、圧力要素が下向きに移動できるようにしている。
【0028】
上述の実施の形態にはさらなる変形が考えられる。たとえば、収容部に1つだけ変形部分を設けこれに対応する窪みを1つ圧力要素に設ける構成でも十分である。しかしながら、3つ以上の変形部分とそれに対応す窪みを設けることも可能である。
【0029】
骨固定装置の第2の実施の形態について、図10〜図13を参照しながら説明する。上述の実施の形態と同一または同様の構成部品または部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。第2の実施の形態と第1の実施の形態との主な相違点は、圧力要素および収容部の、予荷重でねじ頭部に仮固定する機能が、入れ替えられている点である。
【0030】
図10からわかるように、収容部5’は、止まり穴500a、500bの代わりに2つの貫通孔500a’、500b’を有する。貫通孔の代わりに収容部の内壁に窪みを設けるだけでも足りるであろうが、貫通孔を設ける方が、製造が簡単であり、第1の実施の形態の止まり穴を有する既存の収容部をアップグレードすることができる。
【0031】
圧力要素6’は、溝64の内壁からそれぞれ脚部65、66の中まで延びる、互いに180°ずらして配置された2つの窪み600a’、600b’を有する。これら窪みは、第1の実施の形態の収容部の止まり穴500a、500bと同様、テーパ角が約22.5°の実質的に三角形の断面を有していてもよい。これら窪みの上端それぞれに、矩形の窪み630a、630bが設けられ、その深さは窪み600a’、600b’の深さよりも小さい。窪み630a、630bは任意であり、圧着工具の挿入を容易にし得る。
【0032】
圧力要素6’の外面と、窪み600a’、600b’の底との間に、図13に示されるように変形して変形部分602a’、602b’となることができる、変形可能な部分601a’、601b’が形成される。図12に示されているように予め組立てられているが変形していない状態で、圧力要素6’は収容部5’の中において頭部3の上に載る位置にあり、変形可能な部分は、貫通孔500a’、500b’の上側の壁部分よりも少し下にある。次に、圧着チップ(図示せず)を窪み600a’、600b’に導入すると、変形可能な部分601a’、601b’が外側に向かって変形する。変形部分602a’、602b’は、図13に示されるように、収容部5’の内側で貫通孔500a’500b’の上側の壁部分(501a’501b’)と接触する。このとき、変形部分602a’、602b’のテーパ角は約45°である。変形した部分が貫通孔の上側の壁部分(501a’501b’)と接触すると、下向きの力が頭部に加わりこれによって頭部が摩擦で締められる。
【0033】
上記実施の形態の窪みおよび止まり穴の形状は、先細りになったテーパ形状に限定されない。また、そのテーパ角度も、記載された値に限定されない。変形可能な部分が変形したときに下向きの力を得ることができるのであればその他の形状も可能である。
【0034】
固定要素としては、あらゆる種類の固定要素を使用し収容部と組み合わせることができる。これら固定要素は、たとえば、長さが異なるねじ、直径が異なるねじ、カニューレ型のねじ(cannulated screw)、ねじ山の形状が異なるねじ、釘、フックなどである。ねじの頭部と軸が、互いに接続可能な別々の部品であってもよい。
【0035】
収容部の形状は、図示の実施の形態に限定されない。たとえば、収容部の端部の形状を非対称にして、ねじ部材の旋回角度が、ねじ部材が片側により大きく旋回できる角度となるようにしてもよい。ねじ頭部のための座部を、収容部の一部である挿入片に設けてもよい。また、ロッドを受ける窪みは、ロッドを上からではなく横から挿入できる窪みであってもよく、または閉じた窪みを通してロッドを案内しなければならないようにしてもよい。2つまたは3つ以上の部品で構成されたロック装置、外部ナット、外部キャップ、バヨネット(bayonet)ロック装置、またはその他の装置を含め、多様なロック装置が可能である。
【0036】
さらなる変形例では、収容部を、ねじ要素を下端から導入できるように構成する。
図14a〜図18bは、ハンドレバープレスとして提供することができる、多軸骨固定装置1’を製造するのに使用される圧着工具200の第2の実施の形態を示す。図15bに示される骨固定装置1’は、上記骨固定装置1と、収容部5’の形状が異なっている。骨固定装置1’のその他の構成部品は第1の実施の形態について示した部品と同一であり、その説明は繰返さない。収容部5’は、ねじ部材の旋回角度が、ねじ部材が片側により大きく旋回できる角度となるように非対称の下端部52’を有する。このような非対称の下端部52’は、たとえば収容部5’の一部を、ある傾斜角度で切り落とすことによって得られる。さらに、収容部5’は、ロッドを挿入するためのスロット91と内ねじ山92とを有する同軸の管状の延長部9とともに形成される。この延長部9は、手術の侵襲を最小限にするために使用され、内側のロックねじを締めた後、切断することができる。圧着工具200を適用することによって、予め組立てられた状態の骨固定装置における圧力要素6とねじ頭部4との間の摩擦力を高めることができる。図14aおよび図14bからわかるように、工具200は、フレーム203と、ハンドル202と、レバー201と、レバー201を案内するためのレバー案内部材204と、圧着装置220と、軸ホルダ230とを含む。レバー201はたとえばニーレバー(knee lever)でもよい。レバー案内部材204は、フレーム203に対して固定状態で接続してもよく、またはフレーム203と一体的に形成してもよい。
【0037】
図15a〜図18bからわかるように、圧着装置220は、ベース206と2つの脚部207a、207bとを有する作動要素205を含み、脚部207a、207bは、フレーム203の表面に対して実質的に平行であり、ベース206から軸ホルダ211に向かって延びている。脚部207a、207bは、互いに離れるように動くことによって、ベース206とともにV字型の構造を形成する。圧着装置220はさらに、各々がチップホルダ213a、213bと圧着チップ209a、209bとを有する2つのチップガイド208a、208bを含む。
【0038】
圧着チップガイド208a、208bは、フレーム203に対して固定状態で接続されるかまたはフレーム203と一体的に形成され、各々、第1の、円筒形、特に断面が円形の円筒形の通路214a、214bと、第2の立方体形状の通路215a、215bとを含む。第1の通路214a、214bと第2の通路215a、215bは、フレーム203の表面に対して実質的に平行に延び、互いに実質的に垂直に延びる。また、第2の立方体形状の通路215a、215bは、たとえば円筒形といった別の形状でもよい。
【0039】
圧着チップ209a、209bを有する圧着チップホルダ213a、213bは、骨固定装置1’の圧着のために互いに向かって移動できるよう、チップガイド208a、208bによって、第1の円筒形の通路214a、214bの中で可動に案内される。図16a〜図18bからわかるように、チップホルダ213a、213bは各々、傾斜通路216a、216bを含み、傾斜通路216a、216bの傾斜は、脚部207a、207bの傾斜に相当する。傾斜通路216a、216bは、フレーム203の表面に対して実質的に平行に延び、脚部207a、207bと並んでいる。このため、作動要素205の脚部207a、207bを、チップガイド208a、208bによって、第2の立方体形状の通路215a、215bの中で可動に案内することによって、骨固定装置1’の圧着のために互いに向かって移動することができる圧着チップ209a、209bを有する圧着チップホルダ213a、213bを、脚部207a、207bによって作動させる。脚部207a、207bは水平方向にしか移動しない。フレーム203の表面に平行である水平方向において、通路215a、215bの幅を脚部207a、207bの幅よりも大きくすることによって、脚部207a、207bを案内できる。
【0040】
圧着チップ209a、209bは、たとえば圧入機構によって、圧着チップホルダ213b、213bの中に配置される。圧着チップ209a、209bは、互いに180°ずらして互いの方向を向くように配置され、その寸法は、上記のように、骨固定装置1’の止まり穴500a、500bに導入できる寸法となるよう、かつ、変形可能な部分を変形させ、変形した部分を形成する押し出された材料が圧力要素の窪みと係合するようにする、寸法となるように、定められる。特に図17bからわかるように、圧着チップ209a、209bの角度は、止まり穴500a’、500b’の底部分の角度よりも鋭い角度である。上記のように、圧着チップ209a、209bはそれぞれ、変形可能な部分を変形させ、変形した部分が窪みの下側のフランクを上から押圧する。
【0041】
さらに、作業時に骨固定装置1’を保持して固定するための収容部ホルダ210が、フレーム203上に設けられる。収容部ホルダ210は2つのチップガイド208aと208bとの間に位置する。収容部ホルダ210は、固定状態でフレーム203に接続されるか、またはフレーム203と一体的に形成され、収容部ホルダ210の底板から突出する、第1の位置決めピン210aと、第2の位置決めピン210bと、第3の位置決めピン210cとを含む。第1の位置決めピン210aは、骨固定装置1’の2つの自由脚部57、58の間に延びる収容部210の中心に実質的に配置されることによって、作業時には骨固定装置1’を適所で保持する。第2および第3の位置決めピン210b、210cは、それぞれが2つの自由脚部57、58の外面と接触することによって作業時に骨固定装置1’をさらに保持するように配置される。
【0042】
軸ホルダ211は、大きさが異なる軸2’を支えるために幅の大きさが異なる複数の溝212a、212b、212cを含む。軸ホルダ211は、フレーム203上で可動に支持され、軸ホルダ211は、溝212a、212b、212cに対して垂直に、すなわち作業時に軸に対して垂直に移動することができる。軸ホルダ211の、フレーム203に対する移動は、協働する、フレーム203に形成された溝と、対応する軸ホルダ211の底からの突起によって実現する。
【0043】
次に動作について図15a〜図18bを参照しながら説明する。
骨固定装置1’は、上記のように予め組立てられた状態で、納品することができる。予め組立てられた状態とは、ねじ要素2’が挿入され、圧力要素6’がそのU字型の窪みが収容部5’のU字型の窪みと揃うように圧着によって保持されている状態である。圧力要素6’の窪みの中に変形した部分が突出することによって、圧力要素6’が、予荷重を頭部4’に対して加えて、頭部4’を、特定の角度位置で、摩擦によって保持する。
【0044】
予め組立てられた多軸骨固定装置における圧力要素6’と頭部4’との間の摩擦力が低すぎる場合には、追加の圧着工程を適用できる。この追加の圧着工程によって、外科医またはその他の助手が、圧力要素6’と頭部4’との間に高摩擦力が生じている骨固定装置を作ることができる。これは、手術前でも手術中でも任意の時に行なうことができる。この追加の圧着は、たとえば、ねじ要素を骨にねじ込む前に、または骨にねじ込んだ後に、行なうことができる。図面に示されている圧着工具200は、ねじ要素を骨に挿入する前に圧着を行なうのに適している。
【0045】
図15aは、開始位置の圧着工具200を示す。図15bは、骨固定装置1’が圧着のために圧着ツール200内に配置される工程を示す。図15cは、圧着工程前の骨固定装置1’が挿入された圧着工具200を示す。図15dは、圧着工具200の圧着位置を示す。
【0046】
まず、図15a、図15bからわかるように、骨固定装置1’を圧着工具200内に配置する。骨固定装置1’は、上記のように、第1の位置決めピン210a、第2の位置決めピン210b、および第3の位置決めピン210cが収容部5’を保持することにより骨固定装置1’を適所で保持するように、配置される。骨固定装置1’の軸2’は、軸ホルダ211の溝212a、212b、212cのうち1つによって支えられる。軸ホルダ211の位置は、軸の大きさに応じて選択できる。図16bからわかるように、この開始位置では、圧着チップ209a、209bはまだ圧着ボア500a’、500b’の中まで突出していない。
【0047】
圧着工具200のハンドル202を作動させてレバー201を作動させることにより、作動要素205が軸ホルダ211に向かって移動する。これにより、作動要素205の傾斜脚部207a、207bが、軸ホルダ211に向かって移動することによって、チップホルダ213a、213bを、脚部207a、207bの傾斜面および傾斜通路216a、216bの傾斜面を通して、互いに向かって移動させる。
【0048】
図17aおよび図17bからわかるように、圧着チップ209a、209bを保持しているチップホルダ213a、213bはさらに、図18a、図18bからわかるように工具200の圧着位置に到達するまで、互いに向かって移動すると、圧着チップ209a、209bは、圧着工具の第1の実施の形態に関して先に述べたように骨固定装置1’を圧着する。
【0049】
その後、圧着チップ209a、209bを後退させる。圧着プロセスは、力によって作動させるおよび/または経路制御することができる。示されている実施の形態では、圧着プロセスは経路制御される。開始位置は、図15a、図16aからわかるように、ベース206による形状ロック(form-locking)機構によって、すなわち、レバー案内部材204の面がベース206に面することによって、定められる。圧着終了位置は、図14bからわかるように、フレーム203の表面と接触するハンドル202の一部による形状ロック機構によって定められる。この形状ロック機構は、このハンドル202の一部からフレーム203の表面に向かって突出しハンドル202の最終位置でフレームの表面と接触する止めねじによって実現できる。これにより、正確な圧着終了位置を調整できる。
【0050】
圧着チップ209a、209bを後退させた後、固定装置1’を収容部ホルダ210から取出すことができる。これで、骨固定装置1’は予め組立てられた状態となる。すなわち、ねじ要素2’が挿入され、圧力要素6’が、小さな予荷重を頭部4’に加えることによって頭部4’をある角度位置で摩擦によって保持するように、保持される状態である。
【0051】
圧着工具200は、圧力要素6’と頭部4’との間に、特定の高い摩擦力を確実に生じさせることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 多軸骨固定装置、1’ 骨固定装置、2 ねじ部材、2’ ねじ要素、3 軸、4,4’ 頭部、5,5’ 収容部、6,6’ 圧力要素、7 内部ねじ、9 延長部、20 ロッド、51 (収容部の)上端、52,52’ (収容部の)下端、53 同軸ボア、54 座部、55 開口部、56 U字型の窪み、57,58 自由脚部、59 内ねじ山、61 (圧力要素の)上端、62 (圧力要素の)下端、63 球状の窪み、64 U字型の窪み、65,66 自由脚部、71 突起、100 ホルダ、101a,101b 圧着チップ、200 圧着工具、201 レバー、202 ハンドル、203 フレーム、204 レバー案内部材、205 作動要素、206 ベース、207a,207b 脚部、208a,208b チップガイド、209a,209b 圧着チップ、210 収容部ホルダ、210a 第1の位置決めピン、210b 第2の位置決めピン、210c 第3の位置決めピン、211 軸ホルダ、213a,213b チップホルダ、214a,214b 第1の通路、215a,215b 第2の通路、216a,216b 傾斜通路、220 圧着装置、230 軸ホルダ、500a,500b 止まり穴、500a’,500b’ 貫通孔、501a,501b 変形可能な部分、502a,502b 変形部分、600a,600b,600a’,600b’ 窪み、601a,601b フランク、601a’,601b’ 変形可能な部分、602a’,602b’ 変形部分、610a,610b 窪み、611a,611b エッジ、620a,620b 窪み、621a,621b フランク、630a,630b 窪み。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸骨固定装置(1,1’)を製造するための圧着工具(200)であって、前記圧着工具(200)は、
圧着チップ(209a,209b)と傾斜通路(216a,216b)とを有する少なくとも1つのチップホルダ(213a,213b)と、
少なくとも1つの傾斜脚部(207a,207b)を有する作動部材(205)とを備え、
前記傾斜通路(216a,216b)の傾斜は、前記傾斜脚部(207a,207b)の傾斜に相当する、圧着工具。
【請求項2】
前記傾斜通路(216a,216b)は円筒形である、請求項1に記載の圧着工具(200)。
【請求項3】
各々が圧着チップ(209a,209b)と傾斜通路(216a,216b)とを有する、2つのチップホルダ(213a,213b)が設けられる、請求項1または2に記載の圧着工具(200)。
【請求項4】
前記作動部材(205)は2つの脚部(207a,207b)を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の圧着工具(200)。
【請求項5】
前記圧着チップ(209a,209b)は互いの方向を向いている、請求項3または4に記載の圧着工具(200)。
【請求項6】
前記傾斜通路(216a,216b)は前記脚部(207a,207b)と並んでいる、請求項3から5のいずれか1項に記載の圧着工具(200)。
【請求項7】
チップガイド(208a,208b)が設けられ、前記チップホルダ(213a,213b)が前記骨固定装置(1,1’)を圧着するために互いに向かって移動できるよう、前記チップホルダ(213a,213b)を、前記チップガイド(208a,208b)によって可動に案内することができる、請求項3から6のいずれか1項に記載の圧着工具(200)。
【請求項8】
前記骨固定装置(1,1’)を圧着するために互いに向かって移動することができる前記チップホルダ(213a,213b)を前記脚部(207a,207b)が作動させるよう、前記脚部(207a,207b)を前記チップガイド(208a,208b)によって可動に案内する、請求項7に記載の圧着工具(200)。
【請求項9】
前記チップホルダ(213a,213b)の移動は、前記作動部材(205)によって行なわせる、請求項1から8のいずれか1項に記載の圧着工具(200)。
【請求項10】
前記作動部材(205)はレバー(201)によって作動させる、請求項1から9のいずれか1項に記載の圧着工具(200)。
【請求項11】
骨固定装置(1,1’)の収容部(5,5’)を支持するために収容部ホルダ(210)が設けられる、請求項1から10のいずれか1項に記載の圧着工具(200)。
【請求項12】
骨固定装置(1,1’)の軸(2,2’)を支持するために軸ホルダ(211)が設けられる、請求項1から11のいずれか1項に記載の圧着工具(200)。
【請求項13】
前記圧着チップ(209a,209b)は、圧入機構によって前記チップホルダ(213a,213b)内に配置される、請求項3から12のいずれか1項に記載の圧着工具(200)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14a】
image rotate

【図14b】
image rotate

【図15a】
image rotate

【図15b】
image rotate

【図15c】
image rotate

【図15d】
image rotate

【図16a】
image rotate

【図16b】
image rotate

【図17a】
image rotate

【図17b】
image rotate

【図18a】
image rotate

【図18b】
image rotate


【公開番号】特開2013−70999(P2013−70999A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−210753(P2012−210753)
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【出願人】(511211737)ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト (30)
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
【Fターム(参考)】